そんなに乳脂肪がキライなの?

アメリカのスーパーマーケットに来て思ったことは、
「ああ、"スーパーマーケット"って、ホントに"スーパー"だったのね……」
ということ。
日本はモノが溢れていると言われているけど、アメリカのそれもすごいものがある。冷蔵ケースに溢れる肉類、通路の両側を埋め尽くす冷凍食品、呆れるほどの種類のハムソーセージ類にチーズの数々。そのどれもが私が馴染んできたサイズよりも遙かに大きいものばかりだ。

特に、"ガロンサイズ"のドリンク類。話には聞いていたけど、いざ我が家の冷蔵庫にそれらが並ぶということになると、その大きさには呆れを通り越して笑ってしまう。
通常売られる1ガロンペットボトルは約3.8リットルになる。半ガロンのものもあり、それは1.9リットル。1リットル入りなんて可愛らしいサイズのものは、売場にはまず見あたらないのであった。

オレンジジュース1つとっても、1つのメーカーごとに粒入りだのブラッドオレンジだのと何種類もあってオレンジジュースコーナー全体で十数種類は並んでいる。特に乳製品の種類には目を見張るものがあった。

我が家は乳製品が大好きなのである。ヨーグルトやチーズも好きだし、コーヒーには牛乳をだばだば入れて飲むのが大好き。夜寝る前、風呂上がりに1杯飲む牛乳なんてのも、サイコーだ。当然、冷蔵庫には牛乳のストックがないとすごく寂しい。
だがしかし、マーケットの冷蔵庫にはものすごい数の牛乳が並んでいたけれど、いわゆる「普通の牛乳」はほとんど置かれていないことに私たちはびっくりした。

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マーケットの牛乳売場。写っているのはぜ〜んぶ加工乳……

一見普通の牛乳っぽい、透明容器入りのものは、でも全て「Reduced Fat Milk」「Skim Milk」などと表示された、脂肪分カットのものばかり。「Reduced Fat」の表示と共に2%だの1%だのと脂肪分のパーセントも表示されている。中には当然「Non Fat」も。他にもビタミン強化ものだの「Half&Half」だの「Butter Milk」だの、ミルク売場は大変なことになっている。このサイトを見ている方に教えていただいたり、自分で調べたりしたところ、牛乳売場にあるのはこういったものであるらしい。

Whole Milk
これが普通の牛乳。乳脂肪分3.5%前後で、だけど「Vitamin D」と併記されたビタミンD添加ものが多い。マーケットの隅っこのほうで、片身狭そうにして売られている。今のところ、近所では半ガロンサイズの1種類のオーガニックメーカーのものしか見たことがない。
Reduced Milk
「Lowfat Milk」とも表記される、低脂肪乳。近隣のマーケットの牛乳売場のほとんどを占拠するのがこのタイプ。乳脂肪分1%ものと2%ものがほとんどで、私にしてみるとどちらもとても薄そう。やはりこちらも「Vitamin D」と記されているもの、多数。
Skim Milk
日本でもおなじみのスキムミルク。日本じゃ顆粒の「脱脂粉乳」がメジャーな気がするけど、こちらは液体ものがたっぷりと売られている。低脂肪乳より、ますます味気なさそう。でも、売場にはたっぷりとあって、売れているようだ。
Butter Milk
「バターミルク」の名称から「こってりミルク?」と思っていたけど、それは間違いだったらしい。その名称は、「バターとミルク」というわけではなく、「バターを作った後の残りのミルク」という意味であり、乳脂肪が少なくなった、酸味と粘度のある液体だそうだ。パンやケーキの材料に、料理のソースなどに使われるらしい。
Half & Half
その名称から「カロリー半分?」と思ってしまったけれど(そして、留学仲間の奥さんは真実そう思ってしまってこれを家族で飲んでいたらしい……)、その中身は「牛乳半分、生クリーム半分」というシロモノ。カロリー半分どころか、倍以上の乳脂肪分が含まれている恐ろしい乳製品。コーヒーに入れたり料理に使ったりするらしい。
Chocolate Milk
牛乳コーナーに必ずといっていいほど並んでいるのがチョコレートミルク。そのパッケージは往々にしてチョコレート色で、思わず目が引き寄せられる。牛のイラストのついた1/2ガロン牛乳パックのチョコレートミルクなんて、いかにも美味しそう。人気もあるようで、何種類ものメーカーの各種チョコレートミルクが並んでいる(中にはイチゴ味なんてものも……)。でもやっぱり乳脂肪は気になるようで、「Reduced Milk」だの「Non Fat」だのという文字も併記されているのであった。そんなにカロリーが気になるなら、そもそもチョコミルクなんて飲まなきゃいいのに……とかすかに思う。

……で、普通の牛乳「Whole Milk」は、これがなかなか見つからないのであった。牛乳売場の隅っこのほうに、オーガニック系会社が販売している半ガロン入りの紙パックがひっそりと置かれている状態なのだ。ものすごく片身が狭そうなWhole Milk。我が家は大体、そればかりを買っている。乳脂肪が怖くて牛乳が飲めるか!……と思う。

とにかくこちらの人、乳脂肪をとことん避けようとしているみたいなのだ。
バターの種類は非常に少なく、マーケットの棚にはマーガリンが圧倒的に多く場所を取っている。ヨーグルトはそのほとんどが「Reduced Fat」マーク入り。抜けた乳脂肪分を補うかのような香料や合成甘味料の味つけで、もう味気ないったらないのである。ペクチンやコーンスターチばかりが多く混入されているのか、トロ〜ンとしてたり、ねっとりと重い舌触りだったりする大手メーカーのヨーグルトは、まだ今ひとつ好きにはなれない。

私などは、
「そんな些細な乳脂肪カットする前に、その大量の肉喰いを止めて炭酸飲料摂取も抑えれば?」
と思っちゃうのである。炭酸飲料に含まれる甘味のほうがよっぽど身体には悪そうだと思うのだが、どうしてもそのへんの感覚の違いは根深いらしいのだった。

そのうち私も脂肪分カット牛乳を美味しいと思って飲むようになるのかなぁ……?うーむ。