パストラミ&モッツァレラチーズ&ルッコラ
トマトソース&トマト&バジル&モッツァレラチーズ&パストラミ&ルッコラ&パルメザンチーズ
コカコーラ
昨日作った自家製ピザは、本当に旨かったのである。
「明日も、焼くのだー!」
と、昨日の昼、ピザを食べ終わるなり盛り上がっていた我が家だった。
「……いつ、焼くのだ?」
月曜日の夕食は、だんなはスーツ着用のパーティーに参加予定なので、夕飯にピザは焼けぬ。
「……朝かな、昼かな?」
「朝だな」
「うん、朝だな」
と、昨日のうちにわざわざスーパーまで行ってトッピングの材料を買ってきた。
「朝だしね」
「シンプルにね」
と、買ってきたのはルッコラとサラミソーセージ。なのに「ピザといったらコークでしょー」とか言いながらしっかりコカコーラも籠に入っているのであった。朝からピザとコークだなんて、アメリカ人じゃないんだから。
しかも、オーブン用のピザ台(テフロン加工の丸いプレート)まで買ってきた。また我が家に妙な調理器具が増えた。
冷蔵庫で保存していたピザ生地を冷蔵庫から出すなり伸ばそうとしてみたけれど、さすがにイーストが縮こまってるのか伸びてくれなかった。
250℃ほどに温めているオーブンの扉を開けて生地を熱波にさらしてコネコネし、
「おらー、早く柔らかくならんかーい」
ともにゃもにゃやっているうちに、昨日と同じくピヨーンと伸びるピザ生地に。丸く整えたら、まずはサラミとモッツァレラとルッコラの組み合わせでいってみることにした。
最初に4分、生地だけ焼いたら、サラミとモッツァレラだけを散らして軽くオリーブ油などふりかけ、更に3分焼いたらざくざく切って生のルッコラをたっぷり盛りつけてできあがり。トマトの赤い色が無いピザは見た目もさっぱりして朝御飯には良さそうだ。
んで、今日もやっぱり旨かった。ぴよよーんと伸びるチーズに、適当な塩加減のサラミ。胡麻の香りがするルッコラの風味や食感がすごく良い口直しになってしまって、いくらでも食べられそうだ。2枚目の生地を既にオーブンにいれていたにも関わらず、それが焼き上がる前に1枚目がなくなってしまった。
調子に乗った2枚目は、昨日の残りの具も全て乗せてしまうことに。トマトソースにトマトにバジル。モッツァレラは残りわずかだったので、せめて代わりにとパルメザンチーズをたっぷりかけた。仕上げにはやっぱりルッコラ。
「"ピッツァ・カプリチョーザ"(←気まぐれピザという意味)って感じ?」
「……いや、でも、一般的にカプリチョーザって、卵やオリーブやマッシュルームが乗ってたりするような気が」
「まぁ、"超気まぐれ"ということで」
「ま、なんでもアリってことで」
などと言いつつ、2枚目も速攻平らげた。
危険だ。危険すぎる、自家製ピザ……(食べ過ぎちゃう)。
アイスティー
今日は一日、明日や明後日に完成させる予定の料理の仕込み作業。
明日のお昼はだんなの研究室の料理持ち寄りパーティーで、明後日は「サンクスギビングに家にいないし、でもターキー焼いて喰ってみたいし」ということでIさん・Mさん両氏を呼んでの小さな夕食会の予定。明日の昼までに間に合わせなきゃいけない料理がめんどくさいので、今日から始めることにした。
明日の料理はちらし寿司にカスタードプリン。
出欠を取るついでに「掲示板の壁に持ってくるつもりの料理名を書いておいてね」とあったので、だんなは「Custard Pudding」「Chirashi-Sushi」と書いておいたらしい。
そう記した翌日あたり、研究所の日本人スタッフMさんはパーティーの事務雑用をやってくれているセラさん(アメリカ人女性)に「ねぇねぇ、ちょっとちょっと」と呼び止められたのだとか。なぁに?と寄っていくと、
「ねぇね、ねぇね、あの、"チラシズシ"っての?私、アレ、すっっっっごく楽しみなんだけどー!」
と、言われたのだそうだ。
いや、でも、サシミがいっぱい乗ってるような豪華なのを想像してたらちょっと違うわよ、日本の家庭で作るようなものでね、野菜がいっぱいなものだと思うわよ、と、Mさんは瞳をキラキラさせているセラさんに一応言ってくれたらしい。
「でもね、でもね、楽しみなのよー!」
……と、セラさん、それでも楽しみだと言ってくれたらしい。
どうせ日本人も20人近く訪れるだろうパーティーだから、まぁ和風のものを作っても(最悪、こちらの方の口に全く合わなくても)絶対なくなるだろうし、と決めたちらし寿司だったけど、それだけ楽しみだと言ってくれる人がいるなら、いっちょがんばろうかな、と思う。
にんじんを塩と薄口醤油で軽く煮て、油揚げを含め煮にして(ついでにいなり寿司も自分ち用に作ろうかと、"すし揚げ"も同じ煮汁でたっぷり煮てしまう)、蓮根は酢水で茹でてから甘酢に漬け込み、椎茸は甘辛く。ついでに茹で海老も用意して、錦糸卵の準備も終えた。正月のお煮染めもめんどくさいけど、ちらし寿司もなかなかどうしてめんどくさい。熱気の籠もる台所で半袖になって仕込みを続け、最後には明後日のターキー用のクランベリーソース作り。それまで醤油と味醂の匂いで満たされていた台所がベリーの甘い匂いと風味づけに入れたクローブの匂いも漂いだし、なんだか大変な芳香ただよう空間になってしまった。
4つの電気コンロを全部使っているような状態だったので(しかも朝御飯はたっぷりのピザということもあったので)、昼御飯は軽く冷凍食品で。
私は海老ピラフ、だんなはミートボールスパゲッティ。息子にもわけてあげつつ、ごく簡単に終わらせてしまった。
これでもかとセロリが匂う海老ピラフは、トマト味。すごく美味しい!と言えるほど美味しいものじゃなく、でも充分食べられる程度には美味しく(何しろ"飲み込むことすらできない"という味のものが時折存在するのがアメリカの恐ろしさだ)、日本で買う冷凍ピラフよりも圧倒的に量は少なめ。感覚としては、食事というよりおやつという感じ。
香菜山盛りピータン豆腐
海老とごぼうと絹さやの吸い物
羽釜御飯
葡萄・洋梨
本日だんなは、"子供は行っちゃだめなのよー"なパーティーにスーツを着て出かけていった。研究所の行事であっても圧倒的に「奥さんも子供さんも揃ってどうぞ」なものが多いなか、ものすごく珍しいことだ。すんごく久しぶりに、息子と私の2人飯。
ちょっと前に筑前煮の材料を揃えておいたよなー……と思い出して、作ってしまうことにした。たっぷり作って明日の朝にも食べることにしよう。あとは、心ゆくまで大好物の香菜を味わうことに。
手軽な鍋がないので、スキレットで筑前煮を作ってみる。レシピを見るとだし汁500ccに醤油やら味醂やらを入れて煮汁を作るところ、スキレットの密閉性に期待して(というかスキレットじゃ全然汁気が飛んでくれないので)だし汁100ccに醤油や味醂を表示通り入れて煮汁を作ってみる。沸騰したら肉を入れ、続いてゴボウや人参、筍、こんにゃく、椎茸などをどかどか入れていく。煮汁のあまりの少なさに不安になりつつ蓋をしてしばらく火を通してみると、ちゃんとフツフツいっている煮汁が材料の上まで泡を立て、ちゃんと煮えていた。かなーり良い感じだ。何度か上下を返しつつ、スキレットみっしりの筑前煮ができた。
香菜は醤油と酢と砂糖で甘辛いタレを作り、ついでにおろし生姜やおろしにんにく、豆板醤、胡麻油あたりを加えてざざっと絡めた。これはもうピータン豆腐にするしか!と冷蔵庫からがさがさとピータンと豆腐を取り出して、小皿に適当に切ったピータンと適当に切った豆腐をこんもりと、それを覆い隠すほどの香菜を散らした。
ちらし寿司用に買ってきた海老の残りを吸い物にして、かなり和風な食卓に。なかなか私好みの食卓の光景になったけど……今ひとつ子供向けではなかったかもしれない。すまん、息子。
「おかーさん、これは何〜?」
「それは、にんじん」
「おぉ〜、ぼくは、にんじんが大好きなんだなぁ〜」
息子は何故かにんじんが大好きだ。ビビンバ用のにんじんは、いつも息子に大半以上を喰われてしまう。私が子供の時分はにんじんなど喰えなかったので(←野菜はほとんど全く喰えなかった)、密かにエライと思っている。
「おかーさん、これは?」
「それは、ゴボウ」
「ごぼうは……たべられないと思うなぁ〜」
「……いいから喰えー」
「……おかーさん、おかーさん、これは?」
「それは、鶏肉」
「ええー?ぼくは、ぶた肉だと思うなぁ〜」
「作った私が鶏肉だと言っているんだから鶏肉なの!(確かに、脂肪分少なめの豚肉に似ていると思うほど、ちょっとパサパサの鶏ではあった……)」
「……おかーさーん、これはぁ?」
「それは、しいたけ」
「ひだひだだねぇ」
「うん、そう、ヒダヒダ。ちゃんと食べるように」
かくして、筑前煮も海老の吸い物もしっかり平らげてくれた息子だった。
渋茶色の各種煮物をひとつひとつ「これは?」と面妖な顔をしながらも完食した息子と一緒に、デザートは葡萄と洋梨。
息子の大好物の葡萄は今日も甘くて美味しくて、私の大好物の洋梨(アメリカに来て初めて買った、小ぶりのやつ)は渋くはないものの甘さがほとんど無くて非常に美味しくなかった。
「今日は一日中料理をがんばったのに、何だか報われない感じー」
とブーたれながら、洋梨は速攻白ワインと砂糖で軽く煮込んでコンポート化。明日には多少食べられる味の洋梨になっている……はずだ。多分。
海老とごぼうと絹さやの吸い物(昨夜の残り)
おにぎり
日本茶
今朝は8時起きで、昼食用パーティー料理の仕込みから。11時半から始まるサンクスギビングランチパーティーに、ちらし寿司とカスタードプリンを間に合わせなければいけない。まずは米を炊き、炊ける間にカラメルを仕込んでプリン生地を作り、オーブンに放り込んだところで、今度はちらし寿司加工作業。炊きたての御飯に合わせ酢を回しかけ、昨日のうちに煮含めておいた具材をせっせと御飯に混ぜ込んでいく。4合炊いた米を我が家が所持する最大級の耐熱皿にみっちり敷きこみ、さやえんどうと錦糸卵、海苔、でんぶを散らしたらできあがり。なかなか綺麗な色合いになって、パーティーっぽい見栄えになった。ほぼ同時にプリンも焼け、上出来上出来、とニヤける私。
で、朝御飯は昨夜の余りものでちゃちゃっと済ませた。昨日のうちに握っておいたおにぎりと、チンして温めた筑前煮。海老の吸い物も残っていたので、なかなか渋い色合いの充実した朝御飯。
昨夜は結局筑前煮を食べられなかっただんなは
「そうそう、こういうのが食べたかったんだよ……うまー!」
と、朝からせっせと大量の筍やこんにゃくをつついて食べてくれた。うん、和風朝食もやはりしみじみと美味しいものだ。
サンクスギビングランチパーティー
巨大な耐熱皿を2つ抱えて、11時頃、研究所に到着。
1階ロビーのパーティー会場は、料理が並び始めているところだった。
「うーん、毎回、スーパーで買ってきて済ます人もいるしねぇ」
とスタッフMさんに言われていたんだけど、すごいすごいすごい。テーブルには自家製料理が盛り沢山だった。アルミ製の巨大キャセロールに入った料理がたっぷり並び、果物ありチーズあり、大量のケーキあり、とすごい光景になっている。
いそいそと私の皿も置かせてもらい、会が始まるやいなや一緒になって食べ始めた私。
私の寿司は、見かけが派手なこともあってか(クリーム色のオーブン焼きが多いなか、絹さやの緑とか卵の黄色が妙に目立った)、アメリカ人の注目を浴びた模様。
「What's this?」
「スシだー」
「スシ、スシ」
「ほー、スシか」
と大柄なアメリカ人が4〜5人固まって「スシ」「スシ」言って皿に盛り始めた。あ、食べてくれた、とホッとして眺めていたら、それ以上の勢いで「うまい、うまいッスよ」「うめー」とIさんMさん両氏がてんこ盛りにして喰っている。
Mさん手製の中華ちまきあり、Hさん手製のレアチーズケーキあり、しかもたくさんのアメリカ家庭料理あり、という楽しい会になった。
"材料をクリームベースのソースに絡めてオーブン焼き"という手法が多いキャセロール料理でも、そのベースの食材や味付けであれこれと違ったそれぞれの味が楽しめたし、身もだえするほど美味しいアップルパイも食べられた。
せっかくなので、何を食べたか残しておこうと、こんなファイルまで作ってみたり。
1時間ほどのんびり食事しながらおしゃべりして、気がつくと「喉の下まで食べ物でいっぱい」という超満腹状態に。
「だだだ、だんなぁ〜」
「……なに?」
「腹一杯で、動けないぃぃぃ〜」
「……ばか」
「揺らしたら、具が出る〜出る〜出る〜」
「……アホ」
と大騒ぎして、1時間ほど研究室で休んでから帰宅したのだった。
満腹すぎて目眩起こしてしまったよ。
3rd Tuesday Party
昼と同じ会場で、夜もパーティー。ただし主催は別で、昼にはどちらかというと招待客だった私たちが、今度はホスト側になる。日本に興味のある人と、この地に住む日本人を招いての交流会という内容の、月に一度のパーティーだ。研究室からの費用で、来る人にアルコールとソフトドリンクとスナック類、ピザなどがふるまわれる。
「喉までいっぱい」の満腹状態を夕方まで続け、そのままヒーヒー言いながらこちらの会にも出席した。
「もう、飲めなーい」
「食べられなーい」
とか言いながらビール飲んで、ついついピザをつまんでしまう。
やってくる人は、本気で日本を知りたいと楽しみに来てくれる人や、そういう人としっかり交流して英会話の上達も試みようとする日本人、もうただただ日本人の知り合いに会えておしゃべりできればいいのよねという日本人、それすらどうでも良くて"子供にピザ喰わせたいだけちゃうんか"とツッコミたくなる日本人、色々だ。
お子さまの参加も大歓迎!とは言っているけど、全く子供の面倒をみずにおしゃべりばかりしている人がいるのも、ちとつらい。
実のところ、このパーティーは楽しみ半分、うんざり半分というところ。
せめてもの幸いは、通訳として出会ったRさんがやってきてくれたことだった。だんなさま(米国人)とも挨拶できたし、息子より1歳年下の娘さんとも会って遊べた。ふわふわ栗色の髪の、天使のような女の子だ。下まつげバチバチで、思わず見惚れてしまったのだった。ピザ喰いながら。
筑前煮(一昨日の残り)
日本茶
サンクスギビングは来週の木曜日。だが、今晩、我が家はサンクスギビングディナーなのであった。来週は旅行に行ってしまう予定で、サンクスギビング定番のローストターキーを焼く機会がなくなってしまう。それは残念だということで、ターキーを買ってきてしまったのだった。巨大な巨大なターキーは13ポンド(約6kg)。さすがに一家で食べきれないので、御近所のIさん・Mさん両氏を招いてしまうことにした。
調子に乗って、だんなが招待状など出しているのである。
Dear Customors,
当レストランでは、サンクスギビング週間の休業に伴い、早めのThanksgivingディナーをご用意させていただくことと致しました。
つきましては、11/20(水)の夕食にローストターキーをご用意してお待ち申し上げております。
ご出席の有無をお早めにお知らせ下さい。
速攻で2人から
「勿論うかがわせていただきます」
と返事が来た。
「ローストターキー……やっぱり中に何か詰めるの?」
Iさんは数日前からニヤニヤしている。
「ターキーにはやっぱりワインでしょー。……買っていきます」
とMさん。かくして今日は一日ターキーとの戦いが予定されているのであった。
でも、朝一番にやったことは酢飯を作ること。
昨日作ったちらし寿司の仕込みの段階で、ちらし寿司用の油揚げと一緒にいなり寿司用の油揚げも煮含めておいたので、炊き立て御飯に合わせ酢を混ぜ合わせ、朝からせっせといなり寿司作り。本当はちょっと置いた方が味が馴染むんだけどなぁ……と思いつつも、腹がすいたので作ったそばから日本茶入れてもりもり食べてしまった。
10個できたいなり寿司は、あっという間に残り3個に。「喰ったんじゃなくて飲み込んだんじゃないか」とまで思ってしまっただんなの喰いっぷりはすさまじく、3個が数分で異次元に消え去った。「もう1個、行こうか行くまいか……」と悩んでいたので、私と半分こ。
だんなが3個半、私が2個半、息子が1個。いなり寿司って、喰いあきぬ……。
クラムチャウダー (Clam Chowder)
マッシュポテト (Mashed Potato)
芽キャベツのグリル (Roasted Brussels Sprouts)
グレービーソース (Gravy Sauce)
クランベリーソース (Cranberry Sauce)
ビール
赤ワイン (Sterling Vineyards '99 Merlot Napa)
パンプキンパイ (Pumpkin Pie)
アイスカフェオレ
スタンダードなサンクスギビングディナーとはどういうものか、なんてのを数日間インターネットや雑誌などで眺めてちょっと学んでみて、いよいよ自分でターキーを焼いてみることに。
スーパーマーケットにはターキーと共に、その腹の中に詰める「スタッフィング」も袋入りのものが各種大量に売られている。中身は、巨大なクルトン(であったりコーンブレッドであったり)にハーブや野菜を混ぜ合わせたものが多い様子。ワイン風味のものやガーリック風味のものなど、なかなか旨そうだ。……でも、ついつい腹の中には御飯を詰めたくなってしまう私だった。鶏の腹の中に詰まったたっぷりのガーリックピラフを想像すると、ついつい手は米に伸びてしまうのだ。で、結局ガーリックピラフ詰めにすることに。これでもかこれでもかとガーリックピラフを詰めたら、本来はちゃんと美しく束ねておかなきゃいけない両足が、不格好に左右に広がったままで閉じなくなった。少々格好悪いけど、まぁ気にしない。
13ポンドのターキーを焼く場合、焼き時間の目安は4時間から4時間半、というところらしい。昼過ぎからの長丁場が予定されているのであった。
つけ合わせは、スタンダードにマッシュポテト。本当ならば「Candied Yams」と呼ばれる甘い甘いさつまいものマッシュなども定番らしいけれど、多分全員が2〜3口食べたところで進まなくなってしまうだろうと、さっぱり味の芽キャベツのグリルを代わりに添えることにした。ターキーの添え物には、焼き汁を煮詰めてつくるグレービーソースと、クランベリーを甘く煮たジャム状のソース。
そしてお菓子も欠かせない。かぼちゃ料理も定番のサンクスギビング料理で、それはスープになったりパイになったりすると聞く。パンプキンパイは、これでもかとスパイスを効かせる傾向があり、しかもそのパンプキンは缶詰のマッシュ状のものを使うのがスタンダードなありかたらしい。……けど、ちゃんと南瓜で作りたいし、あまりスパイスを大量投入するのも今ひとつ好きではなかったので適当に(小林カツ代さんのレシピで)作ってしまうことに。和南瓜に似た南瓜を買ってきたので、蒸してマッシュにしてコンデンスミルクや生クリームを混ぜ込んでオーブンで焼いてパイに仕立てた。
あとは、スープ。「これはサンクスギビング料理じゃないんじゃないか」と内心思いつつ、なんとなく作りたくなったのでクラムチャウダーにしてしまうことにした。にんにく、玉ねぎ、にんじん、セロリ、じゃがいもを炒めてクラムの缶詰を加えて作ったクラムチャウダーは、とろみ少なめのさっぱり味。
予定通り2時半からオーブンの中に七面鳥が納められ、30分ごとに溶かしバターをちょこちょこ塗られながらじわじわとターキーは焼かれていくのだった。全体的に「アメリカのおっかさんの味」ではなく、やっぱり「日本人が作るアメリカ風料理」という感じにはなってしまったけれど、少なくとも不味くはない……といいなぁ……(ちょっと気弱)。
午後7時、2人がカリフォルニアの赤ワインを1本抱えてやってきた。
昼過ぎから30分おきに溶かしバターと肉汁をかけつつ焼いたターキーも、こんがりと良い色になっている(いや、ちょっと焼けすぎだったかなぁ)。
「すっげー」
「でっけー」
「うまそー」
と食卓の周囲で大騒ぎしながら席についた。
「えっとー、こういうの捌くのって、ホストがやるんだよね?」
とか言いながら、だんなは各自の皿に胸肉の部分から取り分けてくれたりして。脂たっぷりで一番美味しいもも肉は、お客さん2人で1本、私とだんなで1本を分け合った。
"ターキーは、ちょっとパサパサしていて"と、良く聞く。確かに冷めていくとちょっとパサついた食感になってはくるけど、焼きたてのターキーときたら、期待の何倍も美味しいものだった。皮の表面はパリパリだけどその下はしっとりと。肉もふくふくと柔らかく、いくらでも食べられそうだ。グレービーソースをかけたりクランベリーソースをかけたりしながら、えらい勢いで肉は無くなっていく。ターキー、けっこう美味しいぞ。何よりその巨大さがステキだ。
13ポンドのターキーはさすがに巨大で(つけ合わせもたっぷり作ったものだから)食べきれなかった。念のためにとサンドイッチ用のパンを買ってきておいていたけど、明日あたりはサンドイッチにして食べることになりそうな展開に。
ほんのりシナモンの風味だけをつけたパンプキンパイを最後に出したら
「あ、甘くなくて美味しい……」
と誉め言葉なのかどうかな微妙な感想をMさんが漏らして平らげていた。そんなに甘いケーキに辟易していたのか、と思わず笑ってしまいつつ、結局11時頃までアイスコーヒーなど出しつつ臨時レストランは大成功だった模様。
牛乳
昨夜のターキーが、小ボウル一杯分ほど残っている。昨夜のうちに骨から削いで、こんもり盛りつけておいたのだった。それほどパサパサでもないし、適当な塩加減でけっこう旨い。こうある事を予想して、ハンバーガー用のバンズを買ってきておいてあったので、朝御飯はターキーサンド。
温めたパンにバターを軽く塗り、昨夜の残りのマッシュポテトを敷き詰めた後、ほぐしたターキーをたっぷりと。皮の部分もちょっと乗せてから温めたグレービーソースを回しかけ、上からぎゅうと抑えてからかぶりつく。ちょっとばかりモサモサッとした食感のグレービーソースは、ターキーのおまけについてきた濃縮の"グレービーソースの素"を肉汁と水で伸ばしたもので、かなりセロリ風味が強いけどなかなか旨い。
冷や奴
日本茶
洋梨のコンポート マスカルポーネソースかけ
昨日いなり寿司用に作った寿司飯が余っていたので、昼御飯はマグロを買ってきて丼にすることに。だんなに
「あれ、あれ作ってよー、先月あたりにやってくれた、胡麻まぶして焼くやつ」
と、リクエストされた。
確かウィリアムズ・ソノマのカタログで見てやってみたレシピだ。マグロの塊肉(ここらのスーパーマーケットでは、マグロはステーキ用の牛肉と同じようなサイズと厚さにカットされて売られている)の全面に胡麻をまぶし、胡麻がこんがりと色づくまで強火でざっと炙ったらスライスしてできあがり。わさび醤油をつけて、刺身と同じようにして食べる。胡麻を、白胡麻黒胡麻2種類混ぜてからまぶすと、色合いが美しくて良いらしい。ちょっとだけ目先が変わって面白い、簡単料理なのだった。
で、そのタタキを作り、スライスして海苔と一緒に御飯の上に。煮切り味醂と煮切り酒を少量作って醤油とワサビを混ぜたタレを上からチャーッと回しかけた。おお、けっこう美しいかもしれない。
昨日の寿司飯はちょっと固くなってしまっていたけれど、上々の味だった。久しぶりの生魚だから、何だかありがたくってしょうがない。マグロ万歳。
そしてデザートに、数日前にあまりに不味かった洋梨をコンポートにしたものを。
白ワインと砂糖でさっと煮こんでおいた洋梨は、さすがに美味しくなっていた。「コンポートに似合うのよねぇ……」と、買ってきてしまったマスカルポーネチーズを取り出し、コンポートの煮汁をちょっと加えて混ぜてから洋梨にかける。
滅多に作らない洋酒風味のデザートは、何故か息子が喜びまくって食べていた(まぁ、アルコールは綺麗に全部飛んでいるはずだ)。
「昨日のパンプキンパイと、どっちが美味しい?」
と聞いたら
「こっちー」
と答えられた。な、生意気な奴め。
芽キャベツのグリル(昨夜の残り)
クラムチャウダー(昨夜の残り)
ルッコラのサラダ
ビール
パンプキンパイ(昨日の残り)
明日から、10日ほどの家族旅行。サンクスギビングの休みに、ボストンとニューヨークを訪れることにしてみたのだった。テネシーから我が家の車で、走行距離は片道900マイル(1440km)だ。無理せず2〜3日かけてのんびりと行くことにした。
ニューヨークには私の高校時代からの友人Yが住んでいて、ボストンには同じタイミングでだんなの同僚(現在イリノイ州に留学中)が遊びに来ることになっている。一緒に御飯食べましょー、一緒に飲みましょー、と、華やかな休暇になりそうなのだった。
「だから、ターキーは食べちゃわなきゃね」
「色々片づけないとね」
と、昨日の残りものの夕御飯。朝に引き続いてターキーをサンドイッチにしてしまいながら、肉そのものもビールのおつまみにつついて食べる。ターキーを焼くときにさんざん溶かしバターを塗った所為なのか違うのか、ターキーは好みの脂っこさがあってビールに似合う。他にも冷蔵庫内からはあれこれと消費しなければいけない物体が。
「ルッコラ発掘しましたー!」
「食べてしまえー」
「香菜も発掘しましたー!」
「そのまま囓ってしまえー」
と、もう大騒ぎ。1枚だけ残っていた鶏むね肉は冷凍庫に移送され、おおむね冷蔵庫内は綺麗に片づいた。卵の残りは茹でてしまって、明日卵サンドにすることにしよう。
ターキーの残りもすっかり綺麗に食べ終え、最後にパンプキンパイも平らげる。シナモンで風味づけしただけ、しかも他に加えたものは生クリームとコンデンスミルクと卵だけ、というシンプルきわまりないパンプキンパイは、昨日の男性陣には好評だったようだ。
「あのパイ、美味しかったんだけど、昨日は腹一杯であまり食べられなかったのが痛恨……」
と、今日の昼過ぎにだんなが研究室に顔を出したところ、Iさん・Mさん両氏に言われたのだそうだ。まだ半分残ってるけど分けてあげたら食べる?と言ってみたら、嬉々として取りに来た。この人たち、カレーでも煮豚でもターキーでもお菓子でも何でもよく食べる。あまりにいつもよく食べてくれるので、一度くらい"地獄のように不味いナニか"を喰わせてみたい衝動に駆られてしまう。案外もりもり喰っちゃうんじゃないか、と私はちょっと疑っているのだ。
ヨーグルト
カフェオレ
今日から10日ほどのニューヨーク旅行。日曜の昼間にニューヨークからボストン行きの列車の予約を入れてあるので、何がなんでも日曜日の午前中にはニューヨークに着いていなければいけないという状況だった。当初の予定では土曜日に家を出ることになっていたけれど、サンクスギビング週間は全米が帰省ラッシュになるという話だったので1日早く出ることに。モーテルに泊まりながらニューヨークを目指すことにした。土曜日にマンハッタン入りしちゃったら……友人Yに泊めてもらおう、と適当な計画で。
朝8時過ぎに目を覚まし、朝御飯は残り卵を昨日のうちに茹でてマヨネーズで和えておいたやつで、卵サンド。そして冷蔵庫に残っていたヨーグルト。肉も野菜も、食べなきゃいけないものはすっかり綺麗に片づけて、いざいざ片道900マイルドライブに出発だ。
Friday Fish Fry $7.59
レモネード
テネシー州を東に東に進み、昼過ぎにはKnoxvilleという町に到着した。天気予報では「雪」なんて言っていて、確か昨日は日中半袖でいたんだけどなぁ……と笑いながら進んでいくと、本当に雪が降り出した。めっちゃめちゃ、寒い。
だんなが運転する後ろで、私は昼飯をどうしようかと考えていた。
高速道路沿い、出口そばにはモーテルとファーストフードとファミレスの看板がいくつもいくつも並んでいる。
「マクドじゃなぁ……バーガーキングもなぁ……」
と眺めているうち、駐車場に車がたくさん止まっているファミレスがあることに気がついた。高速道路の出口、2つに1つはその店の看板があるように見えるけれど、どこも意外にお客が入っているように見える。テネシーやケンタッキーを中心にアメリカ東部に展開している「Cracker Barrel」という店だった。佇まいからして、いかにもなアメリカ飯を喰わせるところのように見える。
「あそこが気になるー、あそこに入ろー」
と、高速道路を降りて入ってみた。
おみやげ物屋もくっついたその店、いかにもなコテコテカントリー調レストランだった。古めかしい写真が壁にみっちり飾られ、店頭のテラスにはロッキングチェアが揺れている。メープルシロップやジャム、にんにくペーストやブラウニーの素といったようなおみやげ物と並んで、土産物屋店内はクリスマスのデコレーションでキラキラしていた。
金曜日には「Friday Fish Fry」なる、これまたコテコテの名前のフライ料理が供されているらしい。私はそれを注文。
やってきたのは、巨大な白身魚のフライが4つと、フライドポテトとコールスロー。ビスケット(お菓子じゃなくて、ケンタのビスケットみたいなやつ)とコーンブレッドのマフィンもついてきた。フライにはレモンとモルトビネガーもついてきて、テーブルの中央にはケチャップの大きな瓶もどかんと置かれた。だんなはハーフポンドの巨大ハンバーガーを、息子は子供用のミニハンバーガーを。
ファミレスよりはかなりまともな味わいの、大降りのほこほこしたポテトも、サクサクしたフライも期待以上に美味しい店だった。レモネードも、よくあるミニッツメイドのやつなんかじゃなく、生のレモンの味がするもの。凍っているほど冷たく冷やされたジョッキになみなみと入ったレモネードが嬉しかった。
「おー、まともだ」
「こういうところにしては、かなりまともな味だ!」
と、微妙な感動の仕方をしつつ、テネシーを後にしてバージニア州に突入。
Chicken Stir-Fry
アイスティー
バージニア州に入り、北へ北へ北へ。途中、80マイルほどの速度で進む我が家の車をプラス50マイルほどの体感速度で追い抜いていった暴走車(時速130マイル出してたら、さすがにそれは暴走車だろう……)が、50マイルほど先で警察に捕まっているのを目撃してしまったりしつつ、夜8時まで走り続けた。着いたところは、ペンシルバニアまであとちょっと、というバージニア州の州都ウィンチェスターという町。
バージニア州入りしたときに高速道路脇にあったビジターセンターでクーポンブックを入手した私は、
「あー、あのホテルは1泊49ドル」
「こっちだと、朝食もついて51ドル」
などと宿チェックをし、今日の宿は「SHONEY'S INN」に決定した。「SHONEY'S」はファミレスの名前だ。道中何度も目にした店だったけど、宿まで運営しているらしい。1泊50ドルという、このあたりではそこそこお手軽価格のモーテルだった。
8時半過ぎ、チェックイン。そのまま遠出する気力もなく、「SHONEY'S INN」に当然な顔をして隣接している「SHONEY'S」で晩御飯を食べた。ごくごくありきたりなファミレスだ。
お米料理がなんとなく食べたくて頼んだ「Chicekn Stir-Fry」はサフランっぽい御飯の上にテリヤキソースで炒めたような鶏肉や野菜の炒めが乗ったもの。コールスローを巻いたような春巻がついてきて、その春巻用のタレはフルーツ風味の甘酸っぱい(ちょっと甘すぎるほどの)黄色いものだ。テリヤキソースの味も、なんとなくその甘味がイチゴジャムのような風情。確かに米だけど、中華というか和風というかな味っぽくなってはいるけど、
「……ああ、クリームソースのパスタあたりにしておけば良かった……」
と内心思ってしまったのだった。
日本のファミレスも大味だとは思うけど、こちらのこのテのものは輪をかけて大味だ。何食かだったら美味しく食べられるけど、何度か続くとげんなりしてきてしまいそう(いや、昼食は美味しかったけど)。
早くニューヨークに着いてニューヨークチーズケーキ食べたいよ(←ケーキかよ!)。
待っててねー、Y〜。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
バナナマフィン
牛乳
「ニューヨークまであと300マイル」の朝。
7時に起きて、モーテルの無料朝食を摂りに行った。バナナマフィンやブルーベリーマフィン、ベーグルやコーンフレークなどがコーヒー、紅茶、牛乳、ジュースなどとと共にワゴンに並べられている。サラダやフルーツや卵料理はない、最低限のありがちな朝食コーナーだった。
これから食い道楽な日々も始まるということで、朝は軽めにマフィン1個と牛乳一杯。
Beef Bowl (Large)
Miso Soup
Green Tea
9時頃に宿を出発し、一路ニューヨークへ。11時過ぎ、ニュージャージー州に入ったところでニューヨークの友人Yに電話をかけた。
「えー?なになに、もうニューヨークに入っちゃったのー???」
「……い、いや、まだニュージャージー……」
「もう近くじゃなーい、イヤー!」
……歓迎されていないのだろうか(←そんなことはない……と思いたい)。
マンハッタン島に入るには、有料道路を通らなければならない。6ドル払ってトンネルを潜った先は、だんなのドライビングテクニックが試されてしまうような世界だった。滅多に鳴らされないクラクションがここでは頻繁に鳴らされるし、これ以上なく乱暴な運転がそこかしこで見られる。半泣きになりながらYの家のそばに路駐し、でもちとヤバい場所だったので、すぐに予定している明々後日からの宿泊予定ホテル駐車場に移動しようということになった。しかし時間は午後2時近く。腹も空いている。
「Y〜、Y〜、こんにちは久しぶりっ!」
「あらー、来たわね、せりあちゃん」
「今すぐ車移動しなきゃいけなくってっ!とりあえず一緒に"吉牛"行かない?腹ぺこなんだけどっ!」
「えー、ナニ吉野家?私もう、何年ぶりかなんだけど、……えー?」
と、そのまま到着するなりYを拉致してそのまま車に連れ込んで移動した。で、無事に車を駐車場に押し込んで(もう、恐ろしいのでニューヨークを出るまでは絶対車には乗らないと決めた私とだんな)、そのまま吉野家に。
ニューヨークに着いて早々に吉野家に行くというのは、いかがなものか。でも、真実、あの牛丼の味と4ヶ月以上離れていて非常に飢えていた我が家だった。
「Beef Bowl」はレギュラーサイズとラージサイズがある。私は息子と分け合うつもりでラージサイズを注文、味噌汁もつけた。緑茶も(有料で、しかもティーバッグだけど)ある。出てきたのは、長方形のドギーバッグ状容器に入った牛丼だった。たっぷりたっぷり、「大盛り」くらいのサイズはあるような感じ。御飯はちょっとばかり"汁だく"状態で、上に乗る肉とくたくたに煮られた玉ねぎは、まさにあの吉牛の味。インスタント味噌汁はちょっと甘めだったけれど、その牛丼はまさに吉牛の味だった。
「あー、吉牛だ、吉牛の味だ」
「ニューヨークに来たって感じがするよー」
と感動しまくりながら食べる我が家を前に、
「ニュ、ニューヨークに住んでいて吉牛を食べて"これがニューヨーク!"って感動している人を初めて見たわ……」
とYにものすごく苦笑いされた。この分じゃ、「ニューヨークに滞在している間に少なくとも2回は食べようと思っている」なんてことは言わない方が良いかもしれない。
遅い昼食後、寒風吹き荒れる中ケーキなど買いつつ一人暮らしのY宅へ。今日は家族一同、Yの家にお世話になることになった。
Beef Satay
Fried Spring Roll
Pla Laad Prik
Gumg Kai Sub
Pad Thai
ビール、白ワイン
New York 「DEAN&DELUCA」の
Soho Cheesecake
アイス抹茶
かなり遅い時間に牛丼など食べてしまったものだから、さすがに夕飯はどこかへ行こうという気にならない。
「もうね、"私ん家に来たらこれ食べてってよー"っていう外せないタイ飯のデリバリがあるんだけどー!」
と以前からYが言っていたので今日はタイ飯。彼女イチオシだという、メニューには乗っていない「Gumg Kai Sub」なる炒め物と、麺料理、魚の揚げ料理と春巻、サテなどを注文した。彼女の家の近所で買ってきたビールや白ワインも並べて、大人3人と子供1人で宴会した。
タイ料理のデリバリーというのも、なんだかすごいものがある。さすがニューヨーク、と妙なところで感心したり。
プラスチックの容器に入った料理が5種類と、紙製の四角いボックスに納められた御飯が2つ。適当に取り分けながら食べたけど、タイバジルが香る野菜とひき肉の炒め(これがYオススメのやつで、確かにすこぶる美味しかった。辛いけど、もう箸が止まらないし、御飯にぶっかけるとこれまた旨い)、生のモヤシとライムがついてくる甘酸っぱい魚料理、ピーナッツの味がする炒めた平麺、どれもこれも旨かった。全然アメリカーンな味じゃなく、どこかなじみ深い味すらする。野菜たっぷりの揚げ春巻きにサテを平らげた頃には、もうすっかり満腹になっていた。
デザートには、高級食材店「DEAN&DELUCA」(日本で言う「明治屋」みたいな感じ?)のケーキ。Yが今一番好きなチーズケーキはそこの「Soho Cheesecake」なのだそうで、そりゃ買わなきゃねと、1切れ3ドルのそれを買ってきた。夜10時半過ぎ、Yがいれてくれたアイス抹茶など飲みながらケーキをつつく。
食感は軽いけど、味はどっしりと濃厚で確かにものすっごく美味しいチーズケーキだった。息子用に買ってきたチョコレートコーティングつきチーズケーキよりもプレーンなものがそのシンプルさゆえに美味しさが目立っている感じ。へんに膨らましすぎていることもなく、小麦粉とチーズと卵なんかで素直に焼き上げたような味がした。確かにこのチーズケーキは美味しいわー。かなり良い感じ。
まだまだ気になるお店はありつつも「このケーキはもう一度食べなければ」と思った私だった。
「DEAN&DELUCA」は、高級食材も多いけれど、オリジナル商品も数多い。Yから前にもらったことのあるハーブミックスやココアは我が家で大活躍していた。明々後日からのニューヨーク滞在で、しばらく通ってしまいそうだ。
Roasted Pepper & Caramelized Onion Quiche
Pain au Chocolat
Cafe au Lait (Bowl)
ニューヨーク在住の友人Y宅で過ごした一夜。結局昨夜は午前1時半過ぎまでテレビ見たりお喋りしたりしていたのだった。翌朝、一番最初に目が覚めたのは私。7時半に目が覚めて、1人ぼーっとしている間に皆も起きてきた。朝御飯は、Yおすすめの
「とにかくねぇ、パンがすっごく美味しいの。安くはないけど、一度行ってみるといいかもしんない」
という店に行くことに。
お店の名前は「Balthazar」。夜はオイスターバーになるというこのお店、予約をいれるのも難しいほどの店なのだとか。朝はクロワッサンやブリオッシュをはじめとするパンやコーヒーなどが供され、更に週末の10時からはブランチメニューとして卵料理類もあれこれ出されているらしい。
老舗のカフェ〜という感じの、重厚なセピア色の空間な店内だった。クラシック音楽など流れていて、テーブルとテーブルの間が狭く、ソファ席に入るには一度テーブルを手前に引かなければいけないような、そんなところ。奥の壁には天井までワインが並び、氷の中に牡蠣が並んでいるのが奥のカウンターに見えた。
カフェオレ一杯3ドルちょいという価格は高いとは思わないけれど、デニッシュ類が1個3ドル前後するのはさすがに高い。けれど、周囲のテーブルで食べられているものは、何もかも美味しそうだった。そういえば美味しい洋風朝食にも飢えていたなぁ、デニッシュなんて超久しぶりだなぁと思いつつ、さんざん悩んであれこれ注文。
私は玉ねぎのキッシュに、それだけじゃ物足りないだろうとチョコクロワッサンをつけてもらった。ボウル入りのカフェオレは、抹茶をたてたら丁度良いんじゃないかというようなサイズの巨大カフェオレボウルになみなみと入ってやってきて、それを啜りながら料理を待つ。Yは13ドル50セントの「Brioche French Toast」、だんなは13ドルの「Eggs Benedict」、息子は2ドル50セントのチョコレートブレッドを注文。
良くも悪くも"スノッブ"だなぁと感じられた空間の料理は、でも何を食べても美味しかった。さっくさくのチョコクロワッサンには中に2列になって上質のチョコレートがたっぷりと。飴色に炒められた玉ねぎがどっさり入ったキッシュは、卵とチーズの濃厚な味がした。パイ生地がサクサクと、これまた良い感じだ。
いかにもなブリオッシュ生地を使ったフレンチトーストはふわんふわんでバターの香りがぷんぷんしたし、じゃがいもや玉ねぎのソテーも添えられていただんなの料理も、ほんのり酸味のあるクリームソースがとても上品。
「Eggs Benedict」なる卵料理は、私がラスベガスの朝御飯で注文して食べたことがあったけど、「こ、こんなに酸っぱい料理なのか」と驚いたほどに酸味が強かったのだけど、今日だんなの皿から奪って食べたそれは全く違和感のない整った味がした。
ニューヨークだわー、都会だわー、と感動しながら「DEAN&DELUCA」に寄り道して、つい旨いという噂を聞いたドーナツ1個を買ってしまう。更に、"コンランショップ廉価版"といった感じの「Crate&Barrel」なる雑貨ショップであれこれあれこれお買物。
「なんか、せりあちゃん……旅行客っぽくないニューヨークを楽しんでるわ……私が普段使ってるような店で生活雑貨とか買っちゃって、もー」
と笑われながら皿だの蒸籠だの木製スプーンだのを買い込んできたのだった。もう、テネシーじゃ絶対買えないような品揃えに私はずっと目がハート。しばらく物欲は収まりそうにない。
チキンピタサンド
Yの住むマンションのそばの通りには、週末になると屋台がたくさん出没するらしい。その時々によって開催される通りは異なるらしいけれど、今日は建物のすぐ脇の通りにべろべろとお店が出ていたのであった。
「I LOVE NEW YORK」などというコテコテのTシャツを売る店、そのほか衣料品、化粧品を売る店、ちょっと独特の紙製品ばかりを売る店、おもちゃを売る店、和食器を売る店などなど、何の脈絡もないお店がつらつらと50店ばかり青空店を出している。その中に点在して焼きとうもろこしを売る店、パイやケーキを売る店、クレープを売る店、何故かドラム缶にいっぱいのピクルスばかりを売っている店、なんてものも。
「あー、シシカバブがある、シシカバブー」
などと言いながら露店をひやかし歩き、思わず1つチキンピタサンドを買ってしまった。通りに煙をまき散らしながら塊の鶏肉を焼いてざくざく切ってはレタスやトマトと共にピタパンに挟んで売っている。めちゃめちゃ美味しそうだ。
昼食を食べる時間はあまくなく、2時過ぎのアムトラックでボストンに向かう予定になっていたので丁度良い昼食になった。2人で囓って余裕でお腹いっぱいになるほどのボリュームがある。
もちもちしたピタパンに、焼かれたばかりの香ばしい鶏肉(ほんのりスパイシー)。挟まっている野菜は山盛りのレタスとトマトと玉ねぎで、上からはサワークリームの風味がするクリームソースがどっぷりとかかっていた。押しくるむようにしてアルミホイルでくるまれたそれを、そろそろとY家に持ち帰ってだんなと囓る。この「週末屋台街」に限らず、ニューヨークはあちらこちらに屋台が出現していて、ホットドッグだのナッツだのシシカバブだのが誘惑光線を放っている。
ついついあれこれ食べてしまいたくなる危険な土地だ。
Cold Seafood Sampler $9.95×3
(Freshly Shucke Oysters and Cherrystones, Cocktail Shrimp)
Blue Point Oysters $9.95×2
Oysters Rockefeller $9.95×2
Oyster House Clam Chowder A Boston Classic (bowl) $4.75
Shrimp And Scallops Special $21.95
Fried Chicken Tenders $6.50
Union Caesar Salad $4.95
ビール(サミュエルアダムス・ウィンターエール) $4.95×2
ジンジャーエール $1.75×2
コカコーラ $1.75
コーヒー・紅茶 $1.50×3
14時半過ぎ、予定の30分遅れでニューヨークのペンステーションを発車したアムトラックは 6時過ぎに、無事にボストンへ到着した。ニューヨークとボストンを結ぶアムトラックには2種類あり、日本で言う「ひかり」にあたる「Acela Express」と「こだま」にあたる「Acela Regional」がある。往路は前者で復路は後者に乗ることにしている我が家だった。「Acela Expreee」の席にはいわゆる普通席がなく、ファーストクラスとビジネスクラスシートの2種類しか無いらしい。大きなテーブルつき、床近くにはコンセントまでついているビジネスクラスシートは想像以上に快適だった。窓も大きく広々としていて、「世界の車窓から」が存分に味わえた。……さすがに4時間はちょっと長かったけど。
ボストンには、現在Hさんが遊びに来ている。だんなの職場の同期生で、だんなと同じく米国留学中。留学先はオハイオだけれど、我が家と旅程を大体同じくしてボストンとニューヨークに来ているのだとか。一人旅ゆえ食事がつまらないということで、ボストン滞在中は一緒に御飯を食べよう、ということになっていた。
アムトラックを降りてからすぐにタクシーに乗り、ともあれホテルへ。荷物を置いたらもう7時間近だったので、速攻Hさんと合流して夕御飯を食べることにした。今日の目的地は、「ボストンのオイスターバーと言ったらここ」的な老舗の「Union Oyster House」へ行ってみることに。観光客向けだの味が落ちただのと色々聞いてはいたけれど、ここのクラムチャウダーはとりあえず食べておきたい私たちだった。クラムチャウダーが大好きで大好きで大好きな我が夫は、アムトラックに乗ってからずっとニヤニヤしている。
ボストンのビール、サミュエルアダムスの冬季限定ビールをとにかく注文し、そして試しにと「コールドシーフードサンプラー」なるものを1人1つ注文してみた。小ぶりの楕円の皿にやってきたのは生牡蠣2つと大ぶりのハマグリ2つ、そしてシュリンプカクテルが2つ。トマトソースとホースラディッシュがそれぞれ別皿に盛られたやつと、大きく切ったレモンが添えられてやってきた。
生牡蠣は、今ひとつ汁気に欠けていた。もうちょっとプリプリプルプルしているのが好みなのだけど、"乾いている"というわけではないけど水気がすっかり切れている、という感じ。それでも弾力たっぷりの牡蠣は甘味があって、味はかなり良い感じだ。巨大なハマグリも甘さがあってかなりいける。サンプラーは、あっという間になくなった。
「全然足りない〜!牡蠣〜!生牡蠣〜!」
と、また更に生牡蠣12個追加。更にオイスターロックフェラー(ほうれん草をチーズベースのクリームで和えて牡蠣に乗せ、オーブン焼きにしたもの)も注文。すぐにテーブルは牡蠣だらけになった。Hさんは生牡蠣よりはこちらが好み、とロックフェラーに夢中。私とだんなはとりあえず生牡蠣をこれでもかこれでもかと食べる。
オイスターロックフェラー、1つめに注文したものは、こんがりとしっかりオーブン焼きにされていた。ニューオーリンズで食べたものはかなりこってりこってりクリームが強かったけれど、こちらは心もちさっぱりしていていくらでも食べられそうな味わいだ。6個盛られた1皿目を各自2個ずつ食べてあっという間に空になり、2皿目追加。2皿目は、さっと炙っただけのような、オーブン焼きの時間がまたえらく少なくなったようなものだった。……これはこれで、けっこう美味しいと思ってしまったり。
そして待望のクラムチャウダー。"オイスタークラッカー"なる丸っこいクラッカーが添えられていたクラムチャウダーは、どっしりぽってりこってりと濃度の強いものだった。チャウダーはトロトロしているものだけど、それにしてもこれはどっしりしていて「煮物」という感じ。磯の香りがぷんと漂い、大ぶりのハマグリがたっぷりと。小指の先ほどのじゃがいもが、どっさり入っていた。ミルク感たっぷりで、非常に良い感じ。さすがクラムチャウダー本場の味!と素直に感動できる味だった。素朴な素朴なチャウダーだけど、スプーンが止まらなくなる。舌の先に、時々ジャリッと砂が舌に当たったりもしたけど、まぁ、気にしない。
散々飲み食いして、最後に"今日のおすすめ"っぽいメニューの紹介をされていた「Shrimp And Scallops Special
を。なんでも、海老と帆立をソテーしてピラフの上に添えてバジル風味のクリームソースをかけたものらしい。英語はてんでダメなくせに、こういう料理名とか説明だけは100%理解できる自分たちを笑ってしまいながら、これが旨そう、と注文してみた。
生クリームたっぷりのソースはバジルの匂いがぷんぷんして、皿の中央には長く細く茶色く炒められたピラフが盛られている。ピラフの上には綺麗に並べられた海老と帆立が一列に並んでいて、そこにもバジルソースがかかっていた。見た目も美しい料理で、すでにこの段階で"腹7分目"くらいだったはずなのに一同大喜びで喰ってるのである。
かくして、本当は「Hot Indian Pudding」「Boston Cream Pie」なんていうデザートメニューも気になっていたのだけどすっかり満腹になって午後9時半過ぎ、店を後にした。
「ボストンに来て、さっそくオイスターとクラムチャウダー喰ってるなんて"いかにも"だよね」
なんて言いながら初めての町をぷらぷら。
明日はコンピューター博物館とボストン美術館に行くのだ。