食欲魔人日記 02年11月 第5週
11/25 (月)
GINZA(Boston)にて、「B-52巻き」 (夕御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
Boston 「China Pearl 龍鳳酒樓」にて
 蝦餃
 ふかひれ餃子
 大根餃子
 スペアリブ
 咸水角
 チャーシューパイ
 揚げ湯葉巻き
 鶏足の煮物
 厚揚げの海老すり身詰め
 ピータンと豚肉の粥
 魚介粥
 揚げ胡麻団子
 マンゴプリン
 杏仁豆腐
……を大人3人・子供1人で平らげた

8時に目覚ましをかけていたにも関わらず、どういうわけか6時半に目が覚めてしまったのでこれからの旅程の予習などしてみる。今日行こうと思っていたコンピューター博物館が月曜閉館だということを知り、ちょっと一人焦ってしまった一日の始まりだった。慌てて予定をあれこれ考え、明日行く予定にしていたボストン美術館を今日に持ってきて、コンピューター博物館は明日にしよう、とごにょごにょ考えているうちにだんなも息子も起きてきた。

朝御飯は、昨晩一緒に食卓を共にしたHさんと今日も待ち合わせることに。今日の目的は飲茶だ。「ボストンで飲茶と言ったらココ!」というお店があり、ちょっと気になっていたのだった(ボストンにマンゴプリンがあるのかどうか、なんてことも含めて)。
チャイナタウンにあったその店は朝8時半から飲茶のワゴンサービスをしているらしい。9時半に到着してみると、それほど混雑していないながらもお客さんがちらちら入っているのが見えた。お客さんのほとんどは中国人のようだ。

香港のスタイルそのままに蒸しものワゴン、揚げ物ワゴン、焼きものワゴン、粥ワゴンなどが店内をゆったりと動いている。適当に止めて蓋を開けて見せてもらいつつ欲しいものを指さしていく。レシートにペタンとハンコを押してもらうのも、香港そのまま。思った以上に香港の匂いが漂うお店で、しかも味も想像以上にしっかりしていた。

ちょっとばかり蒸しすぎの感はあったけれど、浮き粉の皮の海老蒸し餃子の海老はプリプリと歯ごたえを残したものがたっぷりと詰まっていたし、シンプルな味の咸水角も表面サクサク、中はモチモチ、具も心持ち多め、の好みなタイプだった。角切り大根や香菜がたっぷり詰まったちょっと不思議な風味の野菜の蒸し餃子、鶏足がその形のままにテラテラと煮られた料理など、これまで日本でも香港でも食べたことのなかった品もやってきて、ついついあれこれとテーブルの上に並べてしまう。さんざん蒸しもの揚げものを食べた挙げ句、粥ワゴンまで止めさせてたっぷりのピータン粥まで食べてしまった。刻み葱を椀の底にバホッと入れ、温められた粥がたっぷりと注がれる。上には刻んだ油条が5〜6切れ。ひき肉がふんだんに混ざる粥にはピータンもごろごろ入っており、塩味は薄め。久しぶりに食べる粥の味もまた格別だった。

デザートには、アメリカ大陸初のマンゴプリン。
プラスチック容器に固められたそれは「マンゴプリン」というよりは「マンゴーゼリー」といった味わいで、ミルク感がえらく控えめだった。マンゴーの風味は感じられるけど、それはどうもマンゴプリンの素かジュースかを使ったかのようで、ちょっとばかり香料臭い。生の果肉も小指の先ほどのものがごろりごろりと入っていたものの、ジャリジャリする舌触りの甘くないものだった(入ってない方がまし、とさえ言えるほどの)。久しぶりの飲茶に「おいしーおいしー超おいしー」と言いまくっていたのに、マンゴプリンに関してだけはなんでこんなに文句ばっかり出てきてしまうんだろう。アメリカ大陸における美味しいマンゴプリンへの道は、まだちょっと遠そうだった。

怒濤のように10時半頃まで食べ続け、店を出たところでHさんと別れる。チャイナタウンでついつい食器だの食材だのを買い込んでしまい、ビニール袋ぶらさげてボストン美術館へ。

Boston ボストン美術館内「Galleria Cafe」にて
 チョコレートファッジケーキ
 チャイラッテ

荷物とコートを預け、歩いても歩いても展示物を見終わりそうにない巨大美術館の散策。
最初は
「日本美術、おもしろーい」
「エジプトも、なかなか……」
とちょっとじっくり見ていたものの、"このままじゃ時間がいくらあっても足らない"とやっと悟ってからは見たいところだけを早足で見て回る。めっちゃめちゃ、疲れた。

確か"これだけいっぱい食べたら夜まで何も食べなくていいよね"とか言っていたはずなのに、ついつい美術館内のカフェテリアで休憩。飲み物だけにしておけばいいのに、だんなはロブスター入りのクラムチャウダーとか注文してるし、私は私でチョコレートファッジケーキとか注文しているのである。
シナモンの香りがこれでもかと効いているチャイラッテは大きなマグカップになみなみと入ってきて、それを啜りながらホイップクリームがどっさり添えられた漆黒のケーキをつつく。「小麦粉使ってませーん」と説明にあったチョコレートケーキは、つつくとクシャッと潰れてしまいそうなものだった。温められた中央はぐずぐずと半ば溶けていて、その味はチョコレートそのもの。どっしり甘い黒いケーキにホイップクリームをなすりつけて食べて、やっと甘さが丁度良くなるというものだった。周囲にはエスプレッソ味のクリームソースも敷かれていて、何やら美しい装いのケーキだった。さすが美術館。

Boston 「GINZA」にて
 Nigiri $15.95×3
 巻物(Negihama) $4.95
 巻物(Salmon Skin) $5.50
 巻物(B-52) $10.15
 握り(Tamago) $2.75×2
 握り(Ika) $3.85
 握り(Anago) $4.95×2
 握り(Mirugai) $4.95
 握り(Ikura) $4.65×2
 握り(Uni) $6.35
 サッポロビール $3.75×3
 コーラ $1.50
……を、大人3人子供1人で。

ボストン美術館散策後、一度ホテルに戻ってからプレデンシャルセンター(Prudential Center)に。50階にあるSkywalkなる展望台に行って高層からの眺めを見物した後、ショッピングモールをぷらぷらしてみた。
夕飯は、再びHさんも一緒になって、今日は寿司!ボストンは、けっこうお寿司が美味しいらしい。だんなの研究所スタッフMさんが
「ボストンは、けっこうお寿司も美味しいわよー。日本で食べるより美味しいのが食べられる……というものもあるかもしれない」
と出発前に教えてくれたこともあり、ボストンに行ったら寿司屋に行ってみようと思っていたのだった。調べたところ、「銀座」という店が評判が良いらしい。チャイナタウンの中にあるというのが微妙に気になるけど(まさか中国人が握ってるのかなぁ、とか……←違いました)、交通の便も良いし、とここに行ってみることに。

店に入るなりナチュラルに「いらっしゃいませー」と日本語で言われ、そのままボックス席に案内された。Hさんはまだ店に到着していなかったので、まず適当に巻物を注文して待つことに。
「ネギハマ巻き」はハマチ版ネギトロ巻きのようなもの。「サーモンスキン巻き」は鮭の皮をこんがり炙ってにんじんやキュウリなどと共に巻いたもの。そしてだんなが
「これ食べたい!これ気になる!」
と騒いだのが
「An outrageous combo of yellowtail, in a double layer tempura roll」
と紹介されていた「B-52巻き」だった。爆撃機の名前つけちゃうほど、すごいロールらしい。ハマチと天ぷらを巻いたやつ、というのがまた面白くて気に入ってしまった。かくしてテーブルは、何やらイロモノ巻きで大変なことに。

海苔を内側にして巻くアメリカの巻物にも隨分慣れてきてしまったけれど、さすがに「B-52」はすごかった。中央にハマチやら蟹肉やらアボガドやらが入り、それを押し包むように天カスと海苔が2重に層になっている。見かけもすごいが、味もなかなか悪くない。天ぷらがまだアツアツで、噛むと油が染み出てくるのが妙に寿司飯と似合っている。イロモノだなぁ、と笑ってしまうけれど。

巻物が出てくる前にHさんも到着し、「とりあえず握りのセットを注文してみよう」と1人前16ドルほどの握りセットも人数分注文。マグロが2つに鉄火巻、ハマチと平目とサバとサーモン、海老がセットになってきた。量は少なめだったけれど、味はテネシーで食べる寿司よりも、さすがに漁港のある町だけあってあからさまに美味しい。日本で食べるより美味しいとは言えないけれど、ちゃんと寿司として味わえる寿司だった。調子に乗って各自それぞれ好みのものを追加注文。私はイクラとウニと穴子を食べてすっかり御満悦状態になった。穴子はふくふくだし、ウニはちゃんと甘いし、久しぶりのイクラも美味しかった。

かくして、今日は何だか飲茶だの寿司だのとボストンっぽいようなボストンっぽくないような微妙な食生活の一日だった(でも食べたかったんだから仕方ない……)。
明日はもう一回クラムチャウダーしっかり食べて、夜にはニューヨークに戻るのだ。

11/26 (火)
Legal Sea Foods(Boston)にて、「New England Fried Clam」 (昼御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
Boston 「Rebecca's Cafe」にて
 Breakfast Combo $2.95

2泊3日は、なんと短いんだろう(しかも初日の到着は夕方遅くだったし)。今日はもうボストンを発ってニューヨークに戻らなければいけない。それでも行きたいところはいっぱいあって、今日は朝6時起きで荷造りを開始し、早々にチェックアウトして出かけてみた。

朝御飯は、ボストンではいくつも店舗があるらしい「Rebecca's Cafe」なるサンドイッチ屋さんで。プレデンシャルセンター内のフードコートにあったので気になって行ったみたところ、朝から出勤前の人々などで混雑していた。基本的にはパンを選び、野菜やチーズやベーコン類などを選んでサンドしてもらうようなスタイルであるらしい。が、朝食セットなるものもあったので、手軽にこれにしてみることに。3ドルほどでサンドイッチとコーヒーがセットになっており、このセットでも
「ソーセージ?それともベーコン?あとパンはベーグル?イングリッシュマフィン?」
などと色々選択するようになっていた。

私がもらったのは、イングリッシュマフィンにベーコンのサンド。オムレツ状の卵(というかスクランブルエッグを寄せて固めたようなというか)が卵2〜3個分ほどのボリュームでこんもりと挟まり、カリカリベーコンとチーズがマフィンの間に挟まっている。温かいコーヒー(しかも大量)とセットで3ドルならば、なかなか安いかもしれないし、それになかなか美味しい。

食後、9時オーブンの「ボストン茶会事件船」に向けて地下鉄に乗っていく。歴史上の事件(紅茶の関税があまりに高く、怒った民衆(?)が茶箱を海に投げ捨てた……とかいう……いや、よく知らないんだけど)当時の船が残っていてミュージアムになっており、そこでは「茶箱投げ捨て体験」なる笑ってしまいそうなイベントが実体験できるらしい。ただただ茶箱を投げ捨ててみたいという欲望に駆られてそこを目指したのだけど、現在、売店が火事で焼けてしまって復興の目処が立たないとのことで、閉館中。更に、そのすぐ近くにあるという「コンピューター博物館」を目指したものの、こちらは99年6月に閉鎖して「Museumof Science」に一部の内容を統合したのだという張り紙があるだけだった。
だんな、実はボストンに来たのはこの「コンピューター博物館」を見るためだったのである。10年ほど前に、『電子立国日本』とかいう本を読み、この地にその博物館があると知ってからずっとずっと来たかったのだそうだ。まさかそう簡単に博物館が潰れるとは思っていなくて、数年前に発行された『地球の歩き方』などで場所や開館時間を確認しただけだったのがいけなかった。だんなは可哀相なほどに落ち込んでしまって、
「もういい……ぼく、テネシーに帰る……」
などと、すっかりやさぐれてしまった。

目的のものが2つ揃って見られず、とぼとぼとホテル方面に戻って、しょうがないのでショッピングすることに。

Boston 「Boston Chowda Co.」にて
 Robster Bisque $3.94

荷物を預けているホテルの近く、プレデンシャルセンターまで戻ってきた。ここには巨大なショッピングモールがいくつかあり、衣類を買って歩いたり本屋を覗いたり。ボストンは、衣類にかかる関税がえらく低いのである。しかも175ドルだかまでのお買物については無税なのであるらしい。そろそろサンクスギビングも近づきセールも始まりつつあるということで、ついついあれこれ買い物してしまうのであった。
息子用の手袋と帽子を買ったGAPで
「テネシーから来たんだけど、ここは税金が安いと聞いたから服買うことにしたんだよー」
とレジの店員さんに言うと、
「テネシーってそんなに高いの?」
と。
「んとね、9.25%」
と答えると、目を丸くして
「まぁ〜クレージーね!じゃあいっぱい買っておかなきゃね〜」
だそうだ。だんなは思わずジャケットまで買ってしまい、私もついつい手袋などを。

買い物で少々心が温まったものの、だんなの心には「コンピューター博物館閉館」のショックの嵐が未だ吹き荒れているらしい。買い物途中、
「せ、せめて温かいものでも食べよう」
とフードコートにあった「Boston Chowda Co.」なるクラムチャウダー屋さんでクラムチャウダーなどすすってしまった。
だんなはクラムチャウダー、私は「Robster Bisque」なる赤いスープ。

クラムチャウダーは、ちょっとさらさらめの軽い味のもの。こういうタイプはこういうタイプで悪くない。ごろごろと入るクラムがとても嬉しい、素朴な味のスープだった。私のものは、赤ワインの味が漂う、海老の肉がごろりごろりと入ったもの。ミルク感もたっぷりで、トロリと強めのとろみがついている。昼飯前だというのに胃にたまるスープを飲んでしまったことを後悔しつつ、買い物続行。

Boston 「Legal Sea Foods」にて
 Oysters (on the half shell) $10.00
 Legal's New England Clam Chowder $3.75
 "Scampi" $12.00
 New England Fried Clam $11.00
 サミュエルアダムス ドラフト $4.75
 ジンジャーエール $1.95

 Boston Cream Pie $4.50
 Coffee $1.75
 Espresso $2.95
   ……を、家族で。

ボストン最後の昼御飯は、「Legal Sea Foods」なるところに行ってみることにした。ボストン内にいくつもある、シーフード料理の店らしい。当然生牡蠣も置いているので、
「やっぱり最後は生牡蠣生牡蠣〜!」
と盛り上がりつつ、プレデンシャルセンター内のこの店に入ってみることにしたのだった。

生牡蠣を1/2ダース、それに合わせてビールを一杯。スカンピのリングイネとフライドクラムを注文し、適当につつくことにした。更に、AAAの会員証をモール内のカウンターで見せてもらったクーポンを渡してクラムチャウダー1杯を無料でゲット。AAAの会員証、何かと便利だ。あちらこちらで"お買物すると15%オフ"だの"チョコレート1個サービス"だのというちまちました割引やサービスが受けられる。

クラムチャウダーと生牡蠣が最初にやってきて、ニヤニヤしながら昼の生牡蠣。
一昨日の晩に「Union Oyster House」で食べたものと違い、こちらは牡蠣の殻の上にたっぷり水気が残っていた。すっかり水気が切られた牡蠣はやっぱりどこか味気ないところがあったので、牡蠣エキスたっぷり入りの生牡蠣はやはり嬉しい。ころりと丸めの牡蠣は、ほんのり甘くて新鮮でチュルチュルで、あやうくもう1皿注文してしまいそうになった。
ここのクラムチャウダーはどっしり系。角切りじゃがいもがごろごろ入り、クラムもたっぷり。テーブルに来た段階で上から黒胡椒を好みでガリガリかけてくれる。粘っこいほどのとろみがある、塩味もちょっと強めの濃厚なチャウダーだった。なんかもう、どこで食べてもそこの味はそこの味で美味しく思えて、ついつい見かけるたびにクラムチャウダーを啜りたくなってくる。

そして、クラムがこんがりきつね色に揚げられた、小山のような盛り合わせ。タルタルソースとレモンが添えられ、ノリとしては牡蠣フライのような感じ。コリコリとした食感のあるクラムのフライだった。だんなの側に置かれたそのフライを私もつつきつつ、私の前にはスカンピのリングイネ。トマトとマッシュルーム、葱(玉ねぎじゃなく、どうも万能葱系のような青い葱)と共に炒め合わされた、シンプルなオイルベースのパスタだった。テーブルの上で、仕上げのチーズと黒胡椒をかけてくれる。どうも見た感じ、スカンピはスカンピでなく別の海老のように見えたし、リングイネはリングイネというよりフェットチーネじゃないかという印象ではあったけど、味は悪くなかった。レモンも添えられて、さっぱりといくらでも食べられそうな味わいだ。

料理をすっかり平らげたところで、ものすごくタイミングよくテーブルが片づけられデザートメニューなど渡されてしまい、私はついつい「Boston Cream Pie」なるものを注文してしまったり。クリームパイもボストン名物のようで、あちらこちらでその名前を見かけてすごく気になっていたデザートだ。要するにミルクたっぷりのクリーム生地のパイで、上からチョコレートソースをかけるのが基本であるらしい。
「うちの店のは、スタンダードなやつとちょっと違うよ!」
という説明があったそれを注文してみたところ、小山のような黒い物体が目の前にやってきた。丸い型で作られたクリームパイの上からはどっぷりと濃厚なチョコレートソース。仕上げに店のロゴが入った薄いチョコの膜まで飾られている。クリーム層は比較的軽い食感で甘さも控えめだったけれど、表面のチョコレートがかなりの強敵なデザートだった。チョコの量、1/5くらいにした方がクリームパイそのものが美味しく味わえて良いような気がするんだけどなぁ……と思いつつ、ついついチョコを除けながら食べてしまう私だった。

「The Cheesecake Factory」の
 Original Cheesecake $5.75
 Vanilla Bean Cheesecake $6.25
 Fresh Banana Cream Cheesecake $6.25
を、適当に皆でつつく。

3時過ぎにボストンを出るアムトラックで、再びニューヨークへ。
プレデンシャルモールの出口に「The Cheesecake Factory」なるケーキ屋さんを発見し、ついつい
「ニューヨークに着くの7時過ぎだしー、もしかしたら遅れるかもしれないしー、お腹すいたら大変だしー(←何が大変なんだか)」
と言いつつ、その気になるケーキ屋さんのケーキを買って電車に乗り込んでしまった。
何しろ、ショーケースにはこれでもかとこれでもかとチーズケーキばっかり並んでいるのである。中にはパンプキンパイだのアップルパイだのもあるのだけど、オレオチーズケーキだのチョコレートチーズケーキだのバニラだのバナナだのと、ボリュームたっぷりチーズケーキがいくつもいくつも詰まっている。壮観だった。

買い終わった後で、その店、カリフォルニアをはじめとしてフロリダからボストンまで、かなりの広範囲に展開しているチェーン店だったのだということが判明。「ボストンのお店というわけじゃなかったのかぁ……」と思いつつも、1個6ドル前後もしたそのケーキを大切に車内に持ち込んだ。

1つ1つのケーキがプラスチック容器に収まり、しかも「Original Cheesecake」はケーキ単体だけど「Vanilla Bean Cheesecake」と「Fresh Banana Cream Cheesecake」にはホイップクリームがこれでもかとトッピングされている。しかも後者にはアルミホイルにくるまれたバナナまでついてきた。1個1個は"その扇形の内角を1/3にしてもそのケーキは倒れないんじゃないか"と思うほど、ボリュームたっぷり。高さもあって、買った後で1人1個にした事を激しく後悔した。これなら2人に1個でちょうどいいような感じだ。

電車に乗り、1時間ほどしたところで皆で食べた。ケーキはどれも、ふわふわプルプル、ややねっとり、という軽い食感のものばかりで、私好みの"詰まっている"という印象が感じられないものだった。不味いというほど不味くはないけど、けっこう大味。生地の中にそもそも大量の生クリームが入っているような感じなんだからトッピングで山ほどのホイップクリームをつけなくてもいーんじゃないか、と感じたケーキだった。

New York 「Woo Chon」にて
 ユッケ $17.95
 海鮮石焼きビビンバ $16.95
 カルビタン $11.95
 握り(卵) $2.00×3
 握り(イクラ) $2.30
 CB Lager $4.00×2
 コカコーラ $2.00
 緑茶 $2.00×2

午後7時過ぎ、ほぼ予定通りの時刻にアムトラックはニューヨークに到着した。ペンステーションからホテルまでは2ブロックほどしか離れていないので、大荷物抱えて(しかし早足で)えっちらおっちら宿泊ホテルまで移動。チェックインが終わってとりあえず部屋に入ったのは午後8時を回っていた。到着するなり、ニューヨーク在住友人Yに電話。昨日から飲茶だの寿司だのスパゲティだのバラエティに富んだ食生活になっていて、しかも電車内で巨大なケーキもかっくらってしまったため、今ひとつたっぷり食べられそうな腹具合ではなかった(でもちゃんと夕飯は食べるつもりでいるあたり……)。こういうときはアレだ。ビビンバとか、クッパとか、そういうのが恋しい。幸いホテル周辺は一大韓国街になっている。
「Y〜Y〜、これから夕飯なんだけどさぁ、美味しい韓国料理屋とかって心あたりある?」
Yの返答は早かった。
「ん〜、私も何軒かは行ったことがあるけど……美味しいところねぇ。私は行ったことないけど、友達が"ここが大好きで何回も行ってるの"っていう店があってねぇ……」
と、住所を言ってくれた。うちのホテルから数ブロック先で、なんとか歩いても行けそうな距離。てくてく歩いて行くことにした。

店頭には「ザガット・サーベイ」でなんちゃらのナンバー1に選ばれたとか何とか額が置かれている、和と中華と韓国がいりまじったような、お洒落だけど微妙に違和感を感じる(だって、焼き肉屋なのに寿司カウンターが……)空間だった。ああ、でもなんか美味しそうな匂いをぷんぷんと感じる。
メニューにはしっかり日本語で「タン」だの「ミノ」だのと書いてあって笑ってしまいつつ、ついつい目は「上牛タン」とかに引きつけられてしまう。焼き肉メニューはぐっとこらえて、とりあえず韓国ビールとユッケを注文。私は海鮮石焼きビビンバ、だんなはカルビタンを食べることにして、息子には寿司バーから好物の卵とイクラの握りを取ることにした。

甘辛いタレで揉まれたユッケは、短冊切りにした牛肉がたっぷりと。皿には美しくキュウリや梨と共に盛りつけられていて、おもむろに生卵を落とした後、かき混ぜてくれる。久しぶりに食べた美味しいユッケだった。ねっとりと甘く、冷たい生肉が喉を落ちていくのは快感だー。
そしてビビンバもカルビタンも、期待以上のすこぶる美味だった。海鮮ビビンバは、生の帆立や海老や貝類がたっぷりと。具は海鮮のみで、熱い石鍋に入ったそれをわっせわっせとかき混ぜ、甘辛いタレを回しかけて焼き付けていく。タレはこっくりと濃いめの味だけど全体としてはさっぱりとしていていくらでも胃に入ってしまいそうな味。たっぷりの白濁スープのカルビタンにはテールと共に薄切りカルビも入っていて、柔らかく煮えた大根もごろごろと。テーブルにはずらりとキムチの皿が8種類ほど並べられ、ちょっと甘めのタコのキムチやらビリリと辛い白菜のやら海草のやらキノコのやら、と全てが全く違った繊細な味のものばかり。

「いかん!何喰ってもうまいぃぃ」
「箸が止まらぬ〜」
「キムチも全部喰ってしまう〜」
などと、旅の疲れもどこかに行ってしまい、9時半頃まで飲み食いしまくる私たちだった。
デザートにメロンと葡萄まで出てきて、すっかり満腹かつ御機嫌で宿に帰還。ニューヨーク、美味しい店ばっかりでとても危険だ。

11/27 (水)
CARNEGIE DELI(New York)にて「ザ・ウッディアレン」 (朝御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
New York 「CARNEGIE DELI」にて
 The Woody Allen $14.95
 Chicken Soup with noodle
 アイスカプチーノ

どうも、旅行に来ると常に"ハレ"な気分が続いてしまって、睡眠時間6時間くらいで目がランランと冴えてしまうのである。だんなと息子は、いつもと変わらぬペースで幸せそうに寝ている中、一人「眠れぬ……腹が減った……」とじたばたしているニューヨーク2日目の朝だった。

9時半を過ぎてさすがに時間がもったいない、とだんなと息子を起こし、向かった先はカーネギーデリ。老舗のデリで、なんでも超巨大なパストラミサンドが名物らしい。「やっぱりそこもおさえておくの?」と友人Yから指摘されて初めてそのデリの存在を知り、巨大なパストラミサンドを喰ってみようと思ったのだった。私はもとより、だんなが食べたくて燃えている様子。コートを着ても寒いくらいの寒気の中、地下鉄に乗ってそこに向かってみた。

店内の壁はどこもかしこも額入りのサイン入り写真だらけ。噂のパストラミサンドは「The Woody Allen」という名前らしい。1人1つ注文したら食卓が破綻するのは目に見えていたので、1つだけ注文。ついでにあまりの寒さに「Our Delicious Homemade Chicken Soup」などと書かれていたチキンスープも麺入りのものを1皿注文した。

テーブルにやってきたのは、まずはピクルスの盛り合わせ。親指大のキュウリが1本丸々漬けられたものが、"こんなに盛らなくても"というほどボウルにたっぷりとやってきた。ピクルスというより、外見は「浅漬け」という感じ。そして味も実際、浅漬けだった。酸味はほとんどなく、塩気も少なめ。バリバリと口の中で砕けるピクルスだ。更に、"古漬け"といった感じの酸味が強くすっかり漬かったものも何本か。バリバリバリバリ食べているうちに、巨大なサンドイッチもやってきた。

すごい、すごいサンドイッチだ。ていうか、これって「サンドイッチ」と名乗って良いものなのか。
薄いパンの間に挟まるのは、高さ15cmはあるんじゃないかという薄切り肉の山だった。ほどよく塩気のある、胡椒の効いたパストラミがこれでもかこれでもかとパンの間に圧縮されて挟まっている。一体パンは何のためにあるのかと思ってしまうようなサンドイッチだった。鮮やかな黄色い色のスープを啜りつつ、巨大なサンドイッチを前に1人1切れ格闘する。食べても食べてもなくならない肉の山は、しかし確かに旨かった。肉はパサついておらず、適度にしっとり。ピクルス囓り肉を囓り、申し訳程度のパンを囓り、添えられた甘めのコールスローを囓る。2人1皿で丁度良いサイズだった。

New York 「The Metropolitan Museumu of Art」内「Museum Bar/Cafe」にて
 Lemon Tart $6.00
 NY Cheesecake $6.00
 Juice $2.50
 Sm Pellegrino $3.00
 Double Espresso $5.00

今日は一日、メトロポリタン美術館。
「ここにフジタが居たんだよー」
「それは、漫画」
などと言いながら、来たくて来たくて来たかった美術館を眺め倒す。
一番の目当てはミュージアムのキャラクターにもなっている"メソポタミアのカバ・ウィリアム"だったのだけど、エジプトコーナーが改装中ということで念願のカバと会うことはできなかった(なんか今回の旅行はミュージアム関係の巡り合わせがよくない……)。それでも、1部屋の中全部の絵が画集で見たことあるばかり、という絵画の山に埋もれる感動はしっかり味わってきた。ヨーロッパ絵画とモダンアートを眺めたところで、あっけなく疲れ果てた。メトロポリタン、広すぎる。

美術館内にはカフェからレストランから飲食設備がいくつも整えられていて、そのうちの1つのカフェで休憩。炭酸水だけを飲んで済ませるつもりが、ついついレモンタルトが美味しそうで1つ注文。だんなも一緒になってニューヨークチーズケーキなど注文しているし。

ねっとりとしたレモンクリームが詰まったタルトは甘さもあるけれど割とさっぱり。チーズケーキは心持ちねっとりした口当たりで、甘さは軽いけれどどっしりと胃にたまるもの。正直、昨日食べた「The Cheesecake Factory」のものより美味しいと思ってしまった。疲れを取るには甘いものが一番よねー(とか言いつつ、なんか毎日ケーキ食べてるわぁ……)。

New York 「Grand Central Oyster Bar」にて
 Manhattan Clam Chowder $4.75
 Fried Oysters $8.75
 French Fried $4.75
 Oysters (Bluepoint) $1.45×18
 Oysters (Kumamoto) $2.15×6
 Broiled Oysters, Anchovy Butter $9.45
 Grilled Jumbo Shrimp in an Herb Garlic Butter with Coconut Rice $25.95
 Sierra Nevada Pale Ale $5.75
 Sparkling Wine (Gruet"Gold Label"Brut NV) $30.00
 Coke $2.25

 Oat Bran Apple Pie $5.95
 Coffee $2.25×3
 

午後4時近くなって美術館を出た頃にはすっかり疲れ果てていた。買い物を頼まれていたのでそのまま日本の書籍を売っている「旭屋書店」に行ったりしているうちに力尽き、サンクスギビング前日ということで仕事が4時に終わるというYに電話。
「あ、あのー、グランドセントラルにいるんだけど、もう力尽きちゃって……オイスターバーに行こうと思うんだけど、一緒にどーお?」
グランドセントラルステーションの地下には、老舗の有名オイスターバーがある。ここのマンハッタンクラムチャウダーが美味しいと聞いていたこともあり、一度は行ってみたいと思っていた店だ。Yは
「あ〜、あの店、もう10年以上も前に一度行ったきりよ。面白そうだから私も行く〜♪」
と、やってきた。大人3人子供1人で、ビール飲んだりスパークリングワイン飲んだりしながら、今晩はひたすら牡蠣三昧。

普通、オイスターバーといっても牡蠣の種類を選べるところはあまりない。この店は、牡蠣1つで20種類以上の牡蠣の名前がずらずらずらとメニューに並んでいるのだった。海老や蟹、ロブスターや魚介の料理も数多くあり、何を食べてよいのか迷ってしまう。牡蠣は1個ずつの値段が記載されていて、何個でも好きな種類を頼むことができた……が、1個2ドル前後するものも多く、1個1.45ドルのBluepointという種類が一番お得な感じっぽいのでついついそれを注文してしまう。12個のBluepointと、名前に惹かれて注文した"Kumamoto"なる名前の牡蠣が6個、ぞろりとテーブルにやってきたのはなかなか壮観だった。Kumamotoは、かなり小ぶりな可愛い牡蠣で甘さが強く濃厚な味がした。Bluepointは、こちらで普通に食べられる馴染みの味の牡蠣。汁気が多くプルプルで、大きさは不揃いだけれど味はかなり良い感じ。

生牡蠣をざくざく食べつつ、牡蠣フライタルタルソース和えとかアンチョビバター乗せのオーブン焼きなども食べてしまう。更に、ココナッツライス添えの海老のグリルも追加注文。スパークリングワインをすっかり空にしながら牡蠣をとにかく食べまくった。
「……え?でもせりあちゃん、一昨日とかも牡蠣食べてなかったっけ……?」
と、Y。一昨日どころか、昨日も喰ってきてます、と言ったら「なんでそんな生牡蠣ばっかりー?」と大笑いされた。
私も自分で、こんなに生牡蠣が好きとは知らなかったわー。

11/28 (木)
サンクスギビングは「VENIERO'S」のケーキでお祝い♪
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
New York 「YOSHINOYA」にて
 Combo Bowl $4.99
 Miso Soup $1.29
 Green Tea $0.89

今日はサンクスギビングデー。ニューヨークでは毎年、デパートの「Macy's」が運営するパレードが催されるらしい。
「パレードねぇ、すっごい人混みだよ。私は毎年テレビで見てるなぁ」
と友人Yは言うけれど、サンクスギビングにニューヨークにいるなんて機会はそうそうないので、実際に見に行ってみることにした。朝9時から始まるパレードは滞在ホテルのすぐ近くで終点を迎える。8時45分くらいにホテルを出て、適当に見に行くことにした。

が、ホテル近くのエリアはVIP用の場所らしい。一般客は42thまで北上してね、と案内されるままひたすら歩き、Times Squqreあたりにまでやってきて、大変な人混みの中パレードを待った。
しかし、寒い。寒すぎる。路上の水はバリバリに凍っていて、なんでも今日の気温は氷点下ということだ。待っているうちにすっかり冷えてしまい、楽隊の音楽が聞こえ巨大なバルーンがいくつか通り過ぎるのを見たところで「これ以上立ってたら倒れる」というところまで来てしまった。息子もカタカタ震えはじめてしまっていて、このままじゃ熱を出してしまいそうに。

どのみち人混みがすごすぎてろくに見えもしなかったので、そのまますぐ近くの吉野家に非難してしまった。
「味噌汁、味噌汁」
「緑茶、緑茶」
などと呟きつつ、朝から牛丼。
気になって食べてみた「Combo Bowl」なるものは牛丼と野菜丼と鶏てりやき丼がう1つになったもの。ラージサイズ牛丼と同じパックに御飯が詰められ、3種類の具がトッピングされている。日本にはない丼だったそれ、野菜はぐだぐだに火が通った甘めに味付けられたやつで、照り焼きも甘ったるくテラテラとしたいかにもな味のものだった。今ひとつ……どころか、全然美味しくない。ノーマルな牛丼にしとけば良かったなぁ、と思いつつ、ニューヨーク2回目の牛丼を食べてしまったのだった(ニューヨークならではのデリにでも入っとけよ、と自分で自分に思いつつ)。

New York 「LANZA RESTAURANT」にて
 Clams Oreganata $7.95
 Fritti di Calamari $7.25
 Spaghettini al Lanza $12.50
 Linguine al Olio, Aglio e Vongole $12.95
 サンペレグリノ $5.50
 Lanza's Ricotta Cheesecake $4.50
 Espresso 2×$2.50

パレードは早々に諦め、買い物でもしようかとロックフェラーセンター方面に歩いてみた。紀伊国屋書店で日本の本をいくつか購入した後、「5th Avenue Chocolatiere」なるお店のチョコを買いに行こうとしたところ、残念ながらサンクスギビングということでお休み。そう、今日は日本で言えば元旦にあたるほどの大休日なのだ。年中無休でやっている店も、この日とクリスマスだけは休みになるほどの日なのだった。午前中は開いている店も、午後にはバタバタと閉店していくらしい。

こりゃもうどこに行っても仕方ないかもなぁ、と思いつつ、それでもダメもとでぷらぷら歩いてみることに。散策で小腹も空いていたので、地下鉄に乗って「VENIERO'S」のケーキを買いに行きがてら昼食もそばで摂ることに。

ニューヨークに行くんだよー、と「Kolis Inn」のコリスケさんとメールのやりとりをしていたところ、いくつもいくつも「ここは美味しいよ」という店を紹介していただいていて、その1つが「LANZA RESTAURANT」というイタリア料理店だった。美味しいパスタが恋しくなっていたので、これは丁度よいね、とお店を訪れる。テーブルとテーブルの間の間隔がちょっと狭めの、席数50程のこぢんまりとした店だ。今日は昼から夜まで、サンクスギビングスペシャルディナーを用意してオープンしており、テーブルにはいくつもいくつも予約済みの札が立っていた。が、午後1時の今は2つほどのテーブルが埋まっているだけ。予約ないんだけど、そいでもって子供いるんだけど?とおそるおそる入ってみたけど、快く席を用意してくれた。

スペシャルディナーは前菜、パスタ、メインディッシュ、デザートを数種類ずつの中から選んで25ドルというお得な値段。もちろんターキーもメインディッシュの中に入っている。それはそれでとても魅力的だったけれど(ああ、これが食べられると知っていたら吉牛でラージサイズなんて食べなかったのに)、前菜とパスタとドルチェだけで軽く済ませることにした。私の前菜はクラムのオレガノ風味焼き、だんなはイカのフリット。サンペレグリノをボトルでもらい、くぴくぴ飲みつつアツアツの前菜をつついた。やってきたのは、華美な飾りなどのないシンプルな料理。クラムが6個ほど、香草パン粉をまぶされてこんがり焼かれたものが皿にぐるりと並べられ、中央にも香草風味のパン粉入りソースが敷かれている。クラムがブリブリと大粒で香草も香ばしく、適度な塩加減。一口大のイカをサクサクッと揚げて、甘さと酸味が適度にあるトマトソースがたっぷり添えられただんなの皿も、これまたひどく美味しかった。そうそうそう、こんな感じのが食べたかったのよー、と、そういえば魚介ばかり食べているここ数日の私たち。

パスタもまた、どえらく口に合った。「LANZA風スパゲッティーニ」と、店の名を冠したパスタは、パスタ版マルガリータ、という感じ。甘さのあるトマトソースがバジルとモッツァレラチーズと共にパスタにつるんと絡められている。旨味とほのかな甘さのあるトマトが、普通のトマトの何倍も濃縮されているような濃ゆい味になっていて、今までにあまり食べたことのないトマトソースのパスタになっていた。シンプルなパスタだけど、めちゃめちゃ旨い。旨いものを食べると口もきかずにフォークを動かす息子が、私が分けてあげたパスタを前にして久しぶりに無言になっていた。相当美味しいらしい。シコシコとした歯触りの巨大なアサリがたっぷりのだんなのパスタには、大ぶりのにんにくが栗のようにホクホクになっていくつもいくつも入っていた。どこか繊細でいてどこか大胆さもある料理に、もう大喜びの私たち。

そして、店は着々と混み合いつつあるのである。私たちが食べはじめてから続々と予約の客が押し寄せてきて、店は見る間に席が埋まっていく。老夫婦や、友達同士か4人ほどのグループ、中年女性とその両親らしき3人組、など、それぞれが大切な人と一緒に来ているという感じ。常連さんらしき客も多く、愛想が良くおしゃべり好きなスタッフの表情や動作もあいまって「ああ、この店はすごく愛されているんだなぁ」としみじみ感じたランチになった。

で、ついついデザートにこの店特製のチーズケーキとか食べてるし。
リコッタチーズをベースに使っているらしいここのケーキ、リコッタチーズ独特のポクポクした舌触りが感じられる面白いものだった。ジュワッと染み出るような独特の水っぽさがあって、ニューヨークチーズケーキとは全く違った風情で、また私は嬉しくなってしまったのだった。

「VENIERO'S」の
 プチフール $9.50/1lb
 ミルフィーユ $2.00
 チーズケーキ(小) $2.00

昼食後、レストランのすぐ近くにある「VENIERO'S」なるケーキ屋さんに行ってみた。なんでも「ニューヨーカーの間ではド定番」のケーキショップなのだそうである。ここのチーズケーキがナンバー1と言う人も少なくないらしい。友人Yも
「ああ、そうね。あの店は基本よね」
と言っている。更にコリスケさんも「あそこのショートケーキ、めちゃめちゃウマイんですよ」とおっしゃるのである。そんな話ばかり聞くものだから、わくわくして行ってみた……ら、大行列が、そこに。

本来、年中無休で朝8時から深夜までやっている店らしい。が、サンクスギビングの今日は午後3時半で閉店するのだそうだ。ピックアップ用カウンターには自宅用かお土産用か、ともかく予約した品を受け取る人が十数人列をなし、予約なしのケーキカウンターはケーキカウンターで30人ほどが行列を作っているのであった。ここのケーキじゃなきゃサンクスギビングのディナーにならないのよー、と、そういう人がつまりは多いということなのか。

で、閉店間際という時間も時間だったので、名物のホールタイプのチーズケーキは売り切れだった。代わりに手のひらサイズのミニチーズケーキがショーケースにあったので試しにそれを買ってみることに。期待のショートケーキもあるにはあったけどホールサイズしか販売されておらず、結局はミルフィーユとミニチーズケーキ、それに直径5cmほどのプチフール類を6個ほど箱に詰めてもらって帰ってきた。どれも素朴な外見のケーキで、種類も豊富。地下鉄に揺られつつホテルに帰り、しばらく部屋でごろごろまったりと過ごしてからプチフールをとりあえず1個だけつまんでみた。

サクサクのバターたっぷりタルト生地の上には、しっかり泡立てられた固めのホイップクリームがたっぷりと。上にはイチゴのチョコがけやナッツのチョコがけのトッピングなどが施されている。生クリームはありがちな植物性油脂の味など全くしない、いーい感じにこってりとした美味しいもの。素直な味のタルト生地が、「あー、こりゃ人気があるのもわかるなぁ」と感じられるものだった。
残りのケーキはきっちり蓋して袋につめて、ホテルの部屋のベランダへ(←スキーロッジなんかでジュースなんかをこうやって冷やしたりするよねぇ……)。氷点下になる外気温、冷蔵庫じゃなくて冷凍庫になってしまいそうなのがちょっと怖い。ニューヨークってスキー場と同じくらい寒いんだな……。

New York 「Peking Duck House」にて
 小龍包 $5.75
 北京ダック $34.00
 青島ビール $3.50×2
 コーラ $1.75

今日はサンクスギビングデーで、町中ターキーターキーなのである。サンドイッチ屋もスペシャルターキーサンド。イタリアンレストランでもターキーとクランベリーソース。
「サンクスギビングだしね」
「ターキーだしね」
「ま、仲間ってことでね」
と、今日の夕飯は北京ダックに決定した。

目指した「Peking Duck House」も、コリスケさんに教えてもらったお店だ。ホームページの中にここの北京ダックを食べたことについてのコラムがあり、「この店、すっごく気になるんですが、どこですかー?」と聞いてしまったのだった。当時からオーナーが変わり、どうも店も改装されたっぽい。不味くなってなければ良いけど……と、それでも気になる私たちは電話で「サンクスギビングだけど営業してるの?」と確認した後、「予約はいっぱいだけどお店に来てくれれば案内できると思うよ」と言われてのこのこ出かけてみたのだった。

サンクスギビングの夜は、さすがにどこもかしこも閑散としている。チャイナタウン内の店でさえ、営業しているところはちらほら、という感じ。そんな中、あからさまに絶好調の営業状態なのがその北京ダック屋なのだった。超満員のうえ、10人ほどが行列を作っている。15分ほど待って夜8時過ぎ、ちょっと遅めの夕食だ。

メニューには点心類も載っているし、麺料理や炒飯、スープや一品料理も数多く載っている。が、やっぱり北京ダック屋であるので店内には北京ダックがうじゃうじゃと"ダックそのまま焼きました"状態なものが(頭も足もついております)銀のトレイに乗せられて行き来している。そしてそのダックには包丁持った調理服姿のおっちゃんが付随しており、ダイニングフロアの中央でおもむろにバッサバッサと切り分けていくのだった。皮だけじゃなく、肉もたっぷりつけられている。茶色くテラテラと光る皮がいかにも旨そうだ。で、"骨にまだまだ肉ついてますけど皮はなくなりました"という状態のダックが、またうやうやしく厨房に戻っていく。おっちゃんも戻っていく。

北京ダックだけで充分お腹いっぱいになるだろうと確信しつつ、ついついメニューにあった「小龍包」を頼んでしまう。青島ビールをくいくい飲みながらしばし待つと、ステンレス製巨大蒸籠に入った小龍包が8個。皮が少々厚めの小龍包は、中の肉も皮もブリブリブリブリと弾力のある期待以上に美味しいものだった。皮の厚さが気にならない、というより"これでなくては"と思ってしまうほど、中の肉あんに強い弾力がある。全体的にもっちもっちとした歯ごたえの弾力たっぷりの小龍包だった。当然、中にはスープもみっちりと。皮を歯先で噛み切ると、レンゲから溢れそうなほどのスープがじゅるんじゅるんと出てきて、添えられた黒酢と生姜がたまらなく似合った。北京ダック屋なのに、いきなり小龍包が美味しくて
「なんか、ずーるーいー」
「なんか、反則〜」
と訳の分からないことを呟きつつ、次は北京ダックへ。

ステンレスの蒸籠に入ったたっぷりの小麦粉の皮。刻まれたキュウリと葱。そしてたっぷりの甘辛いタレ。それらがテーブルにやってきて、いよいよ大量の刻まれた北京ダックが登場した。皮だけの部分あり、肉つきのところあり、それらの表面はどれもテラテラと怪しい輝きを放っている。アツアツのパリパリのジュワジュワで、しばらく物も言わずにせっせせっせと巻いては食べ巻いては食べしてしまった。
「ちょっとね、"肉ばっか3つ巻き"しちゃうわよー」
「俺は"皮ばっかり堪能"をやってみよう」
「実はね、この皮に塩胡椒だけかけて葱と一緒に食べると、なかなか……」
などと北京ダックとしてそれはちょっと違うんじゃないかという食べ方も味わいつつ、しかし1羽のダックはさすがに多すぎた。普通は4人で1羽くらいが丁度良いはずで、6切れほど残った余りは包んで貰って持ち帰ってきた。

1羽のダックを平らげて、たったの34ドルという値段も嬉しかった。
「なんかね、もー美味しくて美味しくて……キモチワルイ」
「うん、美味しくてシアワセで……ムネヤケが」
と、ムカムカするほど北京ダックを詰め込んでそれでも幸せな私たちだった。しかもダック屋の近所の乾物屋で1ポンド30ドル弱の干し貝柱も買え、これでテネシーに帰って中華粥が作れるかと思うとますます幸せ。
サンクスギビング、おめでとー。

11/29 (金)
DOUGHNUT PLANT(New York)の「Walnut Doughnut」
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
「VENIERO'S」の
 ストロベリーミルフィーユ
コーヒー

本日は、11時にチャイナタウンで待ち合わせして飲茶の予定。
ホテルのベランダには、昨日買ったは良いけど食べきれなかったケーキが寒空の中キンキンに冷やされていて(凍っていたんじゃないかと思うほど)、食べるタイミングがみつからず「朝食にケーキ」という何ともいえない展開になった。ホテルのロビーに朝は無料のコーヒーサーバーが出てきているので、それを取ってきて部屋の中でケーキを囓る朝御飯。

やっぱり「VENIERO'S」のケーキは美味しいのである。苺の果肉がどっさりホイップクリームに混ぜられてパイ生地の間に挟まっているストロベリーミルフィーユ(←ショーケースには特に商品名などがついていなかったので、これは適当なネーミング)は、パイを囓ってもクリームを舐めても何とも言えない素直で素朴な味がする。外見はちょっとばかり野暮ったささえ感じられるケーキだけれど、いちいち旨い。
だんなが食べていた直径十数センチのミニチーズケーキも、これまた唸るほど美味しかった。適度な粘り気があり適度に軽く、甘さは心持ち控えめ。口に入れるとスーッと溶けていくような、そのくせ空気がたっぷりというわけじゃなく目の詰まっているチーズケーキだった。「DEAN&DELUCA」といい「Junior's」といい「VENIRO'S」といい、どの店もそれぞれ独自の味がして、どれもこれもいい感じ。私の好みは「DEAN&DELUCA」で、だんなの好みは「VENIRO'S」のものらしい、と本日判明したのだった。

New York 「Golden Unicorn」にて飲茶♪
 蝦餃
 焼売
 湯葉巻き
 炒飯
 海老の揚げ餃子
 大根餅×2
 鶏饅頭
 咸水角
 ニラ餃子
 水餃子
 金魚餃子
 蛋撻
 芝麻球
 マンゴプリン
 青島ビール×4
……を大人4人と子供1人で平らげる。

11時、チャイナタウンの飲茶屋さん「Golden Unicorn」で友人Yと待ち合わせ。更に、高校時代の友人Sちゃんの友人Nさんがニューヨーク近郊に現在留学中ということで、誘いをかけて一緒に御飯を食べることになった。今日は大人4人子供1人で飲茶。点心をつまむのは大勢いた方があれこれ楽しめて、良いのよねー。

50ほどのテーブル席がある中を、ワゴンがどんどん通っていく。「それ見せてー、あれ見せてー」「咸水角、ないの?」などと、ワゴンに乗っていないものも注文しながらテーブルにどかどか点心を並べていく。
ちょっとばかり火が通りすぎて浮き粉の皮がペショッとなった蝦餃だったり、ちょっとばかり油がまわった揚げ物類だったり(ワゴンサービスのは大抵そんなものだけど……)ということもあったけれど、点心はどれも香港の匂いが感じられるものばかりだった。にんにくの塊がごろごろ入っているニラ饅頭はえらく巨大でブリブリとしていて、大根餅は腸詰や干し海老の風味が豊かでふわふわと柔らかいものだった。鶏肉の団子が入った饅頭など、今までにあまり食べたことのない点心なども出てきて、あれやこれやと人数にものを言わせて盛大に食べてしまう。昼間っから全員ビールだし。

そして、"ニューヨークのチャイナタウンの中ではかなり旨い"と噂されるマンゴプリンも最後にしっかりいただいた。果肉の粒は入っていない、クシュッとした舌触りの柔らかなマンゴプリン。香料臭くはないものの「これって原料はマンゴージュースか冷凍果肉……?」とちょっと疑いたくなってしまうほど生のマンゴーの風味が今ひとつ感じられないものだった。酸味は少なく甘さが強め、ミルク感がちょっと少なめ。なんとなく、"ゆるく固めたマンゴージュース"みたいな感じなのだった。生のマンゴーが美味しい季節じゃないから、仕方ないのかもー。

「DOUGHNUT PLANT」にて
 Walnut Doughnut $1.75

飲茶屋の前で、皆と別れる。今日は珍しくだんなと私は別行動する予定なのだった。だんなは一人で国連本部を見に行き、私は息子を連れて「MOMA QNS」(現在MOMAが改装中で、クィーンズで仮運営中なのだとか)に行ってみることに。MOMAの前に、飲茶屋から歩いていけそうな距離にあるドーナツ屋さんを目指してみようと、息子と2人でてくてく中華街を抜けていく。

中華街を抜け、住宅街に突入しかかったところ、「DOUGHNUT PLANT」の小さな店の看板が見えた。「DEAN&DELUCA」でも買うことのできるドーナツで、数日前にプレーンなやつを買って食べたことがある。それがあまりにも美味しくて、思わず工場兼の本店に行ってみることにしたのだった。小さな小さなカウンターだけの店で、店頭には「TODAY'S DOUGHNUT FLAVORS」なんてチョーク書きされた看板が立っている。本日のフレーバーは 「FRESH CRANBERRY」「ROASTED CHESTNUT」「WALNUT」「HOT CHOCOLATE」「HERBAL TEA」の5種類だそうだ。どれも旨そう……。

全部買って袋に詰めてもらおうという欲望と闘いながら、でもそこはぐっと堪えて1個だけ息子と分けて食べることに。ここのドーナツ、なにしろでかい。がぶっと大口開けて囓りついて、それでも中央の空洞に辿りつけないほど、でかい。モチモチとした生地はそのくせ空気もたっぷりで軽い食感だけど、しかしなにしろ巨大なのだった。
WALNUTドーナツを1個買い、息子と二人で店頭にてわしわしと食べる。ナッツと共にシュガーコーティングされたドーナツは、甘くないかと言えば甘いけれど、不思議なほどに食べやすいのだった。ほんのりと、まだ温かくて、それがまた良い感じ。

「おかーさん、おいしーねー」
「うん、美味しいねぇ」
と手と顔をベタベタにしながら食べ終わった後、"ほっぺについてるよー"と息子の顔をぬぐってあげたところ、
「おかーさんの顔にも、ついてるよー」
と指摘されてしまった。うわ、私の頬にもシュガーコーティングが……息子以上に。(←ダメじゃん)

「DEAN&DELUCA」の
 クレームブリュレ $5.00
カフェオレ

仮設展示のMOMAは、さすがに見応えがなかった(でも12ドルも入場料を取られた……)。大好きなダリとマグリットとアンリ・ルソーの絵を見られたからまぁいいか、と地下鉄に乗って再びマンハッタンへ。ホテルへ帰る道すがら、土産ものなど買わなきゃなぁ、と「DEAN&DELUCA」でお買物してきた。クッキーの箱3つに我が家用のパウンドケーキ、チョコレートに生ポルチーニに友人Yおすすめのピクルスの瓶。250ドルもする中国茶器を前回来た時に狙っていて、今日は本当はそれを買うつもりだったのに、いざケースから出してもらった段になって蓋の一部が欠けていることが判明してしまい、
「……うーん、250ドルなんだけど、125ドルにまけるわ。どうする?」
と店員さんに交渉される事態に。すごくすごく欲しい茶器だけど、安くしてもらったところでこの先ずっと「ああ、ここが欠けてる……」と思いながら使わなければならないかと思うとちょっと苦しい。諦めることにした。
何だか悔しいので、思わずクレームブリュレを2個、籠に追加して買ってきてしまった。
だんなは私たちより先にホテルに到着していて、夕方5時半過ぎて一緒におやつ。

表面がこんがりとカラメリゼされたクレームブリュレは、これでもかとバニラビーンズが入っているものだった。ねっとりとしたカスタードクリーム状の生地はとてつもなく滑らかで、ふわんふわん。えらく乳脂肪率が高そうな、リッチな味わいだ。ニキビが噴出しそうなこってりさに笑ってしまいながら美味しくいただいた。

New York 「Grand Central Oyster Bar」にて
 Oysters (Bluepoint) $1.45×16
 Fried Oyster $8.75
 Smoked North Atlantic Salmon $9.95
 Manhattan Clam Chowder $4.75
 New England Clam Chowder $4.75
 French Fried $4.75
 Brooklyn Lager $5.75
 Sierra Nevada Pale Ale $5.75
 Coke $2.25
 Espresso $2.50×2

よっぽど私たち、魚介に飢えていたらしい。ボストンで2日連続生牡蠣喰った挙げ句、ニューヨークについたその日にもこの店にやってきて、友人Yに
「なんでそんなに牡蠣ばっかりー???」
と大笑いされたのだけど、その翌々日である今日もまたグランドセントラル駅地下のオイスターバーにやってきている私たちなのだった。
本当は、"めっちゃすごいステーキ屋"なる「Peter Luger」なるステーキ屋にでも行ってみようと言っていたのだ。予約が遅すぎて、残念ながら今回の旅行中には行けないことになってしまい……だからって牡蠣喰うこともないのであるが。

この店のマンハッタンクラムチャウダーは美味しいのだ。ニューイングランドクラムチャウダーは牛乳仕立ての白いもので、マンハッタンクラムチャウダーはミネストローネに似たトマト味の赤いもの。ほんのりセロリが香る、とろんとした赤いスープは、それはそれでニューイングランドスタイルとは違った美味しさがある。今日は紅白1つずつ取ってだんなと交換しながら食べてみた。白は白でこってりドロリと"牛乳じゃなくて生クリームたっぷりですか?"と言いたくなるほど濃厚なもので、さっぱりした赤とはまた全く傾向が違う。どちらもちょっと細かくなったクラムがシコシコした歯触りでたっぷりと入っている。

そして本日は、1人8個の生牡蠣。更に牡蠣フライタルタルソース添え。それに、なにやら美味しそうだったのでスモークサーモンも1皿取った。テーブルの上は魚介だらけで、それに感動している自分はやっぱり魚介に飢えていたんだなぁとしみじみ思う。
スモークサーモンは、ちまちまと薄切りになぞになっていなかった。塩鮭のごとく、切り身のままごろりと、しかも3切れも皿に乗っている。レモンを絞り、自分のナイフでおごそかにカットして口に運ぶと、とろーんと溶けていくような甘さがあった。火は通っていないけれど生でもなく、絶妙のツルツルとした舌触りがある。塊のスモークサーモンなんて、何やら贅沢な気分になってしまう。

相変わらず牡蠣メニューには20種類ほどの牡蠣の名前が載ってはいたけれど、今日もみみっちく一番コストパフォーマンスが良さそうなブルーポイントばかりを食べてしまった。レモン絞ってそのままいったり、カクテルソースちょっとなすりつけて啜りこんだり、
「甘いよ〜」
「うまいよ〜」
「いくらでもいけそうだよ〜」
と、目線が怪しく中を飛んでしまいながら今日も生牡蠣を堪能してしまった。そんなに亜鉛を摂取しなくても、という程に。

11/30 (土)
B Bar Grill Cafe(New York)にて「Bowery Burgers」 (昼御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
New York 「B Bar Grill Cafe」にて
 Summer B Bar Prix Fixe Brunch $17.00

いよいよ旅行最終日。よっぽど今日のお昼、昨日の夜に行けなかった"とにかく凄い"という噂のステーキ屋さん「Peter Luger」に行ってみようかと思ったものの、この店のステーキは超満腹状態になってしまうほどのボリュームだという話だったので、その直後に長距離ドライブは無理ではないかという家族会議の結論に達した。メトロポリタン美術館で一番の目的である"ウィリアム"(←美術館のキャラクターにもなっているメソポタミアのカバのモニュメント)も見られなかったことだし、またきっとニューヨークには来ることになるのだろう。次の目的はウィリアムとステーキ屋さんだ。

「ステーキ屋さんに行けなくなったよー」
と昨日のうちに友人Yに報告したところ、
「じゃあ明日のブランチ、私がガツンと肉を食べたくなると行くお店に行ってみる?」
と誘いを受けた。シャンパンが飲み放題のブランチなるのだとか。プリフィックスのブランチは15ドル前後と嬉しい値段だということだ。

午前10時にホテルをチェックアウトし、段ボール2箱分になった土産物類を車に詰め込み、Yのマンション近くに車で移動。そこでYと合流してぽてぽて歩いて「B Bar Grill Cafe」というその店に行った。ブランチは10時半から。ただし、大体12時とか1時とかに混雑することがほとんどらしく、開店直後のその時間はほとんど貸し切り状態だった。

「Summer B Bar Prix Fixe Brunch」は、17ドル。前菜として"本日のスープ"やフルーツ盛り合わせ、シーザーサラダなどのうちから1皿選び、メインディッシュとしてスモークサーモンプレート、フレンチトースト、ブルーベリーパンケーキ、ワッフル、サンドイッチ類、卵料理の盛り合わせなどのうちからやはり1皿選ぶようになっている。Yのその"肉を食べたいときに食べる"というのは、牛かターキーかベジタブルか、から選べるハンバーガーなのだった。そのハンバーガーがめちゃめちゃ旨いらしい。
このセットには、バスケットに入ったパンの他、シャンパン・ミモザ・ブラッディマリー・フレッシュジュースのうちから好みなものが2杯まで(夏期が2杯までで、寒い時期には飲み放題になっていたらしいけど、メニューには未だ"Summer B Bar Prix Fixe Brunch"なんて書かれているのだった。……雪降ってるのに夏だなんて〜)注文できる。私は真っ昼間からシャンパンを頼んでしまうのだった。Yはブラッディマリー、だんなはオレンジジュース。

私はシーザーサラダに牛のハンバーガーを注文。ハンバーガーにベーコンや各種チーズ類をトッピングすると1ドル増しで、モッツァレラチーズをつけてもらった。結局全員ハンバーガー。息子もキッズメニューのハンバーガーを注文し、店員さんに
「全員ハンバーガーなのね?」
と笑われた。

パルメザンチーズがたっぷりのシーザーサラダは適度な酸味がある上品な味。"本日のスープ"はRobster Bisqueで、胡椒がききまくったトロリとした海老色の海老味のものが、だんなの前にやってきた。
テーブルの中央に置かれたパンはポソポソとしたコーンブレッド状のもの。表面にシナモンシュガーがざっくりとまぶされていて、パンそのものもカステラのように甘い。温かいパンはポソポソ感もあるもののしっとりとしていて、これが妙に美味しかった。巨大ハンバーガーが来るというのについついポソポソ食べてしまう。

そしてやってきた巨大ハンバーガー。パンはイングリッシュマフィンに似た軽い食感の生地で、こんがりと火が通っている。「焼き加減は?」と聞かれてミディアムでお願いしたハンバーグは、断面の中央がほんのりと赤い。上にはとろけたモッツァレラチーズがこれまたたっぷりと。添えられたレタスとトマトと玉ねぎを挟み、ハインツのケチャップをだばだばだば〜とぶっかけた後、上からぎゅうとパンを押さえつけて、囓る。ハンバーガーが4つも並ぶと、テーブルは何やら肉の匂いでいっぱいに。

小山のようなフライドポテトも囓りつつ、シャンパンもお代わりしつつ、午前も早くから良く食べる私たちだった。希望どおり、"肉喰って腹一杯"な状態にできあがり(しかもステーキ屋に行ったのと変わらないんじゃないかというほどの満腹状態で)、その店から数ブロック離れた日本食材屋で最後の買い物をした後、Yと別れてマンハッタンを後にした。Y〜、いろいろお世話になりました。ほんと、ありがとう。テネシーに遊びに来てくれたらパンケーキ100枚くらい奢ってあげるからね(と、ここで私信してどうする……)。

バージニア州Staunton 「Applebee's」にて
 Boneless Buffalo Wings $6.49
 Applebee's 9oz. House Sirloin $9.99
 Southwest Steak Skillet $10.99
 Kid's Macaroni and Cheese $3.49
……を、一家で食べる。

昼過ぎに、行きと同じルートでトンネル通ってマンハッタンを脱出。荒っぽい(荒っぽすぎる)車事情のニューヨークから抜け出し、帰るからにはとっとと脱出だと言わんばかりにニュージャージー州を越え、ペンシルバニア州に入り、ひたすらひたすら南西に向けて車を走らせた。道中、雪は積もっているわ雪が降ってくるわ、季節はいよいよ冬という感じ。午後6時過ぎて「ここに宿を取ろう」とハイウェイを降りたのはバージニア州のStauntonという小さな町だった。

手元には、州の観光案内所(高速道路沿い、州境近くを通ると大体ある)で貰ってきたホテルクーポンブックが。
「あのホテルが安い〜」
「こっちのホテルはもっと安いけど、朝食がついてない〜」
と車の中で検討しまくった結果、町から5マイルほど外れたところにある「DAYS INN」に泊まることに。「朝食にホームメイドの温かいワッフルを出しますよー」と書いてあったのが決まり手だった。しかも1泊39ドル。お得だ。

しかしさすがに町外れだけあって、周囲にはほとんど何もなかった。ガソリンスタンドがいくつかと、そこにくっついているSUBWAYくらい。外には小雪がちらついていて、この寒さの中SUBWAYで食事を済ませるには心が冷え切ってしまいそうだった。
で、車を走らせ、Stauntonの町の中心部あたりまで食事処を探しに出ることに。レッドロブスターやマクドナルドと共に「Applebee's」というチェーン店を見つけ、そこに入ってみることにした。だんなはこの店のCMをテレビで見たことがあるらしい。で、気になっていたらしい。
「……で、何屋なの?」
とだんなに問うてみると
「うーん……アメリカ屋……」
とのこと。ステーキとかハンバーガーとかフライものとか、要するにそんな感じらしい。

なんとなーく、南部の雰囲気が感じられる内装の店内だった。老夫婦だの家族連れだの、8人ほどのグループ客だので店はけっこう混雑。席の案内を待つ客が2組ほど待っていて、少々待ってから席についた。私たちのテーブルの給仕はお団子頭の小柄キュートな女の子。でもコテコテの南部訛。ニューヨークではそこそこ向こうが言っていることがわかったしこちらの言ってることも通じたのだけど、いきなり会話が通じなくなったことに笑ってしまいつつ、昼にハンバーガー食べたというのにステーキとか注文してしまった。

前菜に、骨なしのバッファローウィング。カラッと揚げられた鶏肉がタバスコベースの辛い辛い辛いソースに和えられている。マイルドとホットの味つけでマイルドを選んだはずなのに、唇が腫れ上がりそうなほど辛い。セロリスティックと共にチーズクリームのソースもついてきた。
そして私が頼んだのが「Southwest Steak Skillet」。厚切りのステーキ肉が手つきの一人用スキレットの上に焼かれ、上にはチーズがどっぷりと溶けている。甘辛く炒められた玉ねぎとパプリカが表面を覆い尽くすように添えられ、更にじゃがいも2個分はありそうなマッシュポテトとガーリックトーストが全て1皿の上に盛られているのだった。これがサウスウェストスタイル、なのであるらしい。

歯ごたえのある肉は、しっかり好みのミディアムレアに焼かれていた。溶けたチーズがこってりとボリュームたっぷりで、バッファローウィングを食べた後には少々食べ応えがありすぎた感じ。
やっとの思いで、だんなに手伝ってもらいながらステーキを食べ終え、「マッシュポテトがなくならない……」とつついていた頃、お団子頭の給仕のおねぇさんがやってきた。
「デザートはいかがですか?」
……い、いらないっす……(メニューには、こってこてのチョコレートソースをかけたチョコケーキとか載ってるんだこれが)。