間接照明を楽しみませう


これこれ、これが夢だったのよー

アメリカでの家が決まり、入居して、ちょっと驚いたことは"メインの部屋に電灯が全然ない"ということだった。いや、日本の賃貸住宅などでも部屋にあらかじめ電灯がついていないことは多いけれど、日本の住宅だったら天井に電灯用のソケットがついているのが普通だ。アメリカの家には、それが無いのであった。居間の天井も、ベッドルームの天井も、一面ノペーッとただ真っ白。
「え?電灯って、どこにどう付けるの?」
と、びっくりしてしまったのだった。

台所の天井には、電球を2個つけるタイプの天井灯がついていた。バスルーム、クローゼットにも電灯がついていた。
幸い、ダイニングテーブルを設置するであろう場所の上にはプロペラつきの天井灯がここだけにはあらかじめ設置されている。同じ間取りの同じ住宅内に住む他の人の家を見ると、同じ場所にペンダントライトがぶらさがっていたり、その場所には何もついていなかったりと様々だった(賃貸で同じ家賃なのに、こういうところが妙に統一されていないのがアメリカらしいと言うか)。
この、銭湯で見かけるような"天井でプロペラぐるぐる"が非常に憧れだった私は、この存在が内心めちゃめちゃ嬉しかったりした。3段階に変えられるプロペラの回転速度、最高速度で回そうとすると壁に羽がバチコンバチコン当たって大変なことになったりしたけれど、そんなこともとりあえず気にしない。蒸し暑い夏には、この天井プロペラは非常に快適だった。なんかムードあるし。

で、問題なのは居間と寝室の電灯だ。
天井に電灯用ソケットが無いということは、天井に電灯はつけない(つけられない)ということであり、結局頼るものはフロアライトやテーブルライトということになる。ホテルに宿泊する時の事を思い出すと、天井に電灯がついておらずベッドサイドとライティングテーブルの脇などだけに壁付あるいは床置きの電灯があったりする。ノリはそれと同じだ。これまでずっとホテルに宿泊するときに「なんでこんなに部屋が暗いんじゃい」と思っていたのだけど、欧米の人にとってはこの照明こそが当たり前の照明なのらしかった。

電球を1個つけるだけのフロアライトだけれど、思いの外明るい。ペンダントライトを逆さにしたような、傘が上に向かって開いているようなタイプのフロアライトが安いものでは10ドル弱から販売されており、これを部屋の隅に1個置けば8畳くらいの広さまでは案外容易に明るくできる。壁も天井も白いペンキで塗られているため、オレンジ色のライトが壁と天井に反射してなかなか綺麗。部屋の内部には間接照明独特の陰影ができて、これはこれでムードがあって良いじゃないか、と数ヶ月後には思えるようになった。

アメリカ人家庭を見てみると、1つの広い部屋の中に何個もの明かりを上手に配置してそれぞれのコーナーの雰囲気をあれこれ演出している様子。冬にはキャンドルも効果的に飾られ、使われていた。大きなダイニングテーブルの真ん中に大きな長いキャンドルを灯して……なんて光景は、真似したいけど日本の畳敷きのお茶の間には到底似合わなさそうだ。
日本に帰ったら、いっそ和蝋燭に鉄製燭台を……と思ってしまったけれど、それはそれで何だか違う方向に行ってしまってるような感じが。

ちなみに、留学生仲間Iさんのお宅(我が家と同じ住宅、同じ間取り)の居間には、先代かそれ以前かの住人がつけたらしい、"天井プロペラグルグルライト"が最初からついていた。コンクリート製天井に無理矢理穴開けてぶら下げたらしいけど、電源は床近くのコンセントから延長コードを天井まで長く長く延ばされているのが見える。重厚そうなプロペラつきライトなのに、どうにもチープな印象になってしまっているのだった。

最後に電球の話。
スーパーマーケットなどで売られている電球は、やたらと安い。4個パックで2ドル前後で買うことができるけれど、反面、すぐに切れてしまうのだ。我が家には合計13個の電球があちらこちらに取り付けられているけれど(蛍光灯は1つもなく、全てが同じ白熱灯)、引っ越して1ヶ月ほどでほぼ全ての電球を入れ替えることになった。その後も3週間に1個ほどの割合でどこかが点かなくなっていく。多少値段が高めだったGE社製のものに切り替えたら、多少はマシになったものの、やはり長持ちするとは言い難い。なんでそんなにヤワなんだろう、アメリカの電球……。