マンゴプリンの話題とはあまり関係のない、しかも法律に絡んだ難しい内容の話ではありますが、ホームページにホームページ制作者のオリジナルのものではない(つまり書籍・雑誌・新聞などに掲載されたりテレビなどで放映された)レシピを掲載している方はたくさんいらっしゃると思います。
私も数年前、当サイトを開設するときに「レシピを掲載するのは著作権法にひっかからないかどうか」をそれなりに考え、調べてから掲載に踏み切った記憶がありますが、同じ悩みを抱えている方はおそらく少なくないと思い、今回の件について簡単に記しておこうと思いました。
ホームページにレシピを掲載するにあたり、関係するのが「著作権法第32条第1項」です。
曰く、
「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲で行なわれるものでなければならない。」
というものです。
重要な部分は2点、
・公正な慣行に合致するものであること
・批評、研究その他引用の目的上正当な範囲で行われていること
です。
更に「公正な慣行に合致するもの」としてはこれまでの判例等から、
(1) 引用する必然性があり、その範囲にも必然性がある
(2) 引用部分の出所を明記する
(3) 引用部分が明確に区分されている
(4) 自分の著作物が主で、引用される著作物が従であること
の4点を満たす必要があります。
当サイト「すきすきまんごぷりん」は
「公正な慣行に合致するもの」の判断基準として、
(1)→"世界一美味しいマンゴプリンを食べる"というサイトのコンテンツ上、「作った」という記述に対して元となるレシピを掲載することについて必然性があると考える。また、著作物からの引用の範囲はマンゴプリンの材料・作り方・その他関係する部位のみとしているので、これもまた必然の範囲であると考える。
(2)→各レシピページに引用元の書籍の名、著者名などは明記してあるので問題ないと考える。
(3)→「材料」「つくりかた」についてはページの構成上、引用部分であることが明らか。また、その他の部分については<BLOCKQUOTE>タグで囲む、あるいは"「""」"で囲うなどとしており、全体を見た上で当該部分が引用であることが明白になるようにしている。
(4)→「すきすきまんごぷりん」というコンテンツ全体がせりあ由紀の著作とした場合、数十に及ぶレシピページのうちの1ページ分のレシピが「従」にあたることはその分量比からして明らかであると考える。
と、こちらでは考えており、以上の内容から「批評、研究その他引用の目的上正当な範囲で行われていること」もクリアできることと、認識していました。
以上はあくまでも私サイドの認識である(でしかない)わけですが……。
■ ■ ■
さて、そこでやっと今回の話になります。
「文化出版局書籍編集部長」との肩書がついた方から2001年7月下旬、私の元にメールが届きました。
「当局の発行書籍も何冊かご紹介していただいており、ほめてくださっているのはとてもうれしいのですが、HPでの著作物の公開は、問題が多々あります。」(メールより一部抜粋)
との内容です。
それに対する返事をお送りしたところ、
「本文の2次使用に関しては、著作権者との出版契約の項目にもあり、それぞれの状況に応じて、そのつど対応しております。せりあさまのご希望も詳しくお伺いしたいですし、紹介いただく方法や表現なども、お教え出来ると思います。
メールでのやり取りは、時間がかかるだけではなく、誤解が生じてしまうおそれもありますので、直接、お電話で話が出来ることを希望しております。」(メールより一部抜粋)
との返事が。
・「せりあさまのご希望も詳しく」と言われても、それは、今掲載しているレシピの掲載継続に他ならない、
・更に「メールのやり取りは誤解が生じる」と言うが、電話口で話しただけの解決の方が余程「言った・言わない」の齟齬を生じさせると思うが、どうか。
といった旨の返事をこちらはお送りした記憶があります。
次にいただいたメールは「それぞれの状況の応じて、そのつど対応」「紹介いただく方法や表現なども、お教え出来ると思う」という内容から、隨分とかけ離れたものでした。
「書籍編集部内だけでなく、総務部、インターネット担当とも審議いたしましたが、常識的に考えても“引用”にあたる掲載方法ではなく、既存の著作物、またはその一部を無断で公開することは著作権の侵害にあたります。営利目的でない個人のホームページであっても同様です。したがって掲載の継続は不可能ですので、掲載を中止して下さい。」(メールより一部抜粋)
「上記の当局が発行している書籍5点の「材料」「作り方」が掲載されているページをすみやかに削除することと、今後、同様のページを掲載しないよう、要求いたします。」(メールより一部抜粋)
「ページをすみやかに削除」とは、聞き捨てならない内容です。
レシピのページには、「他のレシピと比べてどうか」であるとか「このレシピの特徴はこのようなもの」のような、私が書いたコメントもあるわけです。その部分については当然「せりあ由紀の著作権」が発生してしかるべきところです。「著作権」を声高に訴えておきながらの、この無神経さにかなり腹立たしく思いました。
「紹介していただく方法や表現」などというものも、全く記載されてはいません。
また、削除の理由についても「常識的に考えても」という、全く根拠とならないような理由が記されているのみでした。
そこで、
・「ページの削除」についてはお応えできない
・「常識的に考えても」の根拠をきちんと説明して欲しい
の旨、お返事しました。
数日後、「文化出版局総務部インターネット担当」の方からコメントをいただくことができました。
曰く、
「当局としては、これらのページに掲載されている各バージョンの「材料」「つくりかた」の2項目は、「コメント」とは別に独立して利用できる構成がなされていると考えます。
つまり70種類のマンゴプリンを作るための参考レシピのデータベースとして独立して機能しています。そのような意味でこのページに記載されている「材料」「つくりかた」は、上記(4)を十全に満たすような「引用」ではないと考えます。
一般的に「引用」は「転載」と異なる概念であり、前者は、自分の著作物に他の著作物の一部を挿入した場合に、その独立性を主張することができなくなることを意味しています。これに対して「転載」はその独立性をいぜん主張することが出来ることを意味しています。当局はこのような理由から、せりあさまのホームページに掲載されている「材料」と「つくりかた」については当局の各著作物からの転載であると判断します。
以上のような理由をもって、当局は著作者の権利を保護するためにせりあさまのホームページでの、各著作物の掲載の許諾を与えることは出来ませんのでご了承ください。」(メールより一部抜粋)
とのことでした。
この方からのコメントは充分納得できるものでした。
「紹介していただく方法や表現」については、残念ながら最後まで何も知ることができませんでしたが、こうして文化出版局発行の著作についてはレシピ掲載を取り止めることにした次第です。
■ ■ ■
ですが、今回の件により
「ホームページに他著作物のレシピを"引用"するのは全て"引用ではなく転載"であり、違法である」
とするのも早計かと思います。
幸いなことに、夫の友人で法律関係の職に就いている人がおり、その方から色々教えていただくことができました。
結論として、
「適正な引用であるかどうかについて、このホームページが"適正でない"とまでは断定できませんが"絶対大丈夫"という太鼓判を押せるだけの自信がないのもまた事実」
とのこと。インターネット上のこうした著作権の争いがまだ歴史の浅いものということもあり、結論は極めてグレーであるのが現状のようです。
また、その方から聞いた「相手側の弁護士となった場合に考えるであろう切り口」の見解は、非常に参考になります。
(意地悪な見方をすれば、ここがクリアできれば充分に争えるものとなる、と……)
レシピコーナーは「作ってみよう」という題になっているように、コメント部分が主(レシピの比較をする部分が主)であるというよりも、レシピの紹介が
主であると捉えられる可能性がある。また、HPの利用者にとっては、レシピ利用のメリットが大きい場合がありうる(利用者が十分なレシピを保有していて、比較のコメントを見るためにHPに来るというよりレシピ獲得の参考のためにコメントを利用していると判断される余地がある。)。
レシピコーナーでは、コメント部分よりレシピの分量が多いことがある。
レシピ単体で利用価値がある。
写真集や名言集のように、他の著作物の集積は、引用の範囲を超えていると他の裁判例でも判断されている(一定のコメントや感想が付記されていても)。
という感じです。
現状では、マンゴプリンページを継続していくにあたってのレシピページの存在は、裁判などをしてまで守るほどのものでもないと思っておりますので、各社から削除依頼などが来た場合には削除するしかないのだろうなと考えています。
色々なレシピを並行的に見て、「自分なりのナンバーワンレシピ」を見つけていただきたい、という私のささやかな希望は難しいものとなってきてしまいましたが、今後とも当サイトを宜しくお願い致します。