6/16(月) 2日目のフォーシーズンズ

06:00
昨夜クーラーをつけっぱなしにしていたせいか、夜中寒くて寒くてたまらなかった。聞きなれない鳥が「くるくる、けちゃけちゃ」と鳴いているのが気になって目を覚ますとまだ6時だ。クーラーをとめて、外に出て少し体を暖めて、また少し眠ると7時になっていた。
暑くなってきたので、 Kさんと二人で水着に着替えて部屋のプールで水浴びした。だんだん「ハネムーンに来たんだなぁ」という気分がしてくる。プールは結構深くて、爪先だちでやっと息が出来る位。プールから身を乗り出すと、砂浜と海が良く見えた。

08:30
朝御飯。ルームサービスで洋食のセットが運ばれて来た。
Kさん: タンジェリンジュース(要するにミカンジュース)
ポーチドエッグ・ソーセージ
由紀: パパイアジュース
ターンオーバーエッグ・ベーコン
と、ミルクティとデニッシュバスケットである。
デニッシュはクロワッサンが2つと、リンゴのペストリーとパイナップルのペストリー、マフィンが2つである。1人3つという量で、結局マフィンは食べられなかった。素朴な感じの木の器に盛られた塩と胡椒がたまらなくかわいらしい。しかも、こんなものまでバリ的な味がする。
結婚式までに頑張って伸ばし続けた髪が、いいかげん暑苦しくて仕方なかったので、私は何としても今日髪を切る!という使命感に燃えていた。どうやら3千円程度で髪を切ってもらえるらしく、コンシェルジェに電話して予約してみる。一番暑くて外に出るのがめんどくさいであろう2時頃で予約を入れようとしたが、どうやら予約がいっぱいらしく、3時ということになった。そういえば、美容院があるらしいスパは今改装中だと聞いたが、何処に行けばよいのだろう。

09:00
ベッドメイクの人達が3人でやってきた。やはりこんな広い部屋、一人で掃除しきれるものではないらしい。ちょっと私たちは邪魔みたいだったので、2人で海岸の方まで行ってみた。
カメラを持っていって、「おお、バリだ」などと言いながら何枚か写真を撮る。部屋から見えるビーチに降りてみると、白いパラソルの下に2人分ずつデッキチェアが点々と置かれていて、既に何組かのカップルがそこで寝そべっていた。その奥に屋根のある建物があり、どうやらここが“PJ'sレストラン"らしい。吹きぬけの屋内にテーブルがいくつか並んでいて、後でここに食べに来ようということになった。とりあえず海側の散策は終わりにして部屋に戻った。
ベッドの天蓋も綺麗にまとめられた部屋に戻り、今度はプールに行ってみようということになった。その前に東京から持って来た洗濯物を出すことにする。自分で洗っても良い下着類だったりしたが、こんな良いホテルに滞在しているのに、夜に自分のパンツを洗わなきゃいけないなんて、なんか惨めじゃないか。電話して、洗濯物を取りに来て貰う。

さて、今度はホテルのプールに行くことにした。水着にパレオをつけただけの格好でほてほてと歩いてプールへ。Kさんも、水着にTシャツの格好だ。
プールにも既に数組の先客がいてそれぞれのんべんだらりとしていた。どの客もペーパーバックを読んでいて、何だか不思議。泳いでいる人は皆無だった。あまりにも日差しが強かったので、一番隅の、木の影になるところのデッキチェアに行った。すぐさまホテルの人がバスタオルを持って来てくれる。
早速水に入ると、気温の割に水は冷たくて肩までつかるのに多少勇気がいる位だった。しかも深い。真ん中のあたりはどうやら2m近くありそうだ。海に向かって開けている側まで泳ぐと、10m下あたりにもう一つプールがあって、そこに水が滝のように落ちていっている。高台になっているここから海が素晴らしく良く見える。
水からあがると、他の客のテーブルにミネラルウォーターがあるのを見、自分達にもくれと言ってみた。すぐにミネラルウォーターの瓶2つとコップが2つ、冷たいおしぼりと水の入ったスプレーを持って来てくれた。少し泳いでは休み、泳いでは休みしているうちにお昼が近づいておなかもすいてきたので、一旦部屋に戻った。シャワーをあびてさっぱりしてから、海辺のレストランに向かう。……それにしても、暑い。

レストランで、ついつい屋根の無い、屋外の席についてしまった。ちょっと失敗かもしれない。暑くてたまらない。とりあえず、飲物として彼はパパイアとウォーターメロンのジュース、私はココナッツクーラーなる飲み物を注文。「バリに行ったらココナツを満喫する!」の野望に従い早速頼んでみるが、説明書きにあった「young coconut」という記述がちょっと気になる。どうやら果肉も入っているらしい。
やってきたのは、上を向いた魚が口を開けている、珍妙な青い器に入った飲物だった。とても大きい。ココナツの実に入ったりしている飲物かなぁと想像していたのに、大層な裏切られようである。中には透明な液体、氷と杏仁豆腐のような色つやの、ひらひらしたものが沢山入っていた。これがどうやら"果肉"らしい。透明なジュースは確かにココナツの香りはしたが、ココナツミルクのようなまったり感も無く、甘さもほとんどなかった。どちらかというと瓜系の青臭い感じだ。それでも南国的で結構美味しい。
Kさんのジュースはまさしくスイカの味がした。これも珍妙。

ドリンクと一緒にやって来たイタリア的パン(フォカッチャとか、四角くて固いのとか、棒状のとか)が大層美味しく、つまみながらしばし二人でずるずるとジュースをすすっていると、料理が運ばれて来た。ここはイタリアンレストランのようで、石釜で焼くピザが美味しいらしい。ピザの種類が豊富で、しかし具がタンドリーチキンであったりバナナチャツネであったり、とてもアジアな名前が並んでいる。私たちは北京ダックが乗っているピザを頼んだ。あとは、ハーブとオリーブソースのペンネ。ピザに乗っていた唐辛子がとても辛くてひーひー言わされたが、それでもピザとパスタは絶品だった。バリでいきなりイタ飯を食べることになろうとは、さすがに予想もしていなかった。とても満足。

12:30
部屋に帰って、あまりの暑さに再び水着となってプールに入る。冷たい水につかってはしゃいだ後、そのまま日光浴に突入。端末に旅行記を打ち込みながら30分程焼いてみたが、またもあまりの暑さにくらくらしてしまい、部屋に避難。キングベッドの上でだらだらと過ごす。
と、Kさんが「おゆきさん、おゆきさん」とやや緊張した面持ちで声をかけてくる。何かと思えば、ベッドの横の窓からお隣のヴィラが見え、プール脇のデッキチェアでお隣さんがいちゃいちゃしているというのだ。確かに窓からプールと、手前にデッキチェアが見える。丁度椅子がこちらを背にしている為あまり良く見えなかったが、白い足と白い足が絡み合っていた。おお、外人さんだ、しかも全裸だ!……としばし盛り上がった私たちだった。

14:50
髪を切る時間がせまってきたので、とりあえず何処に行ったら良いかわからないまま、バギーを呼んでみた。Kさんは、暇だからとホテル内のライブラリーに出かけていった。
数分でバギーはやってきたが、「ヘアサロンに行きたい」というのがわかってもらえなく、しばらく部屋の門の前でたどたどしく自分の状況について説明を試みなければならなかった。従業員も知らないヘアサロンとは一体どこにあるのだ〜……と半ば泣きたい気持ちでいると、反対方向からバギーがやってき、門の前で止まった。30代前半位の女性が大きなバッグをぶらさげて降りて来て、どうやら彼女は美容師のようである。ヘアケアサービスというのは、どうやらヴィラの中で行われるサービスだったらしい。来てもらったバギーのお兄さんに苦笑しながらあやまり、ヴィラの中に戻った。

おねえさんはニコニコしながら吹きぬけのリビングに来ると、「ここでやりましょうか」という感じでダイニングチェアを鏡の前に置き、「座ってちょうだい」と身振りで示した。日陰なのでそれほど暑さは感じないものの、風がけっこうあって、これで髪を切ることは出来るのかとちょっと不安になったが、このままの髪型でいるよりは遥かにましと、半ば覚悟をきめて椅子に腰掛けた。
ビニールのカバーを体にかけると、鏡の中の私は確かに美容院にいるような気分になってくる。でもここは波の音がして、鳥が鳴く、思いっきりの半屋外だ。身振り手振りもつけて、「アイ・ウォント・マイ・ヘアー・ボブ!」と一生懸命伝えると、おねえさんはわかってくれたらしい。ニコニコとうなづいてスプレーで髪を濡らしながらちょんちょんと切りはじめた。
切った髪は風にあおられてどんどん左の方に流れていく。"あらあら"という感じで私とおねえさんは顔を見合わせたが、カバーを持ち上げて髪を止めるようにしても隙間からどんどん飛んでいってしまう。10分ほどするとKさんが帰って来た。特にライブラリーの収穫は無かったようだ。いきなり吹き抜けのダイニングが屋外美容院と化していて驚いているようだ。

30分ほどして、無事に髪は整った。耳の下あたりで一直線になり、前髪もさっぱりした。かなり顔が幼くなり、Kさんに「別人だ別人だ」と言われる。う〜ん、アジアの若奥様って感じですか。わけわかんないけど。

夕飯まで暇になったので、先にKさんが行ったライブラリに二人で行くことにした。歩いて数分、他のヴィラに囲まれる場所にあったライブラリには先客が数組くつろいでお茶などを飲んでいる。どうやらここはチェックアウトした後にシャワーなどを使える休憩所ともなっているらしい。ガムランのCDを一つ借りて早々に退散、このまま歩いてロビーの側にあるショップに行ってみる。

ブティックと名のつくショップは確かにちょっと高級感があった。民芸品にしても綺麗なものばかりがおいてある。ココナッツの実で作ったサラダサーバーが大層好みなので買ってしまうことにした。Pさんへのお土産にするつもりのCDなども購入する。
夕食までの間、さきほど借りて来たCDをかけながらパソコン通信の接続を行ってみた。ジャカルタまで電話をかけ、そこからTYMNETなどを通じてNIFTYにアクセスする。何度かの試行錯誤で無事つなげることができた。バリから東京に届いているメールを読むというのは奇妙な気分だ。何人かからお披露目会の感想だとかお祝いメッセージだとかが届いていたので律義に返事を書いておいた。

そうこうしているうちに、来人が多くなってきた。ベッドメイク係がやってきたり、朝出したランドリーものが届いたり、ディナーのセッティングやらでばたばたする。ディナー時にプールに浮かべる花と蝋燭というのは一体何なのだろうと思っていたが、どうやら浮島のように盛られた花の真中に一本のキャンドルがついているもののようだ。プールの脇に置かれたそのオブジェとほとんど同じようなものがダイニングのテーブルの上にも置かれる。日が暮れると、だんだん暑くなくなってきた。昨日の夜に開けたシャンパンの残りを飲みながら、「ロマンティックディナー」のはじまり、である。前菜やらメインやら、その都度お皿をボーイさんが運んで来てくれる。ヴィラに運ぶのって、結構大変じゃなかろうか。バギーに乗せてくるにしろ、めんどくさいんじゃないかなぁと思う。

Kさん: タスマニア産自家製スモークサーモン
テンダロインビーフステーキ
由紀: トマトとモツァレラチーズのサラダ
ローズマリー風味チキンソテー
グリーンサラダ オリーブオイルドレッシング
アイスクリームケーキ
紅茶・コーヒー

という内容で、味はかなり美味しいものだった。バリでこんなもの食べることになるとは思ってもいなかったなぁ。
どれも、どことなくバリ的な感じのする味で香辛料と言うか果物の匂いというか独特の香りがする。印象深かったのが最後のアイスクリームケーキで、それまでの食事の量の多さでお腹一杯になりかけていたところにとどめを刺すようなものだった。
ボーイがにっこり笑いながら見せてくれた皿にはハート型に抜かれたメレンゲケーキが乗っていた。「ハートですよ〜」と言わんばかりにニコニこしたボーイは、そのハートを二つに切って皿に取り分けてくれたのだが、中身は全部アイスクリームになっていた。その周囲が分厚いメレンゲ。
これが共にすこぶる甘い。誰にあやまる事もないのだが、2人で「ごめんなさい〜」とか言いながらメレンゲを皿の隅においやる私たちだった。バリのデザートって、ちょっと凄いかもしれない。

食事が終わる頃は8時を過ぎたあたりだった。夜空には星がいっぱいで、そろそろ「ハネムーンに来たぞ」という実感がひしひしとわいてくる。星だ、星だぁと騒いだ後、シャワーを浴びて、今日もとっとと就寝した。

photo
部屋についてるプール之図