3日に1度のお洗濯

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我が家には、いや、我が家が入居しているこのマンションには、部屋に洗濯機がついていない。設置する場所すらない。
倍額ほどの家賃が必要になるような部屋を借りれば洗濯機も乾燥機も、更には食器乾燥機なども完備されているらしいけど、とにかく我が家にはそういう設備は最低限のものしかないのであった。……まぁ、家賃が破格なほどに安いから、文句を言ってはいけない。

そして私は数日に一度、布製のランドリーバッグに洗濯物をぎっちり詰めてマンション内の「洗濯場」へ通うのであった。
当初は日本での習慣のままに、毎日ランドリーコーナーへ通っていた。乾燥機はかけず、洗ったままのを持ち帰ってクローゼットの中に干していた……が、どうも効率が悪い。そのうち「数日に一度でいいじゃん」「乾燥機かけた方がらくちんでいいじゃん」などと妥協点を探るようになり、混雑する週末を避けて「月曜と金曜が洗濯の日」となりつつある。
人によっては(特に独身一人住まいなどとなると)1週間に1度で充分だという話も聞く。我が家は数日に1度はバスタオルを洗いたいし、週に1度はベッドシーツも洗いたいしということで週に2度の洗濯サイクルで落ち着いた。

300世帯ほどが入るこのマンション群(1棟に16世帯が入る建物が充分な間隔があけられて点在している)に、ランドリーは2ヶ所。どちらも微妙に我が家からは遠い距離で、150mほどをぽてぽて歩いて向かわなければならない。あまりに洗濯物が多いときは車に乗って行ってしまったりも。

コイン投入口マンションの、とある棟の1階の隅(だから2階には人が住んでいる)がそのランドリーコーナー。入ると左手に洗濯機が8個、右手に乾燥機が8個ある。家から大量の洗濯物と共に洗剤も持参して、いよいよ洗濯機のスイッチを入れる。
こちらの洗剤は、他の日用雑貨と同じく巨大だったりする(洗剤の基本は1ガロンパック、その重量は4kg以上という感じ)ので、とてもじゃないけど洗濯物と一緒にランドリーに持っていく気にはならない。だからタブレット状の固形洗剤を1個だけ持っていったり、私は液体洗剤をプラスチックのミニケースに詰めて持っていくことにしている。

洗濯機も乾燥機も、1回1ドル。
この国には1ドル札と共に1ドルコインも存在してはいるのだけど、その1ドルコインはほとんど全く流通していない。どうしても1ドルコインが見てみたかった我が夫が研究室スタッフに「どこに行けばもらえるの?」と聞いてみたところ、
「あのね、大きなスーパーなんかにはあるんだけど、切手の自販機で切手を買うと良いんだわ。そうするとお釣りに1ドルコインがじゃらじゃら出てくるから」
とのこと。そこまでしなきゃ見ることができないのが1ドルコインなのだった。

なので、洗濯用の1ドルは「25セント玉を4枚」使うのが基本。基本というより、そうするより他に選択肢がないのである。溝のついた「1$」と表示のついたそこに25セントを4枚並べて立ててセットし、ガションと奥に押し込む。あとは洗い方モードや乾かし方モードを選択して、蓋を閉めるなりスイッチを押すなりすると動き出す。一度家に帰り、1時間ほど経ったところで回収しに出向くのだ。最初のうちはきっちりきっちり1時間で回収しに出向いていたけど、最近は、さほど混んでいないようなら「乾燥させている間に外に出かけてお昼御飯」とか「数時間後に帰宅する夫に、帰宅時に回収するよう頼んでおいて家でごろごろ」なんてことをするようになってしまった。
ただ、あまりトロトロしていると、マシンがいっぱいになったときに「アンタのは終わってるんだから避けとくわよ」とランドリーコーナーのテーブルの上にぶちまけられてしまうので油断は禁物だ。

概ね"1人1台のマシーンを使用"、"1回洗濯したら、それを1台の乾燥機にかける(何台も使わない)"、という暗黙の了解があるようだけど、中にはツワモノも。一度に3台の洗濯機を回し始めるお兄ちゃんや、お洒落着数着を洗濯して、それを何台にもに分けて乾燥機をかけたりしているおばちゃんも、たまーに見かける。でも周囲の眼は冷ややかだ。
ちなみに、洗濯物を外に干すという習慣がないのもこの国の特徴。近所の学生のお兄ちゃん(米国人だと思う)は、手洗いしたようなトレーナーやTシャツを頻繁に玄関前の柵にぶら下げて干しているけど、「ランドリーに行くお金もないのね」という認識になってしまうようなのだった。

旅行時にもコインランドリーはすごく便利。モーテルに宿泊すれば大抵それがついているので、2ドルで気軽に洗濯できちゃう。ありがたやありがたや。