電気コンロはダッチオーブンがお好き

掃除は簡単です

新しい家が決まり、いざいざと初めての我が家に入ったとき、まず台所が気になって見に行った。
巨大な、奥行きたっぷりの冷蔵庫。水を流すところのシンクは2つに区切られており、上下に収納棚がたっぷりだ。そして、「せ、洗濯機……?」と一瞬思ってしまった巨大なブツが、加熱調理器具なのだった。

ダイヤル式のつまみが5つ。上部には大1つ中1つ小2つの、合計4つの電熱コンロがあり、その下は電気オーブンになっている。
「あああ、やっぱりガスコンロじゃないのねぇ……」
と、日本から一応話には聞いていて覚悟はしていたけれど、「ガスじゃないのねぇ……」としばらくはがっかりしていた。何しろ、炎が出るわけじゃないから、"鍋底をぺったりとつけられる"以外の調理器具が使えない。そうすると、何よりも中華鍋が使えないのであった。炒め物をするにあたって、中華鍋は最強だ。最強の火でジャッジャカ煽ると、それだけでもなんとなく美味しくできるような気がする。その中華鍋が、使えない。炒飯大王の我が夫はしばらくショックが隠せなかった。

けど、なかなかどうして、これはこれで使い勝手が悪くないものだと、2ヶ月使い続けてなんとなくわかってきた。

思ったよりも、加熱は早い。パスタを茹でようと大鍋に水を満たすと、ガスコンロより5割増し早く沸騰する感じ。ダイヤルを捻ってもすぐに火の強弱が変わるわけじゃないから細かな火加減は難しいけど、"とろ火でとろとろ"なんてものは得意だ。小さなコンロを再弱にしてスープを乗せておけば、沸騰することもなくいつまでも温かい。

そして電熱コンロと何よりも相性が良いのが「ダッチオーブン」「スキレット」などの鋳鉄鍋の類なのだった。
私たちの住むテネシー州は、「ダッチオーブン」の最大手会社、LODGE社があるところだ。それ故に、というわけじゃないだろうけどLODGE社の商品はやたらと安く買うことができて、ついついあれこれ買ってしまう私たち。

鋳鉄鍋はその厚さゆえに、沸騰したところで火を消しても鍋そのものが冷めない限りはしばらくグツグツ言っているようなところがある。カンカンに熱したスキレットで肉を焼くと、突然鍋の温度が下がることなしにステーキなどを焼くことができるので、かなり良い具合に仕上がるのだった。加熱が早く火の当たりが柔らかい電熱コンロは、この鋳鉄鍋の特性と合っていた。ガスコンロに比べると凸凹がない分、安定感もある。

で、夏はつらいけど、寒い季節には嬉しいかもしれないのが、発熱効果だったりして。
電気コンロ、何だかめちゃめちゃ周囲が暑くなるのだ。オーブンまでつけた日には、あわてて冷房を最強にしなければダイニングで食事するのがイヤになっちゃうほど。
「あんまり寒い日にはオーブンつけよう」
「そうしよう」
と、なんか間違った使い方をしてしまいそうな我が家なのだった。