2001年夏 / そうだ、香港へ行こう

そうだ、香港に行こう

2001年7月。私たちはいよいよ香港の地を踏みしめる。
私もだんなも1996年に一度訪れてからやっと二度目の香港だ。彼は高校時代の友人と8月に、私もまた高校時代の友人と共にその年の年末年始に訪れてきてから早や5年。5年の間に私たちは結婚式を挙げ、子供も産まれ、更に香港は中国に返還されてしまった。私たちの状況も変わったけれど、香港の状況もえらく変わってしまったことだ。

去年の夏にも海外旅行のチャンスはあったけれど、当時まだ2歳だった息子を連れて行くには香港の気候はあまりに酷だということで、目的地はバリ島となった。同じく暑い地域であるけれど、目的が「食べ歩き」と「リゾートごろごろ」の違いは幼児には重要な問題だろう。そういうわけで、青い空の下でひたすらごろごろする旅を、昨年は選択したのだった。その昨年の旅行を期に、JALのマイレージカードにて着々とマイルを貯蓄し始めた私たち。クレジットカードもマイル変換のものに切り替えてガシガシ使いまくった結果、だんなも私も2万マイル溜まるに至った。これで香港行き無料航空券をゲット〜♪

出発は、だんなの夏休み取得可否期間を色々検討して7月に決定。足と宿を考えなければならない。そして、3歳児の息子のことも。
私たちの手間だの面倒だのということよりも、「ひたすら食べ歩く」のが目的の旅行(しかも香港の夏は外気の高温と屋内の冷房の温度差に耐えなければならない)は息子にとっては苦痛であろうと思われる。だんなの実家に4日ほど息子を預かって貰おう……と、当初は考えていた。
が、大学生の義妹に話したところ
「え、でもだって可哀想じゃない?どんなとこ行くにも、そりゃお父さんとお母さんが一緒が一番でしょー。」
と軽やかな返事が返ってきて、「そ、そういえばそうかもね」とあっさり"息子置いてきぼり"作戦は却下されるに至った。
真夏の香港。3歳児連れの香港。今度の香港はなかなか大変そうだった。

飛行機だ

JALのマイレージで無料航空券をもらうのだから、手間をかけなくなければJAL便で香港に行くのが一番手っ取り早いのではある。だがそこは
「香港の航空会社のキャセイパシフィックの方が、向こうで色々便利かも〜」
とキャセイ便で行くことの検討を始めてみた。前回使った時、機内サービスもなかなか良かったし、機内食も悪くなかったのだ。

調べていくうち、フライトスケジュールもキャセイがちょっとばかり有利なことがわかった。何しろ、1分でも長くあちらに滞在したいのだから、午前の一番早い便で飛び立ち、午後の一番遅い便で帰ってくるのが理想なのだ。
キャセイのもっとも早い便は成田10時発、香港13時35分着。JALは10時発の13時30分着。
帰りの便は、キャセイ香港16時5分発、成田21時25分着。対してJALは14時45分発の19時45分着。
帰りの1時間ちょっとの差は、なかなか重要であった。
「そのおかげで一食多く食べられるかもしれないじゃん!」
……喰うことしか考えていない我々なのであった。

ともあれ、フライトはキャセイに決定。無料航空券は私とだんな、2枚分しか取れないので、息子の分は正規割引運賃で座席をとることにした。3万円5千円前後というところだろうか。目処が立ったところで、フライト予約の前にホテルの予約を済ませることにした。

次に宿だ

「できるだけ安く行きましょう」
と当初、安めのホテルの検討をしていた私たち。

かの「半島酒店(The Peninsula)」の安価な姉妹ホテル「九龍酒店(Kowloon Hotel)」あたりはサービスも悪くなかったし地の利も良かった。ただ、部屋は思いっきり、狭い。
「7月初旬はまだ旅行シーズンでもないだろうから、安いプランがあるかもね」
と、目星をつけたホテルにE-Mailで料金の問い合わせなどをしてみる。どこのホテルも、「この日程で安いプラン、あるかーい?」と問い合わせると朝食つきだの何だのと、思った以上にディスカウントされた価格を出してきてくれる。

検討をしていた頃、思わぬホテルの思わぬサマープラン情報を入手することができた。
かの、"ザ・リージェント"「麗晶酒店(The Regent Hong Kong)」が「Summer Odyssey」プランなるものをこの夏出すというのだ。

  • スーペリアハーバービュー
  • 2人分アメリカンブレックファーストつき
  • 税(13%)サ別
という内容で、1室HK$2001。通常のこのホテルの価格を思うと破格な値段だった。しかも、子供用のエキストラベッドも無料で入れてくれるとのこと。
旅程は一気に「高級ホテル」にと崩れていくのであった。

4泊くらいしたいので、できれば九龍側に2泊、香港島側に2泊、という感じでいきたい。
香港島ではどうしましょうか、と思案すると、夫は「クマとアヒル……」と呟くのであった。5年前に私が泊まった「港麗酒店(Conrad International Hong Kong)」が、どうやらだんな、いたく気になるものらしい。
「だってだって、おゆきさんが行った時にはクリスマスバージョンのクマだったんでしょ?今度行ったらノーマルバージョンのクマがいるじゃないか!」
とホテルの機能だの設備だの立地だのとは全く関係ないところで彼は熱くなっているのだった。

だがしかし、確かにコンラッドは便利かもしれない。快適だった記憶もある。またもやE-Mailで問い合わせてみると
「いつもはHK$2850で提供している部屋を朝食つきでHK$1550でオッケーよーん」
という有り難いお返事が。
どうやら7月、案外と閑散期なのであるらしかった。あまり比較検討することなく、宿はこの2つに定まった。

が。

本格的に旅程を立て始めた私たちは、一つの難問に直面することとなる。
「ここに行くでしょー。あそこにも行くでしょー。そっちもあっちも行くでしょー。」
「……4泊5日で、一体何食食べることになるんだ?」
「足りないねー」
「……足りないなー」
「増やしちゃえー♪」
「……何を?」
「日程を♪」

普通、行く店を削るべきなのである。日程を増やしてどうするんだ。
「尋常じゃない……」
と言いつつ、それでも予約していたコンラッドホテル滞在を1日後ろにずらしてもらい、その空いた1日に「基督教青年會(YMCA of HK)」滞在を詰め込むことにした。YMCAだ。滞在費の安さは折り紙つき。スタンダードツインはHK$780、ファミリースイートでもHK$1200となっている。ついつい
「スイートなんて、滅多に泊まれないし」
とか言いつつスイートルームを予約してしまっているのであった。航空代が無料とはいえ、滞在費はなんだか凄いことになりそうだ。

そして備える

宿の予約もできた。フライト予約も完了した。あとは、着々と細かい準備。

今回の旅は「世界一美味しいマンゴプリンを食べてみたい」という目的もあったりするので、高級ホテルのダイニングもちょっとばかり行きたいところだ。行く時間はランチタイムが多いとはいえ(←さすがに子連れでディナータイムのホテルレストランに行く勇気はない……)、予約をしておくのが無難だろう。ここ最近は便利になってきたもので、あらかたのホテルがホームページを持っている。当然、E-mailも送れる。予約もできる。「○月○日のお昼○時に行くので、ひとつよろしく」なメールをしっかり各ホテルに送っておいた。返事を待って、予約完了。

インターネットで探してみたり、雑誌から気になるところを抜き出しておいてみたり、それでも直前にはバタバタと香港ものの書籍だのムックだの買い込んでしまった。心はもう、全面的に香港旅行まっしぐらだ。

今回参考にした本は
『お値打ち香港』 山下マヌー/著 メディアファクトリー 2001.03発行
『travel frontier』2001年5月号「香港食堂」 ダイヤモンド社 2001.05発行
が主なもの。テイクアウト専門のおべんと屋さんとか、何十年も蛋撻を作り続けているオヤジさんの店とか、行きたい店をたくさん見つけた。
胃薬も、当然持っていかねばならぬ。