12月7日(木) 心に響きました「元祖長浜屋」

ルームサービス、優雅な朝食

朝8時、福岡最終日。
だんなは最終日の仕事に向け、ホテルを出ていった。私も最終日、どこへ行って遊ぼうか。
ホテルをチェックアウトしたらだんなの仕事が終わる夕方までずっと息子と2人で外にいないといけない。早くから動いてしまっては息子も疲れてしまうだろうし、チェックアウトタイムぎりぎりまで部屋でのんびりすることにした。

しばらく寝ていると思った息子は午前9時起床。起きるなり腹がすいたと騒ぎはじめた。しかしこの近隣で朝御飯を簡単に喰えそうなところに心当たりがない。マクドナルドはあるけど……何も福岡まで来てマクドナルドに行かなくても、と思う。結局ルームサービスを頼んでパンとジュースだけの簡単朝御飯にすることにしてしまった。ジュース600円パン300円。お安くはない。お安くはないけど、寝間着着たまんまで部屋から一歩も出ることなく朝御飯が食べられるならそれもまた悪くない。

さて、ワゴンにかかるリネンもピカピカな、頼んだ内容に比して豪華な食事がやってきた。糊のピシッと効いたナプキンがこれでもかと使われている。温かいパンは冷めないようにナプキンでくるまれ、ジュースは氷入りの銀色の器に入って冷たいままでいるようになっている。一輪挿しつきのジャムトレーにはストロベリーとマーマレードとブルーベリージャム。カーネーションが美しく飾られていた。ヨーグルトには砂糖と小さな容器入り蜂蜜まで添えられて、何だか煌びやかだ。うっとりしながら息子と一緒にまだ温かいトーストに囓りつく。

シナモンシュガーがたっぷりショリショリと層になったシナモントーストは薄めの厚さでパリパリに焼かれている。ほろほろ崩れるクロワッサンも良い感じ。ではこれから1時間ほど再び部屋でのんびり過ごして、それから今日は「福岡タワー」に行ってみることにしよう。キャナルシティももう一度行きたいし。

ホテル日航福岡ルームサービスの
クロワッサン・シナモントースト
ヨーグルト
フレッシュグレープフルーツジュース
\300×2
\500
\600

海を見ながらランチバイキング

午前10時半、ホテルをチェックアウト。
だんなの分の手荷物も運ばなければいけないので、ベルデスクを呼んで下まで荷物を運んで貰う。荷物を運んでくれたスタッフとちょっとおしゃべり。スーツ姿で帰ってくる夫が着替える場所はあるだろうか、と言うと館内の更衣室をお使いください、との事。
「いや……スーツ姿で福岡ラーメン食べに行くのもなぁ、と思いまして。」
「福岡ラーメンでございますか。もう何軒か召し上がりましたか?」
「"秀ちゃんラーメン"に行ったんですが、あそこは美味しかったですね。あとはホテルの近くの"龍龍軒"とか。」

ホテルに勤務する人たち、やはりお客から「美味しいラーメン屋はどこ?」と聞かれるのだそうである。
「どこのラーメンが美味しいですか?」
とこちらから聞いてみると、ホテル脇に支店がある「一蘭」(←だんなは"大っっっっっっ嫌い"、だそうだ)と天神の「一風堂」(←だんなは"印象が薄い"、だそうだ)をお勧めしているとのこと。だんなに言わせると、
「だってあそこお店綺麗だもん。まさか"秀ちゃん"をホテルとして案内するわけにはいかんでしょ」
だそうである。なるほど。確かに饐えた匂いのラーメン屋とか案内するわけにいかないよねぇ。

会計を済ませ、大きな荷物を預かって貰って博多駅前バスセンターへ。都市高速経由で早良区のホークスタウン方面へ向かう。30分ほどバスに揺られると福岡タワー真正面の終点に到着。時間は午前11時10分。もうすぐお昼時だ。

子連れでもあるし、混雑する時間を回避しようと福岡タワー観覧の前に昼食を取ることにする。海側に向かって歩いていくと、砂浜が見えてきた。その向こうに小さな島のようなショッピングモール然としたものが。看板を見ると「マリゾン」と書いてある。どことなーくなんとなーくさびれた印象の一角だったけどたまたま「ランチバイキング」という文字を見つけたのでその店に入ってみることにした。バイキング料理となると2歳児は大概無料なのである。スパゲティやフルーツをがつがつ喰うであろう(下手をすると少食のおねぇえちゃんよりも大量に喰うであろう)息子の事を考えるとその方が安上がりだ。

「エル・エラソン」なる海がよく見える2階のレストランはまだ客が1人もいなかった。食べられる人を待つバイキング料理が全て手つかずのまま並んでいる。ちょっとばかり恐縮しながら窓際の席につき、息子と一緒に食べまくる。

料理は20種類ほど。醤油風味のたれつきのステーキや茄子のトマト焼き、鶏肉のオーブン焼きやクリームコロッケなどが並ぶ。主食らしきものは油分が少なくてちょっとパサついているベーコン入りの炒めスパゲッティとカレーライス、チャーハン、シンプルなハムや野菜のサンドイッチなど。サラダ類とフルーツ、オレンジジュースにアイス烏龍茶にホットコーヒー。充実してるのかしてないのか良くわからない品揃えなのであった。

味は……まぁまぁ。特別美味しくもないし不味くもない。二度と食べたくないほどの不味いものは1つもないけど、「これはいくらでも食べられる」と思えるものも1つもない。でも良く見ると骨付き羊肉の前菜風のものだとか殻つき牡蠣のオーブン焼きなんてものがあるものだから、私は主にそればかりを食べまくるというイヤらしい戦法に出たのであった。12個ほど並んでいた牡蠣がみるみるうちに無くなっていく。ほどなくやってきた2組目の客、おばちゃんの2人組も狙ったように牡蠣ばっか食べるので、わずか2組の客で牡蠣ワンプレートが無くなってしまったのであった。
なんか悪いことしちゃったかなー、と思いながらこそこそと退場。

早良区「エル・エラソン」にて
ランチバイキング
\1200

食事をした「マリゾン」1階、面白いソフトクリーム屋さんがあった。混ぜ込むフルーツを自分で3種類選んで作って貰うという趣向の店だ。

ベースとなるものは阿蘇の低脂肪バニラアイスかフローズンヨーグルト。それにパイナップルだのベリーだのマンゴーだのイチゴだのバナナだのオレンジだの、あるいはチョコやくるみ、カシューナッツなど10種類ほどの具から好みの3種類を選んで伝えるのだ。横のマシーンで何やらうねうねとやった後、綺麗に攪拌されたそれがソフトクリーム状になって出てくるのだ。お、面白い……。

ガラスケースにへばりついて具を考える。マンゴーとバナナも美味しいだろう。パイナップルも良さそうだけど、それならバニラアイスよりもフローズンヨーグルトのほうがきっと美味しい。イチゴとバナナとマンゴーなんて組み合わせにしたらちょっと想像できない味になりそうだし……と、無難なところでイチゴとバナナにくるみを加えたものにした。

美しいピンク色のソフトクリームを舐め舐め福岡タワー方面にぽてぽて歩く。確かにイチゴとバナナの味がはっきり漂うソフトクリームだ。中に細かく入っている粒々したものがくるみであるようだ。きっとナッツ2種類とチョコレート混ぜて、なんてやっても美味しいんだろうなぁ。面白 かったのでちょっとご機嫌な私。

早良区「ブルーレベル」にて
ソフトクリーム
\300

タワーにのぼり、ガスを見る

福岡タワー全景 12時過ぎ、いよいよ「福岡タワー」に上ってみる。入場料は\800だ。ハーフミラーで外壁を囲まれた三角形のタワーはかなりな迫力。ピカピカと光る塔……というより細いビル、という感じのものがシャキーンと立っている。全長は234m、展望台は123mの高さであるらしい。

「綺麗だねー」と入り口に向かうと、そちらの方向からバタバタと5人ほどの子供達が駆けてくる。どうみてもこちらを目指している。「すみませぇぇん!」と声をかけられた。
「私たち、○○小学校の6年生です。」
「社会科見学でアンケート集めています。」
「質問に答えてくれますか?」
一気に話しかけてきた。サラウンドだ。

「福岡タワーのどこが好きですか?」
……そう言われても、今初めて見たからねぇ。
「……うーん、東京から来て、今日初めて見たんだよ。それでもいいの?」
と訊くと、
「では第一印象を!」
と来た。や、やるわね。
「うーん、東京タワーは赤くて綺麗だけど、福岡タワーはキラキラと青く光っていてそれがとても素敵ですね。とても洒落ていると思います。」
と答えておいた。どんなレポートになるのだろう。
で、入り口を通過するまで他に2組のグループに同じように取り囲まれた。客が少ないから、私と息子は貴重なアンケートターゲットであるらしかった。とほほほほ。

中央が空洞になっているタワー、巨大なサンタクロースが上からぶら下げられていた。エレベーターで上ると、途中でサンタの背中を見下ろせるようになっている。カフェラウンジも高層にある展望台、さすがに見晴らしが良い。山から海から見渡せる。天神方向も確認できた。見事に晴れている今日、展望台はまるで温室のように暑くなってきた。
展望台は5F、4Fは喫茶店で3Fもまた展望台。下りのエレベーターは地上116mの3Fから出る。
この3F展望台のエレベーターホールには人の背丈ほどの巨大な方位盤がある。なんでも中心に立って愛する人の街に向かって祈りを捧げると恋が成就するという話があるようで、ホールには新聞の切り抜きらしきものが飾ってあった。

福岡タワーからの眺望

時間はまだ1時前だ。まだ天神方面に戻るのは早いだろう。
福岡タワーのすぐそばに、「西部ガスミュージアム」なるスポットがあるらしい。入館無料で、中には触って遊べるものが色々あるのだという。子供にはぴったりだ。眠そうな息子をあやしつつこれに入ってみることにする。

「ただいまショーが始まったところです。どうぞどうぞどうぞ。」
と入るなり暗いホールに通された。真っ暗な通路が壁に沿って傾斜しており、広い空洞になっている。壁や底の床がどでかい音量の音楽に合わせてビカビカ光る。良くわからんが「炎へのオマージュ」という芸術作品なのであるらしい。1日6回上演しているものなのだそうだ。10分ほどのそれ、終わってみると見ている客は私たちだけだった。息子はその音と光にびっくりしたのかハニワ顔になっている。

ハニワ顔の息子を連れて館内を歩く。館内はなんだか日本語より韓国語が目立つような感じだ。トイレの入り口に巨大なハングル文字の案内があったり、どうやらここは韓国人旅行客のツアーポイントであるらしかった。今は他の客、ほとんどいない。1組の母子の客とすれ違っただけだった。

東京でいう「ガスの博物館」と「科学技術館」を合わせたような展示場だ。ほとんどが自分でスイッチを入れたり動かしたりして確かめられるもので、ガスに関するもの以外も多く展示されている。芸術的なものも多く、見ていて私も飽きない。「リサージュ図形発生器」なるもので紙に幾何学模様を描いてみたりし、実ははまっているのは息子より私だったりなんかして。

いやいや、思いの外、良いものを見せてもらった。丁度2時になろうとしている。そろそろ天神方面に戻っても良さそうだ。

散策、キャナルシティ

天神でバスを乗り換え、2度目のキャナルシティにやってきた。
今日もキャナルからはシパーンシパーンと噴水が立ち上っている。ミュージアムグッズのショップがあるらしいのでこれをちらりと覗き、本屋を覗き、雑貨屋を覗く。
広場ではベルギーから来たという大道芸人が足を首に引っかけたりの芸を披露している。息子が面白がって立ち止まるので、床にぺたりと腰を下ろしてしばらく鑑賞。最後には綱渡りをしつつ炎のついた棒でお手玉をする大技を繰り広げていた。

キャナルシティの噴水

再びお店巡りをする。目の前にはセガ経営のアミューズメントパーク・ジョイポリスから"ソニック"のぬいぐるみがやってきて周囲に愛想を振りまいている。息子、ためらわずに駆け寄りソニックと握手。「きゃー、ソニックだわソニックソニック」と喜んでいたのは実は私だったりするけれども。

更に歩くと良い香りが漂ってくる。甘いもの、粉ものが焼ける匂い。クレープだ。
クレープの焼ける匂いときたら腹が空いてなくても空いているような錯覚を覚えてしまう困ったシロモノだ。クレープの匂いには弱いのだ。クレープ以外にも人形焼きにも大判焼きにも弱かったりするけど、まぁそんなことはどうでもよろしい。
チョコカスタードクレープなる最高に好物な品を注文し、メロンソーダもつけてもらった。息子と二人でベンチに腰掛け、クレープをわしわしと食す。焼きたてアツアツのクレープはチョコレートがとろんと溶けてきて甘く幸せ。

キャナルシティ「ディッパーダン」の
チョコカスタードクレープ
メロンソーダ
\320
\100

そろそろ4時も過ぎた。ホテルに帰るかなー、と思いつつ連絡通路のある上の階に移動。
と、目の前、下方からシャンシャンと鈴の音が聞こえてきてそれがだんだん迫ってくる。……青い眼のサンタクロースがエスカレーターを上ってくるのであった。サンタとエスカレーターは何だか不似合いだ。息子、妙な物体が目の前に来たのでまたハニワ顔になっている。

「ほらほら、サンタクロースだよ〜。」
と教えると息子、
「……ちわ〜」(=こんにちは)
と挨拶。
「うほほぅ、とてもゲンキ、ですねぇ?」
と弱冠の辿々しさのある日本語で、白い髭のサンタクロースが目の前に立った。
「チョットだけ早く来てしまいましたヨ。また24ニチに、お会いしまショウ。バイバイ〜。」
と何やら息子と交流していた。握手をして、さようなら。

あ。携帯電話が鳴った。だんなの仕事、終わったみたいだ。一度ホテルに戻って合流しよう。

これぞ豚骨ラーメン!って感じ〜中央区「元祖長浜屋」

午後5時、だんなと合流。最後の福岡ラーメンを堪能しに街へ出る。スーツ姿からジーパンに履き替え、だんなも準備万端だ。
「福岡に来ると、一度は食べておかなくちゃと思う店があって。ひとつは秀ちゃんラーメンで、もうひとつがこの長浜屋。」
とだんなが「元祖長浜屋」なるラーメン屋に連れていってくれた。天神を通り過ぎ、長浜を通り過ぎ、店はその先の「港一丁目」のバス停の近くにある。本店と支店があるが、どっちも恐ろしくぼろっちぃ店構えだ。ちょっと引く。一人だったら入るのに勇気が必要そうな店だ。

「元祖長浜屋」全景

店の中には小さめの丸い木椅子がごろごろと。赤い大きなテーブルがどんどんどんと4つ並び、小さめのテーブルが2つ。ごろごろとテーブルをとりまく木椅子に適宜人が腰掛けてラーメン喰ってる。1つのテーブルに6人ほどがかけられようか。店の中、ほとんどケダモノ臭さがない。店の外装内装共に小汚い印象があったのに、これにはちょっと驚いた。

壁には「ラーメン\400 替え玉\50 替え肉\50」なるメニューの文字が潔く並ぶ。メニューはラーメン、ただそれだけなのだ。店に入るなり、
「固め一丁ね!」
などと常連は素早く注文。
テーブルの上にはでっかい薬缶に入るお茶、小さめの薬缶には醤油、そして割り箸の入る巨大な容器に湯飲みの入る巨大なざる。これまた巨大な器に紅生姜。胡麻の容器もある。何やら全体的にダイナミックなテーブルだ。

「元祖長浜屋」 店名の入ったどんぶり入りのラーメン。白濁が美しいスープに、麺は若干太めだろうか。「薄く切ろうとしたんだけれども崩れちゃうんです」という感じに煮込みまくって脂が抜けたようなチャーシューの薄切りがペロペロと入っている。ひとつかみほどの葱もぶわっと。

こってりさが無いわけじゃないのに不思議とさっぱりとした豚骨スープだ。ケダモノ臭さはやっぱりほとんどない。するすると飲み込めるあっさりさにも関わらず「そうそうこれこれ!」という感じのぐっと来る豚骨スープなのである。店自家製だという麺にも良くなじむ。タレの味の染みたペロペロのチャーシューに程良い量の葱、全てのバランスがたまらなく良い感じだ。紅生姜や胡麻を入れつつ食べるとこれまた旨い。そう、「福岡ラーメンってこんな感じ?」と私が夢描いていた理想の福岡ラーメンを具現化したようなラーメンだったのだ。そうそうこれこれ、こういうのが食べたくて来たのよ!という感じ。

かくして、私はこの旅行初めて「どんぶり内のスープを全部飲み干す」という快挙をなしえたのであった。
いつもいつも残すのを非常に申し訳なく思いながらどうしても飲み干すことができなかったのだ。理由は満腹であったりスープの味の濃厚さであったり色々だったんだけれども、いつもいつも悪いなぁと思う。たとえば私が丹誠込めて作った鶏がらスープを知人に食べさせて残されたら「こいつには二度と喰わせないぞ」と思ってしまうだろうから、ラーメンスープも出来れば残したくはないのだ。でも飲み干せなくて毎回痛恨なのであった。ここのは不思議とごくごく飲めた。旨かった。
福岡最終日の夜に素敵なラーメンを食せて私は幸せでございました。

中央区「元祖長浜屋」にて
ラーメン
\400

渋滞の天神を抜け、荷物を預けたホテルに立ち寄り午後6時すぎ。地下鉄に乗り福岡空港へ急ぎ、7時35分発のJAS便にてめでたく我が家に帰ってきた。
高松4日間うどん三昧、続いて福岡3日間ラーメン巡り、この1週間はこれまでの人生で最も麺を喰いまくった期間であった。なにせ私一人で計23玉、だんなを入れると総計50玉である。今、私の細胞はうどんとラーメンで構成されていた。
……しばらくうどんとラーメンはいいや。そんな感じ。