9月20日(日) 屋久島上陸

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アーリーモーニングティーと朝御飯

昨夜はインフォーマルディナーの後、「夜食」もスルーで早々に寝てしまった私たち。
船の揺れとの一日で疲れたのもあり、酔い止め薬の副作用(酔い止め薬とは眠くなるものなのであるらしい)もあり、そんな中、ディナーにワイン1本を2人で空けて酔っぱらってしまったのもあり。
 
案の定、私の起床は5時過ぎとかなり早めで、息子の方も
「今日は屋久島なんだよね?なんか、楽しみで寝ていられなくなっちゃった」
と早々に起きてきた。船はいよいよ島に近づいてきたようでさほどの揺れもなく、2人で6時になるのを待って8Fのポートデッキを歩く「モーニングウォーク」に参加してきた。
 
クルーズ3日目の綺麗な朝日 8Fは客室の周りをぐるりとデッキが囲んでいて、1周336m。
 
「ウォーキング方向はこちら」とあちこちの壁に表示があり、反時計回りにウォーキングの方向は決められている。のんびり歩く人あり、ばっちり装備を固めて足早に歩く人あり、色々だ。私たちはカメラを構えつつ、のんびり1周。
 
同時刻から、オープンバーでは「アーリーモーニングティー」も供されている。紅茶やコーヒー、オレンジジュースなどを無料で飲むことができ、マフィンを食べることもできる。息子と2人で、抹茶マフィン1切れを半分こして、オレンジジュースをいただいてから部屋に戻った。戻るとだんなも起きたところ。
 
屋久島への入港は8時。出航は午後6時で、「最終帰船時刻」は午後5時半とのこと。
入港早々、屋久島に降りたいよねと、朝食は7時のオープンを待って早々に会場に向かった。今日は乗客皆同様の事を考えているようで、メインダイニングは昨日の朝に増しての大混雑。
 
今日も和食のセットメニューを頼んでいただんなの元にはなかなか料理がやって来ず、オムレツコーナーも長蛇の列。フルーツを取るのも大変、といった中、ちょこちょこと昨日と同じようなものを皿に盛りつけ、今日はしっかりめの量、いただいた。
 
食べたものは、ポテトとチーズ入りのオムレツ、サラダ、ウィンナーとキャベツの炒め物、じゃがいもと玉ねぎの肉じゃが風の煮物、ソーセージ、シナモンロール、テーブルロール、紅茶と飲むヨーグルトとリンゴジュース、といったところ。
 
小ぶりのシナモンロールはしっかり甘く濃厚な、アメリカンな味わい。
テーブルロールにはアプリコットジャムとバターをつけつついただいて、胡麻ドレッシングでいただいたサラダにはレタスと共にブロッコリーやポテトサラダを盛りつけた。

屋久島「白谷雲水峡」散策前半

白谷雲水峡は鬱蒼とした、コケシダ天国

クルーズ船での旅行の利便性の高さの1つが、寄港地での「オプショナルツアー」の充実ぶりらしい。
出航してからも申し込める、半日、一日を使ってのツアーが多数用意され、体への負担度も低いもの(バスで移動するだけ、ほとんど歩かない)から、がっつり体力を使うものまで色々とあった。
 
でも今回私たちは1つもそれに申し込まず、今日はレンタカーを借りて島を巡ることに。
予定通りの8時ちょうど、下船可能な旨のアナウンスが船内に流れ、私たちは早々に船を降りた。事前に申込んでおいたレンタカーは、船の目の前にまで持ってきてくれていたので、乗り込んで、方向確認して、まずは一路お弁当屋さん(これまた数日前から予約してあった)に向かう。首尾良く今日のお昼御飯を入手した後は、「もののけ姫の森」があることで知られる「白谷雲水峡」を目指した。
 
島内の道路はとてもわかりやすい。「主要な道路は3本しかありませんからね、迷いようがないです」と、手続きしてくれたレンタカー屋のおばちゃんが言っていたとおりに、島を1周する道路の他は「白谷雲水峡」に通じる道路、そして「ヤクスギランド」に通じる道路、これしかないという感じだ。
 
案内板もあちこちにあり、それに従って車を進めるとすぐに傾斜のある蛇行する山道に突入。港が見下ろせるあたりでは、遠く「ぱしびい」の姿もよく見えた。やっぱり大きな船だなぁという印象だ。
 
1車線しかない細い道路を登り登って数十分のところに「白谷雲水峡」の入り口があり、駐車場手前で係の人に「ここで車を止めて」と指示された。まだ朝8時半頃だというのに既に駐車場は満杯とのこと。事務所もまだやっておらず、「協力金」という名で支払う必要のある1人あたり300円は、帰りに払うことになった。これから先、トイレはほとんどないということで、駐車場脇の水洗トイレに寄った後、いざ森の中へ。
 
いざ、石畳の道をてくてく ここからは、本格的な「登山」に臨むこともできるし、1周1時間ほどの散策をして帰ってくることもできる。
 
色々なコースが用意され、でも一番の人気は「もののけ姫の森」と呼ばれる一帯を目指すコース(最短距離を歩けば往復2時間)らしい。
 
更にそこから斜面を登って山を見下ろすところまで行ける「太鼓岩」を往復するコースもあり、そちらも人気のようだけれど、それは往復4時間を要する、なかなかに険しい道のりとのこと。
 
「……で、どう歩くの?」
「んー……この、弥生杉って方のコース行って、そのまま原生林コース辿って白谷小屋まで行って、行けそうならその先の"もののけ姫の森"を目指して、下のルートで帰ってくる……って想定をしていたんだけど、どうかな。太鼓岩までは行かないってことで。これで大体4時間くらいみたい」
「うんそうだね、そんな感じで」
 
繁るシダの下は岩なのか木なのか判別つかない 入り口の地図を見てあれこれ話し合い、自分で提案した後で
 
「あれ?弥生杉って、私行こうと思ってたっけ?けっこう大変そうだからって、予定から外したんじゃなかったっけ?」
 
と思い返しても後の祭り。
 
「それじゃ行きましょう!」と最初の分かれ道で「弥生杉」の矢印方向に曲がり、曲がった途端に急な石段をひたすら登るルートになった。
 
「森歩き」と聞いていたのに(ガイドブックにもそう書いてあったのに)、実体は普通に「山歩き」。入り口のマップにも、各スポットに1から16の番号が振られていて、「6番から16番は登山道です。装備と体力にご注意下さい」と書いてあった。ほとんど全部登山道じゃないですかー……。普通に山登りじゃないですかー……。
 
家族全員トレッキングシューズを履いているし、足元が不安な私は(3月に左足首折って手術してるしね)登山用のストックも1本持ってきている。
更にお弁当や飲料水などの荷物はだんながほとんど全部持ってくれ、私は一眼レフカメラを首から下げて杖持っただけという「ぬるい装備」。
 
でもそこからの4時間はひたすらに大変だった。日頃の運動不足を嫌というほど思い知らされた。「登山」自体も、前回そんな体験をしたのは学生時代というくらいだったし。
 
それでも、鬱蒼としたコケ類シダ類に覆われた緑深き森は、どこもかしこも初めてみる世界で、「感動」の一言。時折出会う杉や栂(ツガ)、樅(モミ)、タブノキなどの巨木には圧倒されるばかりで、何度か渡った清流はどこまでも澄んで綺麗だった。「弥生杉歩道」「原生林歩道」というキツいルートを選んだせいか午前中は他に人と出会うことはほとんどなく、この2つの歩道を歩いたおかげでヤクシカに会うこともできた。
 
最初に出会った屋久杉の大木、「弥生杉」 実のところ、一番大変だったのは序盤の「弥生杉」(右の写真が弥生杉)までのルートで、ほとんど平らになることがなく、ひたすらひたすらに石造りの坂を登り、階段を登り続けて40分、という感じ。
 
最初のうちは、それでも少し余裕があってカメラを構える頻度も高かったけれど、1時間後、2時間後となるにつれて撮影した写真の枚数が減る一方だったのが、我ながら情けない。
 
「弥生杉」は、白谷雲水峡地区で最大の屋久杉。比較的標高が低いところいあるのだそうで、照葉樹林から針葉樹との混交林への移行帯にあたるとのこと。周囲はさほど苔蒸しておらず、森の中に突如巨木が現れるという状況だった。
 
「弥生杉」を過ぎてからは一転下り坂になり、時折上りに転じながらもてくてく歩くと、多くの人がいる賑やかな「さつき吊橋」に到着した。ここが「原生林コース」「太鼓岩往復コース」の分岐になり、私たちは橋を渡らずに直進して「原生林コース」を目指す。
 
もっとキノコも生えているかと思っていたけれど、そうでもなく 弥生杉のあたりもかなり鬱蒼としてはいたけれど、原生林コースは更に緑が深くなり、苔蒸してきた感じがする。
 
こういう森ならキノコもさぞたくさん、と思っていたのだけれど(私はキノコのフォルムも好き……クラゲになんとなく似てるし)、いわゆるキノコ型のキノコというのはほとんど見ることができず、多くは写真のようなヒラタケ・マイタケのような感じのもの。
「フォトジェニックなキノコ発見!」
と言っては、キノコ写真も撮りまくっていた私だった。
 
目指す「白谷小屋」までは、4回ほどの小川を渡る。
橋などはなく、大きな石を踏んで川を渡る。不安定な場所も多かった。
 
道はあるようでないようで、木の根っこを踏みしめ、石を渡り、目指すルートは10mおきほどに木々に小さく結びつけられたピンクのリボンだけが教えてくれるという状況に。
 
これは「三本足杉」 何本もの木が絡まりあっているようにも見える、これまた巨大な「二代大杉」の次には「三本足杉」にたどり着くことができた。
 
「三本足杉」は、その名の通り、根が3本の足のように見える屋久杉。「倒木更新の典型的な例」なのだそうで、親木が枯死し倒れた上に親木をまたぐように次世代の木が成長した姿なのだとか。空洞になっている下の部分は普通に人がくぐれるくらいの巨大さだ。
 
森の中に牝鹿が1頭 そして道中出会ったヤクシカたち。
 
弥生杉の近くでは、小さな子鹿を連れた母鹿を見ることができた(残念ながら素早く移動してしまって鮮明な写真は撮れず)。
 
左の写真は、原生林コースで出会った、若い牝鹿という感じ。「人を見たら逃げる」という風でもなく、飄飄と苔蒸した森を歩いていた。
 
驚くほど近くまで来てくれた牡鹿 右は、清流を渡る時にすぐ近くまで来ていた牡鹿。
 
苔ではなく、落ちた茶色い葉をひたすらにまりまりと食べ、ゆっくり去っていった。
 
足場の悪い川の上の石に立って撮影していたのだけれど、驚くほど近くにやってきてくれて(ほとんどズームしていないのにファインダーいっぱいに鹿の体が、というくらい)、動くに動けず固まっていた私。
 
ヤクシカはニホンジカの亜種の1つで、本土のニホンジカよりも小さく、体重せいぜい30kg位までしか成長しないらしい。
 
威風堂々、という感じの「奉行杉」 そして、「やっと」という感じで到着した「奉行杉」。原生林歩道も6割方歩いたというところ。
 
「江戸時代に見回りにきたお奉行様がこの杉のあたりで休憩をとったことから名づけられた」のだそう。樹幹には試し切りの跡があるとか。
 
こうした屋久杉の下には、たいていベンチが作られているので、こうしたところで休憩を取りつつ、水を飲んでは歩いていく。
 
リョウブの木。これは幹なのか、根なのか?? 奉行杉を越えて少し歩いたところには、右の写真のような不思議な造形の樹も。
 
これは杉ではなく「リョウブ」らしい。
 
全体が苔の緑で覆われていて、どこからが幹なのか根なのか新しい木なのか判然としない、こういった木が森には無造作に、立て札もなく存在していた。
 
このあたりは湿地、どこもかしこも苔、苔、苔 森はいよいよ鬱蒼としてきて、後半は湿地のようなぬかるみ道も。
 
最後の清流を渡る頃には、木も石も苔に覆われて視界は緑一色。
綺麗な流水を見て、我慢できずに汗みどろの顔を洗って手も洗って、「水が冷たーい!」「気持ちいい!」と昼食前の最後の休憩を取った。
 
高低差はたかだか200mちょっとのはずなのに、もう足はガクガク。訪れる人の絶えない「くぐり杉」まで無事に到達して、すぐ先の白谷小屋には11時20分頃に到着した。
このあたりまで来ると人が多く、太鼓岩を目指す人、「もののけ姫の森」まで行く人、そこから帰る人で、多くはないベンチもいっぱい。

「島むすび」のお弁当

「白谷小屋」は、思っていた以上に、なんにもない小屋だった。
トイレは男女共用で汲み取り式のが2つ(男性用の小用便器が別にもう1つ)。電気もつかず、あとは谷川の水を引いた水場があるだけ。
小屋の前には大テーブルが1つと、四方を囲むように4人がけのベンチ。
 
少し離れたところには「携帯トイレブース」というのもあった。ここに限らず、訪れる人の多い山が抱える大きな問題の一つが「トイレ」だと聞くけれど、確かにこれは大変だ。昼食摂ってその後無事に用足しもできたけれど、こういうところに来るときは携帯トイレの1つ2つは持参した方が良いのだな。
 
お昼御飯は、港近くの「島むすび」の登山弁当600円也を、1人1つ。
 
前日の夜9時までに予約しておけば、登山用の朝食用の弁当、昼食用の弁当を作ってもらえる。本格的な「登山」となる「縄文杉」への道のりは早朝に出発するのが定石なので、朝御飯も持参する必要があるのだそうだ。「島むすび」の他にも島内には何軒か同様のお弁当屋さんがあり、宿泊した宿に頼んで作ってもらえることもあるらしい。
 
「島むすび」の登山弁当。一見何の変哲もないお弁当だけれど、これがもう美味しくて 2段重ねになった昼食用の弁当は、下段がおにぎりで上段がおかず。
 
ちょっと小ぶりなおにぎり3種は、海苔を巻いたシンプルな塩むすび、梅干し乗せ、わかめまぶし。
 
おかずは良い感じに甘じょっぱい根菜とこんにゃく、厚揚げの煮物、きんぴらごぼう、鶏の唐揚げ、鶏の野菜巻きのカツ、野菜入りのさつまあげ、鯖の塩焼き、甘く優しい味のカニカマ入りの玉子焼き、などなど。
 
どれも素朴な味付けの、一見なんてことのないお弁当のようだったけれど、疲れもあってか染み渡るほどに美味しかった。
「玉子焼き!甘い!幸せ〜」
「このカツがまた……!」
などと言いつつ、私やだんなと比べて若干好き嫌いがある息子も残さず完食。各自1リットル分持ってきた麦茶や水も、ここでほぼ空になった。
 
食後少しばかり休憩して、水場で空のペットボトルに沢の水を詰めなおし、いざ帰路に。
 

屋久島「白谷雲水峡」散策後半

もっともっと奥に進めば「もののけ姫の森」だと言うけれど 昼食後、更に足を伸ばして「もののけ姫の森」まで?と思っていたものの、私の疲労はちょっと限界。
 
「息子と2人で行ってきていいよ?私、このへんで待ってるし」
と提案したけれど、彼らの疲労もそれなりだったようで、「いや……いいや」と。
 
せめてもと、急な道になる手前くらいまで、小屋から100mほど奥に歩いてから戻ることにした。
少し進んで、急な石段がひたすら続くのが見えたあたりで最後の写真を撮って折り返す。
 
負け惜しみではないけれど、「もののけ姫の森」という看板があるか無いかというだけの違いじゃないかという印象で、原生林歩道の後半からこのあたり一帯は、もうひたすらに苔蒸した風景が広がっていた。実のところ、あのアニメ映画そのものがさほど好きなものではなく(絵や話はともかく声優がね……もう聞いていられない……)一度しか見ていないから、「何がなんでも見たい」という執着も無かった。
 
まだまだ緑一色の風景が続きます 帰り道は、比較的安定した道のりの「楠川歩道」を歩いて。
 
江戸時代に花崗岩でつくられた歩道なのだそうで、原生林歩道よりも圧倒的に歩きやすく、でも見所となる屋久杉は特にない淡々とした道のり。
 
途中で休憩も挟みつつ、昼食後歩き始めてから45分ほどで、行きに素通りした「さつき吊橋」にまで戻ってきた。「さつき吊橋」から入り口の管理棟までの道のりは、白谷雲水峡唯一の「非登山道」。「飛流おとし」という美しい滝を横に見ながらの道は板張り、石畳で歩きやすく、巨大な花崗岩の一枚岩「憩いの大岩」を越えると、入り口の管理棟まであと少し。
 
でももう、足がガクガクだー。
 
さつき吊橋。これを渡ったら散策もそろそろおしまい。 今回驚いたのは、息子のタフっぷり。
 
私が足を滑らせないように慎重に足を進める前を、小猿のように軽快に跳ねるように歩いていく。
 
「降りる時にジャンプしない!枯れ葉や石は滑るんだから、もっと慎重に足を動かしなさい!」
などと言っても、「わかったー!大丈夫ー!」とか答えながら、転ぶこともなくすいすい進んでいく彼に、若さの素晴らしさを思い知らされた。
 
それでも、数年前まではすぐに「疲れたよー」などと言うようなヘタレたところがあったはずなのに、今日は「まだまだいけるよ、大丈夫だよ?」と、最初から最後までケロリとした顔で山歩きを楽しんでいた。本当に若いって素晴らしい。羨ましい。
 
家族全員無事に下山し、麓の車に戻ったのは1時を過ぎようというところ。気温は23度ほどとそう高くはないものの、飲んだ1リットル以上の水は全部汗で流れてしまった風で、私を含めて家族皆汗みどろになっていた。「1ヶ月に35日雨が降る」とまで言われている雨の多い屋久島だけれど(もちろん雨具も持ってきた)、幸い今日は雨に濡れることもなく、むしろ「少し雲が出ても良いのに」と思うほどの終日晴天。雨に濡れて体力が消耗することがなかったのも幸いなのだった。

「縄文の宿 まんてん」の立ち寄り温泉

海の色の素晴らしさに思わず寄り道 帰船時刻までは、あと4時間ほど。
 
ちょっと(いや、けっこう?)無理すれば、車で行けるという「紀元杉」(樹齢3000年、屋久島で最も手軽に観察できる屋久杉の巨樹)に行けなくもないかなと思われたのだけれど、もし間に合わなかったら……と、後はのんびりすることに。もとより、もう全然歩けない。
 
「空港の近くに、立ち寄り湯のできる天然温泉があるよ」
空港なら港から15分くらいの距離だし良くない?と、空港方面に車を走らせ、「縄文の宿まんてん」で汗を流すことにした。汗みどろになるのは想定の範囲内だったので、着替えもちゃんと車に積んできている。
 
島を一周する道路は海沿いを走っているので、窓から左を見れば、それは綺麗な色の海がよく見える。ちょっと寄り道しようよ、と、途中に公園があったので車を止め、波打ち際まで行ってみた。
 
波はやや高く、このあたりは岩場でもあったので海水浴という雰囲気ではなかったものの、エメラルドグリーンの海はひたすらに綺麗。屋久島と言えば屋久杉であり森歩きであり、という感じになってしまうけれど、何泊かして海遊びや川遊びをするのも楽しいだろうな。
 
「縄文の宿まんてん」は道沿いの非常にわかりやすいところにあり、連休中といえど、半端な時間とあってか館内はガラガラ。入館料にはタオルレンタルも含まれていて、広々とした浴室には内風呂、露天風呂、ひのき風呂、壺風呂などがあった。ドライサウナ、ミストサウナもあり、畳敷きの休憩室も。アメニティもたっぷりで、メイク落としや化粧水、乳液などまで揃っている。浴室入り口には体洗い用のタオルとその回収籠まで用意されていた。
 
足が痺れるほどに疲れていたので、湯の中でマッサージなどしながらのんびり入浴。
「もうジーンズ履きたくない……トレッキングシューズも履きたくない……」
短パンとサンダルになりたい……と思いながら、隣接するこの宿のコンビニ「まんてんマート」でジュースなど買って飲みつつしばし休憩。お土産にもなりそうなタンカンのジュースなども売られていたけれど、これから多分お土産物屋さんを覗いたりするだろうしなと、目についた常温保存可能な「スモーク鯖」なるものを1パック購入してみた。

「縄文の宿まんてん」にて一休み
入館料(大人)
入館料(小学生)
スモーク鯖
2×\1500
\1050
\420

「まんてん」の向かいには、屋久杉の工芸品の専門店「杉の舎」があった。
 
屋久杉のお箸なんかもあるらしいよ?と覗きに行って、実に立派な屋久杉のテーブルやお盆などの見事さ(と、その値段)にびっくりしつつ、お手頃価格のお箸やスプーンなどのコーナーをじっくり眺める。自宅用にバターナイフと、少しゆがんだ形が味わい深い、とり箸をお土産に購入してみた。店内には杉の木の良い香りが染みついていて、深呼吸するだけで元気になりそうな感じがする。

「杉の舎」にてお買い物
屋久杉のバターナイフ
屋久杉の箸
\735
\1050

最後の最後に飛魚丼!

気になるお土産物屋さんなどは、空港から更に港を背にして進んだ「安房」の方にあるのだけれど、のんびり温泉に浸かっているうちにもう2時を過ぎている。
あまり遠くに足を伸ばさずに港に向かう方が良いよねと、港方面に戻ることにした。船が停泊する桟橋を通り過ぎて少し行くと、「屋久島観光センターおみやげ市場」なるものがあるらしい。ここでお土産買えるかな?と行ってみることにした。ついでに……喉が乾いた。小腹も空いた。
 
もしあればソフトクリームとか、簡単なお菓子っぽいものとか食べたいなと思っていたところ、このおみやげ市場の2階に「レストイン屋久島」という軽食レストランが。メニューを見に行くと、「浜うどん」とか「飛魚ラーメン」とか「かめのて(!)ラーメン」などの文字が。他にも「飛魚の唐揚げ」とか「屋久鯖の塩焼き」とか「屋久島とろろ」とか「かめのて」とか、その他定食類が色々あった。ジュースやお酒、アイスクリームなども。
 
で、メニューを見ていたらついムラムラしてきてしまって(てか、お腹空いてたの……ほんとに……)、「飛魚丼」を注文。
だんなは屋久島揚げ・ワカメ・ナルト・さばぶしなどがトッピングされた「浜うどん」を、息子はソフトクリームを注文した。
 
トビウオが山盛りの飛魚丼 唐揚げとか、焼いたのとかがトッピングされた飛魚丼なのかしらと想像していたのだけれど、やってきたのはお刺身がたっぷり乗った丼だった。
 
御飯には溶き卵とだし醤油を合わせたものがかけられ、ざっくり混ざっている感じ。トビコとトロロが添えられ、ぐるりとたっぷりトビウオの刺身が盛られている。
 
甘めの麦味噌を使ったワカメの味噌汁は、「そうそう、九州のお味噌ってこんな味だった」と思い出した、宮崎で飲んだ味噌汁の味と似た感じ。添えられた沢庵には、さばぶしを削ったものが和えられていた。
 
疲れた体にほんのり甘めなだし醤油の味の丼と、これまた甘さを感じる味噌汁の存在はこのうえなく嬉しくて、ちょっとのんびりめに休憩を取ってしまった。うかうかしていて、もう4時になろうとしているところ。
 
1階のお土産物屋さんに降りると、閑散としていた先ほどと異なりたいそうな混雑で、見ると表に観光バス。バスのドアあたりに「ぱしふぃっくびいなす一日観光云々」の案内板がついていて、あら船のオプショナルツアーの人たちと合流しちゃったわということになってしまった。
 
じっくり見たいところだったけれど、けっこうな混雑でもあり、「そんなお土産買ってもなぁ」という"いやげ物"的なもの(屋久島のロゴつきの鈴とか、砂絵とか、いかにもな感じの……)も多々あり、目についたパッションフルーツとタンカンの缶ジュース、ごまさばぶしを我が家用のお土産にぱぱっと買ってお店を後にした。翌日の奄美大島で今日以上にお買い物できなかったことを後になって振り返ると、ここで友人たちへのお土産に缶ジュースとか買い込んでおけば良かった……と反省。
 
なんでも「ごまさばぶし」("なまりぶし"の鯖版という感じのもの)は、400年の伝統を誇る屋久島の特産品なのだそうだ。スライスして醤油を添え、島らっきょうと共にいただいたりすると美味しいとか。マヨネーズにも合うらしい。
 
スーパーに寄って果物や調味料なども買えば良かったなと後になってみると思うのだけれど、この時はとにかく呆然としてしまうほどの疲労で、とにかく帰ろう船に帰ろう、と、ヨタヨタと車を桟橋に向けたのだった。午後4時過ぎの、早めの帰船。

「おみやげ市場」にて休憩&お土産購入
飛魚丼
たんかんジュース
パッションフルーツジュース
ごまさばぶし
\?
\158
\158
\630

夕食はしゃぶしゃぶ

数年前、息子が箱根の温泉テーマパークで遊びに遊んで(主にウォータースライダーで)、遊び疲れすぎて熱を出したことがあった。
今日の私もなんだかそんな感じで、帰船してからどうも微熱が出ている感じ。頭が重いしフラフラするし、体はぐにゃぐにゃして力が今ひとつ入らない。
 
「でも夕飯食べるよ……てか、ビール飲みたいよ……」
と、夕飯の時間までベッドに倒れ伏し続け、「這々の体」という感じでダイニングに向かった。
 
今日は和食のコース料理。献立表を見た息子は「僕の好きそうなものが無い……」と釈然としない顔をしていたけれど(フランス料理だったらたいてい何でも食べられるというのもどうかと思うのだけど)、それでも果敢にほとんど全ての料理を平らげていた。豆乳しゃぶしゃぶはかなり好みな味だったよう。
 
私は、茗荷が和えられた秋刀魚のたたきが実に実に幸せで、思わずビールをお代わりしてしまいつつ、御飯と吸物が来る頃にはすっかり満腹になっていた。ちゃんと揚げたてのがやって来た、きびなごの天麩羅も嬉しかった。
 
「年を取ると疲れは翌日あるいは翌々日に出る」というどころではない、当日その日のこの足の強烈なだるさ。
筋肉痛軽減用のタブレットを飲んだものの、これは明日以降大変なことになってしまうぞと確信できる状況だ。……明日、奄美大島でマウンテンバイクに乗る予定なのだけれど、どうなっちゃうのかしら。
 
だんなと息子が「夜食にも行こう!」と盛り上がっているのを遠く聞きながら、私一人、部屋に戻ると同時に早々に就寝。
今日の夜は7Fのラウンジで「徳原大和 奄美島唄コンサート」なるものが開催されていたようだけれど(で、聞きたいなーとは思っていたのだけれど)全然行ける状態じゃなかったのが残念だった。
 
ちなみに船は、「寄港地に着いたから、乗客の皆さんは船から降りてね♪」ということはなく、船に留まることも可能だし、その場合はちゃんとお昼御飯を食べることもできる。船の近くで午前中観光して、一度船に戻って昼食を摂り、再び散策というのも可能なのだ。「海外旅行はしたいけど、でも海外の食事って、ほんと口に合わなくて……」というような人なら、「船に帰れば馴染みの味が食べられる」というのは大きな助けになるのかもしれない。
 
今日は本当に疲れた。けれど、屋久島はとってもとっても楽しかったし、あそこまで頑張って歩いた事を後悔はしていない。ちゃんと体力つけて、次回の機会にはせめて「太鼓岩」くらいまでは行ってみたいなと思う。「縄文杉」は到底無理だとしても。

「ぱしふぃっくびいなす」本日の夕御飯
つぶ貝となめ茸の山葵和え
秋刀魚のたたき造り
南瓜と蕪の吉野仕立て
豚肉と生若布の豆乳しゃぶしゃぶ
きびなごの天麩羅
吸物(菊花・柚子・三つ葉)
香の物(白しば漬・野沢菜漬)
御飯
水菓子(梨・無花果)
生ビール 2×\400