1月11日(土) ベニエにケイジャン、生牡蠣にカジノ

ニューオーリンズの朝はベニエから〜「Café du Monde」

ニューオーリンズ、2日目の朝。
8時半にホテルロビーに集合し、総勢9人で向かった先は「ベニエと言ったらやっぱりここでしょ〜」の「Café du Monde」。ホテルからは少々距離があるので、川沿いを走る路面電車に乗ってお店のそばに向かう。

夏には壁がなく、吹き抜けになっているこのお店、さすがに冬は周囲をビニールシートで覆って壁が作られていた。ぎゅうぎゅうに並んだカフェテーブル、なんとなくベトつくテーブルや床、愛想が良いとは言えない店員さんたち。あまり落ち着ける雰囲気でもなく、お洒落という感じも全くない。でも、ここのベニエは最高なのだ。

ベニエ〜〜〜♪ ベニエとは、揚げドーナツのこと。稲荷寿司のような外見と大きさのごろんと四角い揚げたてのドーナツには、これでもかと粉砂糖がかけられている。1セット3個。
日本でも同名のチェーン店がダスキンの資本で展開されているけれど、話によると大きさも味も今ひとつ異なるものらしい。とりあえず「テーブルにこぼれるほどの粉砂糖」はかかっていないらしいし、サイズも非常にお洒落な可愛らしいものなのだとか。でも、ベニエはやっぱりあの容赦ないボリュームが嬉しいのよねぇ〜。

2つのテーブルに別れて空いている席に座ったものの(このお店、店員さんが席に案内してくれることにはあまり期待できないので、自ら適当な席を探して座る。周囲のお客さんを観察すると大体そうしている)、前回はすぐに寄ってきたテーブル担当の店員さんが、今日はなかなかやってこない。
どうも、ちょうどシフト入れ替えのタイミングにあたってしまったらしく、店内にうじゃうじゃいる店員さんは、しかしコーヒーを片手に休憩体勢に入ってしまっている。「うちのテーブルの担当、誰よ?」と傍らを通る店員さんに聞いても、「私じゃないのよね〜」と、担当外の人はものすごくつれない。
待っても待っても注文を取る人は訪れず、しかし混み合う店内、担当がちゃんと動いている他の席に移るのも難しかった。
やっと担当がつかまったのは席についてから10分以上経ってから。すぐ横の、別の担当が動いているテーブルのお客は、私たちが座った後に席についたというのに、もうベニエを食べ終わっている頃合いだった。

気の弱そうなアジア系のおにいちゃんが「ご注文は?」と聞きに来た時には、だんなの顔はかつてなく不機嫌なものになっていた。
「すっっっっっごく待ったんだけど!?」
と不機嫌もあらわに注文する我が夫。注文する内容が揚げドーナツだというのが、この顔と態度に微妙にそぐっていない。(でもでも、すっごく待ったのよね、すっごく怒っていたのよね)
「ベニエ3つ、カフェオレ2つ、チョコレートミルク1つね!」
とンババババッとだんなが伝えるやいなや、お兄ちゃんは
「待たせてごめん、ごめんなさい。シフトがね、入れ替わるところだったんだ……」
とすっとんでベニエを持ってきてくれた。驚くほど早くテーブルにやってきたベニエとカフェオレ。
「3セットの注文だったよね。今、1セット揚げているところだから、とりあえず2つ持ってきたよ」
と、2回に分けてドーナツはやってきた(普通はそんなことしないで注文した品が揃ったところで持ってくる)。

皿から溢れそうなほどに積み上がった6個のベニエ。皿からこぼれそうな、いや、こぼれまくってしまっている大量の粉砂糖。2皿目の揚げたてベニエは、かつてなく揚げたてのものだった。また揚げ油も切れきっていないようなドーナツの表面の砂糖は、熱でじわじわとシロップのように溶けつつある。噛むと熱い油がじゅわっと染み出てくるような揚げたてのベニエは、寒い日の朝にはたまらない美味しさだった。出来たてベニエに待たされた怒りもなんとなくうすらいで、私が3個半、だんなも3個半。息子は1個。チコリ入りのコーヒーに牛乳がたっぷり入ったカフェオレをだばだばだ〜と飲みつつ、9個あったベニエは1個を残して無くなった。この1個を食べたら昼御飯に響くなぁ……と思っていたところ、「あ、僕ちょっと物足りないと思っていたんで……」とHさんの胃袋に。

「じゃ、行きましょうか」
と立ち上がった皆の服は、全体的に粉砂糖で白っぽく粉をはたいたようになっていた。それもまたベニエ。

New Orleans 「Café du Monde」にて
Beignets
Cafe Au Lait (Sm)
Chocolate Milk (Sm)
 ……を、家族3人で
3×$1.25
2×$1.25
$1.25
 

昔々の造幣局〜「The Old U.S. Mint」

食後は昼食を予約している11時過ぎまで各自自由行動。
我が家は歩いて行けるところにある旧造幣局、「The Old U.S. Mint」に行ってみた。古めかしい建物は造幣局だった当時そのままらしく、今は使われていないものの造幣局博物館になっている、ということだ。

けっこう楽しかったです

入場料は1人$5、12歳以下は無料。
造幣局関連の展示ばかりかと思っていたけれど造幣局関係は1階のごく一部のみで、2階に常設展示らしい「New Orleans Jazz」、そして1ヶ月の特別展示である「Matisse's Jazz」の3つが同じくらいの規模で展示されていた。
「旧造幣局」というよりは、「昔々の造幣局」といった感じだ。金属を溶かすポットや、木製の硬貨のサイズを測る物差し、分銅を使う重量計器などが並び、ウェストがキュッと絞られたドレスを着た夫人たちが働く姿がかつての絵などで紹介されている。その世界はディズニーランドのウェスタンランドあたりで展開されているものにそっくりだ。

楽器や楽譜などの展示があるニューオーリンズジャズの展示と、画家マティスの写真やスケッチ、イラストを眺めて外に出ると、集合まであと1時間ほど。ぷらぷら買い物しながら待ち合わせ場所に向かうことに。
ジャズの展示があるということで、ミュージアムショップにはニューオーリンズ音楽のCDがふんだんに揃っていた。思わず「Mardi Gras Parade Music from New Orleans」(マルディ・グラについてはこのへんに)というCDを買ってみたり。いかにもパレードに使われそうな、明るい音色のジャズが詰まったCDで、南部の香りがたっぷりと。なかなか楽しいCDだった。

New Orleans 「The Old U.S. Mint」にてお買い物
入場料
「Mardi Gras Parade Music from New Orleans」
2×$5.00
$18.00

うーん、可愛いかも 今年のマルディ・グラは3月4日頃らしい。まだ2ヶ月先ではあるけれど、町のお土産屋には夏以上にマルディ・グラのグッズが溢れていた。羽のついた仮面に妙な飾りのついた帽子、そして妙なオブジェがあれこれついたビーズのネックレス。パレード時、フロート(山車)の上からビーズのネックレスやコイン、カップ(どれもプラスチックにラメを張ったようなちゃちいものではあるんだけど)が観客に向かって投げられるのだけれど、それを手に入れた人は幸福になれるらしい。で、投げられるそれよりは幾分ちゃんとした(?)ものがお土産用に売られている。
基本カラーは紫と緑と金。それをベースにしながら、でもビーズの色使いはやたらと華やかだし、くっついているオブジェも「なんでこんなものが?」というものが多い。妙なところでは女性の胸とか、男性のアレとかがネックレスになっていたり、やたらとリアルな海老やワニ、虫の類がついていたり。

雑多な店が並ぶマーケット、「French Market」には、そんな「マルディ・グラ屋」がこれでもかと並んでいる。
「こんなちゃっちぃビーズのネックレスを買ってもなぁ……」と思いつつ、なんとなく眺めて歩いていたところ、ベニエとコーヒーのオブジェがついたビーズを発見。地味めな黒と金の色使いがまた良い感じ。値段を見ると「2つで5ドル」とあったので、息子に
「どれか買ってあげるよ、どれがいーい?」
と聞き、「僕はこれがいーなー」と言われた電車のオブジェつきの派手なビーズと一緒に買ってみた。カジノでもらった緑のビーズと一緒にかけると、何だかいかにもマルディ・グラという感じ。

New Orleans 「French Market」にてお買い物
マルディ・グラ ビーズ

$5.00

更に歩き、「Café du Monde」の売店を発見。ロゴ入りタオルやマグカップなどで溢れる店内をあれこれ眺め歩き、チコリ入りのコーヒーを1缶購入。チコリの根を砕いたものがコーヒー豆と混ぜられているチコリコーヒーは、ニューオーリンズ名物の1つ。別に漢方薬臭いわけでもハーブ臭いわけでもなく、ちょっと苦さが強めのコーヒーという味。ミルク多めのカフェオレに良く似合う。ベニエにも似合う。

New Orleans 「Café du Monde Company Store」にてお買い物
Café du Monde Coffee & Chicory
$4.60

ケイジャンブラッディマリーは手強かった〜「Gumbo Shop」

今日のお昼はクレオール料理店の「Gumbo Shop」。
町でもらった公式ガイドブックにクレオール料理店として掲載されているのを見て「クレオール料理だったのか!」と初めて確信したのだけど、繊細さの中にもどこか豪快さがあるこのお店の料理はなんとなくケイジャン臭さも感じられる(すごく適当な分け方をすると、よりフレンチに近いクリームたっぷり高級めな料理がクレオール、庶民風のピリ辛味が強めなものがケイジャン、という感じ……)。大体、ガンボスープはケイジャン料理だったような気がするし、でもニューオーリンズならガンボスープはどこにでもあるごく当たり前の料理だったりするので、「クレオール専門店」「ケイジャン専門店」と表記はされていてもその境界はすごく曖昧なのだった。

9人で予約をしようとしていたのだけど、残念ながらその人数では(もっと大人数のパーティーでないと)予約は受け付けてくれないのだという。
しかし、メールをやりとりしていたところ、マネージャーさんが
「お子さんがいるんだよね?じゃあ待たせるのは可哀相だから、開店の11時から30分間は私が責任もってその席は空けておいてあげますよ」
と嬉しい事を言ってくださった。11時10分にジャクソン広場に集合し、そこから100mほどしか離れていないその店に向かう。開店後15分のお店はまだガラガラ。それでも既に数組の客がテーブルについていた。4つのテーブルを繋げた席に9人が座ると、黒人のおばちゃんがやってきて
「お飲物はどうします?ケイジャンブラッディマリーとか、ハリケーン、あとはビール……」
と説明を始める。私たちは真っ昼間からビール。Hさんだけが
「あ、じゃあ、ケイジャンブラッディマリーっていうの試してみようかな……」
とトマトジュースベースのカクテルを注文していた。

Hさんの前にやってきた真っ赤なドリンク、すごい、すごい味がした。トマトはジュースというよりピューレかスープかという感じ。トマトの果肉の味も濃厚な、ドロリとしたものだ。アルコールは強めで、更にそこにタバスコをだばだばだ〜と落としたような辛さがある。スパイスの香りもこころなしか漂っていて、そのまま煮込んだらシュリンプクレオールなどになるんじゃないかという味がした。カクテルというより、冷たいスープという感じ。
「辛い、辛いよ……しかも強いよ……」
とHさんは1口目から涙目になってしまった。結局「あ、これ、けっこう美味しいよ。不味くはないよ」というIさんとMさんが2人で飲み干すことに。

ドリンクを飲みつつ、メニュー決め。テーブル担当のおばちゃんが
「今日のアントレは〜で、本日のスープは〜と、〜と……」
とメニュー掲載以外の料理の説明をしてくれる。その中に「タートルスープ」の単語を聞き取った私は、「それ!亀スープ!」と、前回売り切れで食べられなかったそれを飲んでみることに。亀、亀スープだ。話によると、亀はそれほど獲れなくなったそうなのでアリゲーターの肉を代用しているなどとも聞いたけれど、ともかく亀だ。コラーゲンたっぷりという気がしないでもない。
メインディッシュは、一度食べてみたかったクロウフィッシュ エトフェーを。クロウフィッシュとは、ザリガニのこと。ザリガニをトマトベースのスパイス入りソースでこってり煮込んでご飯にかけたものだ。担当のおばちゃんは、この料理が好きらしく、
「クロウフィッシュエトフェー!うん、いいわね、これはいいわ」
とニコニコと頷いてメモしている。

これが亀スープ 濃厚クリーミー、クロウフィッシュエトフェー

全員、スープとメインディッシュという組合せで注文。亀スープを頼んだのは3人だった。
やってきたのは、ガンボスープより赤色が強い感じのトローンとしたスープ。上には砕いたクラッカーが乗っている。担当のおばちゃんが
「よーくかき混ぜて、食べるのよ」
と言うので、何はともあれまずかき混ぜて、それから一啜り。亀というものを食べたことがないので、「これは美味しい亀ですねぇ」なんて事は全然言えないのだけれど、牛肉から乳臭さを取ったような、ホロリとした食感の肉がごろごろ入っている。一口啜ったのを確認したおばちゃんは、リキュールグラスに何やら洋酒を入れてきた。
「これはシェリー酒なの。ちょっと垂らすとこれがまた美味しいのよ。垂らす?」
とそれぞれの器にひとたらしずつシェリーを落としてくれた。ほんのり酸味のある、ツンと尖った香りのある洋酒が入って、スープは思った以上にまろやかな味に。ガンボほどスパイスは効いておらず、ビーフシチューとガンボを足して2で割ったような味わいだった。うま〜。

そしてメインディッシュのザリガニ料理。
外見は「野菜とザリガニのスパイストマトクリーム煮」という感じだろうか。ご飯がたっぷり脇に添えられ、その上には刻み葱がたっぷりと、という、日本人には妙に安心できてしまう光景が広がる料理だ。辛さはなくほんのり甘みのある煮込み料理で、とてもマイルド。ザリガニは、確かに泥臭さもないではなかったけれど、私はそれほど抵抗なく食べられた。(人によっては"え〜、あの、子供の頃に良く釣っていた、アレでしょ?"とあまり良い気分はしないものらしい)

私が「やっぱりベニエ、3個半も食べるんじゃなかった……」と満腹になって後悔している横で、大食漢のIさん・Mさんの両氏はテーブル上に残ったパンをもりもりと食べていた。この店に限らず、アメリカのレストランでは多くが"2人に1本"ほどの割合でドッグパンほどのサイズのパンが1本、ごろりとテーブルにやってくる。それを皆が適当にちぎりつつ食べるのだけど、テーブルにはそのパンがまだ2〜3本分ほど、たっぷり残っていた。
「なんかね、これをかけると美味しいんだぁ……」
と両氏はテーブル上に置かれていた、このお店のロゴ入りの「Creole Spice」なる赤い粉をせっせとパンにかけては食べている。ボトルを見ると、チリ系のパウダーをはじめとし、オレガノやタイムやガーリック、塩などが混ぜられたミックススパイスだ。適度に塩気があり、確かにふりかけに似た旨味がある。パンにも確かに似合う(いや、でも本当は煮込み料理の風味づけなどにかけるもんじゃないかと……)。
「うん、確かに美味しいかも」
「でしょ?いけるでしょ?」
と、そのうち皆でクレオールスパイスをかけながらパンを喰う、という光景が展開されてしまったのだった。
あまりにこのスパイスを気に入ったIさんは、「これ、買って帰れるの?」とお店の人に聞き、一瓶お買いあげ。

New Orleans 「Gumbo Shop」にて
Turtle Soup
Crawfish Etouffée
Beer (Dog Beer)
$3.95
$12.95
 

勝ったわよ、勝ちましたわよ〜「Harrah's」

で 旅行中の今、しかしながらアメフト好きにはのっぴきならない事態が今、起こりつつある。
我が町、テネシーはナッシュビルのアメフトチーム、TITANS(タイタンズ)がスーパーボール予選に勝ち進んでいるのだ。私はアメフトはもうさっぱりわからないのだけど、男性陣の盛り上がりはなかなかすごかった。元ラガーマンのMさんあたりがかなり夢中で、Hさん、我が夫あたりがルールをかなり把握して熱くなっているという感じ。
スーパーボールとは、日本の野球で言うところの"日本シリーズ"みたいなもの。話によると、今日の試合で勝てば「全米ベスト4入り」で、その後2回勝てば全米ナンバー1、と、そういうことらしい。

そういうわけで、「旅行中だけどアメフト観戦はするんだもんね」と、MさんHさん我が夫の3人は試合開始の3時半頃から数時間ホテルに籠もることになったのだった。子供も見ていてくれるそうで、喜んだのは私とHさん。
「子供から離れて遊べる!!」
「これはもう、カジノに行くしか!!」
と、私とHさんは2人でホテル向かいのカジノ「Harrah's」に向かったのだった。

ラスベガスのホテルにも張れるんじゃないかと思えるほどの、巨大な巨大なカジノフロアだ。入口は東西南北に4つもあり、入口ではID提示が求められる。フロアに中央付近に高額ギャンブル台が並び、周囲に多くのスロットが並ぶあたりはラスベガスのそれとほとんど変わりない。だんなが昨夜100ドル儲けたこともあり40ドルくらい捨ててもいいやと思いつつ、カジノは初めてのHさんと3台ほどのスロットで遊んでみた。
結果、40ドルの投資で143ドルの回収。かなり嬉しい結果になった。

最初はごく普通のスロットで、途中からはスロットの上に更にルーレットがついているような台で遊び始めた私。1回25セントなのだけど、コイン3枚まで同時賭けできる台だ。そして、3枚賭けしたときに限り、ゾロ目が出ると上のルーレットが回りだし、「×2」だの「×10」だの「×1000」だのの結果の分だけ倍増された金額が支払われる仕組。スロットに入れるコインも現金だし、出てくるのも現金。カジノ用の代用コインなどではなく本物がジャラジャラ出てくるので、妙な高揚感がある(いけないいけない)。

「全然揃わないじゃん……」
と思いつつ、これは収支トントンくらいかも、と思いつつスロットのボタンをガシャコンガシャコン押していたところ、別の台に居たHさんが「ダメです〜」と戻ってきた。そろそろ止めようかと思っていたところ、目の前に「BAR BAR BAR」(トリプルバー、というらしい)のマークが横に3つ。
「わ、並んだよ並んだよ」
と、回り始める上のルーレットを眺めていたところ、「×500」のところでストップ。コインの残量を示す電光掲示が、ピピピピピピピとやかましく連続音を響かせながら500カウント分増量した。えーとえーと、25セント玉500枚ということは、125ドル。
「きゃー!すごいすごいすごい、私、並んだの初めてみました!」
とHさん。私もジャラジャラと出てくる500枚以上の25セント玉を前にニヤニヤしてしまう。横に台にいたおっちゃんには「グッジョブ!」と親指を突き出され、
「もう止めよう、勝っている時が終わる時……」
とカジノ満喫1時間半ほどでホテルに戻った私たちだった。

逆転されて、ちょっと憮然としております そして皆でアメフト観戦。出かけていたIさんもWさんも部屋に帰ってきて(皆して独身3人組の部屋に入り浸っていたのだった)、ツインの部屋に大人が7人、子供が2人。テーブルの上にはビール瓶が散乱し、いい年した大人たちがすっかり"合宿状態"だ。
非常に見ていてハラハラする試合だった。最初は順調にTITANSが点を重ねていたらしいのだけど、終了間近には逆転され、必死の追い上げで同点に。延長戦(オーバータイム、と言うらしい)になだれ込んで、最終的にはTITANSが"やっと勝った"という感じだった。7時半に試合が終わる頃には、全員
「勝った、勝ったよ……」
「やっと勝ったよ……」
とへろへろになっていた。
来週は、対戦相手によっては我が町での試合になるらしい(対戦相手によっては西海岸のオークランドになるらしい)。
我が町での試合だったら是非見に行こう!と盛り上がる私たちだった(結局オークランドでの戦いになりますた……)。

勝利の生牡蠣〜「Acme」

アメフト観戦で、もう午後8時前。
今晩行こうと思っていた生牡蠣の旨い店「Acme」は、予約を受け付けてくれないということで適当に行こうと思っていたので、ある意味ちょうど良いのであった。
昨夜はメンフィスに宿泊したというI(α)夫妻も合流し、総勢11人でお店に向かう。お店の前は10人ほどの行列ができている。とにかく美味しいけれど、とにかく人気の店なのだった。11人一緒に座ることはまず無理だろうと覚悟していたけれど、20分ほど待って案内されたところにはちょっと狭くはあるけれどちゃんと11人分の席が用意されていた。

「生牡蠣ダメな人〜……いませんね〜」
「1ダース食えない人〜……いませんね〜」
と、
「ドリンクはどうする?あと、生牡蠣はどうする?」
と最初にそう言ってきたテーブル担当のおねぇさんに各自飲み物を注文。今回頼んだビールは、やはりルイジアナのビール、Dixie(ディキシー)。だんなはVoodoo(ブードゥー)。そして、
「生牡蠣はね、全員1ダース。えーと、大人9人いるから9ダースね」
とおねぇさんに伝える。おねぇさん、この店に来たら生牡蠣喰うのは当然だろうに、さすがに1人1ダースはびっくりしたらしい。
「マジ?ホントに?1人1ダースね、わかったわ」
と笑いながら厨房に去っていった。

これが全部私の分……(惚) 1人1ダースの生牡蠣は、さすがに壮観だ。テーブルは生牡蠣でいっぱいになった。
このプレートに乗っている牡蠣が全部、私の分。私だけの分。誰にもあげない。あげないったらあげない。昨夜の生牡蠣でも大喜びの一団だったけど、今日は更にすさまじかった。そしてそして、昨夜の生牡蠣より確実に美味しかった。
1ダース$6.49という価格も、このあたりではかなり安い方だと思う。しかも旨いとあって、皆の手は止まらなくなった。私も、結果的に1ダース以上食べてしまうことはあっても、目の前にある1ダースが全部自分の取り分という経験は初めてかもしれない。全員生牡蠣を前にニヤニヤしながらテーブルに向かっているのであった。

レモンをチュッと絞り、カクテルソースをちょっとなすりつけ、殻のかけらがちょっと唇にザラつきはするけれど、牡蠣の端から身をちゅるんと吸い込んで食べる。プルプルした身は水気たっぷりで、この上なく旨かった。
「うまい、うまいよ〜」
「もう半分食べちゃったよ……って、目の前のMさん、あと2個しかないし!」
「シアワセだよぅ〜」
と、えらい勢いで牡蠣を消費する怪しい日本人の集団なのだった。

子供たちにはフライドポテトとスモークソーセージ。4ドルほどのソーセージは、1本これでもかと太く長いものがごろりと皿に乗せられたものだった。皮がはじけそうなほどにパッツンパッツンになったブリブリしたソーセージで、これがもう子供らから奪って食べてしまいたくなるほど旨い。子供たちも、他のものにも手を出しつつソーセージとポテトをもりもり食べている。

このお店、ちょっとだけ残念なことにはフードメニューがそれほど充実していない。「Po-Boy(ポーボーイ)」という名のサンドイッチ類の他は、「他のあらゆるものが美味しいけど、これだけは止めておいた方がいい」という感じの寿司類。あとは何種類かのフライ類に、ジャンバラヤとガンボスープ、そのくらいだ。各々、ガンボスープをメインディッシュとして食べたり、ポーボーイを囓ったり。私はだんなと2人で1皿、牡蠣フライ入りのポーボーイを注文し、それだけでは少々物足りないと、サイドメニューとしてのミニジャンバラヤを持ってきてもらった。

すごいボリュームだ、ポーボーイ ジャンバラヤ〜 牡蠣フライがこれでもかと間に挟まった巨大なサンドイッチがやってきた。2つのパンの塊がどかんどかんと皿に置かれているのだけど、1つの大きさが体長(?)20cmほど。しかも太い。その間には刻みキャベツと共にこぼれそうなほどの(いや、実際こぼれてる)牡蠣フライが詰まっている。1人1皿食べるのは至難の業なボリュームだ。
わしっと掴み、はぐはぐと囓りつつジャンバラヤもつつく。ちょっと柔らかめのフランスパンという感じのパンに、カリカリサクサクの牡蠣フライがたっぷりと。ちょっと柔らかめのジャンバラヤは辛さはほとんどないけどスパイシー。

そしてビールを飲み干した私は、"ハリケーンカクテル"をHさんと一緒に飲んでいるのであった。
ラムをベースにジュースと混ぜ合わせたピンク色のカクテルは、この町名物。昨日の夜Mさんが注文していたそれを一口もらったけれど、ジュースの甘さも控えめでピンク色も美しい、上品な味がした。本日この夜、私たちの前に来たのはペナペナなプラスチックカップに入ったちょっとばかりドギツイ色のピンクのカクテル。アルコール度数も、何だか心もち高い。口当たりが良いのでついついチュルチュルチュル〜と飲んでしまうけど、その直後に脳天がふらっとするほど強い。Hさんの顔はどんどん赤くなってくるし、私も何だか笑いが止まらなくなってくるしで非常に危なくなってきた。

いい加減お腹も一杯になったけれど、デザートもちょっとだけ気になる。が、Mさんは
「いやぁ……デザート喰うなら、俺、牡蠣喰いますよ」
と、生牡蠣にご執心だった。「でも、1ダースはいらないなぁ……」という彼の声に
「あ、俺4個食べる」
「俺も4個食べる」
「あ、だんなが4個食べるならそのうちの1個もらう」
とわらわらと「生牡蠣喰うぞ組」が名乗りをあげ、ポーボーイ喰った後にまだ生牡蠣食べていたりして。


New Orleans 「Acme」にて
Oysters on the Halfshell (Dozen)
Fried Oyster Po-Boy
Creole Jambalaya
Smoked Sausage
French Fries
Beer (Dexie)
Beer (VooDoo)
Hurricane Cocktail
Coke
 ……を家族3人で
2×$6.49
$6.99
$3.49
$3.99
$1.99
$3.75
$4.50
$6.50
$1.75
 

店を出たのは10時近く。その後、ほとんどの人はジャズを目当てに夜の町に繰り出して行った。
私は「後で交代しよう」という約束で、だんなに子供たちを見ていてもらい、Hさん、Mさんと連れだって3人で再びカジノへ。1時間ほど楽しんだカジノではさきほどと同じような台に座り、40ドルの投資が78ドルになった。Hさんは40ドルが20ドルになった時点でやる気を失い、Mさんは一体どこ!?と探したところ5セント台でちまちまちまちまスロットのボタンを押していた。

11時過ぎにホテルに戻ると、ちょうどSちゃんが「おかぁさぁぁぁん」と泣き始めたところだったらしい。ごめんごめんありがとう、とだんなと交代し、だんなは1時近くまでブラックジャックに興じていたようだ。
もう私も寝に入っていて、遠くだんなが帰ってきた音やお風呂に入る音を聞きつつ、目覚めると翌朝。
「ごめん……200ドルほど、キレーにスリました……」
とちょっとシオシオな顔のだんなから報告された。
えーと、だんなが100ドル勝って、だんなが50ドル負けて、私が100ドル勝って、私が30ドル弱勝って、だんなが200ドル負け。だから収支はマイナス20ドル。20ドルの消費でかなり血沸き肉踊る遊びができたから、まぁ良いのかしらん(ボロ負けじゃなかったし……)。