私を野球に連れてって・2

寒いけど熱い夜でした

我が町ナッシュビルの野球チーム、Nashville Soundsの応援に行った翌々日、我が家は留学生仲間と連れだって総勢9人で、セントルイスまで行ってきた。目的は、「大リーグの試合というものも見てみたい」というものだ。

4月18日の試合は、ナイター。あらかじめホームページ経由で試合チケットを買っておいた私たちは、その日の朝早く自家用車数台に乗り込んで出発した。無事に午後早くの時間にセントルイスに到着し、しばらくぷらぷらして試合開始を待つ。
試合開始は7時10分。6時半頃に球場に到着してみると、続々と人々が球場に押し寄せているところだった。多くの観客が、セントルイスのホームチーム、St.Louis Cardinals(セントルイス カーディナルス)のトレードカラーである赤い色の服を身にまとっていて、球場周辺は赤く染まっている。チームのロゴ入りのトレーナーやウィンドブレーカーを着ている人もいるし、単に赤い服をと身につけている人も多い。球場に入ると、観客席の椅子まで真っ赤なものだから、全体的に目に入る色は赤色ばかりになってくる。

今日の対戦相手はArizona Diamondbacks(アリゾナ ダイアモンドバックス)。一昨年に全米ナンバー1になったチームだ。カーディナルスも、全米ナンバー1に何度もなったことがある強いチームであるらしい。
球場は、我が町の2軍用グラウンドに比べると、とてつもなく巨大だった。私たちは1人18ドルの、バックネット裏の3階席だ。東京ドームの上方の席と同じような、急な勾配になっている階段をふらふらしながらのぼり、席についた。まもなく国家斉唱があり、試合が始まった。
赤一色に染まる応援席

1階席も3階席も、ちらちらと空席が目立つ程度の客の入りだ。3回裏が終わる頃までに続々とお客さんは増えていき、7回裏が終わった頃からちらちらと帰り出す人が出てきたような感じだった。たっぷり3時間かかった試合ということもあってか(それにセントルイス側がずっとリードしていて"もうこれで決まったな"という雰囲気だったということもあってか)、試合が終わった頃には最高潮時の1/3ほどのお客が消えていた。そんな中、私たちは最初から最後まで各自休憩と取りつつもみっちり観戦。……かなり、寒かった。

私たちの町は、4月半ば頃からもうすっかり"初夏"という陽気だった。一日中半袖で歩いていても寒さを感じないほどの気温になっていたため、ついそのつもりで薄着でセントルイス入りしてしまった私たち。セントルイスはナッシュビルから200マイルほども北にある。大阪と東京ほども距離がある。当然、かなり寒いと思っていなければいけないところだった。昼間は暖かだったセントルイスも、日が暮れると気温が一気に下がり始める。風もそこそこあり、かなり寒い野球観戦となった。慌ててカーディナルスのロゴ入りトレーナーを買う人あり、何回も食べ物売り場に避難して暖をとる人あり、皆寒さを堪えつつの応援だ。

真っ赤な観客席の中、黄色いジャケットを着た物売りの人たちがかなりの頻度で通路を通っていく。持っているのはジュースやビールの類、わたあめやアイスクリーム、応援グッズなど。両手で抱えるようにして持たなければいけない巨大なカップ入りのレモネードは6ドルとかなり高めだけれど、丈夫なコップにはカーディナルスのロゴとイラストがついていてお土産として持って帰れるようになっている。半分にぶったぎったレモンがそのままドボンと沈められたレモネードは、レモンの香りがかなり強めなさっぱりしたものだった。
これを買ってくれたら〜♪

つまみに食べていたのは、ピーナッツとクラッカージャック。7回表が終わった後に皆で歌うお約束の歌、"Take me out to the Ball Game"に出てくる食べ物だ。
「……これが、クラッカージャック?」
「どんな食べ物なんだろ」
と、球場に入る直前に路面売りでおっちゃんが売っていたそれを思わず購入してしまった。
ピーナッツは、殻つきのものがカーディナルスのロゴ入り袋に入れられたもの。クラッカージャックは、キャラメルがけのポップコーンのことだった。ほのかに塩気があり、甘いキャラメルがコーティングされている。それほど甘ったるいものではなく、コーラにもビールにも合いそうなお菓子だ。息子のツボにはまったらしく、彼は袋を抱えてぽりぽりぽりぽり食べていた。こら、一人で全部食うな。

更には、一昨日の試合でも見かけて食べた"Funnel Cake"も見つかった。私たちの席の近くの出口付近ではコットンキャンディー(わたあめ)やホットドッグ、ポップコーンなどの売り場しかなかったのだけど、近くに座っていたおばさんが手にもっていたのはまさに揚げドーナツ!
「そそそ、それをどこで?」
と尋ねると、
「ああ、×××番の出口の近くにお店があったのよー」
と教えてくれた。敵チームが攻撃している間に、だーっと走っていって買ってくる。ドーナツ生地を細くにょろにょろとスパゲッティのように絞り出して、それを油でサクッと揚げたものに粉砂糖をたっぷりかけたFunnel Cake。今日もしみじみ美味しかった。何しろ寒いのでこのアツアツっぷりがありがたい。

空席がけっこう目立っていたものの、今日の観客は3万人ちょっといたとか。チャンス到来に応援する声は、地鳴りのように響いていた。
7回表の攻撃が終わると、皆で立ち上がって"Take me out to the Ball Game"を歌う。"For it's one, two three strikes you're out♪"の部分では、指を1、2、3と立てる人が多く、歌が終わると皆で拍手。ほんわかとした楽しい曲だ。今回は、前日のうちに家で練習して大体歌詞を覚えていった。

試合は2回裏にカーディナルスが3点先制し、そのまま1点ずつ点を重ねて7回裏が終わった段階で6−0という良い感じのムードに。4回あたりまでは、これはもしかして完全試合?という流れになっていたものの、ぽてぽてと相手チームのヒットが出始めてしまい、9回表で3点返されてしまった。その後も「ここでホームラン出されたら逆転されるんじゃないか」というピンチな場面になったりしながら、最後はなんとか6−3でカーディナルスの勝利。適度に安心して見ていられ、適度にハラハラさせられた試合だった。
試合終了時には、ドガガガガー!と花火が上がる。真っ赤な小鳥(Cardinal)がチームキャラクターな、なんだか可愛らしい印象のカーディナルス。今日は(今日も?)とても強かった。真っ赤な観客も大喜びだ。