10月10日(火) また来るよー

お粥を食べて

当初の旅程では、今朝は5時半には起きなければいけなかった。マニラを発つ成田行きの飛行機は午後2時半。でも、ブスアンガからマニラに向かう国内線は朝8時のものしかなくて、ゆえに朝6時にはリゾートを出発しなければいけないということだったのだ。国際空港で5時間以上時間を潰さなければならなくて、それは覚悟のうえだったのだけれど、昨日になって嬉しい申し出が。

「国内線の飛行機の時間が変更になったので、リゾート出発は午前8時になります」
通告ベースで伝えられたその内容は、国内線が8時から10時半に変更になったという知らせだった。2時間半出発が遅れることになり、唯一の心配は「それで国際線の乗り換えに間に合うかどうか」だったのだけれど、乗り換えに3時間の余裕があるので大丈夫でしょう、と。ちゃんと朝御飯食べてから出発できるね、良かったね良かったねと、変更になった国内線ダイヤに感謝。

最終日のお粥はたっぷりと そういうわけで、当初の予定より遙かにのんびりと摂ることができた朝御飯。
朝7時、スーツケースをコロコロ転がして、毎日毎日朝昼晩歩いたレストラン棟への小道を歩く。途中でホテルスタッフが私たちを見つけてくれて、荷物を運ぶのを手伝ってくれた。荷物はここに置いとくよ、と、レストラン棟と船着き場の間にある木の下にスーツケースが並べられ、その鞄と、これから乗る船を眺めながらの最後の御飯。今日の朝食のメインは、お粥だ。

毎日のように少しずつ楽しんでいたお粥、今日はたっぷり深皿によそってきた。
塩味はそれなりについてはいるけれど、マニラのホテルで食べた「スペイン風お粥」ほどには濃厚な味ではないシンプルなお粥。肉味噌や葱、フライドガーリックなどをかけて食べるようになっているのだけれど、今朝はそれらに加えてピータンまで用意されていた。どっさりピータンを入れたピータン粥を堪能することができて、とても幸せ。

あとは、一昨日の朝にも食べた温かいオイルサーディンや、焼き豚「Tocino」(トシーノ)。濃い味のおかずを粥に添えるように少しずついただき、食後のパイナップルとスイカもしっかり平らげた。

食後にチェックアウトの手続きをし、滞在中に飲んだ飲み物代やサファリ島ツアー代などの精算をする。「船が出ますよー」の合図があり、私たちの荷物がどかどかと船に積まれていくのを追うように船に向かって砂浜を歩く。

そしてマニラへ

船を下りてジープニーへ 船には、滞在中ずっとお世話になっていた陽気なNさんをはじめ、今日は休暇を取ってどこかに行くらしい私服姿のスタッフも。レストランで見かけた女性スタッフと、あともう1人の体格の良いおっちゃんは、確かホテルのシェフだ。「パスタ作れるよ」とか、「この料理は○○だよ」なんてブッフェ台の近くにやってきては声をかけてくれたそのおっちゃんの胸には「料理長」のバッジがついていた。シェフ、今日はマニラに向かうらしい。そんな感じで船の上はなかなか賑やかで、そしてなぜか生きたニワトリまで同乗していた。
牛の群!

船で20分、そしてジープニーに乗り換えて45分。

行きには「リゾートはまだぁ?」とじりじりしながら過ごしていたこの行程も、帰りにはなんだかあっという間。帰りも行きと同じくいくつもの村を通過し、そこに住まう人々の姿を眺めつつブスアンガ空港へ向かう。途中の大きな草原には、今日はたくさんの牛が放されていた。白い牛はおそらく肉牛で、青空の下のびのびと草を噛んでいる。途中には収穫を待つばかりの田んぼもあり、そのすぐ脇では田植えの光景も。南国では二毛作三毛作はあたりまえだと知ってはいたけれど、目の前に広がるのはそのままの光景だ。

そしてブスアンガ空港に到着。
小型機のバランスを取るための各自の体重測定の後に職員の手で手荷物検査(金属探知器もX線なんちゃらなどもないので、職員の手作業でがさがさとスーツケースの中を探られる)がなされた後、吹き抜けの待合室で待つこと1時間。空港のすぐ外にある何店舗かの土産物兼休憩処と思われる小屋で飼われていると思われる猫が2匹いて、白猫と茶のブチ猫の2匹が入れ替わり立ち替わり待合室にやってきては息子の良い遊び相手になってくれていた。人慣れしていて、近寄っても撫でても逃げない。日本猫とは違う、シャム猫の血を引いているようなスラリとした顔つきのスリムな猫だった。

帰りもやっぱり可愛い飛行機

そして行きと同じく頼りないサイズの飛行機に乗り込んで、マニラに帰還。
「はーい、飛行機乗って良いですよー」
「乗った?全員乗りましたね?じゃ、飛びます」
とばかりに、全員が席についてほんの数分後に、遊園地の乗り物並の気軽さで飛び立った飛行機。全体的にゆる〜い感じのフライトで、帰りには救命胴衣の説明すらなかった。
私たちのいた島ではないけれど

少し雲に突入するだけでガタガタと不安に揺れる飛行機は、でもおそらく極力揺れないように細心の注意を払われたフライトだったのだと思う。窓の外に広がるのは見事な「夏の雲」で、その雲に極力突っ込まないように、ふわりふわりと雲を避けるように飛行機は飛んでいく。
見事な夏の雲

客席と操縦席を区切るのは、行きと同じ、申し訳程度の衝立があるだけで、2人の操縦士が飛行機を操縦する様が今日も良く見えた。

マニラの国内線空港に無事に到着しエンジンが止まるなり、サングラスをかけた機長がくるりとこちらを振り返ってお客を見渡し、
「本日はSEAIRをご利用いただきありがとうございました。マニラにようこそ!」
と英語で告げて白い歯を見せてニカッと笑ったのがなんともステキ。

最後の難関

ごったがえす混雑のマニラ国内線空港に無事に到着した私たち。でも実は、ここから国際線のチェックインまでが、この旅行中最も緊張を強いられるポイントだった。国際線の空港については空港内マップなどの情報がある程度あったものの、国内線空港に関するそれはほとんどない。

何と言っても「白タク」には要注意で、料金をぼったくられるだけならまだしも、場合によっては見知らぬところへ連れて行かれたり、路上で他人が乗り込んできたりなどして金品を奪われる可能性もあるという。安全なのは、割高ではあるけれど「エアポートタクシー」「クーポンタクシー」と呼ばれているもの。国際線空港でそれらに乗れるのは知っていたし、そのカウンターの場所もわかっていたのだけれど、国内線空港についてのタクシー情報はほとんど無きに等しかった。そう遠くない距離にあるはずの国際線空港に無事に行けるのかが、とっても不安。

そんな感じでピリピリしつつ、たった1つのターンテーブル上から、セブ島などからの他の便の荷物とごっちゃにされつつも私たちの荷物をなんとか回収。カートに全ての荷物を乗せ、「タクシーカウンターはどこー?」と周囲を見渡すもそのようなものは見あたらず、あまりキョロキョロしながら歩くのも避けたい状況。目の前に「Information」というカウンターがあり、腕章をつけた制服着用の空港スタッフらしき人々が歩いていたので、「彼らに聞いてみたらどうだろう?」と、人の良さそうなおっちゃんに声をかけてみた。

声をかけてみたのは良い選択だったようで、方向を示してくれたのみならず、先導してくれて「非旅行者用出口」から私たちを外に出してくれた。その隣の「旅行者専用出口」は大混雑で、それをすり抜けるようにして、クーポンタクシーのチケット売り場まで案内してくれて一安心。クーポンタクシーのカウンターは、建物を出た左手にあり、見逃してしまいそうな小さな小さなテントとカウンターが出ていた。

クーポンタクシーは150ペソだった。350円という価格は多分バスや普通のタクシーよりはずっと割高なのだろうけれど、安心代と思えば高くない。クーラーの効いた車内に荷物を詰め込み4人が1台に同乗できた。空港前は一方通行になっていて、国際線空港→国内線空港の移動はどうやらすんなりできるようだけれど、国内線空港→国際線空港はちょっと遠回り。今日も道路はけっこうな渋滞で、国際線のJALカウンターに並ぶ頃には「離陸まであと2時間」という頃合いになっていた。ほんと、良いタイミングで国内線が変更になってくれて良かった良かった……。

そして日本へ

国際線空港では、度重なる厳重なチェックが私たちを待ち構えていた。

空港入り口ではパスポートと航空券のチェックがあり、チェックイン前に全ての荷物のX線チェックと金属探知器ゲート通過を要求された。搭乗手続き後は空港使用税(550ペソ/人)の支払いと出国審査、そして更にもう一度X線チェックと金属探知器ゲートの通過。最後には靴も脱がされる厳重なチェックで、この時に液体とジェル状のものは全て置いて行くように指示される(この手のものは全て預け荷物にしなければいけないそうで)。テロ警戒ということだけれど、本当に大変なチェックだった。パスポート、何回出したことやらという感じだ。

出国手続きが無事に済んだ頃にには時刻も既に1時を回っていた。飛行機に乗ったらほどなく機内食が出てくるのだろうなぁと思いつつ、でもすっかり腹ぺこ。広くはない空港内にはそれでもいくつかカフェテリアらしきものもあったのだけれど、雑多な印象があったので、テイクアウト可能なお店であれこれ買って搭乗ゲート手前の椅子で食べることにした。

挽肉ものが恋しいよ、と買ったでっかいチーズバーガーは1個110ペソ(=270円くらい)。甘い甘いココナッツシェイクと、「これ、美味しそう!」と買ってみてすんごく美味しかったプリン(Leche Flan)。チーズバーガーは、息子の手では両手でしっかと支えないといけないほどの巨大なもので、ケチャップは使われていない様子。良い感じに溶けたソースと、マヨネーズのようだけれど甘みのある白いクリームソースが添えられていた。ココナッツシェイクもひたすらに甘く、それもまたフィリピンの味だなと思いながらもぐもぐもぐ。JALの搭乗ゲートは、そのエリアが鎖でしっかり分けられていて入場には搭乗券チェックが必要とされて、ふらふら出歩けない状況になっていた。安全対策と思えばそれなりに安心できる措置で、その鎖の中でもぐもぐと。

飛行機は10分ほど遅れて離陸。さほど揺れもしない快適なフライトで、しかもだんなが事前予約で抑えてくれていたのは初めての「2階席」。行きの便よりかなりゆとりがある広い席で、トイレも混まず快適だった。2階は狭いこともあってか、とても静か。機内食はさすがに全ては食べきれず、白ワインを飲み干した後はひたすら寝て寝て成田に無事に戻ってきた。
あの常夏の島を出て、成田着まできっかり12時間というところだった。

お正月あたりがベストシーズンだというクラブパラダイス、またいつか行きたいなぁ。