Happy Halloween

10月31日は、ハロウィン。
元々は古代ケルト民族の儀式だったハロウィンは、キリスト教の「万聖節」(All Saint's Day 天国の聖人を祭る祝日)の前夜祭のことだ。
「万聖節の宵祭り」(All Hallows Eve = Hallowとは"聖徒"の意味)が省略されて「Halloween」となった。

過去に亡くなった人がこの日には蘇るとされており、しかも蘇る霊は悪霊で悪運や不幸をもたらすと考えられていたため、それを驚かして追い払うためにお化けや魔法使いの扮装をするようになった。……というのが宗教的背景だけど、宗教的な匂いはほとんど全く感じられないのが現在のハロウィン。
10月に入るか入らないかくらいの頃から、街はハロウィン一色になりはじめる。日本にいるときは特別な感慨を抱かなかったイベントだけど、どこもかしこもオレンジと黒の配色になりはじめると、心はついつい浮き立ってしまう。

ハロウィン直前のWAL☆MART店頭

スーパーマーケットの野菜売場には巨大なオレンジ色のカボチャがぽつぽつと積まれ始め、ハロウィン2週間前あたりになると今度は店頭に写真のようなカボチャ置き場が出現するように。
子供の頭ほどの大きさのものならば1個2〜3ドルから、大人の頭を越える大きさのものは7ドルから10ドルあたりという感じ。ハロウィンが近づくと、このカボチャが飛ぶように売れていく。どーして4個も5個も巨大カボチャをカートに詰めているんだろうと、思わずアメリカ人の買い物っぷりを見て笑ってしまうのだけど、家族や友人たちで「Jack-O-Lantern」(ジャック・オ・ランタン)作りを楽しむのはごく普通のことのらしい。カボチャのそばには、大抵カービングキットセットも併せて売られている。型紙なんかもついていたりして。
で、思わずカボチャとカービングキットを買ってきてしまった。

トイザラスのハロウィンコーナー。スターウォーズものが多いねぇ…… こちらはスーパーの菓子売場

カボチャと共に、スーパーマーケットやおもちゃ屋さんには「ハロウィン用菓子」「ハロウィン用仮装衣装」などというのも続々と並び始める。

乳児用の着ぐるみから、大人用のマントまで、さすがお祭り好きの風土ということがあってか品揃えは豊富。幼児用の吸血鬼マントなら3ドル程度で買える。
やはり主役は子供ということで、小学校低学年くらいのサイズのものが一番種類が豊富だし凝っているなぁという印象だった。時節柄か、スターウォーズものが多い。マスク付きヨーダセットなんて、かなり良い感じだ。

そしてそして、仮装衣装売場に負けず劣らず華やかな菓子売場。
いつも色彩豊かな(豊かすぎる)ケーキが売られるスーパーマーケットの生菓子売場だけど、このシーズンはまた一段と派手な展開になった。
並ぶカップケーキのクリームの色はオレンジと黄色がひときわ目立ち、オレンジ色のカボチャ模様が施されたホールケーキのサイドに塗られたクリームは真っ黒だ。真っ黒の生クリームなんて舐めたくない……と私は売場で硬直してしまうのだけど、それでもそんなケーキは案外売れていくらしい。かと思ったらコウモリの模様を施された紫色クリームのケーキなんていうのもあったりして、"それは茄子ケーキかよ!"とツッコミを入れたくなる。
生菓子と共に、ミニ包装された駄菓子の巨大袋(←子供たちに簡単に配れるようになっている)もこれでもかこれでもかとスーパーには並んでいた。

ハロウィン1週間前。
買ってきたカボチャをカービングしてみた。

  1. ヘタをぐるりと囲むように包丁を入れ、蓋の如くカポンと外す。
  2. スプーン(カービングキットにはそれ用のプラスチック製匙が入っていたりもする)でカボチャのワタ及び種を除く。
  3. カボチャの側面に、好みの図案を書く。クレヨンなどで直書きしてもいいし、型紙があるのならそれをカボチャに押し当てて、先の尖ったもの(カービングキットにはそれ用のプラスチック製のピンが入っていたりもする)で輪郭に沿ってプツプツ軽く穴を開けていくのもいい。
  4. カービングナイフは刃渡り10cm程度のミニ糸ノコのようなもので、これを図案通りにカボチャに突き入れ、ザシザシと削っていく。ノリは、いつか学校でやったような"影絵を作ってみましょう"みたいな感じ。

……というのが、大体の流れ。
日本の"くりかぼちゃ"的な固さを想像していたのだけど、こちらのオレンジ色のカボチャはそれほど果肉も厚くなく、それほど固くもない。カービングキットのミニ糸ノコでさほど力を必要とすることなくザシザシとカボチャは削れていく。
気分は小学校の"図画工作"の授業のようで、なかなか楽しい。楽しかった。……が、私はカボチャを削るのが早すぎたようだ。

ハロウィン3日前にして、せっかく作ったジャック・オ・ランタンの顔がゆがみ始めていることに気がついた。削ったエッジは妙にヤワヤワとしていて、良くみると中にはカビが生えている。
あいにくその前後は雨降りの日が多くて湿気がちだったということもあってか、カボチャは見事にカビてしまったのだった。よくよくネットサーフィンなどして調べると、やはりカービングを早くやりすぎるとカビてしまうものらしい。せいぜい3日前くらいに作るのが、美しいフォルムを保つにはベストなタイミングであるらしかった。
が、他のお宅を眺めると、1週間以上前から玄関先にジャック・オ・ランタンが置かれてニヤニヤしていたりする。"あなたの家はカボチャ屋ですか?"と聞きたくなるほど家の前にカボチャが積まれている家もあった。よくよく見やると、やっぱりカビていたり、どころかリスに囓られてえらく不格好な人相のジャック・オ・ランタンになっていたりもして……という具合だったので、それほど気にすることもないのかもしれない。

研究所もハロウィン一色

ハロウィン当日。
今年の留学生仲間には子供が3人もいるし、ということもあり、夫の所属する研究室で小さなハロウィンパーティーが開かれた。各々作ったジャック・オ・ランタンを持ち寄りつつ、お菓子やジュースを用意してハロウィンパーティー。
会う人会う人、今日の挨拶は「Happy Halloween !」だ。

研究室の会議室テーブルにはいくつものジャック・オ・ランタンが並び、カボチャ模様の紙皿や紙コップが置かれ、鮮やかな色彩の菓子がいくつもちりばめられた。いつかスーパーマーケットで見かけた派手なケーキも登場している。
子供の仮装を楽しく眺めつつ、しばし皆でおしゃべりしたり、遊んだり。
オレンジ色一色のケーキはなかなかの迫力と味だった(歯が溶けるかと思うほど甘かった……)。

本当ならば「Trick or Treat !」と子供達が家々を練り歩くハロウィン。
が、あいにく我が家は集合住宅で、しかも本来ならば子供は住めない(住んじゃいけない)間取りの住宅なので子供はほとんどいないのだった。だから、我が家のドアをノックするお客様はゼロ。時勢もあってか、最近は「知り合いの家に親が車で連れ歩く」とか、「ハロウィンサービスをやっているショッピングモールに行って、各店舗に"Trick or Treat !"をしに行く(するとお菓子を貰える)」というスタイルも多くなっているということだ。実際、ご近所のモールではそのイベントをやっていて、店員さんたちが魔法使いや殺人鬼になっていて大変なことになっていたらしい。

ハロウィン当日、小学校の登校風景に出くわしたという夫が、後になって教えてくれた。
「あのね、ヒトじゃないモノがいっぱい登校していたよー!」
だそうだ。ああ、それ、ちょっと見たかったかも。