烏龍茶
先日から鍋の中で豚バラ肉が美味しく煮えており(というか煮詰まりつつあり)、月曜の朝は煮豚を使った炒飯。炒飯担当のだんながせっせとスキレットをふるって作ってくれた。葱たっぷり、卵たっぷり、話によると卵が4個も入っているらしい。
茶色くテラテラと光る炒飯はいかにも味が濃そうな外見だけど、実際、味もけっこう濃いめ。これでもかと肉が入ったボリュームありまくりな朝の食事となった。朝から元気だねぇ、わしら……。
焼きマンドゥ
カルビタン
ボーヤンタン
今日は夜7時過ぎまで大学であれやこれやがあったらしいだんな。
「用事終わってから皆でどっか食べに行こうか?」
と言われていたこともあり、食事の支度はせずに家でだらだらのほへーんとだんなの帰りを待つ。
夕飯は、結局いつもの留学生仲間メンバーと共に。向かった先は彼らもお気に入りの韓国料理屋さん「Cafe Korea」だ。
彼ら、友達になった韓国人から
「ボーヤンタンっていうの、美味しいよ。パワーが出るんだよ」
と教えられたらしく、今日はそれを食べてみるのだと燃えていた。私とだんなは定番のカルビタンを注文。ついでに、つまみの焼きマンドゥも。
今日もずらりと並べられたキムチ2種とナムル2種、玉葱とピーマンの酢の物のような小皿、計5皿をつまみつつ、"全面を揚げ焼きにした大ぶりの餃子"といった外見の焼きマンドゥもつつきまわす。胡麻油が香ばしい、日本の餃子とはまたちょっと違った風味の餃子で、ビールにもよく似合う。
そしてテーブルにやってきたコンロと鍋。2人分からしか注文できない"ボーヤンタン"なる名前のそれは確かにメニューに載っており、説明を読むとヤギの肉の煮込み鍋であるらしい。
「うわー、ヤギかぁ……」
と、Mさんはちょっとおっかなびっくり。Iさんは目を輝かして「そうか、ヤギか……」と楽しそうだ。
赤いスープにはざく切りにした葱が大量に浮かび、鍋の底には細切りにした肉切れが沈んでいる。見るからに辛そうな外見だったけれど、横からもらって啜ってみたスープは思いの外辛くなかった。キムチの味とも唐辛子の味とも、ちょっと違う。スープの表面には黒胡麻のような、プチプチと丸っこい何か香辛料の粒が大量に浮かんでいる。……芥子の実?
牛臭さが漂うスープを啜る私とだんな、そしてまた別の独特のケダモノ臭さをふりまいて鍋の中身をはふはふ食べているIさんとMさん。私たちのテーブルは全体的にケダモノ臭がぷんぷん漂っている。この店に来ると毎回汗だくになってしまうので、この店に向かう時は大抵薄着になってくるのだけど、今日は服にまでケダモノ臭さが染みついた感じだった。
食べさせてもらったヤギの肉は硬くもなく柔らかくもなく、なかなか美味しい。
「今日の夜、目がギラギラして眠れなくなっちゃったりして……」
「"ちょっとそのへん走ってくるかぁ!"なんて深夜に無駄な行動を起こしたりして」
なんてニヤニヤしながら消えていったヤギ鍋。私もこんど自分で注文して食べてみようかなぁ。
納豆
ご飯
アイスティー
試験が明後日に控えている我が夫、今朝は7時半前に家を出ていった。だんながごそごそ着替えている音でなんとなく目覚めたものの、そのまま覚醒には至らずベッドの中で冷凍マグロのごとく横たわったまま無言でだんなをお見送り。いってらっしゃーい、いってらっしゃいだんなー、私の電波受け取って〜と、心の中で叫んでおいてみた。で、そのあと再び爆睡。
起きてメールソフトを立ち上げると、研究室から送信されただんなのメールが届いていた。題名は「おはよー」。おはよーおはよー、と呟き、私より早く起きていた息子と一緒に遅めの朝御飯(というより早めの昼御飯)を食べる。
「なんかねぇ、ごはんが食べたいと思うなぁ」
と息子にリクエストされ、おかずを探す。納豆発見。ついでにサンマの蒲焼き缶詰も発見。なんだか男やもめの食卓の光景みたいだわぁと苦笑いするしかない光景になってしまったので、せめてサンマの蒲焼きは皿に盛って白髪葱添えてみた。
私も息子も納豆は大好き。
「ねぎはね、からいから嫌いなんだよ……」
という息子のために彼の分は葱を避けて魚を小皿に取ってやりつつ(彼は苦手な食べ物が少しばかりあるけど、その理由は全部"辛いから"なんだそうで)、納豆は大量にご飯にかけてやった。朝から2人でねばねばねばねばさせながらご飯や魚も食べる。あの独特のてれんとした甘ったるさがある缶詰の魚の蒲焼き、実はとても好物。あのチープな味が微妙にたまらない。
「おとーさんはね、納豆嫌いなんだってよ」
とねばねばさせながら息子と会話。
「ぼくはね、なっとう、好きと思うなー」
「……うん、見てればわかる」
「おかーさんも、好きと思うなー」
「そうだね、おかーさんも納豆好きよ。大好きよー」
「おとーさんは、なっとう、きらい?」
「そう。おとーさんは、納豆嫌い」
「おとーさん……なっとう、からいのかな?」
鼻から納豆を吹きそうになった私。息子の頭の中では"嫌いなものは辛いもの"という図式が完璧に出来上がっているようだ。じゃあ私はトマトやしそや梅干しが辛いということになるんだなぁ……。
コールスローサラダ
Jack Daniel (Hurricane Punch)
夕食は、カレーライス。最近魚介に飢えてきていたらしいだんなが、
「魚介のカレーライスが食べたかったのです」
と、帆立と海老を買ってきた。魚に比べると、海老や貝類は比較的価格が安く感じられる。アメリカ南部名物"ザリガニ"なんかは更に安い。ただ、やっぱり泥臭さはあるのでカレーに加工してもちょっと気になる味になるかもしれない。
あまり煮込みすぎないように気を付けつつ、帆立と海老をざっと炒めて玉ねぎと人参を加え、軽く煮込んでからじゃがいもを投入。1時間ほどでちゃちゃちゃっと作ってちゃちゃちゃっと食べた。ゆで卵がついていると嬉しさ倍増なので、1人1個のゆで卵つき。
スープも作ろうと思いつつ、準備できたのはコールスローサラダだけだった。このあたりの地域で食べるコールスローは、酸味が少なく甘みが強い。"セロリーシード"という名の黒い粒々なハーブが入るのが一般的で、それゆえになんとなくセロリ臭漂うコールスローになっている。それはそれで美味しいと思うけど、我が家のコールスローというと隠し味程度の砂糖を入れて酢と油で和えるか、塩で揉んだ後に軽くマヨネーズで和えるか、2種類の味のそれが"我が家の味"という感じ。
お供には、先日初めて買ってきて初めて飲む、ジャックダニエル社の瓶入りカクテル"Hurricane Punch"。ニューオーリンズ名物のカクテル"ハリケーン"と似た色合いのものだったので、面白がって買ってきた。蛍光がかった赤色の派手な色のカクテルは、ほのかにパッションフルーツの味。そうそう、ニューオーリンズで飲んだのはこんな味だったなぁ……と思いながらぐいぐい飲んでしまった。
ところで、"ハリケーンパンチ"を検索エンジンに入力したところ、『魁!!男塾』の必殺技がヒットしてしまって
「見せてやろう、俺のニューブロウを」
なんて、あっちの世界が頭に広がっちゃって、もうどうしたもんやら。
Crispy Fried Pork
w/Rice Casserole
w/Corn Casserole
w/Strawberry Salad
Iced Tea
だんなのボス、A先生は、トンカツが大好きなのだそうである。仕事で日本に行くたびに美味しいトンカツが食べたいなぁと密かに思い、いつぞやは訪問先の企業で
「社員用のレストランなんですが、なんでも好きなものをお作りしますよ」
と高級チックな展望レストランに連れて行かれ、そこで
「では、カツカレーをお願いします」
とリクエストした逸話もあるらしい。
で、目下、私たちがハマッている南部料理屋さん、「Copper Kettle」。この店の水曜日のおかずは"Fried Pork Chop"なのだった。ほんのりハーブの味はするけど、ここのそれはまさに"トンカツ"、日本人が何人も揃って太鼓判を押しまくっちゃうほどの見事な"トンカツ"だ。下手な日本食屋で喰うようりも、水曜日にこの店を訪れる方が数万倍も幸せになれる。そこでだんなは
「A先生A先生!この町で美味しいトンカツが喰える店を発見しましたぁ!」
と連れて行くことにしたのだった。11時を過ぎて、先生を連れてその店を目指す。
今日の"Fried Pork Chop"は、微妙にバリエーションを変えて"Crispy Fried Pork"と入口のボードに紹介されていた。大好きなマカロニ&チーズはなかったけれど、その代わりにライスキャセロールがマカロニ&チーズの場所に置かれている。コーンを甘く煮たコーンキャセロールと、先日食べて美味しかったストロベリーサラダを盛りつけてもらい、揚げたてのフライドポークを中央に。今日も豪華な盛りになった。
しかもお勘定、A先生持ち。
「私が払いまーす、これは命令でーす」
と、先生がちゃっちゃと支払いを済ませてしまった。一家揃ってゴチになってすみません……。
で、テーブルに置かれたのは"ブルドッグ とんかつソース"。やっぱりトンカツにはこれが必要なのよねー、とだんなが我が家から大きなボトルを持ってきたのだった。皆でまわして適宜だばだばだ〜とかけつつ、トンカツを喰らう。今日のはいつにもまして厚切り肉、歯ごたえのある肉はかといってガチガチの繊維質というわけではなく、適度に柔らかさもある。大ぶりのパン粉がざっくりまぶされて揚げられた衣は、確かにいつもよりクリスピーだ。この店はおかずも旨いしサイドディッシュも旨い。苺の果汁をベースにしたドレッシングをかけたサラダには、ルッコラやレタスと共に苺とリンゴと葡萄がたっぷり入っていてデザートのような感じ。お米のグラタンといった外見のライスキャセロールも優しい味で美味しかった。
いつにもまして大人数で食卓を囲み、
「トンカツ、おいしー」
「何食べても美味しい〜」
と感動した後、それぞれ午後の仕事や午後の授業にと赴いていった。
A先生は密かにすごく感動していたらしい。午後、奥様に電話をかけ、
「すごいんだよ、すごいフライドポークチョップを食べたんだよ、"トンカツ"みたいだったんだよ」
と報告していたのだそうだ。なんでも、一般的には"脂身ばっかりでギトギトで全然美味しくないもの"という認識が"フライドポークチョップ"にはあるらしく、日本で長く生活していたA先生ご夫妻にとっては
「我が国のものながら、フライドポークチョップって美味しくないよね……日本のトンカツがいいよね」
というものだったのだとか。先生、大阪の串揚げ屋あたりに連れてったらどんな顔をするだろうか。似合わないだろうなぁ……。
アイスティー
「Copper Kettle」の悪いところ(良いところかもしれない)は、朝食を抜いた上で昼に行くにも関わらず、夜までなかなかお腹が空かないことだった。少食のお嬢さんなら1日にこの店の飯1食で生きていけるという感じ……というか、そもそも食べきることは不可能と思われる。
「そーゆーわけで、お腹が空きません」
「7時過ぎたのに、お腹が空きません」
と少々困りつつ、夕飯は軽く塩ラーメン。塩ラーメン自体は、大学近くの小さなアジア食材店で買ってきたものだけど、上に自家製煮豚を乗せると何やら豪華な光景に。調子に乗って
「メンマ乗せちゃえ〜」
「コーン乗せちゃえ〜」
「バターも入れちゃえ〜」
とやったら、調和が取れてるのか取れてないのか今ひとつ謎なラーメンになった。塩ラーメンにチャーシュー浮かべて、しかもコーンとバターという組合せは、ありなのだろうか。チャーシューとバターが激しくバッティングしているような気がしないでもない。でも美味しいので良し。
コーン入りコールスローサラダ
牛乳
今日の午前中、だんなは大学で試験があるそうな。
「朝早く起きて、最後に研究所で勉強してから臨むよー」
と、だんなは朝6時半に起きて研究所に向かっていった。試験は午前中で終わるので、その後は家で一緒に昼御飯を食べようということになっている。一昨日のカレーが余っているため、献立はカレーライスに決定。息子にはコーンフレークを食べさせ、私は朝食には特に何も食べず、だんなの帰りを待つことにした。
コーン缶を開けた残りがあったので、作り置きのコールスローサラダと混ぜ合わせる。炊きたての御飯に3日目のカレーをどっぷりかけ、1時近くになって帰ってきただんなと一緒に昼からわしわしと食物大量摂取。私は相当空腹だったし、だんなも朝のうちにドーナツを買って食べたということにも関わらず
「腹減ったー、すごい減ったー、脳味噌に栄養喰われたー」
と大騒ぎ。息子も負けじとがつがつ食べてくれたおかげで、2合分炊いたご飯はすぐに空になってしまったのだった。
肉のカレーは鶏肉でも豚肉でも牛肉でも、作ってから1日2日経つ方が断然美味しいと思うのだけど、今回の魚介カレーについては
「何日か置いたからって特別美味しくなったという気が……しないなぁ」
という感覚が。じゃがいもや人参などは全体的に馴染んでトロンと色艶もよくなって美味しくなったように思うけれど、その代わりに全体的に磯臭さが広がってしまい、それがなんだか今ひとつな感じ。帆立ごろごろ海老ごろごろのカレーも不味くはないけど、
「やっぱり肉入りカレーがいいなぁ」
と思っちゃったのだった。……あ、そういえば日本の自宅に"熊カレー"と"猪カレー"(共にレトルト)を置きっぱなしにしていたような気が。母、食べちゃったかなぁ。
ちなみにテストは躓かずに全て回答することができ、好感触だったらしい。おつかれさまでしたー。
牛肉の韓国風スープ
羽釜御飯
ビール(Corona)
数日前、アジア食材屋さんで"空心菜"を買ってきた。その名のとおり、茎の中心がマカロニのように空洞になった野菜だ。笹の葉のような細長い葉がついており、炒めるとシャキシャキとして美味しい中国野菜だ。久しぶりに見つけ、
「オイスターソース炒めにしよう!」
「にんにくたっぷり効かせよう!」
と巨大な1束を買ってきた。その食材屋、野菜の鮮度に少々不安を感じる店なのだけれど(他のスーパーで買う葱はそんなに早く痛まないのに、ここで同じ種類の葱を買うと数日でドロドロに溶けだしてしまう……)、ここでしか買えない野菜はどうしてもここに頼らざるをえない。空心菜もそういう"稀少品"だったのだけど、つい2〜3日放置している間にやっぱりドロドロに溶けだしてしまった。今日の夕飯準備は、すまんすまん空心菜すまん、と謝りつつドロドロの葉を取り去って1本ずつ綺麗に洗って整えることから。
この野菜、本当はただただ薄切りにんにくと共にオイスターソースの味つけでジャッと強火で炒めるのが一番美味しいと思うのだけど、今日はおかず仕様に牛肉入り。味つけは、やっぱり大量の薄切りにんにくとオイスターソース、それに日本酒。炒め担当のだんながせっせとスキレットをふるってくれたのだけど、風味づけに"冬菜"(白菜のにんにく漬け、中華の調味料)をぶわっと加えていた。酒とオイスターソースの他は塩すら入らない味つけだったそうだけど、冬菜のおかげで塩加減も丁度よく、しかもなかなか複雑な香りのものにできあがった。ビールに似合うし、ご飯もすすむ。
青梗菜もそうだけど、空心菜とかターツァイとか、中国野菜は油炒めで美味しく食べられるものが多くて素晴らしい。これらの炒め野菜、中華粥の脇に添えてばくばく食べても旨いのよね、これがね。
昨日、面倒なテストが終わったということで、だんなは「遊ぶんだもんね、遊んじゃうんだもんね」と何だか浮き足立っていた。昨日のうちに何人かに電話をかけ、今日の昼、皆でボーリングに行こうという展開に。そういえば、アメリカでボーリングするのは初めてだ。ちょっと楽しみ。
朝御飯は、鍋に少し残っていたカレールーをかつおだしで溶きのばして醤油や味醂で調味し、カレーうどんに。鍋のこびりつきも綺麗になるし、あますところなくカレーも満喫できるしで一石二鳥だ。今日のはちょっとばかり残ったルーが足りなくて薄めなものになってしまったけれど、気にしない。"カレーうどん"というより"カレー風味うどん"となってしまったけれど、気にしない。具が何も入ってないけど、気にするものか。せめてもの風味づけにと白髪葱をこんもり盛りつけ、朝からあつあつのうどんをちゅるちゅると啜る。
最近、やけに気温が上がってきて、昨日などは半袖で歩いても"ちょっと涼しい"と感じるほどの気温だ。今日もけっこう温かくなりそうで、そういう朝にカレーうどんというのは実はちょっとヘビィだったりした。
Large Pulled Pork Sandwich $3.89
French Fries $1.00
さて、そうして総勢7人でボーリング場へ行ってみた。薄暗いボーリング場は古めかしい設備で30レーンほどが並び、ほんのりほのかに危険な香り。目つきの悪いおっちゃんが
「靴のサイズは?」
と早口で聞いてきて、棚から無造作にレンタルシューズを取り出した。1ゲーム2ドル弱、靴レンタルは無料だ。しかもAAAカードを見せると所持者に限り1ゲームは無料。大人5人で2ゲームし、結局7ゲーム分の請求しかなくて何だかお得な感じ。
久しぶりのボーリングはおおいに盛り上がり、低レベルな争いになったりしつつもHさんがターキーを繰り出したりし、面白い戦いになった。1ゲーム目はケソケソに酷い点で終わった私は、2ゲーム目は112点で3位。絶好調のHさんは177点だ。
そのまま上機嫌の一団は、昼御飯を食べにメンフィスバーベキュー屋さんのNeely'sに向かう。私は前回に食べたものと同じバーベキューポークサンド、だんなは初挑戦の一皿料理、プラッター。
プラッターにはバーベキューポークサンドと同様の肉が盛られ、トースト2枚、更に好みのサイドディッシュ2種類がついてくる。ポテトサラダやコールスロー、フレンチフライなどがある中、フレンチフライとポテトサラダをだんなは選択していた。
焼かれた後に細かくほぐされた豚肉は、"バーベキュー"と称されるとちょっと違和感を覚えてしまうけれど、柔らかくジューシーでとても美味しい。上からかけられる茶褐色の特製バーベキューソースは、いかにもな甘辛味。けっこう大量に砂糖が入っているため、こってりと甘い。この味が時折妙に懐かしくなったりするけれど、一度食べると2週間はこの味と距離をおきたくなってしまう、そんな味だ。そして2週間後にまた食べたくなる。
SANPELLEGRINO ARANCIATA
「ボーリングが疲れたかなぁ……ボール、手に合うのが13号しかなかったんだよねぇ……」
とぶちぶち理由をつけつつ、「しかも、今日、ホワイトデーじゃん……」とホワイトデーまで理由に持ち出してだらだらする午後。アメリカには"ホワイトデー"なんて習慣は存在しない。スーパーは、4月半ばのイースター目指してパステルカラーに装いを変えつつある。
「だからやる気がないのでございます〜」
とごろんごろんしていたところ、だんなが夕御飯を作ってくれた。昼のボリュームたっぷりメンフィスバーベキューが相当胃に響いていたため、ごくごく軽くスパゲティ。
「とにかくね、さっぱりしたのが食べたいんだなぁ」
という私の意見、
「ぼくはね、白いスパゲティが食べたいと思うなぁ」
という息子の意見("白いスパゲティ"とはクリームソースのスパゲティを指しているものと思われる)をとりまとめつつ、作ってくれたのはベーコンと玉ねぎを炒め、バター風味に味つけした白いスパゲティ。生クリームがないからクリームスパゲッティは作れないんだよ〜、ごめんな、と、それでも息子の注文通り"白いスパゲティ"が食卓に上った。
ビールを飲んだらその場で眠りこけてしまいそうだったので、飲み物は冷蔵庫から引っ張り出したサンペレグリノ社のオレンジソーダ。あまり近所じゃ見かけない商品で、ニューオーリンズの酒屋でたまたま見つけて面白いねと買ってきたやつだ。私の大好きな"オレンジーナ"に似ているけど、味はちょっと濃いめ。私の好みではオレンジーナの方が美味しいような……。
目玉焼き
カリカリベーコン、コーンドビーフ
グリーンサラダ
カフェオレ
今日の夜は、ブッフェ料理予定。生牡蠣やら何やら、魅惑的な料理がいっぱい並ぶレストランらしいので、気合いを入れて昼飯は抜き!ということに。朝9時の朝御飯は、そういうわけでちょっと気合いを入れてがっちょり食べることにした。
じくじく油をぬぐいつつベーコンをカリカリに炒め、1人2個の卵を目玉焼きに。少量残ったコーンドビーフも冷蔵庫から取り出し、サラダも添える。大きな皿にサラダとベーコンエッグとコーンドビーフを盛りつけ、大人の握り拳よりも大きな重量感溢れるクロワッサンを1個、ごろりと添えた。かつてないボリュームたっぷり朝御飯だ。クロワッサンを平らげるだけでも腹6分目くらいになりそうなところ、卵も肉もわしわしと平らげる。そういえば、目玉焼きなんて食べたのはものすごく久しぶりなような気が。
Seafood Feast Buffet $37.00/person
白ワイン(Asti Spumante) $26.00
今日の夕御飯は、留学生仲間のIさんと共にNew Orleans Manorという店でシーフード料理のブッフェ。近々開催を計画している、とある人をお祝いするパーティーの会場を探そうという一環で、前々から気になっているこの店に行ってみることになったのだった。
テレビCMも時々やっているこの店、19世紀に建てられたマナーハウスをそのままレストランにした店なのだそうである。営業は夜だけ、しかも料理はアラカルトはなしのブッフェ料理であるらしい。1人37ドルという価格は安くはないけれど、シーフードがメインというのが楽しみだった。コーヒー紅茶、牛乳は飲み放題であるらしい。ホームページのメニューで予習すると、"Oyster on the Halfshell"という魅惑的な文字列も見える。
「生牡蠣ですか!?」
「生牡蠣食べ放題ですか?」
「それは萌えますね」
「とりあえず、元を取る勢いで食べまくるということで」
と、当初の目的を忘れてしまいそうに盛り上がりつつ出かける私たちだった。
ナッシュビル空港からほど近いところ、広々とした敷地にその建物は見えた。本当にマナーハウスそのままだ。入口ドアを入ったところ、螺旋に伸びる階段を前にした広い玄関ホールがブッフェコーナーになっている。玄関ホールの左右、そして上階に多数ある部屋の間取りもほぼそのまま、テーブルや椅子が並べられている。古めかしい壁紙に、暖炉や本棚はそのまま残され、誰かの家で食事を摂っているような錯覚を感じさせてくれる店だった。なかなか良い雰囲気だ。お祝いの席にはもってこいかもしれない。人数によっては個室にしてもくれそうだ。
1本26ドルの安いスパークリングワインを頼んでぐびぐび飲みつつ、ブッフェ料理を堪能した。Iさんはいきなり皿にプライムリブと生牡蠣などのメインディッシュを欲望の赴くままに盛りつけている。私はとりあえず冷菜からと生牡蠣3個にセロリのテリーヌ添え、シュリンプカクテルなどを盛りつけてきた。純粋なただのブッフェかと思っていたのだけど、できたてが美味しい料理はテーブルを回って配ってくれる。席についてすぐ、溶けたチーズがたっぷりかかったトーストを持ってきてくれ、続いてマッシュルームと鶏肉のフライがやってきた。更に続いてオイスターロックフェラーだ。みんなが料理を取りに行き、私は1人で席に残り生牡蠣に取り組んでいたところ、
「オイスターロックフェラーを持ってきたよ、マダム」
と給仕のおっちゃんに声をかけられた。つい数十分前まで自宅のテレビで見ていたプロレス番組から抜け出してきましたか?みたいなごっつい体型のおっちゃんだ。むちむちした首に蝶ネクタイを締め、いかつい顔には髭が生えている。ちょっと怖い顔だけど、目を細めて「マダム」とニカッと笑ってくる。
「あー……私、1個ください」
口をもごもごさせながら答えると、
「この、空いている席の人たちの分は?」
と、巨大な牡蠣を私の皿に隅に乗せつつ更に聞いてくる。
「彼らの分も、置いてくれる?」
と即答すると、Sure♪と言いつつ
「これは旨いからな、1人2個置いていくよ」
とごろりごろりと彼らのパン皿に焼き牡蠣を並べていった。戻ってきただんなとIさんは大喜びだ。クリーミーなほうれん草ソースがたっぷりのロックフェラーは焼きたてアツアツでかなりの美味だった。できたてというのがとにかく嬉しい。
茹で蟹あり、蒸し海老あり、帆立あり鮭あり白身魚あり、と、本当に魚介だらけの品揃えだった。蟹肉はちょっとばかり大味だったけれど、太い足の中にはみっちりと肉が詰まっている。ほんのり塩味はついているけれど、周囲を観察すると蟹肉の近くにある溶かしバターを小皿にとり、それをつけつつ食べているようだ。それはそれで油っけが加わってけっこう旨い。
で結局、本当に当初の目的を忘れて食べまくっていた私たちだった。席には魚介のガラ入れの容器が2個置かれていたのだけど、席を立った隙に空いた皿を片づけ、ガラ入れを片づけ、汚れたナプキンはさっと取り替え、ブッフェ料理には似合わないほどに店員さんはよく見てくれている。
デザートには、レモンチーズケーキにパンプキンロールケーキ、ピーチコブラーにチョコレートケーキ、ピーカンパイなどなど。とても全部は食べきれず、レモンチーズケーキに苺のコンポートを添えたものを息子と半分こして食べ、あとはピーチコブラーを少し。ピーチパイを砕いてグジュグジュにしたような感じのピーチコブラーはビスケットのようなポソポソの生地の食感が心地よかった。
「いいねぇ〜」
「雰囲気、いいしね」
「サービスも文句ないね」
「パーティーにはもってこいかもね」
と、上々の気分で満腹になった胃袋を抱えて帰宅した。
ちなみに、食べた生牡蠣の個数は11個。蟹足4本。ああ、生牡蠣万歳。
食べ放題の牡蠣を十数個平らげた昨夜、私は怪しい胸焼けに悩まされてた。
「とうとうきたか、ついに牡蠣にあたる日がやってきたかっ……!」
と布団の中でどきどきしながら眠りについたら、そのまま朝まで爆睡。予感していた吐き気も腹痛も襲ってこなかった。
「それはねおゆきさん、単に"食・べ・す・ぎ"じゃないかと思うよ♪」
と、起き抜け早々だんなにツッコミを入れられる私。ええそうです胸焼けです、きっとあの胸のもやもやはふっとい蟹足4本が原因だったのです。牡蠣、疑ってごめん。
それはそれで、まだなんとなく胃腸に不安が残るので(単に胃が疲れていただけ)、朝はさらさらとコーンフレークをかっこんで済ませることに。
ここ1〜2ヶ月ほど、
「もう、いちごのカリカリはいらないんだぁ〜」
とレーズン入りだのプレーンだののコーンフレークに浮気していた息子は、最近原点回帰に目覚めたらしく、
「いちごのカリカリ、おいしいなぁ」
と再びこればっかり食べるようになってしまった。水分抜けてパサパサになったイチゴが牛乳で柔らかくなって、ついでに牛乳を苺色に染めてくれちゃったりしてなかなか美味しい。ちょっと甘いんだけれども。
Half Chicken with Two Sides
w/Bean & Corn Salad
w/Small House Salad
Iced Tea
細々とした雑貨を買い求めに昼前にぷらりと外出。買い物が終わって「お腹空いたよ、お腹空いた……」と、通り道のあちらこちらの店を覗きつつ帰るも、あいにくどこもやっていない。日曜日って休みのところばっかだったっけ……と少々途方に暮れつつ、町の中心部に車を向けた。"Pancake Pantry"がすいていたらそこもいいね、と店の前を通ったら30人以上の大行列ができあがっていて撃沈。
「あの店覗いて、ダメだったらあそこ行って、ここ行って……」
と必死に考えつつ再び移動し始める頃には、目が血走るほどの空腹だった。
で、幸いなことに営業していた店が「Calypso Cafe」。カリブ料理のお店ということだけれど、カリブ料理がどんなものかわからない私たちにはこれがスタンダードなカリブ料理なのかどうかはわからない。でも、美味しいし安い。テイクアウトも気軽にできて、そこも人気。12時過ぎの店はテイクアウト客と中で食べていく人で大混雑だった。
基本のメニューはロティサリーチキン。ファミリーパックで丸のまま1羽買うこともできるし、1人分のプレートならハーフサイズかクォーターサイズかを選ぶことができる。ついでに、むね肉メイン(ホワイトミート)かもも肉メイン(ダークミート)かも選ぶことができる。アメリカ人には圧倒的にホワイトミートが人気のようで、むね肉はもも肉よりも高値がついている。この店に限らず、スーパーマーケットの鶏肉売り場でも、むね肉はもも肉よりも高い。
鶏肉にはリンゴ風味のカレーソースか、バーベキューソースかを選択してかけてもらう。そして10種類ほどあるサイドディッシュから2種類がついてくる。私はハウスサラダに豆とコーンのサラダに、だんなはハウスサラダと"本日のスープ"を。息子にはキッズメニューのナチョスを注文した。
たっぷりの豆サラダと共に、肉の表面がソースで覆い尽くされた鶏肉がほどなくやってきた。3種類ほどの豆とコーンが同量ずつ、甘酸っぱいドレッシングで和えられたサラダはそれだけで主食にできそうな食べ応えがある。別皿にやってきたハウスサラダは、レタスの上にシュレッドチーズと刻みトマトがたっぷり乗ったもの。これまたほんのり甘めなドレッシングをかけて食べる。すりおろしリンゴがたっぷり入ったような、鮮やかな黄色のソースは相変わらず絶品だ。優しい味で、鶏肉にすごくよく似合う。豚肉あたりに似合いそうな味だ。脂たっぷりのもも肉にかぶりつきながら、
「なんでアメリカ人はももが嫌いですかねぇ〜」
「こ〜んなに美味しいのにねぇ〜」
などと言いつつがつがつ食べる。そして気が付くと、店の入口は更に大行列ができているのだった。大人気だねぇ……。
アイスティー
昼食後、スーパーマーケットに寄り道して夕飯の食材を買い込んだついでに、ついついポップコーンも籠に入れてきてしまった。
日本でも珍しくない"レンジでチンするポップコーン"だけど、アメリカのスーパーの棚に並ぶそれは更に種類が豊富。エクストラバター風味だの、ライトタイプだの、ノンファットタイプだの、塩分控えめだのと各種メーカーのポップコーンが20種類以上も並んでいる。レンジでチンするタイプが主流で、中には"20袋パック"のようなお徳用セットもある。そういえばポップコーンってスポーツ観戦なんかのときに食べるだけだよねぇ、と、あの味を思い出して思わず3袋パックのそれを買ってきてしまった。レンジに放り込んで3分ほど加熱するだけ。
数分でポポポポポポッと破裂音が聞こえてきた電子レンジ方面に耳をそばだててわくわくしつつ、おやつに皆でバリバリと食べた。漂うバターの風味(カロリーを気にするアメリカ人のために、バターそのものが入っているわけじゃなくて"バターフレーバー"なのだそうだけど)が濃厚で、適度な塩加減が良い感じ。なんでも科学的に"しょっぱくて油っこいものは摂取が止まらなくなってしまう"ということが証明されているらしいけれど、それにしてもポップコーンは危険な食物だった。昼飯を食べてまださほど時間も経っていないはずなのに、家族揃って止まらないようになる。
「あ、いかん、いかん、旨いよ……」
「美味しいよ……」
「ああ、手がすっごくバター臭くなっちゃってるし……」
と泣き笑いのような顔になってしまいながら、1パックチンしただけなのに山のようにできあがってしまったポップコーンを胸焼けするほど食べてしまった。ああ、蟹の胸焼けがやっと午前中で治ったばかりなのに……。
ビール(Abita Ambar)
葡萄
胃腸を酷使するようなここ数食だったので、夜はさらっとうま煮丼。具は豚肉と海老とうずらの卵と葱。だんながスキレットをじゃかじゃかとふるいつつ、塩と酒で味をつけた軽めな味の煮込みを作ってくれた。ただし、水煮缶を使ったうずらの卵はたっぷりと。大きなサイズの缶しかストックがなかったため、やたらと大量なうずらの卵が鍋の中に浮かぶことになった。それはそれで嬉しい。うずらの卵争奪戦をせずに済む。
中国産のうずらの卵はちょっと独特な缶詰臭さがあったけれど、うま煮そのものの味はばっちりだ。だんなの料理の腕、また少し上がったような気がして妻としてはちょっと焦る。塩味の適度な濃さがご飯にかけると丁度良い旨さで、あやうく、"さらっと食べよう"との己の誓いを忘れ去ってお代わりしてしまうところだった。それじゃ一日中胸焼けじゃないかと慌てて自制。危うく今食も腹一杯食べてしまうところであった。