食欲魔人日記 03年02月 第1週
2/1 (土)
カレーが煮えました〜 (夕御飯)
中華粥
 (皮蛋・油条・香菜)
アイス烏龍茶

昨夜は3日ぶりに入浴した。
「まだ風邪治ってないんだから、悪いこた言わないから風呂は止めときなさい」
とだんなに言われたけれど、強硬に入浴を敢行したのだった。
「だってね、さすがに3晩連続お風呂に入らなかったら頭にキノコが生えてくるよー」
「生えねぇよ!」
「生えるよー、生えてくるんだよー」
「わかった。生えてきたら僕がこっそり摘んでおいてあげるから、だから風呂は止めなさい」
そこまで(どこまでだ)口論した挙げ句、強行入浴。さっぱりさっぱり。

朝起きると、テレビはどこも大変なことになっていた。いかにも何かが墜落していきます、みたいな映像がひっきりなしに流れていて、音声や字幕から"エンデバー"だの"コロンビア"だの"スペースシャトル"だの"テキサス"といった単語が拾い取れる。また何だか大変なことになったらしい。今日のテレビはもう、これが一日中放映されることが確定だ。

そんなテレビを眺めつつ、朝御飯は中華粥。香菜消費キャンペーン実施中の我が家だった。
今日も盛大にピータンと香菜を投入し、全く病人食に見えない色鮮やかな粥にして啜ってみた。ピータンは旨い。どこがどう旨いのか自分でも今ひとつわからないのだけど(色も微妙に不気味だし)、好物なんだなぁ。

だんな特製ポークカレー
だんな特製"すてきサラダ"
だんな特製アイスティー

ところで、私の風邪は7割方回復しているのだけど、だんながすっかり「僕おさんどんモード」に入ってしまっているのであった。
「ん〜〜〜、まだちょっとだけフラフラするのでお留守番しててもいい?」
と言った私に「なに、かまわんよー」と息子と一緒に買い出しに行ってくれただんなは、山のような食材を買い込んできた。
「これ、カレーの材料。あとね、食べたかったから餃子の材料。それとね、常夜鍋もやりたいなーと思って、それの材料。更にね、ローストビーフの材料。あとあと、もう無くなってたからドライイーストと小麦粉とジップロック……そうそう!焼きそばも買ってきました!」
それはもう、絶対冷蔵庫に入りきらないんじゃないかという量の食物だった。特に肉。

ここ数日、「カレーが食べたいねぇ」と言っていたこともあり、今日の夕飯は豚バラ肉でポークカレー。まぁ任せなさい、とだんながこれ以上なくやる気だったのでおとなしく任せてみた。
「こうね、レタスとスライスしたトマトとルッコラでサラダもね……」
とサラダ作成にも意欲を見せている。ふんふん、とバラ肉をダッチオーブンで蒸し焼きにし始め、小じゃがいもやにんじんなどと共に煮込み始めている。そのうちレタスをバリバリちぎる音も聞こえてきたけど、ほどなくして
「おゆきさーん、調子に乗ってレタス剥いてたらすごい量になりました……」
と台所から顔を出してきた。ボウルの中に、"そりゃ1回の食事で食べきるのは無理です"といった量のレタスが詰まっている。
「まぁ、いいか……"すてきサラダ"いうことで……」
と、何がステキなんだかよくわからないけど(←量がステキなんだそうだ)、とにかくサラダはステキになっちゃったらしい。大丈夫かなぁ……。

で。できあがった、すてき夕食。明日以降の献立も詰まっているということで、本日は5人前のルーしか使わないで作った(いつもは10人分とか15人分とか一気に作って3日以上かけて喰う)ポークカレーは、何だかめちゃめちゃ美味しかった。なぜだ。私が作るカレーより、何だか圧倒的に美味しい。買い置きのルーを使っているし、材料は私が作るのと変わらないはずなのに。
豚バラ肉の脂はトロントロンに柔らかく崩れそうになっていて、カレーは辛さもあるけどコクのある甘さもある。妙に美味しいカレーだった。

「バラ肉蒸し焼きにしてから切って、煮込んだんだよねぇ?」
「そーだよー」
「私も玉ねぎはいっぱい入れてるしなぁ……」
「今日はね、最初に1個半の玉ねぎを、蒸し焼きにしたときに溶けて出てきた豚の脂で炒めました。で、その玉ねぎは溶けちゃうから後から1個分追加して」
「豚の脂が勝利要因……?」
「あとねー、最後はたっぷりの豚バラ肉とカレーへの愛情」

愛情が決め手と言われても。
なんだか非常に悔しい味のカレーなのだった。

2/2 (日)
山盛り餃子 (夕御飯)
2日目のカレー ゆで卵乗せ
角煮大根(味見サイズ)
すてきサラダ(昨夜の残り)
福神漬
アイスミルクティー
ヨーグルト

台所のコンロには、小鍋に入った昨夜の残りのカレーがある。更に、昨夜からだんなが仕込んでくつくつ煮込んでくれている角煮大根がダッチオーブンにたっぷりと。冷蔵庫には、かつてなく大量の食料も詰まっている。今すぐ大雪が降って1週間外出ができなくなったとしても、余裕で食いつなぐことができそうな我が家の貯蔵状態だった。「幸せとは、寒くないこととお腹が空いていないこと」が家訓(家訓?)の我が家において、今はかなり幸せな状況と言えるらしい。

時間が遅めの朝御飯は、ボリュームがありすぎて昼御飯も兼ねることとなってしまった。
残り少ないカレーにはゆで卵のスライスを乗せ、昨夜のすてきサラダ(量はもう"すてき"レベルじゃなくなったけれど)もテーブルに。更に、
「まだ、味があんまり染みてないけど味見しちゃおっか」
と豚の角煮と大根を1切れずつ。とりとめのない光景になった。

柔らかく煮えたけれど煮詰まり具合が今ひとつ足りない角煮は、「あと1日」という感じ。
「明日の晩のメインディッシュにするんだよ」
とだんなが言っているので、私のおさんどん復帰はまだ先でOKらしかった(私の風邪はというと咳と鼻水と倦怠感しか残っていない状態だったりするに)。

焼き餃子
角煮大根(味見サイズ)
いくら
羽釜御飯
ビール(MICHELOB)
アイスティー
クッキー&クリームアイスクリーム

夕飯は、久しぶりの焼き餃子。9月の下旬に留学生仲間の家で餃子パーティーを開いて以来だから、4ヶ月ぶりの自家製餃子だ。中華料理店などで時々餃子を食べる機会があったので、なかなか「餃子熱」の高まりがないまま年を越してしまったのだった。
我が家の餃子は茹でてフードプロセッサーにかけて水気を思い切り絞った白菜入り。確か『文琳の中華・点心』(河田吉功/著 大海社 1997.08)に載っていた作り方で、数年前に試しにとここの作り方で作ってからは"この味の餃子が我が家の味"になってしまった。

できあがった餃子は80個くらい。うち60個くらいを焼いて、親子3人でしっかり食べきった。タネそのものも美味しいけれど、だんなが焼いてくれるその焼き加減がまた、何だか知らないけど絶妙なのだ。彼に言わせると、こんな感じだとか。

スキレットをカンカンに熱する
→煙が出たら弱火にして餃子を並べる
→並べたらまた強火にする
→餃子を持ち上げてみて焼き色を確認したら、6〜7mmの深さに湯を入れる
→蓋をする
→音が"シュワシュワ"から"チリチリ"になったら蓋をあける
→水が無くなっていたら火を弱火に、無くなっていなかったら強火のまま水分を飛ばし、弱火に
→胡麻油を上からたらりと回しかけ、ほいっとスキレットを皿の上にひっくり返して盛りつける

別に不思議なことはやっていないのに、何だか妙に美味しいのだった。テレビや本を見ていると、湯を注ぐところで小麦粉を溶いた湯にしているところもあるらしい。それはそれでパリッとなるのかもしれないけど、餃子の皮ではない変な皮が出来てしまうのが今ひとつ気に入らない我が家だ。
ビールで餃子を喰い、白い御飯で餃子を喰う。
「ビールと餃子ってのは、いけませんよねぇ〜」
「白い御飯と餃子も、いけませんよ?」
「ラーメンと餃子というのがまた危険で……」
「炒飯と餃子なんて、もう大変なことに……」
何がどう大変なのかはともかく、とりあえず親子3人の胃袋は大変なことになった。

なんで餃子って、食べ過ぎちゃうかなぁ。

2/3 (月)
朝からドーナッツ (朝御飯)
あーもー、朝からこんなに、もー……
Nashville 「Krispy Kreme Doughnuts」にて
 Traditional Cake Doughnuts
 Chocolate Iced Custard Filled Doughnuts
 Original Glazed Doughnuts
 Smooth Coffee

数日前にだんなが工場併設店で買ってきた「Krispy Kreme Doughnuts」のドーナッツ、これは確かに美味しかった。同じ会社のものとはいえ、もうそこいらへんのスーパーで買ってはいられないほど、ふわんふわんで香ばしくて旨かった。
工場がついている店には、「Hot Now」というネオンサインが道路から見える位置に設置されており、これが赤く光っている時はまさに工場稼働中で「できたてのアッツアツが食べられますよぅ!」ということだ。残念ながら、先日はそのネオン、消えていたらしい。

「そういうわけで」
「早起きしてドーナッツ食べに行ってみましょう〜」
と、月曜の朝8時半頃に家を出てドーナッツを食べに行く我が家だった。今日はネオンがついている。

ミスドのカウンターのようにドーナッツがショーケースに並べられている向こうには、ドーナッツ製造器ががちゃこんがちゃこんと動いているのが見える。席が並ぶ脇もガラス張りになっており、揚げやコーティングの過程があますところなく眺められるのだった。子供には嬉しい店かもしれない(大人にもけっこう嬉しい)。

「えーっと、これとね、あれとね」
と各種フレーバードーナッツをコーヒーと共に注文。だんなと私はドーナツ2個ずつ、息子は1個。すると
「あのね、お子さんにはこのスプレーチョコのドーナッツをサービスするわ」
「あとね、こっちはフリーサンプルなの。どうぞ」
と、スプレーチョコがまぶされた派手なドーナッツ(スプレーチョコの下にはチョココーティング、更にシュガーコーティングがされている……)と、できたばかりのOriginal Glazedを2個、トレイに乗せてくれた。そ、それを早く言ってくれぇ……と思っても時すでに遅く、トレイの上には8個ものドーナッツが。ああ、鼻血が出そう……。

揚げたてほわほわのOriginal Grazedから囓る私たち。固まったばかりの砂糖コーティングは少しばかりシャリシャリと固まりきらないしっとりさがあり、生地も揚げたてならではの温かさや香りがある。たまらなく美味しい。そんなに甘くないし。
続いて囓った「Chocolate Iced Custard Filled」は、穴なしのドーナッツにチョコをかけ、中にカスタードクリームを詰めたというヘビィなもの。クリームはともかく、チョコはかなりの甘さでなかなか手強い。「Traditional Cake」は、ミスドで言うオールドファッションのようなもの。どちらも悪くはないけれど、やっぱり圧倒的に"できたてOriginal Glazed"が美味しかった。

赤く光る「Now Hot」の看板を見てか、お客は続々とやってくる。月曜の朝9時過ぎという半端な時間にも関わらず、おじいちゃんとかおばちゃんとか、スーツ来たお兄ちゃんとか、何やら続々とやってきては皆揃ってOriginal Glazedをダース単位で買っていくのだ。バラで7個買うのと1ダース買うのは変わらない値段なのだけど、なんでそんなに1ダースドーナツを……と、眺めていてちょっとビビッた私たちだった。杖ついて歩いているようなおじいちゃんが、ダース入りの箱を3つ抱えて帰っていったのを見たときには、一層ビビッた。

ホームページによるとこの店、
・北米全体の店をあわせると1日に500万個のドーナッツを、1年に20億個のドーナッツを作っている。
・標準的な店では1時間に3000個のドーナッツを、でかい店では1時間に1万2000個のドーナッツを作っている。
・1週間で作られるドーナッツを並べると、ニューヨークからロサンゼルスに至る長さになる。
・2分間で作られたドーナッツを積み重ねると、だいたいエンパイアステートビルの高さに至る。
・Krispy Kremeが使うチョコレートの量は年間、オリンピックサイズのプール2杯分になる。スプレーチョコの量は象145頭分。
・毎年イースターには、ホワイトハウスに作られる特設店舗で1万個以上のドーナッツが配られている。
……のだそうだ。何だか大変なことになっているらしい。

だんな特製 角煮大根
湯引きレタスの中華だれ
羽釜御飯
Hard Lemonade
アイスティー

朝御飯のドーナッツ地獄のおかげで(結局食べきれないから"紙袋ちょーだい"と言って2個半ばかり持ち帰ってきたのだけど)、とてもじゃないけど昼御飯に何か食べる気はしなかった。大学に出かけていっただんなが
「これから皆でカッパーケトルに行こうと思うんだけどー」
と連絡をくれたのだけど、
「いい。行かない。ていうか、何でだんなは食べられるの?」
と想像するだけでお腹一杯になり、速攻断る。"Meat & 3"(おかず1品添えもの3品)を基本とするその店、たとえ"Meat & 1"とか"Meatだけ"とかにしたってすごい量なのだ。

で、私は結局昼御飯を食べないまま夕御飯。3日前からだんなが仕込んでいた角煮が美味しく食べ頃になったので、今日のメインディッシュは角煮大根。さっぱりした野菜料理が食べたかったので、残りもののレタスを茹でて食べることにする。

茹でたレタスというのは、妙に美味しい。キャベツやほうれん草ともまた違う、どこかシャキシャキしたところを残しつつふにゃふにゃ〜んとなった歯触りが独特で、たまに茹でレタスが恋しくなる。香菜とあわせて食べようと、オイスターソースと醤油と胡麻油と砂糖少々を適当に混ぜて中華風のタレを作り、数秒だけざっと茹でてすぐ皿に盛ったレタスに垂らしつつ食べる。甘辛い角煮の良いお供になった。

角煮と大根は、すっかり焦げ茶色にテラテラと煮詰まっていて、肉の部分をつまむと脂の層がくしゃっと溶けてしまうような、とろんとろんの状態になっていた。あまり脂が多すぎてもこってりしすぎてしまうけど、脂あっての角煮だ。どうも私の母世代(あ、あとお婆ちゃん世代も……)は"肉の脂は取ってなんぼ"という風潮というか理念というか理想というかがあるみたいで、
「角煮、煮たんだよ。一生懸命脂取ったからねぇ、美味しいでしょう〜?」
と、すっかり脂抜けちゃってカスカスな色艶になっちゃった煮物をニコニコと差し出してくれたりしちゃうのだ。だめぇ!脂取っちゃ、だめぇ!とだんなや私は心で泣いているのであった。健康のためには取った方が良いかもしれないのだけど、やっぱり角煮とか豚汁とかカレーとか煮豚とか回鍋肉とか雲白肉とか生姜焼きとか("そのぐらいで止めといたら?"と背後でだんなが囁いたので止めとく)、そういうのはやっぱり脂もついててなんぼ、なのよねぇ。

2/4 (火)
だんな特製焼きそば (夕御飯)
蜂蜜とラム酒入りホットミルク

昨夜、大量の角煮を夕飯に平らげた我が家。豚の脂が胃にたまっちゃって、どうしようもないほどの満腹感に悩まされてしまった一夜となった。何もそんな状態になるまで角煮を食べなくても良さそうなものである。
脂なものだから、腹持ちが良いったらなくって、深夜になってだんなと2人、"ガロール"を飲む羽目になった。

日本から持ってきた数少ない薬のうち、「これだけは外せぬ」と気合いを入れて梱包して持ってきたのが日水製薬が誇る消化薬、ガロール。他社製品で「ガロニン」なるものもあるけれど、どちらも胆汁(牛の胆汁だと以前聞いたことがある)が成分だとかで効き目は抜群だ。めちゃめちゃ苦いことさえ我慢すれば。

消化薬の助けを借りて、それでもなんとなく胃もたれ気味の朝。
だんなが一人、
「バター醤油御飯でもかっこんで大学行ってくるか……おゆきさんも、食べる?」
とぱたぱたしていたけれど、「いや、いらぬー」と私は食べずにだんなをお見送り。息子が朝御飯にドーナッツ(昨日持ち帰ってきたドーナッツ)を囓る傍ら、私は牛乳を温めてちょっとばかり蜂蜜入れて、更にちょっとばかりラム酒を落として啜っていた。
息子が脇で
「おかーさん、牛乳に、茶色いものいっぱいいれてるの?」
と不思議そうに眺めていたけど、蜂蜜とラム酒の区別はつかなかったらしい。しめしめ。

アルフレッドソースのスパゲッティ
アップルジュース

さすがにホットミルクだけで空腹になったので、昼はスパゲッティ。スパゲティを茹で、冷蔵庫に保存してあった瓶詰め入りのアルフレッドソース(生クリームベースの、チーズ風味のパスタソース)をぶっかけるだけという、料理とはいえない料理になった。以前何かの雑誌で「どこまで作業することをもって"手料理"と言うか」なんて特集をやっていて、
「豆腐を切って鰹節をかけただけ、というのは手料理か」
「野菜や肉を切って、"炒めて混ぜるだけ"の調味料とあわせたのは手料理か」
「冷凍の小口切り里芋を使って煮付けをしたら手料理か」
などと、あれこれ言及されていた。私の心の中の仕切りによると、前者2つは胸を張って手料理とは言えない感じだ。

「そういうわけで、料理ではないのです」
と、息子の前に皿を出したところ、
「クリームのすぱげってぃーだー!うん、おかーさん、おいしいよー」
とキラキラした瞳が返ってきて、ちょっとだけ自己嫌悪。
瓶詰めソースだけど、けっこう美味しいのよね、これがね。

だんな特製焼きそば
ビール(Sierra Nevada Pale Ale)

夕方帰ってきただんなが、
「これから来週の木曜まで、いつも出ている宿題がなくなりましたー!!」
と、浮き足だって報告してきた。
「どこか行く?木曜に出て、月曜に帰ってくれば大丈夫」
「アトランタかなぁ……」
「ニューオーリンズかなぁ……」
「またニューオーリンズかい!」
と、ごにょごにょと急遽立て始めた旅行計画。

が、アトランタはこの週末NBAオールスターが開催されるそうで、宿はどこもいっぱい。
ニューオーリンズはマルディ・グラ(←なにやらすごい祭り)が盛り上がりつつあって、どこも高値。
シカゴやワシントンDCなどの北を目指すには雪が怖いし、西海岸やフロリダはめちゃめちゃ遠い。
行きたいところで行けそうなところは、あんまり残っていないのだった。

なんて必死で調べていたら、すっかり6時半。夕飯はだんながざざざっと焼きそばを作ってくれた。キャベツと豚肉、もやし入り。角煮の煮汁を隠し味に使ったのだそうで、あとはうっすらオイスターソースと塩の味。ダッチオーブンにみっしりと大量にできあがった焼きそばを我が家で最も大きな皿にどっかりと盛りつけ、家族でひたすら焼きそばだけをわしわしと食べた。

で結局、旅行は多分しないだろうことに。
出発しようかと言ってる木曜日に雪の予報も出ていることだし、家でおとなしく料理でもしていることになりそうだ。

2/5 (水)
Pancake Pantry(Nashville)にて、ベーコンチーズオムレツ (昼御飯)
海苔巻き揚げ餅

本日は6時45分起き。いよいよ今日、運転免許の実技試験を受けに行こうということになったのだった。8月に仮免を受けていたのにだらだらとしてしまい、1月に入って焦り始めたものの大雪降ったり風邪ひいたりと、のびのびになってしまっていた。
7時20分頃に試験場に到着。受付は8時半からだけれど、毎日受付開始前に大行列ができてしまうので、早く事を終わらせるためには早く到着して並んでいなければならない。今日は最低気温マイナス7度だそうで、外はめちゃめちゃ冷え込んでいる。そんな中に息子を立たせておくのもかわいそうだと、だんなが一人で行列についてくれた。
「だんな、ありがとー」
「おとーさん、ありがとー」
と、私と息子は二人で暖房をかけまくった車の中。

試験が終わったらどこかに御飯を食べに行こうということになっているけど、さすがにお腹も空いてくる。
日本にいる母が送ってくれた煎餅の袋を1つ持ってきていたので、それをバリバリ囓りながら時を待った。並ぶだんなの元にもだーっと走っていって
「これー、おせんべー」
と手渡して再び車中へ。

そして午前8時半。テストの手続きを終え、9時半には実技試験。
幸運も色々と重なり、めでたく一発合格した(何しろテスト内容も"これで本当にいいのか?"と思いたくなるほど簡単で……)。(詳しくはこのへんに)
もう、今日の分の集中力を使い果たした感じだ。夕方には別の用事もあるのにー。

Nashville 「Pancake Pantry」にて
 チキン&ライス スープ
 ベーコン&チーズ オムレツ バターミルクパンケーキ3枚つき
 アイスティー

「めでたく免許が取れたのでー」
「祝杯〜♪」
「昼だからアイスティーで祝杯〜♪」
と、テストセンターからそのまま目指したのは久しぶりのパンケーキ屋さん「Pancake Pantry」

甘いものは今ひとつ恋しくなかったので、私はオムレツとパンケーキのセット。だんなはハンバーガーで、息子は子供サイズの卵料理&パンケーキのセット。"本日のスープ"4種のうちから選択してみたチキン&ライススープが最初にやってきたので、皆でつつきながらパンケーキを待つ。スープというよりは、「鶏肉入り雑炊」という感じ。汁気よりも肉と御飯が大量に入っていて、透明なスープには鶏肉の風味がじっくり染みている。セロリの香りもたっぷりと。それ一杯で満腹になってしまいそうなボリュームのあるスープを平らげたところで、大きな皿がざらざらっとテーブルに並べられた。

チェダーチーズを巻き込んだオムレツには、中に1枚、上に1枚ベーコンが添えられている。オプションでつけてもらった炒め玉ねぎも、これでもかと混ぜられていた。オムレツにかぶさるように、直径15cmほどのシンプルなパンケーキが3枚。奥にはたっぷりのホイップバターつき。
瓶に入ったパンケーキシロップはほんのり温かくて、それをパンケーキにダジダジダジダジとぶっかけながら食べる。相変わらず旨い。生クリームのかかった果物の甘いコンポートぶっかけパンケーキなどを食べ続けた後に普通のパンケーキに戻ってくると、美味しいなぁと改めて感動してしまう。

枝豆
焼き餃子(冷凍保存もの)
だんな特製 腸詰入り焼きそば
ビール (Abita Golden)
ビール (Michelob Black Tan)

これから毎週水曜日は1時間の"Conversation Patrner"なる1対1のミーティングに出ることになっている。大学で日本語を習っている学生さんたちに日本語を教えつつこちらは英語を教えてもらいましょうというプログラムで、私のパートナーに決まったのはマレーシア人のMちゃん。目がくりくりとした華奢な感じの女の子だ。
こちらの英語の不得手さをカバーしてあまりあるMちゃんの堪能な日本語で、怪しい英語と日本語のちゃんぽんな会話をしながら初回のミーティングは無事終了。今日は朝からそれなりに緊張続きだったので、夕飯時には全体的にやる気が減退しまくっていた。

「なんかねー……お腹は空かないんだけどねー……」
「ビールをキュ〜〜〜〜っと、飲みたい感じ?」
「でも、ピザという気分じゃないし……」
「和食屋行くと、高いしなぁ……」
と、全体的にやる気のない口調で家族会談。そのうち
「そうじゃん!冷凍庫に枝豆あるじゃん!」
「冷凍庫と言えば、こないだの餃子の残りが冷凍庫にあるじゃん!」
「焼きそばもあるしなぁ〜、よっしゃ、炒めるかぁ!」
と、だんなの"おさんどんスイッチ"がポチッと押されてしまったらしかった。私がちょっと呆然としている間に、とっとと枝豆を茹で始める我が夫。だんなの背後に"こ〜んしゅうの、山場〜♪"とか言いながら飛んでいる何かが見えるような気がする。何かがポチッと押してしまったらしいのよ。私は皿洗いすらする気力がないのに。

そのうちテーブルには、枝豆(←オーガニックスーパーで買ってきた冷凍もので、その名も"Eda-Mame")と、焼きたての餃子、オイスターソースと塩だけで簡単に味をつけた腸詰入りの焼きそばがずらずらっと並んだ。どれもこれも悔しいほどビールに似合う食べ物だ。当初の希望通り、ビールをがぶがぶ飲みながらあれこれつつく。あ、家御飯は家御飯でやっぱり悪くないかも。

2/6 (木)
Brownings(Louisville)にて、「Sausage Platter」 (夕御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
フローズンストロベリー入りコーンフレーク

いつもけっこうな量の宿題が出ているらしい大学での夫の授業。今日と来週の火曜木曜はその膨大な宿題がなくなるのだという。しかも明日は授業がない。
「そういうわけで、木曜の午後から月曜の午前までは何もやることがなくなったわけですが!」
と数日前にだんなに告げられ、ではどこか近場に遊びに行きましょうかと調べ始めたところ、アトランタはNBAオールスターが開催されて人だらけ、ニューオーリンズはマルディ・グラ目前で人だらけ、と目当ての場所はちょっと無理っぽい。諦めようかと思っていたのだけど、
「では、ケンタッキー州に遊びに行ってみませんか?」
ということになり、唐突に今日、出かけることになった。午前中にだんなが学校に行っている間、私は溜まった洗濯物を洗いに行きつつ荷造り。慌ただしいなぁ。なんだか夜逃げみたいだなぁ。

朝御飯は適当にコーンフレーク。最近、息子は甘さ控えめなレーズン入りコーンフレークにご執心で、かつて息子の愛情が向けられていたフローズンストロベリー入りのものは飽きられてしまったらしい。私はいちご入りのこれ、けっこう好きなんだけど。
「……好みが変わったの?大人っぽくなった?」
と、傍らでレーズン入りを食べる息子にニヤニヤしながら聞いてみると
「そう、ぼく、大人になったんだよー」
と真顔で返された。そ、そうすか……。

Nashville 「Shintomi」にて
 Daily Special Bento Box

午後1時、だんなが帰宅。出発前に腹ごしらえしましょうと、これから数日アメリカ飯が続くことを覚悟して日本食屋で昼御飯。
夜に来るとやったらと高い(同じメニューを頼んでも高く取られるような気がする)この店だけど、ランチ定食などはなかなかお得。殊に日替わり弁当はかなりお得だ。全体的に懐かしい味のものが食べられるので、ついついこれを頼んでしまうのだった。

仕切りのついた弁当箱には、野菜と海老の天ぷら、ナポリタンスパゲティと手羽の照り焼き、酢の物とオレンジと枝豆。それらはいつも同じで、あとは日替わりでおかずが2品ついてくる。今日は餃子が3個とチキンカツだ。
ちょっとばかり皮がペショッとしてしまっている餃子は、内心「これはうちで作る方が絶対旨いな」と思えるものではあったけど、とんかつソースと練りからしとレモンが添えられたチキンカツは揚げたてサクサクで悪くない。バターで炒めたようなこってり味の3口分ほどのナポリタンも、醤油と味醂の味が染みた手羽もなかなかだ。

ぺろっと弁当を食べたところで午後2時、いざいざ北へ。我が町から、I-65を180マイルほど北上すればケンタッキー州で最大の都市、ルイビル(Louisville)にたどり着く。

ケンタッキー州Louisville 「Brownings」にて
 Sausage Platter $7.50
 Creole Spinach Salad $6.50
 Reuben Brownings $6.50
 Kid's Pasta $3.50
 Beer (Cream Ale) $2.75
 Beer (Red Ale) $2.75
を、家族で

今日は朝から雪がちらちら降っている。あまり積もるような雪質ではないけれど、さすがにスピードも出せないねと2時間半くらいかけてゆっくりと進んで行った。決意してから出発がめちゃめちゃ早かったので、ろくに情報収集もしていない。宿も何も決めておらず、ケンタッキー州に入ったところの観光案内所で宿のクーポンブックをもらったりレストランガイドをもらってみたりしながらとりあえず町を目指す。ほぼ真北に位置するのでまさか時差はないだろうと思っていたところ、1時間の時差があるらしい。結局宿に到着したのは午後6時をまわった頃だった。
北に来て、雪はすごくなるばかり。宿に入る頃にはうっすら数センチほど積もりゆくところだった。初めての町、夜に到着したものだから土地勘もさっぱりであまり出歩く勇気もない。宿のカウンターのパンフ棚で地ビール屋のパンフレットを見つけたのを良いことに、宿の近くにあるらしいそこに行くことにした。

ルイビルのベースボールスタジアムである"Louisville Slugger Field"に隣接した(ていうか球場内にある)お店の名は「Brownings」。洒落たバーカウンターの上は6階分くらいの巨大な吹き抜けになっており、2層になった醸造タンクがガラス越しによく見える。平日の雪の夜ということもあってか、店の席は1割ほども埋まっていなかった。がらんがらんでちょっと不安になる。

ブラウンエール、ペールエール、スタウトなど6種類ほどある地ビールの中からだんなはクリームエールを、私はレッドエールを注文。つまみにソーセージとほうれん草のサラダ、息子にお子様メニューのスパゲティを持ってきてもらう。メインディッシュは、1人1皿食べる自信がなかったので、だんなとサンドイッチを半分こ。
全体的にアメリカーンな量ではなく、食べやすいサイズのものがやってきた。ソーセージは半分に縦割りにされ、切り口をこんがりと炙られたものがザワークラウトやパンと共に皿に美しく並べられている。ほんのり辛く酸味が強いトマト味のドレッシングが添えられたほうれん草のサラダには、上に鶏肉のグリルつき。コーンビーフとスイスチーズ、ザワークラウトがロシア風ソースと共に黒パンにサンドされた"Reuben"という名のサンドイッチは、ほんのり甘いソースがコーンビーフに似合って美味しかった。ビールもこっくりしっかりした味の、いかにも地ビールという感じの味。強烈な個性はないけれど、大手メーカーのビールとは比較にならないほど旨い。20オンス(約600cc)ほども入ってたったの2.75ドルということも嬉しくて、ついついお代わりしようとしたのだけれど、旅行初日から酔っぱらってしまいそうなので止めておいた。

この町、"ケンタッキーフライドチキン"の本部があるそうだ。ケンタ博物館もあるらしい。あとは、"ケンタッキーダービー"の本拠地ということで(今はシーズンオフだけど)、お馬さん好きな人にとっては聖地みたいな場所なのだとか。アンティークマーケットもあちこちにあるらしい。あと……近くの町にバーボンウィスキーの蒸留所がいっぱいあるとか。

調べ始めるうちに、私の頭の中にはケンタのCMで流れる、あの"ミーミードーレミファーミファーラソー♪"のメロディーがずっと流れてしまっているのであった。
「あれって……ケンタのCMソングじゃなかったんだねぇ」
「ちがうよ!あれ、ケンタッキー州の州歌だよ!……どっかの公園では、それがずっと流れてるらしいよ、州歌だし」
「うわー、公園中がケンタなのかー、ケンタ公園……」
「だからケンタじゃないんだって!」
とりあえず、ケンタ公園も外せないらしい。

2/7 (金)
Lynn's Paradise Cafe(Louisville)にて、グルメスクランブルエッグ (朝御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
Louisville 「Lynn's Paradise Cafe」にて
 Gourmet Scramble with Fresh Fruit $7.95
 Manhattan Scramble with Hash Browns $8.95
 Coffee $1.75
 Tea $1.75
 Chocolate Milk $1.95
を、家族で

ケンタッキー州ルイビルの朝。
この旅行に出る前の数時間、私とだんなは各々に行きたいところや食べたいところをちょこちょこっと調べていたのだけど、二人してチェックが重なっていたお店があった。「Lynn's Paradise Cafe」という名の、朝食に定評があるらしい(しかもランチもディナーも定評があるらしい)お店だ。
チェックが重なったことだしと、今日の朝はそこで食べることにした。

パラダイスカフェという名のとおりと言うか何と言うか、お店は何だか色々と変な装飾が施されていた。店頭にはやたらと華やかな色使いの動物のオブジェが置かれており、店内も壁の一部は空模様に塗られその隣はオレンジに塗られ、その反対側は紫色であったり、と大変なことになっている。統一されていないテーブルと椅子が無造作に置かれており、天井からはアジアチックなぼんぼりがぶら下がっている。朝っぱらから目がちかちかしてしまいそうな妙な空間が展開されていた。
「うっひゃ〜……すごいね」
「すごい店だね」
と驚きつつ、8人が同時に食事できそうなほどのテーブルに3人でつく。朝食メニューは卵料理をはじめ、フレンチトーストやパンケーキなど。説明文を読むと、どれも何だかとても美味しそうだ。

私はグルメ・スクランブルエッグ。ハーブ入りのスクランブルエッグにローストガーリックを入れ、3種類のチーズをあわせたもの、らしい。
だんなはマンハッタン・スクランブルエッグ。コーンビーフと玉ねぎ、じゃがいも、スイスチーズがスクランブルエッグに混ぜられてホースラディッシュ入りサワークリームが添えられるらしい。どちらも、ビスケットやマフィン、トーストから選べるパンと、数種類から選べるサイドディッシュが1つついてくる。フルーツつけてちょーだい、と頼んでみた。

料理が出てくるまでの間は紅茶を飲んで待つ。テーブルには、空のカップにレモンが2切れ。ステンレスのポットにお湯が満たされ、そして10種類ほどのティーバッグが山盛りにされて籠がやってきていた。選び放題だね、と笑いながら2杯くらいずつティーバッグを替えて楽しんでみたり。お湯は頼めばいっくらでも持ってきてもらえるので、無尽蔵に飲むことができる。いや、そんなに飲まんでも。

そしてやってきた、ボリュームたっぷりの一皿料理の朝御飯。
火が入ってとろとろに溶けたチーズが絡まるスクランブルエッグはハーブの香りがぷんぷん香ってくる。私が選択した"ホームメイド バターミルク ビスケット"は、大ぶりの四角いものが2個。ほんのりと塩辛さがある。そして、マグカップにこれでもかと詰められていたのが果物だった。葡萄とメロンと、スイカ。ざくざく切られたやつが、みっしりとマグカップに盛られているのだった。
息子の食べ物を注文しなくてほんっとうに良かった、と思いつつ、
「メロン食べますかー?パンも食べる?卵も食べな」
と息子に手伝ってもらいながら皿の上の料理を片づけていく。素朴な味の素朴な料理だ。だんなのスクランブルエッグには塩味の薄切り牛肉(アメリカのコーンビーフってボロボロに細かい馴染みのアレではなくて、塩漬けの塊牛肉を薄切りにしたもの、という感じのものだ)がこれまたたっぷりと。じゃがいもや玉ねぎが卵の隙間にざくざく見える。
内装が不安になるほど個性的な店だったけど、味はすこぶる良い店だった。朝から良い感じのスタートになって、ご機嫌な私たち。

朝食を終えた後は、ケンタッキーフライドチキンの総本部"Colonerl Harland Sanders Museum"を目指してみる。調べたところによると、昔の調理器具などを展示した博物館があるということだけど、行ってみたら
「ごめんなさーい。今はね、博物館やってないの」
とショックな言葉が受付のおねぇさんから返ってきた。我が家の"ケンタ旅行"の旅程がぐずぐずと崩れていく。ショックだ。

めげずにケンタッキーダービー博物館(Kentucky Derby Museum)に行くことに。期待以上に楽しめる展示内容で、ついでにシーズンオフ中の競馬場内を見学する無料ツアーにも参加してみたり。ケンタッキーダービーは、想像以上にものすごいイベントだと知ることになった。お馬さん好きの我が夫は
「ああ〜、あの馬は○○!……××もいるじゃん、すげー」
とあちこち眺めて楽しそうにしていた。

Louisville 「211 Clover Lane Restaurant」にて
 Bowl of Soup $4.50
 211 Salad of Baby Organic Green with French Vinaigrette $4.50
 Basil Roasted Chicken with Lettuce, Tomato, and Lemon Aioli on Levain Bread $7.50
 Beef Bourguignonne with Basmati Rice $8.50
 Pot de Creme $6.00
 Tea $2.25
 Espresso $3.50
を、家族で

昼御飯は、ちょっと足をのばして気になるお店に行ってみることに。たまたまネットサーフィンしていてお店のホームページを発見し、それを見た私が
「ここ、なんか気になるんだよー。美味しそうなんだよー」
ということで行ってみることにしたのだった。値段はそれほど高くないけど、微妙に敷居は高そうだ。子供連れじゃ良い顔されないかも、と、夜は避けてランチに行ってみた。

ちょっとばかり洒落た雰囲気の一角にある小さなショッピングモールの中にあるお店。表通りからは全く目立たないところにあったその店の重い扉を開けて店内へ。窓際の4人席に案内してもらい、ちょっとフランス料理チックなランチを楽しんだ。
予想通り、重厚そうな雰囲気が漂う店内だ。ランチタイムなのに真っ白なテーブルクロスにナプキンが置かれており、
「"布"が出てくるお店なんてさ、久しぶりだよね」
と小声でごにょごにょ話しながらメニューを選ぶ。スープやサラダなどの前菜類が4種類。メインディッシュは具沢山のサンドイッチがメインで8種類ほど。私は本日のスープと、チキンのバジルソースサンドイッチを食べることにした。だんなは"ビーフブルゴーニュ、ライス添え"なる謎の品。
「ブルゴーニュってことは……ワイン?かな?」
「ワイン煮とか……そんな感じだよねぇ?」
「俺の予想では"牛肉の煮込みの御飯かけ"ということで"ハヤシライスのようなもの"と確定したんだけど、違うだろうか」
と、確証がもてないまま注文。

今日のスープは、ムール貝のクリームスープ。胡椒が効いた黄色いスープの中には小指の先ほどの大きさのムール貝がごろごろと入っている。色はコーンスープだけれど、磯の臭いがぷんぷん漂ってくる面白いスープだった。野菜の風味も漂ってきて、いかにも手間がかかっていますという感じ。
そして、私の元にはサンドイッチ。少しだけ酸味のあるパンに、厚切りトマトとレタス、グリルしたチキンとバジルソース、レモン風味のマヨネーズソースが挟まっている。なんてことのないサンドイッチという外見だけれど、久しぶりに食べた美味しいサンドイッチだった。生のバジルを使ったような香りの強いソースが良い感じ。
だんなの前に来た皿は、まさに"ハヤシライスもどき"というものだった。牛肉の他、人参とじゃがいも、そして椎茸(マッシュルームか何かではないかと思ったのだけど、椎茸だった……)が赤ワインベースのソースでじっくり煮込まれている。細長い米の御飯が皿の中央に盛られ、
「やっぱりハヤシライスだ」
と何やら嬉しそうな我が夫。

あんまり美味しかったものだから、思わずデザートまで食べてしまった。「Pot de Creme」だか「Pot du Creme」だかいう名前のデザートは、チョコレート味のクレームブリュレといった感じのもの。ココットケースの中にはスフレっぽい歯触りのチョコレート生地が入り、その下にはクリーム状のチョコレートが。そして上にはチョコレート風味のホイップクリームが、と、全体的にチョコレート風味山盛りなデザートだった。これがまた、久しぶりに味わった"フランス菓子っぽいお菓子"という感じで、くどいほどにチョコなのに大味ではなくて、ちょっと感動。
「朝御飯に続いて、昼御飯も大当たり〜♪」
と、次の観光に向かったのだった。この旅行、別に食べることは目的じゃないはずなんだけど……。

次の目的地は、ルイビル・スラッガー博物館(Louisville Slugger Museum)。スラッガーとはホームランバッターのことなのだそうで、博物館の中にはバットやバッターの展示がいっぱい。ベイブルースが使ったバットなど眺めたりしながらバット製作工場まで見学し、お土産に長さ40cmほどのミニミニバットを貰って帰ってきた。

Louisville 「Z's Oyster Bar & Steakhouse」にて
 1/2 Oyster Sampler 2×$10.95
 New England Clam Chouder $4.95
 Sashimi $10.95
 14 oz New York Strip $29.95
 10 oz Filet Steak $24.95
 NY Cheesecake $5.95
 Ice Cream $2.95
 Espresso 2×$2.50
 Coke $1.95
 Glass of "Dom Ste Michelle" 2×$7.00
   を、家族で

昨日泊まった宿で、飲食店のパンフレットカードをちょこちょこ入手してみたりした。これまでの経験からすると、観光客向けということでかなりハズレな店もあるけれど、地元の人にも人気の美味しいお店もそういうところで紹介されていたりする。
「これこれ、この店、ネットサーフィンしていて名前見たよ。町の情報サイトで"美味しいステーキ屋ランキング"に入っていたような気がする」
とだんなが言うそのカードには「Prime Steak & Fresh Seafood」と書かれていた。牡蠣が名物!と書いてある。テネシーに負けず劣らず内陸なのに、美味しい牡蠣なんて食べられるのかなぁ?と不安に思いつつも、ステーキ恋しさにそこに向かってみることにした。

ウェイティングバーがあり、客席には大きな水槽が飾られている薄暗い店内は、かなり大人の雰囲気だ。メニューを開くと、牡蠣料理各種に並んで、種類別の牡蠣の一覧なんかがある。ニューヨークで食べてきた"Kumamoto"という名の牡蠣を見て、食べる予定ではなかったはずの生牡蠣が猛烈に恋しくなってきてしまった。メニューには6種類ほどの牡蠣の名前が並んでいる。
「ご注文、何にしましょ?」
と聞いてきた白髪白髭のおっちゃんに
「牡蠣、どれが美味しいかなぁ?」
と聞く我が夫。
「メニューに並んでいるこの順は、牡蠣の大きさの小さい順から大きい順になっているんです。Kumamotoなんかは、すごく小さいけどその代わり香りがすごく濃厚で、とても美味しいですよ。……あぁ、6種類を1個ずつ盛り合わせたサンプルプラッターもお作りできますが」
と勧められ、結局前菜は私もだんなも牡蠣プラッター。ついついクラムチャウダーなども頼んでしまいつつ、メインディッシュはがつんとステーキを食べることにした。マグロ好きの息子には前菜の刺身(品名もまさにSashimi)を彼用のメインディッシュとして取ってあげることに。

ほどなくやってきた、大きさや形が全く違う6個の牡蠣の盛り合わせ。小さなものは親指の先ほどのサイズしかないし、やたらと深さのあるぼってりと丸い牡蠣もあったりする。縁がヒラヒラとフリルのようになっているものもあったり。確かに小さなものは甘い味も濃厚で香りも豊か、凝縮されているような味がする。大きなものは大きなものでブリブリとした食感が心地よいし、それはそれで瑞々しい美味しさがあったり。どれもこれも新鮮そのもので生臭さは少しもなく、内陸とは思えないほどの旨い牡蠣だった。

メインディッシュは10oz(約300g)のステーキ。メニューによると、これがこの店の名物料理であるらしい。断面積はそれほど迫力は感じられないけれど、代わりに厚さが4cmほどはありそうなステーキだ。味付けは塩胡椒のみ。クレソンだけが添えられた肉は、切り取ると断面から肉汁がじわっと滲み出てくるものだった。脂っこさはないのにサクサクと切れて柔らかい。小さなサイズを注文したのを激しく後悔しながらぺろりと食べた。

最後にはめでたくニューヨークチーズケーキも食べることができ、ちょっと高くついた夕御飯ではあったけれど大満足でモーテルに帰還。
美味しいものばかり続いた今日の食事に感謝しつつ、明日はウィスキーの蒸留所に寄ってからテネシーの我が家に帰る予定。

2/8 (土)
The Spicy Lemon(Bardstown)にて、チキンサラダ詰めポテト (昼御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
Louisville 「Best Western」の無料朝食
 トースト
 アップルジュース

昨夜の宿は、
「1泊42ドルだって!」
「しかもスペシャル朝御飯つきだって!」
ということで、チェーンモーテルのBest Westernに宿泊してみた。この系列に泊まるのは初めてだ。部屋の設備や広さはいかにもな感じのごく普通のモーテルだったけれど、屋内温水プールに屋内ジャグジーがついていた。真冬でも水着持って旅行するのが良いのかもしれない。

朝御飯は、そのスペシャルな朝食を期待してロビーに行く……が、カウンターに並んでいたのは少しもスペシャルではなく、ごくごく一般的なモーテルの朝御飯でしかなかった。ちょっと悲しい。
マフィンやデニッシュなどの甘系パンの他は、食パンとベーグル。数種類のジャムとバター、そして数種類のシリアル類。コーヒーと紅茶、ジュースはオレンジとアップルの2種類。たったのそれだけだ。少なからずショックを受けつつ、私とだんなはトーストを囓る。息子はそれでもコーンフレークが食べられるのでご機嫌だった。

かくして2泊のLouisville滞在は終了し、帰路につく。途中の町、ケンタッキー州の"Bardstown"周辺の観光もちょこっとしながら行こうということに。

Bardstown 「The Spicy Lemon」にて
 Loaded Baked Potato Stuffed with Chicken Salad, Gravy and Cheese $5.95
 Hot Tea $1.00

Bardstownには、「My Old Kentucky Home State Park」なるものがある。作曲家のフォスターが、ここに残されている建物を見つめてインスピレーションを得、"My Old Kentucky Home"を作曲したのだとか。私の中では"ケンタの歌"として認識されてしまっているその曲(←ミーミードーレミファーミファーラソー♪ってやつ)はケンタッキー州の州歌でもあり、また、ケンタッキーダービー開催の際には会場の全員でレースの前に唱和したりもするらしい。この州に住む人にとっては色々と大切な歌らしかった。

州立公園ということだけど、その家の他には見所らしい見所はなく、温かい時期にはゴルフやキャンプ、ハイキングに最適という公園のようだ。今は冬で、しかも一昨日の降雪ですっかり一面真っ白な状態、しかもここ数日は気温がプラスにはなっていないんじゃないかという程の寒さが続いている。あまり公園を散策、という気分にはなれないのが残念だった。公園内には数分おきに鐘の音がフォスターの音楽を奏でている。
「やっぱりケンタ公園だ」
「ケンタの歌だらけだ」
と失礼な事を言いつつ公園を後にした。

そして、この州のもう1つの名物、バーボンウィスキー蒸留所見学。たまたま目指してみた「Maker's Mark」という蒸留所は現在実際に操業している蒸留所の中ではアメリカ最古のもの(バーボンウィスキーはアメリカ発祥なので、すなわち世界最古のもの)だということで、木造の建物の中に納められた大樽だとか瓶詰め過程だとかを見学ツアーでじっくり観察させてもらった。目の前の樽(深さ10m、直径5mという感じの巨大樽)には麦芽やとうもろこしが粉砕されたものが詰められて発酵のまっただなか。下からぽこぽこ泡が立っていたりしたのだけど……こういうのって、普通は近寄っちゃいけないものじゃないだろうか(雑菌が入ったらとてもとてもいけないような気が……)。防護服なども何もつけないで、観光客がそのままの格好でずかずかと近寄って間近にそんなものを眺められたことは、貴重な体験かもしれなかった。

たまたま蒸留所にはBBCの取材陣が来ていたり。ドキュメンタリーか何かの撮影の最中で、私たちが参加した見学ツアーの人々が取材されたり撮影されたりした。我が家も
「どこから来ましたかー?」
「テネシーからです。元々は日本から留学で」
「バーボンウィスキー好きですかー?」
「ええ、好きですよ」(え、だんな、あんまりウィスキーは飲まない……)
「日本でも有名?」
「ええ、良く見ますね。僕もよく飲んでますし」(嘘つきーだんなの嘘つきー……)
いけしゃあしゃあと答えた我が夫。イギリスで流れちゃうのかなぁ……これ……。

そうこうしているうちに1時を過ぎてしまい、Bardstownでお昼御飯。赤煉瓦の建物が印象的な、小さな小さな町だった。チェーンファーストフード店以外には、小さな地元のダイナーだけがあるという感じ。ここまで来てファーストフードもなぁ、ということで、適当な店を探して入ってみた。「The Spicy Lemon」という名の店はサンドイッチメニューがメインの、ダイナーというよりはカフェという感じの店。注文するなり厨房の方から電子レンジを何度か動かす「チーン……チーン」という音が店に鳴り響き、
「ああ、この店は外れだったかも……」
「スーパーの冷凍コーナーで見かけたようなものが出てきたらどうしよう……」
と、チーンの音が増える度に私たちは内心恐慌状態に陥っていた。

が、出てきたものは案外とまとも。「Loaded Baked Potato Stuffed with Chicken Salad, Gravy and Cheese」なる長い名前の料理は、塊のままの大きなじゃがいもが縦2つに割られ、その間にふんわりとしたマヨネーズ味のチキンサラダがたっぷりと挟まれ、上からチーズをかけて焼いたもの(いや、チンしたもの)だった。パンが2枚ついてくる。温かいじゃがいもに溶けたチーズが悪くない。チキンサラダの味だって上々だった。

だんなはコーンビーフのサンドイッチ、息子は卵とハムのハーフサイズのサンドイッチ。どちらも出来合いの味などはしない、至ってまともなものだった。
「ん、電子レンジは、作り置きしてたのを直前に温めるために使っていたのかもね」
「基本は手作りという感じだよね」
と納得しながら満足なお昼御飯。でもやっぱり、店中にチーンチーンの音が鳴り響くのは……お客に与える心証はあんまりよくないような気がする。

Nashville 「Ken's Sushi Restaurant」にて
 Tekka Don
 Beer (Kirin)

お酒のお土産を抱え、我が町に帰ってきたのは午後5時過ぎ。家に帰っても買い置きの肉くらいしかないしね、と魚介が恋しい私たちは「Ken's Sushi」で夕御飯を食べて帰ることにした。私は鉄火丼、だんなは握りのセット。たっぷりのすし飯の上にこれでもかとマグロの切り身が乗った鉄火丼はしみじみ美味しい。それほど自覚はしていなかったけれど、やっぱり米が恋しかったらしい自分を自覚する。

帰宅してみると、お仕事依頼のメールがいっぱい。あいやー。

2/9 (日)
ほうれん草たっぷり常夜鍋 (夕御飯)
フローズンストロベリー入りコーンフレーク

3日だろうが10日だろうが、旅行から帰ってきての翌日というものはなんとなくダラダラした気分になってしまう。それでも私は8時前に起き出し、もそもそと仕事を始める。息子も8時過ぎには起きてきて、横でごにょごにょ遊び始めた。だんなが起きてきたのは10時過ぎ。

私が仕事している間、息子が横で
「ねぇね、カリカリ(←コーンフレークのこと)食べようよぅ。バナナでもいいと思うなー」
と言い続けていたのを、
「まぁ、ちょっと待ちなよ、おとーさんが起きてきたら一緒に食べようよ」
とはぐらかしていたものだから、だんなが起きてきたのを見るなり
「……あ!カリカリ!バナナ!」
などと指さして叫ぶ息子。まるで私が子供に食事を与えない鬼母のようではないか。

空腹耐え切れぬといった感じの息子に合わせ、朝御飯は皆でコーンフレーク。やっぱりフローズンストロベリー入りコーンフレークは妙に美味しい。お子さま向けな味だけど。

マクドナルドにて
 Quarter Pounder with Cheese
 French Fries
 Hi-C
 

今日の天気予報は"夜には雪、もしかしたら午後から雪"という感じ。牛乳の残りが少ないので昼飯食べついでに近所で買い物してこようということになる。目指したところは、マクドナルド。高速道路を走っているとどんな辺境でもあちらこちらで見かけることができるマクドナルドだ。入って食べても、「美味しいなぁ」とは別に思わない。「ああ、マクドナルドだなぁ」と思うだけだ。だけなんだけど、時々妙〜にマクドナルドが恋しくなる時がある。チーズの味もハンバーグの味もピクルスの味も、想像するだけで口の中で再構築できてしまうのに(そしてやっぱり「美味しいなぁ」とは思えないのに)、無性にダブルチーズバーガーあたりが恋しくなってしまうのだった。

そういうわけで、マクドナルド。カウンターに立ってメニューを眺めたところ、「Quarter Pounder」なるハンバーガーが目について、日本にはないそれを思わず注文してしまった。1/4ポンドということは、110gほどのハンバーガーが挟まってるハンバーガーということになる。ダブルクォーターパウンダー、なんてハンバーガーもあって、それはつまり1/2ポンドのハンバーガーが挟まったハンバーガー。すごく大きい、という印象はないけれど、やっぱり普通のハンバーガーよりは肉が大きめのような気が……するようなしないような。

下から、パン・チーズ・肉・チーズ・ピクルス・玉ねぎ・ソース・パンといった構成になっているクォーターパウンダー。小山のようなポテトには、ドリンクカウンターに置いてあるケチャップをミニカップに入れてきて、ペタクタつけつつ食べる。1リットル近く入りそうなドリンクカップにだばだばだ〜とジュースを注いできて、飲み干した挙げ句にお代わり。日本のマクドナルドと味は全然変わりないけど、ダイナミックさはアメリカ本土の勝ちかもしれない。

屋内に巨大なジャングルジム状の子供向け遊具がある一角があり、今日はそこでバースディパーティーが開かれていた模様。私たちが行った時にはすでにお開きになっていて、入れ替わりで子供たちが帰るところだった。天井には、子供の手から離れてしまったらしい風船がいくつか浮いていて、大人が椅子に上れば紐に届く高さだ。
「風船……もらっちゃっていいかな?」
「もう誰もいないしね?」
と、風船を回収して回る私たち。3個の風船を抱えて帰る息子は、妙に幸せそうだった。遊具あったり風船あったり、こういうところで子供のハートを掴むなんてなんかズルイぞ、マクドナルド。

常夜鍋
ビール(Sierra Nevada Pale Ale)

マクドナルドを出る頃に降り始めた雪は、買い物を終えて帰宅する頃には本格的に積もるぞモードに突入していた。今回は明日の明け方まで降り続き、12cmくらいは積もるかもねー、という予報が出ているらしい。テレビをつけると、下側には常に大雪情報が表示されているような状態だった。

夕飯は、寒い日には鍋に限るねと常夜鍋。土鍋はないのでダッチオーブンに水入れて昆布を浸す。コンロにかけて沸騰したらカセットコンロに移動して、あとはほうれん草と薄切り豚肉を放り込みつつ胡麻だれで食べていくだけ。ついでにうどんも放り込み、ほうれん草色に薄く染まったスープに塩胡椒ガリガリ入れてうどんを食べる。
「毎日食べても飽きない」とか「一晩中食べても飽きない」とかいう意味のある常夜鍋、本当は水と酒を1:1ほどに合わせた中で煮込むものらしい。胡麻だれでなく、ポン酢ベースで食べるものもメジャーなようだ。大根おろしが欠かせない、なんて話も聞いたことがある。

けれども、我が家の常夜鍋は、

  • 水に昆布入れるだけのだしで煮る
  • 胡麻だれで食べる(ミツカンごましゃぶがその微妙なチープ加減が似合って美味しい。自家製だれとか高級だれもやってみたけど、なんかちょっと違う感じ)
というスタイルからは逃れられないのだった。もとはだんなの実家で食べていたそのままの内容だ。
色はあんまりよくないけど(変にうすら緑だし)、スープに塩胡椒して飲むのも、それはそれでけっこう美味しい。鍋、サイコー。