食欲魔人日記 00年6月 第3週
6/12 (月)
卵御飯
牛肉とわかめのスープ

月曜の朝は憂鬱だ。土曜の朝の気分の晴れやかさを100とすると、月曜の朝はマイナス34くらい。
しかも、なんだか頭重いし喉も痛い。昨日薄着で寝たのがいけなかったらしい。

で、だんながふりかけ御飯喰ってる横で卵を割って御飯にかける。生卵を食べると、なんとなく滋養強壮の塊のような感じがして心なしか元気がでようというもので。

コンビニの
 ツナサラダ
アイス緑茶

珍しくも食欲がない。御飯もパンも食べたくない。サンドイッチもおにぎりも、シュークリームという感じでもない。
で、コンビニにサラダを買いに行ってみる。滅多に買わないコンビニサラダ、棚を見るとドレッシングが選択可能になっていたりレタスと他の具が別々にパックされていたりと隨分凝っている。おお、なんかいつのまにか進化しているコンビニサラダ。

で、マヨネーズソースと一緒にツナサラダを買ってみる。レタスにトマト、きゅうりにカイワレ、ツナの塊。冷茶をコップに入れて、もしゃもしゃとサラダを食す。ウサギになった気分で、いまいち充足感がない。今晩はカレーを作ろう。たっぷりと。お鍋にたっぷり。

豚ばら肉のごろごろカレー
ソフトサラミと玉ねぎのスープ
茹でそら豆
サンミゲール、アイスカフェオレ

昨日の日曜、だんなが巨大な豚バラ肉を買ってきたのだ。1.2kgほどの大きな塊。
「これでカレーをしてですね、残ったものはチャーシューにします!」
と宣言されてしまったのであったが、確かにそろそろカレーが恋しくなっていた。というわけで、今日はカレー。

玉ねぎを2個用意。1個は超薄切りにして、1個はざくざくと8当分ほどに分けておく。
厚手の大きな鍋にバターを溶かして、にんにく1かけ放り込み、薄切り玉ねぎをじっくりじっくり炒めることからカレー作りは始まる。オニオングラタンスープが作れるくらい、とまでは言わないけど水分が出てくったりと嵩が10分の1くらいになるまでひたすらひたすら弱火で炒める。こうすると、市販のルーのカレーもまた一段と旨味と甘味が出て美味しくなるのだ。

豚バラ肉は5cm四方くらいに大きなものをざっくざっくと切り入れる。じゃがいもは煮崩れるのがイヤなので別茹でにしてルーを入れた後から放り込んで軽く味をなじませる。そうして、我が家の最も大きな片手鍋にたっぷりのカレーが完成。
「たっぷりだねぇ〜♪♪♪」
と帰ってきただんなも楽しそうに鍋を覗いている。やはりカレーはこうでなければ。

で、お供にサラミと玉ねぎのスープを作ったところで気が抜けてしまった。ああ、福神漬をすっかり忘れてしまっている。好物のらっきょうもない。ちょっとショック。とりあえず「きゅうりのキューちゃん」なぞ食卓に出してみたり。

真っ赤な福神漬だけがあるのも悪くないけど、たくさんの薬味が並んでいるのも嬉しいもんだ。
だんなに昔連れていってもらった霞ヶ関のカレー食べ放題のお店は、おろしチーズやらみじん切りゆで卵やらピクルスやらチャツネやら、いろいろいろいろ薬味が用意されていた。面白くて嬉しくて、私は山盛りのらっきょうやチーズを前にご機嫌だった記憶がある。

ともあれ、カレー。元気が出るカレー。
朝方から不調だった私も、お代わりするほど旨かった。そして、明日になったらもっと旨くなってるんだ……♪♪♪

6/13 (火)
かけうどん
(カトキチの冷凍うどん&ヒガシマルうどんだし)
冷茶

我が家は今、さぬきうどんに燃えている。それもこれも、『恐るべきさぬきうどん』(1〜4巻 (株)ホットカプセル)が我が家に届いたからだ。
本中に出てくる、高松地方独特の言い回しと思われる
「なんとかー!」(「なんてこったい!」「ほんとか!?」の意味かと思われる)
「……ないでー」
「……あるんか?」
「……がな」
という口調まで伝染っている。

「さぬきうどんやでー。」
「あついんか?ぬくいんか?」
「ひやひややでー。」
……かなり重症だ。

いつも我が家で食べているうどんは、幸いな事にさぬきうどんだ。カトキチの冷凍うどんをこよなく愛している。後は書籍中で紹介されていた「ヒガシマル」のうどんだしがあれば、インスタントさぬき気分は味わえる。
そうしてだんなは、昨日ヒガシマルのうどんだしを探してきてしまったのだ。
「おゆきさんおゆきさんおゆきさん!ヒガシマル、見つけたよ!」
ぱんぱかぱーん、と顆粒のうどんだし小袋が詰まった箱2つを取り出すだんな。
「これで明日はうどんだねっ!」
と、昨日帰宅するなり何やら燃えているのである。こ、こわい。だんなの情熱が怖い。

そうして今朝はうどんになった。カレーも残っているのに、うどんである。「すうどん」である。カレー、残っているのに(←しつこい)。

うどんだし、さっぱりとした薄い色をしている。乾燥葱がぱらぱらと散っている。うん、悪くない。旨い。東京で簡単に買える市販麺の中で、最高に旨いカトキチうどんは今日も旨い。コシがあって強く、つるりと喰える。案が葱を刻んだだけのものを散らして、うどんずるずる。ああ、でも讃岐に行きたい気持ちは一向に衰えない。

「"かまたま"(釜あげうどんに生卵を落としたもの)食べたいよー。」
「やっぱりセルフの店で天ぷらをたっぷりと乗せて。」
「この"オプション"の充実ぶりが、たまらんのー。」
きっと、私達は数ヶ月以内に行ってしまうのだ。『恐るべきさぬきうどん』を握りしめて。

マクドナルドで
 たまごダブルマック
 フライドポテト
 痩健美茶

CMを見て、ずっと気になっていた「たまごダブルマック」を食しに行く。どうもマクドナルドの季節限定ものはCMを見ると食べたくなってしまうのだ。月見バーガーを毎年、秋に楽しみにしている私は「たまごダブルマック」が気にならないわけがない。

で、禁煙席のカウンターにて目玉焼きが挟まったハンバーガーを喰ってる次第。ちょうど揚げたてが出てきたフライドポテトSサイズも横にある。パンも肉もいつも通りだ。とりたてて旨いとは思わないけどいつもの味だ。このいつもの味が食べたくなるのだ。そしてちょいと厚めの目玉焼き。オーロラソース。はぁ、充実していて美味しいねぇ、「たまごダブルマック」。満喫致した。

余談。
先日、だんなが歌を歌っていた。
「いつも〜♪ブレーキランプ、5回点滅♪"あいしてる"のサイン〜♪」(ドリカム「未来予想図U」)
何を歌っているんだか、と思っていたら、替え歌にし始めた。
「いつも〜♪ブレーキランプ、5回点滅♪"ぶち殺す"のサイン〜♪」
なんだそれは。替え歌、更に続く。
「いつも〜♪ブレーキランプ、5回点滅♪"エビピラフ"のサイン〜♪」
なんなんだそれは。何故「エビピラフ」なんだ。妙にツボにはまってしまってヒーヒー笑ってしまう私。だんなは調子に乗って
「エービーピーラーフーのサーイン〜♪」
と連発してくれる。だから、なんなんだそれは。ていうか何でエビピラフなんだ。

この歌には、更に余談がある。
だんなの知り合いが、いたくドリカムが好きだったそうである。本当に、バイクのブレーキランプを5回点滅「あいしてる」とやっていたらしい。
ある日、そのランプが6回点滅したのだそうだ。彼女は聞く。
「なんで6回だったの?」
男は答えた。
「"おまえだけだ"だよ。」
ひ〜〜〜〜〜〜。か、身体中にカユイカユイが出てしまったじゃないか。

利休煮 with 茹でほうれん草、茹でえのきだけ
割り干し大根の含め煮
茹でそら豆
たけのこ御飯
大根の味噌汁
神亀活性にごり酒、冷茶

今日は、結婚記念日なのである。
そして先日、いつもお米を買っている花咲農園さんから美味しそうな筍を頂戴してしまったのである。皮つきの筍を調理するのは初めて。おっかなびっくり皮を剥き、米と赤唐辛子と共に下茹でなぞしてみる。細目の筍をざくざくと切って、たけのこ御飯にしてみることにした。結婚記念日のメインとなるのは、たけのこ御飯〜♪

ならば、とおかずも全部和風に揃える。
こんがり焼いて、味醂と醤油ベースのタレに漬けて、1時間ほどたったら十数分蒸す。またタレに浸してなじんだらできあがり、の利休煮。のこったタレは熱してとろんととろみをつけて、ほうれん草とえのきと一緒に乗せた肉にとろりとかける。

だんな好物の切り干し大根……と思って買ってきたら、袋に「割り干し大根」とか書いてあったけどまあ良いや……その、割り干し大根の含め煮。干し椎茸と油揚げ入り。大根の味噌汁。炊けてきたたけのこ御飯。準備は万端!

8時すぎに帰ってきただんなと、祝杯をあげる。シャンパンでもなく、ビールでもなく日本酒で。
見つける度買ってきているお気に入りの酒「神亀活性にごり酒」は今日も良く冷えている。細かい泡のたつこってりとコクのある、なのにさっぱりな日本酒を大きめのお猪口にカパカパ入れつつおかずを食す。ちょいと甘めの利休煮に、薄味気味の油揚げたっぷりふくめ煮。日曜日に茹でてすっかり塩が染みてきているそら豆をつまむ。うーん。いいねぇ。たまらんねぇ。日本酒の宴会も。

そして、胃がかなり充実してきたところで御飯と味噌汁。やや薄味になってしまったたけのこ御飯は、お釜の底はうっすらお焦げになっていた。このお焦げがまた、たまらんのだ。ほくほくした筍を食べつつ、お焦げを探して食べちゃう私。

6/14 (水)
3日目のカレーライス
大根の味噌汁
冷茶

一昨日作ったカレー、まだまだまだまだあったりする。朝晩ちゃんと火を通して、悪くならないように気を使いつつ3日目。
御飯にたっぷりかけて、3日目のカレーを食す。玉ねぎは消え去ってしまってどこにもない。じゃがいもも今にも崩れそう。にんじんも角がすっかり取れている。お肉ほろほろ。それがたまんないのだ。旨いのだ。

しかし、朝から山盛りポークカレーはやはりヘビーだったかもしれない。
ついでに、昨日の残りとは言え、カレーライスの大根の味噌汁を合わせたのはやはりミスマッチだったろうかと思う。
昼過ぎまでずっと胃が重く、満腹感は消えないのであった。シアワセな満腹感なんだけど。

カルピスゼリー(もも)

コンビニで面白いものを見つける。「カルピスゼリー」。
カルピスゼリーと言えば、あれだ。学校給食のデザートだ。ゼラチンではなく、どうも寒天で固めたようなポクポク食感のカルピスゼリー、中に2個ばかりの缶詰のみかんが入った乳白色のゼリーだったと記憶する。あれ、大好物だったんだよねぇ。
……想い出に浸りつつ「もも」と書かれたカルピスゼリーを1個、購入。

これがこれが。なかなか想い出の味に近いものだった。悪く言えばチープな味だった。ポクポク食感も、何だかとても記憶のものと限りなく近い。ゴージャスに桃がたっぷり入っているのが何だかとてもらしくない。いや、美味しいんだけど。

カルピスゼリー、あとはオレンジゼリー。真夏のデザート冷凍みかん。どれも懐かしい給食の味。

牛肉とごぼうの煮物
割り干し大根の含め煮
えのきのスープ
たけのこ御飯
神亀活性にごり酒、冷茶

自家製マンゴプリン

だんなに買ってきて貰ったマンゴーが、真っ赤に完熟したのを通り越して黒くなっているのに気がつく。
「マンゴプリン作らなきゃ!」から本日の夕食作り始まり。幸い昨日の御飯も含め煮も残っているし、であとは煮物とスープを作るだけ。

醤油と味醂でこっくり煮たごぼうたっぷり牛肉の煮物。ソフトサラミとにんにく、玉ねぎのみじんが入ったえのきのコンソメスープ。昨日開封した神亀にごり酒も残っているし、で今日も和食風の宴会。

4割ほど残っていた白濁した神亀を傾けつつ、煮物をつつく。牛肉の脂身でじっくり炒めたごぼうがごろごろ入る煮物は甘辛くて美味しい。含め煮も食べ、昨日のたけのこ御飯を再びたっぷり堪能し、そしてデザート。

2週間ぶりくらいに作ったマンゴプリン、今回はこんな感じにできた。マンゴプリンの型を先日頂戴したおかげで、一層本格マンゴプリンに近づいた模様。
香港や、日本の中華料理店でもこのハート型で出てくるところが多いマンゴプリン。どうしてか、はわからない。「マンゴプリン型」とか勝手に呼んでいるけれど、何でこういう形になったのかも全然わからない。でもこの形を見ると「マンゴプリンだなぁ」と思うのだ。

少々甘めで少々粉っぽく、でも自家製マンゴプリンは相変わらず旨かった。息子がえらい勢いで食べ尽くして「んま!んま!」とシアワセそうに笑っているくらいだから、きっとめちゃめちゃ旨いのだ。ふふふ、母の得意料理は「マンゴプリン」だよ。覚えたね、息子よ。

6/15 (木)
ニセ カレーうどん
冷茶

昨日に引き続き、今朝もうどんだ。そして予定では明日もうどんだ。
今日のうどんんは「ニセカレーうどん」。本当ならちゃんとだしを取って、カレーのルーを入れてのばして醤油や味醂を少々足してそれ用のスープにするのである。しかし今日は、
「最初はすうどんで食べたいし、でもカレーうどんにしたいし」
という我々の希望に応えていただくべく、カレーはスープに加工しなかったのだ。

ヒガシマルのスープで、すうどん作り、長ねぎ刻んだやつをたっぷり。半分ほどそれで食べた後は、残りのカレーを上からかけてかき混ぜて食べちゃう。な、なんて乱暴な作り方だ。

まだ若干の余裕があった残りのカレーには、まだじゃがいもやにんじんや肉のかけらが結構残っていた。スープから肉のかけらが顔を覗かせたりすると嬉しくなってしまう。何か得した気分だ。

コンビニの
 冷やしラーメン
麦茶

昼御飯、最近コンビニ続き。さすがに飽きてくる。でも暑くて遠くまで歩いて行く気もしないし。
で、サンクスに新発売のマンゴープリンがあるという情報を貰ったので、そのサンクスへ行く。マンゴープリンは見つからなかったけど「冷やしラーメン」を買ってきた。袋入りの麺に、プラスチックトレーに乗った葱やチャーシュー。添付の冷たいスープをかけて食せとある。
パッケージを見ると、案外美味しそうなんだよなぁ。それで大概騙されるんだよなぁ。今日もやっぱり騙された気分。

化学調味料臭いスープに、ゴムみたいな麺。乾いた葱。はう〜、美味しくない。コンビニのお弁当は人件費輸送費等々かかるから原価は3割がせいぜいなんだとか。わかっちゃいるのに買ってしまう。それに、何だかんだ言っても昼休みが終わる時間帯にはどこのコンビニでも弁当コーナーが空近くになっている。みんな、旨いと思って喰ってるのかなぁ……(溜息)

チキンクリームスパゲッティ
サンミゲール

千疋屋の  マンゴーパナシェ
アイスカフェオレ

久々にスパゲティーの夕飯。食べた後で、今日は3食麺だったことに気がつく。

マンゴプリンを作った残りの生クリームがあったので、これを用いてチキンクリームスパゲッティ。たっぷりのバターでたっぷりの玉ねぎみじん切りを炒めて、鶏肉も炒めて、コンソメスープ少々でじくじくと煮る。水分が飛んで鶏肉に火が通ったら牛乳入れて沸騰させて、仕上げ間際に生クリームをだばだ〜と入れてソースの完成。茹でたてのパスタをじゃかじゃか混ぜればできあがり。

レストランで食べるような、クリームがパスタにこってり絡むスパゲティを目指したはずだったのに、なんだかスープスパゲッティのようになってしまった。牛乳も生クリームも多かったのが敗因と思われる。慌ててコーンスターチでとろみなぞつけてみる。だがやっぱりスープスパゲッティなのだった。がっくし。

それはそれとして、大きめ鶏肉ごろごろのバター風味ミルク味の濃厚なスパゲッティは美味しかった。胡椒たっぷり、上からガリガリとかける。

そして本日のデザート。千疋屋のケーキ♪
だんなは6月13日の結婚記念日にケーキを買って帰れなかったのをとても気にしていたらしい。一昨日も昨日も午後9時近い帰宅だったのだが、今日は7時過ぎに帰ってきた。手には大きな袋を抱えている。中にはケーキの箱と、ドライアイスの入った袋。
袋にはバニラアイスとココナッツアイス(←わたくしの大好物)とマンゴソルベが、箱にはオムレツバナナ、マンゴパナシェ、カスタードプリンが入っている。
まぁ〜♪

ケーキ3つ並べて、皆で味見しながら食す。
タルト生地の上に薄いスポンジ、上にはマンゴーのムースが円筒状に乗って、てっぺんはオレンジ色が綺麗なマンゴーゼリー、というマンゴパナシェ。メキシコマンゴーの味が濃厚に漂って、さすが流石フルーツ屋さんのケーキである。

私のも美味しかったが、でもだんなのオムレツバナナと息子のカスタードプリンもまた旨かった。
薄いスポンジに太いバナナがどかんと入り、生クリームがみっしり詰まったオムレツバナナ。コンビニで売っている「丸ごとバナナ」と同じような感じだけど、質の良い生クリームにふわふわのスポンジどれもが旨い。とても旨い。なんかずるい。
カスタードプリンは200円だったのだそうな。シンプルなプラスチック容器に、黄色みの強いプリン。「昔ながらの作り方で丁寧に作りましたっ!」というような、カラメルがほんのり苦くて生地がふわりと甘いプリンだった。ちょっと甘めのそのプリンは何だかとてもシアワセになる。

……何だか、千疋屋、店舗によって隨分と味が違う。ていうか置いてあるものが違う。
先週末にだんなが新宿で買ってきてくれたものは、全体的に洋酒が強くて洒落た見かけのものだった。今日の霞ヶ関店のものはとても懐かしいような素朴な感じだ。私は、霞ヶ関店のが好き。
銀座や京橋の店舗では売っていないアイスクリーム類が霞ヶ関店には置いてあるのがまたたまらない(新宿高島屋でも売ってますです)。
ここの、繊維がちょっと気になるけれどもまたそれが良い、ココナツ風味濃厚なココナツアイスが、私はそりゃもう大好きなのだ。

6/16 (金)
ニセ カレーうどん
自家製マンゴプリン
冷茶

なんと3日続けて朝食うどんである。しかも2日続けてカレーうどんである。
我が家のうどんブームはまだ終わりを見せていなかった。

本当は、ちゃんと鰹だしを取り、醤油や味醂などを添付してうどん用のカレースープを作るのが望ましい。鰹節の臭いがふわんと漂う、甘辛い和風の味つけがなされたカレースープも、それはそれですこぶる旨い。

でも……だしを取るような時間がなかった、慌ただしい今朝である。結局「ヒガシマル」の顆粒スープを用いてしまい、今日も「ニセ カレーうどん」なのである。今日でカレーは全て無くなった。ルー1箱、10人分できていたはずのカレー。
崩れ果てたじゃがいもやにんじんを齧りつつ、うどんをすする。カレーうどん、平日昼間には厳禁な食物だ。食べるのが下手な私は、これを食べるとほぼ100%の確率で着ている服に黄色い染みができてしまう。ピピピピピッと、20台も後半の女が胸にカレーの染みつけて歩くわけにもいかないだろう。黒っぽい服を着ていたところで色は目立たなくなっても、臭いも結構残るのだ。
「あ、あの人、昼間にカレー食べてきたわね。」
と午後ずっと、私は恐怖カレー女になってしまうのだ。営業担当だというのに、それはまずかろう。

というわけで、カレーうどんは自宅にいるか、どうでも良い洗える服を着た休日だけのお楽しみなのだ。

銀座 アメリカンの
 チキン・卵サンド
小岩井ヨーグルト
小岩井コーヒー牛乳

会社近所のコーヒーショップにサンドイッチを買いに行く。
入り口の脇にガラスケースが出され、昼には1パック400円前後のテイクアウト用のサンドイッチが並べられている店だ。200円のお持ち帰り用コーンスープも実はファン。

今日もツナ、卵、チキン、ハンバーグ、ポテト、といった具が充実しているサンドイッチが並んでいる。2種類が色々と組み合わされてパックになっているところから「チキン・卵サンド」を選んだ。相変わらず、パンよりも具の厚さの方がある豪快なサンドイッチだ。しかもパンが4つ切りくらいの厚さがあるのだ。従って1切れのサンドイッチの厚さは5cmを超える恐るべきサンドだ。これが好評なのか、周囲のお客も多いらしい。

コンビニにて飲物とデザートも購入。今日のテーマは「小岩井」。
コーヒー牛乳とヨーグルトを抱え、いそいそと自分の席に戻ってインターネットサーフィンなぞしながらお昼御飯。
茹で鶏がざくざく切られたチキンはリンゴ入り。胡椒たっぷりのマヨネーズ味。同じくマヨネーズ味の卵は、こっちもいい加減なざくざく切りになっている。このざくざく加減が人気の秘訣なのかもしれない。

茹で枝豆
安達屋
 清川豆腐
豚肉の生姜焼き with 千切りキャベツ
御飯&ミニチャーシュー丼
サンミゲール、冷茶

退社後、らんたったー♪らんたったー♪と築地方向に向かって歩く。そこには大のお気に入りの木村屋ペストリーショップと豆腐屋さんの安達屋がある。5時半を過ぎて30%OFFになった菓子パンをいくつか入手し、続いて豆腐屋へ。
店頭では、ヘタれたシャツを着たお客のおっちゃんと店主が話している。
どれにしましょうか、と水の張られたケースを覗くと、見慣れぬパック入りの豆腐……というより白いところてんのようなものがある。清川豆腐、などという名前が書いてあったと記憶する。

「……これ、なんですか?」
と店主に訪ねると、
「豆腐にハンペンやら何やらを混ぜ込んだやつでね。美味しいよ。」
とのこと。
「……このまま食べるんですか?」
と続いて尋ねると、
「醤油のたれつけてあげるよ。生姜は好みでね。」
とおっしゃる。ヘタったおっちゃんまでがこちらを向いて、
「これね、葱をたっぷり細かく刻んでね、思い切り混ぜて食べると旨いよ。だし汁でもいいやね。」
と教えてくれた。ほほーう。何だか旨そうだ。きっとだんなは大好物だ。

ヘタれたおっちゃん(いや、ヘタれてたのはシャツでおっちゃんじゃないんだが)は、この界隈で小料理屋でもやってるらしい。豆腐を10丁くらい 購入したようで、「お会計、2400円ね」とか言われている。「今日は5年ぶりくらいに見た珍しい魚見つけたよ」などという声も聞こえる。
こういう雰囲気、なんか好きだなぁ。美味しそうな会話。

帰宅して、速攻御飯の準備。一番時間のかかる炊飯器をセットして、豆腐は食べる用の器に移して冷蔵庫へ。葱もかけておく。
「カップ1杯の水で、蓋して強火で5分。火を止めて3分蒸らす。」という小林カツ代流のやり方で枝豆を茹でて(これがまた良い感じの歯ごたえにちゃんと茹だってくれる)、こちらも冷蔵庫に放り込む。キャベツは、いつもは皮むき器でギャギャギャギャギャと千切りにするところ、何となく手刻みにしたい気分だったのでひたすら手でタタタタタと千切りに。キャベツの千切りをするとき、木のまな板は本当に気持ちいい。

そしてメインは生姜焼き。ガツンと生姜が効いたやつが食べたかったので、すりおろしにしないで千切り生姜をたっぷり用意。2〜3日前からだんなが仕込んで作ってくれていたチャーシューが良い感じに煮上がったので、これも食べることにする。うは、何だか御馳走じゃないの。

豆腐よりはほんの少し固い、つるりとした食感の豆腐だった、清川豆腐。お教え通り、刻み葱たっぷりかき混ぜて、たれと生姜も混ぜて食べる。相変わらず大豆の味がきちんとする豆腐屋の豆腐。ツルツルしててとても美味しい。歯ごたえのある枝豆つまんでビールを流し込む。今シーズンお初の枝豆は1袋380円だった。やっと枝豆の季節がやってきた!という感じ。

たれがちょいと多めな生姜焼きと、横に大盛り刻みキャベツ。キャベツが生姜焼きの熱吸って、ついでにたれの汁気も吸ってやわやわと柔らかくなっていくのがこれまた旨い。とんかつソースかけて喰うのもこれまた旨い。御飯と一緒に食べるのもこれまた旨い。

軽く1膳の御飯を食べたら、2膳目はチャーシュー丼。煮上がった巨大な煮豚を薄切りにして、も一度煮汁にとぷんと漬けて御飯に乗せる。白髪葱たっぷり、上から煮汁もほんの少し。
甘辛くて、噛むと脂がじゅわんと溶けるチャーシューは、角煮とはまた違った美味しさがある。まだまだあるチャーシュー、きっと炒飯やラーメンの具に化けていくのだ。ちょっとどきどき。

6/17 (土)
木村屋ペストリーショップ
 ポテトサラダ入りカレーパン
 ジャムパン
 チョコクリームバナナペストリー
アイスカフェオレ

昨日購入してきたデニッシュにて朝御飯。カレーと共にポテトサラダがたっぷり入ったパンに、杏ジャム入りのジャムパン、ふわふわのチョコクリームが共に挟まっているバナナのペストリーなどなどを家族で適当に分けつつ食べる。菓子パン全てを3等分にして各自のお皿に分けて、たくさんの種類を一度に食べるのはとても楽しい。

この店の惣菜パンにはいつもグッとくる。数週間行かないだけで、何やら怪しげな新商品が次々と出てくるのも見逃せない。
初めて購入したポテトサラダ入りのカレーパンは、ぽくぽくしたじゃがいもがカレー味になっていてなかなかそそられるものだった。これでもかこれでもかと杏ジャムが入ったジャムパンも、何だか笑っちゃいたくなるものだったし。

だんな特製チャーシュー炒飯
だんな特製中華スープ
アイス烏龍茶

満を持してだんな特製チャーシューを炒飯に加工する。いや、加工していただく。だんなに。
真っ黒に、甘辛く煮含められたチャーシューを細かく角切りにして、煮汁もタレとして使って炒飯に。卵たっぷり葱たっぷり、チャーシューももちろんたっぷりの素敵な炒飯。
お供に、「簡単に作っちゃうね」と、刻み葱に顆粒鶏がらスープ、チャーシューの煮汁に胡麻油少々をスープ用の器に一人分ずつ入れ、熱湯を注いだだけのだんな特製簡単スープ。

今日の炒飯、スープと共にこれまでで最高の出来映えだった。
御飯はパラリ、塩加減もばっちりでチャーシューの味つけもばっちりだ。ごろりごろりと出てくるチャーシューを楽しんで食べつつ、スープをすする。スープも味つけに煮汁がはいっているせいか、インスタントだしを使ったのに妙に本格味になっている。山盛りの炒飯を家族全員でがふがふとたいらげる。チャーシューは、やっぱり炒飯にするのが一番旨い。

銀座 ガルリカフェ・ドゥにて
 ミルフィーユ
 アールグレイティー

母が自宅に来てくれる。今日は結婚記念日のお祝い(本当は6/13にもう済んでいるけど)に外食するので息子をみていて貰うのだ。

午後2時頃、やってきた母に息子を託して、ひさびさにだんなと二人きりでおでかけする。来週末に結婚式に出席するだんなの礼服を見立てたり、本屋で新刊をチェックしたり、おもちゃ屋で新作ゲームをひやかしてみたり。で、しばらく歩いて疲れたので銀座コリドー街にあるガルリカフェ・ドゥに入る。

薄暗い店内、統一されていないテーブルや椅子、アンティークのような食器にアールデコ調の絵や壺、ランプの数々。なんとなく隠れ家のような、穴ぐらのようなガルリカフェは銀座内だけでも数店舗ある。いくつかある中でも、私はこの「ドゥ」がお気に入り。適度に狭く、なのにテーブルの間隔はやや広くて一人で来ても落ち着ける。店内では明るめの場所になる窓際や、カウンターの隅、ランプの目の前に座って本など読むと、いつまでも時間が潰せるのだ。

初めて訪れるだんなを誘って高速道路下にあるその店に行く。そう、この店ではドゥリエールのケーキも食べられる。見逃せないポイントだ。
で、あと数時間で夕飯を食べに行くというのに、ちゃっかりケーキなぞ喰ってる私たち。私はミルフィーユ、だんなはモンブラン。セットのお茶はアールグレイにしてもらって、砂時計と共にポットがやってくる。
「この砂が全部落ちたらお茶を入れてください」
などと言われ、1分ほどじーっと砂が落ちるのを待つ。ああ、なんだか独身時代に戻ったみたいだ。何だか嬉しい。

虎ノ門 青柳にて
 懐石料理 \18,000也
 昔プリン
 日本酒 吟醸錦風(徳島青柳 錦竜水仕込)

かくして午後7時、降ってるのか降ってないのかはっきりしない曖昧な雨の中、青柳に到着。

石畳の一見そっけない引き戸を開けると、ふわりと香の匂いが漂った。ほっとする香りに気分がなんとなく落ち着いてくる。スーツ姿のスタッフに誘われ、板前さんらが調理しているカウンターを脇にする、テーブル席の1つに座る。席は少ない。見渡す限りでは20人が入るか入らないかという程度。個室もあるが、確か全席で30〜40だとどこかで読んだ。

客席はすでに一杯となっており、大体が中年以降の夫婦たちだ。間違いなく、空間の最年少クラスの私たちである。ううう、ちょっと緊張する。若者ですいません、という感じだ。和食をバシッと食べるのがそもそもとても久しぶりなので一層緊張。

和食のコースは18000円、23000円、28000円とあるのだと、言う。
予約時にそう伝えられた私達は、冷や汗かきつつ「で、では18000円のコースで……」としか言えなかった。1人あたり1万円台は「たまにだったら良いかな」と思わなくもないけど、2万円のコースとなると、清水ダイブ(=清水の舞台から飛び降りる、の意)の域を超えている。おそれ多すぎる。「結婚記念日なんですけれども……」と伝えたくせに一番安いコースですまん、青柳。

絨毯敷きのフロアに木製の椅子とテーブル。真っ白なクロスが各テーブルにかかっていて清清しく気持ちが良い。
湿気の多い空気の中歩いてきて何とも喉が乾いたので、小瓶のビールを1本所望。だんなと二人で飲んでいると「先付」がやってきた。

給仕は皆、スーツ姿だ。ネクタイ着用、ビシッとジャケットも着ている。女性は和服。なんだかスーツで給仕されるのは初めてなので、わずかばかりの違和感を感じる。ちょっとばかり演技が入ったような所作で、若い給仕人さんが葉の形をした器を目の前に置く。
ついつい、いつものくせでお皿の説明を待ってしまうが、彼はそのままスッと下がってしまった。あう。説明ないですか。ちょっと残念。
以後、「これは何ですか?」とちょっと聞いてみるようにしたら簡単にお皿の説明をしてくれるようになったけど、全体的に控えめに、控えめに、といった雰囲気の給仕の仕方だ。空気のようにやってきて、風のようにお皿を下げていく。
多分、懐石料理ではそれは悪くないんだと思う。夫婦の時間や恋人との語らいを大切にしているような人たちがやってきているようなところだ。……でも私たちは、ちょっとだけつまらない。私たちは料理について教えてもらうのが大好きだし、相談するのも大好きなのだ。

ともあれ、先付。
水ダコを薄く切ったものが酸味のあるゼリーの中に盛られている。粘りのある青みのものが挟まれていて、多分オクラなのだろう。とろけそうなツルリとした食感のタコがすっきりしたキレのよいだしのゼリーと似合っている。うーむ。和食だ。和食だぞ。(あたりまえじゃ)
ビールが空いたので、冷酒を頼む。周囲ではワインを傾ける人が隨分と多かったが、とりあえず久しぶりの和食は日本酒で楽しみたい。

日本酒、どうやら1種類だ。「錦風」という青柳オリジナルのもののみが常備されているらしい。冷やで頼むと、氷のたっぷり入った銀色のワインクーラーに小さな瓶を入れてくれた。
いかにも吟醸、という感じのこってり甘味のある酒だった。一口飲み、「?」と思う。若干のコク、若干のキレ、飲みやすく故に自己主張のあまりない日本酒だ。個性の強い香りや後味が全くない。イマイチ?……と第一印象はそう感じたが、飲み進めるうちにそれは全く違うことに気が付いた。

2品目。蓮餅椀。
かつおのよく利いただしの中に"しんじょ"のような練り物がころりと入り、じゅんさいや海老が周囲に飾られている。青柚子の皮のすりおろしがさらっとかかり、蓋を開けた途端にだしと柚子の香りが周囲に満ちる。この、蓋を開けた時の感動というのは和食独特なものだと、改めて思った。

この練り物、「蓮餅」というのだそうだ。蓮根などを練り合わせたもので、それが油で表面カリッと揚げられている。中はふわんと柔らかく香り豊か。だしと絶妙に合う旨味で、汁を啜っては餅を頂き、海老を囓っては汁をすする。身体がほわんと温まってくる。ああ、美味しい。だしの味とか、どこがどうものすごい!と主張のあるものではないけど繊細な美味しさがそこかしこに漂ってくる。う、旨いかも、青柳。

次。
「ピリ辛のおろしで和えました」
と紹介された、ヒラメの縁側と肝の一皿。白くヌメッとした肝の上に芽葱とおろしが乗っている。唐辛子の辛さがガツンとやってくる醤油味おろしに、エンガワを絡めて食べる。コリコリモチモチとした歯ごたえのエンガワ、旨味が詰まっていてすこぶる旨い。口に入れた途端にホロホロと溶けていく肝もこれまた旨い。芽葱たっぷり、その香りと食感を感じつつ魚をぺろりと食べる。酒が進む。ついでに御飯も欲しくなっちゃったり。

4品目はお造り。カレイとアオリイカ、大和芋と生海苔、茗荷入りの白髪葱が美しく盛られている。すりたての生のわさびの香り。くー、たまらん。キラキラツヤツヤしたお魚が美味しそうだ。
肉厚のぽってりしたカレイに茗荷と葱の細切りを巻き込みつつ、わさびを少々、醤油を少々つけて食べる。磯の香りが十二分に漂う、新鮮な魚。プリプリのイカは、生海苔と一緒に口に放り込む。海苔とか茗荷とか、たった少しの付け合わせの工夫が、刺身をまた美味しくしてくれている。「これ!」という組合せの気遣いがそこかしこにあって、「ももも、もしかして青柳ってとても美味しいところなのね、そうなのね。」と改めて思う。

クセのない日本酒の入った細く小さいガラスのグラスを傾けつつ、だんなと話す。
「このお酒さぁ……食事の邪魔を全然しないんだわ。」
「うん。そうだねぇ。俺らが美味しいと思う酒は肴を選ぶというか、"この酒を飲むためにこの料理"とかっていう感じだしねぇ。」
「きっと料理を美味しく食べるためのお酒なんだ。食事が進むほどこのお酒美味しく思えてくるし〜。」
「そだねー♪」
と日本酒2本目。

続いて豪華な八寸がやってきた。
盆の上に、凝った意匠の小さな器が8つ美しく並べられている。中にはそれぞれ素晴らしい仕事をされた一口ずつのお料理が。
「いやーん」
「はふーん」
「おいしそー」
とそろそろ日本語が変になりつつある夫婦がここにいる。

中央に、やや塩辛いじゃこ昆布。周囲には豚肉の煮物ゼリー寄せ・練りウニと大和芋・大根のお浸し・タコの煮物・球状の練り肝……のようなもの・鮑の煮物・フキのお浸し、という感じ。全部で8種類。どれも美しく盛られていて、もみじの青い葉っぱなぞ数枚散らされていて、とてもとても絵になっている。この美学こそ日本料理!と拍手したくなる美しさがそこにある。ちまちましたものは自分で作るのは勘弁だけど、食べたり見たりするのは大好きだ。親指の先ほどの、小さな小さな容器に細かく切った大和芋と練りウニが詰まってる様など、んもうクネクネしちゃうのである。しかも詰まっているのはどれもこれも旨いのだ。一層クネクネしちゃうのである。

さっぱりとだしで煮た大根のお浸しがだんなは一番気に入った模様。私は甘辛く煮含めた豚肉が丸い大和芋と一緒にだしゼリーで包まれているものがすっかり気に入っている。本当は、幼児手のひらサイズくらいの小さな器を手に持ってすすってしまうのはマナー違反だろうと思いつつ、ついついだしも全部飲んでしまう。どの料理もメリハリのある味が計算されて作られていて、圧倒される八寸だった。

平らな長皿でやってきた6品目は、なんと寿司。
まぐろとトロの2種が"づけ"になり、握り寿司にされている。店の自家製であろう、ガリも少量盛られている。
人肌のふくよかな酢飯に、うっすら醤油だしが染み込んだ魚。表面には細かく細く切込が入っていて、その細かい仕事にかなりびっくり。中に入る生ワサビの辛さがガツンと来る握り寿司は、魚がほわ〜と溶けていくような感じだった。旨い。めっちゃ旨い。和食のコースに握り寿司なんてびっくりだが、びっくりを補ってあまりある美味がそこにある。あと20個くらいください、と言いたくなってしまう。

続いて、焼き物。スズキの塩焼き。
すだちが添えられ、山芋入りの大根おろしもついている。飾りに、甘酢で煮られた蓮根にツヤツヤと光る薩摩芋の煮物。
炭火で焼かれたと思われる、皮目にこんがり焦げ目のついた香ばしいスズキは脂が良い感じに乗っていた。おろし醤油と絞り立てのすだちの酸味は、ほんのり塩味の焼き魚と不思議と似合う。ほろほろと崩れる魚に、またお酒が進む。ああ、だんな、顔真っ赤になってるよ。

そろそろ胃袋も充実してきた。肴の最後は冷たい炊き合わせ。
冷たいだし汁に同じ味のジュレが浮き、蕪と南瓜、里芋が盛られている。キリリと冷たい野菜とだしを、匙ですくっていただく。

実は、"だし"なんてものはある程度美味しくて当たり前で、でもそれほど差があるものじゃないんじゃないか、とこれまで私は密かに思っていた。
そんなことはなかった。美味しいだしは、どこまでも美味しいのだと、今日気付かされてしまった。冷たくされてえぐみや臭みの全くないだし、というものを私は初めて知ってしまった。ホロリとした蕪、ホクホクの南瓜、柔らかな里芋。何食べても旨い。困ったことだ。

そして、御飯。
椀とお新香の小皿が来、椀を開けると視界が真っ黄色になった。
卵丼だ。
だしで味付けられた半熟の卵が、御飯の上にふわりとかかっている。生ではなく、しかしぎりぎり固まったくらいのトロトロ加減。その固まり具合たるや絶妙で、夫婦して、
「ひえぇぇぇぇ〜、おいしそうー。」
と唸ってしまった。なんなんだこれは。こんなの最後に出てきていいんか!?いいんだな、よし、喰うぞ。

柔らかな卵は味も柔らかだ。御飯と一緒に掻き込むと、口全体がほわほわとしてくる。鶏肉などの旨味のある具があるわけでもないのに、じんわりと味のある丼だ。最後にがしっとハートを鷲掴みされてしまった私たちは、骨抜き状態になってしまった。

日本酒が、瓶に1/4ほど余ってしまった。
御飯を食べた後に飲み続けるのもいかが、と思い「下げてください」と申し出る。
笑うと顔がくしゃっとなる、壮年の給仕人さんが
「宜しければお持ち帰りになりますか?」
と言ってくれた。頷くと、専用の紙箱に入れられた酒を持ってきて下さる。ありがたい。

食後のお楽しみも忘れてはいけない。
日本茶と共に出されたのは、「チェリモヤのアングレーズソース」。リンゴの細い細い千切りが上に飾られている。
チェリモヤは南国フルーツ。以前バリ島で食べた時は、シャクシャクとした歯ごたえの、洋梨と栗を混ぜたようなほんのり甘い果実だった。甘さよりもアクのようなえぐみが強くて、実はあまり美味しいとは思えなかったものだ。……だが、目の前の皿のチェリモヤは、どうやら全然違うのである。

溶けかけのアイスクリームのように柔らかく、とろんとしている。くずれそうな身をすくって口に運ぶと、バターのように濃厚なこってりとした甘さが口に広がる。洋梨と栗のような甘味は確かに記憶のどこかにあるものだけど、熟すとこんなに甘くて上品な味になるとは全然知らなかった。粘度のないさらりとしたアングレーズソースがまた調和していて、千切りになっているおかげでチェリモヤの食感を邪魔しないリンゴの爽やかさがまた良い感じ。

これで、終わりかと思いきや、最後に「宇治金時です。」とやってきた小皿が1つ。
塗りの器に甘さの全く無い抹茶のアイス、その下にはこってりとした粒あんが盛られている。常温のあんこに、冷たくヒヤヒヤした抹茶アイス。なんだかとても嬉しくなる。どこまでも手を抜いていない、感動させられる品続きに、身も心も私たちは大満足だ。

食後、フロアの責任者らしいスーツ姿のおじさんが側にやってきた。先の、"笑うと顔がくしゃっとなる"人だ。
「ご結婚記念日と伺いました。おめでとうございます。お店からのお祝いです。」
と言い、「タイのタイです。」と小箱をくれた。

「タイのタイ」とは、タイの頬の下あたりにあったと記憶する、骨の部分のことだ。その骨が、不思議と魚のタイの形をしているのだ。後で蓋を開けると、その骨を模した金色のピンが入っていた。食道楽らしい、なにやらステキなアイテムだ。夫婦で使い回させていただくことにする。わーいわーい。

彼と少々話をして、その流れでだんなが
「あと、どうしても食べたいものがあるんです。」
と申し出る。その品とは、「昔プリン」。

『dancyu』の別冊で大きな写真と共に掲載されていた青柳の「昔プリン」のレシピが、我が家のプリン作成のレシピそのものになっている。
不思議な材料は一切使わず、でもたまらなく美味しく作れるレシピだ。写真に載る黄色く艶やかなプリンは本当に本当に美味しそうだった。「青柳一番人気の」なんて書いてあった紹介文もまた、ドキドキさせてくれた。
「青柳に行ったら、これ食べなくちゃね」と私たちは言っていたのだ。で、それを申し出ただんな。

「今日は……もしかしたら無いかもしれません。ちょっとお待ちくださいね。見てきます。」
と奥に引っ込んでいった氏はしばらくしてから小皿を2つ持って戻ってきてくれた。
「ありました、ありました。あいにくミニプリンしかなかったのですが……」と。

笑っちゃうほど小さな小さなプリンだ。親指と中指で円を作ったくらいの小さな皿に、アイスの「ピノ」と同じくらいの小さなプリンが乗っている。いっちょまえにカラメルもかかっている。拡大写真にすれば、恋い焦がれていたあの写真と等しくなるに違いない。ピノサイズだけど。

恐ろしく滑らかで柔らかで、つややかで濃厚なプリンだった。
今までカスタードプリンは池袋サンシャインシティ内の「AGIO」というイタリアンレストランのそれが一番だと思っていた私たちだ。だが、目の前のこのミニプリンはそのAGIOプリンを一蹴してしまうような旨さだった。どこよりも旨い。比較対象にならないほど、ずば抜けて旨い。旨すぎる。正直言って、今日食べた皿の中で最も感動してしまったのがこのプリンだった。

絶妙な火の通り具合のプリンは、口に入れるとほろりと崩れていく。しっかり甘く、カラメルはしっかりと苦い。牛乳と卵の味がしっかりとして、他に余分なものは一切ないようなのに自分では到達できない味がそこにはある。ああ、旨いっす。本当に旨いっす。生きてて良かったっす。
だんなは涙ぐんでいる。そんなに旨いか、君。(←だんなは無類のプリン好き)

かくして、午後9時過ぎに辞去する。
旨かった旨かった、旨すぎた。また来ます。フトコロめちゃめちゃ痛いけど。めっちゃめちゃ痛いけど。

6/18 (日)
ミニミニ チャーシュー丼
牛乳

昨夜の豪遊……というより豪食のせいで私の胃も、だんなの胃も少々お疲れだ。
適当に、ラスクでもつまんで牛乳でも飲むかな……と皿や牛乳と用意していたら、だんなはチャーシューを切っている。
「いやぁ、チャーシュー2切れくらいつまんで御飯とスープでいいかなぁ、と」
と彼は言っている。
そのわりに、お皿に盛られたチャーシューは10枚以上あるように見えるのは気のせいか。
「いや、あと少しだから全部切っちゃったのね。全部ね。」
と彼は言っている。……ふーん……。

チャーシューの鍋からは甘辛い良い匂いが漂ってくる。この匂いの中でラスクを食べるのも拷問である。私もいつのまにか茶碗を手に、御飯を軽くよそっていた。朝からチャーシュー丼。ヘビィだ。

厚めに切られたチャーシューをもう一度添えた煮汁にとぷんと漬けて、御飯に乗せて白髪葱たっぷり。
チャーシュー、あと4切れ。うう、あんなにあったのに、もうこれしかない。

木村屋ペストリーショップ
 シュガーラスク
シャーベ

だんなは来週司会をする結婚式二次会の打ち合わせにでかけてしまった。
午前11時すぎに食べた朝食のおかげで当然昼になっても腹がすくわけでもなく、おやつにポリポリラスクを囓る。

築地駅そばの木村屋ペストリーショップ、私が愛してやまないパン屋さん(ていうよりサンドイッチ屋さん)だけど、店頭で袋詰めにして売られている1袋150円のラスクがこれまた絶品なのだ。
ガーリックラスクとシュガーラスク、殊にシュガーラスクは大のお気に入り。
縦半分の薄切り食パンがこんがり揚がっていて周囲にグラニュー糖がキラキラとまぶされている一見シンプルなものだけど、ちょっと変わった香りがふわりと漂う。ハーブの一種のようなスパイスのような、今まで謎だったその味は、今日初めて解明した。

袋から取り出したラスクには、小さな小さな丸いスパイスの粒が一緒についていた。粒胡椒のような、でもそれよりも小粒のものだ。茶色いこの粒は、おそらくコリアンダー。ああ、これが砂糖の中に混ざっていたからあんなに良い香りがしたのね。と初めて買ってから5年以上経てから気付いたこの事実に嬉しくなる。

そして、飲み物は今シーズン初の「シャーベ」!!!
冷凍庫で凍らせて、ほぐして牛乳入れて混ぜ合わせて飲むこのインスタントシェーク、大好物なのであった。スーパーで見つける度、近所の生協で安売りをする度にほくほくしてしまう私だ。イチゴが一番好き。あまり見かけないけどヨーグルトも相当旨い。メロンは……まぁまぁ。
そして我が家の冷凍庫には困ったことに昨年の秋から凍りっぱなしのイチゴシャーベが入っていたのであった。

凍った袋をよくよくもみほぐし、いつも使っているグラスではなく、背の高い大きめのグラスを取り出してここに中身を空ける。まだ牛乳は入れちゃいけない。長いスプーンでシャーベをぐりぐりとかき混ぜ潰し、固まったところが若干ほぐれてシャーベット状になったところで牛乳をコップの上まで注ぐ。なじませるようにかき混ぜれば、「イチゴシャーベット入り牛乳」といった風情の飲み物ができあがる。

息子、シャーベ初体験。一口分けてやると、
「おおぉぉぉぉ、おいっちぃー!」
と奇声を発してグラスをわっしと両手で掴まれた。「これはもう、僕んだもんね」という意思が伝わってきたが、構わず私も奪って飲む。親子で闘いながら飲む1杯のシャーベ。最初から2つ作れば良かったのである。まだあるんだから。

枝豆
R1/Fの
 生春巻3本セット
 海老のブロッコリーのタルタルサラダ
デパート惣菜コーナーの
 焼き鳥(たれねぎま、塩ねぎま、つくね)
タコライス
サンミゲール、冷茶

銀のぶどうの
 プリン仕立てのマンゴー
アイスカフェオレ

用事の終わっただんなが、銀座で食料を調達してきてくれる。
「父の日だからさぁ、色々セットものとか安くなってるの!」
と心なしかわくわくした声でそう言った彼。手にした紙袋の中からは焼き鳥やフライのセット、サラダに生春巻に、と色々なアイテムが出てきた。
「そら豆が、詰め放題で500円だったんだよ!」
とパンパンにそら豆が詰まった袋までを掲げて見せてくれた。君、デパ地下のおばちゃんらの客に混じってそら豆詰めてきたんかい。その根性には敬服する。父なのにねぇ。父自ら父の日のおかずを買ってくるとは。

そういうわけで、惣菜たっぷりの手抜き夕食。ビール2缶を開けて、枝豆に焼き鳥に生春巻、なんて真夏の夕食のようだ。3種類の生春巻にはちゃんと3種類のタレが添付されていて、アルミの小皿をずらりと並べてタレを入れる。今やどこのデパートでも見かけるようになってしまったR1/F、ここで生春巻を出すようになったおかげで、日本の食卓での生春巻の認知度が隨分高くなったんじゃないかなぁと思う。実際、ここの生春巻は美味しい。

そして、メインは「タコライス」。
福岡県在住の友人Kさんからいただいた、沖縄県は(有)フォーエバー産業製のその名も「TacoRice」というレトルトパック。「沖縄発CHAMPLOO」なんて文字も箱にはあり、初めて見る私は「なんじゃこりゃぁ!」状態だ。

タコスミートとホットソースがセットになっている。温かい御飯に温めたタコスミートを盛り、こちらで用意したレタスのざく切り、トマトのざく切り、チーズのざく切りを適宜その上に盛り、ホットソースをかけて食す。言ってみれば「タコス」の皮、パリパリのシェルの部分がそっくり御飯になったもの、という感じ。とは言え、何故タコスを御飯料理にせねばならんのか。変だけど、旨そうだ。

味は、確かにタコスだ。タコスミートもホットソースもピリリと辛い。ホットソースは1人分1袋を全てかけてしまおうものなら、「せりあちゃん、ゴーーーーー!」状態になってしまいそうな辛さがある。おびえつつ、だんなと2人で1人分のソースをかけて食してみる。
スパイシーな肉に、シャキシャキのレタスや甘酸っぱいトマト、チーズの油っけは良く似合う。御飯と肉と野菜とチーズとソースを全て全部スプーンに乗せて、ぱくりと。
お、美味しかった。本来のタコスも旨いが御飯に乗せても合うのだというのが良くわかった。レタス山盛り、トマトもチーズもたっぷり混ぜてシャクシャク言わせて食べるのがまた心地よい。
はふーん、どこかに売ってないかしら「タコライス」。

デザートには、だんなが銀座で買ってきてくれたマンゴープリン。
銀のぶどうのマンゴープリンは毎年の恒例ものになっているけれど、相変わらずふわんふわんで美味しいのだ。