7月3日(星期二) 山盛りの北京ダックを食べたくて

尖沙咀に猿出現!/「R」から「I」への顛末記

朝7時、起床。今日も私の朝は早かった。だんなと息子の朝は遅かった。
今日も一人1時間ほどごろごろごろごろし、8時を過ぎておもむろにだんなと息子を叩き起こす。

部屋にはいつも、「South China Morning Post」という分厚い英字新聞が届けられる。英語が不自由な私では全部読むのに3ヶ月ほどかかってしまいそうなボリュームだ。
その新聞トップのニュースは「尖沙咀に猿あらわる!」だった。見出しは「Monkey apes tourists with swing through Tsim Sha Tsui」。尖沙咀の見慣れた地下鉄の入口で威嚇している猿の写真が載っている。そういや、昨日ずっと妙に警官が多く歩いていると思っていたのだが、どうやらこの猿対策だった模様だ。「猿はフェリーに乗った」なんて記述もある。猿……やるわね。っていうか、香港ってもしかしてすごく平和?

そしてまた、「Features」なるペーパーのトップは「In the blink of an I」なるタイトルで、このホテルのロビーからの海の眺めの写真が大きく載っている。内容は「麗晶酒店(The Regent Hong Kong)」から「香港洲際酒店(Hotel Inter-Continental Hong Kong)」へとホテルが変わったことの顛末記。なんでも6月1日のホテル名変更に際し、何から何まで午前0時にスパッと切り替えたのだとか。その様々な逸話が面白かった。

「R」のロゴのついた大きなものはあらかじめ「I」のものにしておいて、上に薄紙で「R」のロゴを貼っておく。スタッフは全員ポケットに「I」マークのバッジをしのばせておき、5月31日が6月1日になった途端、スタッフ総出で薄紙の「R」を剥がし、自らのバッジを「I」に付け替えたのだとか。
当日の宿泊客は、何も知らずに翌朝の朝食の場へ出てきて、そこではじめて
「Have you noticed this is now Inte-Continental?」
と告げられたのだそうだ。買収劇を知らずに宿泊していた客たちはものすごく驚いたことだろう。
面白いので、このニュースペーパーは持って帰ることにした。

「I」で朝食〜「Harbour Side」

滞在中、一度くらいホテルの朝食も食ってみようと(宿泊プランは朝食つきだったのだ)、ロビーフロアから1階下のカフェテラスへ向かう。おなじみのブッフェ式朝食だ。種類はそれほど多くはないけど、よくよく見ると充実している。どの食材もピカピカしていて、とても嬉しい。愛に溢れている。

パンは食パン類からペストリーまで数種類、美味しそうなものが並び、シリアルもガラスボウルにたっぷり5種類以上用意されている。トッピングできるドライフルーツもたっぷり。チーズコーナーには一口大にラッピングされた安っぽいものじゃなくて、大きな塊がナイフを添えられてごろんといくつも並んでいる。柔らかなブリーチーズがとても美味しそうだ。横に回ればフレンチトーストがあり、その他温かいおかずも数種類。ツヤツヤ光る美味しそうなフルーツ群に、ジュースもスイカやメロン、グレープフルーツなど揃っている。絵に描いたような理想のホテルブッフェ朝食だった。
しかも、ちょっと離れたところに置かれたワゴンにはちゃんと中華式朝食の準備も。焼きそばとひき肉入りの粥とプレーンな粥、点心類も蒸籠の中で何種類も湯気を立てていた。あああ〜チャーシューまんがある!蝦餃も!焼売も!きゃーきゃー。

ちょっと洋風の味も恋しくなってきていたので、私は紅茶を飲みつつフレンチトーストやスモークサーモンを堪能する。
「卵料理をご用意しましょうか?」
と言われたので、
「オムレツください。マッシュルームとチーズを入れてね〜」
とお願いする。薄いトーストつきのオムレツはさくさくのトースト2枚とハッシュドポテト、トマトと一緒にやってきた。チーズがとろけているふわふわのオムレツをバターを塗ったパンと一緒にがふがふ食べる。ん〜、おいし。

こういうブッフェスタイルの御飯は、どうスマートに食べようかといつも考えているのに失敗してしまう。いつもちょっとばかり食べ過ぎてしまうのだ。ブッフェは別に「食べ放題」という意味じゃなくて、「お好きなものを、お好きなだけ」であるはずなのに。
隣に座った欧米人のオヤジ1人客は、こんがり焼いた2枚の薄切りトーストに山盛りのスクランブルエッグを乗せ、ベーコンを挟んで食べていた。朝食はそのサンドとコーヒーだけだ。他の豪華なワゴンの食材には見向きもしない。トーストと、卵と、ベーコン。いさぎよすぎて、格好良い。
私もああいう風なこと、できるといいのになぁ……(もうそりゃ絶対無理)

確か、「お昼に備えて朝食は軽くしておこう」とか、つい数十分前に私は言っていなかっただろうか。とほほほほ。
デザートにと一切れ持ってきたマンゴーは、「こんなんでマンゴプリン作っちゃうから旨いんだよなぁ……」と溜息ついちゃうほど甘く芳醇な味がした。とろけんばかりだ。1切れのつもりが、結局2切ればかり食べてしまった……。

尖沙咀「香港洲際酒店(Hotel Inter-Continental Hong Kong)」内「Harbour Side」にて
フレンチトースト
ハム、スモークサーモン、チーズ、揚げじゃがいも
マッシュルームとチーズ入りオムレツ
中華粥、蝦餃、叉焼飽
マンゴー、パイナップル、イチゴ
アップルジュース、紅茶

さよならパンダ、こんにちは、パンダ

2日間、快適な滞在をさせてくれた「香港洲際酒店(Hotel Inter-Continental Hong Kong)」とも今日でお別れだ。朝食の後は怒濤の荷造り。次の宿は、ここから200mほど離れたところにある「基督教青年會(YMCA of HK)」。全世界で最も快適と言われるYMCAだ。場所は「半島酒店(The Peninsula)」の真隣、ロケーションは最高だ。
旅程を組んでいる時、急遽「4泊を5泊にしよう!」ということになり「安いとこでいいよ……」と選んだところだ。ファミリースイートを予約して、お値段はサービス料込みのHK$1,320。スイートなのに24000円くらいというお値打ちの宿だった。さて、部屋は綺麗かどうか。

ここのホテルの部屋には、息子が抱えるのにぴったりなサイズのパンダがいた。「かわいいけど、さすがに持って帰っちゃまずいだろ」となごりおしみつつパンダとさよならし、チェックアウト。リージェントじゃなくなったけど、このホテルは確かに快適だった。

「空港まで行くの?タクシー使う?」
と出口のベルマンに問われ、
「うんにゃー、次の宿はYMCAだから歩いて行っちゃうよ〜」
とホテル入口からスーツケースをごろごろと押し始めた私たち。車寄せのところにあったカウンターには、部屋にもあった制服着用パンダがちょこんと1つ、座っていた。それを、この2日間、何かと息子を構ってくれた壮年のベルマンさんがひょいとつまむと
「どうぞ」
と息子に差し出した。パンダ、くれちゃうらしい。もしかしたらスーツケースの中に既にパンダがいるかもしれないにも関わらず(まぁ実際は置いてきたんだけど)、更にこのベルマンさんは1匹のパンダをくれちゃうらしい。さっき寂しそうにパンダとさよならしていた息子は大喜びだった。何しろ毎晩抱えて寝ていたのだから。

「パンダ!パンダ!」
とパンダを振り回しながら次の宿、YMCAへ。

いいじゃないっすか!YMCA

午前11時、YMCAにチェックイン。未だ無理かと思ったけれど、部屋に入ることができた。10階の角部屋がファミリースイートだ。同じところに位置する各階のこの部分がファミリースイートなのであるらしい。海の見える、10畳ほどの広々とした応接間に、収納たっぷりのスーツケース置き場。壁を隔てたところが、キングサイズベッドの置かれた寝室だ。寝室からシャワールームに行ける。バスタブは狭く、シャワーときたら上についた固定式のが1つだけ、という水回り関係だけはちょっと不満があったけど、部屋はものすごく綺麗だった。質素ではあるけれどもセンスの良い調度品が品良く置かれている。ライティングデスクも使いやすい。冷蔵庫も余裕があって買い物してきたものを入れられるし、全く不自由はなさそうだ。

なかなかステキなYMCA

「いいねー、YMCA」
「安いしねー、YMCA」
「便利だよねー、YMCA」
すっかりここが気に入った私たちだった。ただ……空調があまり素直に動いてくれない。止めてもしばらく「ぶーーーん…………」と呻っていて、なかなか温度が下がったまま上がらないのだ。ちょっとだけ、寒いかも。
ともあれ1泊のここを満喫しよう。駅まで近くなったことだし、なかなか良い感じだ。
さっき貰ったインターコンチパンダをベッドに据えて、じゃあそろそろ昼飯の時間だ。

風船をどうぞ〜「凱悦軒」

今日のお昼は、尖沙咀「凱悦酒店(Hyatt Regency)」内にある「凱悦軒(The Chinese Restaurant)」に予約してみている。ここのマンゴプリンもまた、根強い愛好者がいるらしい。「世界一のマンゴプリンを食べてみたい!」という野望成就のためには外せない店だった。

黒が基調のシックなホテルは、いかにも「ハイアット」という感じ。金色がそれほど下品にならない程度に配置された内装はとても落ち着いていて、「こ、子連れですんません」と恐縮しながら歩いてしまう。一応迷惑にならぬように、と開店直後に予約を入れたら、案の定、到着したのは私たちが最初の組だった。香港では、ランチタイムは午後1時から2時頃なのが一般的だということだ。

壁に沿った席は仕切つきの4人用ソファ席。どこか新宿のパークハイアットホテルのダイニングを連想させる。プーアル茶をいただき(ここも蓋椀だった)、飲みつつメニューの検討。いつもはあまりコース料理には食指が動かないのだけれど、ここの2人用(両位用)セットランチは魅惑的だった。内容は
 精美點心(点心メニューから好みのものを2種類選ぶ)
 紅焼蟹肉翅(蟹肉入りふかひれのスープ)
 翡翠蒸石班(いしもちの姿蒸し)
 畔塘炒帯子(魚介と蓮根の炒め物)
 上湯生麺(青菜入りつゆ麺)
というところ。2人分でHK$510だ。これに牛タンのXO醤蒸しと大根のパイ(←大根餅を注文しようとして間違えてしまったのさ)をつけて貰う。もちろんマンゴプリンも。

選んだ点心はだんな好物の蝦餃(海老餃子)と、私の好物叉焼酥(チャーシューパイ)。
やってきた蝦餃は若干大きめサイズで、ツヤツヤプリプリしていていかにも美味しそう。口に入れるとねっとりと柔らかくもプリプリとした弾力があり、海老の味もかなり濃厚だ。薄い皮の柔らかな弾力のバランスもあって、これはめちゃめちゃハイレベルな蝦餃だ。
「お、俺の中で暫定世界一の蝦餃だ……」
あらゆる点心の中で、蝦餃を最も愛してやまないだんなが、感動しまくるほど美味しいものだったようだ。しばらく呆けた顔で視線が宙をさまよっている。そんなに旨いか。

XO醤牛利。やわやわ〜。揚げたてサクサクのパイ類もまた、素晴らしかった。中華のパイはとても細かく、ホロホロと崩れていくのが食感の楽しさのひとつであるけれども、ここのパイはどれもこれもその食感がすばらしい。トロンと甘いチャーシューの細切れが詰まったチャーシューパイも、切り干し大根のような独特の旨味のある大根の具が詰まった大根のパイも、具とサクサクの皮が互いを素敵に引き立てている。箸でさくっと切れてしまう柔らかさの牛タンは、じわじわと辛いけれども魚介の旨味の詰まったXO醤とこってりと絡んで光っていた。
「日本の飲茶だって、香港のに全然負けてないじゃーん」
なんて思うことが今まで度々あったけれども、やっぱり本場は凄い。すばらしく旨い。なんなんだ、ここの点心の輝かんばかりの味は。

フカヒレがざくざく入り、しかも蟹肉も小指の頭ほどのものが5切れ6切れと入るスープもまた、胃袋から身体中に染みわたるような感覚があるほど旨かったし、丸ごとのイシモチが香味野菜やレタスなどと共に蒸された料理も脂が乗っているのにさっぱりとしていくらでも食べられそうなものだった。帆立や野菜が塩味で炒められたものもぱくつきつつ、最後の小さな椀入り麺もしっかり堪能。上質なスープにひたった縮れ麺には小さな青菜が乗っていた。

生クリームの味が濃厚に漂う、ちょっと独特なマンゴプリンもしっかり味わって、そして最後は「蛋撻」(エッグタルト)。

あつあつサクサクとろ〜り蛋撻♪♪♪プリンを食べた後もしばらく出てこないので「あれ?」と思っていたところ、焼きたてのアツアツが目の前にやってきたのだった。親指と人差し指で円を作った中にすっぽり入ってしまいそうな小さな小さな蛋撻が4つ、皿にちょこんと乗っている。皮はどこまでもサクサクとしていて、中の灼熱の熱さのプリン部分はぎりぎり固まっているような危うい均衡の歯触り。歯を立てるだけでクシャッと崩れてしまうプリンは熱くて柔らかで卵の味がしてほんのり甘くて、これまでにない最高の味がした。
「やへろ、やへろしまふ、こほふぁふぁでふぁ(←やけど、やけどしますこのままでは)」
などとハフハフハフハフ必死で息をしながら食べるアツアツの蛋撻は、涙ちょちょぎれるほど美味しかった。

う、旨いなぁ凱悦軒。ファンになっちゃいそうだ。

もう1時半にならんとしているところ。フロアはいつのまにか大勢の客で賑わっていた。サラリーマンらしき男性数人の組だとか、年頃の娘さんを連れたような親子連れだとか。それぞれお洒落してきている人も少なくなく、息子が騒がないでいてくれて本当に良かった、と眠そうな彼をだっこして店を後にした。すると、目の前にブルーの風船が1つ。「Hyatt Regency」のロゴのついた、息子の頭より大きな風船を、スタッフのおっちゃんがニコニコしながら手渡してくれたのだった。な、何故風船を……と思いつつ、有り難く風船もらって一度ホテルへ。この暑さじゃ、息子を昼寝させてやらなきゃ可哀想かもしれない。

尖沙咀「凱悦酒店(Hyatt Regency)」内「凱悦軒(The Chinese Restaurant)」にて
SET LUNCH 両位用
+XO醤牛利
+火腿蘿蔔酥
+凍時果布甸
+酥皮鶏蛋撻
+中国茶
HK$510.00
HK$55.00
HK$33.00
HK$28.00
HK$28.00
HK$14.00

うまうま焼きもの弁当〜「廣東燒味餐廳」

ホテルに戻り、ごろごろごろ。美味しい昼食を食べた後ではあるが、そういえばこのホテルの近くにテイクアウトも出来る焼き物料理専門店があるらしい。旅程を考えると、チャンスは今日だけでしかも「おやつ」として食べる他はない。
「買ってこーい」
「買ってくるよー」
と、昼寝突入間近の息子と、それを見守る私は留守番役を仰せつかり、だんなは一人灼熱の街へ一人出ていった。

20分ほどし、彼は発砲スチロールに入った温かい弁当を持って帰ってきた。
中にはみっしりと長い米の飯が入り、上には油の絡む塩辛い葱ソースと共に蒸し鶏、テラテラと怪しく赤く光るチャーシューがそれぞれぶつ切りにされてどかんどかんと乗っている。隅には空心菜の炒め物も。いかにも「街の安いお弁当」という風情の弁当は、いかにもいかにも美味しそうだ。
蓋を開けてみるまでは
「いやー、だって今、めちゃめちゃ美味しい昼御飯食べてきたばかりなんだよ?」
とか言っていた私も
「ふぉー、美味しそー。あったかいうちに食べなきゃ〜!」
という感じになってくる。
結局ホテルの部屋の応接コーナーで皆座りこみ、奪い合うようにしてその弁当を食べてしまうのであった。

超、うまうま〜〜〜〜!

皮つきの鶏はふくふくと柔らかく、チャーシューも中に肉汁をたっぷり閉じこめている。お互いの焼き汁というかタレというかが御飯に適度に染みていて、そのちょっと塩気強めの味がどこまでも食欲をそそってくれるのだ。高級料理店の味も大好きだけど、こっちの方面もまた、香港を味わうには捨てられないベクトルだ。上品さはひとかけらもないけれど、こういう店が近所に1軒でもあったら一生通ってしまうぞ、みたいな。

尖沙咀「廣東燒味餐廳」の
チキンとチャーシューのぶっかけ飯

たまには一人でお買い物

午後2時を前にして、2回も昼食を食べたことになった私たちは、息子を昼寝に寝かしつけてから交代で買い物にいそしむのだった。
まずは私が一人でホテルを抜け出す。いつも使っているクラランスの化粧水を安く買いたいなー、とか、ペニンシュラの地下でテイクアウト用マンゴプリン売っているらしいなー、などと思いつつぷらぷらと一人尖沙咀の探索。

途中立ち寄った「THE BODY SHOP」で「AFRICA」とでっかくロゴのついたバスソルトとソルトスクラブのセットが気になった。この旅行から帰国したら、せっせとダイエットに励まねばならないだろう。以前せっせと塩マッサージしていた事を思い出し「……気持ちいいかも」と思わず購入。でっかい瓶は、ちょっと重かった。値段もちょっと高かった。

尖沙咀「THE BODY SHOP」にてお買い物
「AFRICA SPA」 BODY SALT SCRUB
「AFRICA SPA」 NATURAL SALT BATH

セットでHK$328.00

そのままぽてぽてと化粧品屋を探し歩く。あいにく、私のいつも使っているローションはどこも売り切れ。仕方なく、「じゃペニンシュラ寄って帰ろう……」と地下のアーケード街に向かうことにした。
ケーキショップを目指して進む途中、アラン・チャンのショップを発見。何か土産物になるものはあるかなー、とその広くはない店内を眺め歩き、シンプルな時計を1つ買った。5分単位に放射状に線が入っているだけの、どこがアラン・チャンだかさっぱりわからない時計だ。

「これ、ください〜」
と店員に告げて出してもらうと、店員女性は「コッチもね、コッチも」とか言いながら別の柄の時計も一緒に出した。
「This is for your present. This one is for your friends present.」
なんてことをまくしたてて、鼻歌を歌いながら何やら一緒に包もうとしている。ちょっとまてぃ!誰が時計2個も買うと言ったぁ!
「そっち欲しいなんて言ってないよ。やめてよ。1個だけ包んでよー。」
とつたない英語ながら憤慨しつつ伝えると、「Sorry, sorry〜」といそいそと時計を1個戻していた。もしかしてこうして日本人はいつもカモにされているのだろうか。ううう、ペニンシュラの地下なのに、何とも油断がならないことだ。

尖沙咀「ALAN CHAN CREATIONS」にてお買い物
時計
HK$480.00

引き続き、「The Peninsula Boutique」を目指す。ペニンシュラブランドのチョコやらお茶やらは香港土産として人気らしい。でも、ネームバリュー代なのか、どれもえらく値段がお高い。目指すテイクアウトマンゴプリンは1個HK$20。「こういうのだけでいいや……」と生菓子コーナーに張り付いて、プリン2個とタルト1個を購入した。息子が目覚めたら、おやつだな、うむ。

尖沙咀「「The Peninsula Boutique」」にてお買い物
MANGO PUDDING
STRAWBERRY TART
HK$20.00
HK$16.00

1時間ほどの探索を終えて、今度はだんなと交代。彼は
「中国茶を買ってくるぞー」
と意気揚揚と出撃していった。すると、ものの15分ほどで突然の大雨が。10階の窓から「大丈夫かなー」と少々心配しつつ帰りを待つ。

1時間ほどして、彼は「福茗堂茶荘(Fook Ming Tong Tea Shop)」で購入したらしい小さなお茶袋を2つ抱えて戻ってきた。人にお店の場所を尋ねたところ、正反対の方向を指さされてショッピングモールを端から端まで動くことになったようだ。街の一人歩きも案外楽しいものだった。

そうこうしつつ午後5時半、息子が3時間ほどの昼寝からやっと目覚めて、おやつタイム。
先ほどペニンシュラホテルのブティックで買ってきたペニンシュラ製マンゴプリンをテーブルに並べ、ペリエを飲みつついただいた。果肉がごろごろ入った、ねっとりしたプリンは1個HK$20。期待していたのだけれど、いまひとつマンゴーの存在感が希薄なプリンだった。
息子は、苺がたっぷり乗るタルトを囓って御満悦だ。

山盛りの北京ダックを食べたくて〜「鹿鳴春」

本日「北京ダックが食べたいな。しかもこれでもかと腹一杯。」ということで、北京ダック1羽HK$280(←4500円くらい)というお店に行ってみることにした。
場所は尖沙咀のやや東側。表通りからちょっと奥に入ったところにある。鹿の絵のついた大きな看板はすぐに見つかったけれど、肝心の店がなかなか見つからない。ビルのを奥を覗き込むようにして歩くと、一階が怪しい露店のようになっているところを進んで階段を上がったところ、2階がその店なのだった。

緑色の制服を着て動く店員は全てがオヤジ、という、ちょっとびっくりするような店だった。日本では「給仕人が全てオヤジ」というのはとても稀な光景じゃないだろうか。「給仕人全て若いおねーちゃん」なんてファミレスや喫茶店は良くあるけれど、中華料理店などで店員が全員オヤジというのは迫力がある。
愛想が良いのか悪いのか、良くわからない。「そっちへ座りなよ」と席に案内され、上からは大きなアルミのトレイに無造作に乗せた熱いおてふきが降ってくる。トングでおてふきを掴んだ無愛想なオヤジが、ボサッとおてふきを無造作にテーブルに置いて去っていくのだった。

客はほとんどが現地の人々。6人8人でテーブルを囲むのは当たり前で、10人以上でテーブルについている姿も珍しくない。大勢でわいわいがやがやと騒ぎながら各テーブル、北京ダックを楽しんでいる。時折、びっくりするほど大きな鍋が通路を行き来していたりもする。何だか「中国」を感じさせる豪快な店だった。

北京ダックのコースもあるらしい。「家族3人で1羽はさすがに多いよね……」とメニューを開くと、「お二人様コース、北京ダック1羽」なんて書いてある。コースを取ろうが取るまいが、北京ダック1羽はやってくるものらしかった。ならば、とコースは止めて単品で前菜と焼きそばのみ取ることにして、北京ダックに備えることにする。もちろんビールも。

私の座っている、前方方向が調理場であるらしい。数分に一度、ワゴンがそちらからドガガガガ、とやってくる(押してくるのはもちろんオヤジ)。
上にはツヤツヤと光る、なんとも美味しそうなまるまる一羽の北京ダック。それが各テーブルの横でぴたりと止まり、そこでスライスされるものらしい。ツヤツヤのダックが来てからまた数分して、ドガガガガとそのワゴンはまた奥へ消えていくのだ。上には肉少々と骨だけになった哀れな姿のダックが乗る。それがえんえんと繰り返される、北京ダック天国が展開されているのであった。

すぐさまやってきた前菜は美しく円形に並べられた豊富な種類のもの。タンとかハムとかセロリとか長ねぎとか。全て平べったく薄切りにされて美しく並べられている。中央には太めのくらげがこんもりと。怪しく赤いハム状のものはレバーの味がしたり、煮こごりのようになったものをスライスしたテリーヌのようなものもある。どれも見かけは質素だけど妙に美味しい。あちらの12人卓には、私たちが食べているものの10倍ほどの大きさがありそうな、巨大な巨大な前菜がやってきていた。スケールをそのまま変えただけの、同じ盛りつけの巨大な皿がテーブルの中央に置かれている。す、すごい。

さー、巻いて巻いて食べよう!そして待望の北京ダック。ダックを乗せたワゴンがちょっと離れた通路脇に止まり、そこでシャコシャコと肉つきの皮をスライスしてくれている。大皿にたっぷり30枚ほどもあるだろうか、北京ダックが山になってやってきた。皮は小皿にうずたかく積まれたものが、そして黒々としたタレと刻み葱類も小皿に乗ってやってくる。私たち、意気揚揚とセルフ巻き巻き。

真円じゃない、大雑把に丸い形の皮はちょっと粉っぽくてペタっとしている。上品さとか洗練とかいう言葉とは対極にあるような、何とも素朴な皮だ。その上にダックを1枚乗せ、タレをつけ、葱を巻き込んでパクリと食べる。これでもかと染みてくるダックの皮の脂や肉汁が甘いタレとあいまって何とも美味しい。モチモチした皮もまた、膝をポンと叩きたくなるほどいける。
「北京ダックだよ〜」
「うまうまだよ〜」
「もうもう、超美味しい〜」
と、もう止まらなくなった私たちはえんえんと皮と肉の皿の上で手を動かし続ける。

無愛想なオヤジたちは、でも妙にサービス精神溢れているのであった。お茶はどんどん注いでくれるし、そのお茶が濃くなってきたのを見て「あ、お湯足りないね」とすぐに奥に引っ込んでお湯を入れてきてくれ、「ほーら、お湯を入れてきたよー」とニコニコと新しいお茶を入れてくれたり。「記念よ記念」という感じにポストカードとお店の名刺をいそいそと持ってきたり。
だが、声をかけようとすると「お、おりゃ日本語も英語もダメなんでぃ」という感じにちょっと困った顔をする。「お前行けよ」「お前、英語できるだろう」という感じにオヤジ達がちょっと遠くでうじゃうじゃとやった後に、結局オヤジの中では若手の、英語もできる人がやってきたりするのだった。

だが、さすがに北京ダック1羽は私たちにも多かった。モチモチとした皮が、腹の中でビールやお茶を吸って膨れてくるのだ。
「さ、さすがにこれ以上食べたら胃袋がヤバイ……」
「ここはいったん、戦線離脱でしょう……」
「ダーパオっすか?ダーパオっすか?」
とオヤジを呼び止め、「ンゴイ、ダーパオ」と伝える。北京ダック、包んでね。ちゃんとタレも入れてね、と身振り手振りでお願いした。

支払いは、何でもJCBカードで払うとデザートがついてくるらしい。メニューの端にそう書いてあったので、ここはJCBカードで支払いを。
「デザートは嬉しいけど、甘いものはあまり食べたくないな。果物が嬉しいなー。」
「スイカが嬉しいなー。」
と言っていたところ、やってきたのは本当にスイカ。食べやすい大きさに切られたスイカとメロンが皿に盛られていた。そうそうそうそう、こんなデザートが恋しかったのよおぉぉぉ。
「北京ダックの後には、さっぱりとしたスイカを」
と、そこまで考えてくれたようなお店に多大な感謝を感じつつ、店を後にする。
オヤジのパラダイス「鹿鳴春」。ちょっと好きになってしまいそうだった。

尖沙咀「鹿鳴春(Spring Deer Restaurant)」にて
前菜盛り合わせ
[火考]北京填鴨(原隻)
海老焼きそば
ビール
HK$40.00
HK$280.00
HK$40.00
HK$35.00

「裕華國貨」でお買い物

食後は、「男人街でも行ってみようか」と電車に乗って「佐敦」へ。ここの駅前にはデパート「裕華國貨(Yue Hwa Chinese Products)」がある。手頃な食器あり、食材あり、しかも今はバーゲンシーズン!思わずデパートの中で何時間も買い物してしまうのであった。

日本なら1m2000円くらいしそうなチャイナ服の布地も、HK$90のものが更にバーゲン価格で現在HK$76ほど。1200円くらいだ。嬉しすぎる。
布を買い、食器を買い、食材を買う。中華料理店で良く見かける、ぽってりと楕円の形のティーポットが使いやすそうで、ずっと「欲しいね〜」と言っていたのだけれど、上質のボーンチャイナのそれがHK$108。皿は全て現在25%OFF。もうもう素晴らしすぎる。
「皿も買っちゃえ〜」
「茶碗も買っちゃえ〜」
「ソース皿も買っちゃえ〜」
と、尋常じゃない買い物をしてしまった。両手にいっぱい割れ物抱えて、もう「散策」どころじゃなくなってしまったのだった。お買い物は楽しいなぁ。

佐敦「裕華國貨(Yue Hwa Chinese Products)」にてお買い物
布6m
中国茶用ティーポット
中国茶用ティーカップ(4つ)
楕円皿(2枚)
ソース皿
マンゴプリンの素
八角
HK$459.00
HK$108.00
HK$93.00
HK$147.00
HK$20.60
HK$7.40
HK$10.00

デパート散策中、電気製品コーナーで店員がテレビの前にたむろして、ある番組を見ていた。……なんか聞いたことのある音楽が流れている。「チラリラリラリラ、ジャーン」という音楽と共に、独特のカメラワークと照明の動き。色黒の司会者の姿はなかったけれど、どこから見ても「クイズ$ミリオネア」。線の細い、眼鏡をつけた司会者が神妙な顔で出題をしているのだった。当然広東語。字幕も当然広東語。ああっ、ライフラインを使っている!あれはオーディエンス!うわー、マークまで一緒だよおい。

どうやらこの番組、こちらで人気のようらしい。お客さんも足を止めてじっと画面に見入っている。トイレに行っていただんなも、画面を見てバカ受けしていた。
「"ファイナルアンサー?"って言ってくれるかなぁ。」
「くれるといいねぇ。」
とニヤニヤしながら見ていたのだけど、どうやら「ファイナルアンサー?」は広東語で言っていたようだ。香港のみのもんたは、色黒じゃないしくどくないし、やけにさっぱりした人だった。やっぱりみのもんたのキャラクターがあの番組には不可欠……だと思う。

プリチーな牛顔が目印〜「義順牛[女乃]公司」

もう男人街どころじゃなくなってしまった。こんな割れ物持って歩いたら、どうなることかわからない。
「牛乳プリン食べて帰ろうか」
と目指したのは、デパートから徒歩2〜3分の距離にある「義順牛[女乃]公司(Yee Shun Milk Company)」。牛乳好きにはたまらない、牛乳メニューで溢れるお店だ。その名物が牛乳プリン。

タイルの床の涼しげな店内はかなり混み合っており、なんとかボックス席につくことができた。漢字だらけのメニューは「???」なところもあるけれど、わからなくもない。漢字メニューをじーっと眺めていたら、「あ、日本人か」みたいな顔でクリアファイルの別メニューを出してくれた。おお、日本語が書いてある。

ふるふるぷるぷる、牛乳プリン♪私は当然牛乳プリン。だんなは、最近発売されたらしい生姜味の牛乳プリン。息子にはココナッツとミルクのジュース。
食器にはどれも牛の横顔の赤いマークがついている。ぽってりとした器類はとても良い感じだ。ジュースはジョッキでやってくる。当然これにもマーク入り。どうやらこの食器、頼めば売ってくれるものらしい。後で交渉してみよう。

揺らすとプルプルと揺れる柔らかな冷たいプリンがやってきた。とても柔らかだけれど、ゆるすぎてグズグズということもない、絶妙な舌触りのプリンだ。プリンというより、食感が違うソフトクリームという感じの味わい。ミルク感が濃厚で、ほんのりと甘い。レンゲでこそぐようにしてすくって口に入れると、舌の上で一瞬にして溶けていく。キリリと冷たいプリンは、夜の散策の疲れを取ってくれた(あったかいプリンも選べるらしい)。

だんなの生姜プリンは、ホントのホントに生姜プリン。容赦なく入った生姜は、舌の根をビリビリとしびれさせるほど濃厚なものだ。「辛い、でも甘い、でも辛い、おいしー」となんとも微妙な味わいがある。
息子の、ジョッキ入りココナッツミルクもまた最高だった。ほんのりココナッツでしっかりミルク。がぶ飲みできそうな、適度な濃度のココナッツミルクは「そうだよ!私の求めるココナッツドリンクはこれだったんだよ!」と絶叫したくなるシロモノだった。たっぷりと、ジョッキに入ってHK$20だなんて嬉しいことこの上ない。

食後は食器が欲しいんだけど、という交渉だ。「椀とレンゲを4つずつ、ジョッキを2つくれないか?」と伝えると、「んー、2個、2個、1個ならいいよ」ということ。あまり沢山の購入は勘弁してよ、という感じだった。値段は椀とレンゲのセットがHK$9、ジョッキがHK$20。それで良いよと頷くと、奥で綺麗な食器を丁寧に新聞紙でくるんできてくれた。
ふふふ、これで我が家でも牛乳プリンとココナッツドリンクが……(にやにやにや)

佐敦「義順牛[女乃]公司(Yee Shun Milk Company)」にて
馳名隻皮燉鮮[女乃]
巧手姜汁燉鮮[女乃]
凍凍椰汁鮮[女乃]
店マーク入り椀とレンゲのセット×2
店マーク入りジョッキ
HK$18.50
HK$20.00
HK$20.00
HK$18.00
HK$20.00

アホみたいに食器を買いまくった夜。
「今日はいろいろ美味しかったねー。」
「収穫もたっぷりだねー。」
と喜び踊りながらホテルに帰った。これでスーツケース片面の半分が埋まることになるのである。だが、そんなことは気にしない私たちだった。