1月12日(日) ブレナンズで朝食を

ブレナンズで朝食を〜「Brennan's」

ニューオーリンズ最終日。そしてこれが最終食。
夕方の飛行機で発つ人あり、今晩中に車で家まで帰りたい人あり、
「それでは、日曜日ですしサンデーブランチと洒落こみましょう」
ということになったのだった。目指したお店は「Brennan's」。「ブレナンズで朝食を」なんてフレーズまで有名な、高級クレオール料理店だ。

そのフレーズが有名になった発端は、1948年、Frances Parkinson Keyesという人が『Dinner at Antoine's』(アントアンで夕食を)なる本を著したことから始まる。「Antoine's」は有名高級店で、オイスターロックフェラー発祥の店。人々はその「Dinner at Antoine's」というフレーズに夢中になったということだ。
それを聞いた「Brennan's」の創立者が「そんならこっちの店は"Breakfast at Brennan's"で対抗だ」と、そのフレーズを全面に出して宣伝していったそうで、しまいには『Breakfast at Brennan's and Dinner, Too』("ブレナンズで朝食を、ディナーもね"……という感じ?)なんて本まで出してしまった。たくましいというか、微笑ましいというか、ともあれこの店の朝食は大人気なのだそうだ。

本当だったら子供を連れて行って良いところではなかったかもしれない。でも総勢11人での予約なら多少広い空間が使えるだろうし、大人の人数も多いし、なんとかなるかなという感覚ではあった。だんなが電話で予約を入れた感触では「お子さん?はい、大丈夫ですよ」という感じだったらしい(特に困るという感じでもなく、大歓迎という風でもなかったと)。
繁華街、バーボンストリートと平行に走るRoyal Street(ロイヤルストリート)沿いにその店はあった。質素な小さな入口で、一見目立たない。あまり混雑する時間に予約を入れるのは(子連れということもあり)迷惑だろうと、予約は9時。ブランチにはかなり早めだった。

狭い入口からは想像もできないほど、中は広々としている。朝からキラキラ光るシャンデリアに、緑がいっぱいの中庭。ブラックスーツをピシッと着込んだ給仕のおっちゃんたちが口を揃えて「ようこそブレナンズへ!」と頭を下げる。私たちには、テーブルを4つほど繋げたような壁際の長い長い席が用意されていた。パリッとした白いテーブルクロスに、いくつも並ぶカトラリー。グラスには顔が綺麗に映り込む。
このお店の名物は、なんといっても"バナナフォスター"。バナナをフランベしてアイスクリームに乗せたデザートで、年間約16トンものバナナがこの店でフランベされているスペシャリティーだ。そして朝食には、プリフィックスメニュー(前菜やメインディッシュをリストの何種類かのうちから選んでいく)が$35。アラカルトももちろんふんだんに揃っている。

「アイ・オープナーの一杯は何に致しましょうか、マダム?」
まだむ。マダム、と来た。マダムと言われるほど良い格好はしていないし迫力もないはずなのだけど、マダムマダムとお店の人は話しかけてくる。何だかくすぐったい。何かを頼めば
「My Pleasure.」(=ハイ喜んで!……それじゃ日本の居酒屋だ……)
「Absolutery.」(=勿論でございます!)
と、何やらすごい言葉が返ってくるのだ。オラが町のレストランじゃ「Sure」が精々だ。何もかもがピカピカキラキラの起き抜けの寝ぼけた頭にはまぶしいお店だった。

目覚めの一杯にはオレンジジュースをいただいた。後になって、他のお客さんのテーブルをちらりと観察してみたところ、アルコールを飲んでいる人がものすごく多かった。ブラッディマリーやシャンパン類、ハリケーンのように見えるピンク色のお酒を飲んでいる人も。
料理は全員プリフィクスでお願いすることに。$35で前菜、メインディッシュ、デザートがセットになっている。

子供たちの前には、席につくなり"輪切りバナナのダブルクリーム和え"が出てきていた(しかも後でレシートを見るとお金、取られてなかった)。
子供たちがバナナの虜になってくれている間に大人たちはメニューの相談。前菜はオニオンスープ、オイスタースープ、タートルスープといったスープ類の他、ベークドアップルのダブルクリームがけ、季節のベリーのダブルクリームがけ、なんてのがある。私は「南部風」の文字に惹かれて「Southern Baked Apple With Double Cream」を。Hさんが苺のダブルクリームがけを頼んだ以外は全員スープ類を注文していた。
そして、アントレにはベネディクト(Benedict)の名がつくものが多い。メジャーな「Eggs Benedict」(ポーチドエッグ2個が2枚のパンの上に置かれ、酸味のあるクリームソース"Hollandaise Sauce"がかけられたもの)をはじめ、魚が添えられているもの、アーティチョークやほうれん草のクリーム和えが添えられたもの、揚げ牡蠣にかかっているもの、更にドミグラスソースがかかっているものなどなど10種類以上が紹介されている。どれもポーチドエッグか、あるいは魚介か肉類かが皿に乗っていてボリュームたっぷりという感じ。デザートは、バナナフォスターの他、クリームチーズをくるんだベリーのソースのクレープ、キーライムパイ、チョコレートケーキの4種類。

目をきらきらさせながら食べたいものを必死に考え、一人一人給仕のおっちゃんに伝えていく。Mさんはニューオーリンズに来て、よっぽど牡蠣が美味しかったらしい。昨夜も生牡蠣だけで2ダース近く食べていたにも関わらず、
「えーと、オイスタースープと、オイスターベネディクトと……」
と、牡蠣尽くしの注文をし始めた。前菜もメインも牡蠣かよ!と皆で顔がにやけた時、絶妙のタイミングで給仕のおっちゃんが
「じゃあデザートはオイスターバナナフォスターかい?」(←そんなものはありません)
とツッコミを入れた。あー、いいねいいね、Mさんにはオイスターバナナフォスターがいいよ、などと言って盛り上がる。

ベークドアップル〜♪ 揚げ牡蠣〜♪ そしてバナナフォスター〜♪

そんなこんなでやっと決まったメニュー。おごそかに前菜が全員の前にやってきた。
私の前には1個丸ごとゴロリとやってきた焼きりんご。もうちょっとどうにかなってくるものかと思ったけれど(食べやすく一口大になっているとか)、丸々としたりんごがやってきた光景はちょっと壮観だ。他の人もクリームたっぷりのスープがボリュームありそうだけど、前菜にりんご1個というのもなかなかすごい。
柔らかく火が通ったりんごは、ほんのりシナモンの香り。皮ごとグリルされていて、中はふくふくと柔らかくジューシー。底にはたっぷりとほの甘い濃厚なクリームが敷かれている。甘さはさほど強くなく、りんごそのものも甘さの中に爽やかな酸味が感じられる美味しいものだった。りんごを一口大に切ってから、ソースにじゃぶじゃぶ浸して食べる。外見は豪快だけど、味は繊細。高級感溢れる味だった。だんなが頼んだオイスタースープは、ほんのり緑がかったこれまたクリームたっぷりな濃厚なもの。牡蠣の身がごろりと入っているわけじゃなく、細かく刻んだものが沈んでいるのだけれど、一口啜ると口から鼻にかけて全体的に牡蠣牡蠣牡蠣牡蠣〜っと牡蠣の匂いでくるまれてしまうほど牡蠣風味が濃厚。朝から牡蠣スープ満喫のMさんは、さっきからニコニコニコニコしている。やっぱり貴方、オイスターバナナフォスターにした方が良いかもしんない。

そしてメインディッシュ、私は「Oyster Benedict」。揚げ牡蠣にエッグスベネディクトのソースをかけたものだ。楕円の皿には2枚の分厚いハムが並べられ、その上にどっさりと揚げ牡蠣が。そして黄色が鮮やかなとろんとそたソースがたっぷりかかっている。全員の皿に添えられている温野菜は、トマトを半割にして香草パン粉をふりかけ、オーブン焼きにしたような感じのもの。
だんなは「Brennan's Original」と紹介されていた「Eggs Hussarde」なるものを。これはエッグスベネディクトに、更に"Marchand de Vin sauce"なるドミグラスソースに似た茶褐色のソースが敷かれている料理だった。
牡蠣の衣はサクサクで、1つ1つがゴロリと大きめ。プリンプリンに程良く火が通った牡蠣は甘くツルンとしていて、卵の味が濃厚なソースとよく似合っている。エッグスベネディクトのソースというとちょっと尖った酸味があるものが多かったのだけど、このお店のはとてもまろやかな味。酸味はほのかに漂うけれど、味を丸くする方向に働いているような良い感じのものだった。ソースはハムにも牡蠣にもパンにもトマトにもしっくり馴染む。こんなにゴージャスなベネディクトは初めてだった。

「あああ〜、なんてゴージャスな飯なんだ……」
「なんかもう、初めて食べる味で……」
なんて一同目がうつろになりつつ、待望のデザート。バナナフォスターとは、メニューの説明によると、バターとブラウンシュガーとシナモン、バナナリキュールでフランベしたアツアツのバナナをソースごとバナナアイスクリームにかけるものであるらしい(レシピがしっかり公式サイトに載っています)。
ガラスの深皿にはこんもりとバニラアイスクリーム。周囲をとりまくようにカラメル色のバナナとソースがたっぷりかかっている。
バナナフォスターを頼んだのは、7人の大人たち。Mさんがチョコレートケーキ、Hさんが苺のクレープを頼んでいた。テーブルにずらりと7つのバナナ添えアイスが並んだ光景は、なかなか壮観だ。焼かれてトロンとなったバナナは甘く甘く、アイスクリームは卵がたっぷりといった風情のこってりクリーム色。アイスクリームの食感はねっとりというよりは"濃厚なジェラート"といった風なやや軽めのもので、いくらでも腹に入りそうな口当たりだ。バナナとアイスクリームなんて、少しも不思議な組合せではないのだけれど、めちゃめちゃ旨い。

食べ終わると11時近く。店には続々とお客さんがやってきて、見渡すテーブルはほとんど満席だった。
大人9人の食事で、お会計は合計$438.45!(←しかもこれがチップ抜きの合計だから、チップを入れると500ドルちょっと……) 旅行中でもっとも豪華な食事となった(生牡蠣たらふく食べてもなぁ、これの2/3くらいだったもんなぁ……)。
「高級な店だったねぇ〜」
「他のお客さん、お洒落した人ばっかりだったね」
「朝からアルコールも飲みまくってたね」
「いやぁ、貴重な経験だぁ……」
と、かつてなく豪華な朝御飯に目をシパシパさせながらホテルに歩いて戻ったのだった。

New Orleans 「Brennan's」にて
Table d'hôte Breakfast
(Southern Baked Apple With Double Cream)
(Oysters Benedict)
(Bananas Foster)
オレンジジュース
紅茶
$35.00
 
 
+$3.00
$3.00
$3.25

ベニエを片手に町を出る

宿泊ホテル、チェックアウトは正午までにということだった。ホテルに戻り、あとは適当に流れ解散。チェックアウトカウンターの行列にうんざりして、部屋のテレビからビデオチェックアウトし、帰り道も一緒に行こうということになっているIさんと合流して家路につく。
今日はメンフィスに向かい、そこで一泊する予定。重い朝食(というより、もはや昼食)を摂ってしまったので、
「あとはおやつにベニエ、って感じかな?」
「そうそう、そんな感じよね」
と、ベニエをテイクアウトすることに。

見事な揚げっぷりですCafé du Monde」、本店は路面電車を4駅ほど乗ったところにあるのだけれど、ホテルの裏手にあるショッピングモールにファーストフード的なショップがある。昨日のうちに散策してそこを見つけていたので、ファーストフードなカウンターで紙袋に入れてもらったテイクアウト用ベニエを2セット(6個)ゲット。
カウンターの脇の厨房はガラス張りになっていて、ベニエ製作の工程をあますところなく見ることができる。思わずしげしげと一通りの工程を眺める私たちだった。

息子がガラスにへばりついているのを見た体格の良い店員の兄ちゃん、
「お、子供が見てるぞ。よっしゃ、見てろよ〜」
てな感じで、照れ笑いしながらベニエの生地をでかい缶から取り出し、台に乗せた。パン生地のようなふわふわした柔らかい生地をベルトコンベアーの上にぺたぺたと広げ、たっぷりの薄力粉を上からふりかける。コンベアーを動かすと、その先のロールに押しつぶされて生地がぺたんこになって横に流れ、さらにその先の回転するカッター(写真で右端に写っているもの)で10cm×10cmほどのサイズに切り分けられる。で、兄ちゃん、生地をわっしわっしわっしわっしと5枚ほどの生地をぺろぺろっと剥がすと、その背後の揚げ鍋に放り投げる。「入れる」なんて可愛いもんじゃなくて、「投げる」。油が周囲に盛大に飛び散るのも構わず、ぺろぺろっぼっちゃーん、ぺろぺろっぼっちゃーん、と30個ほどの生地がすっかり揚げ鍋に消えるまで投げまくる。投げ終わったらおもむろに揚げ網片手に沈めてみたりかき混ぜたりし、良い色になったところで隣の油切り台にベニエをざざざっとあける。見てるだけで腹一杯になりそうな光景だった。

さて、注文が入ると接客担当のおばちゃんが油切り台のベニエのところにやってくる。小皿にベニエを3つ、ぽんぽんぽんと積み重ねたら、その脇にある容量1リットルくらいの巨大粉ふるいを上にかざし、その中に入っている粉砂糖をこれでもかこれでもかとぶっかける。それだけでもお腹一杯になりそうなのに、テイクアウトの注文が入った場合は、その砂糖をかけた皿の内容物を紙袋の中にどざざっとあけた後、更に紙袋の上から巨大粉ふるいを動かしまくる。手渡された紙袋は、あきらかにドーナツよりも粉砂糖の方が重量が多いような感じだった。おばちゃん、それ、ドーナツ売ってない。砂糖売ってるみたいだよ……。

New Orleans 「Café du Monde」にて
Beignets
Cafe au Lait (Md)
Cafe au Lait (Lg)
2×$1.37
$1.69
$2.15

ベニエを抱え、チコリコーヒーのカフェオレも抱え、そしてさよならニューオーリンズ。今回も旨かったよ。

車をしばらく走らせた後に、開けてみたベニエの袋。案の定、ドーナツは一体どこにあるのやら状態だった。袋を傾けてカサカサゆすってみても、茶色い生地が出てくる気配もない。紙袋の底の方にあったベニエを必死に引き上げ、粉砂糖をぱふぱふ払いまくった後にナプキンにつつんでそうっと食べた(そうしないと車内がそりゃもう粉まみれになるもので)。
揚げたてのベニエが、最高に猛烈に美味しいのは当然なのだけれど、冷めたものは冷めたもので、もちもちとした食感が良い感じ。車内の4人で6個のベニエはすぐになくなった。9個買っておけば良かったと思いつつ、私の服も息子のジーンズも車のシートも真っ白けっけだ。

世界最長の橋〜「Lake Pontchartrain Causeway」

ニューオーリンズには、"連続する桁橋としては世界最長"という、「Lake Pontchartrain Causeway」なる橋がある。38.6kmという長さだそうなので、橋というより"湖の中を走る道路"という感覚だ。
「面白い、面白いよ」
「行ってみよう!」
と、帰りにここを通っていくことにしたのだった。

海じゃないです、湖です

「うおー!水ばっか!」
と感動したのは最初の10分くらい。それから20分くらい、ずーーーっと同じ景色ばかりが続くのである。30分も周囲が水しかない所を走るというのは感動ではあるけれど、「も、もしも、ここで大地震が起こるとかゴジラが攻めてくるとかしたら……もう陸には帰れないんだよねぇ」なんて不吉な思いが頭をよぎる。渡り甲斐のある、長大な湖でござった……。

メンフィスジャズは、辛く酸っぱい〜「Alfred's」

ニューオーリンズから6時間ほどかけて、400マイル離れたテネシー州メンフィスまで無事に戻ってきた。
あと200マイルも走れば我が家に辿り着けるのだけど、今日はメンフィスに宿泊。6時半頃、メンフィスのダウンタウン内のモーテル「Comfort Inn」にIさんと共に宿泊手続きをした。「俺はシングルねー」と、ツインルームの我が家の2つ隣の部屋のキーをもらっていたIさん、
「部屋が広い、広いよ……」
と何だか落ち着かない様子。うちの部屋より広そうに見える角部屋には巨大なキングベッドがどどーんと置かれているのだった。繁華街近くのホテルにしては、そこそこ安いしけっこう広い。

今日は1食しか食事してないので、さすがに全員空腹。
「メンフィスの名物って"メンフィスバーベキュー"だよねぇ?」
「でも、お店は全然チェックしてないんだ。だから適当に……」
と皆でぽてぽて歩いて町一番の繁華街Beale Street(ビールストリート)に行ってみた。本当のところ、メンフィスバーベキューの店とか、朝食が美味しい店とかをちょこちょこ旅行前にチェックしてはいたのだけど、メンフィスバーベキューの店は日曜休み、朝食が旨いと評判のところは月曜日休みと、非常にやさぐれた気分で調査を終了していたのだ。

ジャズはよくわからないけど楽しかった〜 町一番の繁華街。しかし想像以上に通りは短く、3ブロックほどのそれ以外はネオンの影も形もないような小さな小さな繁華街だった(日曜日だったから、ということもあるのかもしれない)。それでもネオンが光る店からは生演奏の音が通りにこぼれてきている。店内は薄暗く、外からはあまり見えなかったのだけど
「うーん、ここは子連れじゃ無理っぽい……」
「なんか、ここは料理が美味しくなさそうな匂いが」
などと言いつつ夕食処を探し歩く。通りの端の方にあった「Alfred's」の前まで来て、「ここはどうかな?」とメニューを眺めると、これがなかなか良い感じ。店内をちらりと見ると、子供連れの家族客も入っている。更に中央のステージではジャズバンドが今にも演奏を始めようとしているところだった。カジュアルな雰囲気もちょっと安心できそうな印象で、試しに入ってみることにした。

バンドは、10人以上の大編成。音楽だけ、女性ボーカルつき、男性ボーカルつき、ブルースハープ、とあれこれあれこれ大音響でジャズが流れてくる。ステージの前は何もない空間になっていて、そこでは若い男女がくるくると踊っていた。そのうち他のお客も1組2組とそこで踊り出している。
ともあれ、お腹がすいた。前菜メニューにバッファローウィングを見つけたのでビールのお供にそれを注文。そして私はバーベキューポーク、だんなとIさんはバーベキューリブ。
アメリカは各地に「オラが町のバーベキュー料理」というのがある。メンフィスバーベキューというのは、グリルした豚肉を細かく細かく裂いて、それにソースをかけるというちょっと変わったもの。ハンバーガーのようにしてパンに挟んで食べたりするらしい。

辛!すっぱ! 生演奏が良い感じに流れる中、薄暗い(ていうか真っ暗な)テーブルにやってきたバッファローウィング。バッファローウィングとは大抵辛くて酸っぱいものではあるけれど、このお店のそれは「こんなに辛くしなくても〜」「こんなに酸っぱくしなくても〜」と全員でのたうちまわりたくなるくらい、辛味と酸味の強さが半端じゃなかった。鼻を近づけると、酢の刺激臭で涙が出てきそうになる。口に入れると、今度は辛さで涙が出てくる。酸っぱ辛いチキンの上には更に輪切りにしたハラペーニョなんか乗っていたりして、ますます涙が出てきそうだった。ビールがすぐになくなっていく。

そしてメンフィスバーベキュー。ほぐした豚肉は小山のように楕円の皿に盛られ、そしてココットケースに入ったコールスローサラダと豆のバーベキューソースのグリル、ガーリックトーストがついてきた。いかにも南部の料理といった光景だ。だんなたちの前にやってきたのは、豚肉ではなく骨付きリブが皿に盛られ、あとはコールスローも豆もトーストも同じ。リブにはバーベキューソースがテラテラとしっかり揉みこまれて染み込みまくっており、私のには同じ味のそれが豚の上にとろ〜んとかけられている。こちらの地方のソースは、黒砂糖がたっぷり入っているのが特徴。かな〜り、甘い。旨味もあるしほのかに辛みもあるし、馴染みのある味なので食べやすくもある。でも、けっこう甘い。

それでも、骨から肉がほろりと外れる柔らかさに火が通されていたリブはすごく美味しかった。私の豚も、香ばしくて悪くない。セロリの風味のコールスローは良い口直しになるし……でも、豆はもう肉と同じ味なので何が何やら、という感想だったり。

外を見ると、雪がもつもつ降ってきていた。一同、傘なんて持ってきてない。
「やむかなぁ……」
「ホテルに帰れるかなぁ……」
「どーりで寒いと思ったよ……」
と、すっかり酔いの醒めた頭で空を見上げつつ、まだお客さんたちがくるくると踊る中、8時過ぎにホテルに帰った。色々と雰囲気たっぷりのメンフィスの夜。

Memphis 「Alfred's」にて
Alfred's Hot Wing
Pulled BBQ Pork Platter
ビール (Sierra Nevada Draft)
$6.50
$10.99
$4.50