"Yaki-Mandu"
カルビタン
ここ数日、カルビタンが恋しかった私。土曜日あたりから
「日曜にカルビタン……ああ、カフェコリアは日曜休みだやー」
「じゃあ、週明けにカルビタン……」
などと、カルビタンカルビタン呟いていたところ、だんなにカルビタン熱が伝染したらしい。
「君がカルビタンカルビタン言うものだから僕まで食べたくなってしまったじゃないか。そういうわけで今日はカルビタンだ」
と、11時に店が開くのを待ちかねたように朝食抜きで家を出て食べに行った。
我が家から車で20分ほどの距離にある「Cafe Korea」は、焼肉はやっていない韓国料理屋さん。夫婦で経営しているような小さな小さな店で、壁に貼られたメニューハングルだ。ここのカルビタンは白くとろっと濁ったスープが絶品で、とんこつラーメンへの飢えをなんとなく癒してくれるような気がする(豚骨ではなく牛骨スープではあるんだけど)。
留学生仲間のIさんMさんコンビはいたくこのカルビタンをお気に入りで、週に1度くらいの割合でこの店にやってきているのだそうだ。カルビタンだけを注文し、無料でついてくるキムチや御飯をばかばかお代わりして食べていたところ、ついに「御飯のお代わりは1杯1ドル」という新制度が起用されてしまったらしい。
テーブルにつくと出てくる、白菜のキムチ、大根のキムチ、ほうれん草のナムルともやしのナムル、そして今日はさつまあげのナムルのようなものも出てきて合計5種類。いつもは前菜にパジョンを頼むところ、メニューの「Yaki-Mandu」なるものが目について
「焼き……饅頭?」
「……ということかしらね?」
と、それを取ってみることにした。
やってきたのは、まんま"焼き餃子"そのものだ。多めの胡麻油で泳がすように揚げ焼きしたようなそれは、3面にこんがりと焼き色がついている。ちょっと大きめの餃子といった外見で、味も餃子。中身は豚肉と葱を合わせたようなもので、そのへんの日本料理屋で食べるよりよっぽどまともな餃子の味がした。
そしてカルビタン。大きな器にたっぷりと、スープはぐつぐつ言いながら出てくる。骨つきの肉が5かたまり、大根と春雨、そして刻み葱がどっさり入っている。御飯食べつつスープを啜りナムルやキムチ、ついでに焼き餃子を堪能した後は、茶碗に残った御飯をスープの中にがばーっと落としてかき混ぜ、雑炊状にして食べる。その頃には鼻の頭に汗が滲み出てくるので、真冬でもコートの下は薄着にして赴くのがこの店に行く基本だ。今日もしみじみ美味しかった。
茹でホワイトアスパラの半熟卵添え
ガーリックトースト
近所のスーパーに生のビーツが安く売られていて、ずっとずっと「これはボルシチを作ってみるチャンスだ!」と思っていたのだった。持っているレシピはビーツの水煮缶詰を使うものばかりだったので、ネットで検索して渋谷ロゴスキーのレシピなるもので作ってみることに。
ビーツは、"赤いかぶ"といった感じの外見。茎が赤い葉が里芋のような表皮のカブ型の根菜から伸びている。皮を剥かず丸のままのビーツを、まずは下茹でしていく。その間にビーフコンソメを入れた鍋で豚肉を煮込んでいく。
レシピには「トマトピューレを入れよ」とあるけれど、てっきりストックがあると思っていたトマトピューレが我が家に無かった。もう煮込みは始まっているし、夕飯までそれほど時間もない。
「こ、これはケチャップを入れるしか……」
と巨大なハインツのボトルを握りしめ、「でもさすがにそれは違うだろう」と、もう一度棚を漁る。キャンベルの濃縮トマトスープ缶が出てきたので、試しにと開けて舐めてみたところ、なんとかトマトピューレの代用になりそうな感じだ。"トマトクリームスープ"じゃなくて"トマトスープ"だったのがちょっと幸いしたらしかった。この段階で「初挑戦ボルシチ」は「初挑戦ボルシチ キャンベル風味」になってしまったのだけど、気にせず調理を続行する。
トマトピューレ(代わりのキャンベルスープ)とざく切りトマト、にんにくのかけらを鍋に放り込み、更ににんじん、玉ねぎ、じゃがいもを加えていく。調子に乗ってビーツを多めに茹でてしまったので、本当は最後の最後に加えるビーツも角切りにして早めに放り込む。キャベツとローリエを加えたら塩胡椒してできあがり。途中で水分が随分と飛んでしまって、シチューというより"煮物"になった。なんか、できあがり写真も参考にしていたものと随分と違う感じに。やはりキャンベルがいけなかったのだろうか。
皿に盛りつけ、最後に千切りにした茹でビーツとサワークリームを添えてできあがり。初めて触ったビーツは、なかなかすごいものだった。丸のまま茹でているのにゆで汁はすぐに真っ赤になり、スライスすると切り口から赤い汁がだばだばとこぼれている。水で洗っても簡単には落ちない赤色が指や服について、台所は猟奇スプラッタドラマが展開されているような光景になった。面白い野菜だなぁ……。
甘さのあるビーツがたっぷり入って、スープはほの甘くできあがった。想定していたボルシチの味に近いものができて、とても満足。
バターをたっぷり塗った黒パンでも添えたいところだけどガーリックトーストで我慢して、バリバリパンを食べつつボルシチを啜る。
チーズトースト
カフェオレ
なんでも、ボルシチは3日かけて味わうのが良いのだそうである。1日目はできたてのボルシチの味を楽しみ、2日目は煮込まれて煮くずれつつある具とスープの一体感を楽しみ、3日目はパスタや米を入れて煮込んで雑炊風にぐだぐだにして食べる……とか何とか。
その話を知った時に、学生時代の友人の話を思い出した。一人暮らしのその男友人、自炊はするけど面倒なので毎回山のような煮込みものを作ってしまうらしいのである。
「ポトフみたいなやつ?作るわけよー」
「おー、えらいえらい、すごいすごい」
「で、次の日食べるとなると、飽きるわけよ。で、別の味にするんだけど……」
と、その友人は武勇伝を語ってくれた。曰く、次の日にはホワイトシチューのルーを入れ、更に次の日にはカレーのルーとか入れたりするんだと。シチューの後にカレーに加工しても、けっこう食べられる味になるんだぞー、などと言って笑っていた。
「でも、あれはいけない。あれだけは二度と食べたくない」
「?」
「カレー味のおでん。あれはダメだった……」
もう、阿呆というか馬鹿というか勇者というか。それ以来、私はカレー味のおでんだけは作るまいと思っている。
それはそれとして、2日目のボルシチは味も馴染んですっかり美味しくなっていた。やはり煮込みものは翌日の朝が一番旨いと思う。キャベツもじゃがいももすっかりビーツ色に染まってしまい、どころか豚肉まで美しき紅色に染まっている。トマトのオレンジがかった赤とは違う、パッションピンクが混ざっているようなすごい色なのだった。
お供にチーズトースト。数週間前に買ってきたエメンタールチーズをフランスパンの上に乗せてオーブンで焼いたもの。
朝からシチューっぽいものを食べてしまったので息子と2人の昼御飯は軽めに。
「おかーさんおかーさん、ぼくは、ごはんが食べたいなぁ。卵のごはんがいいなぁ……」
と詳細なリクエストが息子から出されてしまったので、じゃあ卵御飯にしましょう、と冷凍御飯を解凍した。
ちょっとだけ手間かけてどんぶりものにしようと、鍋に醤油と味醂を温める。溶いた卵をざざっと流したら蓋をして蒸し煮などして1分ほど。半熟に固まったところで御飯の上にざざっと流した。
鶏肉を入れて親子丼にすれば良かった、と気が付いたのは卵どんぶりをすっかり食べ終わった後だった。卵どんぶりも卵どんぶりで美味しかったりするのだけど。
にんじんのグラッセ
ロメインレタスのシーザーサラダ
さやえんどうの味噌汁
羽釜御飯
ビール(Michelob Black Tan)
苺
昨日あたりから、無性に魚が恋しくなった。我が家はかなり"肉喰い"寄りだと自覚しているけれど、本当のところは4日に1日くらいは魚を食べるべき……というか食べたいなぁと思っている。
「で、魚を食べたいのです」
「ふむふむ」
「こう、白身の魚に塩胡椒がりがりかけてね、小麦粉ふってバター焼きか何かにしてね、レモンをキューッと絞って食べたいのです」
「いいねぇ〜」
と、大学から帰ってきた直後のだんなに訴えて、オーガニックスーパー「Wild Oats」に買い物に行った。この近辺ならこの店が一番魚介が充実している。鮮度もまぁまぁ。でも高い。
「あああ、鶏肉は1ポンド2ドル程度で買えるのに……」
「鮭は6ドル、平目は12ドルだって……タラもあるけど、11ドルかぁ……」
と、売り場でしばらく悩んでしまう私たち。よく考えたら魚の値段そのものは日本とそれほど変わらない気もする。でも、肉の値段の数倍と思ってしまうと、やっぱりなかなか手が出せないのだった。でも買う、買うぞ、今日は魚を買いに来たのだから、と、結局タラを買ってきた。予定通りバター焼きにして食べることにしよう。
残りもののにんじんはグラッセにして横に添え、シャリシャリした野菜も食べたいと買ってきたロメインレタスはシーザーサラダもどきに。マヨネーズをオリーブ油で薄め、レモン汁と刻みアンチョビを加えた適当なドレッシングをレタスにかけ、黒胡椒をがりがりかけて食べる。
マグロでもなく鮭でも帆立でもない魚介料理としては、すごく久しぶりな今晩の我が家の食卓。ちょっとばかり火を入れすぎたか、2切れ焼いたうちの1切れのタラは皿に盛りつけるのも大変なほどグズグズに崩れかけてしまった。スプーンを使いつつ小皿に取り分け、レモンをぎゅうぎゅう絞って食べる。そうそう、こんなのが食べたかったのよー、という味がした。
高いとか種類がないとか言ってないで、やはり魚も食べなければ。
フレンチトースト
牛乳
ボルシチ3日目。
「朝御飯に、煮込み料理があるってのはなかなか嬉しいよねぇ」
とか言いながら、すっかりぐずぐずになれ果てつつあるボルシチを温める。
ボルシチと共にここ数日食べていたのは、「フレンチトースト食べたいのよね」と買ってきたバゲットだったのだけど、フレンチトーストにされることなくガーリックトーストだのチーズトーストだのに加工されてしまい、残りはわずか。今日もバタートーストとして消費しようと思ったところ、さすがに購入してから3日経ったバゲットはすっかり乾いてしまいつつあるのだった。とてもじゃないけど固くてトーストしても食べられない感じ。
「これは……ボルシチに放り込んだらそれはそれで美味しいかも?」
と思いつつも、これはフレンチトーストを決行せよという神のお告げと解釈してフレンチトーストにしてみた。牛乳と卵を合わせた液の中にパンを漬け込み、しっとりさせてからバターでこんがり焼いていく。焼いているうちに乾いたパンがもろもろと崩れてしまって、"フレンチトースト"というよりは"パンの細切れ炒め焼き"的なものになってしまった。気にしない。
午後にちょっとだけ遠出してのお買い物予定。行ってみたのは友人Rさんから「ここね、メンフィスバーベキューが美味しいのよ」と教えてもらった初めてのお店だ。赤と黄色の看板が目印よ、と教えられて行った店はファーストフード店というかデリというかな内装の、ビニールクロスの赤白チェックもまぶしい小さなお店だった。カウンターで注文し、そのうち別のピックアップカウンターから「○番さーん、できたよー」と呼ばれる仕組み。
メニューは本当にバーベキューばかり。それと、バッファローウィングとサラダ類。バーベキューとサイドディッシュを盛り合わせたプラッターものなどもある。
"メンフィスバーベキュー"なるものは、アメリカ国内でも有数の"旨いバーベキュー"として評価されているらしい。骨つきリブ(これは牛肉)をソースを絡めつつじっくり焼いていくものと、豚肉をグリルしてほぐしてから(この、ほぐすという工程がちょっと不思議な感じがあるのだけれど)ソースを絡めるものの2種類が有名。後者の豚肉バーベキューは、写真のようにコールスローと共にバンズに挟んで食べるのが一般的なのだと聞いたことがある。
"chopped"と"pulled"から選べるポークサンド、私はpulledでラージサイズにしてみた。だんなはスライスビーフのサンドで、スモールサイズ。そして1袋1ドルのフライドポテトもつけてもらう。
3ドル89セントという私のポークサンド、けっこう高いかもと思っていたけれど、目の前にやってきた巨大なサンドを見て「これは……安いかもしれない」と思い直した。肉汁たっぷりの柔らかなほぐし豚肉に、ちょっと黄色みがかったコールスローがたっぷりと。そしてパンから滴るように甘辛いこってり味バーベキューソースがかけられている。これをどうサンドイッチとして食べれば良いのか困ってしまうほどのうずたかきサンドイッチだった。横の席のおっちゃんは、フォークで肉を半分ほどつついて食べてからサンドイッチとして食べていた。
バーベキューソースは、いかにもな甘さの(ブラウンシュガーがたっぷり入るのが味の秘密だそうで)トロ〜ンとしたもの。料理が出されるカウンターの奥には、容量25リットルほどもありそうな巨大な寸胴鍋にたっぷりとソースが入っているのが見えた。"秘伝の鰻のたれ"みたいに毎日継ぎ足し継ぎ足し作っているのかなぁなどと思わせられる。
なんでもこの店、NBSのニュースキャスターに"ここのバーベキューは最高中の最高だ!"と絶賛された店なのだとか。自慢のバーベキューポークは、確かに美味しかった。また来よう。
わさび醤油だれ
レモン醤油だれ
にんにくしょうがだれ
グレービーソース
大根・にんじん・貝割れ大根
羽釜御飯
ビール(Michelob Marzen)
私が風邪でぶっ倒れていたときにだんなが大量買い出しに行ってくれた時の"ローストビーフ用牛かたまり肉"が冷蔵庫に収まったままだった。賞味期限は2月6日。腐敗防止のガスか何かがパッケージの中に入ってようだけど、さすがに危険度上昇中の食材だった。賞味期限表示にあまり従わない我が家は
「うん……匂い、平気そうだね」
「大丈夫、悪くはないっていない」
と肉にふんふん鼻近づけてみたりつついてみたりして"こいつは食べられる"と決意。いつものようにミディアムレアな火の通し具合ではなく、若干たっぷりめに火を通して牛のたたきにすることにした。
塩と胡椒、おろしにんにくをこれでもかとすり込んだ塊肉をダッチオーブンで30分ほどかけて焼いていく。その間に酒と味醂を合わせて煮切ったものを準備し、1つには醤油を入れてレモンをギュッと絞り、1つには醤油を入れておろしにんにくとおろし生姜をたっぷりと混ぜる。もうひとつ、醤油を入れた小皿には練りワサビを多めに溶いておいた。たれはあれこれ種類がある方が楽しいし、と、この3種類がすっかり我が家の定番となっている。あとは、鍋にたまった煮汁に小麦粉を溶いてとろみをつけ、醤油を垂らして味を調えたグレービーソース。肉に巻いて食べられるように大根とにんじんの細切り、貝割れ大根を用意した。おかずはそれだけ。味噌汁も何も用意せず、ひたすらひたすら牛のたたきを食べましょうという感じ。
焼けた肉をうりゃーっと薄切りにしてテーブルに持っていき、うりゃーっと食べたらまた切りに行く。一体肉がどれほどの大きさだったのかは覚えてないのだけど、肉は1/3ほどを残して消え去ったのだった。ピタパン買ってきてあるから、明日の朝は牛のたたきのピタサンド……と言うとちょっと変な感じなので、自分の中では"ローストビーフのピタサンド"ということにしておく。
紅茶
昨夜の牛のたたきを、今朝はピタサンドにして食べる。
「おおー、ピタパンがあるぞ」
「家でピタサンドが食べられるぞ」
とうきうきとして買ってきたは良かったけれど、一体どうやって食べようかと考え中だったのだ。卵サラダかツナサラダか、と思っていたところだったので牛のたたきがあるのはこれ幸い。豪華ピタサンドになった。
2等分して軽くオーブンであっためたピタパンを袋状にして薄切り牛たたきを挟む。貝割れ大根とにんじんを添えたらグレービーソースをたらりとかけ、レタスも詰めたらマヨネーズもかけ、そしてパンパンに膨らんだピタパンにかぶりつく。薄くてもちもちしたパンは、サンドイッチ用のパンを使ったものとはまた違った味わいで良い感じ。鶏の照り焼きとか挟んでも旨いんだよねぇ。
最近、鶏肉はオーガニックスーパーの「Wild Oats」以外では買えないようになってしまった。WAL☆MARTあたりで買うよりは若干高価ではあるけれど、高すぎるわけじゃない。骨つきもも肉は1ポンド2ドル弱だ。鶏ももを2本買って250円程度なら、よく考えたら安いものなのだった。で、味は大手スーパーのものより格段に美味しい。「アメリカ、牛や豚はけっこう美味しいけど鶏は今ひとつなのよね」と思っていたのだけれど、ここで鶏肉を買い始めてからはその思いが改まった。
だけれど、問題は「骨なしの鶏もも肉が売られていない」ということ。日本であたりまえに買える骨なし1枚肉は、こちらではむね肉しか売られていない。しょうがないので骨つきもも肉を買ってきて台所で格闘しているのだけど、できあがりはどう頑張っても"ぶつ切り肉"に加工するのがせいぜい。1枚肉のもも肉を調理できるのはまだまだ先になりそうだった。
で、その鶏もも肉を使って昼御飯はみそ煮込みきしめん。だんなの実家から昨年末に届いた"救援物資"の中に宮きしめんのみそ煮込みが3袋入っていた。水で麺を茹で、途中で顆粒だしとペースト状の味噌を入れる。あとは好みで鶏肉やかまぼこや葱や卵入れて楽しんでね、とパッケージに書いてあった。
「そりゃ、鶏肉だよねぇ」
「かしわきしめんだよねぇ」
と、オーガニック鶏(ももぶつ切り)をざくざく投入。アジア食材屋で買ってきた長ねぎも加え、ついでに最後に卵も割り落とし、たっぷり3人前作ったきしめんをどんぶりによそった。
「あ〜、八丁味噌だ〜」
「この、甘さと渋さがなんとも言えんよねー」
「どえりゃーうみゃーよね」
「名古屋の味だぎゃあー」
と、怪しい名古屋弁を駆使しながらつるつると啜る。インスタント臭さもあまりないし、この地でこの鶏肉でこの味噌きしめん作って販売したら商売になりそうなほどの味だった。うみゃー。(まだやってる)
焼き餃子
だんな特製テールスープ
御飯
ビール
今日は留学生仲間のHさん宅で、餃子パーティー。
半年ほども前の餃子パーティー以来、Hさん宅では「あの時の餃子、美味しかったねぇ」とスキレットまで購入しせっせと餃子上達に励んでいたのだとか。
「でもね、どーしても上手に焼けないんです」
と言われ、我が夫が「では、焼き方のコツを伝授しませう」とHさん宅に出向くことになったのだった。となると、食いしん坊のMさんIさんあたりも黙っておらず、
「じゃあ、みんなで包んでいっぱい焼いて食べよう!」
ということに。我が家でタネをたっぷり作り、ついでに餃子の皮も150枚用意して夕方にHさん宅に向かったのだった。
まずは皆でせっせと餃子包みから。独身のMさんIさんあたりは餃子包みに慣れていないのでちょっとばかりやりにくそうにヒダを寄せて包んでいる。我が家はこれまで食べた個数が個数なので(1回につき60個くらいは包んで、そのうち半分を1人が包んだとしても、結婚してから500個は包んできているような気が……)、こればかりはさすがに早い。
「これはもう、経験積むしかないから……だから頑張って包みましょう」
とか言いながらせっせせっせと150個の餃子を包み終えた。壮観だ。
「スープも飲みたい」
という人がいたので、昨日からテールスープを仕込んでいた我が夫。炊きたて御飯とテールスープ、餃子にビールという幸せな食卓になった。
Hさん(だんなさん)は、夫の背後にへばりついて餃子の焼き過程を実地指導を受けている。私たちは、ただただ食べていくだけ。Hさんも私も椅子に根を生やして夫たちが焼いてくれる餃子をかつかつと食べた。
大勢で作って食べる餃子というのは、やはり楽しい。
「忘れないように、明日も餃子作ります」
と熱意を見せる(すごいよ……うちは2日連続餃子ってのはちょっとつらいよ……)Hさん一家と別れ、帰ってきたのは10時半。
「うまかったー!」
「お腹ぽんぽんやー!」
とか言いながら風呂も入らずに寝てしまったのだった。宴会はこうでなくては。
Meat & Three
(サーモンフライ・マカロニ&チーズ・コーンキャセロール・ペンネのサラダ)
アイスティー
前日の宴会明けの、怠惰な気分の翌朝。
「腹は空いたが〜、やる気がない〜♪」
と歌っていたところ、だったら昼飯がっちょり食べに行きましょうということになり「Copper Kettle」に。南部料理定食屋で味もアメリカンなのに、妙に懐かしさが感じられる素敵な店だ。先日留学生仲間のIさんMさんを連れて行ったところおおいにハマッてしまい、ちょこちょこ昼に行くようになったらしい。数週間前には
「この間、昼に行ったらさー!」
「トンカツです、トンカツがあるんです!」
「"トンカツ"って名前じゃなくてなんかソースがかけられるやつだったんだけど、"ソースいらない"って言って食べてみたら、もー」
「トンカツそのものなんです、日本のトンカツより美味しいくらいの……」
などと鼻息荒く報告された。トンカツは、我が家はまだ見たことがない。いいなぁ。
日替わりのメインディッシュが2種類に、10種類以上のサイドディッシュがあるデリ風の店。本日はビーフポットローストとサーモンのフライがメインディッシュだった。
「サーモンとー、マッケンチーズとコーンと……ペンネのサラダ、ください」
などとカウンター向こうの店員さんに伝え、盛り合わせてもらう。食べたいものを何も考えずに伝えたところ、マカロニチーズとペンネのサラダが並んで、マカロニ料理2種という感じに。
大人の手の平ほどもある鮭はこんがりフライになっていて、野菜のみじん切りがたっぷり入るタルタルソースをかけて食べる。生クリームの風味が濃厚なチェダーチーズ味控えめのマカロニチーズに、甘くとろんとしたコーンのキャセロール煮込み。ペンネのサラダにはオリーブやプチトマトがたっぷり入ってイタリア風の味付けになっている。
今日はバレンタインデーということで、デザートコーナーにはチョコレートケーキがいつもの3割増し多く置かれていたような感じ。
アメリカでは"女性から男性にチョコを贈る"といった習慣はなく、女性も男性も共に"愛する人に何かプレゼントを贈る日"ということになっているらしい。それでも一応"バレンタインの日のお菓子はチョコレート"という傾向が強いのか、デザートコーナーには見事なチョコレート色のケーキがいくつも置かれていた。美味しそうだけど、ボリュームたっぷりな1皿料理喰った後では到底入りそうにないので断念。今日は家でホワイトチョコのムースを作るのだ。
らふてえ
鮭御飯
大根ときぬさやの吸い物
ビール
ホワイトチョコのムース
午後になって、ホワイトチョコムース作成に取りかかる。ついでに先日買ってきた豚バラ肉で沖縄料理"らふてえ"まで同時進行で作り始めてしまい、台所は溶けるチョコレートの匂いと豚が煮える匂いという、あまり共存させてはいけないような臭気が漂ってしまった。やはりお菓子とおかずの平行作業はよろしくなかったかもしれない。
ホワイトチョコのムースは、お仕事ついでに先日Tさんに教えていただいたもの。ホワイトチョコのお菓子というものは(ホワイトチョコそのものも)私の中ではあまり優先順位が高いものではなかったのだけれど(普通の黒いチョコレートの方がずっと好きなので)、ヨーグルトが入りホイップした生クリームや固く泡立てたメレンゲを混ぜ合わせるそれは、なんだかとても美味しそうだったのだった。小さなグラスにでも固めるた方が良い感じになるかなぁと思いつつ、手頃な容器がなかったのでスープボウルに固めてしまい、スプーンですくって盛りつける形に。うちの冷たいデザートというものは大抵いつもこうなる。
そして、"らふてえ"。"らふてぇ"とか"らふてい"とか"らふてー"とか表記が色々あるようでレシピを探すのにちょっとだけ苦労した。
豚バラ料理って美味しいねぇと思い始めてから3年ばかり。この沖縄の煮込み豚も作ってみたいものの1つだった。ただ、泡盛を使うということと(近所の酒屋には売っていないし、デパート行ったら高いし……)、豚バラは"通常皮つきのものを使う"ということが難しくてこれまで作ることができなかったのだ。皮つきの豚バラは、これまでの日本の我が家付近では一度も見たことがなかった。
が、アメリカでは皮つき豚バラ肉がざくざく買える。どこででも買えるというわけではなく、どころか豚バラそのものにお目にかかるのが難しい。それでも、唯一豚バラが買える近郊のアジア食材店の豚バラブロックがたまたま皮つきなのだった。この皮つき豚バラで煮豚や角煮を作ると脂とはまた違ったぷるんぷるんのゼラチン層に表皮が変わり、それはそれは美味しくなる。
「これは……らふてえを作れという神様のお導きでしょうか」
「作ってみなければなりませぬ」
などと"らふてえ熱"が盛り上がり、かくして年末に日本から遊びに来たSちゃんが「何か持っていくものある?」と問うてきたときに
「泡盛持ってきてぇ〜!」
と頼む展開になったのだった。話によるとウォッカなどでも代用できるらしいけど、どうせだったら泡盛使ったちゃんとしたものを食べてみたい。沖縄料理屋さんなどにも行ったことがないので、らふてえ初体験の我が家なのだった。Sちゃんありがとう。いよいよらふてえが作れるよー。
いくつかのレシピを眺めてみた結果、参考にしたのはこのレシピ(エミおばさんの沖縄料理ばんざーいより)。たっぷりの泡盛を使うこと以外は、醤油と砂糖で煮込むというのは我が家の角煮と大差ない。それでも煮込み始めた台所には独特のアルコール臭が漂い始め、どんな仕上がりになるのかわくわくしてしまう。
……で、本当はこれが今日のメインディッシュになるはずだったのだけど、夕方になって"これはきっと明日の方が美味しい"という結論に。明日の晩、てろんてろんに煮えているだろうそれを楽しみにすることにして、今日の晩ご飯は急遽、鮭御飯とすることにした。
茹でてほぐした鮭と胡麻と胡麻油を御飯と混ぜ合わせ、茶碗によそったら揉み海苔を散らす。らふてえ製作過程でできただし汁の残りで吸い物を作り、あとは「お味見〜」と煮詰まりつつあるらふてえを1切れ。そして一昨日の牛たたきの残りもテーブルに並べたらそこそこ見栄えの良い食卓になった。
弱火でことこと煮込んでいたらふてえは、食事の頃には充分食べられる味にしみていた。我が家で作る角煮の分量より、醤油が少なく砂糖が多い。色合いは薄いけれど甘くこってり煮込まれたバラ肉は、肉も脂も箸でつつくと崩れてしまうほどに煮えていた。でも、明日はきっともっと美味しい。
焼き海苔でくるみながら鮭御飯をせっせと食べた後は、一応今日のメインイベントということでホワイトチョコのムース。砂糖とレモン汁でさっと煮た苺のソースを添えた。
「なんか、アイスクリームみたいな外見になったぞー」
と、大きな器に固まったそれをスプーンですくって取り分ける。チョコの分量はヨーグルトや生クリームの分量とさほど違わず、見た目は少なく感じたものの、ホワイトチョコの風味がすごく濃厚なムースだった。ヨーグルトのほのかな酸味が良い感じ。
アイスカフェオレ
「刻み玉ねぎと刻みピクルスも美味しいよ」
「ザワークラウト添えというのも悪くない」
と、あれこれバリエーションに富んだホットドッグに浮気していたここ数ヶ月。
「やっぱり基本に立ち返ってみましょう」
と、キャベツのバター炒めカレー粉入りを挟んだホットドッグを久しぶりに食べることになった。
ちょっと多めのバターでキャベツの千切りを炒め、ぱらっとカレー粉で風味をつけてくたくたにしたものを用意。パンにそれを挟んだらちょっと焦げ目をつけるように焼いたソーセージを挟み、オーブンであっためたらできあがり。これが我が家のホットドッグの味だ。晴海埠頭にかつて出没していた(今も出没しているかどうかは謎)ホットドッグ屋台の味を真似している。
久しぶりに食べたそれは、「そうそう、やっぱりこれが我が家の味」と思える旨さだった。浮気していてすまん、という感じ。
羽釜御飯
冷茶
今日は夜7時からアイスホッケーの試合観戦予定。しかし、昨日から煮込んでいた"らふてえ"はすっかり良い感じにできあがっていたので、夕飯を早めに食べてから行くことにした。4時半から米を炊き始め、夕方5時の夕御飯。どうせ試合会場で何か食べるだろうということで、御飯とらふてえだけをひたすら食べる夕飯となった。それではちょっとあんまりかと思い、買い置きの青梗菜など茹でて添えてみたり。
ヤバイくらいにとろんとろんに煮えた豚バラは、肉も脂も皮も、うっとりするような赤茶色に染まっている。透けてしまいそうな脂と皮の部分が、見るからに美味しそうだ。皿に盛りつけるだけでも崩れてしまいそうなそれをそっと盛りつけ、層を崩さないようにかぶりつく。もう、煮汁だか肉だか脂だかよくわからないほどに全体がテロンテロンになってしまっていて、我が家で作る角煮の味よりは幾分甘めに味つけられたそれがモロモロと口の中で溶けていってしまうのであった。うまい。うまいよ、柔らかいよ。角煮の場合は、下茹でしたバラ肉をカットしてから"醤油と酢を混ぜたものを絡めて焼き付ける"という工程が入っているので、表面が煮崩れてしまわない程度のちょっと固めの層がある。これはひたすら液体の中で茹でたり煮たりされていたものなので、境界が曖昧になってしまうほどのプルプルさだった。
「うまー!」
「らふてえ、うまー!」
「また、我が家の豚バラ肉の歴史が1ページ進んでしまった!」
と大騒ぎしながら2切れ3切れ食べ進む。おかげで2合炊いた米がなくなっちゃって、もう。
らふてえ、サイコー。今度はウォッカ使ってやってみよう(泡盛は多分入手不可能なので……)。
メローイエロー
そして午後7時。留学生仲間たちと一緒に、初めてのアイスホッケー観戦。オラが町には「Predators」(プレデターズ・意味は"捕食動物"だそうで)という名のアイスホッケーチームがある。ホームグラウンドはダウンタウンのGaylord Entertainment Centerというところ。鋭い牙が2本光っているサーベルタイガーの横顔がトレードマークなのだけれど、正直マーク負けしているんじゃないかと思いたくなるほど強くはない(はっきり言うと弱い)チームだ。"Central Division"という地区内で、現在ビリ。今日の対戦相手のAnaheimのチーム"Mighty Ducks"はPacific Division所属で、現在地区のトップ争いをしているほどの強いチームだ。1998年からこれまで18回ほど対戦したことがあるらしいけれど、我がチームが勝ったことは4回しかないらしい。
「でも、プレデターズ、最近調子いいもんねー」
などと言いつつ、ここはアメリカ人らしく巨大ドリンクを右手に持ち、更にバケツのようなサイズの紙箱に入った容量1.5リットルはありそうな山盛りのポップコーンをもしゃもしゃ食べながらのホッケー観戦。炭酸入りジュース(ビールでも可)にポップコーンって、止まらなくなる。
周囲のアメリカ人と一緒になって
「Booooooo!!」
とか
「Go! ……Oohhhhh〜Noooooo!」
などと言いつつポップコーンまき散らしながらの応援は、期待以上に楽しかった。しかも、第1ピリオド(アイスホッケーは1ピリオド20分が第3ピリオドまである)で2点先制したプレデターズが第2ピリオドで1点返され、でもそのまま最後まで逃げ切り、という素晴らしい勝利試合。
実はルールもろくに知らずに行ってしまったアイスホッケー観戦だったけれど、反則やら何やらもかなり理解できた。サーベルタイガーの牙を模した応援グッズがなかなかかっちょいいのも気に入ってしまい、もう1回観戦しに行こうと燃えつつ帰宅。ロゴ入りシャツとかも買っちゃいそうな勢いだ。
Stuffed Pizza (Sausage & Pepperoni)
Salad
ソーダ
久しぶりのスポーツ観戦にすっかり疲れた土曜日明けての日曜日。昨夜10時過ぎに帰宅する頃には、私はもとよりだんなの声が掠れていた。
今朝、私はたまたま8時前に珍しくも目が覚めたものの、だんなが起きてきたのはしばらく経ってからのこと。
「おんやぁ〜はにゃあぁ?」
と、ふぬけた声が寝室から聞こえてきた後、
「なんでこんなじかんになっちゃったかなぁ〜?」
と更にふぬけた声が。起こしてくれていいのに、んもぅ〜……などと言いながらだんなが起きてきたのは11時を過ぎていた。まぁ、そんな日もあるわね。
昼御飯は久しぶりにハンバーガーだ!と、この町の中に3店舗ある"チャーリーズ"というチーズバーガー屋さんに行くことに。近所のショッピングモール内に1店舗あるので買い物ついでにそこに行こうと目指したところ、退店していた。「もうすぐ新しい素敵な店がオープンしますよ〜ん」という、店をふさぐ形で仮設された壁に書かれた文字を見て呆然とする私たち。
「た、確かにね」
「ここのお店、流行っていなかったみたいだもんなぁ」
と言いつつ、でもやっぱりショック。ここのハンバーガー、美味しかったんだけどなぁ。少なくとも隣のチェーンファーストフードピザ屋よりよっぽど美味しかったんだけどなぁ、と隣のピザ屋を見ると、今日もなかなかの人気ぶりだった。見ただけで味の想像がついてしまうトマトソースのスパゲッティだとか、子供の顔が隠れてしまうほどのサイズの巨大な扇形のピザを持ったお客達が何人もいる。
これから別の店を目指すのもめんどくさいし、何しろとにかく空腹だし、と、このピザ屋のピザを試してみることにした。8等分にカットされたピザが保温されて並べられており、更にサラダやパスタ類、イタリア料理というよりはアメリカ料理に見えるおかず類がカウンターに並んでいる。私はやけに厚ぼったい"Stuffed Pizza"にしてみた。ピザ生地の上に具を乗せて更にピザ生地で蓋をしたような外見で、いかにも胃にたまりそう。口直しにシーザーサラダもつけてもらい、お代わり自由のソーダ類を飲みつつ、実はこれがアメリカに来て初めてのファーストフードピザ屋のピザ。
「焼いてから時間も経ってるし……」
「要するに、宅配ピザを外で喰ってるという、そんな感じとしか言いようが……ない」
と、一口喰って"あぁ、やっぱり美味しくなかった"と顔が暗くなる我が夫。"何を期待していたんだろう"と肩を落とす私。アメリカ風のピザもアメリカ風のピザで美味しいと思う。本音を言えばイタリアンな薄い薄いパリパリのピザが好きなのだけど、もっちもちしたぶあっついピザ生地にどっばーとチーズを散らしたアメリカ風のピザも、それはそれで一つの道だと思う。思うんだけど、やっぱり食べるなら焼きたてを食べたいなぁと思わずにはいられないのだった。
それでも、ファーストフードピザ屋は大人気。高級ホテルのフードコート(そもそもなぜ高級ホテルにフードコートがあるんだろうという疑問もある)でも老若男女問わず巨大な扇形ピザにかぶりつく光景が見られたし、昨日観戦したアイスホッケーの試合でもコーク(もしくはビール)にピザという組合せを手にする人は応援グッズを持つ人よりも多く見られた。
アメリカ人って、ほんっと、ピザが好きらしい。日本人にとってのおにぎりよりも身近なんじゃないかと感じるほどに。
クレソン
ガーリックマッシュドポテト
チキンクリームスープ(キャンベル缶)
羽釜御飯
ビール(Michelob Amber Rock)
昔プリン
牛乳
昨日、近所のスーパー「Harris Teeter」で見かけたステーキ肉はお安かった。1枚1ポンドほどで、たったの4ドル。
「100g100円程度ですよ奥さん!」
「それはお買い得ですねだんなさん!」
と盛り上がり、家族で1枚じゃ足りないねと2枚籠に入れてきた。骨付き肉だし、1人1ポンドと言っても実際は2割減くらいだろうしね、とか適当な事を言いながら1人1枚の分厚い牛肉の夕御飯。
肉焼き担当は我が夫。私は事前に付け合わせをせっせと準備した。マッシュドポテトにはおろしにんにくをたっぷり入れたい気分だったのでこってりガーリック風味に。今日見かけて買ってきたクレソンを大量に添えることにして、あとは手抜きしてキャンベルのチキンクリームスープ缶をあける。御飯が炊ける間際になって
「じゃ、肉焼きお願いします〜」
とだんなに代わったところ、だんなもにんにくを冷蔵庫から取り出している。
「今日はカリカリにんにく添え〜♪」
とか言いながらにんにくをスライスし始めている。もう、皿の上がにんにく臭でいっぱいになることが確定だ。そんなに夫婦してにんにく料理が食べたかったのだろうかと思う。
たっぷり塩胡椒した肉を焼いた後は、肉汁にバターと醤油を落としてソースにし、肉の上からダバダ〜とかける。
「クレソンってさ、けっこう美味しいのに、ステーキ屋さんで食べるとたったの1本だけしか添えられないんだよねぇ」
「辛いけど、けっこう美味しいんだよね」
などと言いつつ、レタスのようにクレソンをばりばり囓りながら肉をつつく。かなり辛いししかも苦みもあるけれど、クレソンって独特な美味しさがある。案の定にんにく臭くなったマッシュポテトににんにく臭いタレを絡めつつ、更に肉までにんにく臭い。レア寄りのレアというか、超レアというか、ぎりぎりレアというか、火の通り具合は微妙に少なかったけれど肉汁が真っ赤だということもなく、肉はやわらかで脂っこすぎることもない。100g100円とは思えないほどの見事なステーキを食べられた。
そして今日は(今日も?)デザートつき。
バレンタインデーに作ったホワイトチョコのムースで卵白を2個使ったために、卵黄を2個残してしまっていたのだった。さて、何を作ろうかと思っていたところ、ムースを作った直後だというのにだんなが
「プリンがいいなー、プリンがいいなー」
と背後から呟いてくる。聞いていたら私も食べたくなってきたので、久しぶりに"昔プリン"を作った。
"昔プリン"は、青柳という割烹料理店の料理長、小山裕久さんのデザート本で見たプリンだ。一度だけこのお店に行ってこのプリンを食べたことがあるけれど、ふわんふわんな食感の中になんとも懐かしい味がする絶品のプリンだった。このレシピを見つけて以来、「理想中の理想はあのプリン」と、他のプリンレシピに浮気しまくりつつもこのレシピでのプリン上達に密かに励んでいる。とか言っても、これを作るのは本当に久しぶりだ。しかも蒸し器なんて、我が家には無い。
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という感じ。でも、「中火で5分、蓋をずらして3分」と一度素直にそうしたら見事に"す"が入ったことがある。容器の大きさや素材によってもかなり蒸し時間や火加減は変わるようで、どうしても理想の舌触りには届かなかったのだった。
今回は、ダッチオーブンに水を張って蒸し籠を入れ、弱火でゆっくり蒸していく作戦に。プリンに似合う容器がないので小さなグラスに固めることにした。食材を蒸している間に何度も蓋を開けるのはいけないと思いつつ、"す"が入ってポクポクになってしまうのはもっといただけないので3分おきにおそるおそる蓋を開けて確認する私。じっくりじっくり12分ほどかけて弱火にかけ続けたところ、グラスを持つとプルンと震える良い感じの仕上がりになった。そっと取り出し室温に冷まし、食べるまで2時間ほど冷蔵庫に入れて冷やしておいた。
そうしてできた"昔プリン"は、かつてなく良いできばえだった。ちょっと柔らかめではあるけれど、ぎりぎりに"液体"ではなくなっている感じ。卵がこってり濃厚で2滴垂らしたバニラエッセンスがふわんと香ってくる懐かしい味のプリンになった。カラメルは好みの苦みの強いもの。
やっぱりこのプリン、すっごく美味しいんだけど問題は卵4個も使っておいて「え?これだけ?」くらいな量で4人分しか作れないこと。我が家では、このサイズじゃ2人分になってしまいます……。