アイスティー
月曜日〜やる気のない月曜日〜
……とぼへぼへしつつ、昨日の残りのおかずでやる気のない朝御飯。冷えた御飯はレンジをチーン、小鍋に移しておいた中華風うま煮はコンロで温め、ちなみにうずらの卵の残りは5個。
「昨日、僕はお代わりしたから6個くらい喰ったな」
「私は4個だ……」
「ぼくはね、ぼくはねー」
「じゃあ、君が1個多く喰うということで」
「おっけー」
「ぼくはねー、いちごのカリカリを食べるよー」
と、台所で一家そろってごにょごにょと蠢きながら準備を整えた。
豚肉たっぷり、海老たっぷり、味はさっぱり風味だけど栄養はありそうな中華丼を朝からもりもり。そして胸焼け(またかい……)。
牛乳
だんなは大学、息子と2人のお昼御飯には、冷蔵庫から先日買ってきた、怪しい筒入りシナモンロールを出してみた。冷蔵コーナーに売られているそれは、外見は小型の缶ジュースという感じ。ビスケットだのクッキーだのと色々な種類のものが各種メーカーから出ているのだけれど、どれも共通して"缶(というか紙筒)をあけ、整形済の生地をオーブンに並べて焼くだけ"という簡単設計になっている。このシナモンロール筒は5個入りで、筒の底には別容器に入ったシュガーコーティング用ペーストが入っていた。
オーブンで焼くこと13分。確か"14分から16分焼いてね!"とパッケージに書いてあったように思うのだけど、表示通りの温度で焼いたら見事に焦げた。パッケージにはちゃんとシナモンロールチックな外見のシナモンロールのイラストが書かれていたにも関わらず、できあがったのは"メロンパン失敗"みたいな外見の、なんだか得体のしれないもの。今ひとるロールな形状にはなっておらず、膨れすぎたクッキーのような怪しいものになってしまった。あんまりな外見なので、当初は塗らない予定だったシュガーコーティングを塗ってごまかしてみる。焼きたてのシナモンロールの上にバターのような柔らかさのペーストを落とすと、熱で溶けて垂れていき、美しくそれっぽいシュガーコーティングになった。
「シナモンロールだよ」
「シナモンロールなの?」
「シナモンロールだってば」
「そっかー、シナモンロールかー」
と、無垢な子供に"これがシナモンロールだよ"と間違ったイメージを刷り込みつつ、牛乳傍らに齧ってみる。
生地そのものはほとんど甘さがなく、これでもかと香るシナモンの香りがなかなか良い感じ。そのまま齧るとあまりにも甘さがなく、シュガーコーティングの存在があって丁度良い味になった。けっこう食べやすく、味も悪くない。外見に目をつぶれば、手軽な一食にはなってくれそうだった。
シナモンロールって、かなり好きな味ではあるんだけど、何しろ甘くて甘すぎてあんまり外では食べる気になれない。本場CINNABONのシナボンも食べてみようと思いつつ……あのシュガーコーティングを前にすると何となく後ずさってしまう(私は甘党なはずなんだけれども……)。
羽釜御飯
Hard Lemonade
数日前から、我が夫はうるさかった。
「夕飯、何にしようか。……まーぼーどうふ?」
「豆腐あったよねぇ……マーボードウフ?」
「ひき肉買ってってさー、麻婆豆腐?」
と、麻婆豆腐麻婆豆腐と非常にうるさい。私の夫は"餃子熱"とか"牛丼熱"とか"焼肉熱"にすぐに冒される人なのだと思っていたけれど、実は"麻婆豆腐熱"にも簡単に冒されちゃうらしかった。
「そんなに麻婆豆腐食べたいの?」
「えー、だってさ、久しぶりだよ麻婆豆腐。食べたくない?麻婆豆腐」
熱っぽい目で真顔で「食べたいなぁ、麻婆豆腐……」と呟かれ、昨日ひき肉を、今日豆腐を買ってきた。
"その料理を愛する者がその料理を作るべし"
の我が家の掟にのっとり、だんながせっせと鍋をふるう。できあがったのは、どんぶりにたっぷりの大量麻婆豆腐だった。だんな好みの"肉肉"して"汁汁"しているやつだ。辛味少なめ。
明日からしばらく遊びだ旅行だと家を空けることが続くため、現在ぎりぎりの食材しか冷蔵庫には入っていない。サラダ野菜を買っちゃうと余らせちゃうしね、と、サラダもなくスープもない麻婆豆腐だけの夕御飯となった。ハードレモネード(アルコール入りレモネード)をぐびりぐびりと飲みつつ麻婆豆腐をつついた後は、御飯を片手に麻婆豆腐。そのうち御飯の上に麻婆豆腐を盛りつけて麻婆丼とし、最初から最後までとにかく麻婆豆腐な夕御飯だ。
明日はちょっくらケンタッキー州までプロレス見に行ってきます。
冷凍ミニフィッシュバーガー
牛乳
昨日、一緒に買い物に行っただんなが冷凍コーナーで
「これ……気になるんだよなぁ……いっぺん、買ってみたいんだよなぁ……」
と怪しく巨大な箱を前に唸っていた。気になるんなら買ってみれば?止めないよ?と助け船を出したら、その巨大箱がカートの中に突っ込まれた。ブツはフィッシュバーガー。普通のハンバーガーより2まわりほども小さなサイズのフィッシュバーガー(チーズつき)の冷凍ものだ。レンジでチンすればすぐに食べられるというやつだ。2個食べてやっと1食分という感じだったので、冷凍庫に保存してあったカレーパンも一緒に食べることにした。
「……ほらぁ、やっぱりジャンクな味だ……」
と、一口食べてちょっとげんなりする私。マクドナルドのフィレオフィッシュからタルタルソースを抜いたようなものだけれど、独特の冷凍臭さがけっこう鼻につく。
「いや、まぁ、これはこれで……」
と、「確かにイマイチ」と呟きながらも心なしか満足げにフィレオフィッシュを齧る我が夫。「あれだな、タルタルソース買ってきて、塗って食べれば更に美味しく食べられると思うな」と、何やら今後も食べる気満々だ。私もジャンクフードが嫌いではないけれど、だんなは妙にこういうものが好きだったんだっけ、と思い出した今日の朝御飯だった。
Homemade Beef Stew $6.89
w/Turnip Greens
w/Hashbrown Casserole
Lemonade $1.39
だんなが午前中の授業を終えるのを待ち、家族で向かったのはケンタッキー州Louisville(ルイビル)。今晩、この町のスタジアムで開かれるプロレスの試合を見に行くのが目的だった。元々プロレスや格闘技を見るのは大好きだっただんなだけど、アメリカに来て木曜の夜7時から9時まで毎週プロレスが放映されていると知ってからは、毎週テレビの前に正座する勢いでアメリカンプロレスを楽しんでいる。そういえば、日本でも私が小学生の頃はゴールデンタイムにプロレスやっていたわよねぇ、なんて、私も横で一緒になって見ているうち、レスラーの区別もつくようになったし技の種類や美しさもなんとなく理解するようになった。で、近くの町で開催されるというのを聞いて、思わず見に行ってみることに。
昼過ぎに我が家を出て、試合開始は午後7時半。1時間の時差があるので、昼食と夕食両方摂っている余裕はなかった。空腹を抱えてできるだけ走り、現地時間で午後3時前(我が家時間で午後2時前)にたっぷりめの昼御飯を食べる。道中は大きな町もなく、目につくのはガソリンスタンドの他はファーストフード店とファミレスばかり。その中でも格段に美味しいものが食べられる"Cracker Barrel"に飛び込んだ。
おかず1品、サイドディッシュ2品を選ぶ"Country Dinner Plate"は$6.89。南部風フライドチキンやバーベキューポーク、グリルチキンやミートローフなどの南部風のメニューが並ぶ中、今日はビーフシチューを選択。付け合わせは、Turnip GreensにHashbrown。いつもマッシュポテトだのコーンだのと馴染みの味のものばかり頼んでしまいがちなので、今日は頼んだことのないものにしてみた。"Turnip Greens"は、青菜の蒸し煮のようなもの。ベーコンと一緒にくたくたぐだぐだに火が通った青菜(カブの葉であるらしい)は塩気が少々強かったけれど、いかにも野菜喰ってますと実感できる濃厚な青臭さがあって美味しい。ハッシュドブラウンは、キャセロールで大量に作ったような感じの、ほのかにチーズの風味漂う"じゃがいものオーブン焼き"という感じ。
レモンの酸味が強めなレモネードをお代わりしつつぐびぐび飲みつつ、ビーフシチュー。さらさらとしたシチューには皮つきのじゃがいもと皮つきのにんじんが大ぶりに切られてざくざくと入り、柔らかく煮えた牛肉もたっぷりと。素朴な味で、期待以上の味にぺろっと平らげてしまった。
夜に備えての腹ごしらえも万全に、残り100マイル少しを疾走して5時半には会場近くのモーテルに入ることができた。
生ハルクホーガン見られるかなー、生アンダーテイカーは?生ブロックレスナーは?と密かにわくわくしている私。
ポップコーン
ビール(Bud Light)
ホテルで
オレオ
牛乳
試合開始は夜7時半から。何試合かの前座が終わった後は、ブロックレスナーだのアンダーテイカーだのゲレロ兄弟だのリキシだのクリスベノアだのレイミステリオだの、テレビで見知っていた顔がうじゃうじゃ出てきた。体重が軽く120kgはありそうな巨体のマッチョマンが軽々とドロップキックやジャーマンスープレックスを決める様を見るのは、なかなか楽しい。何しろ私は憧れのアンダーテイカーを生で拝めたのが一番嬉しかったのだけど、後ろに座っていた女性が熱烈なアンダーテイカーファンだったらしく、
「オーッ!テイカー〜〜〜ッ!カモンッカモンッ!イギャーーーーー!」
というか
「テイカー!テイカーッ!オゲロオォォォ〜〜ッ!」
というか、"嬌声"なんてレベルじゃない、動物か何かのごとき雄叫びをあげ続けていて、そちらの存在感の方がアンダーテイカー氏本人より大きかったりして……。
最後に登場したのは、ハルクホーガン。確かこの人、私が小学生だった頃から有名だったような気がするのだけど、今もテレビに出ている。遺恨対決だかで、近々WWEのオーナー・ヴィンスマクマホンと対決を予定しているらしいのだけど、今日は"ヴィンスに負けたら俺はプロレスを止めるぜ"というサインをするだけの登場。しっかし、凄い人気だった。会場総立ちで、地鳴りがするほどのホーガンコール。他の誰が出るよりも大きな声援を送られたホーガンだった。
だんな曰く、
「アンダーテイカーのツームストンパイルドライバーを生で見られて俺は幸せです……」
とのこと。面白かったわぁ。
夕飯は、ポップコーンをばりばり食べながらビールをぐいぐい。結局全てが終わったのは10時半で、それから駐車場から出口に向かう大渋滞に巻き込まれてホテルに帰ったのは11時。あまりお腹がすいたのでオレオと牛乳買ってきて皆でちょっと齧ってから、風呂にも入らず倒れ込むように就寝した。
セルフ焼きワッフル
グレービー
牛乳・オレンジジュース
プロレス観戦の熱き夜の翌朝。そういえば風呂にも入らずに寝ちゃったんだっけ、といそいそとシャワーを浴び、モーテルの無料朝食コーナーに行った。泊まったホテルは「Days Inn」。"いかにもモーテル"といった風情の典型的なモーテルチェーンだ。ほんのりアメニティの揃えが悪く、3人でダブルベッドの部屋に泊まってもシャンプーが袋入りのもの1つしか置いてなかったりする。でも、1泊35ドル前後で泊まれることが多いのが魅力的だ。
そういうホテルなので、無料でついてくる朝食も期待できない。普通はコーヒー、ジュース、牛乳などの他はシリアルと食パンとベーグルくらいしか置かれていないのが常だ。クーポンブックに"Deluxe Continental Breakfast"などという記述もなかったので、ますます期待はしていなかった。
もうすぐ9時という時間のホテルロビーそばのカフェコーナーには誰もいなかったのだけど、嬉しい品揃えのブッフェコーナーが整えられていた。パン類やシリアルの他に、ワッフルメーカーがある。紙コップに1回分の生地が入れられて並べられており、自分で焼けるようになっていた。更に、ビスケットにグレービー。どちらも保温容器に入れられていて、ほかほかと湯気が出ている。オレンジとアップルとグレープフルーツ、3種類のジュースに牛乳やコーヒー紅茶。モーテルにしては文句なしのデラックス朝飯だった。何しろ温かいワッフルやグレービーがあるのがありがたい。常々、"あったかいのはコーヒーだけ"というモーテル朝食を食べる羽目になっていたので、しみじみと嬉しかった。
ワッフルを焼くのにかかる時間は2分。"機械をひっくり返せ"とか"2分経ったから取り出せ"とかは全て電子音で合図がある。私もだんなも順番にワッフルメーカーを使いつつ、バターとシロップを添えて食べた。なんかシアワセだ。しかもグレービー(←塩気の強いクリームシチューのようなもの、普通はビスケットに添えて食べるらしい)の塩気や油っけが程良く胃に溜まり、昨夜からの空腹がめちゃめちゃ癒される。
食後は、再び我が家へ2時間半のドライブ。途中土砂降りに見舞われたりしたけれど、12時前には我が町に到着した。
プロレスを見るという目的だけのために往復300マイル以上のドライブというのも、馬鹿馬鹿しくていいかもしれない。
ちらし寿司
町に帰ると、ちょうどお昼時。家に帰って自炊する余力も食材もなかったので、よろよろと馴染みの寿司屋さんに駆け込んだ。他の日本食屋さんは、"お客の5割以上が日本人"という印象が強いけれど、この店は大学が近くということもあってか、日本人意外のお客が圧倒的に多いような感じ。私よりも器用に箸を操って、皆さん寿司やら蕎麦やらを食べている。
久しぶりに頼んだちらし寿司は、相変わらずのボリュームだった。器にたっぷりの御飯、はみ出すように盛られたネタの量も種類もなかなかの迫力だ。サーモンにイカ、ハマチ、マグロ、卵、貝や海老や蟹かま。サーモンなどはとろけるような脂ののりで、日本の美味しいお寿司への飢えを少なからず癒してくれる。だんなは数品の巻物を注文し、息子は好物の玉子といくらの握り。
最初は"へ、へんなの……"と思った、具が薄切りマッシュルームの味噌汁にも何だか馴染んできてしまった。米2合分くらい入ってんじゃないかと思われる丼ものの御飯の量にもたじろがなくなったし、アジやサバなどは全く見かけないのにも慣れてきた。慣れてきたけど……日本のお寿司がそろそろ恋しいなぁ、と内心思っちゃったりなんかして。
グリーンサラダ
大根と人参とごぼうの吸い物
ビール(San Miguel)
2日がかりでケンタッキー州を往復したばかりだというのに、実は明日から花見ツアー。ジョージア州のMacon(メーコン)に桜を見に行こう!と仲の良いいつものメンバーで3泊かけて遊びに行こうということになっている。何でもメーコンは富山県黒部市の姉妹都市なのだとか。だからというわけではないようだけれど、ここの桜はなかなか有名らしい。毎年3月には"桜祭り"まで開かれるのだそうだ。で、日本と同じお花見というわけにはいかないけれど、お花見。
世界が(特にこの国が)戦争だ何だときな臭い事になっているのにおめでたいことだという気持ちもあるけれど、一応州都であるにも関わらず我が町では"反戦デモをやります"なんて話は全然ない。全くない。田舎町の人々は「あー、またブッシュがなんか言ってるねぇ……これだからテキサスカウボーイはしょうがねぇな」などという感覚しかないようで、何だか別の国の出来事のようにすら感じてしまう。私たちの生活も全く変化なし。ただ、着実にここ数ヶ月、ガソリンの価格は上がり続けている。
明日からの旅行に備えましょうということで、夕飯は日本食。鶏肉の丼が食べたかったので親子丼かきじ焼き丼にしようかを悩みつつ、
「醤油と味醂でテラテラ光ってるようなのが食べたいよねぇ」
ときじ焼き丼に決定。本当はししとうが欲しいところだったけれど、さやいんげんを鶏肉と共に買ってきた。鶏肉を買う店として目下お気に入りの「Wild Oats」には、もも肉というと骨つきのものしかない。むね肉なら骨なしだの皮なしだのと色々あるくせに、冷遇されているもも肉なのだった。3本買ってきて、家でばさばさと骨取り作業。骨つきもも肉から1枚肉を作るのにも、少しばかり慣れてきた。
皮目からこんがり焼いた鶏肉は、しばらく蒸し焼きに。染み出た肉汁はもったいないので別皿に移しつつ、皮がパリパリになるように焼いていく。最後にさやいんげんも加えて火を通しつつ、肉汁に醤油と味醂と水を加えた合わせ調味料をジャーッと回しかけて軽く煮詰めてできあがり。ざくざくっとスライスして御飯に盛りつけ、揉み海苔を散らして、いただきます。
もう、ここ以外では買えないようになってしまった「Wild Oats」の鶏肉は今日も美味しかった。独特のブロイラー臭がなく、過度な脂の乗りもなく、美味しい肉だ。鰹だしをちゃんととって作った吸い物には大根と人参とごぼうを入れ、具沢山にした。
「なんかね、アメリカに来てから"ああ、鰹だしって美味しいんだなぁ"と自覚しましたよ」
「……そうですか。僕は昔っから鰹だしが大好きでしたが」
「嫌いじゃなかったんだけどね、ありがたみを感じてなかったというか」
などと言いつつ、家族全員今晩ももりもり食べてしまった。
Original Glazed Doughnuts ×2
Milk
今日から3泊4日で、総勢8人でお花見旅行。今日の午前中に大学の授業のあるメンバーの授業終了を待ち、10時半頃に町を出発しようということになった。
だんなは今日は特に予定がないとのことで、朝御飯は家族でKrispy Kreme Doughnutsに出かけてドーナツを食べる。9時前後は大抵ドーナツ製造マシンが稼働中なのだけど、その時には1人1個無料でオリジナルドーナツをサンプルとして貰うことができる。サンプルを貰えるのも嬉しいけれど、揚げたてのドーナツの旨さは絶品なものだから、"朝にドーナツ"はとてもとても魅惑的。(朝からそんな甘いものを……と思わなくもないけれど)
が、残念ながら今日はマシンのメンテナンス中。私たちが来るちょっと前に故障してしまったらしく、店頭には箱に詰められたドーナツがいくつか積まれてはいたものの、できたてという感じではなかった。とりあえず、オリジナルグレイズド(この店の基本中の基本のドーナツ)を2個もらい、牛乳を1本購入。ドーナツは温かくはなかったけれど、スーパーマーケットで買うそれよりは美味しかった。シンプルな揚げ生地のドーナツに、砂糖のコーティングがされているドーナツはふわふわとした口当たりで軽い食感、何個でも食べられそうだ。どっぷりかかった砂糖のコーティングがない方がもっと好みかもなぁ……と思いつつ、この味にだんだん慣れてきている自分がいる。
The New Tuna Melt Platter $6.55
w/Chicken Gumbo
w/French Fries
Regular Strawberry Shake $2.30
10時半過ぎに3台の車で出発し、時速80マイル前後でまずは東へ東へと進む。テネシー州のChattanooga(チャタヌーガ)からは南へ向かい、ジョージア州に入る。今日の目的地はアトランタ。我が町よりは遙かに充実している日本食材屋さんで買い物をし、焼肉を食べ、翌朝にはCafe du Mondeの支店でベニエなんて食べつつ花見の目的地Macon(メーコン)へ向かおうということになっている。
ジョージア州に突入した頃には、もう1時過ぎ。私たちの住む町とは時差があるので、ここではもう午後2時過ぎだ。おなかすいたよ、もう限界だよ、と、ジョージア州に入ってすぐの町DaltonにあったSteak 'n Shakeで昼御飯を摂ることにした。
「このお店は……どんなお店なんですか?」
と、このチェーン店に入るのは初めてなHさん一家。
「ハンバーガーとシェイクの店です。卵料理のセットとかスパゲティなんかもあるけど……やっぱりハンバーガーが美味しいかなぁ」
と、このチェーン店に入るのは2回目の私たち。
じゃあ私、シェイク。僕もシェイク、僕も、僕も……と、ほどなくテーブルにずらりと8個のシェイクが並んだ。バニラにチョコにストロベリー。どれもポップな色合いで、上にはホイップクリームとチェリーのトッピング。おっさん集団にはすこぶる不似合いな光景だ。マクドナルドあたりで飲むシェイクよりは甘さ控えめな印象があって、案外と飲みやすい。チョコレートシェイクあたりは、意外に渋い味がする。
私が頼んだ料理は、新メニューのツナサンド。最近ケチャップ味が食傷気味だったので、ツナと野菜とチーズが挟まったトーストサンドに惹かれてしまったのだ。何種類かあるサイドメニューから2種類選ぶようになっており、サラダ類やスープなどが並ぶ中から"本日のスープ"(チキンガンボ)とフライドポテトを選択した。
さくさくのパンにマヨネーズで和えたツナがたっぷり挟まるサンドイッチは、なかなかのボリューム。厚切りトマトが何枚も挟まり、レタスとチェダーチーズが添えられている。他の店で食べるものよりかなり細めなフライドポテトを齧りつつサンドイッチを平らげ、あと70マイルちょっと走れば、今日の宿の目的地だ。
ユッケ
タン塩
プルコギ
カルビ
冷麺
ビール(OB)
今日の宿はちょっとリッチに(と言っても1泊45ドル……)「Fairfield Inn」というマリオットホテル系列のモーテル。3つ並んだ部屋にチェックインした後は、日本食材屋さん"とまとストアー"に皆でお買い物に。私たちの町の日本食材屋さんと比較して、同じ品は少なからず安く買えるし、うちの町では見かけることのない食材も数多い。皆それぞれ
「ああっ、このカップラーメンが安売りされてるよ〜ウレシ〜」
とか、
「こんな調味料、うちの町にはないですよねぇ……」
とか、
「やっぱり米、もう一袋買っておかない?」
などと各々欲望の赴くままに盛大に買い物をした。"すき焼きふりかけ"はあるし、見たことないインスタント味噌汁はあるし、カルピスウォーターは1缶85セントだ。見ているとあれこれ欲しくなり、ついつい
「ああっ、"緑のたぬき"がけっこうお安い……」
と手に取ってしまう。釜飯の素なんかもかなりの人気商品だった。
夕飯は、メンバーたっての希望で「焼肉」。アトランタのコリアンタウンはなかなかすごいのだという話を聞き、これはなんとしても焼肉!という気分になってしまったらしい。異論のあるはずもなく、皆でぞろぞろと目指してみたのは「Hae Woon Dae (海雲台)」という焼肉店。アメリカには珍しい、日本食メニューが混ざっていないちゃんとした(?)韓国料理店だ。メニューの文字は日本語も併記されていたけれど、内容は焼肉を中心とした韓国料理の品揃えだった。
「俺はプルコギが食べたくてさぁ……」
「私、私はね、ユッケが食べたい」
「カルビは外せませんよね」
などと各々勝手に意見をうじゃうじゃ出し、大人6人で注文したのはユッケ1皿、牛タン、プルコギ、カルビを2皿ずつ。韓国式の店なので、おねえちゃんが勝手に肉を焼いてくれちゃう店だったけれど、たっぷりのナムルやキムチ、サンチュと共に食べる肉はなかなか美味しかった。炭火がテーブルにやってきて、中央が盛り上がった緩い円錐形の網が置かれる。まずは牛タンをうじゃーっと並べられ、牛タンを平らげたと思ったら次はプルコギをうじゃじゃじゃ〜と広げられ、プルコギがまだなくなっていないのにカルビが網に乗せられる。食べかけのプルコギは、トングで網の隅に重ねられてしまったり、勝手に皿に取り分けられてしまったり。
テーブルに無料でずらりと並べられたのは白菜のキムチ、大根のキムチの他、ほうれん草のナムル、もやしのナムル、小さなパジョン、じゃがいも細切りのマヨネーズ和えサラダのようなもの、などなど8種類ほどもある。最後に冷麺をもらい、私はだんなと2人で1杯をずるずると啜った。こんにゃくを麺にしたような細くもちもちとした麺が入る冷麺は、印象としては甘酸っぱいのにスープを飲み込んだ後から辛さがビリビリと喉の奥からやってくる。具はきゅうりの薄切りと大根を甘酢に漬けたもの、ゆで卵と薄切り牛肉。真っ赤な辛いスープを飲む人あり、カルビタンを啜る人あり、全員たらふく焼肉その他を腹に詰め込んで店を後にした。
アトランタの北側にある、このDoravilleというエリアはどうやら韓国系のお店が集中しているところらしい。ここがコリアンタウンなのかどうかは確証がつかめなかったのだけど、数区画にまたがる建物群の全てに韓国語表示が目立っていたりした。明日は、お花見。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
ベニエ
アイスカフェオレ
8人でのお花見旅行、アトランタ近郊の朝。
今朝の朝食の目当てはベニエだ。ニューオーリンズのカフェ、Cafe Du Mondeの支店(ルイジアナ以外では唯一の支店らしい)が、アトランタにあるらしいのだ。つい数週間前にアトランタにやってきたばかりだけれど、その時はその存在を知らなかった。
「Undergroundにあるんじゃん!確か……店の前、通ったよね?」
「気付かなかったよ。ぜんっぜん知らなかった……」
「これを知っていれば、朝食の場所に困った挙げ句ホテルで食べたりはしなかったのに〜」
と、自宅に帰ってから知って悶え苦しんだ屈辱を晴らそうということで、ぞろぞろと8人でベニエ。
アトランタの中心部にある"Underground"というショッピングモールの地下に、その店はある。かつては駅の高架下だったというちょっと珍しい背景もあって、観光スポットのひとつになっている。だから一度我が家もここにはやってきているはずなのに、メインの通路沿いにあったその店に気付かなかったのだった。確かにちょっと目立たない店ではあるんだけど、我ながら情けない。
ファーストフードのような店内で、カウンターで注文して品物を受け取ってから席につく。我が家は息子の分も含めて1人1オーダーのベニエ。粉砂糖がどっぷりかかった揚げドーナツは、3個で1セットだ。外見も味も、ちゃんとベニエのものがやってきた。……けど、心なしかちょっとばかり薄い感じがしないでもない。
この店の名物であるチコリコーヒーをベースにしたアイスカフェオレをぐびぐび飲みつつ、粉砂糖をばふばふ飛ばしながら皆でベニエをつついた。
この店に来るのが楽しみでしょうがなかった私が「Mさんもベニエ、好き?」と聞いてみた元ラガーマン(良く食べる)のMさんは
「いや、私は……ベニエは普通に好きですね、はい」
なんて言っていたくせに
「ああ……やっぱり美味しいかも……もう1皿、いってきます」
と3個のベニエを一瞬で平らげ、更にもう3個食べていた。
Egg Salad Sandwich $2.25
Lemonade $1.04
朝食の後は、いよいよお花見。アトランタから車で1時間半ほどかけて、同じジョージア州内にあるMacon(メーコン)という町を目指す。桜で有名な町であり、ちょうど今の期間は"桜祭り"をやっているらしかった。
けれど、メーコンにたどり着く以前に、ジョージア州はなにやら桜だらけなのである。州を接しているテネシーなのに、我が町あたりでは桜はほとんど見かけない。なのにジョージア州に入った途端、高速道路の中央分離帯の草地に、モーテルの隅にと、至るところにぽつぽつ桜が植えられていた。アトランタでもそこここに見かける桜は折良く満開で、
「これだけあちこちに桜あるんじゃ、メーコンに行く意味があんまりないかもね」
なんて苦笑いしながら向かったのだ。
が、メーコンに到着した私たちは大騒ぎすることになる。"町全体が桜色"とまではいかなかったけれど、確かにこの町は桜だらけだった。公共施設の入口に、民家の軒先に、見渡すと視界に最低数本は桜が目に入るという感じ。この町についての情報がさっぱりなかったため、ウェルカムセンターに行って"Cherry Blossom Festival"の案内ペーパーを貰い、それに従って桜見物に行ってみる。ちゃんと、"桜見物のためのドライブルート"などというものもあるのだけれど、それらは全部民家の間を走る道らしい。駐車するスペースもまずないので、基本的に"車に乗って桜並木をドライブ"が桜見物のスタイルらしい。広場に桜が大量に植えてあってその下でピクニック……というのは、残念ながらできないようだった。
ドライブルートを辿って見に行った桜は、素晴らしかった。片側1車線の小さな住宅街の道路のあちこちが、見事な桜のトンネルになっている。
「桜〜」
「桜だぁ」
「きれーい」
と、きゃいのきゃいの騒ぎつつ、道路幅が広いところで数分車を止めて写真を撮ってみたり、ドライブルートに接したところにあった公園でちょっと休憩してみたり。平日ということもあって、観光客もそれほど多くないようだった。
予想以上に楽しいお花見ができ、気がつくと午後2時を過ぎていて、全員すっかり空腹だ。
メーコンのダウンタウンに戻り、適当に駐車して適当にぷらぷらし、見つけたサンドイッチ屋さんで遅めの昼御飯にした。ターキー、ローストビーフ、ツナ、ベジタブルなどの種類があり、注文してから奥で作ってくれるらしい。私は卵サラダのサンドイッチ。
「トマトとレタス、入れてもいいかしら?」
と言われ、こくこくと頷くと、ほどなくパラフィン紙にくるまれたサンドイッチが出てきた。ゆで卵をほぐしたやつが淡くマヨネーズで味つけられ、パンの間にたっぷりと挟まっている。厚切りトマトもたっぷり、そして大きなレタスも挟まれていた。胡椒がちょっと強めに効いていて、パンはそのへんのスーパーのものなんかじゃない、味の強い胚芽パンが使われている。素朴な味で、空腹が良い感じに癒された。
腹ごしらえした後は、今度はサウスキャロライナ州を目指す。
Irish Potato Chowder $2.99
Lowcountry Oysters $13.99
Beer (Newcastle Nut Brown Ale)
事前に皆で考えていた旅程では、"花見をした日は、チャールストン方面に向かう途中で宿を取りましょう"ということになっていた。けれど、ドライブが勢いづいてしまったようで、その日のうちにチャールストンまで行ってしまうことに。4時間ほど走り続け、チャールストン近郊のモーテルに入ったのは午後7時半を過ぎていた。
夕飯に出かけたのは、もう8時過ぎ。海辺にあるこの町はシーフード料理が名物だそうで、私たちの目的は
「生牡蠣を腹一杯食べる〜」
「お魚も腹一杯食べる〜」
というものだったりした。事前にチェックしてあったシーフード屋さんに向かってみるも、店頭には入店待ちのお客が列をなしている。"うーん、30分待ちというとこかしらね"と店員さんに言われ、こりゃダメだとあてのないままその店の近くをさまよい歩いてみた。ちょうどそのエリアが市場のそばらしく、ちらちらとシーフード屋さんが並んでいる。入ってみたのは、アイリッシュパブの店でシーフードがうりのTommy Condon'sという店だった。
アイリッシュパブらしい、スタウトやアンバーエールなどのビールが何種類もメニューに並ぶ中、それぞれ適当にビールを選んで注文し、クラブディップにクラッカーを添えたものと、ほうれん草ディップにナチョスを添えたものを酒のアテにと注文する。
マヨネーズ味のクラブディップは、これでもかと蟹肉が入っていた。ほのかに香味野菜の風味もして、いきなり美味しい。ほうれん草のディップはチーズ風味。軽い昼御飯の後の遅めの夕食だったので、すっかり空腹だった皆でばりばりと前菜を食べまくる。ナチョスがすぐになくなってしまったので
「もう少しくれる?」
と聞いてみたら、山のようなお代わりがやってきた。
そして私が頼んだものはポテトチャウダーと牡蠣フライ。形の残ったじゃがいもがざくざくと、それ以上にスープに溶けてぐずぐずになったじゃがいもが入っているような濃厚なポテトチャウダーがやってきた。私以外の多くの人は"クラブスープ"なるものを飲んでいたのだけど、これがまたスープの汁気より蟹肉の方が多いんじゃないかと思われるようなこってり濃厚な蟹味のもの。具沢山のスープの後は、牡蠣フライ、フィッシュ&チップス、魚介フライの盛り合わせ、シーフードスパゲッティ……と全体的に魚介のフライものだらけ。牡蠣フライには生牡蠣につけるようなカクテルソースがついてきていて、"レッドライス"という名のケチャップ炒め御飯もどきと、ブロッコリーときのこの炒め煮が添えられている。すごく旨い!というほどには旨くなかったけれど、牡蠣20個分くらいあるんじゃないかという大量の牡蠣フライが嬉しかった。
「デザートはどうですか?」
とニコニコしながら店員さんが聞きに来る頃には、全員揃って喉からフライが溢れるんじゃないかというほど満腹。
「ご、ごめん、みんなお腹一杯なんだ……」
とよろよろしながら伝え、よろよろと車に乗ってホテルに帰還。明日こそ生牡蠣をたらふく食べるのだ。
French Toast $2.75
Ice Cold Milk $1.00
サウスキャロライナの朝。昨夜の到着はすっかり日が暮れてからのものだったので、まじまじと町並みを眺めたのは今朝になってからのことだった。滞在ホテルの宿泊プランには朝食がついていなかったため、朝9時半頃に皆でぞろぞろと車に乗って町に出かける。私が一応目星をつけておいた朝食の美味しいレストランがあったのだけど、参考にしたデータが間違っていたのか私のメモの取り方が違っていたのか、住所の場所に目当てのレストランの名前が見つからない。その住所には洒落たホテルが建っていて、ホテルの人に聞いても「そんな名前のレストランは知らないねぇ」とつれない返事だ。
一体何が間違っちゃったんでしょうすみませんすみません、と、あてもなく朝食場を求めてさまよい歩くことになった私たち。結局、町の中心部である"City Market"の道路向こうの小さな専門店街の片隅の店に入ってみた。客席数20ほどの小さなカフェで、5人ほどの人が朝食を食べている。
卵料理やトーストなどがメニューに並ぶ中、私はフレンチトーストと牛乳を。四角い食パンが三角形に等分されたものが5枚、皿に並んで出てきた。シナモンの香りがほんのり漂うフレンチトーストには粉砂糖がまぶされ、染みこんだ卵液自体も軽い甘さがある。皆それぞれスパニッシュオムレツやチーズオムレツなどをつつきまわし、なんとか空腹が収まったところで、ぷらぷらと観光に出かける。
Oysters on the Half Shell $14.99/2doz
Ivan's "Crab Pot" $15.99
Cocktail (Shuck's Sunset) $6.00
Cocktail (Frozen Pina Colada) $6.50
昼間見物したところは、National Monumentの"For Sumter"(サムター要塞)。チャールストンの港から30分ほどのところにある小さな人工島で、島全体が要塞となっている南北戦争時代の遺跡だ。ツアーに参加して船に乗らなければ見に行くことができない。そういえば海を見るのは久しぶりだねという不純な動機で8人全員揃ってずらずらと遺跡ツアーに参加した。
午後3時頃、ツアーが終わって町の中心部に戻った後は、土産物屋がずらりと並ぶ"City Market"を見物。この地の名産品"シーグラスバスケット"は、い草のような草を束ねて編んだ素朴な籠。外見の素朴さに惹かれて1つ買って帰ろうかとも思ったけれど、手の平サイズの小さなそれに15ドルほどの値がついている。使いやすそうなサイズのものは35ドルほど、蓋つきのものとなると60ドルほどであるらしい。値引き交渉できたとしても、35ドルのものを10ドルくらいにするのは難しそうだなと、購入は断念(見た感じだと、10ドルほとが適正価格じゃないかなと思われる感じがして……)。
今日も雲一つない天気で、気候は春というより初夏だ。ノースリーブ1枚で歩いていても汗ばむほどで、今日は全員揃ってテカテカに日焼けした。日焼けすると体力も消耗してしまうようで、すぐに疲れてアイスクリームやジュースが恋しくなってしまう始末。昼御飯らしい昼御飯は食べていないこともあって、結局予定を繰り上げて午後5時半頃から早々に夕食を摂ることになった。
目指した店は、昨日大行列で入れなかったA. W. Shuck'sというお店。シーフード料理屋さんで、生牡蠣は1/2ダース、1ダース、2ダースの価格が別々についている。1ダース頼むより2ダース頼む方が若干お得だ。席についてアルコールを注文するのと同時に
「生牡蠣ください。えーと、2ダースのを3セット……つまり6ダースで」
「あと、オイスターロックフェラー。こっちは1人3個ということで……えーと、1と1/2ダースね」
と、怒濤の牡蠣オーダー。ほどなく、テーブルにものすごい量の牡蠣がやってきた。2ダースプレートは、大きな大きな楕円の皿にこれでもかと牡蠣が積み重なっている。不揃いな牡蠣は大あり小あり、ついでに2個繋がっちゃってるのもあり、何だか大変な光景だ。
「私の取り分、ここまでですから」
などと、皿を分け合う隣の人と境界線を敷きつつ、1人1ダースの生牡蠣を日暮れ前から堪能しまくる。私が頼んだアルコールは、この店オリジナルのものらしい"Shuck's Sunset"というもの。テキーラ・サンライズに似たオレンジ味のカクテルだった。アルコール分が想像以上に強く、甘さ控えめで生牡蠣にけっこう似合う。
牡蠣の輪郭がわからないほど大量のほうれん草とチーズが盛られたオイスター・ロックフェラーも良い味だったし、メインディッシュで頼んだ"Crab Pot"なる蒸し蟹が更にすごいものだった。皿には蟹2はい半分の蟹の太い足。添えられているのはじゃがいもととうもろこしと大きなスモークソーセージ。蟹には溶かしバターが添えられてきて、ちょっと塩気のある蟹にそのバターをつけて食べるようになっている。蟹の足20本なんて、これまでそんなに一気に食べたことがない。私以外の他の人は焼き魚介と揚げ魚介の盛り合わせ料理などを食べる人が多く、私の食べるスピードがおそらく一番遅いだろうと思われた。蟹を喰うのは時間がかかるし、といきなり無言になってせっせせっせと蟹を食べ始める私。太い足には身がみっしり詰まっていて、そのまま剥いて食べてもすこぶる美味だった。溶かしバターをつけて食べるのもけっこう似合う。
本当は、
「メインディッシュの量をみて、食べられるようだったら生牡蠣をもっと頼んでみよう」
と言っていたのだけど、もう全然ムリなほど、皆揃って満腹になってしまった。
それでも1人最低15個の牡蠣が食べられて(人によってはメインディッシュにも牡蠣が入っていたのでそれ以上)、皆へらへらと機嫌よく宿に帰ってきたのだった。日焼けして顔痛かったりだるかったりするんだけど。
コーンフレークwith牛乳
8人でわいわい騒いだ楽しかった数日間。月曜日の朝から授業のある人も多いということで、今日は1日かけてひたすらひたすら帰り道。570マイルほどの距離があるので、とにかく朝は早めに出ようということになった。
こういう時に、無料朝食のついていないモーテルはちょっとつらい。幸い各部屋に冷蔵庫はついていたので、事前にコーンフレークと牛乳を買いそろえておいて、部屋でもそもそと家族で牛乳ぶっかけコーンフレークをしょりしょりと食べることに。
目覚まし時計が鳴る前からがさがさと活動を開始していただんなは、ピピピピピピピと目覚ましが鳴ったところで
「おゆきさーん、おきなさーい。みんな、おきなさーい」
と私と息子と起こしにかかった。私と息子がぼへぼへとベッドの中で転がっているのを見ただんなは、「時間ないよー」と小さな声で言った後、
「はい、着替え。はい、コーンフレーク」
と私たちの世話をやきはじめた。こういうのは一般的に、一家の中では"母"の位置にある人が「さぁさ、みんな、起きなさい」と動くものであるような気がするけれど、我が家では妻がぐーたらなので、腰の軽いだんなが動いてしまうのだった。すまんだんな、ありがとうだんな。
心の中で"ありがとう、ありがとう"と言ってはみるものの、まだ目が開かずぐだぐだと布団の中にいたところ
「そうじゃん!スプーンがないじゃん!」
とだんな。
「車のガス入れるついでに、ちょっと外の店見てくるね」
と素早く着替えて外に出ていってしまい、数分して帰ってきたその手にはプラスチック製のカトラリーセットがおさまっていた。あああ、何から何まで。
Cracker Barrel Sampler
w/Whole Kernel Corn
w/Turnip Greens
Lemonade
午前8時に出発した3台の車。テネシー州からジョージア州に入り、サウスキャロライナ州にやってきた私たちだけど、帰路はノースキャロライナ州に北上し、グレートスモーキーマウンテンの横を通ってテネシーに帰ることになっている。天気も良く、道路も空いていて楽しいドライブになった。すれ違いざまに違いの車内を写真撮影しあって遊んだりしながら、森だらけの起伏のある道を進んでいく。
空腹になった頃には周辺に大きな町はなく、高速道路の出口付近にあるのはいくつかのガソリンスタンドとファーストフードとモーテルばかりという状況になり、入ったところはチェーンレストランの中でもかなりまともな味のものが食べられるCracker Barrel。8人のうち4人はこの店が初めてだということで、レモネードが美味しくてね、チキンダンプリングやビーフシチューもなかなかいける味でね、などと言いながら混雑する店に入った。
いつも店員さんの態度もそこそこ気持ちよい(時々おそろしく愛想の悪い店員さんもいたりする)お店なのだけど、今日、私たちのテーブルについたおばちゃんは何だか酷かった。ランチタイムで混雑する店内、8人が一度に座れるテーブルは用意できず、6人2人に別れてすぐ近くのテーブルに案内された。2人が座った席には、次々とドリンクや料理が運ばれてくる。が、私たちの方が先にオーダーしたにも関わらず、ドリンクも料理も出てくるのはやたらと遅かった。どうも担当のおばちゃん、ここで働き始めたばかりのようで、やることなすこと迷走している。子供用の料理を頼むと、いつもは「つけるのはポテトで良いかしら?」と聞いてきてくれるのを頷くだけだったのだけど(デフォルトで1種類のサイドディッシュがついてくるのだけど、通常何も言わないとポテトになっていた)、今日は何も言ってこないと思ったら、勝手に"子供用プレート サイドディッシュ抜き"なんて注文で通されている。Hさんも同様で、
「チキンダンプリング、ください」
と伝えたら、本来ついてくるサイドディッシュ2種類が勝手に無いことにされていた。だんなに至っては、クラムチャウダー1カップと、2サイドディッシュつきのメインディッシュを
「クラムチャウダー1カップ。それと、おかずはこれ、それにマカロニ&チーズとチキンダンプリングつけてね」
という注文をしたのに、伝票には"1サイドディッシュ抜きのおかず+サイドディッシュとしてのクラムチャウダー、そして追加のサイドディッシュとしてのマカロニ&チーズとチキンダンプリング"という謎なことがかかれている。違うだろう、普通、そうじゃないだろう。何だか色々ぐっちゃぐちゃだ。
「店員さんに恵まれなかった……」
「得してるのか損してるのか、これじゃ全然わからない……」
「いや、これは絶対損してるような気がするね」
と言いつつ、でも時間もないので追求はせぬまま料理を平らげ、代わりにチップは払わず店を後にした。
私の頼んだものは、この店名物のおかずを盛り合わせたものらしい、"Cracker Barrel Sampler"というもの。ニョッキ入りチキンのクリーム煮という感じの"Chicken n' Dumplin's"とミートローフ、カントリーハムが盛り合わされている。幸い私の分は間違えられなかったサイドディッシュは、青菜のくたくた煮の"Turnip Greens"とコーンのバター炒め。何だかおばちゃんがめちゃめちゃなせいで、味もいつものこの店のものほど美味しく感じられないような気すらした。それでも素朴な味のミートローフやチキンダンプリングにはちょっとばかり癒されてしまったりして。
チキンカツ定食
キリンビール
グレートスモーキーの山越え後半で、テネシー州に突入。やっと我が州に帰ってきたということで、あとは流れ解散になった。スピード違反で捕まらない程度の速度でかっとばして帰宅すると、午後4時半過ぎ。そういえばバカみたいに買い物してきたんだっけ、と、アトランタで買ってきた米とかベニエミックスとか、日本食材だとかをうじゃうじゃ車のトランクから救出した。ベニエミックスなんて、20箱も買ってきたのである(←大きさは"ホットケーキミックス"などのよくある箱と同じ)。一応は友人知人へのお土産という名目だけど、それにしたって、どうやって日本に持って帰るつもりなんだろう、自分。20人も配る相手はいないので、きっと半分くらいは自分の家で消費してしまうのだろうな。
買い物しに行く気力はなく、さりとて食材もなく、夕飯はよろよろと近所の日本食屋に駆け込んでしまった。夜にここに来ると、毎回毎回「なんて高いんだ」と思うのだけど、日曜の夜にやっている近所の日本食屋というとここになってしまうのである。今日も「高い高い、やっぱり高い」と小声で言いながらやってきたイヤな客な私たちだった。いや、でも、本当に高い。
お昼のランチセットなどはすごくお得な店だ。元々味は悪くない店なので、10ドルも出せばお腹一杯になれるランチメニューは相当嬉しい。が、夜となると、刺身の2人前盛り合わせが40ドル以上したり、昼のものとさほど内容も変わらなさそうな弁当が35ドルしたり、豚肉の生姜焼きなどの定食類も昼の倍くらいの値段に変化する。昼に8ドルなら、夜は16ドルだ。ここまで値段が変化してしまう店も珍しいと思う。今日もメニューを見て「……高い」と唸りながら、結局チキンカツ定食を注文することにした。サラダと味噌汁、御飯がついてくる。
サクサクの衣をまとったチキンカツは、ブロイラー臭さもなくてなかなか良い感じ。千切りキャベツの脇にはレモンと練りがらしが添えられ、別皿にとんかつソースが垂らされている。アメリカの南部料理でフライドチキンは定番だけれど、フライドチキンとチキンカツは似ているようでやっぱり別ものだ。フライドチキンにとんかつソースかければ似たようなものになりそうだけれど、骨なしの1枚肉をからっと揚げてソース添えて、あとは御飯と味噌汁と、と揃うとしみじみ嬉しくなってしまう自分がいる。
旅行の後に日本食屋に駆け込んでしまうというのが我ながら情けないのだけど、アメリカに来てから"御飯が好きだった自分"を強く自覚する今日この頃だった。日本にいるときは
「朝御飯なんて、毎朝パンでも全然かまわない……ていうか、嬉しいくらいなのにねぇ」
なんて言ってたのに、美味しい御飯食あっての浮気心だったということがわかってきた。
実は、5月に予定している国立公園旅行には炊飯器を持っていこうかと本気で計画中だ。10月に行ったグランドキャニオン近辺への旅行でカフェテリア→ハンバーガーショップ→ファミレス→ハンバーガーショップ……とえんえんと続くアメリカ食コンボに心も体もすさみきり(だんなはとうとう体調まで崩し)、この体験が我が家のトラウマになっている。アメリカの食事は日本人があちこちで言って歩いているほど不味くはないと私は思う。不味くはないんだけど、コンビニエンス系の食事が続くとなると話は別だ。日本での旅行でも、もしも"コンビニ弁当とファミレスの食事だけで食いつないで旅行しなさい"なんて事になったら、多分かなりストレスがたまると思う。それと同じ。
で、辛抱たまらず5月の旅行には炊飯器を留学生仲間から借りて持っていくことにした。持っていくと、何しろ"大自然の中でのおにぎり弁当ランチ"が実現できちゃうのである。麦茶なんかも旅行中に作っちゃったりするのである。鮭おにぎりを頬張りながらの間欠泉鑑賞なんて、相当気分が良さそうだ。わくわく。