食欲魔人日記 03年08月 第3週
8/11 (月)
空心菜のにんにく炒め。ビールに合う合う〜♪
「松家」のうどん (細いの・ひやひや)
麦茶

そういえば冷凍庫にうどんの残りがあったよね、と今朝は冷凍うどん。

うどん茹でて、水で締めて、だしも水で薄めて、冷たいうどんに冷たいだしをかけて食べる。万能葱はなかったので、かけるのは揚げ玉のみ。冷凍保存してある揚げ玉をざらららーとかけて啜りこんだ。
やる気がでたら、かしわ天(鶏肉の天ぷら)を作ろう。あと、半熟卵天とか作って、大量生産の味じゃないだしをちゃんと取って、美味しいうどんを我が家で……やる気が出たらね、やる気が出たら……(当分無理そう……)。

「KIHACHI」の
 マフィン(黒胡麻・マーブルなど)
牛乳

仕事が休みの母は、「ちょーっと銀座に用事済ませに行ってくるわねー」と出かけて行った。ついていこうかなとも一瞬思ったけれど、うだるような暑さに断念。パソコンの復旧作業もまだ途中だし。

で、昼過ぎに帰ってきた母は、
「あぁ〜、おなか空いたわ。食べましょ食べましょ、これ、食べましょ」
銀座三越で買ってきたらしい紙袋をぷらぷらとさせている。母は銀座三越の地下で売られている、KIHACHIのマフィンが販売を始めた当初から大好物だ。

紙袋の中には、抹茶と小豆のマフィンとか、黒胡麻とプルーンのマフィンとか、いかにもな組み合わせのものが何個か入っていた。チョコとプレーンのマーブルマフィンが一番"普通"っぽいものだ。
「ご、胡麻って……本当に胡麻胡麻してるのね……しかも黒胡麻」
「あー、抹茶味はけっこういけるよ」
なんて言いながら、適当に一口サイズに切って母と息子と3人でもしゃもしゃと食べてみた。

美味しいか不味いかで言えば美味しいんだけど、そんなにもてはやされるほど美味しいとは私には思えない。多分KIHACHIのお菓子が目指す味と、私の好きな味の方向がかなり違うんだろうなぁ……という感じ。そして、母と私は味の好みが全然違うんだなぁ〜、と。

枝豆
昨夜の刺身の残り
釜あげしらすのおろし醤油あえ
空心菜のにんにく炒め
「桂林」の酢豚・八宝菜
きのこと卵の中華スープ
羽釜御飯
ビール、冷茶

母は、デパ地下のお総菜が好きなのである。10年ほど前は、東京大丸とか新宿伊勢丹の地下にあった「マダム・リー」という名前の中華総菜屋さんが大好きで、2週間に一度くらいはこの店のものを食べていたような気がする。
「マダムリー、なくなっちゃったのねぇ……」
と帰ってきた母は、デパ地下中華総菜屋さんの「桂林」の酢豚と八宝菜を買ってきた。ちょうど空心菜の炒め物でもしようと思っていたからこりゃちょうどいいや、と、今日は中華っぽい夕御飯にすることに。

中国野菜の空心菜は、夏が旬。その名のとおり茎の中が空洞になった、ちょっと変わった外見の野菜だ。葉の形状もなんだか笹の葉のようで、青梗菜とかターツァイのような肉厚の葉を中国野菜として見慣れていると、「……え?この葉っぱも食べるの?食べられるの?」なんて思ってしまう。ぐわーっと強火で炒め、にんにくを効かせて食べるのが美味しい。シンプルに塩と酒で炒めるのも良いし、オイスターソースでテラテラにするのも良いし。今日はにんにく味を堪能しようと、たっぷりのにんにくと炒め合わせて塩を強めにふり、あとは酒で軽くシナッとさせる程度に火を通した。にんにく嫌いの母には申し訳ない料理だけど、今日は他のおかずもけっこうあるので許していただこうということに。

ショキショキシャキシャキとした歯ごたえの空心菜を食べるのは久しぶりな気がする。青梗菜などに比べるとわずかにクセのある味だけど、その存在感のある風味がにんにくとビールにすごく合う。
「うまー」
「空心菜、うまー」
なんて言いながら、ひたすらショリショリと食べた。しかも好物の酢豚もある。今日は「どうしちゃったの?」というほどにテーブルに皿がたくさん並んだ夕飯だった。

8/12 (火)
初めてのフルーツ、「イエローピタヤ」
はちみつバタートースト
アイスティー(オレンジティー)

今日はお弁当作成で始まった朝。炊き込み御飯を作る予定で仕込んでいたので、まず羽釜に火を入れることから始まる。どうせ御飯が炊けるまで30分くらいはあるし、とこちゃこちゃとおかずと付け合わせと作っていった。私と息子の分も作成。いつもは
「ねぎはね、からいから、嫌いなんだよー」
「これはね、苦いと思うよ……」
などとイヤがる食材もそこそこある息子だけど、お弁当にすると不思議といやがらない。
「わぁ!おべんとうだぁ。ありがとね?おべんと、うれしいなぁ〜」
と今日も起きるなり台所をばたばたと走り回って周遊状態になった。水族館のマグロのようにお弁当箱の周りをぐるぐると回っている。なぜそんなにお弁当が嬉しいのか、ちょっと不思議。特に今日はやや渋茶色寄りの、かなり渋めなお弁当だというのに。

朝御飯はちゃちゃちゃっとトーストに。焼きたてのバタートーストにはちみつをたらーっと落としたものと、お供に昨夜仕込んでおいたオレンジティー。オレンジの香りのフレーバーティーの茶葉を水と共にポットに入れて一晩置いただけ。夏になると紅茶中国茶問わず茶葉がガンガン減っていくのはアイスティーにしてがぶがぶ飲んでいるせいだ。あまり良いお茶っ葉使うのもなんだかもったいないし……と、古い茶葉とか、それほど熱烈に好きではない茶葉とか、あえてアイスティー用に買ってきた茶葉を中心に使ってきていたのだけど、だんだん「アイスで飲むにはもったいない」というお茶っ葉ばかりが目に付くようになってきた。オレンジティーは、がぶ飲み用。

おうちで、おべんと
 ごぼうの炊き込み御飯
 牛肉とにんにくの芽の中華炒め
 水菜のナムル
 かぼちゃのバター焼き
 たくあん
 プチトマト
麦茶
イエローピタヤ

今日のお弁当のメインは、ごぼうの炊き込み御飯。醤油と酒を入れて茶飯のような色合いで炊いた。おかずは、牛肉とにんにくの芽をざざっと炒めてオイスターソースと醤油で味つけたもの、かぼちゃの薄切りをバター焼きにしたもの、水菜を数秒茹でて絞ってごま油や塩と和えてナムルにしたもの。それだけでは彩りが黄色と茶色と緑ばっかりで何だかなぁ……と思ったので隅っこにプチトマトを詰めた。御飯の隅には大ぶりのたくあん。子供にはあまり嬉しくない内容かしら……と思ったけれど、息子はやっぱり
「ぼくのおべんとうだー。……ぼくだけが、ぜーんぶたべていいんだよね?」
と確認したのち、わしわしと食べ始めた。トマトとかぼちゃから平らげ、にんにくの芽に「なんじゃこりゃ」という顔をしながらも、丁寧に御飯粒を集めて炊き込み御飯も片づけた。

「子供がどうしても野菜を食べないから、ハンバーグに細かく刻んで混ぜてます」みたいなやり方はどうも好きじゃなくて(それって野菜にもハンバーグにも失礼な話だと思うのね……)、「ピーマンってこんな味なんだから、こういう味だと知った上で食べなさい。食べてみて、それでもどーしても嫌いってんなら、多少は考慮してあげるから」と、特に子供向け大人向けを意識しないで息子にいろいろ食べさせてきたのだけど、けっこう良い方向に転んでくれたらしい。私自身の子供の頃を省みると、まことにあっぱれな息子の食べっぷりだった。なんで御飯より肉よりトマトや人参やかぼちゃが好きなのか、逆に不思議に思ったりすることも。

で、デザートは私もちょっとおっかなびっくりの未知なるフルーツ、「イエローピタヤ」。先日いただいてきたもので、コロンビア産のサボテン科の果物らしい。ちゃんと冷やした方が美味しいかな、と冷蔵庫に眠らせていたのだけど、そろそろ食べてみるかー、と出してみた。
「これなにこれなに?おかあさん?」
「……いやー、私にもよくわからないんだけどね」
「たべてみたいなー」
「やっぱりそう思う?気になるのよねぇ……」
と、縦にばっさりと両断。そのまま抱えてスプーンで中身をすくって食べた。

片手の手の平からちょっとあふれそうなほどの、ごろりと楕円をした黄色い果実、表面にはパイナップルの表面をもっと派手こくしたようなイボイボがまんべんなくついている。両断すると、中身は白。ココナッツの中身のような感じの白く弾力のある層の内側には、スイカの種の半分ほどの大きさの黒い種がプヨプヨしたゲル状の果肉の中に散らばっていた。こんな果物、外見も中身も初めてのものだ。

「よ、よし、食べてみるぞー」
「ぼくもたべるぞー」
親子で半分ずつ果実を持ち、スプーンを刺してみる。プルンと柔らかい果肉は、外見から感じられたくどくどしい印象は少しもなく、とても上品な味だった。ライチとかマンゴスチンに似た系統の、ふわっと鼻から脳天に突き抜けるような感じの軽い風味。さわやかな甘さで、わずかに感じられる酸味。南国のフルーツにありがちなねっとりさとか生臭さは全然なかった。おお、こりゃ美味しいや。見た目がなかなかすごいのでお菓子に加工するのはなかなか難しそうだけど(同じような黒いつぶつぶの、スイートバジルシードも一瞬流行りかけたけどすぐに消え去っちゃったし……)、旅行して見つけたらまた買いたいなと思わせられる美味だった。まだまだ日本への輸入は不安定みたいで、ほとんど流通していないらしい。くださった果物屋さんフルーツツリーの店長さん(=うどん仲間)に感謝。貴重なものを、ありがとうありがとう。

レタスと玉ねぎときゅうりのサラダ
コロッケ
フランスパンのバタートースト
ビール

本日のだんなは激ジョブ。本当はたらこスパゲッティの予定だったのだけど、「遅くなるからー」の連絡を受けて軽メシに変更となった。サラダにパン、それに母がたまたま「安かったの」と買ってきてくれたポテトコロッケ。昨夜の残りのおかずなどもちょこちょこっと出したらけっこう食べるものがたくさんテーブルに並んだ。

最近のお気に入りは、九州のアンテナショップで見つけて買ってきた「とんこつドレッシング」いかにもコッテリ系な味のドレッシングだけど、実際けっこうコッテリ味。しかもにんにく風味なもんだから、にんにく嫌いの母はそれを目にするたびに「うわー、いやーねー」と顔をしかめている。
「そっちのラーメンとか食べ物って、みーんな臭いんでしょ。にんにく臭いんでしょ」
なんて言っているけど、母が愛用しまくっているピエトロのドレッシングは福岡が本社だ。なんでピエトロはOKでとんこつドレッシングはNGなんでしょうお母様。地域差別はいけないと思いますお母様。確かに母の郷里の秋田にはにんにく風味の料理ってあんまりなかったような気がするけれども……。

お盆ということで、母は明日から3日間秋田に帰省。おみやげは、いぶりがっこ(←桜のチップでいぶした沢庵。郷里の名物のひとつ)がいいなぁ〜。

8/13 (水)
疲れた夜に、たらこスパ (夕御飯)
だんなのお祖母ちゃん家で
 リンゴと梨入りサラダ
 フライドチキン
 フライドポテト
 きんぴらごぼう
 お赤飯
 桃
 おせんべとかクッキーとか
 お茶とかコーヒーとかカルピスとかお茶とか

お盆である。だんなは本当はこの週、休みを取らない予定だったのだけど、
「13日におばあちゃん家に行こうと思ってるんだけどー?」
と、義妹と義弟に誘われて、結局だんなも休みを入れて「孫&ひ孫ご一同様」でお祖母ちゃん家に。今は亡きお祖父ちゃんのお仏壇があるお祖母ちゃんの家で、だんなは初孫、しかも待望の男の子だったということで、それはそれは祖父母に可愛がられていたらしい。そういえばアメリカから帰ってきた報告もまだしていなかったね、とお祖父ちゃんに報告がてら行くことになった。

義弟の車で東京市部にあるお祖母ちゃんの家に。だんなが幼少の頃、一時期このおばあちゃんの家に住んでいたことがあって、ゆえにここには「30年前のおもちゃ」「20年前のおもちゃ」がざくざくと残っている。
「あー、これこれ、私、子供の頃に遊んでいたよー」
と、今は大学生になっている従姉妹が呟くような、そんなおもちゃを大量に物置から引っ張り出してお祖母ちゃんたちは待っていてくれた。

お祖母ちゃんの頭の中では、「孫たちはとにかく良く食べる」という印象のままで時代が止まっているようで、今日もまたテーブルにはこれでもかと食べ物が用意されていた。皿に山盛りのフライドポテト、小豆を甘く煮てから炊き込んだお赤飯、甘辛くてりてりに炒め煮した、とても美味しいきんぴらごぼう。リンゴや梨が入るサラダ。それに、
「お肉あるよ。残ったらほら、持って帰ってもいいし、おやつにだっていいしね」
なんて、皿に山盛りの20ピース以上はあろうかというフライドチキン。いや、食べない、おやつにフライドチキンは食べないよ……と集まった5人の孫と1人のひ孫で首をぶんぶん左右にふって苦笑いしながら、ともかく大量の食べ物をせっせと食べた。

私は、自分の親戚を見ていて「おばあちゃんというのは、もうあまりものの考えや料理のレシピは変えないものである」という思いがあるのだけれど、だんなのお祖母ちゃんは違う。
「これね、お友達に教わったんだけどね、美味しいでしょう〜」
それまでは味のついていない小豆を使って炊いたお赤飯だったのに、突然数年前に甘い小豆のバージョンに変更したりする。海老フライのやり方なんかも変わったりする。ひ孫がいる年齢で、自転車乗ってお買い物に行っちゃったりするような元気な方なのだった。

お昼御飯食べて、あまり遅くならないうちにおいとましようかね……なんて最初は言っていたのだけど、途中から「賞金つき"ぼうずめくり"」が始まってしまい、
「ほぅら、一番の人には500円玉をあげよう〜」
と、おばあちゃんがガラス瓶にためておいた500円玉をじゃらじゃらと取り出し、皆、目をギラギラさせながらのぼうずめくり。え?500円玉?え?ていうか私はぼうずめくりも初めてなんだけど?と目を白黒させている私に
「おばあちゃん家ね、昔いつもこういうことやってたよ……」
「さすがに500円じゃなくて100円とかだったけどね」
「トランプ遊びでやってたよねぇ、こういうこと」
と義妹や従姉妹がにこにこと。

もう、ほとんどの孫が社会人になっているというのに、皆して「500円、500円、500円あったらお昼1食分じゃない!」と目がかつてなく真剣だった。何度かゲームをして、私も一度だんなと同数でトップに立ったりし、最後の回は「500円玉3枚に10円玉10枚」という高額の報償つきというものに。1600円の賞金を手にしたのは我が息子で、
「ほら、おじいちゃんが"ひ孫に勝たせてやれ"って言ってたんだよ」
「孫が束になってかかったのにダメかぁ」
「やっぱり、ひ孫は強力だね」
と、息子の前にはたっぷりのお小遣いが残った。帰りがけに仏壇に手を合わせて、私は心中「息子にお小遣いをありがとう」と呟いてみた。……そういえば私の方の墓参りは全然行ってないし(……秋田だし……)。

たらこスパゲティ
ビール
キウイ

昼からもりもりばあちゃん家であれこれ食べ、その後も間が空くことがなく桃だー菓子だーなんだーと食べ続けていたものだから、午後8時頃に帰宅してからもまだ胃に膨満感が。それでもシャワーを浴びたらなんとなくお腹が空いた気分になってきたので、たらこスパゲティにすることにした。数日前のスーパーの特売で買ってきたたらこは、大きなパックにみっちり入って400円ほど。数えてみると、10はら以上のたらこが入っており、スパゲティにして食べてもまだまだまだまだ余りそうだ。

我が家のたらこスパゲティは、その昔、「チューボーですよ!」で放映されていた時のもの。たらこをほぐして酒と和え、皿の上でバターと合わせてざざっと混ぜて、そこに茹でたてのスパゲティをあけてスプーンとフォークでかき混ぜる……というやり方は、手軽だしちゃっちゃとでてきて合理的に思えた。隠し味に昆布茶というのも、これまたなかなか良い感じ。番組では「フォークとスプーンを使ってタラコと和える手さばき」についても言及されていて、フォークとスプーンを手前と奥に突き立ててぐるりと時計回りに90度回してから麺を持ち上げて降ろして、というものだった。なかなか綺麗に和えられるので、これまたこの所作まで我が家の定番となった。我が家のたらこスパは、ちょっとばかりバターが多めだ。ちょっとばかりくどいけど、でも美味しい。

お祖母ちゃん家でずーっとあれこれ遊んでもらってきた息子はすっかり空腹だったようで、
「まだたべられるよ。もっとほしいな〜」
と子供用の分量にしてはかなりの山盛り量のスパゲティを盛りつけてもらい、それを綺麗に平らげてしまった。私もだんなも大好きだけど、どうやら息子も大好きらしいたらこスパ。すっごく簡単なんだけどねぇ〜。

8/14 (木)
与志万(銀座)で五目釜飯♪ (夕御飯)
チーズトースト
牛乳

今日は朝から寒く、冷たい雨……というか土砂降りがざーざーと。
「私が気合い入れて外出しようとするとこうだよ……」
と泣きそうになりながら、今日の午後から出かけようと思っていた外出予定は取りやめた。夜に銀座で御飯を食べることになっていたので、直前になってから出かけることにしよう。

出かけようと思っていたのは、1年のうちお盆の1週間だけ営業しているという、ちょっと奇妙なかき氷屋さん、「氷のさくらや」。以前、「シロップも手作りで、氷も厳選……ていうかき氷も食べてみたいなー」とこの日記に記したところ、「ここ、良いですよー」と教えていただいたお店だ。1週間だけの営業というのも気になって、行ってみよう行ってみようと予定していたのに、楽しみにしていただけに私の雨女ぶりがおおいに発揮されてしまったらしい。こんな寒かったらかき氷も美味しく食べられないよー……と、恨めしく思いながら居間に洗濯物を干し干し。

傷心の朝御飯は、せめて美味しいものをとチーズたっぷり切って乗せたチーズトースト。先日「カルフール」でチーズをあれこれ買ってきたのだけど、その1つにエダムチーズがあり、「エダムチーズって、トーストに乗せて美味しかったっけ……?」と思いながらスライスしてパンの上にまんべんなく散らして焼いてみた。ちょっとばかり独特な風味が漂うチーズだけれど、とろ〜んととろけて良い感じ。一度溶けたチーズがまた固まってしまわないうちにと口をはふはふさせながらせっせと食べた。体があったまって嬉しいなぁと思えるあたり、今日は本当に寒いらしい。

他人丼
レタスと玉ねぎときゅうりのサラダ
麦茶

「明日はね、かき氷食べにお出かけするんだよ」
と息子に昨夜伝えていたものだから、
「おかーさんおかーさん、かきごおりは食べないの?」
息子はちょっと不満そう。おかーさんも食べたいのよー、でも、大雨だし寒いしどうしようもないのよー、と家でだらだら。

せっかくだから外で美味しい昼御飯も食べようか?なんて言っていたのに、お昼は我が家でプチどんぶりということになった。半端な量の豚薄切り肉があったので、豚丼かな、いや、卵も入れて他人丼だな、とうりゃうりゃっと作ってみた。要するに親子丼の鶏肉と豚肉に変えただけのもの。息子のどんぶりによそった肉はざくざく細かく切ってやった。

親子丼はすばらしき組み合わせの食べ物であると思うけれども、他人丼もそれはそれで悪くない。豚独特のテロンとした脂の味が鶏と違ったおいしさだし、「肉喰ってます」という雰囲気が強めに漂うのもいい。スープも作れば良かったなーと思いつつサラダと一緒にばりばり食べる。

銀座 「与志万」にて
 サービスコース \1800
   (レバー・正肉・砂肝・つくね・手羽先・うづら玉子・ピーマン・ぎんなん・とりスープ)
 ねぎま \200
 かわ \200
 にんにく \220
 五目釜飯 \900
 焼酎 黒瀬(焼き芋・鹿児島 \450
 ビール・梅酒・日本酒

今日の夜は銀座で焼き鳥。留学仲間だったMさんが、我が家と前後して帰国したのだけれど地方に転勤することになったらしい。「お別れ会をしましょ」と、夫人まじえて一緒に御飯を食べることになったのだった。
お店は「与志万(よしまん)」。6年前くらいから行くようになった、銀座の裏通りにある小さな焼鳥屋さんだ。釜飯が名物。

最初にこの店をみつけたきっかけは『Hanako』の銀座特集だったように思う。『Hanako』に載る記事そのものはそれほど信用していないのだけど(すごく良い感じの店も載ってれば、"なんでこの店が!?"というのも数多く載っていたりするので)、手頃な値段の焼き鳥屋さん、しかも釜飯が美味しくて……というその内容に
「ここはアタリかも」
「うん、けっこう好きそう」
と新婚ほやほやの時代にだんなと2人で食べに行ったのだった。すっかり気に入っちゃって、以来「銀座で焼き鳥」というとここを目指してしまう。息子はお腹の中にいた時代にも来てるし、生まれてからも何度か一緒に連れてきている。だんなは友人や同僚なんかとも来ているようで、大将はだんなの顔を覚えてくれていたようだった。「お、お子さん何歳になったの?」なんて聞かれたらしい。

羽釜で1つずつ時間をかけて炊かれる釜飯は、焼き鳥と一緒に最初の段階でオーダー。鶏そぼろが入る「鶏そぼろ釜飯」「五目釜飯」がやはり一番美味しいけれど、シンプルな塩味の鮭釜飯とか牡蛎釜飯もとても美味しい。私は久しぶりだし、と豪華具沢山の五目。ちょっとお得な焼き鳥のサービスコースを注文し、1本1本順に出てくる焼き鳥を堪能した。それだけじゃ物足りなくて、皮とかねぎまも追加注文。

久しぶりのこのお店、以前は「これでなぁ、お酒の品揃えが良ければ最高なんだけど」なんてイメージだったのだけど、今日来てみたら十数種類の焼酎がメニューに載るようになっていた。ビールとチューハイ類と、日本酒は「日本酒」という一種類だけ……という感じだったと記憶しているのだけど、九州の芋焼酎や麦焼酎があるのはなかなか嬉しい。あまり焼酎は飲み慣れていないので味の違いなどもまだ全然わからないのだけど、「焼き芋焼酎なんてあるよー」なんて、初めての焼き芋風味の焼酎を飲んでみたりした。本当に後味が焼き芋で、ちょっと笑える。

中がレアな状態にプルンと焼かれたレバーは臭みが全然ないうえにふわんと甘く、コリコリとした食感の渋い味の砂肝も良い感じ。炭火と粗塩で焼かれた串の数々は、どれも素朴な外見の素朴な味。カウンターの他は8人がけぐらいの大テーブルと2畳の小上がりだけという空間で、畳のその席に「はーい、お次はうずらです」と、焼きたての串を持ってきてくれる。
つくねには細かく叩いた軟骨が入っているようで、コリコリとした粒が感じられる力強い味。息子も一緒に、正肉だ卵だポテトだと嬉しそうに串持って食べていた。「それ、なぁに、なぁに?」と、突き出しの煮物も奪うし、銀杏も奪うし、つくねも奪う。私も子供の頃、親に居酒屋や焼鳥屋に連れて行ってもらった記憶がけっこうあるけれど、「ぎんなん、おいしいねぇ!」なんて言う5歳児はちょっとイヤだ。

たらふく焼き鳥を食べたトドメは釜飯。鶏の油が薄く膜を作っているようなこってり味のスープと共に、白菜の漬け物、そして各自の前に並べられた釜飯。つくねと同じ、細かくした軟骨も混ぜられた甘辛てりてりの鶏そぼろが乗る釜飯は、御飯にも鶏のスープが染みていてほんのり薄茶色。五目の具は、鶏と錦糸卵、筍、椎茸、海老、グリンピース、紅生姜。そこにほんのりお焦げがついた釜飯は、6年前と変わらない美味しさだった。釜飯と一緒に、テーブルにはなぜかお銚子が一本。シャイな大将が
「遅くなっちゃってアレなんだけど……サービス。飲んでって」
と炭火の前でニコニコしていた。ありがたく猪口を傾けながら、とろんと甘く上品な冷酒をくぴくぴと飲む。ビール飲んで焼酎ロックで飲んで、梅酒飲んで、さらに日本酒飲んで、と私はかなりふにゃふにゃになっていた。

酒呑んで焼き鳥つついて、あげくの釜飯なものだから、1人1つの釜飯はさすがに食べきれるものではなく、残ったそれを「すんません、包んでくれますか?」と伝えるとちゃんとアルミホイルにくるんで持たせてくれる。「残ったら持って帰ればいいや」と、だから毎回安心して釜飯を頼んじゃうのだった。やっぱりこの店に来たら釜飯ははずせないもので。
あー、美味しかった。

銀座 「ガルリカフェ ドゥ」にて
 アイスキャラメルティー
 ミルクレープ

「最後にお茶でもしようかねー」
なんて、あれだけいろいろ食べたのに、喫茶店に入ってケーキも食べちゃう私たち。
銀座で働いていた時、「あーもう、外回りはイヤ!」とばかりに、空き時間に時々お茶しに寄っていたのが、銀座に何店舗かある「ガルリ・カフェ」という喫茶店。コリドー街沿いにある店が特に好きで、薄暗い店内で文庫本を捲ったりしていた。
「ここねー、ドゥリエールのケーキが食べられるんだよー」
なんて言いながら入店し、結果全員がケーキを注文することに。あれだけ焼き鳥食べたのに、釜飯も食べたのに、更にケーキ。明日は節制することにしよう……と決意しながら、私もミルクレープをぺろりと食べた。

Mさんは、来週から関西に行く。仲良しさんが1人東京から消えて、だんなはちょっと寂しそうだった。アメリカでめちゃめちゃ仲良くなった数少ない1人だもんねぇ……。

8/15 (金)
豚バラ肉のベトナム風煮込み丼 (夕御飯)
「木村屋」の
 チョコデニッシュ
 ツナサラダパン
カフェオレ

昨日は久しぶりに銀座に行ったのだけど、
「明日の朝食……。木村屋に寄るか……」
と、夕食前に木村屋でお買い物してきた。デパ地下などにも美味しいパン屋さんはごろごろあるけれど、なんとなく「銀座というと木村屋よね」という感じがする。本店の入り口近くのカウンターで普通にあんぱんを買うのも良いけれど、あの店の奥にはデパ地下などにある木村屋では見かけることのない雑多な種類のパンが並んでいる。やけに本格的な味がするフォカッチャやカルツォーネ、デニッシュなどの甘いパン。「木村屋はあんぱんだけじゃないんですよー」と言わんばかりの品を見るのが好きで、ついあの本店に足を向けちゃうのだった。

久しぶりの木村屋には、白桃のコンポートを使ったというパネトーネなんかも売られている。カレーパンも美味しそうだな、シンプルなチョココロネもいいな、キッシュもあるじゃん……としばらく見て回った結果、チョコデニッシュを家族の人数分と、あとはデニッシュ生地に甘くない具が挟まった総菜パンを2個買ってきた。だんなはミートローフを挟んだもの、私はツナサラダを挟んだもの。
「さぁー、御飯にしましょー」
と今朝起きるなり総菜パンをオーブンに放り込み、だんなはコーヒーの準備をする。5分ほどもオーブンで焼いたら、良い感じにサクサクにあったまった。

木村屋のデニッシュ類のレベルはかなり高いと思う。生地のサクサク感などはまだまだ更に美味しいお店が多いと思うけれど、総菜パンに挟む具の味にもしっかりこだわっていて「パンを好きな人が作ったパンなんだなぁ」という情熱のようなものが伝わってくる。チョコパンもツナパンもすこぶる美味しかった。

昨夜の釜飯の残り
ウーロン茶

今週一週間だけオープンしているかき氷屋さんに行こうと、今週ずっとわたわたと機会を狙っていて、昨日か今日かに行こうと思っていたのに、昨日も今日もずーっと雨。ひたすら雨。しかも寒い。
「ああああ、今日もかき氷どころじゃないって感じ……」
と恨めしく外を眺めつつ、今日も外出を断念した。小雨だったらともかく、外はずーっと土砂降りだ。

「おかーさん、雨だねぇ〜」
「んー」
「おでかけ、できないねぇ?」
「んー」
息子の問いかけにもやる気のない返事を返してしまいつつ、昼御飯は昨夜の残りの釜飯。昨夜入った焼鳥屋さんでだんなが頼んだ鶏そぼろ釜飯がほんの一膳分ほど残り、包んでもらって持ち帰ってきたのだった。ざくっと粗めの歯ごたえある鶏そぼろが混ざる、うす茶色の御飯。「卵のごはんがね、食べたいなんだよー」という息子には卵御飯にしてやって、私は1膳弱の釜飯をさらさらと。

豚バラ肉のベトナム風煮込み丼
おばあちゃんのきんぴらごぼう
サラダ
冷茶

母は現在お盆ということで帰省中。だんなは職場の飲み会。珍しく私と息子だけの2人の夕飯となった。
一昨日も昨日もご馳走を食べてしまったものだから、お魚でも買ってきて油っけのない粗食的夕飯にしようと思っていたのだけど、冷蔵庫の中に入れっぱなしになっていた豚バラ肉の塊と目が合ってしまった。もう今日明日中に食べないとヤバイ、という感じ。ほんわかとヤバめの香りが漂いだしているそれをなんとかしなきゃなぁ、とベトナム風煮込みにすることにした。醤油とナンプラーと砂糖と酒とにんにくで数十分揉みこんだ一口サイズの豚バラに、水を加えて煮ていくだけ。途中から殻を剥いたゆで卵も入れ、添えものにと小松菜を軽く茹でておいていた。

2時間ほどかけて煮込んで、すっかり茶色くテロテロな色合いになった豚バラ肉を御飯の上に盛りつける。小松菜を添え、煮汁で茶色く染め煮込んだ卵も添え、予定していた粗食風とはうってかわった豪華飯になった。一昨日、おばあちゃんの家でいただいてきたきんぴらごぼうもテーブルに出し、サラダもたっぷりと準備。とにかく豚肉が濃いめの味になってしまったので、その他のものを一生懸命食べようという体制を整えた。テーブルには、そこそこ野菜たっぷりの状態に。丼を盛りつけて写真撮った後、「……あ、これじゃなんかお肉、多いかも……」と鍋の中に戻してみたりした。

醤油がベースでナンプラーはほんの大さじ2程度しか入っていないにも関わらず、そうして煮た豚バラ肉はナンプラー風味がけっこう強く漂ってくる。新鮮な香菜をぶわーっと散らしたら美味しいだろうなぁと思いつつ、小松菜を箸休めにもりもりと食べた。
……あしたこそ、さっぱり飯を。

8/16 (土)
寒いので肉じゃがが美味しい……
おばあちゃんのお赤飯
おばあちゃんのきんぴらごぼう
抹茶入り玄米茶

お盆はおばあちゃんやおじいちゃんが身近に感じられる季節。冷蔵庫内には先日だんなのおばあちゃん家でいただいてきたお手製のお赤飯やきんぴらごぼうが入っており、さてそれを朝御飯に食べようかねと思っていたら秋田から大きくはないけれどずっしり重い段ボールが届いた。秋田に帰省していた母は昨夜遅くに帰宅している。母が秋田から送ってくれた荷物の中にはあきたこまちが5kg、それに伯父や伯母が畑で作ったのだという野菜類が入っていた。それと、だんな大好物の「いぶりがっこ」。

田舎の家はやたらと広く、とりわけ広い敷地の家では裏庭に自分の家で食べられるようにと何種類もの野菜を作っていたりする。琵琶の大きな木もあったりして、夏から秋にかけてはキュウリや茄子などがぼんぼん収穫できた。送られてきたのはじゃがいもに茄子にトマトにとうもろこし。どれも我が家近所の店で買うものより小ぶりだったりいびつだったりするけれど、むちむちしていていかにも美味しそうだった。

とりあえず野菜は夕御飯に回そう、と、朝御飯はだんなのおばあちゃんの料理にお世話になることに。甘く下煮した小豆が入るお赤飯に、こってり味にキラキラ光るきんぴらごぼう。お赤飯は大好物だ。あらゆる餅米料理のなかで一番好きと言っても過言ではないほど、私はとにかくお赤飯が大好き。塩味のごく普通なお赤飯も美味しいけど、甘い小豆のお赤飯もおばあちゃんの味だ。あとでお寿司食べに行こうと言っていたのについがふがふと食べてしまった。

千葉 「銚子丸」にて
 クジラ
 カツオ
 焼きトロサーモン
 ウニ
 中トロ
 手巻き 穴キュウ
などなど

つい先日、愛用していたケンケンの目覚まし時計がぶっ壊れてしまった。「チッチチッチ……時間だヨ、早く起きろ……ドッカーン」と毎朝派手な音をまきちらして爆弾抱えたケンケンが起こしてくれていたのだけど、誤って床に落としてから鳴かなくなってしまった。これじゃ毎朝大変だということで、千葉駅前にあるヨドバシカメラに目覚まし時計を買いに行った。一昨日からの大雨で、快速電車などのダイヤは未だ乱れまくっているらしい。今日こそは晴れるかと思っていたのだけど、今日も雨だ。しかも今日も寒い。

目覚まし時計を購入し、ついでに本屋もぷらぷらし、100円均一ショップなどもひやかした後、「お寿司が食べたいね」と決めうちして向かったのはチェーン回転寿司の「銚子丸」。午後1時を過ぎた雨の土曜日は空席もあったけれどかなりの盛況ぶりだ。眺めていると、「回転してようがしてまいが、全ての皿を注文して握りたてのものを食べる人」とか、「ひたすらひたすら回転している中から150円の皿ばかりを取っている人」なんかがいたりして、ちらちらと観察していると面白い。私たちは、回ってくるものも取るし、好きなものが回ってなかったら注文するし、値段が高めのものは回っていても注文して握ってもらっちゃったりする。今日は黒板をちらりと眺め、
「クジラくださーい」
「カツオもくださーい」
と、気になるものをあれこれ頼んでしまった。

ぎらぎらとした深い紅色の切り身のクジラは、やはりマグロなどよりは牛肉に近い味なように思えた。とろりと柔らかくて、ほんのり独特なケダモノ臭さもある。ほのかに甘さもあって、けっこう美味しい。私が子供の頃には「クジラの竜田揚げ」なんてメニューはすでに給食に出なくなってしまっていたので、クジラは懐かしい味というわけではないのだけど、クジラという食べ物にはいろいろと複雑な背景をイヤでも感じてしまう。なんかこう、美味しんぼの山岡さんみたいな顔つきになっちゃうというか。

朝にしっかりお赤飯を食べた後の、ちょっとばかり半端な時間の昼寿司だったので、けっこうさらりとした皿数で店を後にした。皮を焦がしたサーモンに玉ねぎの薄切りなどを乗せたものとか、食べ応えのあるサイズの穴きゅう手巻きとか。

茹でとうもろこし
茹で小松菜のベトナム風角煮かけ
肉じゃが
いぶりがっこ
豆腐と油揚げのみそ汁
羽釜御飯
ビール、麦茶

秋田からやってきた野菜を眺めて、夕飯の献立を考える。とうもろこしは、とりあえず茹でて食べることに。ちょうど食べようと思っていた牛の薄切り肉があったので、届いたじゃがいもを使って肉じゃがにすることにした。この涼しさ……というか寒さでは肉じゃががきっと美味しいに違いない。どころかおでんや鍋ものまで恋しくなってくる気分だ。昨夜の角煮の残りは茹でた小松菜の上に添えて食べちゃうことにして、そして私は「いぶりがっこ」をざくざくと刻む。

「いぶりがっこ」とは、いぶしたがっこの事。「がっこ」とは、東北弁で「お漬け物」を指す。牛は「べっこ」とか「うしっこ(発音はうすっこ、に近い)」言ったりして、あちらの言葉は「っこ」とつく名詞がけっこう多い。いぶりがっこは、桜のチップで燻製した沢庵で、強く漂う燻製臭がかなり快感な味わいだ。私はもとより、だんなが大好き。以前秋田に行ったときは、「あきたこまち、うめー!いぶりがっこ、うめー!」と食卓からなかなか剥がれなかった私の夫なのだった。

間違いなく我が家で一番いぶりがっこが好きなのはだんなだろう、とずっと考えていたのだけど、本日発覚したところでは思わぬところに伏兵がいたようだ。
「これ、なぁに?ぱりぱり?」
と、「いただきます」と手を合わせるか合わせないかのうちに、いぶりがっこの皿に手を伸ばした息子は、よっぽど気に入ったらしく肉も野菜もそっちのけで御飯の上にいぶりがっこを乗せてパリパリパリパリ食べ始めた。一気に数切れ食べた後、また皿に手を伸ばして3枚ほど鷲掴んでまた御飯の上に乗せている。お前はばぁさまか、というほど、味噌汁と御飯を前に彼は今日の夕飯の間ずっとポリポリポリポリやっていた。ざくざく切ったはずなのに、いぶりがっこはいきなり激減。

そして肉じゃが。「やっぱり肉じゃがは家庭の味よね」と、結婚直後から「我が家の肉じゃがの味」なるものを確立しようと努力していたのだけど、最終的にたどり着いたのは小林カツ代さんのレシピ。かつてのブームだった「命のだし」を取って肉じゃがを作るやり方も試したし、野菜を下ゆでするやり方なんかも試してみた。でもあっちは上品すぎる、こっちは手間がかかりすぎる、といつのまにかふるいにかけられていき、そうして残ったのが小林カツ代さんのもの。使う鍋は、フライパン。玉ねぎを炒め、しんなりしたらフライパンの縁近くに移動させ、中央に肉を入れる。で、肉の上から醤油と味醂と砂糖をどばばっと投入し、軽くほぐしながら肉に調味料の味を煮含め、しかる後にじゃがいもと水を入れたら蓋をして10分。おそろしく簡単だし、おそろしく早くできる。じゃがいもの味の含みはちょっと物足りなかったりするのだけど、肉にはしっかりコテッとした味がついていてかなり良い御飯の友になる。

秋田から届いたじゃがいもは、メークインと、赤じゃが。
「あ……これ……」
アメリカでさんざん見かけ、買っていたその赤い皮のじゃがいもをつついていたら、
「あ、これ?ねぇさんが"アンデスなんとかって芋だよー"って作ってたやつだわよ」
と、母。うん、ビーフシチューなんかによく入っていたよ……と懐かしく思いつつ、じゃあ赤じゃがはアメリカ飯を作るのに使わせてもらおうかな、と密かに思ったのだった。

8/17 (日)
友人Mさんお手製、水餃子。うま〜
黒い恋人
「KIHACHI」の黒胡麻エンガディナー
牛乳

今日は電車に乗ってだんなの高校来の友人、Tさんの家にお出かけ。仕事柄「お盆が休み」というわけではないTさんから以前からずっと「遊びにおいで〜。美味しい鰻をおごるから」と言われていたのだけど、やっと今回予定が直前になってすりあった。私とだんなが結婚する前から既に何度か会っていたりして交流があったTさんだけど、昨年、非常にお似合いな女性と結婚し、今は奥さまのMさん交えて家族間交流している。

「12時に先方に到着するには……」
「10時半頃出ればいっか?」
「いや、途中の駅でおみやげ買っていきたいから……」
と、結局10時頃に家を出ることに。
9時過ぎに起床してから速攻洗濯機を動かし(うち、毎日バスタオル洗って乾かしてるから毎日洗濯機が稼働するのね……)、軽くお腹に何か入れておこう、と、冷蔵庫や菓子置き場から発掘したお菓子類をちゃちゃっとつまむことにした。

北海道銘菓「白い恋人」の黒チョコバージョン、我が家通称「黒い恋人」をぽりぽりつまみ、先日留学仲間のMさん夫人に「おせんべつ〜」といただいたKIHACHIの黒胡麻エンガディナーを食べる。本来の「エンガディナー」なる焼き菓子は、くるみのヌガーをクッキー生地でぐるりと巻いたものなのだけど、KIHACHIのそれはその名のとおりくるみではなく黒胡麻のヌガーが詰まっている。噛んだら歯が真っ黒になっちゃうんじゃなかろうかと思うほどに濃厚な黒い黒いエンガディナーをもにゅもにゅと食べ、いざいざ出発。

茨城牛久市「やす川」にて
 特上うなぎ
 肝焼き

我が家の住む千葉県から、T夫妻の住む茨城県へ。さぞ遠いかと思いきや、東京を通らずそのまま北上する形の電車に乗っていくと、思いの外早く到着することができた。何しろ電車がどれもガラガラなので非常に快適。これならちょこちょこ遊びにゆけそうだぞしめしめ、とほくそ笑む。

昼御飯には、車でちょっと行ったところにある噂の鰻屋さん。
「もうね、ウチに来るお客さんには、絶対にここの鰻を食べてもらいたいの〜」
と夫婦共々大絶賛のそのお店は、すっかりTさん、顔なじみであるらしい。「ん〜……でもね、月に一度くらいしか来てないと思うけど……」って、月に一度同じ鰻屋に通っていれば、そりゃ覚えられると思います。多分。

遠慮せずにゴチになった鰻は、「特上」。メニューには「天然もの鰻 時価」なんておそろしい項目もあったのだけど、それを除いて一番お高いメニューだ。「どっしぇー」とのけぞりたくなるほどの金額が「特上」の下にあったのだけど、やっぱり遠慮せずゴチになる。
「肝焼きも食べる?」
「たべるたべるー♪」
と、肝焼きも1人1本。まっさか息子は肝焼きを食べないだろう……と思っていたのだけど、軽い朝食しか摂ってなかったこともあってか、十数分待ってやってきた肝焼きに息子はえらい執着をみせた。「たべる、たべるよー、あーん」と、ほろ苦さがあり黒くテラテラと光る肝焼きを1/4串分ほども平らげた。ムチムチと弾力があり、噛みしめるとほろんと崩れそうな肝焼きは、みっちり串に刺さっていてかなりのボリューム。甘すぎないタレがかなり良い感じで、鰻重への期待を高めつつ、またじりじりと鰻重が来るのを待つ。注文が入ってから蒸して焼いていく昔ながらのスタイルを守っているお店のようで、日曜の午後、座敷でぼへーっと待つ大人4人と幼児1人。いろいろと積もる話もあるもので、わいわいやっているうちに鰻重がやってきた。

特上鰻は、でかかった。四角い塗りの容器から、3切れ並べられた鰻はどれもはみ出している。いかにも柔らかそうなふくふくとした印象の鰻に、肝吸い、漬け物の小皿が添えられていた。漬け物もすごい品数が乗っていて、自家製だというそれは白菜にキュウリに沢庵に茄子に生姜。どれも塩味控えめで野菜そのものの美味しさが感じられる、添え物として食べるにはもったいないほどの美味しさだった。

「いいなぁ〜」
「美味しい鰻屋さんが近所にあって、いいなぁ〜」
と言いながら、息子の小さな椀に鰻と御飯を取り分けてやりつつ、がふがふと食べる。ここ数年、"蒸さずに焼く"という関西スタイルの銀座の鰻屋さんが気に入っていて、そこのものばかりを食べていたのだけど、「あぁ、蒸して焼く鰻もこんなに美味しかったんだー」と改めて思い知らされた。表皮も中も歯ごたえがほとんど変わらないほどに、どこもかしこもふくふくと柔らかい。上品だけど薄いというわけでもないタレの味に、とにかく巨大な鰻。私は漬け物をそれほど「美味しい!」と思って食べることはなかったのだけど、ここのお漬け物は全てしみじみ美味しく食べられた。しかもデザートにメロン。満喫致しました……。

Mさんお手製の
 えびせん
 大根と帆立のサラダ
 豚の角煮と漬け卵、青梗菜添え
 水餃子
 ポテトと角煮の揚げ餃子
 中華おこわ
 黒タピオカのデザート
 ビール・アイスティー

遊びに行く約束をした時、
「もしも良かったら夕飯も食べていかない?」
と誘っていただいていて、「水餃子とか……どうでしょうか?」のMさんの言葉に「ぜひぜひ!」「喜んで!」と夕飯までもいただいてしまうことに。
かくして昼食後、結局9時過ぎまでだらだらとお邪魔することになった。奥さまは現在妊娠中。最近は具合が悪くて寝ていることも多かったらしいので、体の負担にならないと良いのだけれど……と心配しつつも、とても楽しい時間を過ごさせていただいた。しかも、「水餃子くらいしか作らないから、ほんと、大丈夫」なんて言っていたのに、夕飯にはおそろしいほどの料理がテーブルを埋め尽くして(というか実際溢れて)いたりした。

夕飯までの数時間は、「おそとで、あそぶー」という息子と共に男連中が外で遊び始め、私とMさんはのんびりお茶。Mさんは親戚が台湾にいるということで、中華料理や中国茶に造詣が深い。それも、「ブームだから」と上っ面を舐めたような"イマドキの中国茶の楽しみ方"などではなく、日常あたりまえにお茶を楽しんでいる人なんだなぁと思わせられるすてきなお茶の楽しみ方だったり料理の楽しみ方だったりする。使い込んだ茶器がちゃっと並べられ、「このお茶ね、美味しいよって、親戚にもらったんだけど……」と軽く香りをかいでみてからさらさらっと小さな中国急須に茶葉を入れ、お湯をたっぷり入れる。あれこれ難しい道具があるわけでなく、ごく簡単に淹れたお茶を、盆の縁でさっと底をこすって水気を切ってから椀を渡してくれた。
「この、水切るやり方ね、右回りだと"歓迎"の意で、左回りだと"これで最後だから、もう帰れ"って意味なんだって」
なんてことを教わったりした。

で、夕御飯。
実のところ、Tさんは少々味覚音痴の気があったりする。いや、音痴というより、人が通常感じる「美味しい・普通・美味しくない」という区分けに対して、Tさんのそれは「美味しい」と「普通」の境界が曖昧で、かつその2つの範疇が非常に広い……という感じ。「ん〜……これはなんというか、ありきたりなフツーな味だなぁ」と私やだんなが思うものでも、Tさんにとっては「美味しい」だし、「これは良くできた!大傑作!」と思うオススメ料理を出したとしても、Tさんにはやっぱりそれは先の評価とさしてかわらぬ「美味しい」だったりする。あまり派手な反応も見せてくれる方ではないので、料理が好きな人間にとっては、少々張り合いのない人だったりした。だから、美味しいものが好きで、料理が好きなMさんはほんのり物足りない思いをしていたらしい。

だから……というわけではないのだろうけれども、今日のご馳走は本当の本当にすごかった。台所に立って準備するMさんの姿は、新妻というより、「おかあさん」に近いものがある。「なんで新婚さん家庭にこんな鍋が……」と笑っちゃうような二段重ねの蒸し器とか、大きな煮込み鍋がコンロの上で湯気をたてていた。「これはね、台湾で言うところのお赤飯みたいな感じ?」と、干し海老がたっぷり入ったおこわが蒸し上がり、数日前からせっせと準備してくれていたのだという水餃子が次々茹でられていく。こってり味を含んだ角煮に、大根と帆立のサラダまであった。
「皮がちょっと余っちゃったからー」と、ちゃちゃちゃっと残った餃子の皮で揚げ餃子まで。茹でたじゃがいもにほんのりカレー風味をつけ、小さく切った角煮を中心に団子にして包んで揚げた餃子は皆に好評で、ビールの友にすぐに消えさってしまった。

小さくはない居間のテーブルに料理を並べ、それじゃ足りなくて段ボールまでテーブル代わりにしながらの豪華夕御飯。醤油と酢とごま油を混ぜてタレにした水餃子はもちもちプルプルとしてすごく美味しかった。キャベツが入っているそうで、あんはとても優しい味。息子は餃子が大好物だけれど、それにしたって「ちょっとお前、それは食い過ぎだ」と止めたくなるほどひたすら餃子を食べていた。15〜6個は軽く食べたはずだ。
「せりあさんのね、日記読んでて、"いったい何個包めばいんじゃこらー"と思いながら包んだの」
とMさんは笑っていたけど、100個作ってくれた餃子のそのほとんどは消え去ってしまった。さすがに他のおかず全てまでは食べきれず、おみやげにおこわを包んでもらってお持ち帰り。

ここんところ、遊びに来た友人をもてなすことはあっても、もてなされたことってほとんどなかったので、とても楽しく美味しいひとときだった。人に作ってもらう御飯というのは美味しい。料理好きな料理上手な人が作った料理なら、なおのこと美味しい。
「Tさんったら、幸せモノ〜」
「もっと感謝しなきゃだよ」
なんてTさんをつっつきながら帰路についたのだった。帰宅は11時過ぎ。楽しかったぁ。