1月13日(月) プレスリーとキング牧師の町

モーテルの豪華な朝食

今回泊まった「Comfort Inn」、使用した宿泊クーポン券(高速道路沿いの観光案内所でもらった割引券)の記載によると、デラックスなコンチネンタルブレックファーストがついてくるということだ。
どのようにデラックスなのかが気になって、今日の朝はモーテル朝飯。

モーテルにおける一般的な無料朝食は、パンとシリアル、コーヒーと紅茶、あとは精々シリアルのための牛乳といった品揃えになる。ちょっとマシになると、食パンとベーグルなどの他に菓子パンやドーナツ、マフィン類などの甘いパンも加わり、トースターが置かれていたりもする。バターやジャムもミニ容器入りのものが置かれていたり。更にジュースや果物まで置かれていれば、一般的な無料朝食としては上々の類になる。

このホテルロビーフロアのブッフェ台には、ゆで卵があった。これだけで、ちょっと他とは違う何かを感じさせる。
更に、ジュースはオレンジ、アップル、クランベリーと3種類。更に更に、蒸し器に入ったビスケット(←ケンタのそれみたいな)と、その脇には保温ポットにクリームシチューのような、ソーセージ入りのとろりとした白い煮込み料理も。バター類もマーガリンとバターが用意され、数種類のジャムももちろんある。ピーナッツバターまである。ミニカップ入りのヨーグルトまであって、間違いなくスペシャルな品揃えなのだった。

食パンや菓子パン類を眺めつつ、ミニパンケーキを手に、ブッフェ台の周囲にある席についた。Iさんは一足先に降りてきてコーヒーを飲んでいたようだったけれど、
「あ、シチューなんてあるの?」
「え、卵なんてどこにあった?」
と私たちの皿を見て、いそいそとシチューや卵を持ってきた。
コーヒー以外に温かいものがあるという朝食は嬉しいものだ。卵の存在もさりげなく嬉しい。

キング牧師の博物館〜「National Civil Rights Museum」

ホテルをチェックアウト後、少しだけメンフィスをぷらぷら。明日からは大学での授業も始まることだし、今日の夕方には自宅に戻っておきたいところだった。あまり長居はできそうにない。

メンフィスといえば、エルヴィス・プレスリー。この町には彼の墓があり、彼が住んでいた家がある。彼が所有していた広大な土地は現在「グレースランド(Graceland)」という名前そのままのテーマパークと化しているということだ。毎年多くの人がプレスリー詣でにはせ参じているのが、この町なのだった。
「いや、でも、プレスリーには用はないし……」
「"用がない"とか言うかね、君は。彼を目的に世界中の人がやってきているというのに」
「いや、でもね……用がない」
「まぁ、僕も……用がない」
と、プレスリー詣では却下。代わりに「National Civil Rights Museum」に行くことにした。プレスリーで有名なこの町、もう1つ「キング牧師が暗殺された町」としても有名だ。マーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺されたモーテルはそのまま博物館として保存され、彼について、そして彼が行った公民権運動についての展示がされている。

建物も当時のままだそうです 「あー、確か学校でそんなことを習ったよ……公民権運動ね、うん……」
と、うすらぼんやりした気持ちで入場してしまった博物館。その内容はずっっっしりと重めだった。

まず、入口ではカメラを持っているかどうかの確認がされる。デジタルカメラ持ってるよ、と言うと、中には持っていけない、入口のそばで預かるから、とのこと。美術館博物館、これまでいくつか行ってはきているけれど、カメラ持ち込み禁止というのは初めてだった。よく見ると、博物館の中で働く人全てが黒人だ。私たちの後からは、スクールバス4台分ほどの小学生らしき年代の子供達が"社会科見学"か何かなのか、博物館にやってくる。ちょっと早足めに子供たちに追いつかれないようにガラガラの館内を散策した。

写真が、暗殺されたまさにその場所。当時のまま残されているこのモーテルのこの2階のベランダで、集まった人々に演説しようと出ていたところを狙撃されたのだそうだ。彼が宿泊した部屋も残され、ガラス窓の向こうにベッドやテーブルを見ることができる。
展示内容、「黒人たちに公民権を」という運動の流れとは、つまりは黒人迫害の流れでもあるのである。前半(いや、大半……)の展示は、これでもかという黒人迫害の当時の様子を再現したものだった。当時のバスが展示されており、中に入って座ってみるとセンサーが作動して
「黒人は後ろへ行け、ゴルァ」
「ここは白人専用の席だゴルァ」
なんて罵声が流れてくる。周囲に飾られている当時の看板には"COLORED"の文字が黒々と、「色ついてる人はあっちね、そうじゃない人はこっちね」とくっきりはっきり記されている。「非暴力闘争」の一環の記録の1つなのか、白い壁に白黒画像で投影され続けていた映像には、ダイナーで食事する黒人女性、黒人男性の背後から白人たちが怒声をあびせながらケチャップやコーヒー、クリームなどを頭から浴びせて笑っている(で、黒人たちは動じることなく、黙々と食事を続けている……)などというものもあった。重い、重いです。勉強にはなるけど、心がどんより重くなります。勉強にはなるけれど……って、後からぞろぞろ来る生徒さんたちはこの展示を見てどう思うんだろう。

キング牧師の誕生日は1月15日(明後日だ!)。
アメリカでは彼の功績を称え、1月の第三月曜日(2003年は1月20日)は彼の誕生日として国民の祝日に制定している。

そして昼前にメンフィスを後にした。
内心密かに、
「メンフィスで、プレスリーが大好物だったっていう"ピーナッツバター&バナナサンド"(←バナナをフォークで潰しまくり、ピーナッツバターを塗ったパンの間に挟んだもの……らしい。……甘そう……)が食べてみたかったかなぁ」
とも思いつつ、しかし出発があまり遅くなっても帰宅が遅くなってしまうということで、メンフィスにさようなら。

ほとんどの留学生仲間は昨日のうちに帰ってきていたので、この日の夕方に帰ってきた私たちが最終組。全員無事にこの町に帰ってきていた。
研究所スタッフMさんの話によると、
「旅行から帰ってきた人たちね、みんな揃って"美味しかったー!"、"牡蠣サイコーだったー!"、"ベニエがおいしかったー!"って大騒ぎだったのよ」
とのことだ。みんな美味しくて楽しかったようで、良かった良かった。おつかれさまでした。