食欲魔人日記 04年10月 第3週
10月11日 月曜日
ああ悲しみの行楽弁当。おいしかっただけに悲しい……。
ポークたまご
がんもと根菜の煮物
玉ねぎ入りコンソメスープ
御飯
麦茶

今日は一昨日台風で流れてしまった、運動会の日。
「うん、曇ってるけど、とりあえず雨は降ってない……」
と、朝6時に起きてお弁当を作り始めた。御飯炊いている間に唐揚げを作り、卵焼いたりウィンナー炒めたり。
だんなも途中で起きてきて、炊いた御飯を酢飯にし、煮あげておいた油揚げに詰めるのを手伝ってくれた。綺麗に重箱に詰めて一息ついたところで、
「グラウンドがびしょびしょなので開始時間が1時間遅くなります」
と連絡網が。

ちょっと余裕ができたね、とのんびり食べた朝御飯は、「たまごポーク」。「ポーク」とは、沖縄で言うところのランチョンミート(スパムとか)のことで、これを薄切りにして炒め、スクランブルエッグとか目玉焼きとかを添える。沖縄家庭の、定番的な朝御飯なのだそうな。
今朝炊いたばかりの御飯を茶碗によそい、スープはロールキャベツの残りのスープに刻み玉ねぎを散らして軽く煮込んだだけのもの。それと、まだ残っていたがんもと根菜の煮付けを温めて出した。ちゃんと食べて運動会がんばろうね、ということで。

沖縄料理に興味を持つようになったよりも何年も前から、だんなはずっと
「スパムおいしいよ。ランチョンミート、買おうよ」
と私に言っていたのだけれど、その度に
「いやーよ、そんなおっきな肉の缶詰。油っこそうだし」
なんて言っていた私。最近は常に2〜3缶の缶詰がストックされるようになってしまい、
「うん、なんか悔しいんだけど……美味しいねランチョンミート」
と認識を新たにするに至った。だんなは「だから言ったじゃなーい」と鼻高々。

ランチョンミートって、「豚のすり身を牛乳タンパクで固めたもの」なのだそうだ。ノーマルタイプはかなり塩気が強めなので、減塩タイプがお気に入り。有名なのはSPAM(スパム)とTULIP(チューリップ)で、前者はアメリカ、後者はデンマークのブランド。TULIPの方がちょっと風味が軽めかな、という感じだけれど、私はどっちも好きかなー。

さて、朝御飯も済んで片づけしながらふと窓の外を見ると、なんと土砂降り。
「キャー!だんな!雨!大雨!」
「うわぁ、なんてこった……」
「これでたとえ雨がすぐに止んでもさ、グラウンドが乾きようがないよね……」
なんて呆然としていたら、再度連絡網が。
「今日は運動会、中止でーす。明日は予定通り振替休日、でも運動会本番は今度の土曜日に行います」
ということだった。

ああ、朝から雨だったら諦めもついたのに、ポットにお茶詰めてお手拭きまで用意してからそんな事言われてもー!
「中止だって……がーん」
「この連休は一体何だったんだ……がーんがーん」
「それはともかく、今週の金土に温泉に行く予定立ててたのに……」
もう全体的に色々と大ショックで、とりあえず温泉宿と夕食の予約を入れていたお店に日程変更の連絡を入れる。これで変更がきかなかったら泣くしかないところだったけれど、無事に温泉行きは日月という日程に変更完了。あとは……せっかくつめたこのお弁当を家で食べるだけ……。

もう、頭のてっぺんにある空気穴から、空気共々やる気とか情熱とか気力とかがプシューッと抜けちゃったような感じ。
「あーあ……じゃあ、俺は……ジム行ってこようかな。……おゆきさんが行く?」
「……いや、もう、なんちゅーか……全体的にどうでもいいやって……」
「あめ、あめ、ふっちゃったねぇー。そらのオリンピック、きょうもダメだったねぇ〜」
それぞれクラゲのようにぐにゃぐにゃになりながら、それでも一番ダメージが薄かったらしいだんなはスポーツジムに出かけて行った。私はふて寝しながら漫画読み。しくしくしくしく。

おうちでお弁当……
 いなり寿司
 鶏の唐揚げ
 チーズ入りウィンナとうずらの卵
 甘い卵焼き
 アスパラとベーコンの炒め物
 梨
緑茶

というわけで、お昼御飯は悲しみの弁当。美味しいだけに悲しみが一層つのる。あーあ、晴天の下のグラウンドで食べたかったとまでは言わないけれど、せめて幼稚園内でこのお昼御飯を食べたかったよ。

お気に入りの重箱(←桜の季節にこれ持って花見行ったらかっこいいぞということで、樺細工の三段重を数年前に買った)に1段みっちりいなり寿司、2段目は鶏の唐揚げと、ベーコンとアスパラの炒め物と、楊枝に刺したチーズ入りウィンナと茹でたうずら卵。3段目は甘く焼いた卵焼きと、一口サイズに切った梨をたっぷり。2段で足りるかなと詰めたけれど結局3段になってしまって、
「こりゃ絶対昼だけじゃ食べきらないな」
と思っていたのだけれど、ほとんど綺麗に食べきってしまった。ちょっとサイズが小さめの重箱ということもあるけれど、どうやら親子3人で3段がちょうど良い分量らしい。

いなり寿司には、酢飯に胡麻としらす干しをたっぷり混ぜたものを詰めた。鶏の唐揚げは、いつもの生姜醤油味。御飯もの(おにぎりか、もしくはいなり寿司か)と唐揚げと卵焼きが私の想像する「いかにもなお弁当」のおかずなのだけれど、だんなはそれに「揚げウィンナ」か「炒めウィンナ」が必須らしい。昨日も、弁当の材料の買い物をしていて、
「ウィンナー買おう。あと、うずらの卵も……」
とか言いながら、スーパーの売り場で一直線にチーズ入りウィンナーのコーナーに走り寄っていた。特売のポークウィンナなどではなく、チーズ入りに一直線。

「……そ、そんなにそれが好き?」
と聞いた私に
「だって息子もこれが好きだよ?」
と返しただんなの瞳には「だって俺も好きなんだもん」と太字できっちり浮かび上がっていた。このウィンナは揚げたら中のチーズが出てきちゃいそうなので、軽く炒めるだけにする。噛むと中から柔らかいチーズがとろんと出てきて、確かに美味しいんだな。

さて、あと5日後にまたお弁当を作らなきゃいけないけど、まさか同じ献立にするわけにもいかず、どうしたもんやら、と。今度はちらし寿司にでもしようかな。それに海老とブロッコリーのサラダ合わせて、ちょっと和風なおかずを用意して……とか。でなきゃ、いっそチキン南蛮と白いおにぎりとか。あるいはゴーヤーチャンプルーにクーブイリチーとか作って沖縄飯にするとか(だったら御飯は当然スパムむすび!かな)。
色々考えはあるんだけど、なかなか鶏の唐揚げに卵焼きの組み合わせを超えるものって、ないのよね……。

「PIZZA HUT」の
 ガーリック王国・ぜいたくピザのハーフ&ハーフ
 焼きたてポテト
 マロンパイ
ビール(モルツ・サントリーダイエット生)

午前中はごろごろ漫画読んで、お昼にお弁当食べて、午後はちょっとパソコン触ってレシピ整理してから昼寝。もう全体的にやる気のない一日となった。
「やる気、ないですねぇ……」
「これはもう、いかにもやる気のなさそうな飯を食べながらやる気のなさを演出、というのはどうでしょう」
「やる気のない夕飯って言えば、ピザだよねぇ〜」
と、手持ちの広告をがさがさと。クーポンがあれこれついていたので、PIZZA HUTにすることにした。

ハーフ&ハーフのMサイズピザは新発売の「ガーリック王国」と「ぜいたくピザ」の2種類で。ポテトとマロンパイをつけてもらって、お会計が2500円を超えたので
「600円引きのクーポンありまーす」
「6種のチーズにグレードアップのクーポンもありまーす」
と注文。……が、その注文がちゃんと伝わってなかったらしい。「おまたせしましたー」と持ってきた請求書にはきっちり正規料金が書かれていて、チーズもグレードアップされていなかった。

あれ?あれれ?これとね、これを頼んだんだよ……と伝えたら、お兄ちゃんは店に電話をかけて確認し、
「すみません!入力ミスで……」
とのこと。値引きはその場でしてくれたし、チーズのグレードアップはまた次回に頼むからいいよ……と答えたのだけれど、
「いえ!今お持ちしたのは召し上がっててください!もう1枚すぐにお持ちしますっ!」
と言い残してお兄ちゃんは猛ダッシュでお店に帰ってしまった。え?ピザ、もう1枚来るの?同じ内容で?と、だんなと顔を見合わせて苦笑いしながら、ともかく届いたピザをつつき始める。

にんにくの芽ににんにくチップ、ガーリックソースがトッピングされた「ガーリック王国」は、しっかりくっきりにんにく風味。チョリソソーセージも乗っているのでちょっとピリ辛だけれど、それがまたよく似合うジャンクなお味。ダイストマトがたっぷり散らされた「ぜいたくピザ」はサラミとソーセージとピーマン、オニオン、マッシュルームというスタンダードな組み合わせで、これもいかにもなアメリカンピザの味がした。縁の部分にチーズを巻き込んである「ゴールデンチーズクラスト」とかいうので頼んだので、見た目以上の食べ応え。

「でも、まぁ、Mサイズだしね……息子も2切れは食べるでしょ?」
「うん!たべるよー」
「これ1枚じゃちょっと物足りないくらいだったから、もう1枚来ても大丈夫かな?」
なんて話しながらピザを平らげたところで、2枚目のピザがやってきた。どうもありがとう、と受け取ってテーブルに置き、すーぐにかぶりついた。まだチーズがトロントロンの、アツアツ。同じ味の2枚目のピザだけれど、チーズは確かに「6種チーズ」だか何だかに変わってボリュームアップしていて、こちらの方が数倍美味しかった。縁に巻き込まれたチーズもピヨーンピヨーンと激しく伸びる。

居間でビール飲んでピザつまんで、テレビで流しっぱなしにしているのはアメリカンプロレス。ソープオペラのようなベタなやりとりを眺めながら食べるピザは、かなりアメリカ〜ンな匂いがした。これで脇に1リットルくらい入っちゃいそうな巨大なジュースのカップとかあったら、完璧だったかも。
そしてピザはさすがに食べきれない……。

10月12日 火曜日
ソーキ汁を作ってみました。これも沖縄料理。
いなり寿司
卵焼き
これが最後の、がんもと根菜の煮付け
抹茶入り玄米茶

この連休は結局運動会は行われなかったわけだけれど、でも今日は「振替休日」。今日も天気があまり良くないらしいので息子と2人、だららららーんと過ごすことにする。

寝ている息子はそのまま寝かせてやり、朝御飯はだんなと2人で。
昨日お弁当にと作ったいなり寿司は20個もあって、10個はあっさり昨日の昼御飯でなくなってしまった(私とだんなが4個ずつ、息子が2個)。でもまだ10個も残っている。

「俺は茶を淹れよう」
「じゃあ私はお皿出そう」
半端にだるい体を動かしながら、あれこれ総菜をテーブルに出す。がんも1個と大根とにんじんが数切れずつだけ残っていた煮物を温め、2切れだけ残っていた卵焼きも1切れずつ各自の皿に。いよいよ冷たい麦茶よりもあったかい緑茶やほうじ茶が美味しく感じられる季節になってきたので、飲み物は抹茶入り玄米茶。

今回のいなり寿司、煮付けた油揚げの味がちょっと薄めだったらしい。しかも、酢飯を詰めるときにちょっとキュッと水気を絞り過ぎちゃったらしい。要するに、ちょっとだけ味が薄めになっちゃったのだった。しらす干しと胡麻が混ぜられた御飯はかなり美味しいんだけど、もうちょっといなり寿司のいなり寿司っぽい味がじゅわっと染み出てくると良かったなぁ、と。
「絞りすぎちゃったね」
「しかも、どうやら君と私と2人して絞りすぎてるよね、どうも」
とか言いながら、だんなは3個、私は2個。今度いなり寿司を作るときは、絞りは甘めの方向で。

昨夜のピザとポテトの残り
マロンパイ
アイスティー

今日はパラパラと小雨が降ったり止んだりの半端な天気。それでも、9時頃に起きてきた息子は、窓から外を見て、
「あめ、ふってない?ふってないよね!お外であそんできまーす!」
と外に出ていった。え?朝御飯も食べないで遊びに行くの?と声をかけても、もう聞いちゃいない。……ま、パソコンだテレビゲームだと家で遊ぶことより外で遊ぶ方が好きだというのは、とても良いことだしなー……と、外から時々聞こえてくる息子や近所の子供達の歓声を聞きつつお仕事。息子は12時きっかりに
「はぁ〜……おなか、すいちゃった」
と元気に帰ってきた。

朝食も摂らずに遊んでいた息子にはいなり寿司とスープを。私は昨夜食べたピザの残りを温めてつまむことにした。同じく残ったポテトと一緒にアルミホイルの上に乗せ、オーブンで10分近くかけてゆっくりこんがりアツアツにする。昨日はサクッとした歯触りだったピザの縁の部分も油がまわってぐにゃ〜んとしちゃってるし、ポテトもくにゃくにゃ〜んとした歯触りになってしまっていたけれど、捨てることなく食べてしまった。ジャンクだなぁと思うけれど、でも、宅配ピザの味は20年くらい前からじわりじわりと地道に美味しく進化してきているようにも思う。チーズの風味なんかも、前はプラスチックみたいに味気なかったものが、今は複数の複雑な味がちゃんと絡んでいたりだとか。

2切れだけ残っていたピザをつまんで、引き続き、昨日買ったは良いけれど食べられなかったマロンパイも温めて。甘い甘いマロンペーストがトッピングされたパイは、マクドナルドのアップルパイに通じるような美味しさ(そう、私はあのアップルパイが大好物……)。温めてサクサクになったパイも、とろ〜んとしたマロンペーストもそれなりに美味しかった。上顎にペーストくっつけちゃって口の中をしっかりと火傷しちゃったのは御愛嬌……。

牛肉とパプリカの黒胡椒炒め
クーブイリチー
沖縄かまぼこ
ソーキ汁(ソーキ、大根、ほうれん草)
羽釜御飯
麦茶

数日前、ニクの日(9日、19日、29日)ということでニュークイック(安さがウリのお肉屋さんチェーン)でスペアリブがセール品になっていた。何にしようかということはあまり考えずに、
「700gくらいくださーい」
と貰ってきた。モツもあるしテールもあるし最近は薄切りラム肉なんかも置いてある、なかなか便利なお肉屋さん。これで塊のラム肉とか塊のタンなんかがあったらとっても嬉しいんだけどなぁ。12月にターキーなんか置いてくれたらもっともっと嬉しいんだけど……なんて贅沢な事を考える。

ともあれ、手元には700g強のスペアリブ。シンプルに塩味で焼いて食べるのも悪くなかったのだけれど、今回は「ソーキ汁」を作ってみることにした。先日から暇さえあれば眺めている『しあわせの沖縄料理』に載っていたその写真が、やたらと美味しそうに見えたのがその理由。

ソーキ(スペアリブ)は、まず下茹で。アクをひきつつ煮込んだら、その煮込み汁と鰹だしを半量ずつ合わせたスープで更に煮込んでいく。昆布と大根も加え、味つけは醤油と酒と塩。本に載った分量どおりにきっちりやったのだけれど、スープの色がやけに濃い褐色になってしまって、焦る。
「あれ?確かソーキ汁って、とんこつスープみたいな色になるんじゃなかったっけ?」
と慌ててインターネットで画像検索して確認してみたのだけれど、どうやら白濁ものとか、かなり澄んだ色合いの透明なスープだとか、今回私が作ったのと同じような褐色のものだとかと、どうやら色々あるものらしい。安心して調理を続行。ダッチオーブンでみっちり蓋して数時間ことことことこと弱火で火を通したら、大根も見事に中まで綺麗な色に染まってくれた。

炊きたて御飯とソーキ汁と、沖縄かまぼこ、残りもののクーブイリチー。材料はあるからゴーヤーチャンプルーでも作ろうかと思ったけれど、こってりした味付けの肉炒めが恋しいなと、牛肉炒めを。以前台湾料理屋で食べた、黒胡椒炒めを適当に真似てやってみることにした。

牛肉は塩胡椒、酒、醤油、片栗粉をよーく揉みこんでおく。中華鍋にサラダ油熱して、刻みにんにくと刻み生姜を加えたら牛肉を炒める。ピーマンと赤いパプリカを適当に刻んだものも加え、せっせせっせと炒めたら、オイスターソースと醤油と酒と少しの砂糖で適当にこってり甘辛味に味つけ。ここで本当は粗挽きの黒胡椒をぐわーっと加えるのだろうけれど、それをやったら息子が食べられない料理になってしまうので、黒胡椒は自分の皿の上でゴリゴリやることにした。

「お店で食べたのって、こんな感じ?もっとだったっけ?」
なんて呟きながら、自分の皿の上でガーリゴーリと胡椒をこれでもかと挽く。胡麻和えの青菜よりももっと粉っぽい感じに肉に胡椒をどっさりまぶし、はぐっと囓りついたら「そうそう、こんな味だったよ」という味になっていた。お店の黒胡椒炒めは、相当な分量の胡椒が使われているものらしい、と再認識。

全体的に茶色っぽい食卓になったけれど、息子は
「おかあさんのごはん、今日もおいしいね」
と、箸が進む進む。

「ごはんー、いっぱいめはね、いくらのせてね、にはいめは、のりたまでね、次がー、おにくごはんでね、次がー、いくらののりまき」
とか呟いているのだけれど、その計画だとどうやら4膳食べる見通しを彼は立てているらしい。
「うん、そんだけ食べられるなら食べていいけどさ、ちゃんとお肉もスープも食べるんだよ?御飯たくさん食べておかず残すのはダメだよ?」
そう注意すると、うんうんと頷きながらせっせと箸を動かし、1膳目のいくら御飯をクリア。

「おかわりくださーい。のりたまかけてくださーい」
のりたまのふりかけをかけてやったら、2膳目もクリア。
「おかわりくださーい。こんどは、お肉のせまーす」
と、牛肉とパプリカの炒めを御飯に乗せて、もぐもぐと3膳目もクリア。さすがに3膳目からちょっと少なめな盛りにしてやったのだけれど、
「さいごのおかわりー!いくらと、のりをくださーい」
……いくら乗せて、それを焼き海苔で綺麗に巻きつつ、本当に4膳目も食べてしまった。……すっごい……。

ソーキ汁はまだまだまだまだあるし、今日の炒め物もちょっとだけ残ったから、明日だんなの朝御飯に出してあげよう。当然ながら、今日もだんなは激ジョブで帰って来られない模様。

そうそう、「だんなはストレスが溜まると食べ物のお買い物に走る」なんて先日書いたけれど、私も全然人のことが言えないようだ。
さっき届いたばかりのメールマガジンを眺めて、つい買ってしまったのがアドナイのヨーグルトセットとカチョカヴァロ。アドナイは北海道にあるチーズ工房で、何度かカチョカヴァロを買ったことがある。ひょうたん型のような、ユニークな形状のセミハードチーズは優しい味でそれはそれは好みな味で、これに限らずアドナイのチーズはどれもこれもが美味しくて(モッツァレラとリコッタが特に最高)、でもお高くて、なかなか手が出せなかったのだった。このたび限定発売でヨーグルトも販売ということで、思わず申し込み。乳製品だけを買って会計が8000円弱(送料入れたら9000円だわ……)というのは尋常な価格じゃないけど、でもまぁ、たまにはね。

届いたら、カチョカヴァロを分厚くスライスして、フライパンであっためてトロンと溶かしてパンにのっけて食べるんだぁ……。

10月13日 水曜日
鶏皮をカリッとカリッと、火傷してもカリッと!
沖縄かまぼこ
牛肉とパプリカの黒胡椒炒め
2日目のソーキ汁
御飯
麦茶

だんな、昨夜の帰宅はまたもや「朝刊が届いた後」だったらしい。
「息子さん息子さん、そんなところに侵略してきたらおとーさんが寝られません……」
なんて声と共に、息子をごろりと移動させる気配が伝わってきて(そう、数週間前に「これからは一人でねまーす」と自分の部屋で寝るようになった息子は、その後10日足らずであっさりと「やっぱりおとーさんとおかーさんとねるー」ということに……)、それと共に
「……あれ?おとーさんだ。おかえりなさーい……」
「ただいまー」
なんて小さな会話が聞こえてきた。私も目は開かないまま「おかえりなさーい」と小さな声で言って、そのまま沈没。後で知ったことだけれど、それはどうやら午前3時半を過ぎた頃らしかった。……うーん、こんな激ジョブぶりじゃあ、だんな、近いうち倒れちゃうんじゃないかしら。ちょっと心配。

で、朝御飯はちゃんと食べさせた方が良かろうなぁ、と、昨日食べきれなかった牛肉の炒めと、まだまだたっぷりどっさり残るソーキ汁を温める。かまぼこもスライスして、何だか微妙にボリュームのある朝御飯になった。ソーキ(スペアリブ)は2日目になって、もうトロントロンのモロンモロン。お玉ですくっただけで骨から身がずるっと取れちゃうほどの煮込まれっぷりだ。

どうも、やっぱり本来のソーキ汁(というか沖縄の汁もの)はあまり醤油を加えず、ベースは塩味で調味するものらしいけど、今回は見事な茶褐色のソーキ汁。これはこれで美味しいけれど、次回は透明な澄んだスープを目指してみようと思う。

スペアリブは食べるところがいまいち少ないし、けっこう脂っこいしで、薄切り肉などと比べるとちょっともてあましてしまう食材だけれど、でも焼いても良し煮込んでも良しの素敵な部位。そのうちコッテコテのアメリカーンな味のバーベキュー味で焼いてみたいなとも思いつつ。

キムチチャーハン
麦茶

どうも昨日の午後から喉が痛くて「こりゃヤバいかも」と風邪薬のお世話になる。喉の痛みには、なんでも喉の痛みには「ペラックT錠」なるものが効くらしいのだけれど、大体これと総合感冒薬を併用しちゃうので、これが本当に効いてるのか合わせ技一本で効いてるのか、自分ではよくわからない……。でも、とりあえず飲んでおけば喉の痛みは治まるので、まぁいいかなー、と。

そんな調子だったので今日行く予定だったジムは止めておいて、家でだらだら。天気が悪いと自分までどんよりした気分になってきてしまって、ちょっとカツを入れようかと昼御飯にはキムチ多めのキムチチャーハンを作った。

中華鍋に油を敷いてにんにく炒めて、卵加えて豚肉炒めて御飯投入。塩と少しの醤油で調味して、最後に白菜キムチをごわっと大量に加えて炒め合わせた。息子と2人の御飯じゃまず作れない(さすがに辛いからねぇ……)、私のためだけのキムチチャーハン。
「……あ、そうか、お弁当に作って、だんなのと私のに詰めるという手もあったんだ」
なんて思いながら、できたてアツアツのチャーハンを1人かっこんだ。

キムチとか漬物入れるチャーハンは、かなり好み。家ではあんまり作らないけれど、高菜漬けのチャーハンなんかもすっごく好き。

「モンテール」のワッフル
牛乳 with ミルメーク(ココア味)

午後は、息子のスポーツジム。
「ジム、おわったら、アイスクリームたべよ?」
「……もう、アイスは寒いんじゃないかなー……」
「じゃあね、クレープたべよ?」
「うーん、クレープかぁ……」
なんて会話の後に息子をジムに送り出し、私は一人図書館行ったりお買い物したり。最後に寄ったスーパーで「モンテール」の50円引きシールの貼られた5個入りワッフルを買ってきた。ジム後のおやつは、これに決定。

今日も汗びっしょりでヘロヘロになって出てきた息子と一緒に帰宅して、ひさしぶりにミルメークを溶かした牛乳(私はココア、息子はコーヒー)を用意して、ワッフルをテーブルに。
「……さて、ワッフル、5個あります。どうしますか?」
「んとね、おかーさんが2個。ぼくが、2個。あとの1個はね……じゃんけん!」
おーおーえらいなー。「あとの1個はぼく!」なんて言わない息子はえらいなー、と、じゃんけん。私が勝ったら半分分けてやろう、と思ってパーを出したら、勢いよくチョキを出した息子が勝った。うん、じゃあ息子3個ね、私2個、ともぐもぐもぐ。そこらへんのスーパーやコンビニであたりまえに見かけるモンテールのお菓子は、何を買ってもそれなりに美味しい。ロールケーキもワッフルもシュークリームも、実は大好き。ロールケーキとは違う、"どら焼き"みたいなしっとりしたワッフル生地にカスタードクリームがくるまれているワッフルも大好き。

「おかーさん。おかーさん、うれしいからー、ひとくちあげます!」
3個目のワッフルを手にした息子が、むぎゅむぎゅとワッフルを1/3ほどちぎってお裾分けしてくれた。あら、いいのよ、君はじゃんけんで勝ったわけだし?と大人の態度でお断りしたのだけれど、
「おかーさんのつくるごはんは、おいしいのでー。どうぞ、おうけとりください」
おうけとりください、おうけとりください、と言葉は丁寧に、動作は乱暴に、口の中にワッフル1かけ押し込まれた。ミルメーク牛乳飲んだ直後に押し込まれたワッフルは、ほんのりココア味。

えびせん(えびわかめ)
ゴーヤーと豆腐、帆立の和えもの
2日目のソーキ汁
鶏皮と油揚げのパリパリパスタ
発泡酒(サントリーダイエット生・ホッピー♪

今日もたぶん、息子と2人だけの御飯よねー……と、パスタ料理を予定していたら、
「今日はもう、帰る!」
との電話連絡が。お仕事、どうやら色々煮詰まっちゃって大変らしい。で、1時間後に、「脳天に水入ったピーピーケトル乗せたら瞬時にピーッて言いますか?」みたいな感じに頭から湯気出しただんなが帰ってきた。同僚と「飲みに行きます?」なんて話にもなったらしいのだけれど、我が家の夕飯を優先させて帰ってきてくれたのだそうな。

今日のメインディッシュは、鶏皮のスパゲティ。「鶏皮と油揚げのパリパリパスタ」(レシピはこちら)という名前の、もう何年も前に作ったことのあるパスタだ。99年の夏に最初に作って……あと何回かは作ったのか、今回が2度目なのか、いまいち覚えていないけれど、でも大好きなパスタ。色々とめんどくさくて、そんなにしょっちゅうは作れないのだった。鶏の皮だけ詰められたパックというのもあんまりスーパーとかお肉屋さんとかで見かけないし。

今回は、たまたま鶏皮が安売りしていて(500g入ったパックが200円強だった)、「お、久しぶりにあのパスタ作るかな」と買ってきたのだった。幸い分量はたっぷり4人分以上もある。息子と2人分だったら半量ほどの鶏皮は冷凍して取っておこうかと思ったのだけれど、500gくらいあるそれを全部炒めちゃうことにした。

鶏皮は、適当な一口サイズに切ってからテフロン加工のフライパンでじっくりじっくりじっくりじっくり焼いていく。チリチリと焼けるにつれておそろしい分量の脂が染み出てくるので、それは丹念にスプーンですくってガラス瓶などに移していく。これ、「鶏油」(チーユ)と言って、中華の炒め物や蒸し物の仕上げに使ったりする。ひたすらひたすら脂抜きをするように炒めていって、いーい色になったら焼き上がり。途中、皮同士がベタベタとくっつきはじめてしまうけれど、丁寧に剥がしつつ焼いて、最後にキッチンペーパーの上に1切れずつ並べれば、数分後にはカリッパリッとしたおせんべいのような状態になる。これに塩ふってそのまま囓ってもとっても美味しいのだけれど、今日はパスタに。

具はそのパリパリ鶏皮と、同様にテフロン加工フライパンでじくじく焼いてパリッとさせた油揚げを細切りにしたもの、それと水菜(本当は三つ葉を使うのだけれど、やけに高かったので今回は水菜)。醤油と胡麻油と生姜を、ゆでたての麺と共にこれらの具とざっくり混ぜ合わせて、盛りつけるだけ。久しぶりに作った鶏皮のパスタは、ちょーっと塩気が強くなってしまったけれど、鶏のパリパリはこれ以上なく良い感じにできあがった。

本当はこのパスタとスープだけを晩御飯にするつもりだったのだけれど、これじゃ酒のアテがないわということで急遽もう1品。買い置きのゴーヤーを薄切りにして軽く塩で揉み、ツナ和えにでもしよう……と思ったのだけれどツナがなくて代わりに帆立の缶詰を。ついでに残っていた豆腐も冷蔵庫から取り出して、ゴーヤーと帆立と豆腐をざっかざっかと和えて白和えのようにし、白ごまたっぷりとマヨネーズ、ひとたらしの醤油で味をつけてみた。レシピ本など見ないで適当に考えて味をつけたのだけれど、思った以上に美味しいおかずが一品できあがりー。それと、出しておくと息子が再現なくパリパリパリパリ食べてしまうえびせんべいもつまんじゃおう、と食卓に。

「おつかれさんでしたー」
「おつかれっしたー」
「かんぱーい」
と、まずは発泡酒(息子は麦茶)で乾杯。よっぽどストレスが溜まってるんだか、
「今日はね、飲むのよ。このあとね、パスタ食べながらホッピー飲むのよ」
なんて不穏な事をだんなは呟いていて、発泡酒を飲み干した後、冷凍庫からキンキンに冷やしたホッピーグラスを取り出してホッピーも1杯。ああ、ビールほど苦くなくて、ビールよりずっと軽い味わいのホッピー、ゴーヤー料理にすごく良く似合うなぁ。

10月14日 木曜日
これが沖縄の「チャンポン」なのだそうです。
ピーナッツバターパン
牛乳 with ミルメーク(いちご)

「……あ、しまった、このパン食べるの忘れてた……」
だんなは早起きしてジムに行ってしまった。私は息子と2人、ちょっとのんびりした時間に朝御飯。昨日サンドイッチ用のパンを買ってきたからホットサンドにしようかな……とパンを入れている袋を覗き込んで、もう何日も前に購入したピーナッツバターパンと目が合った。ああ……これ、月曜か火曜の朝御飯に食べようって買ってきたものじゃなかったかしらん。みみなしの白い食パン2枚の間にピーナッツクリームがサンドされている、コンビニなどでよく見るありきたりな菓子パンだ。存在をすっかり忘れていた。

「うん、まぁ、カビてないし……ちょーっとだけ固いけれど、たべちゃおうね」
と、2組入った袋の中身を息子と2人で半分こ。
「おかーさん、今日はどのミルメークにしますか?」
「……ん?今日もミルメークにするの?」
「うん、今日もするの。ぼく、メロンね」
「じゃあ私いちごね」

真夏の暑いときには牛乳よりとにかく麦茶!冷茶!ビール!という感じなのだけれど、涼しくなってくると俄然牛乳が美味しく感じられるようになってくる(真夏にキーンと冷やした牛乳飲むのも美味しいんだけどね)。存在を忘れかけていたミルメークを思い出して、最近になってまた飲み始めたのだった。

ほのかに甘い、底には溶けきらないピンク色の顆粒がキラキラしている牛乳を飲みながら、ちょーっと固くなっピーナッツバター入りの白いパン囓る。……今度から、買ってきたパンは忘れずに早めに食べることにしなければ。

羊肉カレーとチーズのホットサンド
牛乳

今日は都心で打ち合わせがあって息子の延長保育も幼稚園に頼んであったのだけれど、それが急遽明日になっちゃったので、今日は一日のんびり過ごせることになってしまった。

「こんなことなら、お弁当でも作れば良かったわー」
と思いながら、今日はやたらとメールのやりとりをする展開に。男性女性入り乱れて6人くらいでわぁわぁと。近いうちに皆で飲みに行けると良いですねー。

昼御飯は、満を持してのホットサンド。ずっと前から、とあるホットサンドを作りたくて作りたくてその機会を狙っていたのだけれど、やーっと作ることができた。それは、以前作ったマトンカレーを使ってのホットサンド。ほんのお玉に一杯くらいしか残らなかったカレーを冷蔵庫の奥に突っ込んでおいて、ずっとずっと「これでホットサンド作ったら旨いだろうなー」と思っていたのだった。

パンにマーガリンをこてこて塗って、ホットサンドメーカーにセット。カレー乗せて、チーズもたっぷり乗せて、もう1枚のパンで蓋してスイッチを入れて5〜6分。こんがりと焼けたけれど、どうしても液体ものの具を入れるとパンがちょっとクニャッとした感じになってしまい、そのあたりは気にしない方向で。アツアツのうちに皿に乗せ、用意しておいた牛乳傍らにはふはふ言いながら食べた。

肉がごろごろと入っていたカレー、相変わらず青草のような独特なマトン臭さが漂っていて、それとチーズの相性が素晴らしく良い感じ。どうせだったらチーズも羊乳チーズとか使えば良かったのかしら、なんて考えながら羊くさーいホットサンドを堪能した。温まってゆるくなったカレーがパンの端からポタポタ垂れそうな勢いだったけれど、めげずにがぶがぶと。
カレー味のホットサンドは美味しいなー。今度はピザ用チーズだけじゃなく、色々なチーズでもホットサンドを試してみたいところ。

沖縄のチャンポン
3日目のソーキ汁
アイスティー

今日も見ている『しあわせの沖縄料理』、気になったのは沖縄の「チャンポン」という料理だった。長崎のチャンポンと異なり、汁麺じゃなくご飯の上に野菜炒めを乗せるのが沖縄の「チャンポン」なのであるらしい。いかにも家庭の味、といった風のごっちゃりとした野菜炒めが乗るご飯がすごく美味しそうで、
「キャベツあるじゃん、ピーマンやにんじんもあるし……幸いニラもあるし、ポークもあるし」
と、作ってみることにした。

サラダ油で玉ねぎを炒め、そこににんじんを入れ、キャベツを入れ、ポークを入れ、もやしを入れ、ピーマンを入れる。次々入れながらせっせと炒め合わせ、味つけは、醤油と砂糖と味醂と本だし。分量どおりに調味料を入れたけれどいまいち塩気が足りない気がして、適当に調整した。最後にニラを加えてざっとひと混ぜしたら、溶き卵を3個分(レシピだと4個分)。できあがった分量はかなりのもので、これって本には2人分とあったけれど絶対4人分だと思う……というものができあがった。大変な分量だわ……明日、だんなのお弁当に詰めてあげよう。

で、ランチョンミートと卵以外はひたすら野菜だらけのその炒め物をご飯にたーっぷりかけて食べる。お供には、もう残り少ないソーキ汁。淡泊な味の野菜炒めは見た目以上にたっぷりと食べられて、ついついトッピングだけお代わりしてみたりして。もやしのシャキシャキ感がとても素敵で、あんまり野菜炒めに愛のない私も、「お、これは旨いぞ」と感じられた。調味料はごく普通のものしか使わないし、すごく馴染みのある味だけれど、卵とランチョンミートの存在がほんのり沖縄っぽいと言えば沖縄っぽい?

「ううう、こうして、20年以上前に一度行っただけの沖縄の料理だけはなぜか着々と作れるようになっていくー」
と思いつつ、私も息子も平皿に盛ったその丼をぺろっと平らげた。来年の夏は海外とかじゃなく、沖縄旅行に行きたいなー。繁華街近くに宿取って(飲んだくれても帰れるように……)、レンタカー借りて、島の中をぶいぶい。

10月15日 金曜日
念願の魚久のイートインでお昼御飯食べられました
すぱたまちーホットサンド
カップスープ(JALのコンソメスープ)
アイスカフェオレ

昨日もだんなの帰宅は「朝刊が届いたよりも後」。だんなががさがさ動く音に
「おかえりなさーい……いま、何時?」
と聞いたら、疲れた声で「3時半……」と答えられた。まだまだ夜中だという感覚だったけれど、もうすぐ夜明け……うへぇ……。

お疲れだんなのために、起きるなりお風呂のスイッチを入れ、弁当を作ってあげる。「作ってあげる」なんて表現をしちゃいけないほどの適当なお弁当は、昨日の"沖縄チャンポン"をご飯の上にかけたもの。隅っこには、最後の1かけずつだった、ソーキ汁のソーキと厚揚げと大根を詰めておく。残りものだらけのお弁当になっちゃったけど、チャンポンはけっこう美味しくできたから許してねん。見た目はちょっとアレだけど。

で、朝御飯はホットサンド。コンビーフは既に買い置きがなかったので、残っていたスパムを細く短冊切りにしてまんべんなくパンに散らしてサンドしてみた。あとはいつものとおり、マヨネーズ和え卵と、チーズ。あんまり涼しいのでカップスープも用意した。

ちゃんと長袖を着るんだよ、という声を背中に受けて着替えてきた息子は、胸に書かれた「ROCK」の文字を指さして、居間の入り口でくいっと上を向き、マイクを掲げたポーズで
「If you sme-------ll !! What's The Rock is cookin' !」
なんて吠えている。いや、確かにロゴはROCKだけど、そのROCKじゃないから、そのTシャツ。幼稚園でもやってそうだなぁ。ピープルズエルボー(The Rockの必殺技……)とか園児のお友だちにキメたりしてないだろうなぁ。怖いなぁ。

「私、こないだ買ったJALのコンソメスープ飲もうかな」
「あ、俺も俺も。……息子はー?」
「ぼくはー!コーンスープ!」
「あー……やっぱりそう即答しますか……」
なんて言いながら、がさがさと各種顆粒スープをカップに入れる。JALのコンソメスープはまんま機内で飲むあの味で、でもあの味が大好きな私とだんな。
「へへへ、同じ味だよ」
と、懐かしいようなジャンクなようなあの味を楽しんだ。

ホットサンドは美味しいのう。

人形町 「魚久」の
 かれいの味噌漬定食 \840

今日は、お昼に人形町で打ち合わせ、その後溜池の事務所でボスと打ち合わせをする約束をしている。お昼の約束は1時過ぎだったので、ちょっと早めに人形町に到着して、念願の場所で昼食を摂ることにした。念願の場所とは「魚久」のイートイン。これまで10切れくらいのこの店の粕漬けを口にしてきたけれど、未だお店の中で食べたことがない味だったりして、
「お店で食べると完璧な焼き具合なんだろうなー……お昼の定食、美味しいらしいしなー」
と気になっていたのだった。

人形町の、いつ見ても大行列の「玉ひで」の前を通過し、定食屋さん「小春軒」の前も通過し、てくてくとそのまま2ブロックほど歩いたところに「魚久」の看板がある。そこの2階に、手軽な定食が楽しめる「イートインあじみせ」が。一品料理やお酒も色々揃えてあって、お昼だけの営業のはずなのに居酒屋のような品揃え。ほとんどのお客さんは3種類の粕漬け定食のどれかを食べている。

12時ちょっと過ぎに飛び込んで、混雑している店の中、カウンター席に通された。定食は1260円の銀鱈粕漬定食と、1050円のさけ粕漬定食、840円のかれいの味噌漬定食。ざっと見て、「あ、これ食べたことない!」とかれいを指さしたら、それは粕漬けじゃなくて味噌漬けで、
「あ、粕漬けのお店に来て味噌漬け頼んじゃったよ、今日は粕漬け食べたかったのに……」
と注文した後で気がついた。

んが、この味噌漬けの美味しかったこと美味しかったこと。確かに味噌の味もするけれど酒粕の味もしっかりして、その風味は他の粕漬けと比較して全く遜色ない。身の中までしっかりと甘い香りが染みついて、脂がたっぷり乗ったそれがホロホロモロモロと箸を滑らせるだけで崩れていく。焼き加減もちょうどばっちり。皮まで香ばしくて美味しく食べられる。

笑っちゃうほどたっぷり盛られた、絵に描いたような「大盛り」の御飯と、かぶと油揚げの入った優しい味のお味噌汁、白菜とたくあんと柴漬けの3種盛りの分量たっぷりの漬物皿と、色の濃い味も濃厚ななめこの小皿、そして高野豆腐でいんげんと椎茸と人参巻いて含め煮にした小鉢が1つ。魚の上には"はじかみ"と醤油の染みた大根おろし。なんともお上品な定食だった。そこらへんで脂ものがっちょりという風の揚げ物定食が800円前後で余裕で食べられることを思うと、ちょっと贅沢なお昼御飯だ。1260円の銀鱈定食となると、更なる勇気が要るかなというお値段だ。魚が違うだけで他の小鉢などの構成は一緒だけれど、でも銀鱈もめちゃめちゃ美味しいのよねぇ……。

「……いや、でもこれ、小鉢なんかもいちいち美味しいわ……」
粕漬けの美味しさは知っているけれど、その他のものもそれぞれいちいち美味しくて、なんだかとても幸せだった。店の中はそこら中、あの粕漬けが焼けたいーい匂いが漂ってるし、呼吸しているだけで幸せ。銀座店には3種の粕漬けセットなんかも食べられるそうで、今度はそっちも行ってみたいものだ。

食後、ちょっと本屋さんを覗いたりしてぷらぷらしてから打ち合わせ場所に向かったのだけれど、打ち合わせ相手の某氏に、
「……あ、お昼御飯、もしかして粕漬けでしたか?」
と言われてしまった。……うわぁ、そんなに私、粕漬け臭いですか?(んな、焼き肉とかじゃあるまいし……)

「MOUTOM」のミックスサンド
チキンマカロニグラタン
オレンジジュース

午後は、溜池のボスと2人で今取り組んでいる仕事の打ち合わせ……のはずだったのに、
「うち、こないだの連休、土曜の運動会が台風で月曜になって、それがまた雨で流れて明日になっちゃったんですよー」
「ああ、俺とこも全く一緒だ。しかもさ、下の子の七五三だってんで、明日にホテルで会食しようって予約とか入れてたのに、運動会の延期のせいで全部キャンセルよ」
「うっわー、悲惨。いや、うちとこも、温泉行こうって話がこのおかげで延期になって……」
「大変だよね、お互いに。運動会って、そこまで決行しなきゃいけない行事かね?……あ、これ喰う?甘夏ゼリー。うまいよ」
「……いただきます」
「……お茶も飲む?」
「……いただきます」
……そのへんのおばちゃんの井戸端会議と全然変わらない会話をしているのだった。なんで溜池まで来てこんな話……。

それでもなんとか仕事の話もちゃんとして、帰ってきたのは午後6時半。
息子をみていてくれていただんなの実家に息子のお迎えに行き、適当にお買い物して帰ってきて、今日の夕御飯は簡単にチキンマカロニグラタン。だんながちょっと前に、
「はい、やる気のない夕御飯のときにね、これ、お使いなさいね」
と買ってきてくれたハインツのグラタンソースを使って、適当に作っちゃうことにした。明日のお弁当にもこれをちょっと使う予定なので、その下ごしらえも兼ねて。

鶏肉炒めて玉ねぎも炒めて、茹でたマカロニと一緒にグラタンソースを混ぜ合わせる。耐熱皿に入れてピザ用チーズとパン粉とパルメザンチーズを上からかけたらオーブンで15分。ありきたりーな味のありきたりーなチキンマカロニグラタンができた。これ一品じゃあまりにも寂しかろう、と、50円引きになっていたミックスサンドもひとつ。「MOUTOM」という、駅ビル内にあるその店は美味しそうなハムやソーセージを売っているところなのだけれど、値段がそれなりによくていつも気になりながらも買えないお店。500円のサンドイッチが450円になっていただけだけれど、これも良い機会かなと1パック買ってきてみた。マカロニグラタンとサンドイッチなんて妙な組み合わせだけれど(サラダを買えば良かったのに、と気づいても後の祭り……)、気にせず食べる。

ハム屋のサンドイッチらしく、生ハムとレタス、サラミとトマト、スライスハムたっぷり、といった風のハムがメインのサンドイッチ。どれもそれぞれ工夫があって、画一な味じゃなくて美味しかった。さりげなくポテトサラダのサンドイッチがすごく美味しかったりして。
「チーズがのってて、マッケンチーズみたいなごはんだねぇ」
とマカロニグラタンをおおいに気に入ったらしい息子はサンドイッチもきっちり半分食べ、グラタンもおおいに食べ、今日お義母さん家からいただいてきた100%オレンジジュースをゴブゴブと飲んでいた。

食後は、明日のお弁当の下ごしらえ。
「……おかあさんは、なにしてますか?」
「コロッケの準備。君、"コロッケ食べたいなー"って言ってたからさ」
「コロッケ、どうやって作るの?おしえて?おしえて?」
「うん、じゃあ、手伝ってくれる?」
「はーい、台、もってくるからね。まっててね」

踏み台持ってきた息子と一緒に、コロッケのタネ作りを。じゃがいも茹でて、豚ひき肉とみじん切り玉ねぎを炒めて、じゃがいも潰して肉と玉ねぎ混ぜて、塩胡椒で調味して、ほーんの少しの練乳加えてよーく混ぜて、成形。息子はフライパンに材料入れるのと、じゃがいも潰すのと、成形を一緒にやってくれた。途中、あれこれあれこれ聞いてくる。

「おいもだけだと、コロッケにならないの?たまねぎ入れないと、コロッケにならないの?」
んー、お芋だけでもコロッケになるけどね、お肉と玉ねぎ入れた方が美味しいと思うよー。
「これなぁに?ぶた、ひきにく?ひきにくって、ぶたの中にあるの?」
……いや、挽き肉は……豚肉の"中"にあるんじゃなくってね、お腹や足の肉を、こまかーくしたものなのよ。
「ぶたのおなかに、この肉がはいってるの?」
……そうじゃなくって……。

息子の、コロッケへの理解は、いかに。

何やら「お手伝い」が楽しくてしょうがないらしい息子は、今日の夕方に帰宅した直後、幼稚園の荷物の片づけだ、買い物荷物の片づけだ、お義母さん家から貰ってきた諸々の食材の片づけだ、洗濯物の片づけだとわやくちゃになっている私を、ものすごく的確に補佐してくれた。台所に置きっぱなしになっていた買い物袋は全て台所に。自分の荷物は自分で片づけ。バスタオルはいつの間にか所定の位置に。なんと、7kg以上あるはずのビールのケースまで、私がマカロニ茹でている間に、玄関先から居間の押入ワゴンの所定の位置(床から10cmくらい持ち上げなきゃいけない)に収められていた。
「ぼくは、いま、スーパー息子だから!」("息子"は息子の愛称)
と胸を張っている。すごい、すごいわスーパー息子。なんかまぶしいわー。ROCKのTシャツが良かったのかしら。ぱちぱち。

10月16日 土曜日
やーっと運動会ができました。
「MOUTOM」のカレーパン
牛乳

快晴とは言い難い天候ながら、今日はなんとか運動会が開催される模様。
今度こそ、と、気合い入れて5時45分に目覚まし時計のスイッチを入れ、御飯炊いて鮭を焼いてウィンナー炒めて、せっせとお弁当作り。昨夜日付が変わってから帰ってきただんなと少しお喋りしてから寝たので、だんなも私も寝たのは1時過ぎ。私よりずっと疲れているだろうに、だんなも6時半に起きてきて弁当作りを手伝ってくれた。おかげで予定よりも20分以上も早く全ての準備が整ったよ。ありがとうありがとう。

お昼にお弁当なので朝御飯はパンにしようねと、昨日サンドイッチを買った店で一緒にカレーパンとチーズパンを買ってきてみている。普通、カレーパンと言うと揚げてあるものだけれど、このお店のはパン粉をまぶしてはあるけど焼いたもの。中にはしっとりした挽き肉カレーがたっぷり詰まっていて、これがかなりスパイシーな本格の味だった。パンの生地も中に詰めてあるカレーもどちらもすごく真面目に作ったような美味しさがあったけれど、でもカレーパンはやっぱり揚げてあるものの方が好きかな……。ちと、「なんかちょっと違う。なんかちょっと物足りない」という感想の残るカレーパンだった。これ、揚げたらきっと最高に美味しいんだけどな……なんて思ってしまったりして。

しっかり牛乳飲んで、大きなトートバッグに重箱と魔法瓶と食器とお手拭きを詰めて、いざいざ運動会。

幼稚園の運動会にて
 おにぎり(鮭・あんだんすー)
 コロッケ・串カツ
 コーン入りマカロニグラタン
 チーズウィンナ&うずら卵
 海苔入り卵焼き
 水菜の胡麻和え
 梨
 ほうじ茶

"年長"の息子、去年は
「うわー、あんなこと来年やるのか!?できるのか!?」
なんて思いながら年長組のダンスなどを見ていたのだけれど、「ああ、やっぱりちゃんと成長しているんだなぁ」と色々と感動した運動会。年長組の対抗リレーでは病気で休んじゃった本来のアンカーの子の代わりに息子が急遽アンカーになり、棒取りでは引きずられて転びながら棒を自分の陣地に引っ張り、あとは、障害物競走したり、ダンスもちゃんと動けてみたり。年長組は色々とやることも多くて数十分おきに何かしらの出番があったけれど、午前も午後も疲れを見せずにがんばっていた。

お昼御飯は、先週運動会が流れちゃったときに
「運動会、来週になっちゃったね。……お弁当、どうしようか?今回は、おいなりさんと唐揚げ作ったじゃない?次は何食べたい?」
とのリサーチの結果、
「んとね、おにぎりとー、コロッケ!」
という結果を得ている。そりゃもうそのリクエスト通りにするしかないでしょう、と、昨日のうちにポテトコロッケの下ごしらえを息子と2人で済ませていたのだった。

どうせ揚げ物するならもうちょっと肉っ気のあるものも恋しいなと、ついでに串カツ(肉・玉ねぎ・肉という組み合わせで竹串に刺したもの。1本だけ"当たり"があって、肉・肉・肉)も。昨夜のマカロニグラタンを小さなアルミカップ3個に分けておき、コーンとチーズを散らして焼いたものと、毎度用意しているチーズウィンナと茹でたうずら卵を爪楊枝に刺したもの(←なんかこれ、みんな好きなんだよねぇ……)。あとは、水菜の胡麻和えと、焼き海苔を巻き込みつつ焼いた渦巻き模様の卵焼き。三段重におかずだけがみっちりと詰まり、大きくて重箱には入らなかっただんな特製おにぎりは、別のおにぎり用パックに。海苔は現地で巻いて食べようと、ざくざく切ったのをラップに包んで持っていった。あとは梨とあったかいほうじ茶。

今日はかなりの涼しさ(というか寒さ)で、最初から最後までどんよりとした曇り空。園庭にレジャーシート広げて……という感じじゃなかったので、幼稚園の教室の床にあれこれ並べて食べることになった。フローリングの床にちょっとだけ布広げて重箱並べて、重箱と揃いの樺細工の皿出して、箸出して……と、なかなか豪華なお昼御飯。さすがに全部は食べきれなかった。

息子はおにぎり2個食べて、コロッケも2個食べて、グラタン食べて野菜も食べて卵も食べてウィンナーとうずら卵も山盛り食べて、御満悦。ちなみに"当たり"の串カツはだんなの胃袋に収まった。

お弁当の残りあれこれ
冷凍餃子
冷凍焼売
だんな特製もやしの和え物
ホッピー

幼稚園終了は午後2時半過ぎ。昼御飯の時以外はずーっと立ちっぱなしだったので足がパンパンに張ってしまった。幼稚園の園庭は、レジャーシートを広げて場所取りするほどには広くなく父兄は園児席の後ろに立つしかない状態で、最初にたまたま良い場所(息子の席のすぐ背後)に立ててしまった私たちは
「うーん……息子の出番じゃない時にちょっと抜けて休みたいけど……」
「この場所動いたら、もう二度とここに戻って来られそうにないね……この混雑ぶりじゃあ……」
なんてひそひそ話しつつ、そんな私たちの背後にもまだ何重にも園児のお母さんお父さんたちが必至の形相でビデオカメラを抱えていたりして、動くに動けない状態。結局そのまま全てのプログラムを満喫してしまったのだった。屈伸運動なんかもできる余裕なくて、とにかく足が疲れてしまった。

で、終わったときには
「やーっと終わったよ……」
「帰ったら寝るよ……」
と、途中ちょっとだけ買い物して(ハーゲンダッツのアイスクリームが安売りされていたから、好物のカスタードプディングとリッチミルクをお買い上げ〜♪)、ヨレヨレと帰宅。息子だけは元気に、
「それじゃあ外で遊んできまーす!」
とまた外に飛び出して行った。……げ、元気だなぁ……。

夕御飯はもう全体的にやる気なく、「これ、旨いんだよ」「……そうなの?」なんて会話の後に買ってきてみた冷凍焼売(味の素製)とか、家にある冷凍餃子とか、お弁当の残りとか。なんかシャキシャキした野菜食べたいよねと買ってきたもやしは、だんなが胡麻油と醤油と酢などで中華胡麻ドレッシングのようなものを作り、茹でて和えてくれた。コロッケも卵焼きもウィンナーもおにぎりもまだ残っているので、品数は豊富な食卓に。

「……あ、焼売、美味しいわ」
「ほら、だから言ったじゃん〜。味の素の海老シューマイってけっこう旨いんだって」
「うん……冷凍のこういうのって、私あんまり好きじゃなかったんだけど、食べてみると案外旨いもんだね」
「おゆきさんは、いつも俺の"これ旨いよ"をあんまり信じてくれない……」
そんなくだらない話をしながら、冷えたホッピー(疲れてぐでんぐでんなので焼酎はちょっと少なめ)を飲み干した。

明日明後日は仕事うっちゃって1泊2日で温泉逃避行〜。

10月17日 日曜日
迫力の金目鯛の煮付けを食べました。1人1匹。
「ミスタードーナツ」にて
 ハムタマゴパイ
 ポン・デ・抹茶
 アイスミルクティー

数週間前から、日付が変わってもそれから数時間は帰ってこられないほどの激ジョブが続いているだんなと、土日も仕事しなきゃいけないくらいの仕事の波が来ていた私とで、
「あーもー、どっか行きたい」
「温泉行きたい」
「お金ないし疲れてるし、移動が簡単な近場で……どこか……」
なんて話をしていて、あれこれ調べて私が提案したのが「小湊の温泉宿に行こう!で、鴨川シーワールドとセット!」というもので。

我が家のある千葉県と同じ県内ながら、私は一度も外房線&内房線には乗ったことがなくて、鴨川シーワールドも初めてのところ。安く快適に、でも大きなお風呂や、あわよくば貸切露天風呂なんかに入ることができたら最高だなー……と色々考え、今回のスケジュールが整った。本当は金〜土と出かける予定だったのだけれど息子の運動会の順延のため、急遽、日〜月にと予定変更。それでも予定していた宿も食事処も予約内容を変更することができて、今日の午前中に安房小湊に向けて出発と相成った。

朝御飯は、駅のそばのミスタードーナツで。パイ系の中では結局これが一番好きかしらというハムタマゴパイと、最近種類がどっと増えたらしい"ポン・デ"系から抹茶味。そしてアイスティー。

チョコカスタード入りのふわふわドーナツと、ホワイトチョコがコーティングされたクリスピースティックを抱えた息子は、昨日の運動会の疲れはどこへやら、
「おんせんに行くの?千葉で、6ばんせんの電車に乗るの?」
と朝からエキサイト。なぜ、6番線?(しかも本当に6番線で二度びっくり)

温めてもらった卵たっぷりハムタマゴパイも、もちゃもちゃふちゃふちゃした食感のポン・デ・抹茶は相変わらず美味しかった。だんなと2人、ミスドのドーナツの美味しさと、アメリカで食べたドーナツの美味しさについて語り合う。

外房線の電車に揺られて
 菜の花弁当
 お茶

千葉駅で「万葉軒」(千葉の代表的なお弁当屋さん。案外安価で案外美味しい)の「菜の花弁当」を買い、へにゃへにゃパック入りの駅弁用お茶を買おう……と探したけれどそれはなかったので普通のペットボトル入りのお茶を購入。紺と白のカラーリングのボックスシートの席の列車に乗り込み、鈍行列車に揺られて2時間、房総半島の東側に向かって揺られて行った。特急を使えば30分以上短縮できるけれど、まぁ急ぐ旅じゃないので。

最初は混雑していた車内も、立っている人が消え、隣のボックスシートが空き、どんどんどんどん人は少なくなっていって、最後の30分くらいは「この車両の中にお客さんは我が家の他に2人だけ」なんて状態に。ススキと何やら黄色い花がそこら中に咲く中を、なんとものどかに電車は進んでいくのだった。

そんな車内でお昼御飯。「菜の花弁当」は、御飯の上に炒り卵とそぼろが敷き詰められ、中央に焼きはまぐりを串に刺したものが。あとは漬物が3種類というシンプルな内容のお弁当だけれど、甘くしっとりしたそぼろとか、ほの甘いぽろぽろの食感の炒り卵とかが何だかしみじみ懐かしいような美味しさで、可愛らしく愛らしいお弁当なのだった。やけにガタガタと揺れる外房線の車内で、乗客が少なくなってきた頃にもぐもぐと。食べ終わって少しすると、いよいよ車窓から海が見えてきた。おー、いいねいいね、盛り上がるね。

安房小湊 「海の庭」にて
 "望洋"コース \4,200
   酒盗
   イカのぬた
   ひじきの煮付け
   刺身盛り合わせ(なめろう、ブリ、カツオ、金目鯛、メダイ)
   茶碗蒸し
   かき揚げ
   金目鯛の煮付け
   さんが焼き
   御飯
   あら汁
   お新香
   フルーツ(グレープフルーツ・キウイ)
 生ビール

お昼過ぎに安房小湊(あわこみなと)の駅に到着。駅から本日宿泊のホテル「吉夢」に電話してみると、10分ほどで車で迎えに来てくれた。チェックインまでまだ時間があるので、ちらりちらりと小湊散策。本来海の深いところに住む鯛(マダイ)が餌付けされていて海面のごく表層までやってくる「鯛の浦」の観光船に乗ってみたり、日蓮宗の大本山である「誕生寺」(日蓮上人の誕生の地)をぷらぷらしてみたり、観光客相手の土産もの屋を覗いてみたり。いーい感じに鄙びた感じの温泉街で、まるで「トロと休日」というゲームに出てくる舞台のよう(あのゲームの舞台は三浦半島みたいだから場所は全然違うのだけれど)。小さな灯台のある堤防を歩いてみたりしながら、2時半に宿に入った。

1泊2食つきで15000円くらいする「吉夢」というこのホテル、ホームページを見ると、「1泊朝食つき8000円」というプランもある。差額7000円にあたる夕飯をホテルで食べる気はあんまりしないし、多分同じような内容のものを外の他のお店で食べれば絶対安く済むはず!……と、この朝食のみがついているプランで予約してある。なにしろ、このホテルでの一番の目当てはお風呂なのだ。10階の高さにある展望露天風呂に、大きな大浴場、そして45分1000円で貸切にできる露天風呂も別にあるとか。で、その貸切露天風呂を5時に予約し、夜や朝には大浴場をこれでもかと満喫しようという試みなのだった。

チェックインして早々に大浴場。海に面して足下までガラス製の柵しかない(だから堤防に立ってる人や船に乗ってる人がこちらから丸見え……ということは向こうからもこちらが丸見え?)露天風呂や、細く長く巨大な浴槽のある大浴場を堪能した。1時間ほどしたら、今度は親子3人で貸切露天風呂。4人入るともうぎゅうぎゅうという感じの、せいぜい2人で入浴するのに適当なくらいの小さなお風呂だったけれど、海の向こうに夕日が落ちていくのがしっかり見えて、空が薔薇色に染まっていくのを見ながら家族仲良くお湯につかることができた。無色透明、無臭のお風呂は、洗剤なのか塩素の匂いが感じられて「……ほんとに温泉?」という気もしなくはなかったけれど(ちゃんと壁には「これは温泉」の表示があったし)、手足のばして雲一つない青空の下で入るお風呂は、それだけで積もり積もった肩凝りが解消していく感じ。きもちいいぞ、来て良かったぞ。……ただ、露天風呂に入っている間、ずーっと流れているオカリナ調音楽だけはどうにかならないかな……("北の国から"のテーマ曲とか、"いい日旅立ち"とか"ふるさと"とか、なんかうら寂しげなミュージックばかり……るーるーるるるるるー♪……)。

ホテルのお風呂をたーっぷり堪能した後は、夕飯の予約を入れてある「海の庭」という漁師料理がウリの旅館に夕飯をいただきに。「ホテルで夕食摂らないで外で食べよう」と思ったものの、いくつかみつけた定食の店、郷土料理の店はことごとくが夕方6時には店じまいするみたいで、全体的に「うちは昼食だけだからね、夕食は宿で摂りなさいね」という感じ。けっこう必死に探して見つけた店のうち一つがこの「海の庭」という宿で、
「宿泊は別のところに取っちゃったんですが、食事だけいただきにあがっても良いですか?」
とお願いしてみたのだった。宿泊客で一杯の時は駄目だそうだけれど、今回はOKという返事。何しろここ、2500円くらいから、けっこうな内容のコース料理が食べられる様子。しかもホテルのすぐ近くというロケーションなのだった。ちょっと豪華なお刺身の盛り合わせとかき揚げがついてくるらしい、4,200円の「望洋」というコースをあらかじめ頼んでおいてみる。

「はい、はい、ご予約のお客さんね。そちらの席にどうぞー」
と大座敷の一角に通されてみれば、既にいくつかの小鉢が食卓に並んでいる。デザートのフルーツ皿まで並んでいて、一瞬
「……うーん、選ぶ店を間違えちゃったかしらん?」
という思いが。並んでいる皿はどれも小ぶりだったし、それらは一見したところ取り立てて美味しそうにも見えなかったし、不安が広がっていく。

が、
「はいこれお刺身ねー」
「はい、茶碗蒸し」
「かき揚げでーす」
と、卓上の皿はどんどん増えていく。刺身は5種類、どれも厚切りで食べ応えがあり、ブリブリと脂の乗った金目鯛やカツオは、すんごく美味しい。銀杏と海老の入ったちょっと味が濃いめ(←濃いめが好み……)の茶碗蒸しはちゃんと出来たてのアツアツだったし、イカをわかめや葱と一緒に酢味噌であえた"ぬた"は、ちょっと甘めの食べやすい味。洗練された味ではないけれど、どれも素朴な優しい美味しさがあった。

「……あ、前言撤回……」
「うん、美味しいね、ぬた美味しい〜」
なんて言いながら、生ビール飲みつつがつがつとあれを食べこれを食べ、こりゃ大変……けっこうな分量だわ……と思っているうちに
「はい、金目鯛の煮付けでーす」
と、次なるエモノが。

テーブルにやってきたのは、なんと1人につき1匹の金目鯛。1匹丸ごと、テラッと甘辛い醤油の煮汁でこっくりと煮込まれている。刺身の皿もでかかったけれど金目鯛の皿は更に巨大で、テーブルから溢れてしまいそう。皿もでかけりゃ、魚もでかい。金目鯛1尾なんて、食べたことないよ。おっきいなー……。
「すごい……これ一匹で普通、定食のメインのおかずだよね。しかも普通は"1切れ"とかせいぜい"半身"……」
「それ言ったら刺身だってこれで普通の"おかず一品"の分量だし、かき揚げもそうでしょ……」
すみません、テーブルを最初に一見したとき「あ、もしかしてショボい?」とか思っちゃって、すみません、おそろしいボリュームです。私たちにも食べきれるかどうか。

更にその後には、ラーメンどんぶりみたいな巨大な椀に入れられたあら汁もやってきて、結局私もだんなもヒーヒー言いながら食べ物を口に入れる展開になったのだった。どれもこれも美味しいだけに、つい必死になって食べてしまう。特に美味しかったのは、房総名物「なめろう」。青魚を味噌と香味野菜(生姜とか茗荷とかしそとか)と一緒に叩いて叩いてねっとりとさせたもので、寿司のネタとして食べたことは何度かある。柔らかくクタッとした口当たりの魚は嫌みな臭さとかが全然なくて、味噌といーい具合に馴染んでいる。「さんが焼き」というのは、このなめろうを貝の殻に詰めて、しそを1枚ぺろっと乗せて蓋をし、焼いたもの。焼いたものも香ばしくて、これまた御飯の良いお供という感じ。日本酒にもとっても合いそう。

「うん、満足満足……」
「いーい感じに腹一杯になりました……」
「これで4000円なら、満足ー」
とか言いつつ、少々仰向け気味になってしまいながらもヨタヨタした足取りでホテルに帰還。息子にと頼んだかき揚げ丼(これもでかい……)だけは食べきれなくて2口分くらい残しちゃったけど、あとは残らず綺麗に食べた。金目鯛も骨までしゃぶる勢いでしっかり食べた。
ホテルに帰って一休みしてから再び大きなお風呂を堪能し、今日は計画どおりばっちりの幸せな日曜日。
温泉宿に来たら、夕・夜・朝と3回は入浴しなくっちゃー。でも、まだちょっと、腹一杯……。