大量のゴミはまとめてポイ

巨大なコンテナ「あの、ゴミは」
「ああ、ゴミはね、外のコンテナに捨ててね。いつでもかまわないから」
「あの……分別は?」
「そんなものはね、ないから」
「……はい?」
アメリカで住む家が決まり、ランドリーはここ、あっちにはプールがあって……と説明を受けている時の会話だった。

アメリカは何かと"先端"をいく国であると思っていた。二酸化炭素の量が、環境破壊が、と"世界のリーダー"然として偉そうにあれこれ言っているくらいだから、リサイクルが相当根付いている国なんだろうなぁと勝手に思っていた。アメリカで新生活を始めた矢先に、「ゴミは全部いっしょくただから」と言われて、私は思わずハニワ顔になってしまったのだった。

外に出ると、私たちが住む棟から歩いて50mほどのところに、確かに深緑色のコンテナがあった。2m四方の立方形という感じの、ごっついコンテナだ。ゴミを収集した直後なのだろう中はがらんどうで、私の胸の高さほどのところに窓がついている。上には蓋はなく、ただの「箱」といった形状だ。当面はその窓からゴミをぽいぽい捨てていき、ゴミが窓に到達するとその窓は閉められ、今度は上からゴミを投げ入れていく。3日に1度ほど、清掃業者がやってきて、クレーンでコンテナごと持ち上げて中身をざざざっとトラックに積み込み、去っていくのだった。クレーンで持ち上げたコンテナを無造作に置いていくものだから、コンクリートの台からコンテナはいつも微妙にズレている。

そして、本当に分別は必要ないのだった。スーパーマーケットに売られているゴミ袋はおしなべて巨大で、その袋を突っ込むゴミ袋もおしなべて巨大だ。食材のパッケージや瓶、缶など全てのゴミは無造作にそのゴミ袋に詰められていき、それがいっぱいになったところで袋をコンテナに突っ込みに行く。スーパーマーケットによっては缶や瓶のリサイクル用コンテナも設置されているという話も聞いたことはあるけれど、目立つところにそのコンテナがあったためしはないような気がする。
リサイクルへの取り組みは各州かなりバラバラで、中には日本なみにきっちりやっているところもあると聞いた。けれど、南部の田舎町となると、これが現状だ(あ、でもニューヨークの友人宅も"全部いっしょくたにポイ"だったなぁ……)。
そして生ゴミは、どこの家庭にも通常ついているキッチンシンクのディスポーザーから下水へ流される。野菜くず、卵のカラ、料理の残り、そういったものは流してしまってガギャギャギャギャとディスポーザーのスイッチを押せば全ておしまいだ。

で、そのガラスも紙もいっしょくたのゴミはどうなるかと言うと、当然"埋めたて"。町から町の間が100kmほどもあるところもある広大な土地をもつアメリカならではの処理法というかなんというか……日本でせこせこと透明なガラスと色つきガラスを分けたり、段ボールをまとめたりしていた事を思い出すと微妙に腹立たしくなってくる。

日本は過剰包装だとよく言われる。確かに、アメリカでパンやケーキを買っても日本のようにこちゃこちゃ細かく包装などしてくれない。けれども、アメリカのゴミは相当がさばる。牛乳やジュースのガロンサイズボトルは牛乳の紙パックのように畳んで捨てることができないので、そういうもので袋はすぐにいっぱいになる。スーパーマーケットで買い物をすると店員さんが袋詰めしてくれるのだけれど、そのガロンサイズボトル1本につき1袋という感じで膨大な量のビニール袋が使われてしまう。カートの中はスーパーのロゴ入り袋でいっぱいだ(上手く詰めれば5枚ほどの袋で済むところを10枚以上使うのがアメリカ人……)。1回の買い物で15枚以上の袋を貰っても、それを消費する前に次の買い物に行ってしまうため、結局袋はたまりたまって捨てることに。あああ、もったいないぞ。それほどリサイクル精神が旺盛でない私の良心ですらちくちく痛む。

そして、環境破壊や何やらを気にする人が剥いてしまいそうなのが"紙皿文化"。モーテルの朝食コーナーで、研究所主催の気軽なパーティーで、そういうところで使われるのは紙皿、紙コップ、プラスチック製フォークなどの使い捨ての食器類。どんどん使われてはどんどん捨てられていく。日本のファーストフードでも見られる光景ではあるけれど、なんというか、規模が違う。日本では陶器の皿が出てきておかしくない状況であっても、そこに山と積まれているのは紙皿だったりして、部屋の隅に置かれた巨大なゴミ袋が使用済みの皿でいっぱいになっていく。たとえ正装着用のパーティーであっても、紙皿が出てくることもしばしばだ。
アメリカの紙製品はすごく安価だ。ノートもトイレットペーパーも、何もかもが日本のそれより安い。紙皿が重宝されているのは、陶器の皿を洗う人件費水道代その他諸々より紙皿を買って捨てる方が圧倒的に安価だからなのだろう。

土地がいっぱいあるからって、資源がありあまってるからって、いい気になってんじゃないぞー……と密かに思う私だった。