食欲魔人日記 01年10月 第5週
10/29 (月)
しらす山盛り飯 (夕御飯)
ベーコンエッグトースト
豚汁
アイスウーロン茶

最近、全然朝食に目玉焼きを作っていなかったのである。
「明日は……目玉焼きが食べたいなぁ」
とだんなにリクエストされてしまった。しかも
「……ベーコンエッグにして欲しいなぁ」
という注文までつけられた。ベーコンエッグは久しぶりだ。食パンさくさく切ってトーストにし、半熟に焼いたベーコンエッグを乗せて食べることにする。お供に豚汁。

チョコパンやクリームパンに豚汁はいまひとつ合わないかもしれないけれど、トーストやロールパンなどと味噌汁はすこぶる似合うと思う。バターたっぷりトーストと豚汁なんて特に素晴らしい組合せのように思ってしまう。

3日目の豚汁は、もう具という具のエッジがすっかり溶けて柔らかく丸く煮詰まっていて、味噌の味も「煮詰まりきった味噌の味」という感じになっていて、表面にはひらひら漂う豚肉の脂がキラキラと浮かんでいたりなんかして、見かけはめちゃめちゃ悪いけどめちゃめちゃ美味しかったのだった。残り、あと2杯くらい。

チキンサンド
ホットミルク

金曜日に買ってきた鶏の丸焼きの肉が、まだ残っていたりする。切り干し大根もしらすも、子供にとってはいまひとつ旨くないんじゃないかというものも旨い旨いと言って喰っている息子が最近唯一「おいしくなーい」と言って一口しか食べなかった肉だ。そんなに不味いのか……そうでもないと思うけど。

既に細かくほぐされている肉をレンジで温めて、サンドイッチにして喰うことにした。
パンにマーガリンをこてこてと塗り、レタスを山盛り乗っけたところにほぐした肉をまんべんなく散らす。トマトの輪切りも1枚分厚いのを乗せ、玉ねぎのスライスなどもぬかりなく乗せ、最後にマヨネーズをにょろにょろと絞り出しまくった後にもう1枚のパンで蓋。厚さ5cmはあろうかという巨大サンドイッチになってしまった。やはり1cm厚さのトマトに問題があったと思われる。

なんとなくホットミルクが飲みたい気分だったので牛乳を温め、ちょっとだけ砂糖を溶かしてラム酒も入れる。ブランデーやリキュールをホットミルクに入れるのも見たことがあるけれど、私はあの褐色の、どこででも買えるラム酒を垂らすのが大好きだ。「おっとっと」なんて言いながら、誰も見てないのに手がすべったふりをして大量に入れてみたり。一度ふざけてラム酒含有率40%くらいのホットミルク(それはもはやホットミルクじゃなくて"牛乳風味の酒"だったけど)を作ったことがあるけれど、あれは後で猛烈に後悔したんだった。ラム酒が多すぎるホットミルクは美味しくなかった。

顎を外しそうになりながら巨大サンドイッチをばくばく食べる。マヨネーズ垂らしすぎてパンを噛む端から溢れてくるのも一興だ。脂ギットギトの鶏肉もパンと野菜で挟むと案外美味しくて、めでたく鶏肉は消え去った。

豚肉の角煮
切り干し大根の煮物
豚汁
しらす山盛り飯
モルツ、アイスウーロン茶

おむすび

今日はずっと家で仕事、夕方には雨まで降ってきて、夕飯の材料を買いに行く余裕がなかった。
「うむ、今日は羽釜御飯を満喫する日だな、うむ!」
などと理由をつけつつ、ありもののおかずを並べるだけの簡単夕飯。やったことと言えば米を炊いたことと角煮の鍋をコンロに乗せて火をつけるとか、そんなくらいのものだ。

もうすっかり甘辛く良い感じに煮えている角煮をお代わりして食べつつ、更に大量にお代わりしながら羽釜で炊いた御飯を満喫。宅急便で届いた佐島の釜揚げしらすは本当に美味しくて、白い御飯に白いしらすを大量にぶっかけて「しらす丼!」とか言いながらはぐはぐ食べる。……良く考えたら、一口でしらす30尾以上は口の中に入ってしまってるようだ。山盛りしらすをもしゃもしゃ食べるということは、魚を数百匹単位で食べまくっているということになる。

「……なんか、すげぇ……」
としみじみしらすを眺めると、つぶらな眼と眼が合ってしまいそうでちょっと怖かった。しげしげと観察しても、骨がついてんのかヒレがあるのか眼球と胴体以外のパーツはどうなってんのかさっぱり判別がつかない。品質優良なこのしらすは混ざりもんは全然ないんだけど、スーパーで買ってくるやつなんかは小イカや小タコ、小エビなんかが混ざっていたりする。実はあの"おまけ"が"まゆげつきコアラのマーチ"的なわくわくを感じさせてくれて、大好きなのだった。

3合炊いた御飯は、茶碗一杯分だけ余った。
「……おむすびに、しましょう」
と我が家のおむすび奉行のだんながせっせと2個のおむすびを作ってくれた。おむすびファンクラブ会員の息子が、茶碗一杯の御飯をきっちり食べた後だというのに「おむすびだ!おむすび、おむすび!」と早速1個目のおむすびを囓っている。海苔巻いて喰っているその姿を見ていたら、無性に私も食べたくなった。
「おむすびだねー♪おむすび、おむすび♪」
などと言いながら、私もちゃっかり残りの1個を食後に食べてしまうのであった。
……ってことは、デザートがおむすび……?

10/30 (火)
カレイの干物 (夕御飯)
顔が……顔が怖いっす……
うどんですかい
豚肉の角煮
アイスウーロン茶

今日は仕事だというのに、寝坊してしまった。春は春であったかくて気持ちよくて寝過ごすし、秋冬になると今度は寒くて布団から出られないまま寝過ごしてしまう。夏もやっぱり寝過ごしてしまう。結局、四季を通して寝過ごしてしまう我が家であった。ねむーい。

本当はうどんを茹でてたぬきうどんに……という予定だったけれど、準備時間3分の「うどんですかい」に路線変更。JAL製ミニカップうどんのそれが、我が家には何故か「箱」で常備されている。まだ20個くらいは入っているだろうか。着々と消えてなくなっていく。

あと数個しか残っていない豚肉の角煮も温め、ほの甘いうどんと、こってり甘い角煮で全体的に甘ったるい口当たりの朝御飯。油揚げがどかどかどかどか入ったうどんですかいは、やっぱり美味しい。

大学学食カフェテリアにて
 ごまだれ丼

大学研究室にて仕事の今日。昼休み少し前に「学生が来ないうちに〜」と、研究室棟の近くにあるカフェテリアに行くことにした。構内には3ヶ所学食があり、1つは学生は入れないパレスホテル経営の豪華学食、値段も高い。ちょっと価格が高めで、ちょっとだけ洒落た感じがしないでもない「カフェテリア」と、もう1つは昔っからある「山食」だ。こちらは大教室棟の地下にあるので、学生でない自分が足を踏み入れるにはちょっとばかり勇気がいる。

で、適度に居心地が良い「カフェテリア」で昼飯。ショーケースを見ると、2週間に1度ほど登場している、定番メニューの1つであるらしい「ごまだれ丼」が目に入った。ちょっと珍妙な味のような気もするけど、これがなかなかけっこう美味しい。510円だ。
錦糸卵がたっぷり盛られて御飯が見えないような状況の中、海老だのイクラだのの魚介がどかんと盛りつけられている。胡麻風味たっぷりの棒棒鶏のタレにも似たタレがたっぷりとかかり、胡麻がぱらりと散らされた中、プチトマトが1つちょこんと乗っている。

巨大な黒光りするどんぶりの中には、「1合くらい入ってんじゃなかろうか」というくらいのたっぷりの御飯が詰まっていて、具沢山なトッピングなのにちょっと物足りなくなるほど充実した白飯が味わえる。さすが学食、という感じ。
そういや、社食では「御飯半分にしてくださーい」はしょっちゅう言っていたけれど、学食じゃそんな事言ったこと一度もなかった。喰ってたのねぇ、これをねぇ……(遠い目)。

カレイの干物
うるめいわし
佐島のしらす
豆腐と油揚げの味噌汁
羽釜御飯
モルツ、焙じ茶

息子を見てくれているだんなの実家に夕方行くと、
「これ、今日届いたのよ〜」
と魚とリンゴをどかっと貰ってしまった。丹後のうるめいわしの干物と、カレイの干物ということだ。丁度夕飯の材料も買っていなくて、めでたくおかずゲットとなった。"うるめいわし"は「目刺し」にもされる小さな青魚だ。身体の側面がピカピカと青緑に光っていてとても綺麗。パックにみっしりと10匹以上が詰まっている。早速焼いて、喰うことにした。

先日来我が家では、よっぽどの事がない限り米は羽釜で炊くことになってしまっている。もう完全に手放せない。食事の度に釜やら木製のおひつやらを洗うのは少々手間だけど、おひつの木の匂いがふわっと香るピカピカの炊きたて御飯を食べる快感は何にも代えがたい。何しろ、帰宅が早かっただんなと
「……焼き肉屋、行くぅ?」
なんてお互い言い合ったにも関わらず
「……いや、干物と御飯でいいか」
「うんうん、御飯がいいよ」
と焼き肉屋提案を却下してしまったほどだ。おそるべし羽釜。

とりあえず、米が炊けて蒸している間にうるめいわしをこんがり焼いてビールを片手につまむことにした。ほんのり苦みのあるいわしは頭からバリバリと食べられる。苦みはけっこう強いけど、ふくふくとした淡泊な身とかその苦さだとかがアルコールに似合う。グリルではカレイの干物もじくじくと焼けていて、豆腐と油揚げたっぷりの味噌汁も用意した。米はもうすぐ蒸しあがる。むふふふふ。

御飯と味噌汁、焼きたてのカレイの干物と残りわずかなしらすを盛って、魚だらけの和風の食事になった。全部のおかずが御飯に合うのも困ったもんだけど、御飯が美味しすぎて「御飯で御飯が食べられる」状態になってしまうのが恐ろしい。ただただ白い御飯を1膳食べて、続いてしらすを山盛り乗せて1膳食べて、食卓に出ていたおかかふりかけが美味しそうでもう2口ばかりお代わりして食べた。3合の米は、今日もおにぎり1個分を残して消え去った。

私が皿洗いしている横で、だんなが今日も残り御飯をおむすびにしている。昨日残った御飯で作ってくれた2個のおむすびは、私と息子で食べてしまったのだ。
「今日は、今日は俺が喰うぞぉ〜」
と、だんなは嬉々としておむすびを握った直後に海苔巻いて喰っていた。何のためにおむすびにしたんだか、いまひとつわからない。

10/31 (水)
太閤園(稲毛)の「回鍋肉」 (昼御飯)
コーンマヨパン
クリームパン
ミルクティー

ここ何日か「だるいよー、へろへろだよー」と風邪薬を服用していただんなが、とうとう
「……今日はお休み、する」
と宣言した。今日は一日だらだらしましょう、と私も仕事は今日は一休みすることにして、息子には保育園に行っていただいて、1日のんびり過ごすことにする。

朝御飯は特に準備していなかったので、息子を保育園に送りがてら近所のパン屋で買ってきた。
「お、コロッケパンがある……」
とコロッケが1個まるまるトッピングされたパンをだんな用にトレイに乗せようとして、
「……いや、コロッケは単品で買おう……」
と断念。直後、背後に「焼きそば揚げパン」なる怪しいパンを見つけ、そういやだんなは風邪ひいてたんだよな揚げ物ままずいかもななどという事はすっかり忘却してトレイに1つ。更に割引セール中の札がついた「モカロール」なるものもだんなに1つ。私用にはお気に入りのコーンマヨパンとクリームパン。レジのところで売られているポテトコロッケも2個袋に詰めてもらい、うきうきと帰宅した。

パジャマ姿でごろごろ中のだんなと、熱い紅茶を入れて朝御飯。
病人にコロッケと揚げパンの朝食はいかがなものか、と後になって思わなくもなかったけれど、本人はいたって機嫌良くはぐはぐと食べていた。
「あれ?この揚げパンなに?……うぉー、焼きそばが入ってる〜」
と、焼きそば揚げパンも好評だ。
……でも、やっぱり蒸しパンとかクリームパンにしておくべきだったかもしれない。

稲毛 太閤園にて
 回鍋肉定食
 焼き餃子

熱があるわけではないだんなは案外と元気で、
「お昼、太閤園で食べる?」
と聞いてみたところ、喜んで話にのってきた。徒歩数分の距離にある、「町の中華定食屋」チックなお店が太閤園。油こってりの炒め物や炒飯が妙に美味しくて、近隣に人気のお店だ。

私は回鍋肉定食、だんなは茄子野菜炒め定食を注文。この店の「野菜炒め」「肉野菜炒め」「茄子野菜炒め」は全て同じ味つけだ。「野菜炒め」はキャベツとにんじん、ピーマンが入り、「肉野菜」は野菜にプラス肉、「茄子野菜」は野菜にプラス茄子、更に肉も加わったやつだ。「茄子野菜」が一番豪華。醤油とも味噌ともつかない、甘辛いタレで炒めつけられているおかずはものすごく御飯に似合う。

"これ、絶対甜麪醤は入っていない、入ってるのは八丁味噌だ"的な味がする回鍋肉も、妙に味わい深い。パリッと半生に火が通ったキャベツにも肉にも表面に余すところなく油膜ができていて、甘辛い味噌ダレが表面をテラテラと滑っていく。下に溜まるタレには、周囲に油のわっかができていたりして、これ1皿食べたら、そのボリュームある分量はもとより油っけで夕飯まで空腹知らずでいられるようなシロモノだ。体調が悪い時にはあまり食べられそうもないパンチのきいた一皿で……はて、だんなは風邪じゃなかったか。「茄子野菜炒め」もその油っけは似たようなものだ。

御飯茶碗を左手から放すことなく、右手の箸は口とおかず皿と御飯茶碗を往復しまくる。半分食べても油膜の温度は一向に下がることなく、油断すると舌からはぐきから火傷しそうだ。キャベツや肉の表面を滑ってしまうタレを皿にこすりつけて絡めつつ、ちょっと強めの味付けのキャベツと肉をたいらげていく。ああ、今日も美味しいぞ太閤園。わざわざ電車に乗って食べに行くようなものでもないけど、自宅のそばとか会社のそばなんかにあったら嬉しいなぁという定食屋さんは今日も美味しい昼飯を食わせてくれた。

そう、そして、本日もうひとつ「この店に来なければならない」理由を見つけてしまった。
白髪まじりのオヤジが一人鍋をふるう(でも給仕するおばちゃんだけは大量にいる)店では、とにかく料理が出てくる早さだけ期待できない。満席の時は30分くらいは待たなきゃいけないかもしれない店だ。その待ち時間用に、店には大量の雑誌やら漫画やらが棚に詰まって置かれている。

「あ、いつのまにか『バガボンド』が全巻入ってる……」
と棚を覗いたそのとき、『うしおととら』全巻と目があってしまった。NHKのBS放送で、たまーに放映されている「BS漫画夜話」の題材になった時から、読んでみたくてしょうがなかった少年サンデー系の漫画だ。全部で23巻で、古本屋で買っても6000円ほどしてしまう。私は読むのがトロくさいので漫画喫茶に行っても何時間かかるのか検討もつかない。
「なんだ、ここにくれば全巻読めるんじゃーん」
と、うかれる私ではあったけど、今日料理が来るまでの間に1巻の2/3ほどしか読めなかったのである。この調子じゃ23巻読むには30回ほど通わなければならない計算だ。定食30回で2万円ほど……古本屋で全巻買って6000円ほど……計算に悩む私だった。

ルッコラとパプリカのサラダ
チキンクリームシチュー
羽釜御飯
モルツ、アイスウーロン茶

久しぶりにクリームシチューが食べたくなって、「やっぱりチキンだろー」と鶏肉を買ってきた。
山盛りの玉ねぎ、にんじんと一緒に炒め合わせてしばし煮込み、途中でじゃがいもとアスパラガスを放り込んで、「北海道クリームシチュー」なるルーをたっぷり放り込む。何故乳製品ものは「北海道」の一文字がつくと妙に美味しそうに感じるのだろう。北なら良いってもんでもないようで、「津軽クリームシチュー」とか「田沢湖クリームシチュー」ではいまいち違う感じだ。恐るべし北海道。

たっぷりスープが飲みたいな、と思いつつ作ってみると、シチューというよりは「具入りのスープ」みたいな感じになってしまった。大鍋に大量にできたシチューと、羽釜で炊いた御飯。ついでにルッコラと刻み玉ねぎ、細切りパプリカを合わせたサラダもテーブルに出した。

「腹具合も良くなくてさー」
と、朝も昼も盛大に食べただんなはこの段になってそんなことを報告したけれど、とても「腹具合の良くない人間」とは思えないほどにシチューをお代わりし、御飯をお代わりしていた。何故2膳目の御飯に塩ふって旨そうに喰ってるんだ、だんな。「1口だけだよぉ〜」と言っているその茶碗には、どう見ても3口分は入ってるし。
……それだけ喰えれば、大丈夫なんだろう、きっと。