食欲魔人日記 02年12月 第3週
12/16 (月)
Pancake Pantry(Gatlinburg)にて、「Banana Pineapple Triumph」 (朝御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます

Gatlinburg 「Pancake Pantry」にて
 Banana Pineapple Triumph
 Iced Tea

「グレートスモーキーマウンテンにクリスマスのキラキライルミネーションを見に行きましょー」
と、山麓の小さな街、Gatlinburgに宿泊した昨日。家族3人宿泊して1泊20ドルという、かつてなく安価な宿に泊まった私たちは、朝6時前に全員が目を覚ますこととなった。
この部屋、どうも私たち以外の誰かがいらっしゃる。夜中に幾度となくカメラのシャッター音にそっくりな音が聞こえて「なんでこんな夜中にだんながカメラをいじくってるのー?」と目を覚ますと、だんなも息子もぐっすりと(後でだんな曰く「そりゃラップ音だよ」と……)。部屋には妙にだんなと息子ではない人の気配が漂っているし、とにかく言葉にできないイヤ〜な空気が漂っている。
「やっぱり……"いる"よねぇ」
「無視しようしようと思って無理矢理寝てたんだけど……"いる"……ねぇ」
と、朝から不穏な会話をしている私たち。わけがわからないだろう息子まで寝苦しかったらしく、8時間足らずの睡眠でしっかり目を覚ましてしまっていた。

「"いる"のは構わないけど、寝る邪魔はしないで欲しい……」
とどこに向けていいかわからない理不尽な思いを抱えつつ、朝御飯はこの旅行中最大の目玉かもしれない、「Pancake Pantry」。
私たちの住む町、Nashvilleにもあるパンケーキ屋さんだけど、この町にもあると知ってから一度は来てみようと思っていたのだった。街のメインストリート沿いにある二階建ての店は、我が町の店よりも大きく、そして古そうだ。店内、吹き抜けになっている窓際には高さ5mほどの巨大なクリスマスツリーが輝いていて、午前7時の開店から間もないというのにお客がたくさん入っていた。

「私たち、ナッシュビルから来たんだよ。うちにもパンケーキパントリーあるよ」
とドリンクを持ってきてくれた店員さんに伝えると、
「そうよね、ナッシュビルにもあるわね。元々はここのお店が最初にできて、あっちが後にできたのよ」
みたいな事を言われた。おお、こっちが発祥であったか、と盛り上がる私たち。

メニューを見ると、大体同じだけど微妙に違う。「バナナをくるんだパンケーキにパイナップルソースがけ」なんてのは、多分私たちの町の店にはないはずだ。「これは同じだ」「これは、内容は似ているけど品名が違う感じ……」とメニューをじっくり眺め、私はそのパイナップルソースがけに挑戦してみることに。だんなはチーズオムレツにパンケーキ3枚のセット、更にハッシュドポテトをつけてもらっていた。息子にはフレンチトースト。
昨晩は夕飯らしい夕飯を食べなかったものだから、家族全員空腹だった。牛乳やアイスティーやコーヒーなど、各自ドリンクをがばがば飲みながら料理を待つ(ソフトドリンクのお代わりはアメリカでは大抵どこも無料だけど、息子の牛乳までタダだったのでちょっと驚いた)。

やってきたのは、ホイップクリームたっぷりボリュームたっぷりのいかにも甘そうな薄焼きのパンケーキ。
クレープとパンケーキの中間くらいの薄さに大きく焼かれた生地の中には縦割りにされたバナナがくるまれている。果肉の混ざる甘いパイナップルシロップがどっぷりとかかり、そして小山のようなホイップクリームに散らされたナッツ。その光景は私たちの良く知る店のと同じような感動を与えてくれた。ふわふわパンケーキ3枚に小ぶりのオムレツのセットのだんなの皿も、これまた魅惑的。ほんの少しばかりNashvilleの店よりも繊細さが感じられるような気がしないでもないけど、それでも恐るべきボリュームだ。キッズメニューから選んだ息子のフレンチトーストも、厚切り食パン2枚分ほどのものだった。卵液がたっぷり染み込まされ、甘さが控えめなシナモン風味のシロップが添えられている。ホイップバターが中央にこんもりと。

「うっふっふ、"P"ですねぇ」
「やっぱり"P"ですねぇ」
とニヤニヤしながら交換しいしい皆で食べた。私の皿は、さすがに甘い。甘いバナナをくるむパンケーキの上にかかるパイナップルシロップが少々手強い。だんなの皿からハッシュドポテトを奪って塩気で舌の感覚を戻しつつ、もりもり食べた。美味しかった美味しかった。
我が町にはパンケーキ専門店というものはそれほど無いような感じだけれど、このあたりは「Pancake」を店名に掲げる店がやたらと多い。あそこにもパンケーキ屋、ここにもパンケーキ屋という中、この店の繁盛ぶりが妙に嬉しい私たちだった。

Mt. Juliet 「Cracker Barrel」にて
 Grilled Pork Chop
 (Whole Kernel Corn, Country Green Beans, Hashbrown Casserole)  Lemonade

ホテルのそばに「Free Winery Tours」「Free Wine Tasting」をウリにしている「Smoky Mountain Winery」なるものがあるらしい。昼食後、これがオープンするのを待って行ってみた。
住所の場所にあったのは、小さな小さなワイナリー。"ワイナリーツアー"も何も、「どうぞ自由に見てって」という感じのあけっぴろげな醸造所だった。他に人もおらず、並ぶタンクの間を数メートル進んだ先はラベリングのための部屋。1周するのに10分もかからないような可愛いワイナリーだった。テネシーで採れた葡萄だけを使って、葡萄からラベル貼りまで全てここで行っているらしい。出入り口ではワインも売られていて、カウンターにいるおばちゃんに「これを飲んでみたいの」と言うと小さなカップに注いでテイスティングさせてくれる。

好みな程度に葡萄そのものの味が残るワインは適度に甘く適度に辛く、けっこう好みな味がした。壁には「○○で賞を取りました」というメダルがいくつも飾られていて、いくつか味見した結果「Brookside White」$7.99、「Brookside Rose」$6.95の2本を買うことに。思いがけずけっこう美味しいワインをけっこう安く買うことができてゴキゲンになって街を後にした。

明日は朝7時半からパーティーがあるし、今日はもう帰りましょうと西へ西へと家路を急ぐ。昼過ぎにはNashville近郊にまで戻ってくることができ、どこかで昼御飯をということでチェーン店の「Cracker Barrel」でお昼御飯。数種類の肉料理から1品選び、十数種類の野菜料理から3品選ぶセットメニューを注文。「肉1品、野菜3品」というのは「Meat'n Three」と呼ばれ、南部料理でお馴染みのスタイルらしい。私はポークショップにコーンといんげん、ハッシュブラウンをつけてもらった。
シンプルな塩味の骨つき豚肉のグリルが私の前にはやってきて、だんなには"鶏肉とすいとんのクリーム煮込み"みたいなものがやってきた。試しに頼んでみた「Homemade Chicken n'Dumplin's」がそれで、これもまた昔からの南部料理の1つらしい。
「ダンプリング、って"餃子"だけど……」
「別に鶏肉が包まれているわけじゃないのね」
と妙に感動しながら食べたチキンダンプリング、ちょっと平たい一口大のパスタのような小麦粉の生地はまさに"すいとん"そのもので、どこか懐かしい味がした。学校給食で出たような感じのねっとりしたクリームソースの鶏肉とすいとんが絡まっている。

ポークソテー乗せトマトソーススパゲッティ
ほうれん草のサラダ
アイスカフェオレ

本当のところは「今日はカレーを作ろう」と思っていたのだけど、何だか疲れてしまって(ホテルの部屋に居たアレがいけない、アレが……)全体的にやる気のない状態に。
「何だかお腹もいっぱいだしねー」
「……適当で、いいか」
と、茹でたパスタに瓶詰めトマトソースをぶっかけるだけの簡単パスタで夕飯は済ませることになった。それでもなんとなく物足りなくて
「豚肉、薄切りにして軽く炒めて乗せますかー?」とか
「ソースが味気ないからパスタに軽くバターを絡めちゃいましょう」とか
「残ったほうれん草があるからサラダにでもしませんか?」などと、ちょこちょこ準備。肉っけあり、サラダもあり、のちょっとまともな夕食になった。

私は、一度手抜きをしようと思ったらとことん手を抜いてしまう性質なので(そう、一度"インスタントラーメンでいいやー"と思ったらどんぶりに移すのもめんどくさくなっちゃって、鍋抱えて食べちゃうタイプ)、こういう事をするのは大抵だんなだ(彼はインスタントラーメンであっても、"少しでも美味しく"と野菜炒めなどを作って乗せてしまったりする人)。

12/17 (火)
巨大フルーツタルト、大当たり
「Alpha Bakery」にて"3rd Tuesday Party"
 クリームパン
 ベジロール
 グリーンオニオン&ハムロール
 カレーパン
 コーヒー

毎月第三火曜日は、"3rd Tuesday"なるパーティーが、だんな所属の研究室主催で行われている。通常は夕方から研究所入口のホールで行われているのだけど、12月は毎年「Alpha Bakery」でのスペシャルパーティーということになっているらしい。先月あたりから
「焼きたてのパンがそりゃもう沢山出て」
「抽選会が開かれてケーキが当たったりするのよ」
「でも、パーティーが始まるのは朝7時頃から」
という噂は聞いていた。まさか朝7時からパーティーなんてことはないでしょ、と最初は笑っていたのだけど本当にそんな時間から始まるとは。

今日は午前6時半起き。パーティーは7時半からで、十数マイル離れたBellevueという町にあるそのパン屋さんを目指す。日本で修行した台湾人夫妻がやっているこのお店、下町の味のカレーパンや懐かしい風味のメロンパンやクリームパン、ここらで食べる一番美味しいケーキであるロールケーキで近隣住民を魅了しまくっている。さすがに12月半ばの平日朝7時半という状況では毎回のパーティーの時ほどの人数は集まらなかったものの、A先生の奥さんや娘さん、通訳のRさん一家、馴染みの米国人やら日本人やら、30人ほどの"パン喰い会"となった。

テーブルには売り物のと同じ各種菓子パン総菜パンが次々と出てくる。コーヒーサーバーからコーヒーを各自適当に入れて飲みつつ
「あー!カレーパンが出た!だんな、半分こしよう」とか
「葱ハムパンが美味しいよー、これも半分こ」などとちょっとずつ皆と分けたりしながら心ゆくまでパンを食べる。レモン風味のクリームが練りこまれた甘いパンや、刻み葱がたっぷりとハムとまぶされふわふわのパン生地の上に乗ったもの、コールスローを乗せて焼いたものなどなど、最初30分ほどは会話も忘れて食べてしまった。

そして、終わり間近に抽選会。出席者がカードに自分の名前を書いて入れておいたボックスからフルーツタルトと巨大ローフパンの2つの景品の当選者が選ばれる。
で、なんとフルーツタルトが息子の名前で当たってしまった。選ばれたカードには私のでもだんなのでもない筆跡で息子の名前がローマ字で綴ってあり、ボックスの脇でA先生がニヤニヤしている。先生、「彼の名前も入っているかな?入ってないと可哀相だなー」と、息子の名前を書いてボックスに放り込んでおいてくれたらしい。
そして巨大パンの当選者は通訳Rさんの娘さん。当選者は4歳と3歳の2人という微笑ましいものになった。

嬉しいけど、タルトは巨大だ。とてもじゃないけど家族3人じゃ食べきれなさそうなので皆にお裾分けすることに決めた。

「Williams-Sonoma」のパネトーネ
牛乳

盛大な朝御飯の後、だんなはIさん・Mさんと共にクリスマスプレゼントを買いに行った。
だんなは妻と息子のため、Mさんは日本から年末に来るフィアンセのため、Iさんは意中の人(仮名ユンさん)にあげるため。それぞれ微妙に立場が異なって、一体何を買うのやら、と私はニヤニヤしながら家で待った。

ちょっと遠くのショッピングモールにまで出かけたらしく、昼御飯は息子と2人、まだまだ残る「Williams-Sonoma」のパネトーネを囓る。旨いものがいつまでもなくならず、しかも柔らかいものが固くもならず悪くもならずというのはちょっと嬉しいことだ。それほど密閉しているわけでもないのにパネトーネは相変わらず柔らかいし、カビが生えたり酸っぱくなるような気配すらない。

ビーフカレー

「Alpha Bakery」の
 ロールケーキ(モカ)
 フルーツタルト
カフェオレ

数日前からやろうやろうと思っていたカレーライス製作をついに決行。今回は牛肉使用で、ルーは「こくまろ」を使用。近隣で売られているルーは圧倒的に"ゴールデンカレー"が多いけれど(ゴールデンだけはそのへんのスーパーマーケットでも普通に売られている)、日本食材屋には「こくまろ」がある。なんとなくこれが好きで毎回「こくまろ・中辛」を買ってくるのだった。同じような事を考えている人は他にもいるようで、時折その食材屋から「こくまろ・中辛」が買い占められて消えていることがある(←甘口と辛口はたっぷり残っている)。買い占めはいかん、買い占めは。

和食材が"限られた貴重な資源"である異国の地では、時々心に余裕のない人が暴挙に及ぶことがある。
インスタントラーメンの「中華三昧」を買い占める親子を見たことがあるし、レトルトカレーパックをごっそり十数箱籠に詰めている人も見たことがある。
「それ買うなら味噌買って自分で味噌汁作った方が……安上がりだし、第一美味しい……」
と背後から囁きたくなるほど大量のインスタント味噌汁を買う人もいた。アメリカ飯は口に合わないからせめてそういうものでもストックしておかないと心の均衡が保てない……とか、そういう事情なんだろうなぁと察しはするけど、ちょっと悲しくなる。
日本に来たアメリカ人が「日本の食べ物ってマズイよな」とマクドナルドばかりに行ってキャンベルのスープを買い占めていたりしたら、何だかなぁという気持ちになろうというもので……。

……とか思いながら、その反面「でも、日本の味のカレーライスが作れるって幸せな事よね」と感じ入りつつ1ポンド3ドルちょっとのアメリカ産牛肉をざくざく切ってたっぷり塩胡椒して、テネシーが本社のLODGE社のダッチオーブンでせっせと炒めて煮ているのであった。玉ねぎは2回に分けて投入するのが我が家の基本。肉と炒めて最初から煮ていくのが2個、それは溶けてグダグダになってしまうので、じゃがいもと一緒に後から投入するのが更に2個。ダッチオーブンで煮る場合は水分がほとんど飛ばないので、最初から"ひたひた"かそれ以下に水を入れなければいけないことにも留意しなければならない。かくして4時から仕込んだカレーは夜7時、旨そうに煮えた。ひたすらカレーを食べようということで、サラダもスープもなし。ビールすらなし。スライスゆで卵のトッピングのみ可。

びっちり蓋をして煮込み続けた牛肉は、いーい感じにホロホロになっていた。調子に乗って煮すぎて最初の玉ねぎは液体と化し、2回目に投入した玉ねぎすらグズグズに消えかかっている。じゃがいもも"もうすぐペーストです"という状態にまでになっていた。作りたてなのに、外見は「3日目のカレー」とか、そんな感じ。
で、水を飲みつつがふがふ食べた。カレーライスは後になってやたらと胃の中で膨れるため、「3杯以上は自重しましょう」という空気が我が家の中には漂っている。しかも今日はデザートが2種類もあるのだ。先日買ったロールケーキも残っているし、今日貰ってきた巨大フルーツタルトもある。そのへんふまえて大盛り2杯を控えめに食べた(控えめ?)。

食後に巨大ケーキにナイフを入れる。やっぱり巨大だ。すごく巨大だ。直径40cmくらいはあるんじゃなかろうか。
どう見ても我が家だけで食べ切れそうになかったので、とりあえず同じ住宅内に住む留学生仲間3人の家にお裾分けして回ってきた。1/8切れずつ配って歩いて、1/8切れを私とだんなで半分こして、やっとこれで半分。
ベリーを基本にキウイやオレンジやパイナップルなどをちょっとゆるめにゼリーで固めたものがアーモンドパウダーたっぷりのタルト生地の上にたっぷりと。甘さ控えめのフルーツタルトだった。うまー。

12/18 (水)
2日目のカレー (夕御飯)
2日目のカレーライス
牛乳

話によると、留学生仲間Iさんも昨夜の夕御飯はカレーライスだったらしい。SBのレトルトカレーだったらしい。
「でも、確かIさん、炊飯器は家にあるのに米は頑なに買ってなかったよね」
「そうそう、炊飯器持ってるくせに"炊けるまでの時間が待てない"とか言って……」
「それが、なぜにレトルトカレー?」
「いや……ユンさん(仮名)に言われたらしいよ、"SBのカレーって美味しいわよ"って……」
「その一言でついに米を買ったのか!炊いたのか!」
「そーなんだよ!俺たちが横から散々"米を買え、自分で米を炊け"って言ってたのに!」
「……惚れた女の言葉ってのは……」
「偉大だよなぁ……」
と、Iさんが食したであろうSBのカレーに思いを馳せつつ、2日目のカレーを食す私たち。

ダッチオーブンはすばらしい。1日目のカレーであっても3日目のカレーのような仕上がりを見せてくれる。が、悲しいことに"鍋のままにカレー入れっぱなし"はできない鍋なのだった。汁気のあるものを入れっぱなしにすると、数日中にサビが出てしまう。作ったカレーは別鍋に移さなければならず、昨夜からはカレーはテフロン加工の片手鍋に移されているのであった。鍋が変わっただけなのに外見がパワーダウンした感じ。昨日は本皮の皮ジャン来ていた美青年が今日はユニクロのフリースになっちゃったー、みたいな……って、ユニクロのフリースはこれまた愛用しているわけだけど。

大学内「University Club」にてクリスマスランチ会
 サラダ・ミネストローネ
 ミートローフ・チキンのハーブ焼き・マッシュポテト・温野菜・カーネルコーン
 ピーチタルト
 アイスティー・コーヒー

今日はA先生が留学生仲間とその家族を招待してくれてのクリスマスランチ会。合計15人ばかりで大学内にあるちょっと高級めなレストランに集まり、ブッフェランチを楽しんだ。スープが2種類、サラダコーナーに十数種類の野菜やクルトン、ベーコンなどのトレイ。メインディッシュはミートローフとハーブ和えのチキングリルの2種類で、添え物の温野菜が数種類。デザートは山盛りあれこれいろいろ。

真っ白なテーブルクロスにナプキン。カトラリーが並び、黒い制服着用の店員さんたちがきびきびと動いて皿を下げたりコーヒーを注いだりしてくれる。でも、料理はブッフェ。その微妙な落差がいかにもアメリカだなぁと笑ってしまう。それでも"食べ放題"とは微妙に違い、まずはサラダとスープをとってきた食べ、食べ終わったらメインディッシュをとってきて食べ、最後にデザートをとってきて食べ、と3回美しく盛りつけて往復するのが基本とされる。

料理はコーンブレッドや野菜たっぷりミートローフ、カッテージチーズにトマトを添えたものなど、ちょっとばかり南部の匂いが漂うアメリカ飯。今日のスープは、赤くないミネストローネと、"Beer Cheese"なるビール風味のとろーんとしたチーズ味のスープだった。デザートのピーチタルトもしっかりいただき、満腹になったところでA先生から留学生たちにクリスマスプレゼントが渡された。
中には、昨日パーティーをした「Alpha Bakery」製のドイツのクリスマス菓子"シュトーレン"と、A先生の農場で採れた蜂蜜が1瓶入っていた。
私たちからA先生とスタッフMさんには、皆でお金を出し合って「Williams-Moris」のイタリアクリスマス菓子"パネトーネ"を。期せずしてお互い甘いものを贈り合うことになり、全員が甘いもの入りの袋や缶を抱えて帰ることになったのだった。
かつてなく甘いものが満載になった我が家(ロールケーキも残っているし、パネトーネもあるし、フルーツタルトもあるし、そしてシュトーレン……)。「クリスマス休暇中に太る」とはよく聞くけど、クリスマス前からこんな状態になってどーする。

2日目のカレーライス
ニューイングランドクラムチャウダー
ビール・アイスカフェオレ

夕方、オーガニック系スーパーマーケット「WILD OATS」に行ったところ、クラムが安売り中だった。ここのスーパーは何もかもが微妙に高価だけれど、ガロン容器入りの無調整牛乳が売られている。このあたりでそれを買えるのはここだけなので、牛乳がなくなると買い出しに行っている。
「クラムが安い!」
「クラムチャウダー……作るか」
「しかし今晩もカレーだ。カレーもとろんとろん、クラムチャウダーもとろんとろんで全体的にとろんとろんな夕飯に……」
「……ま、いいか?」
「……ま、いいか」
と、クラムチャウダーを作ってみることになった。小麦粉たっぷりのニューイングランドクラムチャウダーに挑戦だ。

クラムは白ワインで蒸して(と思ったけど白ワインがないので日本酒で代用……)、殻から身を取り外しておく。
バターでベーコンを炒め、玉ねぎとじゃがいもを加えたらクラムの蒸し汁を加えて10分ほど煮込み、小麦粉をンパーッと絡めたらハーフ&ハーフ(牛乳と生クリームが半々に混ざっているもの)とクラムを入れて沸騰直前まで熱すればできあがり。
「ボストンで食べた、あの味を〜♪」
と呟きながら鍋の中身をぐるんぐるんかき混ぜていたら生クリームが泡立ってふわふわなスープになってしまった。なんか、ちょっと……違う感じのクラムチャウダーに。

かくして、とろんとろんの2日目のカレーとふわんふわんのスープという、胃に重そうな夕御飯になった。あったかい御飯にあったかいカレーをかけ、あったかいスープを横に。真冬なのに熱くてたまらない食事になった。
熱い食事の後は、数日前に見た続きの「真珠夫人」などだんなと一緒に眺めてみたり。
「ルリコさん!」
「ナオヤさん!」
「あぢー」
「あつくるしー」
「さっさと結婚しろやー」
「さっさとくっつけやー」
「もー」
「あー」
と罵倒しながら数時間。最後はやっぱりお腹一杯になった。カレーとスープじゃなくて、ルリコとナオヤが。

12/19 (木)
CANCUN(Nashville)にて、チキンタコサラダ (昼御飯)
焼きカチョカヴァロ乗せテーブルパン
「Alpha Bakery」のシュトーレン
クラムチャウダー
アイスカフェオレ

昨日、スーパーマーケット「WILD OATS」でスライスされたカチョカヴァロチーズを買ってきた。塊全体だと子供の頭くらいの大きさがある、南イタリア発祥のひょうたん型のチーズで、温めるとピヨーンと伸びる。併せてテーブルパンも買ってきて、今朝はチーズトーストに。パンはオーブンで温め、スキレットで薄切りにしたチーズを焼いて溶かしてパンに乗せる。ついでに昨日貰ってきたドイツのクリスマスパン"シュトーレン"も薄く薄くスライスして皿に乗せた。

買ってきたカチョカヴァロは燻製されて表面が茶色くなったものだった。けれど燻製臭はほとんどなく、チーズ自体の風味もまろやかでとても食べやすい。溶かしたチーズは噛みきろうとするとピヨョョョョ〜と伸びて、それを喜ぶ息子と一緒に皆でピヨョョョョ〜とやりながら食べた。
「生地の合間にドライフルーツ」というより「ドライフルーツを生地で固めました」みたいに具沢山のシュトーレンは、甘さ控えめ。表面にまぶされた砂糖の甘みで丁度良いくらいの味で、久しぶりに食べたその歯ごたえのあるどっしりしたパンに「おー、クリスマスの味じゃのー」と感動してみたり。

Nashville 「CANCUN」にて
 チキンタコサラダ $4.00

だんなの大学の授業ももう無くなり、長い冬休み状態に突入した感じの我が家。午前中に研究所に顔を出しただんなと一緒に午後はあちこち買い物に出かけた。安売りリカーショップで料理用の日本酒やワインを大量に買い込み、トイザラスで息子用のクリスマスプレゼントを購入("おとーさんとおかーさんからのプレゼント"は目の前で購入し、"サンタさん用"はこっそりと別れて買ったりという努力が少々)。あとはWAL☆MARTでコーヒー買ったりアジア食材屋で"豚味噌鍋"の材料を買ったり。これから冬眠でもするんですか?みたいな買い物をしてきた。

昼御飯は、途中通ったメキシカンレストラン「CANCUN」で。金曜と土曜に "ファヒータランチ"が安く食べられるので人気らしいけど、木曜日の今日は壁に「タコサラダがドリンクつきで4ドル!」なんて書かれていた。こりゃ安くていいや、と、それを食べることに。

料理が来るまで、1リットルくらい入るんじゃないかという巨大カップに入ったアイスティーを飲んで待つ。ここの料理は大量だけど、ドリンクカップもそれに比しているようにでかい。子供用のカップが他の店の大人用のカップのサイズ、という感じだ。
テーブルにはどんぶり一杯のトルティーヤが置かれており、横に置かれたサルサをつけつつバリバリ食べる。
「今日も香ばしくて旨い〜」
「止まらぬ〜」
とパリポリパリポリやっているうちに、料理が並んだ。

直径30cmくらいのトルティーヤは、コの字型に折られた形に揚げられている。底面積が30cm×10cmほどあるその空間に、ほんのりトマト味が混ざるマヨネーズ風味のソースに和えられたチキンがたっぷりと、そしてレタスとチーズとトマト。隅っこにべったりなすりつけられているのは大量のサワークリームだ。
いつもながら大量だなぁ、と前回来た時もこれを頼んだ私はフォークとナイフを構えてわしわしと食べていく。手でバリバリと皮を砕いたら具を盛りつけて食べる。皮を砕いては具と食べる。旨いけど、なかなか減らないのがこの料理の恐ろしいところだ。サワークリームはもう少し少ない方が私としては美味しいよなぁと思いつつ、ファヒータセットを頼んだだんなにも手伝ってもらいつつ何とかほとんど食べ終えた。

「アメリカ飯がさ、大量なのは知っているんだけど……」
「うん」
「メキシコ飯もやっぱり大量なのかなぁ?それともここの飯がアメリカナイズされた量のメキシコ飯というだけ?」
「うぅーん……やっぱり大量なんじゃないのかなぁ?」
メキシコに行ってその実体を確かめてみたいと思いつつ。

3日目のカレーがけスパゲッティ
グリーンサラダ
ビール

「Alpha Bakery」のロールケーキ
アイスカフェオレ

カレーも3日目ともなると、さすがに微量に飽きてくる。
「御飯にかけるのもいいけどね……」
「いっそのことパスタにかけるというのは?」
「いいねぇ。バター絡めたりするときっと旨いぞぉ〜」
と、家族会議の結果、茹でたパスタにバターを絡めてカレーぶっかけて食べることになった。

最近ついつい買ってしまうのは袋入りの刻み野菜、"サラダバッグ"。日本でも何種類か売られていて買ったことはあったけれど、アメリカのそれはやたらと種類が豊富だ。コールスロー用だとか、ロメインレタスのみのパックだとか、クルトンやドレッシングも入ったシーザーサラダセットとか。イタリア野菜パックだのほうれん草バッグだの、スーパーマーケットの野菜コーナーの一角には必ずサラダバッグコーナーがある。
割高ではあるけれど、いつもは買わない紫キャベツやラディッシュなども入っているのが何となく嬉しく、野菜を刻む手間などが無い手軽さからついつい手を伸ばしてしまう。今日買ってきたのは、レタスとロメインレタス、にんじんやラディッシュが入ったアメリカンサラダバッグだった。

かくして、準備15分くらいの簡単夕御飯。茹でてバターを絡めたスパゲティはちょっと太めで、どこか"うどん"にも似ている。カレーは温めただけで、御飯にかけるのとそのまま同じものをパスタにかける。
「薬味にチーズとかあるし……似合うと思うけど」
と粉チーズなどかけたりしつつ、ツルツル食べた。中辛と辛口のカレールーを半量ずつ混ぜて作った今回のカレー、作った当初はちょっと強めの辛さが漂っていたけれど巨大玉ねぎ4個分が溶けきる頃にはすっかりマイルドな味わいに。やっぱりカレーは作った日の翌日以降が美味しいわぁ。

12/20 (金)
だんな特製チャーシュー麺 (昼御飯)
「Alpha Bakery」のロールケーキ・フルーツタルト
ミルクティー

ここ数日で甘いもの満載になった我が家の冷蔵庫。その割に夕飯後になかなか食べられなかったりして今ひとつ冷蔵庫の中身は片づかないのだった。
「ロールケーキが、まだあるよー」
「タルトもあるよー」
「シュトーレンもあるし、パネトーネもあるよーん」
と、こりゃどうしたもんか状態だったもんで、ついに朝食にも甘いものが登場することに。

濃いめの紅茶をいれてミルクティーにして、ロールケーキとフルーツタルトの朝御飯。予定ではプレーンヨーグルトに蜂蜜入れるかパイナップル入れるかして食べようと思っていたのだけど、糖分盛り沢山朝食でヨーグルトどころじゃなく満腹になってしまった。血糖値急上昇〜って感じ。

だんな特製チャーシュー麺

「煮豚が食べたい……チャーシュー麺が恋しい……」
と言っていただんな。昨日はアジア食材店で豚バラブロックを3つも購入して何やら満足そうだった。今週末にはついに冬の味覚「豚味噌鍋」が食卓に出されるらしい。

朝食を食べた後、早々に
「昼はチャーシュー麺だな、うん」
などと呟き大鍋に湯を沸かし始める我が夫。その3分前には
「お腹一杯だよー、ヨーグルトはいらないやー」
とか言っていたのに、脂たっぷり豚バラ肉の仕込みはできるというのだから凄いと思う(私は満腹の時に料理はあんまりしたくない……)。後に彼が語るところによると
「そこはだね、来たるべき空腹とその美味を想像しながら仕込むのだよ」
だそうである。……だから、満腹の時にはその空腹や美味はあんまり想像できないんだってば(←とか言うと、今度は「それは想像力が足りないのだ」とか言うし……)。

ともあれ、いつのまにか煮豚は作られ、煮卵の準備も滞りなく行われ、麺はだんな手製のものが冷凍保存されていたりして、数時間後には見事なチャーシュー麺が食卓に出た。スープは豚肉を下茹でにした時の茹で汁と、醤油と酒で煮たその煮汁をベースに。麺の上にはたっぷりのスライス煮豚と半割にされたゆで卵、山盛りの刻み葱。知った味のものしか使われていない、懐かしい味のラーメンだった。
「やっぱり、"これでもか"とチャーシューが乗ってるやつがいいよねぇ〜」
「卵も必須なんだよねぇ〜」
などと言いながら家族全員でツルツルと。このあたりにはラーメン屋って、ないし(あるにはあるけど、"焼き餃子が上に乗ってた"とかいう面妖なお店だったりして……)、自分ちでこういう味が食べられるのは嬉しいことだ。ツルツル。

だんな特製 スライス煮豚
腸詰と白髪葱
サラダ
ビール(Miller・Corona)

台湾茶(四季春)
サンザシ・ドライマンゴー

昼のラーメン、全部で4玉分くらいあったらしい。私も相当量食べていたけど、だんなは更にその上の量を食べ、おかげで夜になっても今ひとつ腹が減らない。
「御飯炊こうという感じでもないし……」
「ラーメンって喉乾くからビールが恋しいし……」
とか言いながら、非常に手抜きな夕飯にすることにした。昼間の煮豚をスライスし、ついでにニューヨークのチャイナタウンで買ってきた腸詰を温めてスライスし、白髪葱を添える。昨夜の残りのサラダバッグの中身を小皿に移して胡麻ドレッシングをぶっかけ、あとはビ〜ル。さすがに息子の夕食はそれじゃいかんだろうと御飯と味噌汁も出した。

「我が家の夕食とは思えない……まったりモードな夕飯ですなぁ」
とか言いながらのんびり箸を動かしつつビールをグビグビ。いつもなら1人1瓶のところ、今日はもう1瓶。自宅で飲むビールは妙に回ってしまって、食事が終わる頃にはすっかり良い気持ちになってしまっていた。

食後は
「中国茶でもいれましょー」
と、友人Andyさんから以前いただいた(で、美味しい中国茶なんてテネシーにゃ売ってないだろうと思って日本から持ってきた)、台湾のお茶「四季春」を大きなポットにいれてダバダバダ〜と飲む。ついつい甘いものが恋しくて山査子(さんざし)とドライマンゴーも茶うけに出し、だらだらビール飲んだ後はだらだらとそのままお茶飲み会に。丸く平たい山査子のお菓子は、山葡萄に似た香りで甘酸っぱく、私の大好物。私の母の郷里のお菓子"さなづら"の味によく似ていて、それがまた微妙に郷愁を誘ってくれる。
先日我が家で夕飯を食べた留学生仲間のMさんにこの山査子を出したところ、
「お、面白い味ですねぇ……食べたことない味だなぁ……不思議だなぁ……」
とか、最初は奇妙な顔をして1枚ゆっくり食べていたのに、数分後にはパリポリパリポリすごい勢いで食べていた。Mさん、それは茶うけであって主食じゃありませんが……という勢いで。山査子はもちろん、ドライフルーツも中国系の食材屋で案外簡単に見つかるので、ちょっと甘いものが恋しいときに良いかもしんない。

12/21 (土)
アメリカでも豚味噌鍋 (夕御飯)
焼きカチョカヴァロ乗せテーブルパン
パネトーネ
カフェオレ

昨夜は妙に早く寝付いた息子が、今朝にはその分早く目を覚ました。
「おかーさん、おかーさん」
と人を起こしにかかり、
「チーズのパンが食べたいなあぁぁぁ」
と朝食のリクエストまでしてきた。最近食べた"チーズのパン"というと一昨日の朝に食べたアレのことか、と、それを作ってやることに。ふわふわのテーブルパンをトーストしてぼてっと高さのあるそれの横に切込を入れ、スキレットで焼いて溶かしたカチョカヴァロチーズを挟む。テーブルパン1個じゃ物足りないのでまだ残っていたパネトーネをスライスしてそれも皿に乗せる。

本日は、クリスマスの夕食の材料などを買いだしに行くことに。とりあえず時間もあるので、この近郊では最も巨大なモールだという「Cool Springs」なるショッピングモールに行ってみることにする。

Nashville 「KEN'S SUSHI RESTAURANT」にて
 寿司セット A

「Cool Springs」はどでかいショッピングモールだった。モール内にデパートが4軒入り、更にモール外にTARGETだのトイザラスだのDEPOT系の店だのがごろごろしている。高速道路の出口から次の出口までの1マイルが丸々ショッピングゾーンになっていた。
何を買いに来たわけじゃないのでプラプラし、結局デパート内のキッチンツールコーナーでOXO社のグッズをあれこれ買って帰ってきた。

OXO社のキッチンツールをしみじみと眺めたのは、今日が初めて。「上から内容量がわかる計量カップ」の存在は知ってはいたけど、実際見てみるとこれがなかなか便利そう。1カップ計量の小さなものを1つ買ってみた。
他にもバネが閉じられるトングとか、ピザカッターを購入。黒と白が基調の色使いも好みだし、微妙にラインが綺麗な割に自己主張があまりないデザインがいちいちステキで、かなりツボにはまった。って、なんでショッピングモールに来ても食べ物関係のものばっか買っちゃうんだろう。

ショッピングモール近くには、日本にも進出している会員制大型スーパー「COSTCO」が。
「ここも会員制なのかなぁ……」
「日本のと同じように中にホットドッグ屋さんとかあるのかなぁ……」
などと言いながら、ちょっと覗いてみることに。いつか日本で行った時と同じように、「非会員は中を見ることすら不可能」なのか、さすがに違うんじゃないか、と思ったら……アメリカ本土でも、やっぱりそれはそうなのだった。
「会員カードをお見せください」
と入口で言われ、
「持ってませんが」
と答えると、「どうぞあちらで手続きを」とカウンターを指さされる。ああ、やっぱり、COSTCOってとこは何処もこうなんでございますね。斜め前にはフードコートらしきものが見え、奥に見える棚に並ぶ品の置かれ方なども日本のお店のそれと同じ感じ。
会員になるまでは品揃えを見ることすらできないなんて、やっぱり納得はできないのだった。年会費は45ドル。それを払うだけの魅力がこの店にあるとは、やっぱりやっぱり思えない。

「やっぱりCOSTCOってキラーイ……年会費45ドルって何よ〜それ〜」
「WAL☆MART行こ、WAL☆MART」
「WAL☆MART、とっとと日本に来てくれぃ」
「幕張に出店してCOSTCOなんてぶっ潰してくれぃ」
と不穏な事を言いつつ、結局主目的の食材は買わぬまま我が家近くまで戻ってきてしまった(WAL☆MARTに行くには一度我が家付近まで戻らなければいけないのだ)。

昼御飯はそのままふらふらと"ケンちゃん"に。マグロとエビとサーモンとヒラメ(らしきもの)とハマチの5つの握りと天ぷら巻き(天かすと海老が入ってる)がセットになって9ドルちょっと。だんなはカツ丼、息子は玉子の握り。
土曜の昼下がりのKEN'S SUSHIはかなりの混雑ぶりだった。この店、1週間ほど前に近くにカラオケボックスもオープンさせたらしく、私たちはそこに行ってみたいと狙っている。

その後めでたく、WAL☆MARTで4ポンド弱の牛塊肉(プレミアムなんちゃら、というちょいと高めのやつ)を14ドル程度で購入。

今シーズン初 豚味噌鍋
日本酒(純米 喜多屋)

初冬になると、デパ地下や酒屋さんにペースト状の酒粕が出回るようになる。板状のガチガチのやつじゃない、ムースみたいにふわふわなその酒粕を見つけると待ちかねたようにだんなが練るのが「豚味噌鍋」用の味噌だ。酒粕をはじめ、練り胡麻やら醤油やら酒やらにんにくやらを入れて作るその練り味噌で作る「豚味噌鍋」が我が家の冬の定番だった。確か結婚して最初の秋頃にこのレシピをムック本で見て、その冬から作り続けているような気がする。数週間に一度は夕飯に喰う。客が来ても喰う。モツ煮にもする。風邪ひいた時などにうどん煮て喰ったりもする。この味噌あっての我が家の冬なのだった。(レシピはこちら

「さすがにアメリカじゃ無理だろうなぁ」
と渡米前に思いつつ、
「いや、でも、材料揃ったら作るでしょ」
などと言い合っていた。で、結局は一時帰国した留学生仲間の奥様に「お願い〜!酒粕買ってきてください!」と頼み込んだりして、全然"材料揃ったら"なんて状態じゃなくなっている今日この頃。無理矢理材料揃えてるし。そんなに豚味噌鍋が恋しいのね。恋しいのよ。

探して買ってきていただいた酒粕は残念ながらペースト状のものはみつからなかったということで板状のもので、それ以前に醤油も練り胡麻も日本で使っているものとは全然違うもの(練り胡麻なんかアメリカメーカーで作られた、ギリシャ料理用のものという全くわけのわからないもの)だったりするので、出来上がった練り味噌は随分と違う風情のものだった。なんとなく色は薄いし、醤油の風味が薄いくせに塩辛い。
「でも、やるぞー」
「豚味噌鍋、するぞー」
「まずは肉のスライスからね」
と、塊の豚バラ肉をミートスライサーでスライス。白菜はそのへんのスーパーマーケットにも売られている。長ねぎも冷凍うどんもアジア食材店に行けばある。土鍋は持ってないのでダッチオーブンで代用。ダッチオーブンに昆布を入れて水を入れて温めて味噌溶いて、豚バラと白菜と長ねぎを放り込んで火を通しては食べていく。食べ際に刻み葱と七味唐辛子をかけたいところだけど、七味はないので黒胡椒などかけてみたり。
ニューヨークのリカーショップで買ってきた福岡の日本酒を飲みながら、はふはふ言いながら食べた。微妙に違う味だけれど、しっかりはっきり豚味噌鍋だった。

「ビミョ〜に違う味だけど……」
「ビミョ〜に日本で食べる味より落ちるけど……」
「美味しいじゃん!」
「全然OKじゃん!」
「いけるいける」
「だいじょぶだいじょぶ」
と、時々酒の消費も止めてしまいながらひたすら鍋をつつきまわした。食卓にはカセットコンロ。アジア食材屋で買うこともできるけど、研究室に1つだけあるのを借りてきた。

来週には親友Sちゃんが日本から遊びにやってくる。
「何か日本から持っていくものある?」
と聞かれ、
「あの……酒粕を……」
と答えた我が家。食材以外のリクエストはないんかい、という感じ。

12/22 (日)
だんな特製チャーシュー炒飯 (昼御飯)
豚味噌うどん

昨夜は念願の「豚味噌鍋」だった我が家。豚のエキスが染みこんだ残りの煮汁は、翌朝にしっかりと活用するのが我が家の習わしとなっている。冷凍ご飯を放り込んでおじやにするのが通例だけれど、今回は冷凍うどんを放り込んだ。昨日、大学近くの韓国食材屋(そこではオマケのように日本食材もちょこちょこと売られている)で買ってきた冷凍うどんは「さぬきうどん」書かれた味も悪くないものだったけれど、「いつから冷凍されているんだか」と不安になるほど霜まみれなブツだったのだ。
「こ、これは早く食べちゃわなきゃなぁ」
「いかにも"何度か溶けてまた固まりました"みたいな外見だよねぇ」
と苦笑いしながら、うどん消費のためにも今日は味噌うどん。

昨夜の鍋の名残の肉や溶けかかった白菜がヒラヒラ入っているのが何気に嬉しい。茶色くグダグダになった葱が入っているのを見て「おお、当たりだ……」と思ってしまったりして。

だんな特製チャーシュー炒飯
アイスプーアル茶

この先はクリスマスだー、来客だー、年末だー、と慌ただしくなりそうなので、今日はちょっと気合いを入れて大掃除。食卓の上でプルプル回るプロペラ付きの明かり(←銭湯の脱衣場で回っているようなあんなヤツ……)から埃を落としたり、洗面台にあれこれ置いてあるものを一度除けて下を綺麗に拭いてみたり、普段やらないところをあれこれと。広くはない家なので2時間も掃除したら見違えるほど綺麗になった。うむ、良い感じ。

最後に台所の掃除をし終わったところで、だんなが「ほいじゃ炒飯でも作りましょうかね」と立ち上がって、チャーシュー炒飯を作ってくれた。先日作った煮豚を刻んでたっぷり入れ、卵と葱入り。味付けの基本は煮豚の煮汁だ。茶色くテラテラとした濃い味の炒飯だけど、すんごく旨い。私が横でアイスプーアル茶の準備をする間、カンカンに熱したスキレットでじゃかじゃかと卵が炒められご飯が炒められ、煮豚山盛り入り炒飯ができあがっていく。

あまりアイスでは飲まないだろうプーアル茶、ホットでもちょっと気になるかび臭さというか埃臭さというかな独特な香りがあるけれど、アイスにするとそれがまたキーンと鋭く感じられてしまう。でも、口の中はすっきりするし、喉の乾きがたちどころに収まるしで、アイスプーアル茶が妙に好きな我が家だった。あまりお客には出せない味かもしれないけれど。

A先生宅にて
「Christmas Open House and Cookie Party」

先日、だんなの研究室のボスA先生から私と息子宛に招待状をいただいた。
「Christmas Open House and Cookie Party」
と厚紙に印刷されたカードには、A先生の奥様と娘さまの連名で私と息子への招待文が。女性と幼児だけを招待するパーティーで、
「だんなさまも歓迎します。メインハウスの裏の小屋の中でフットボールをTVで一緒に見ましょう!」
なんてオマケの文もついていた。

お言葉に甘えて、今日の午後3時から5時まで開かれるというそのクッキーパーティーに行ってみることになった。
手土産を持っていきたいところだけど、一体何が良いのやら。クリスマス間近できっとA先生宅は食べ物で溢れているだろうし、どうしたもんかなぁと考えた挙げ句、小さな花束を持っていくことにした。

初めて家の中に足を踏み入れたA先生宅。夏に一度だけ来たことがあったけれど、その時はガーデンパーティーだったので家の中には入っていない。
踊り場が広く取られた階段がぐるっと壁沿いに伸びている吹き抜けの玄関ホールには木製の古いキャビネット。上には色々な国の民族衣装を着た人形がその国の言葉で「メリークリスマス」と垂れ幕を掲げているオブジェがずらりと並んでいる。
左手の部屋は「クリスマス部屋」とでもいう感じの部屋で、天井まである高さ2.5mほどの巨大な生木のクリスマスツリーの下にラッピングされた山のようなクリスマスプレゼントの数々が(欧米では、もらったプレゼントをツリーの下に置き、25日や26日あたりに1個1個開けていくのが習わしだとか)。暖炉の上にはキリスト誕生を模した陶器製の人形がキャンドルと共に飾られ、その下には家族の名前が刺繍された大きな手編みの靴下がずらりと並ぶ。何だかもう、絵に描いたようなクリスマスな飾りつけだった。隣の部屋のカフェテーブルにはクリスマスにちなんだ絵本が並べられ、そしてその奥の部屋がダイニング。椅子は片づけられ、テーブルにはお菓子が山のように並べられていた。ドリンクは、自家製のクランベリーソーダ。フルーツポンチを入れるような銀容器に入ったそれをレードルでコップに入れつつ、お菓子をつまんではおしゃべり、というパーティーだった。

並ぶお菓子はジンジャークッキー、トナカイの顔を模してチョコやプレッツェルで飾られたピーナッツバター味のクッキー、レモンバター味の一口ケーキに、ナッツたっぷりのヌガーなどなど。チョコやナッツなどもある。ひとつだけ甘くない料理は、「Creamy Spinach」。今までもパーティー料理で何度か食べた、クリームとチーズで味をつけたくたくたに火を通したほうれん草だ。横にはトルティーヤチップが置かれ、それにつけつつ食べるようになっていた。

広い家だけれど、お客さんも多かった。40人ほどのお客さん(当然、皆女性だ)が続々とやってきてはお菓子を取り、あちらこちらで話している。日本人の参加は私と、同じ留学生仲間のY夫人、あとはA先生の家に遊びに来ているという高校生Aちゃんの3人だけで、あとは全員アメリカ人。たどたどしくも、少しでも回りの皆様と交流しようと試みた。
「このほうれん草のお料理、こちらではスタンダードなものなのですか?」
「ええ、とってもスタンダードよ。どこの家でも作るし、そうね、一年中作るわね。ほうれん草を茹でてね……(以下作り方を教わったけれど、細かいところが今ひとつ聞き取れず)」

さて、このパーティーは「Christmas Open House」でもあるので、A先生などが家中を案内してくれちゃうのである。
「この家は、とても古い古い南部スタイルの様式で、2階に女児用の部屋と男児用の部屋があります。で、別々の階段から上がるようになっていて、2階にある両方の部屋は行き来できないようになっているのです」
だ、そうである。
見ますか?案内しますよ、と言われ、2階の部屋も見せてもらった。
大学生の女の子、ヘレンさんの部屋にはスターウォーズのポスターが壁一面に。ルークやハン・ソロの時代のものから最近のものまであれこれと貼られていた。幅が80cmほどない細〜いベッドが2つ並び、「これもすごく古いもので、妻が骨董屋さんで見つけて買ったのです」と。
高校生のジョン君は長身のドハンサムで、高校フットボール部のスタメン選手。部屋の壁にはチアガールたちが書いたのだという応援カードがたくさん貼られ、男の子らしいあれこれゴチャゴチャものが置いてある。
「写真、見てくだサーイ。これ全部、今までのガールフレンド。こっちが今のガールフレンド」
壁に飾られた写真まで拝見してしまった。コルクボードにぎっしり貼られた写真にはジョン君本人の他に女の子がえらい人数映っていた(モテるのねぇ……そりゃモテるわよねぇ……)。

アメリカならではのパーティーとかクリスマスインテリアなどを目の当たりにできて、非常に有意義だった数時間。
でも、"オープンハウス"という文化は日本人にはちときつい。もしも私の親が「これが私の子供の部屋でーす」とお客さんをどかどか連れてきたら頭抱えたくなっちゃうし、さらに「これが今の彼氏で、後ろの写真はこれまでの彼氏でーす」なんて写真を公開されたら家出したくなってしまう。いや、それ以前にそんな写真は飾らないけど。

とん丼
豆腐と油揚げの味噌汁
緑茶

パーティーが終わって帰宅したのは午後5時半。私は甘いものをあれこれつまんでいたし、A先生宅の離れ家でTVフットボール観戦をしていただんなも赤ワイン飲んだりプレッツェル喰ってたりしていたらしい。全体的に半端に満腹状態だった。
「しかし、夕飯は食べておきたい……」
「一応予定では麻婆豆腐となっていたけど、麻婆豆腐はなんかちょっと違う感じ……」
「親子丼とか」
「他人丼とか」
「玉子丼とか」
とあれこれ議論した結果、残りものの豚肉を使って「とん丼」にすることに。以前『dancyu』に載っていた小林カツ代さんのレシピだったように思う。

フライパンに醤油と味醂を同量ずつと薄切り生姜を放り込んで煮立てたところに薄切り豚肉を並べるように入れていく。下面が煮えたらひっくり返して反対側も。ちょっと煮詰まった感じにテロンとなったら完成。粉山椒などを添えて食べよ、とか、そんな感じだったように思う。
ご飯が炊ける間に味噌汁も作り、豚肉だけじゃちと物足りないので玉ねぎも放り込んで豚肉と一緒に煮た。醤油と味醂味の料理は、煮物でも焼き物でも丼ものでも、何を作っても日本の味になるのがありがたい。
そういえば、先日やっと米を買った留学生仲間のIさんは
「醤油はあるんですが……」
と、先日言葉を濁していた。
「味醂がないの?」
と聞いてみたら、
「いや、塩が」
とのこと。なんでアメリカに来て5ヶ月経って塩も無いのだ貴方の家は!としばらく笑ってしまった。もちろん味醂など所持しているはずもなく。