食欲魔人日記 02年09月 第2週
9/9 (月)
A先生から蜂蜜をもらったよ
だんな特製手打ちうどん (ひやひや)
おにぎり
あら汁
蟹玉(昨夜の残り)
塩ふりキュウリ
麦茶

昨日の夕方、英語の勉強(宿題)をやっていた我が夫、「勉強……イヤになっちゃった」と呟くやいなや、おもむろにうどんを打ち始めた。まるで"英語イヤイヤパワー"をうどんに注入しているみたいで、それ喰ったら喰った人が英語嫌いになってしまいそうな、そんな感じ。

息子は横で、うどん打ちの光景をずっと楽しそうに眺めていた。
「ふむの?」
「踏むよー、でもちょっと寝かせてからね」
「ねるの?うどん、眠いの?」
「……いやー、眠くはないと思うけど……」
「うどん、つかれちゃったの?」
「……うん、そう、うどん疲れちゃったから寝かせるの、ね」

微笑ましい会話の後、しばししてうどんを冷蔵庫から取り出し、台所の板の間でだんなは"踏み"の作業にはいり始めた。
「うどん、起きたの?」
「そう、起きたの」
横から私も口を出す。
「そう、うどん起こしてね、踏んでのばして刻んで茹でて食べちゃうの」
「そっかー!」
何かを会得したような息子。一体何を会得したんだろう。

そして今朝。学生時代に高松で青春を送ったうどん愛好家のIさんを招いて朝食にうどん。調子に乗ってオプションにとおにぎりを作り、更には昨夜の残りの蟹玉とかあら汁とか、キュウリまでテーブルに並べたら朝食とは思えぬほど豪華になった。
今回のうどんは、形状も一層うどんらしくなり、ほんのちょっとだけど理想にまた一歩近づいた感じ。でも、歯ごたえを確かめながら茹でたうどんは水にさらすと想像以上に固さが増してしまい、かなり歯ごたえのあるうどんとなった。だしは、相変わらず良い感じ。アメリカの地で、いりこ風味たっぷりのだしを啜るというのも貴重な体験かもしれない。

「お!だし、旨いねー。……でもやっぱり麺がちょっと固いかな」
とIさん。「もうね、毎日のように昼は"うどん市場"で食べてたよ。"竹清"なんかもね、いいよねー」という彼を唸らせるうどんを打つのが、とりあえずの目標というところだろうか。がんばれ、だんな。

ハニーバタートースト
牛乳

午前中、大学に行っていただんなが昼にぷらっとビニール袋をぶら下げて帰ってきた。
「A先生がねー、巣のままの蜂蜜分けてくれたよー」
と、中にはパックに入った蜂蜜が。6角形の断面も美しい、2層になった塊がごろりと入っていた。A先生は養蜂場を持っていて、そう大量に取れるわけではないらしいけどパン屋さんなどに蜂蜜をおろして販売しているのだ。とうもろこしの花の蜜なのだそうだ。

クマのごとく手づかみして舐めてみたくなりつつ、とりあえず昼食にとパンに乗せて食べることにした。ハンバーガー用のバンズにバターうっすら塗ってオーブンの放り込み、サクッとなったところで蜂蜜挟んで食べる。トロ〜ンと柔らかくて充実した甘さの蜂蜜では妙なえぐみとか個性が強すぎるような芳香がなく、とても食べやすい。お菓子にも料理にも合いそうな、使い勝手の良さそうな蜂蜜なのだった。「ナイフで切って乗せる」という食べ方ができるのは"巣"ならではの醍醐味で、クマになった気分で家族でわしわしハニートーストを堪能した。

Nashville 「Stock-Yard Restaurant」にて
Appetiers 盛り合わせ
Stock-Yard Salad
Certified Angus Beef Prime Rib -HOUSE SPECIALTY 12oz.
シャンパン・赤ワイン

Ashlee's New York Cheesecake
エスプレッソ

今日の夜は、A先生の招待による留学生のウェルカムパーティー。これまでちょくちょく集まりはあったけど、全員がちゃんと揃って(イベントなどではなしに)食事する、というのは初めてだ。ダウンタウンからちょっと外れたところにある「Stock-Yard Restaurant」がその会場で、なんでもステーキがすっごく旨い店だということ。北アメリカで10指に入る有名店なのだそうだ。

午後6時、予約された個室に19人が集合。私たち留学生とその家族の他は、スタッフMさんとA先生ご夫妻が揃い、まずはシャンパンで乾杯した。薄暗い店内はものごっつう重厚な雰囲気。シャンデリアが輝いて年代物の羅紗のソファーや椅子に反射していて何とも良い感じ。個室を出て他のフロアを覗くと、キャンドルが置かれたテーブルで食事をする人が何組も見えた。高級店……だ。

愛想が良くやたらとおしゃべりな若い兄ちゃんと、物腰穏やかな髭のおっちゃんが給仕担当で、
「みなさん、当店は初めてですね?このお店の名物はなんといってもプライムリブ!大きな塊肉を焼いた後に皆様お好みの大きさにカット致します。それから勿論シーフードも!(中略、以下ずーっとメニュー1つ1つの説明)、そしてサラダです、サラダはお馴染みのシーザーサラダ、これも当店オリジナルで……(以下ずーっとアペタイザー1つ1つの説明)」
と、くれ喰えあれ喰えとこってり説明を受けた。

まずは、A先生が皆のためにと注文してくれた「前菜盛り合わせ」。巨大な巨大な皿に何種類もの前菜が置かれたものが4人に1皿程度の割合でやってきた。これがもう、何喰っても旨いんである。アメリカの食い物が不味いなんて嘘だ。パンケーキ喰ってもハンバーガー喰っても「アメリカ、サイコー」と思っていたけど、この店の料理ときたら食べるもの全てが涙ちょちょ切れるほど美味しいのだ。

前菜でやってきたのは、
「Crab Cakes」(蟹肉入りのふわふわコロッケのようなもの)、
「Calamari」(イカフライ。マリナーラソースやクレオール風クリームソースをつけて食べる)、
「Porta Bella Mashroom」(椎茸のような外見の巨大マッシュルーム。甘辛い煮てあって、なんか懐かしい味)、
「Oyster Rockefeller」(ほうれん草のソースで和えた牡蠣のオーブン焼き。めちゃ旨〜♪)、
「Shrimp Cocktail」(ぷりぷりの海老にカクテルソースをつけて食べる)、
「Onion Loaf」 (玉ねぎのフライ。さくさくしてて良い感じ〜)
というところ。どれもこれもたっぷりと盛られていて、「この後にステーキ喰う予定なんですが」ということを全く無視したようなボリュームだ。大人の頭ほどの大きさがあるオニオンローフをナイフでざくざく切りながらカクテルソースなどつけつつ食べちゃう。プリプリの海老や牡蠣に、蟹肉たっぷりのクラブケーキ。久しぶりに飲んだシャンパンがこれまた美味しくて、おおいに盛り上がった。

そして、メインの前にサラダやスープ。「本当にね、量が多いのよ……」とMさんに忠告を受けていたので、私とだんなでサラダ1皿をシェアしてもらうことにした。注文したのはこの店名物だというほうれん草のバルサミコドレッシングのサラダ。ナッツやチーズが散らされたほうれん草にはオレンジの果肉が添えてあり、バルサミコ風味のドレッシングもオレンジの香りが。ふわんと甘めでバルサミコの丸い酸味が漂うドレッシングがほうれん草に良く似合う。

で、いよいよ登場したのが12オンスのプライムリブ。厚みはたっぷり2.5cmほどもあるだろうか。16オンスを注文しただんなの方は軽く3cmはありそうだ。それがもう、皿から溢れそうなほどのボリュームで鎮座ましましている。添えられているのはホースラディッシュのソースとグレービーソース。リンゴの赤ワイン煮が添えられて、サイドディッシュに頼んだマッシュルームのソテーもこれまたたっぷり横に盛られている。
ミディアムレアで、と注文した肉は見事な紅色の切り口。でも赤くはない肉汁が肉の隙間にぎっしり詰まっているという感じ。こちらで食べるステーキは歯ごたえのあるものが多かったけど、この肉はものすごく柔らかだった。2.5cmの厚みをもろともせず、さくさくナイフで切れて口の中で溶けていってしまう食感なのに、そのくせ脂っこくはない。すごい、すごい肉だった。はっきり言って、日本で食べてきたどの肉よりも美味しい。なんでも使われているアンガス・ビーフというのは黒毛牛なのだとか。

「黒毛和牛も高級肉だもんねー」
「やっぱり黒牛は旨いのか……」
と感動しながらもりもり食べる……もりもり食べる……が、さすが300g強もある肉、食べても食べてもなくならない。16オンスを食べまくる男性陣はともかく、女性陣は12オンスの肉を前にだんだん修行僧のような面相になっていくのだった。前菜を食べまくっていた私も、道6〜7割にして断念。山盛りのマッシュルーム(20個以上盛りつけられていた)と共に、お持ち帰りすることとした。高級店だろうがなんだろうがアメリカにドギーバッグは欠かせない。
「持って帰っても良い?」
と髭のおっちゃんに尋ねると、「My plesure.」とにこりと笑って発泡スチロールのケースに詰めてくれた。

そして再びアピールし始めたのが最初にメニューの説明をしたお兄ちゃん。
「さぁ皆様、お待ちかねのデザートです」
とトレイに乗ったデザート見本を掲げてくる。
「中央がチョコレートブラウニー、こちらは名物、ピーカンパイ。ニューヨークチーズケーキもお勧めですよー。チョコレートソースとストロベリーソース、ブルーベリーソースをお添えします。私のお勧めはなんといってもチョコソース!(以下略)」
ステーキは食べ切らなくても、ケーキは食べたいのである。私はずっとずっとこういう店でケーキを食べたかったのだ。皆も揃って注文するようなので、私はニューヨークチーズケーキをいただいた。もちろんチョコソースがけ。注文と取り始めた兄ちゃんは、それを聞いて
「Perfect!」
と笑っていた。こういうところが全然高級店っぽくなくて、アメリカだなぁと思ってしまったり。

そしてやってきた、大人の手のひらから溢れそうなサイズのグレートなケーキ。チョコソースがたっぷりと、生クリームがたっぷりと、蘭の花まで飾られている。断面が巨大ならカットされた角度も大きくて、皿の上はケーキで小さな山ができていた。

時間は午後9時。3時間に及ぶ盛大な会食が終わり、ドギーバッグを抱えて皆と別れた。
独身男性陣は連れだって2次会に行くらしく、「日本食屋でラーメン食べよう!とダウンタウンに消えていった。こ、この後に及んでラーメン……。
アメリカのボリュームに、食欲魔人はちょっと撃沈気味だった。

9/10 (火)
づけ丼 (夕御飯)
ドライストロベリー入りコーンフレーク with 牛乳

昨日の夕御飯は、かつてなくヘビィだった。何もかもが美味しくてついつい前菜を食べ過ぎた状態で12オンスの肉に突入し、それが全部食べきれなかったのにケーキまで喰らって帰ってきた。我が家の台所にはレストランから持ち帰ってきた肉だのケーキだのが置かれている。

昨夜帰ってきたときは、
「ダ、ダメ、お風呂もはいれない……」
「上向きに寝ても苦しいんですが、どうすれば良いでしょう?」
「美味しかったよー、苦しいよー、うーんうーん」
と、この日記を書くどころか化粧を落としに洗面台に立つことすらおっくうな状態で早々に就寝したのだった。胃の膨満感はしっかり今朝まで続いていて、朝御飯も何も食べたくない状態。

「な、何か食べますか?」
と大学に行く前のだんなに一応聞いてみたものの、ぷるぷる首を振られてしまった。むべなるかな。

で、だんなが出発し、9時過ぎに起きてきた息子と一緒に朝御飯。
「……おかーさんは、お腹が苦しいので何も食べたくありません」
と息子に話してみたところ、
「ぼくはぁ、イチゴのカリカリを食べるよ。おかーさんも、それで良いんじゃない?」
と提案されてしまった。"イチゴのカリカリ"とは、ドライストロベリー入りのコーンフレークのことだ。数週間前に、「カリカリ食べたいなぁ」という息子をスーパーマーケットに連れていき、100種類ほどあるんじゃないかというコーンフレークの棚の前で「よし、選んでこーい」と解き放って選ばせたもの。息子が一瞬、クマのプーさんのコーンフレーク(←ちょっと高い)の前で「これがいいなぁ……」と呟いていたところ、「あ、あら、向こうにはイチゴの絵が描いてあるのがあるわよー」と密かに誘導して買ってしまったことは息子には悟られていない様子。

このイチゴフレーク、なかなかどうして美味しいのだった。牛乳かけるとイチゴがイチゴっぽくなるし、コーンフレークも好みの程度にほんのりと甘い。

プライムリブサンド
マッシュルーム炒め
グレープジュース

昼御飯は、昨夜の残りのプライムリブステーキをスライスしてサンドウィッチに。小さなロールパンを温めて中央に切込を入れてバターを塗り、レタスを敷いて斜めにスライスした肉をまんべんなく乗せる。ケチャップかマヨネーズかをかけようかどうか迷いつつ、「いや、でも肉が旨いし」と塩胡椒だけでガブリといく。肉の周囲には粗っぽく挽いた胡椒がこれでもかとまぶされていて、それがよいアクセントになったりして。

昨夜テーブルに出てきた直後のほやほやと温かい肉もサイコーに美味しかったけど、翌日食べてもしっかり旨い肉だった。2.5cm厚さの肉を口いっぱいに頬張る快感ときたら、一瞬「もう魚も野菜も要りません。肉だけ喰って生きていきます」と宣言したくなりそうになるほど。いや、でも魚も野菜も好きだけどね。ケーキも。

づけ丼
筍と油揚げの味噌汁
ビール(コロナ)

「夕飯の材料、何がありますかー?」
と、夕方に帰ってきただんなに聞かれ、冷蔵庫の中を思い描く。先日ビビンバやった時に買ってきてもらった牛肉が残っていたはずだ。
「……牛肉があるからステーキなどができますが」
と真顔で答えたら、「ま、またステーキ……」と泣きそうな顔に。ああ、そうだ、昨日も肉喰いまくったんだったよねぇ。

「……ああ、でも、鉄火丼みたいなの食べたいね」
と話をふると、
「じゃあマグロ買ってくるよー」
と買い物に行ってくれた。最近、2リットル入りの牛乳パックもえらい勢いで無くなっていく。アメリカ南部はそこそこ蒸し暑く、日本とそう変わらない気候のように感じるけれど、やはり圧倒的に湿度が低いらしくて恐ろしいほど喉が乾く。ついつい麦茶や牛乳の消費が激しくなる。

だんなが買ってきてくれた「Sashimi Grade」(←生で喰えます、の称号)のマグロをざくざく切って、今日は"づけ"にする。味醂と酒を火にかけて煮切り、醤油を加えて切り身にしたマグロを漬けていく。こちらのマグロは"さく"になどなっていなくて、まるでステーキ用であるかのような「肉片」になっている。刺身にすると、どうしても不揃いになってしまうけど、そこは気にしない。美味しいマグロが喰えるだけでも有り難いと思わなければ。

炊きたての御飯に数十分漬け込んだマグロを乗せて、刻み葱と胡麻をかける。漬け汁も軽く御飯にぶっかけて、わしわし食べた。傍らには、どうしても油揚げの味噌汁が飲みたくて、筍(←一昨日の天津丼の残り)と共に味噌汁にしてみた。まだ胃が疲れ気味だったので(昨夜の食事のカロリーも恐ろしかったし)、特におかずを増やすことはせずに、づけ丼と味噌汁のみを堪能しまくった。堪能しまくったあまりに、2合炊いた米が綺麗になくなってしまったことは特に気にしないことにする。

デザートは、梨。アジアンペアだかジャパニーズペアだか、そんな名前で売られていた洋梨じゃない日本のものっぽい梨だ。小ぶりのそれは今ひとつ水分が少なめだったけど、ちゃんと懐かしい梨の味がした。

9/11 (水)
海老と鶏肉のココナッツミルクカレー (夕御飯)
だんな特製 手打ちうどん(ひやひや)
麦茶

先日だんなが打った手打ちうどんの残りを食す朝御飯。
前回茹でた時に、やはり固かったので今日は根性入れて16分茹でてみた……が、やっぱりどうも今ひとつ食感がよろしくない。固い。

「これは……ゆで時間云々じゃなくて粉の問題じゃないのかなぁ」
「強力粉が多いかね、やっぱ」
とずるずる食べながら家族会議。
こちらにはいわゆる「うどん粉」が無いので、薄力粉と強力粉をブレンドして中力粉(もどき)にして使っている。粉の風味なんかも全然違うので、アメリカうどんはなかなかどうして難しいのだった。

今度はたーっぷり作って、かしわ天作って、"うどん人"Iさんも呼んで一緒に食べよう。

アメリカでこんなことやっている間に、日本では讃岐うどんの盛り上がりが最近すごい様子。
「dancyuとSPAでうどん特集やってるー」(義妹に買ってくれぇとお願いした)
とか、
「千趣会で讃岐うどん頒布会が始まったー」(さすがに通販はできないけど、日本からカタログだけでもと送ってくれた方がいらっしゃった、まだ届きませぬが、楽しみー)
とか、
「セルフの店、はなまるうどんが、東京にオープン!」(気になる……)
とか、何だか大変なことになっているらしい。
ただでさえ、「なんかねー、1週間に一度くらい、猛烈に"日本帰りてぇ〜"って思っちゃうんだよねぇ」と、"うどん人"Iさんはホームシック気味だというのに、そんな情報聞いたら日本に帰っちゃいそうでちょっと心配なのだった。
まだあいにく「日本に帰りてぇ〜」と猛烈に思うことはないんだけど、これがもし「dancyuとSPAでマンゴプリン特集やってるー」とか「千趣会でマンゴプリン頒布会が始まったー」なんてことになったらちょっとヤバイかもしれない(ありえないって、それは……)。

はちみつトースト
ゆで卵
アイスミルクティー

A先生からたっぷりのハチミツをいただいて、ハチミツ景気に沸く我が家。
息子と二人の昼御飯は、ハチミツトーストになった。今日はハチミツをこってりパンに塗ってからオーブンへ。ハチミツが染みた端の方がサクッとなって中央はしっとり。火傷しそうなそれをアチアチ言いながら囓る。

お供にアイスミルクティー。ガロン売りのアイスティーを試しに買ってみようと、先日「甘くないやつにしようね」と選んで買ってきたというのに、それは確かに「SUGAR FREE」と書いてあったのに、それはしっかり甘かった。よく見ると、「SUGAR FREE」の文字の下に小さく小さく「アスパルテームで甘さをつけています」としっかり書かれている。
「アスパルテームかよ!」
「砂糖はいってなきゃ甘くてもいいのかよ!」
と家に帰って飲んでみてから気が付いた私とだんなは2人でアイスティーを罵倒した。でも罵倒しても甘いものが甘くなくなるわけじゃなし、着々と飲んでいる。あまりに甘いので、半分牛乳を入れるとほどよく甘くて美味しいなという感じ。今度はシュガーフリーの上にアスパルテームフリーのアイスティーを探してこなければ。

ところで今日は、9月11日で、アメリカ国民にとっては未来永劫忘れられないだろう日だ。
いつもはくっだらないソープオペラを流しまくっている昼間のテレビも、どこもかしこも特集番組ばかりでちょっとだけうんざり。「俺が正義だ」という大国ならではの雰囲気に、ちっこい島国の国民としてはなんだかなぁ、と溜息をついてしまうのだ。

海老と鶏肉のココナッツミルクカレー
鶏肉のオーブン焼き
ほうれん草のサラダ
ビール(コロナ)
ラッシー
自家製マンゴプリン

最近、ごそっと食材を色々買ってきた。
いただきもののフルーツケーキにホイップクリームを添えようと思って生クリームを購入
→余ってしまうだろう生クリームを何とかしようとマンゴプリン作製を思い立ち、材料となるマンゴー、ココナッツミルク、サワークリームを購入
→更に、サワークリームが今度は余ってしまうだろうから何とかしようとリコッタチーズのムースの作製を思い立ち、材料となるリコッタチーズを購入
→ココナッツミルクも余っちゃうなぁ、どうしよう……
そんなこんなで、「なんでこんなにデザートの材料ばっかり……」みたいな買い物をしてきたのだ。そして今日、肝心のフルーツケーキを食べる以前にマンゴプリン作り始めてるし。何やってるんだ、自分。

前回マンゴーの繊維が気になるマンゴプリンになってしまったため、今度は使うレシピを変えて「マンゴーをミキサーがけの後裏ごしする、なめらかプリン」を目指してみた。レシピにはココナッツミルクとサワークリームが入るのだ。大量に使うものじゃないからどちらも余ってしまい、ココナッツミルクを夕食に使おうということでタイ風カレーにすることにした。ケンタロウさんの本に載っていたそれが簡単な材料で作れそうだったので、海老と鶏肉入りのココナッツカレーを作ることに。

胡麻油で刻み生姜と刻みにんにく、豆板醤を軽く炒めて海老と鶏肉、セロリと赤パプリカを炒めていく。カレー粉小さじ1を放り込んでココナッツミルク200gを入れたら軽く煮詰めてとろみをつけ、砂糖とナムプラーと塩胡椒で調味して完成。非常に簡単だ。御飯に盛りつけたらたっぷりの香菜を上に散らす。

カレーに使った鶏肉の残りは塩胡椒でシンプルなオーブン焼きにし、野菜がいまひとつ足りないのでほうれん草のサラダも添える。ほうれん草と刻みトマトを合わせ、フライパンでカリカリに炒めたベーコンに醤油と酢と砂糖を放り込んだ熱いドレッシングをぶっかける。サラダには、ついでに一昨日の夜テイクアウトしてきたステーキ屋さんの炒めマッシュルームも加えて和えてしまったりして。何だか盛り沢山な食卓になってしまった。

ちょっとばかり甘さもあるココナッツカレーはココナッツの匂いもふわふわ漂って、ココナッツ好きには嬉しいかぎり。調子に乗って入れた豆板醤がちょっと辛かったけど、簡単な割にちゃんと異国っぽい味になった。香菜がまた似合う似合う。

そしてデザートに、アメリカに来て2度目の自作マンゴプリン。今回は気合いを入れて果肉をピュレにして漉し器で一生懸命漉してみた。参考にしたのは、パークハイアット東京のレシピ。この店(というかホテル)のテイクアウトマンゴプリンは「これが一番!」と感じる人がものすごく多い(私もその一人)。少しでもあの味に近づければと苦心したけど、マンゴーはやっぱり繊維だらけで漉してしまったら量が2/3ほどに少なくなっちゃうし、しかもあまり甘くない果肉だったしでかなり苦難の道だった。
食べ際にココナッツミルクベースのソースをかけて食べたプリンは、前回よりも確かに滑らかにできた。……けど、理想のあの舌触りにはほど遠く、やっぱり少々ざらつきが舌に残る感じ。ゼラチンがしっかり溶けなかったのか、漉し器の網を通してもまだマンゴーの繊維が多く残っていたのか、ココナッツミルクにざらつきがあったのか今ひとつわからないけど、また次回に課題が残ってしまった。理想のマンゴプリンへの道は遠い。

9/12 (木)
だんな特製上海焼きそば (夕御飯)
ドライストロベリー入りコーンフレーク with 牛乳

教会にて
 コーンフレークのピーナッツバターまぶし
 バナナパウンドケーキ
 ぶどう
 紅茶

今日は教会イベントの日。いつもより多少早く起きて、コーンフレークのごくごく軽い朝御飯。
「英語を第二外国語とする婦人と子供達を集めて、英会話やアメリカンカルチャーについて無料で講習してさしあげましょう」という毎週木曜日の午前中のイベントは、その間子供を付設の保育園で面倒をみてくれるし(息子にとっても同い年の子供たちと遊べる数少ない機会)、必死に英語を聞く良い機会でもあるしと先週からやってきている。

全てがボランティアと教会の資金で運営されているらしい会なのに、welcome会だった先週に引き続き、今週もワゴンにドーナツやらお菓子やらのたっぷりの食べ物が用意されていた。
「毎週、こうなんですか?」
とスタッフのおばちゃんに聞くと、
「毎週、こうなんですよ」
とのこと。だからここに参加する人は朝食抜きで来たりしているとか。
ハニードーナツが今日も山になっており、あとは、コーンフレークを甘いピーナッツバターで和えて団子状にまとめたようなお菓子も。カップケーキや葡萄なんかもある。紅茶を紙コップにいただいて、スナックを紙皿に取ってから着席。英会話の講習を受けながらもぐもぐと食べる。んー、コーンフレークのお菓子が旨いぞ、甘いけど。

海老と鶏肉のココナッツミルクカレー
おむすび
アイスティー

無事に午前中のイベントを終え、息子は息子で保育サービスから「これ、おやつだってー」と"アップルキャンディー"なる巨大な巨大なお菓子を包んでもらって帰ってきた。家に帰ってその巨大なアルミホイルの包みをあけると、真っ赤な丸い物体。周囲にはナッツの刻んだやつがまんべんなくちらされている。どうも、小ぶりの丸のままの生のリンゴにジャム状のコーティングを施してナッツをまぶしたやつらしい。甘そうな匂いが部屋中に広がって、「う、うへぇ……」と苦笑いする中、息子が「おいしいよー」と言いながら食べ始めてしまった。ああ、息子ったら身も心ももアメリカ人になりつつあるみたい。母はさすがにこの"アップルキャンディー"は今ひとつ食指が動かない。

昼御飯は、昨日のうちに残り御飯をだんなが握っておいてくれたおむすびと、昨夜の残りのタイ風カレー。おむすびとカレーは、何だか今ひとつ組み合わせとして奇妙なような気もしたけど気にせず食べた。

そうして午後は、何だか疲れたらしい息子と私でひたすら昼寝。だんなが帰ってきても昼寝。日が傾き始めても昼寝。結局起きたのは午後5時半を回ったところだった。あいやー。

だんな特製 上海焼きそば
牛肉と玉ねぎのうま煮
ビール(Michael Shea's Irish Amber Lager)

5時半過ぎて、おもむろに「WAL☆MART」にお買物。実は7月中旬に渡米してから今日まで留学費用が支給されていなかったのだ。これまでは日本から持ってきたお金でなんとかやりくりしていたけど、2週間ほど前から超激貧状態に突入していた。外食も極力避け、最低限必要なものしか買わない日々。でも、やっとお金が入ってちょっとだけ心が浮き立つ我が一家なのである。
「これでスキレットが買える〜」
「とりあえず来客用の椅子を買おう♪」
「いろいろ買うぞー」
「私はドライヤーが欲しいなぁ」
と、大盛り上がり。たっぷりの買い物ならやっぱりWAL☆MARTでしょー、ということで夕方遅くなってから買い物に出かけていった。

これまで欲しかったあれこれを購入し、購買欲が満たされて帰宅したのが7時半。ウェルチの葡萄ジュースまで買っちゃったぞ。

夕飯はちゃっちゃと作ろうということで、だんなが上海焼きそば作製を担当。私は、残り牛肉を玉ねぎと一緒に牛丼風の煮物にしてみた。WAL☆MARTには冷蔵の生中華麺が売られている。「AZUMAYA」なるブランド名のそのメーカーの品は、豆腐あり厚揚げあり、餃子の皮あり春巻きの皮あり中華麺あり、と日本人にとってはよくわからない品揃えになっている。しかもしれがサラダコーナーの一角にあるから、ますますわからない。絹さやとか茗荷、しその葉などが一緒になって売られている。モヤシもそこにある。

たっぷりのモヤシと牛肉を麺と共に炒めてオイスターソースと塩で味付け。ソース焼きそばより幾分さっぱりした麺の上には香菜をたっぷり盛りつけて食べた。ちょっと薄味の麺に、こってり煮付けた牛丼風の煮物が適当にアクセントになって良い感じ。
お金が入った喜びからか、ビール1本飲み干して9時過ぎに夕食を終えるころには何やらすっかり御機嫌になっていた私たちだった。

9/13 (金)
Pancake Pantry(Nashville)にて、シルバーダラーパンケーキ(15枚!) (昼御飯)
ハムチーズサンド
アイスカフェオレ

毎週金曜日は、だんなの授業も午前中だけで終了するということで、なんとなく定例として「金曜のお昼は一緒に外で食べようねー」ということになっている。今日は昨日の夜のうちから
「久しぶりに行こう!」
「"P"に行こう!」
と盛り上がっていた。もう2週間も愛しのパンケーキ屋に行っていないではないか。これは由々しき事態である。即座にさっそく速やかに行かねばならぬ。

で、"P"に行くということで朝は軽めに。
本当は整形された、あとは焼くだけの"パティ"も買ってきてあったので我が家でハンバーガーを作ることも可能だったけど、あえてごくごく軽くハムチーズサンドに。ハンバーガー用のバンズにボローニャソーセージとチーズを乗せてオーブンで軽く焼いてからアイスカフェオレと共にもぎゅもぎゅ食べた。

朝食を食べている間に、
「そうだ、"P"に行くならばH夫人も誘わなければならぬ」(H夫人も熱烈なP愛好者)
「そうねそうね、声をかけてみようかねー」
と留学生仲間Hさんの家に電話をかけ、夫人と娘さんを誘い出し、だんなさんは大学で授業中だというのに2人を拉致して研究所まで連れてきてしまった。12時過ぎて研究所に戻ってきて、妻子がそこにいるのを見てびっくりしているH氏。うやむやのうちに大勢連れだってPに行くこととなった。(もうPに行くこと自体がひとつのイベントになっちゃってるというか)

Nashville 「PancakePantry」にて
 チキンヌードルスープ
 Silver-Dollar Pancakes 15
 アイスティー

今日は我が家とHさん一家、更に「俺、ここにまだ来たことがないんだよね」というIさんも誘って総勢7人でパンケーキ。休日はずっと長蛇の列だし、平日のランチタイムも殺人的な混み具合のこのお店、ただし平日の午後1時前後はさささーっと波が引いてガラガラになる。狙い目はこの時間だ。

首尾良く全員1つの卓につくことができて、私はずっと気になっていたシルバーダラーパンケーキを。小さなパンケーキが8枚なら$3.85、15枚なら$5.45で1つの皿に盛られてくるらしい。15枚ものパンケーキ、どうやって登場するのだろう。積み上げられていたらそれはそれで壮観だし、並べられていてもちょっと想像を絶するものがある。ただただ「見てみたい」という感覚で、思わずそれを注文してみた。基本はホイップバターとシロップのプレーンなパンケーキだ。

だんなはテネシーカントリーハムつきの卵とパンケーキのセット、Iさんは「名前が気に入ったから」と、「Smokey Mountain Pancake」、息子は最近お気に入りのワッフルに今日はストロベリーソースがけ、Hさんはハムと卵とトマトのサンドウィッチに、H夫人はバナナとココナッツのトッピングのカリビアンパンケーキ。

やってきた15枚のパンケーキはやたらと壮観だった。14枚が美しく円形に並べられ、とどめとばかりに最後の1枚が一番上にぺろんと乗っている。たっぷりのホイップバターに、今日も温かいメープルシロップが瓶に詰められて添えられている。ごくごくプレーンなパンケーキ、しかし15枚もあるとなるととてつもなく迫力がある。苦笑いしながら食べ始めたけど、普通のパンケーキも5枚ですごいボリュームなのに、このパンケーキが3枚で大きいの1枚分とも思えない。2枚か2.5枚分で大型1枚分、という感じ。食べても食べても今ひとつ少なくならないミニミニパンケーキに、早々に余ったらテイクアウトすることを決意する私だった。

分厚く塩辛い骨つきハムがどかんと皿に乗っただんなの料理もけっこうすごい。好みの卵料理を2個分添えてくれるので「ポーチドエッグで」と注文すると、「火の通し具合は?ウェルダン?ミディアム?」とステーキのような事を聞かれていた。2個のポーチドエッグと巨大ハムと3枚のパンケーキのセットは、朝食にも良いような外見ではあるけど、いかんせん量は多い。「美味しいけどしょっぱい……」と少々苦戦気味だっただんなのハムは、私が口直しに横から何度も美味しくいただいてしまった。

だがしかし、パンケーキパントリー初挑戦のIさんの選択は、いまいち良くなかったらしい。
スモーキーマウンテンの山並みを表現したものなのか、黒々としたパンケーキはちょっとざらつきがあってしかも若干の苦みもあり、ふわふわのプレーンパンケーキの美味しさを想像するとちょっと期待はずれという感じ(プレーンをさんざん食べた人がこういうものを食べると美味しく感じるとは思うけど、初体験ではちょっと不向きというか)。メープルシロップではなくハチミツをかけるというのも若干イレギュラーでもあり、Iさんは唸りながら食べていた。今ひとつ「食」に興味がないというIさん、聞けば「メニューの選び方、どうも下手なんだよなぁ、俺」とのことで……(だからよけいに食に興味がわかないという悪循環……)。

スパゲッティミートソース
アイスカフェオレ

昼間、研究所に顔を出したときにA先生が
「クラシックの興味はありますか?今日の夜のコンサートのチケットがあります。ただし、2枚だけ」
とだんなに声をかけてきた。
「行きたいなぁ、でも息子がいるし……」とごにょごにょ相談したところ、H夫人と私の2人で行くことに。明日、留学生の男性陣は十数人で連れだって1日がかりでラフティングのツアーに行く予定なのだ。女性陣は子供もいるしということで留守番組。ラフティングは興味あるけど仕方ないしね、と言っていたところだったので、夫たちも快く「ああ、たまには子供と離れて遊んでおいでー」と言ってくれた。すっごく良い席らしいので、お洒落して夕方行こうね、ということに。

午後8時開演ということなので早めに夕御飯を食べてダウンタウンで開かれるコンサートに向かう。
ちゃちゃちゃっと作れるものをということでスパゲティ。しかも瓶詰ソースの残り物。昼間の"P"のヘビィな食事が胃にこたえているので、いつもと比べてかなり少なめな量をちゃっちゃと食べた。しかも私は準備も片づけも一切せず、
「髪がー、顔がー、服もどうしましょー」
と一人寝室でばたばた格闘している始末。ご、ごめんねだんな。

「The Nashville Symphony」によるオーケストラ公演はカーターの「Symphony No.1」と「Holiday」、モーツァルトの「Sinfonia Concertante in E-flat majar」、サン=サーンスの「Symphony No.3 in C minor」。最後の曲はパイプオルガンとピアノも加わる大編成のオーケストラで聴き応えがあったし、そもそもオーケストラのコンサートなんて何年ぶりかという久しぶりなものだったのでとても面白かった。カーターは……よくわからんかったけど。

周囲はきっちりお洒落してくる人と非常にラフな格好をしてくる人の2通りいて、そして白人だらけ。アメリカ南部の中でもNashvilleは極めて黒人が少ない地域なのだと聞くけど、街を歩けばアジア系もいっぱいいるし、黒人もまたたくさんいるしでとても雑多な人種"いかにもアメリカだなぁ"という印象を受ける。でもこういうイベントに参加するとあからさまにその"色"が偏っていたりして、これもまたアメリカなんだろう。ショッピングモールによっても、場所によって「白人だらけ」「黒人だらけ」とかなりあからさまに別れている。人種差別というわけではないけど、"区別"はかなり明確につけられているという感じ。

9/14 (土)
Merchant's Grill (Nashville)にて、シュリンプカクテル (夕御飯)
レーズン入りコーンフレーク with牛乳

今朝、だんなは朝6時半起きで家を出ていった。今日は毎年恒例だという、留学生仲間によるラフティングツアーなのだとか。総勢9人、ワゴン車を借りて早朝から深夜までの一日がかりの大ツアーであるらしい。
行ってみたい気はするものの、その間に息子を誰かに見ていてもらうのも申しわけないし、というわけで子供のいるお母さんたちは留守番組。
これ幸いと、H夫人とその娘さんと共に、今日はこちらはこちらで遊んでしまおう!ということになった。

だんなを送り出した後、のんびりのんびりした後、起きてきた息子と一緒にシリアルの朝御飯。
これから夕方までぶっ通しで遊ぶとわかっていればもうちょっと一生懸命食べたものを、ごくごく軽い朝御飯で出発してしまったのだった。

Nashville 「Cumberland Science Museum」内カフェテリアにて
 ツナサンド
 メローイエロー

10時半、H夫人の車に同乗させてもらって、行ってみたのは車で15分ほどのところにある「Cumberland Science Museum」なるところ。話によると、子供がいかにも好きそうな「ボタンを押すとなんか動く」系のものがいっぱいあるということで、しかもサイエンスミュージアムというネーミングからして、日本の「国立科学博物館」チックなものが想像できてしまう。これなら4歳の息子も1歳半のSちゃんも多少は楽しめるだろう、と軽い気持ちで向かったのだった。

ところが、ちょっと想像と違った……というか想像を絶する施設だった。
6歳くらいにでもならないととても上れそうにないハシゴ状の遊具が上の方まで伸びていたり、螺旋の急な滑り台があったり、全身くまなく使わされるようなものが山ほどあるのである。ボタンをポチッと押して終わるようなものは逆に少なく、床にある鍵盤を踏めだの自転車をこげだのと、もう大変なことになった。もうお母さんたちはへとへとである。1〜2時間でさらっと出てこられるかと思っていたのに、しっかり付設のプラネタリウムまで楽しんでしまい、あっという間に12時を過ぎた。

施設を出ちゃったら再入場は無理そうだし、と園内をみると小さなカフェテリアしかない。しかもそこで売られているのはジュースとアイスとサンドウィッチ類とお菓子だけ。それが全部、自動販売機での販売。
「と、とりあえずここで軽く食べて、」
「で、夕方に夕食兼ねてどっかでしっかり食べましょうかね」
と、その自動販売機飯に挑戦することになった。ホットドッグやツナサンド、ハムサンドなどが1パック1ドル50セントほどで売られている。コインを入れてボタンを押すと、ガラス張りの向こうに詰められているのが見えるパック類から1つだけポヘッと押し出されて下に落ちてくる。どきどきしながらツナサンドを買い、ジュースを買って息子と1切れずつ食べた。

セロリやピクルス、玉ねぎがたっぷり入ったツナサンドは、私の知ってるツナサンドとは全く違う風味だった。それでもパンはふわふわだし具沢山だしで、思ったより不味いものじゃない。子供たちにはそれだけじゃ足りなそうだったのでクッキーなども買って食べさせ、いざいざと午後に出陣。

Nashville 「Merchant's Grill」にて
 Shrimp Cocktail
 Gumbo Soup
 Marinated Breast Chicken
 ジンジャーエール
 

結局3時頃までミュージアムで遊び狂っていた子供たち。4歳児も1歳児も園内を駆けずり回るようにして上から下まで遊び尽くした。「そ、そこは昇るの止めようよ……」というちょっと危険なエリアまでどかどか昇って行ってしまう子供達をおっかけて、かつてなく疲労した親が2人。
「ここはもう、豪勢なもの食べちゃいましょうね」
「そうそう、男達は男達で好きやってるんでしょうしね」
と、ダウンタウンへ繰り出した。午後4時、半端な時間で客も少ない「Merchant's Grill」に赴いて、とりあえずジンジャーエールを立て続けに2杯飲む。
「どこか、ダウンタウンで良いお店知ってますか?」
とH夫人に言われ、「あの古めかしい店が、いかにもってアメリカチックな店で良い感じでしたよー」と一度来たことのある店に私が連れてきたのだった。

前菜にシュリンプカクテルとガンボスープを皆でつつきまわし、主菜に鶏肉のマリネグリル。
「私、シュリンプカクテル好きなんですよねー」
「あー、良いんじゃないんですか、注文しちゃいましょう」
「……いや、でもね、メニューに"時価"ってあるんですけど……」
「いや、どうせ男達は(以下略)」

そしてやってきたシュリンプカクテル。後で値段を見たら14ドルもしていたけど、細かいことは気にしない。
カクテルグラスにカクテルソースが満たされて、そこにはブリブリとした巨大海老が8尾突き刺さっていた。想像以上に立派な海老で、疲れた妻たちは大喜び。それ以上にこれを気に入ったのが1歳のSちゃんで、ニコニコ笑いながらモリモリ海老を食べ始めた。我が息子の1歳児時代も凄かったが、目の前で海老を大量喰いする女の子も凄いものがある。負けずに母達も喰う。プリップリの海老にホースラディッシュ味のトマトソースが良く似合う。ビールがあればもうサイコーという感じ。「疲れが癒されるわー」などと言いながらジンジャーエールをもう一杯。

押し麦が入ったガンボスープは海老だの鶏だのソーセージだのの具沢山で、胡椒がこれでもかこれでもかと効いていた。それを啜りつつ、最後にやってきたのは12オンス鶏肉の巨大なグリル。山盛りのエンドウ豆のガーリック炒めとマッシュポテトが添えられていた。ほんのりビネガーとハーブの効いたマリネ液に漬け込んでから焼いたらしい鶏肉は、皮目がパリパリでとても良い感じ。白っぽい褐色のソースが下に敷かれていて、これもほんのりハーブの味。適度に酸味の効いた鶏肉が、甘ったるい系が多いアメリカ飯においては新鮮なほどさっぱりしていた。Hさんの、ディジョンソースのグリルドチキンもかなりいけた(交換して食べてみた)。

気が付くと、ジンジャーエールは4杯目になっていて、すっかり満腹。
「デザートお持ちしましょうか?」
と問われて、「い、いらない……」と答え、
「コーヒーかエスプレッソでも?」
と更に問われて、「ご、ごめんそれもいらない……」と答え(飲みたかったけど私の息子もHさんの娘も飽きちゃって限界だったのだな)、「こんなにいそいそと出たら"不味くて不快だった"とか深読みされちゃうかしら」とちょっとばかり申し訳なく思いながら食べきれなかった息子用のフライドポテトやつけ合わせ野菜をドギーバッグに詰めて持って帰ってきた。時刻は午後6時。

息子もSちゃんも久しぶりに子供同士で遊べたことだし(3歳の年齢差はちょっと大きいけど、まぁ)、親も親で久しぶりに同性だけでペラペラとおしゃべりできたしで、ちょっとストレス解消になった一日だった。

9/15 (日)
帆立のクリームソーススパゲッティ (夕御飯)
チーズハンバーガー
牛乳

昨夜、だんなの帰りは日付が変わる頃だった。それからお互いにあーだこーだとその日のイベントについて報告しあい、寝たのは1時も回った頃。肉体的に疲れていたこともあって、今朝は10時過ぎまで爆睡していた。なんか半日損した気分。

朝御飯は、一昨日あたりに買ったハンバーグのパティをこんがり焼いてチーズを乗せ、自家製ハンバーガー。各自存分にケチャップをこてこて盛りつけて食べる。巨大なパティが6枚も8枚も入っているこちらの肉パックは相変わらず巨大で、なんとか4枚パックのものを探して買ってきた。朝食にハンバーガー食べるようになっちゃったなんて、数ヶ月前の生活を振り返ると、徐々に自分たちがアメリカ人に移行しているようでちょっと怖い。

REBANON 「PRIME OUTLETS LEBANON」内「Frank & Stein」にて
 ミックスソフトクリーム

一日中家にいても虚しいので、朝食食べたらお買物。我が家から40マイルほど離れたところにある巨大アウトレットモール、「REBANON」にお買物に行くことになった。ずっと買いたくて買いたくて買いたかった調理器具類を買いに行くのだ。

調理器具専門のアウトレット屋で、無事にスキレットを購入。ずっとフライパン代わりに深さのあるチキンフライヤーを使っていたけど、これでやっとちょっと軽め(でも重い)の炒め鍋を使えることになる。続いて、前回見かけて購入を断念したミートスライサーを購入しようと。だが、店内のその前回置かれていたコーナーにそのブツはなく、「あら、もう扱ってないのよ」と店員さんに言われてしまうのだった。今日はこれを買いに来たのに〜〜〜〜。(でも、現在この日記をつけていて検索していたところ、オフィシャルサイトが一番安いと理解して通販を即座に決意)

傷心のまま、
「ま、仕方ないですね」
「こういう店は、見つけたその時に買わなきゃダメなんだよね」
と、"何か甘いものでも食べよう"とモール内のフードコートに立ち寄った。ホットドッグ屋さんでアイシー(シャーベットドリンクみたいなやつ)とソフトクリームが売られていたので1個ずつ購入。ソフトクリームの種類がバニラとチョコだったので「ミックスもあるはず」とメニューを眺めると"twist"と書いてある。ミックスソフトクリームはツイストソフトクリーム。なるほど。

おそらくは低脂肪乳を使っているだろうソフトクリームは、その割にねっとりこってりとした濃厚な口当たりだった。チョコの風味はちょっと希薄で、何かを添加して風味づけしたような強めの牛乳臭さがある。甘すぎることもないし、けっこう美味しかった。

そして傷心を引きずりながら我が家最寄りのモールに立ち寄り、ウィリアムズ・ソノマの台所雑貨屋さんでもあれこれ物色。アウトレットモールと異なり、ものすごーく良い商品が置かれているけど、ものすごーく高い。探していたオイルポット(揚げ物後のオイルをしまっておくやつ)なんて、1リットル用が30ドル近くもして、苦笑いしながら帰ってきた。とりあえずは、オイルポットはミートソースの空き瓶か何かを使うことにしよう……。

帆立のクリームソーススパゲッティ
豆腐と葱の吸い物
牛肉と玉ねぎのうま煮(数日前の残り)
フライドポテト・えんどうのガーリックソテー・マッシュポテト(昨日の残り)
ビール(コロナ)

我が家近くのスーパーマーケット「Harris Teeter」は、ほんの少しだけ高級さが漂うスーパーマーケットで、日本で言うなら"ピーコック"とか、そんな感じ(店の規模といい)。もうちょっとダイエーとか西友とかという雰囲気が漂うのが「Kroger」とか「WAL☆MART」というところだろうか。そしてもうひとつ、ちょっと離れたところに「Wild Oats」というマーケットもあった。ここはオーガニックものに強いところであるらしく、そして「高い」という噂も聞いていたので、一度も行ったことがなかったのだった。

先日、「クロテッドクリームが恋しい……」とトップページで呟いていたところ、「Wild Oaksで発見しました!」とWeb日記書き仲間(アメリカ在住)Sちゃんが教えてくださって、そして今日やってきてみた次第。

小綺麗な店内には、他では見られない穀物のセルフ量り買いのコーナーもあったりして、ちょっと独特。充実したチーズ売場に魚介のコーナー。「Sushi」とでっかく書かれた寿司コーナーもある。豆腐の種類も豊富で、「オーガニック」=「健康志向」=「ジャパニーズフードは健康的」という図式が見え隠れするスーパーだった。確かに高い。キャンベルのスープが1缶50セントで買える今、オーガニックとはいえ同種類の缶詰スープの値段は3倍以上だ。野菜も果物も肉も新鮮そうで良い感じ。でも高い。必要な分だけ買いに来る分には、すごく便利なスーパーだということがわかった。

懸案のクロテッドクリーム、このメーカーのものは「Clotted Cream」と「Devon Cream」というものが区別して売られているよう(しかもブランデー風味クロテッドクリームなどという魅惑的なものもあるよう)だったけど、このスーパーにはDevon Creamというだけが売られていた。クロテッドクリームの別名がデボンクリームなのだという話も聞いたことがあるので、多分似たような者なのだろうと勝手に解釈。あとはスコーンを用意するだけだ。
ついでにとプリプリした帆立なども購入して、すっかり御機嫌になって帰ってきたのだった。
夕飯は、帆立のクリームスパゲッティ。オリーブ油でにんにくと共に帆立を炒め、生クリームをだばだば入れてちょっと煮詰めてとろみをつける。そこに茹でたパスタを和えるだけ。黒胡椒をがりがりかけて、「これ乗せたら美味しいかもよー」なんてベーコンビッツも乗せたら、なんともアメリカンな外見になってしまった。

昨夜レストランから持ち帰ってきた残りのお総菜に、数日前の残りの我が家のお総菜。更に残ったうどんだしに葱と豆腐を放り込んで食卓に出したら、ものすごく調和の取れていない光景になった。でも気にせず食べる。
あまり火を通しすぎないように作った帆立のパスタはなかなか美味しかった。煮詰めた生クリームはちょっとばかり煮詰めすぎてちょっと汁気が足りない風情になったけど、胡椒がりがりかけて食べるとけっこういけた。フライドポテトを食べながら飲むいりこだしの和風スープというのは……なんともいえなかったけど。