麦茶
先週作った自家製チャーシューが、まだ冷蔵庫で冷えているのである。
「まずいかな」
「ヤバいかも」
と器に鼻を近づけて品定めをする私たち。
自家製の料理には賞味期限など書いていない。頼れるのは自分の鼻と舌だ。くんかくんか。うむ、大丈夫そうだ。
というわけで、だんなが中華鍋をふるって残りのチャーシューで炒飯を作ってくれた。
小さなかけらがパラパラと入った、甘辛い炒飯。
ほんの少し塩気が多かったような感じだったけど今日もパラパラで美味だった。卵もたっぷり。
賞味期限といえば。
カルピスの賞味期限は長い、と思っていた。ていうか腐らないもんだと勝手に思っていた。
食料庫から賞味期限1年前のカルピスが出て来たのは数ヶ月前のことだ。試しに飲んでみるか、とコップに入れると、あの紙容器の中からはでろでろでろ〜となんとも不気味な黄色い液体が出てきてしまった。酸っぱいような、饐えたような尋常じゃない匂いもする。
とほほほほ、と全部流しに捨てたあの事件は、カルピス好きな私にとって悲しい記憶となって残っている。
Bランチ \1,500也
(前菜・メイン・パン・デザート・コーヒー)
最近、京橋にお勤めというDさんからメールをいただく。私の会社とエリアが隣接していることから、「ニアミスしそうですねぇ」と御自身の昼食記録を私に送ってくれるのだ。何度か「ブラッセリー・デュペ」という文字を見ることができて、ちょっと気になっていたお店へ私も行ってみることにする。
場所はホテル西洋そばの裏通り、以前担々麺を一人で食した龍潭酒家の隣にある。ガラス張りの大きな窓が目立つ洒落た感じのレストランだ。12時20分、既に席は7割ほど埋まっている。盛況らしい。入り口の黒板には今日のメニューが記載されている。Aランチ1000円、Bランチ1500円、他に2000円のものもあるらしい。
厨房そばの奥まった席につくなり、大きめのデュラレックスのグラスになみなみと冷たい水が置かれ、ウェイターさんが今日の料理の説明をし始める。
「えーと、今日のAランチはお魚は白身魚のほにゃららで、お肉は鶏肉のうにゃららで……」
Bランチを頼むつもりの私は耳を傾けて待つ。
「……」
……Bランチの説明は、ないらしかった。どうやら来る客は大体Aランチを注文するもの、となっていたらしかった。
「……」
「あの、Bランチの方をお願いしたいんですけれども。」
「あ、Bランチですか。Bランチはお料理の内容もお値段も違いますが……」
なんだかとてもAランチ以外の注文は慣れていない……というかめんどくさげである。構わずBランチ。本日の前菜か本日のスープかを選び、メインは肉か魚かを選べる。デザートも選べるらしい。スープとお肉にしてもらい、料理の来るのをしばし待つ。
やや大きめの、籠入りフランスパンがやってくる。ほどなくスープもやってくる。本日のスープは「胡麻の冷たいスープ」。白胡麻が上にパラパラと散らされたスープからは胡麻の香りが漂ってくる。
練り胡麻が入った風情の冷たいスープは、何というか胡麻味だった。滑らかで濃厚で、悪くない。じゃがいものピュレが入ったような、濃度のあるスープだ。冷たい食感が気持ち良くて、ついつい急いで飲んでしまう。
次、メインの肉料理は「牛バベットステーキ キノコソース」がやってきた。ウェイターが出払っていたのか、コック帽をつけた料理人さんが自ら皿持って厨房から出てくる。温かい皿に焼きたてのお肉。なんだか良い感じだ。
薄めのステーキ肉は良い具合にミディアムに焼けていて、胡椒の効いた甘辛いソースがかかっている。水煮のマッシュルームがごろごろと。つけ合わせは青梗菜のソテー。
薄くはあるけれども量は充分なステーキは「肉喰ってます」という感覚がして幸せになる。塩は肉にかかっているというよりソースにたっぷり入っている、という感じでそれだけが「?」と思ったけれど(やっぱり肉そのものに塩胡椒ガリガリついてるほうが美味しいと思うのね)、1500円のランチにしては「良くやるなぁ」と思ってしまう。しかもこのあとにデザートとコーヒーもつくらしい。
デザートは、6種類。ウェイトレスさんが、食後の私に楚々と寄って来て、
「デザート、お伺いさせていただきます。フランボワーズのムースとスポンジが2層になったもの、イチジクのスポンジケーキにクラシック・ショコラ。焼き菓子はアーモンドの2層になったものと、あとは冷たいもので梅酒のシャーベットとバニラ入りの牛乳アイスクリームがございます♪」
ときた。全部ください、と言いたくなるのをぐっと我慢。アイスクリームに限りなく惹かれつつイチジクのケーキを頼んでみることにした。お供にはミルクティーを。
生のイチジクがたっぷりの柔らかなカスタードクリームにまぶされてスポンジの間にサンドされた軽い感じのケーキだった。素朴で美味しい。周囲が女性客だらけというのも納得できる。1000円のAランチでもこのデザートはつくらしいし。それはお得かもしれない。
おかげで、昼食候補店がまた1つ増えました。とても満足♪
いつか2000円のコースも食べてみたいけど、お昼時間に食べられそうもないなぁ。とほほ。
オイルサーディンとトマトのグラタン
スモークサーモン with ケッパー
リモンチェッロ、アイスカフェオレ
夕方、だんなから「今日、遅くなるー」のTEL。
じゃあ、とりあえず炊いておいた御飯で簡単な丼ものでも作ろうかな、と「保温」モードになっていた炊飯器の蓋を開けると……お米の上にたっぷりの水、いやお湯。御飯は炊けておらず、お湯からほこほこと湯気がたっていた。息子のいたずらだ。奴は面白がって、炊飯器のスイッチが入っているとすぐに切ったりしてしまう。ちゃんと教えたんだけどなぁ……とほほほほー。
で、急遽パン食に変更。チーズトーストを作り、オイルサーディンとトマトを交互に並べてこちらもチーズをかけてオーブンへ。残り物だったスモークサーモンにはケッパーを散らす。食前酒代わりに冷凍庫で冷やしたリキュールグラスにレモンのリキュール"リモンチェッロ"を入れて凍り付くような酒をくぴくぴ飲みながらオイルサーディンやスモークサーモンを食す。んー、一人で宴会も悪くない。
息子は息子でスモークサーモンを両手に持ってかぶりつきつつチーズトーストも全部喰らおうとしているのであった。私が子供の頃はエメンタールチーズなんて臭くて食べられなかったんだけど、どうやら彼は平気らしい。ツワモノになるわね、きっと……。
冷や奴
大根と梅のみぞれ汁(レトルトもの)
御飯
麦茶
昨日、築地のお豆腐屋で買ったきた絹ごし豆腐で冷や奴。昨日の残りのオイルサーディンに冷蔵庫の中のロースハム。レトルトのスープ。何だか総残り物処分市のような様相を呈している本日の朝食だ。明後日の明朝に家を空けてしまう今、余計な買い物は抑えなければならない。
築地本願寺そば、新大橋通り沿いの「安達屋」なるお豆腐屋さんはめっぽう美味しい。大豆の旨味と甘味すらある豆腐はいつ食べても本物の味がするし、油の匂いが全然しない厚揚げの充実感も愛している。いつ買いに行っても愛想の良いおっちゃんたちも実は好きだったりする。
海外旅行に行く前、なんとなく身辺整理をしたくなってしまうのは私だけだろうか。
部屋の片づけをし、掃除をし、ついでに「思い残すことのないように好きなもの食べておこう」とか思ってしまったり。縁起でもないけど、なんとなくいつもそう思ってしまうのだ。
そして思い残すことがたっぷりある私はとりあえず築地の木村屋ペストリーショップに向かってみる。好物の「チャーシウカリビアン」を注文し、ミルクコーヒー(カフェオレではないところがミソである)と今日のスープもつけてもらう。
ほどなくスープ登場。木村屋に来ること6年、初めての冷たいスープがやってきた。今日の熱気にはとても有り難い冷たいスープ♪ヴィシソワーズだ。
キンキンに冷たいじゃがいものスープからはほんのりハーブの匂いがした。そしてたっぷりの生クリームの味。いつもながら素朴で濃厚でたまらなく美味しいスープだ。30秒で一気飲み(←おい!)。
続いて「チャーシウカリビアン」。「チャーシュウ」じゃないところがミソである。
手持ちの"サンドウェッチメニュー"には「自家製ローストポークにセロリコンディメンツ、野菜、卵にボイルサラミ」と説明が書いてある。うん、美味しいのだチャーシウカリビアン。
皿に乗るのは2種類のサンドイッチ。ローストポークがコンディメンツと共に挟まったものと、ゆで卵とサラミと野菜のサンドイッチ。ちょっと甘めのポークサンドと淡泊なサラミのサンドの調和が良くて、無言で交互に食べてしまう。「やっぱり最後はポークサンドで決まりかな」とか思いながら。
そしてたっぷり牛乳が入ったミルクコーヒーと、サンドイッチに添えられてきた桃とプルーンの水煮を食してシメ。
よし、思い残すことはなくなっ……ってないなぁ、まだまだ(苦笑)
バター醤油御飯
サンミゲール、麦茶
だんな、1日出張で帰宅遅し。息子と二人の夕食、テーマはやっぱり「思い残すことのない料理、だけど簡単なもの」。
昨日買ってきた鶏肉に塩と粗挽き胡椒ガリガリかけて、ドライハーブかけてオーブンへ。肉の周囲ににんにくごろごろ、じゃがいももごろごろ。あとは放っておけば鶏の脂が芋とにんにくに染み込んで良い感じになるのだ。
皮目がこんがり焼けた焼きたての鶏肉にじゃがいもごろごろ、冷え冷えのビール。
炊いた御飯にはカルピス特撰バターと醤油を乗せてバター醤油御飯。好物だらけの至福な夕食。だんながいないことを良いことに、御飯にいつもよりたっぷりめのバターを入れてしまう。うふふふふ♪
麦茶
暑い。めっちゃ暑い。
明け方5時頃に無意識のうちに扇風機をぶんぶん回してしまったほど、暑い。
そして起きるなり我々はだらけている。
NHKのニュースにて現在話題沸騰中の雪印事件の続報などをぬぼぼーっと眺めつつ、「牛乳飲みたいなぁ……」と漠然と思う。
「牛乳飲みたいなぁ」は「冷たいもの飲みたいなぁ」になり、続いて「冷たいもの食べたいなぁ」と転化して「ひやひやうどんを食べたいなぁ」に帰結する。
「旅行前、思い残すことのないように好きなもの食べておこうプロジェクト」出発前日の朝食はうどんに決定。だんなも二つ返事で大鍋に湯を沸かし始める。
茹で上がったカトキチ冷凍うどんを氷水にてキリリと冷やし、そこへだし醤油をぶっかけて食べる。刻み葱もたっぷり散らす。適当にかき混ぜてずるるるる、とすする。ふはー、暑い日の冷たいうどんはまた一段と美味しい。
さて、件の雪印牛乳事件。牛乳を殊更に愛している私にはがっくりくる事件だ。
別にかの会社を「信じていた」とか言うつもりはないし自分の腹が下ったりするのは別にかまわんけど、あの事件のために捨てられることになった大量の牛乳やそれを作ってくれた牛さんのことを思うと悲しくなってしまう。
どうか牛乳離れ、なんてことが起こりませんように。そう思いながら我が家では相変わらず1日1パック強のペースで牛乳が消費されていくのだ。
氷あんず
「旅行前、思い残すことのないように好きなもの食べておこうプロジェクト」、出発前日昼食の巻。
「よし、東京っぽいものを食べるぞー」
と会社を出る。
しかし……「東京っぽい」ものってなんじゃ!?
もんじゃ焼き。一人鉄板に向かい汗垂らしながらもんじゃを喰う私。……暑苦しいので却下。
すき焼き。……やっぱり暑苦しいので却下。
関東風うな重。……でも私は関西風が好きだし。
お好み焼き。……大阪で食べるし。
雷おこし。……それは御飯にならないだろう。
結局、「東京もの、って良くわからない……」と炎天下を歩き回る羽目になる。暑い。喉乾いた。暑さで頭も痛くなる。
そして食欲なくしているのである。バカか私は。
ふらふらになりながら、銀座コアビル内に足を踏み入れ、そのまま1階の隅に位置する若松へ飛び込む私。氷あんず、850円なり。これが私のお昼御飯。とほほほほ。
甘味屋さん独特の細かく繊細なかき氷に透き通るような薄オレンジ色のシロップ。一番底には干しあんずが2粒。くどくない甘さが冷たさと一緒に喉の奥をすべっていく。くうぅぅぅぅ、美味しい。そういえば、これが今シーズン初のかき氷。
かき氷、大好物なんだけどすぐに寒くなってしまう。後半1/3ほどに突入すると、氷とシロップが良い感じに絡んで美味しくなるのと裏腹に、両耳と口の奥を結んだあたりのエリアがキーーーーーンと痛くなってくる。
かき氷出すお店では冷房を控えめにして欲しいなぁ……などと自分勝手なことを考えてしまうが、そういうわけにもいかないんだろうし。
私がかき氷食ってた頃、だんなは「旅行前、思い残すことのないように好きなもの食べておこうプロジェクト」をきちんと励行していたらしい。
「ひょうたん屋で鰻食ってきました。」
なんてメールが会社に戻ったら届いていた。
な、なんか負けた気分がするわ、私……。くそぅ。
上天丼(お新香、味噌汁つき)
鶏の唐揚げ
サンミゲール、麦茶
「旅行前、思い残すことのないように好きなもの食べておこうプロジェクト」最終食。
これは一昨日あたりからだんなと決めていた、「水信(みずしな)リベンジ」。
そう、こないだの日曜日、ここのこれを食べようと思っていたのに休みだったのだ。地域のお蕎麦屋さんにしてはかなりハイレベルな店屋物をもってきてくれるこのお店の品を食して旅行に臨む。
注文は、私に上天丼、だんなに親子丼、息子にはかつザルセット(ミニカツ丼とざるそばのセット)、ついでにビールのつまみに単品の唐揚げも。だんなが帰るコールをしてくれてから30分、料理とだんなはほぼ同時に家に来た。
天丼の海老天ぷらは衣がまだシャクシャクしてるし、相変わらずちょっと甘めの割り下が美味しいんである。しかも今日の味噌汁は大根たっぷりごぼうたっぷりキャベツたっぷりの豚汁。安っぽーい豚の脂身がふわふわと漂っちゃう、ちょっとグッとくる一品だ。
さ、これから荷造りの続きをしなければ。
旅先でも無事に更新できますように。
モーニングセット ¥1,170也
朝5時起床。朝6時にやってきたタクシーに乗り、朝7時半発の飛行機にて一路大阪へ……という予定の本日。
なんとか予定通りに起きて家を出てきたものの、まだ頭の半分が眠ったような状態で羽田空港をフラフラする。出発まで1時間。
6時半に開いているレストランもそうそうある筈はなく、立ち食いのコーヒーショップを除けば2軒ほどしかない。お腹の空き具合と割高な空港価格のそのメニューを眺めて、結局食欲を優先させる。
ル・シエールなる洋食屋さん、中はみっちりおっちゃんやおばちゃんで詰まっている。平均年齢52歳、といった感じの空間に、私たちは間違いなく最年少クラスである。モーニングセット1170円なりを注文。だんなはサンドイッチセットを、息子にはアップルジュースを。
オレンジジュースにミルクティ、小皿に乗るのはクロワッサンにブリオッシュにルビーオレンジとオレンジの盛り合わせ。大皿にはスクランブルエッグのトマトソースがけ、ハムにウィンナーにポテトサラダにコーンとグリーンピースの炒めが乗っている。それなりに盛りだくさんで、しかもパンはほわほわと温かかったりして想像以上には充分に美味しかった。分けてやったブリオッシュに息子も齧りついている。
すぐそばのテーブルでは、齢60を軽く越えたようなおばあちゃんがカレーライスに取り組んでいた。
「俺でも、重いと思って食べなかったのに……」
とだんなはその光景を見てびっくりしている。時間は午前7時にならんとするところ。うん、すごいおばあちゃんだ……。
10個入りたこ焼き ¥500
難波 自由軒本店の
名物カレー ¥600
ビール(小瓶)
難波 蓬莱551の
ぶたまん ¥140
午前10時半。飛行機を降りて南海ラピートα号に乗った私たちは無事に難波へ到着した。
空港降りてすぐのところにあった"阪神タイガース情報"なるガラス張りボードを見て
「阪神タイガースの国にきてしまった……」
と私が思う一方で、だんなは、
「息子よ、ここが薄口醤油と粉の国だよ。」
と教えを説いている。どちらもそれほど間違っていないと思うけどどうだろう。
うひょー。この雑多な空間。大阪だー。難波だー。大阪は5年以上ぶりの私。わくわくと早速食べ歩きを始めてしまう。
まずは、だんながお好きだということで"大たこ"のたこ焼き。かに道楽のすぐ脇の、小さな屋台然とした店だ。客は並んだりはしていないが、次々と買っては去っていく。
「恨ミシュランでけちょんけちょんに言われているけど、俺は好きなんだよなぁ。」
とだんなのお言葉に相伴して10個入りのやつを家族全員でつつきまわす。薄紙のような鰹節が風でヒラヒラ飛んでいきそうになるのを阻止しながら。
ふくふくとした、柔らかなたこ焼きだ。全体的に歯ごたえはなく、けれど大きなコリコリとしたタコがごろりと入っている。ここのところ"たこ焼き"というと表面がカリカリになった油たっぷりの"銀だこ"製しか口にしたことがなかったので、こういう普通のたこ焼きは久しぶりだ。うん、悪くないです美味しいです。
「ものすごく、ここがこのように世界一すばらしいの!」
という程の個性はないけれど、なんとなく安心してしまう味のたこ焼き。
いきなりたこ焼きを食ってしまったことで、
「ああ、大阪だ、大阪だぞー」
とわけもなく感動する。
たこ焼きを食した後は、駅方面に戻ってだんなのサンダルなどを購入しつつ昼食メイン会場の自由軒へ。
ここの名物カレー、学生時代(もう8年くらい前のことだ)にSちゃんと神戸旅行に行った帰りに1度だけ食しにきたことがある。カレールーとご飯がぐちゃぐちゃに混ぜられて中央に生卵が1個ポンと割られた名物カレーをもう一度食したかった。
なんとも古びた感じの店内を給仕のおばちゃんらがきびきびと動き回る。息子用には速攻小さな椀とスプーンを持ってきてくれる。
だんなはハイシライスを、私は名物カレーを注文。ついでに猛暑に疲れてビールも1本、やってくる早々に飲み干した。
ハイシライスもまた、具とルーがぐちゃぐちゃに混ぜられて生卵が落とされたスタイルだ。先にやってきただんなの皿から一口貰う。……うーーーーーーん、ケチャップと、何と言うか缶詰のドミグラスソースのような、ちょっと甘味や香りが合成臭いようなソースだ。不味くはないけど、とりたててすごい美味しいものでもない。
ハイシライスにわずかばかり失望しつつ、私は私の皿、名物カレーに臨む。
名物カレー、そのまま食べるとすこぶる苦い。市販のカレー粉をたっぷり使ってドライカレーなど作ってしまうとターメリックの苦さで想像以上に苦くなってしまうけれども、それと同じような苦味がある。はっきり言って、そのまま食べる自由軒のカレーはそれほど美味しくない。美味しくなるのはこれから、なのだ。
乗った卵をぐちゃぐちゃと、ただでさえぐちゃぐちゃになっているカレールーとご飯が渾然一体となっているところへかき混ぜる。黄身も白身もほどよく混ざったところで、ぱくり。苦味が卵で緩和されてマイルドになり、卵1個でかなり奥行きのある味になる。そうそう、これだこれだよ私が8年前に食べたカレーは。
そして、今回の私は有力情報をつかんでいた。
「自由軒の混ぜカレーをおいしく食べるには、絶対にウスターソースをかけなければならない。」
……らしい。
試しにやってみることにする。
横のソース容器から、ちろりとソースを垂らして上部のカレーのみちゃっちゃと混ぜて食ってみる。
う、うーまーひー。
卵でマイルドになったカレーにソースの甘辛さが入ると、なんとも奥行きのある味になる。ああ、この情報を見つけてよかった。だんなも、一口目の苦いカレーを食べたときは怪訝そうな顔をしていたくせに、ソースを入れた途端
「旨いよこれは!」
と妙に感動しつつ私の皿からカレーをすくっている。
調子に乗って、先ほどの量の3倍ほどのソースを威勢良くかけて全体をかき混ぜる私。
相当に辛いカレーだ。一口目はそれほど辛く感じないのに、じわじわと口中が熱くなってくる。コップに冷水を満たして飲みつつ、20分ほどの食事終了。
たこ焼き食って、カレー食って、なおかつ
「551のぶたまん食べようか」
とか言っている私たちなのである。ほんの数十メートルしか離れていない、自由軒と蓬莱のロケーションが悪いと言えよう。
「2個入りください♪」
とだんな、ふかしたてのそれを280円にて購入。店頭で箱を空けてわしわしとその場で食べちゃう。横では近所のOLさんらしい、制服姿の二人組みの女性がやっぱりわしわしとぶたまんを食べている。
ううう、やっぱり美味しい。どんな高級な中華料理店で食べる肉まんよりも、ここのぶたまんがやっぱり美味しい。うっすらと味のある皮の甘味や、なんだかラードがたっぷり入っていそうな白っぽい肉あん。ねぎたっぷりの匂い。チェーン店であっても、駅の売店で買えちゃったりしても、やっぱりここのぶたまんは日本一美味しい。
……そして旅行初日から食いすぎているような我々である。しかもまだ昼過ぎなのである。
スーツケースは関空に預けてきたものの、1泊分の荷物(プラス、ノートパソコン等々)を持っているだんなは重そうだし、息子も午睡の時間帯で辛そうだ。
早々に本日の宿泊先帝国ホテルへチェックイン。
二人とも、シャワーを浴びたら速攻寝てしまったのであった。とほほほほ。
ザ・リージェント香港 楊啓文料理長の
おすすめディナーコース \15,000也
本日のディナーは、先月より予約していた帝国ホテルの中華料理店、ジャスミンガーデン。
なんでも7/11〜20の10日間、香港のリージェントホテルの麗晶軒の料理長や支配人がやってきて、本場の料理を供してくれるらしいのだ。当然本場のマンゴープリンも期待できるということで、てぐすねひいて待っていた今日のディナー。
予約は6時。買ったばかりの赤いワンピースを着て、黒いジャケットを羽織ってディナーに臨む。23階のレストランでは、眺めの良い席を用意していてくれた。
食前酒にミモザをいただきつつ、メニューの検討。悩む悩む。
アラカルトメニューも充実していたが、ディナーコースの内容もなかなかすごい。
\15,000のコース、
活才巻海老のボイル 特製ソース (白灼生蝦)
鶏肉の辛し胡麻ソース ([虫毛]皇鮑片[手入]楡茸)
衣笠茸とふかひれの姿入り 特上蒸しスープ (竹笙燉鮑翅)
伊勢海老のXO醤炒め (XO醤炒龍蝦球)
あわびと楡茸のオイスターソース煮込み ([虫毛]皇鮑片[手八]楡茸)
貝柱とアスパラガスの煮込み 蟹の卵ソース (蟹皇[手八]帯子露笋)
干し貝柱と中国藻の煮込み (發財蒜子瑤柱脯)
シーフード入りチャーハン (海鮮皇炒飯)
マンゴ入りプリン (凍香芒布甸) 又は 白木耳入りお汁粉 (雪耳燉紅蓮)
に心惹かれつつ、されどもアラカルトに載る、
リージェント名物ローストチキン (當紅炸子鶏)
が食べたくて食べたくて仕方ない。
ウェイターさんと相談した結果、コースの2品目の鶏肉とローストチキンを取り替えてもらえることに。
そして息子用に
干し貝柱入り煮込みそば (瑤柱干焼伊麺)
をハーフポーションで頂けるかどうかお願いしてみる。
さぁ〜、宴の始まりだ。
まずは殻付きの大きな海老が3匹、白皿に盛られてやってきた。生姜入りの醤油だれが添えられている。
箸で殻を取っているのもめんどくさく、いきなり両手で海老持ってかぶりつく私たち。プリプリのムチムチの海老が美味いのなんの。海老そのものには技巧は凝らしていない、シンプルな料理だ。だけど湯気のたつ海老は旨い。ビールがとても恋しくなる。
まもなく来たのは蓋付きの陶器の容器。中には茶色く透明なスープが満たされている。ぷかぷかと浮いているのはちくわのように中央に空洞のある網目の衣笠茸。底にはヒレのままの形のフカヒレが沈んでいる。透明で旨みの詰まったスープをすすり、ややシャクシャクした歯ざわりの衣笠茸に臨む。ふかひれは根元のゼラチン部分に齧りつき、満喫した後でスープにほぐしてフカヒレだらけのスープにして食べてしまう。
この透明なスープは、銀座の福臨門でフカヒレの姿煮を食べて以来のものだ。あの時ほどのインパクトは残念ながら無かったけれど、洗練された良い香りのスープだった。
食前酒がそろそろ無くなる。
だが、今日は料理を満喫すべく酒はあきらめて温かいお茶をいただいた。温かいお茶を、と言うと大きなポットのジャスミンティが満たされてやってきた。
クピクピと茶碗を傾けつつ、料理は滞り無く進んでいく。
次は伊勢海老の炒め。
小さな一口大の海老がえんどうと共に黒々としたXO醤で炒められている。ピリリと辛いXO醤の匂いと味がご飯を恋しくさせてくれる。海老、プリプリでやっぱり美味。
皿は良いタイミングで次々とやってくる。続いてあわびの煮込み、だんなの大好物。
赤ちゃんの耳たぶのようにふくよかなあわびが、茶褐色のトロリとした透明のあんに包まれている。シャキシャキのチンゲンサイも添えられる。
噛むとじわんとあわびの味とスープの旨みが口の中に広がってくる。旨みのある皿ばかりが続いて、胃の中が良い香りでいっぱいになってくる。しあわせ……。
息子がちょっとぐずりだしたのを気にしつつ、次の品は美しいオレンジ色の一皿。
蟹の卵はウニにも似ていて、そのオレンジ色の粒々が蟹の身と一緒にあんになっている。ホロリと崩れる貝柱に青々とした一口大アスパラガスの食感が楽しい。
続いて、今日のメインディッシュ、ローストチキン!
皮目はどこまでもパリパリと香ばしく、中の肉はふくふくで温かな鶏半羽がやってきた。添え物にはレモン汁と塩。
骨のある肉は食べにくいけど、そこのところがまた美味しいのだ。いとわず両手で持ってかぶりつく。染み出る肉汁、パリッパリの皮。うーまーひー!
さすが「名物」と言わしめるだけのことはある美味しさがここにあった。
以前、同じような品を香港の福臨門で頼み、まだ食べられそうな足が残っているのに皿を下げられてしまった屈辱の記憶を持つ私。
「足は私のだかんね!私の私の私の!」
と宣言し、足の部分をいただいた。太い足の骨にまとわりつくパリパリの皮、薄い肉。旨みぎっしり。ふはははは、足だ!足を食ったぞ、見たか福臨門!(←……おいおい)
もうすぐ料理も終わる。ここで本日最高のニンニクを食することのできた一品が登場。
潮の旨みの詰まった干し貝柱の茶褐色の煮込み料理。貝柱と一緒にホロホロに崩れそうな大きなニンニクが入っている。これがんもう、口の中に入れたとたんに揮発してしまいそうな危うい柔らかさのものなのである。正直言って、干し貝柱よりも美味しい!とか思ってしまう不謹慎な私たち。ホロホロのにんにくは1人あたり2〜3粒。大事に大事にニンニクを食べる。
最後に御飯。海老やホタテの入った海鮮炒飯だ。
若干紹興酒の匂いの強いパラパラの炒飯、葱もたっぷり入っている。この炒飯もそうだけど、全体的に上品かつ洗練された味がする。強いアクや匂いのような個性はないが、身体にすんなり染み込んでいく柔らかさがどの料理にも漂っている。パラパラ炒飯もぺろりと数分で平らげる。
そして真打、マンゴープリン♪
コースについてくる2つのマンゴープリンのほか、息子用に
アーモンドクリーム温製 (生麿杏仁茶)
をいただいた。こちらは白くてちょっとだけ濃度のある温かなスープだ。スープというよりお汁粉、という感じ。杏仁の香り濃厚で、甘味はほんの少しうっすらとしたもの。杏仁好きな私には嬉しくて、息子用といいつつもほとんど私が飲んでしまったり。
そしてマンゴープリンは足付きの背の高いグラスに入ってきた。量は……あんまり多くない。他のテーブルにもっと大きなものが行ったのを見たところによると、コースの中のマンゴープリンはちょっと小ぶりなものだったようだ。苺とミントの葉と共にマンゴーの果肉も盛られている。熟したアップルマンゴーだ。
中にもまんべんなく、ざっくざっくとマンゴーの果肉が入っている。プリン生地からも濃厚なマンゴー臭が漂ってくる。……けれども、ちょっと固めだ。口の中ですっと溶ける、という絶妙の固まり具合にはやや遠く、若干ポクポクとした歯ざわりがある。果肉はとても熟していて良いものなのに、それをどうやらレモン汁で一回和えているようで、その酸味がちょっと邪魔に思えたりも。
……と厳しいことを考えたりしてしまうマンゴプリンマニアな自分だけれども、それでもとてもハイレベルなマンゴープリンではある。大体、こんなにたくさんアップルマンゴーの果肉を使ってプリン作れるお店はそうそうない。願わくば、この5倍量くらい食べてしまいたいところだ。
うぃー、食った食った。時間も入店から2時間強が過ぎている。
最後にお店のメニュー(お店で出しているそのもののやつ)を貰ってしまい、麗晶軒の支配人、パトリックさんとも名刺交換をしてしまった。帰り際、だんなが英語で
「マンゴープリンはとっても美味しかったけど、本店のはもっと美味しいんでしょうね。」
と伝えたらば、満面の笑みで
「そのとおりです!どうぞ香港の本店にいらしてくださいね。」
と英語で返してくれた(耳ではわかっても話すことの苦手な私はただニコニコ……)
あうううう、行きたいなぁ香港。食べたいなぁ麗晶軒。今度の冬のボーナスで……(←多分ムリ……)
モーニングブッフェ
オレンジジュース
クロワッサン・チョコレートデニッシュ
チーズオムレツ オニオン入り
ジャーマンポテト
にんじんのグラッセ、いんげんのソテー
かりかりベーコン
野菜サラダ
プルーン
西瓜、パパイア、メロン
ミルクティー
朝8時まで寝ているつもりが、なぜか6時に目を覚ましてしまう。で、7時にほてほてと朝食を取りに行くことに。
朝7時オープンの朝食ブッフェのレストランはツアー客やグループ客と思われるおばちゃんらで既に満員、びっくりしつつ少々待って着席する。
何というか、ごく普通のブッフェだ。パンの種類も普通、サラダやフルーツの並びも普通。……いや、あまり充実していない方になるかもしれない。シリアルも市販品の小さな箱そのままが置かれているし(やっぱりガラスボールにたっぷりと何種類も並んでいるほうが嬉しいのね……)。
これだけは目の前で作ってくれるオムレツコーナーからオムレツを貰う。マッシュルームやたまねぎなど、好みの具を入れてくれる。
「チーズオムレツください。あ、たまねぎも入れてください。」
小皿に盛られた各種の具を見て、茶色い炒めたまねぎがあるのを見てついついたまねぎも入れてもらってしまう。
温かい皿にオムレツを乗せてもらい、横のコーナーで野菜やベーコンを飾ってケチャップを垂らして席へ。パンは好物のクロワッサンなどを持ってくる。紅茶にオレンジジュースに野菜サラダ。なんだか豪華な食卓になってしまった。
パン2個は多かったかも……と思いながら食していると、だんなが
「第2ラウンド〜」
とか言いながらパンやオムレツを片付けた後にお粥や日本蕎麦、茶碗蒸しなどの和風メニューまで持ってきて食べている。きょ、今日も食べまくる予定なのに……まだ食うんかい、君……。
デラバン ¥170
和風デラバン ¥190
モロゾフ製
マンゴープリン
サンセラドール製
マンゴープリン
今日はハードな予定だ。何しろ梅田阪神の地下でいか焼きを食し、十三でねぎ焼きを食し、新世界で串揚げを食し、海遊館に行き、夕方には関空のホテルにチェックインしなければならないのだ。
「最初に十三に行って……」
「いやいや、そうすると午前の時間が無駄になる」
「なら、最初にいか焼き食って、串揚げも食って、かな」
「そうだな」
と、"如何にして全てを効率良く回るか"に神経は注がれて本日のスケジュールは決定した。
9時半に帝国ホテルをチェックアウト、梅田へのシャトルバスに乗り目指すは阪神百貨店。
地下1階にあるスナックパークには、妙に安いモダン焼きやらカレーライスやらうどんやら蕎麦やらが売られている。立ち食いの高テーブルがいくつか並ぶ、東京だったら池袋なんかで良く見かけてしまいそうな光景だ。入り口そばにはいか焼きのコーナーが。ここのいか焼きはだんなの好物であるらしい。幼少の頃大阪に住んでいたことのある彼は、いか焼きと言ったらこれ!というものだったとか。
いか焼きはいか焼きでメニューにあるが、ここの名物は「デラバン」というものであるらしい。いか焼きに卵が入ったものであるというが、そもそも私はそのいか焼きを存じ上げていない。
「いか焼きって……?御飯が中に入っているやつ?」
「それはイカ飯。」
「ああ、じゃあその御飯が抜かれてるやつね。」
「それは焼きイカ!俺が言ってるのは"いか焼き"!」
「……むむむー。難しいではないか!」
「簡単だよ!」
まるで漫才のようなやりとりをした挙句、結局どういうものなのか全く見当のつかないまま、だんなの購入した「デラバン」および「和風デラバン」と対峙する。
薄っぺらいお好み焼きのようなものを二つ折りにしたものが発泡スチロールのトレーの上に乗せられている。黄身を崩した目玉焼き然となった卵が表面に乗っており、ふわりとソースの匂いが漂う。小麦粉ベースの生地の中にはざく切りにしたゲソがうりゃうりゃと入っていて、和風版には万能葱の刻みが入っている。
味も確かにお好みやきに似ている。でも、イカの他にはさしたる具も無く、本当に簡単なおやつのような食べ物だ。ああ、子供の頃にこういうのおやつに食べたかったなぁ……という感じの味がする。
いか焼き食べつつ、マンゴープリンも食ってる私。
大阪デパ地下などに足を踏み入れてしまったからには、当然ケーキ屋に並んでいるマンゴープリンをチェックせずにはいられない私。ホテルにまで持っていけそうな密閉パックのものを1個発見できたまでは良かったけれど、その後に持ち歩きのあまりできそうにないブツを1個2個と発見。結局包んで貰って、すぐそばのいか焼きコーナー脇でがさがさと広げてデジカメで撮影した挙句食ってる怪しげな女がここに登場することになる。
東京ではついぞ見かけたことのないモロゾフのマンゴープリンに、フルーツ屋然としたサンセラドールというお店のマンゴープリン。どっちもめちゃめちゃ美味しいというほど美味しくはなかったけれど、ばっちりレポートもメモ帳にしたためて、いざいざ次のお店にゴー。
串かつ
どて焼
とり唐揚げ
玉子
玉ねぎ
ビール小瓶1本
おやつである。午前のおやつ、パート2なのである。
地下鉄に乗ってやってきたのは動物園前駅。外に出るなりド演歌のテープが流れていて、パチンコ屋の喧騒が響き、路上で1枚300円のシャツが並んでいたりするちょっと怪しいエリア。目指すは「ジャンジャン横丁」なるもっと怪しそうな通りであった。雀荘や一杯飲み屋が並ぶ狭い商店街は、午前11時をまわったばかりだというのに既に酒臭い。
比較的清潔そうな、大きな窓から明かりが漏れる一店が目指す「八重勝」。既に若い女性の2人組だとか小学生くらいの子供連れのお父さんなどが一列になった席に並び食べている。
足が地に固定された丸椅子に親子3人並んで腰掛ける。カウンターには串に刺された野菜や肉などが並び、目の前にはステンレスの網トレイにたっぷりのソースが入った四角い容器、キャベツのざく切りなどが並んでいる。
「何揚げましょ?」
との声に
「ビール1本と串かつとどて焼き1皿ずつね。あ、あとウーロン茶。」
とスラスラ答えるだんな。
すぐさまビールにウーロンにグラスが並べられ、アツアツの串がトレイに出されて怪しい白いタレのかかった串も一皿出てきた。
午前11時半、いきなり飲み出す私たち。かなりダメな人間になっている昨日と今日。
壁には白いボードに「ソースの二度づけお断り 店主」の文字が。「二度づけ」のところだけが赤く描かれたそれは、いつか本で見たとおりで、何やら感動してしまう。そうそう、二度づけは禁止で、ソースにポチャリと漬けるのだ。
"怪しい白いタレ"の皿が、どうやら「どて焼き」というものらしい。モツと思われる肉が串に刺さり、白味噌ベースのこってりと甘いタレが絡んでいる。ビールと交互に食べるとお互いエンドレスで進んでしまう危険な一品だ。
串までアツアツになっている「串かつ」は牛肉の衣揚げ。厚めの衣がたっぷりついて表面はサックサク。東京にも串揚げの店は数あるけれど大体が技巧を凝らした高級店になっている。衣と具の間に隙間があるような、チープなチープな串かつは、だけれど私の心にグッとくる。ソース容器にちゃぽんと漬けて、ざっとソースを切ってからかぶりつく。……ああ、これだー。これが食べたかったのだー。お、美味しい〜。
朝7時にたっぷりの朝食食べて、つい1時間ほど前にいか焼きだのマンゴープリンだの食べているいるのはどこへやら、
「玉子2つに玉ねぎ2つ、とり唐揚げになす1つずつね〜♪」
とか追加注文。
「あいよー。」
と気の抜けた声を出しながらも、店員さんがカウンターの具を取ってちゃっちゃと揚げてくれる。大きな輪切りの玉ねぎが2つ刺さったものに、玉子はなんとゆで卵1個がまるまる揚げられている。とり唐揚げは見た目焼き鳥そのまんまのような串を揚げてくれ、仕上げに塩胡椒をふってくれる。これだけはソース抜きで食べるものらしい。
大きな大きな卵にも分厚い衣がついている。串を持ちソースにどっぷり漬けて重々しくなったところでかぶりつく。たたのゆで卵に衣つけて揚げてソースつけただけなのに、めっちゃめちゃ美味しい。無くなってしまったコップのビールを惜しみつつ、ウーロン茶を1本貰って飲みつつ食べる。
横のおねーちゃんたちはシューマイとかアスパラガスなんかを頼んでいて、それもめちゃめちゃ美味しそうだ。
20分ほどして、お店を辞する。親子で食った串は12本。お会計は1900円。
あうー、これが近所にあったなら。週に3日は通ってしまうのに。
明石焼き・五目
すじねぎ焼き
ミックス焼きそば
生ビール小
新世界で串揚げ体験の次は、息子サービスも兼ねて(←本当は行きたいのは私だったというのはヒミツ)天保山の海遊館へ。電車に乗ってどこどことベイエリアに向かう。ジンベエザメと対面し、大好きなマンボウも満喫し、ラッコやイルカも充分に愛でた後は十三へ向かう。そう、本場のねぎ焼きを食べるために。
以前、東京でねぎ焼きを食べたときに大阪情報として教えていただいた「蛸のつぼ」を探して行く。十三駅、東口に出て徒歩1分ほど、目指す店はこぢんまりとしたビルの2階にあった。時間は午後3時、客足もまばらな頃合だ。
鉄板とたこ焼き板が並ぶ席につき、懸案のすじねぎを注文。ついでに明石焼きの五目と焼きそばも。そして今日2回目のビ〜〜ル。しかもジョッキ。小だけど。
最初に来たのが明石焼き。白木の台にふくふくした黄色いたこ焼きが8個並んでいる。「五目」はたこ、肉、葱が入っているらしい。大きなタコと同じ大きさの牛肉、刻み葱が入ったたこ焼きはだしにつけていただく。あっつあつなのを厭わずにそのままばくりと食べ、はふはふ言いながら飲みこんだ後はビールを流し込む。久しぶりの明石焼き、肉入りなのが案外に良い組み合わせでとてもイケる。
つづいて縮れのないまっすぐな太めの麺の焼きそば。イカや海老などがじゃかじゃか入った豪華なもの。ソース味の麺はちょっと甘めで、混ざるキャベツはシャキシャキとしている。焼きそばが無性に食べたかったらしいだんなに焼きそばの摂取は任せて私は次なる刺客、ねぎ焼きへ。
「醤油とレモン汁でお味つけてありますからね。」
とおばちゃんが持ってきてくれた大きな葱焼きは表面の醤油が焦げてえもいわれぬ良い匂いがする。
各自のコテで一口大に切り、そのまま口に持っていく。猫舌な私はちょっと困惑しつつ、それでも堪えてパクリといく。葱と生地の間に空気がたっぷり入ったような、柔らかなねぎ焼きだ。以前東京で食べたものの数十倍は美味しい、本場のねぎ焼き。あのときマヨネーズやソースをかけたのは間違いだった!とはっきり理解できた、レモン汁と醤油のナイスコンビネーション。甘辛い牛筋肉もほろほろと良い感じで、たっぷりの刻み葱とこれ以上はないくらいに良く似合っている。
美味しい!めっちゃめちゃ美味しいですよおばさん!
とお店のおばちゃんに
「東京から食べに来た甲斐がありました〜〜〜」
と言ってしまう。おばちゃんは「あらあら、まあまあ」と困ったように笑っていた。
美味しくて美味しくて、思わず私は半分以上のねぎ焼きを、ものすごい勢いで食べてしまった。
ああ、このお店が近所にあったなら……(またかい)
炒飯弁当
缶ビール
午後6時前、今日のお宿、関空日航ホテルに無事チェックイン。
さすがに数時間前に食べたねぎ焼きがボディーブローのようにじわじわと胃を圧迫しつづけていて夕食なんて考えるどころじゃなく、しかしこのまま寝てしまうのも物足りないと隣接するショッピングエリアに赴く。
で、スナックコーナーのところで蓬莱のショップを発見。「これだ!」と弁当を部屋に持ちこみ簡単な食事にすることにする。私は炒飯弁当、だんなは海鮮焼きそば。1缶の缶ビールを夫婦で分けて、息子には麦茶。
ちゃんと注文を受けてから奥の厨房で作ってくれる蓬莱のお弁当は想像以上に美味しかった。
ホテルの部屋に持ちかえっても炒飯は火傷するほどアツアツで、しっかりパラパラになっている。おかずは海老のフリッターに甘辛いたれのかかった肉団子、鶏の唐揚げ。みんなで適当にお皿を交換しつつ美味しくいただく。そう、このお店には中でだけ食べられる250円のマンゴープリンがあったのだ。……明日行かなきゃなぁ(←まだ食べる気らしい)
バームクーヘン
マールブランシュの
タピオカ入りマンゴープリン
牛乳
ホテルの部屋にて夜のお茶会。お茶会と言いつつ飲んでいるのは何故か牛乳だけど、そんなこたどーでもいいのだ。
本日の午前中、梅田阪神百貨店にて見つけたマンゴープリンに、とおりがかってついつい買ってしまったバームクーヘン。「HARIE」という名前の聞きなれないこのお店の店頭では大きなバームクーヘンがガラス窓の向こうにごろごろと飾られていて、それがなんとも旨そうだった。コーヒーゼリーやオレンジゼリーも、どれもこれも美味しそう。ついつい試食のバームクーヘンに手を出してしまい、それがめっちゃめちゃ美味しかったのでついつい500円の一番小さな袋を買ってきてしまったのだった。
ついつい買ってしまったマンゴープリン(あとはカスタードプリンとココナッツミルクプリン)についつい買ってしまったバームクーヘン。本日の戦利品を並べて小さな宴。
周囲に砂糖がまぶされたバームクーヘンは、どうやら中にもまぶされているようで柔らかくほんのり甘く美味しかった。マンゴープリンはいまいち……だったけど、しかしホテルの部屋でまでそんなに食うかね私たち。
ああ、それではお風呂に入ってこよう。がんばって消化しなければ……げふ。
コンビ(ぶたまん+シュウマイ2個セット) ¥305
ぶたまん ¥160
マンゴープリン ¥250
午前8時半、起床。
ついつい旅行だと気張って6時頃に早く目がさめてしまうものだけど、今日はぐーたらぐーたら一家で寝てしまっていた。
角部屋のこの部屋からは前方と左側に大きく海が見えている。快適〜♪
のんびり熱いお風呂に入ってスーツケースの荷物をもう一回整理し、気がつくと10時を回っている。
朝食のチケットなどを持っているわけではなかったので、
「11時にオープンするレストランで、朝昼兼用で食べてしまえばいいよね〜」
ということになった……が、息子の胃袋はどうやらそうもいかないようだ。お腹がすいた、と訴える彼に合わせてホテルに隣接されたエアロプラザ内蓬莱に今日も赴く。
カウンターに座り、ぶたまん1つとぶたまんとシュウマイのセットの"コンビ"を注文。私は懸案のマンゴープリンを。
いつ食べても、何度食べてもここのぶたまんはやっぱり美味しいのである。味のある皮に旨みのある具。ここで食べるとスープもついてくる。化学調味料の味のスープではあったけど、具に白菜やにんじんがヒラヒラと入っていて悪くない。
マンゴープリンも想像以上に美味しかった。アップルマンゴーの果肉がちゃんと入っていて、香料の匂いのする合成調味料なども入っていないようだ。プルルンと弾力があって250円という値段にしては最高に美味しい部類だ。
午前11時、部屋に帰ってきて、30分後に昼食を食べに向かう。今食べたのは……朝食だったような気もするけどまぁ良いのである。スケジュールなんて予定通りにいかないものなのだから。
飲茶食べ放題 \2,500也 生ビール
つい数十分前にぶたまんを食べたのは何のその、中華料理店に座って飲茶食べ放題などしているのである。お互い強靭な(強靭すぎる)胃袋だよねぇ、とだんなと笑いあいながら。
オーダー式の、30種ある飲茶メニューが全部食べ放題になるこのイベントは\2,500なり。宿泊者用のレストラン10%割引チケットを利用し、更にチェックイン時に貰った"どこででも使えるウェルカムドリンク券"をも使って生ビールを注文。ああ、3日続けて昼間にビール飲んでます私たち。
メニューはかなり充実している。マンゴープリンも載っている。万歳。
最初に前菜が銀の足つきの盆に入れられてやってくる。豚の薄切り肉を茹でてピリ辛の醤油だれで和えられているもので、葱やレタスが飾られている。これが飲みこんだ後にじわりじわりと辛くなってきてビールがとても旨くなるものだった。前菜というと蒸し鶏やくらげが出てくるものとばかり思っていたので、これは意表をつかれた美味しさだ。
最初は簡単に(?)
海鮮入りスープ餃子 1個
大根餅 3個
春巻 2本
蝦餃 4個
特製しゅうまい 2個
海鮮しゅうまい 2個
を注文。
注文を受けてから1つ1つ蒸し始めるらしい点心は、どれも少しばかり待たなければいけないようだった。11時半の開店直後にきたときはまだまばらだった席もどんどん埋まっていく。眺めの良い席は早めに予約で埋まってしまうのだと黒服のウェイター氏が言っていた。
最初に来たのはスープ餃子に大根餅。透明なスープに椀の端から端まである巨大な餃子が沈んでいる。箸でつまもうとしても崩れそうになってしまう餃子を蓮華でもって格闘しつつ一口。中にもスープの詰まった海老や帆立のあんがたっぷりの餃子が口の中でとろけていく。こ、これは美味しい!バイキングだと思って少々舐めていた自分を反省しつつ、次なる大根餅を食べる。こんがり表面の焼けた、ちょっと焦げ目のついた大根餅はとてもフワフワとしていて、これも随分とイケるものだ。トロリと溶けていく、クリーミーな大根餅だ。想像以上の料理のレベルの高さにびっくりしながらばくばく食す。息子も必死な形相でアツアツの大根餅を美味しそうに食べている。彼は大根餅がとても好物なのだ。
細めの春巻はとてもスタンダードな味だったけど、揚げたてパリパリの皮と筍たっぷりの具の調和がとれている。ああ、ビールがなくなってしまった……。
続いて揚げ物蒸し物たっぷりの次なる注文に臨む。
翡翠餃子 3個
揚げワンタンの甘酢あんかけ 4個
五目入り揚げ餅餃子 3個
イカの蒸しもの
豚バラ肉の中華味噌蒸し
大根餅 1個
注文は、皿もの以外はどれも1個単位で注文ができる。餃子1個、大根餅1個の注文ができるのはとても嬉しいことだ。ラブリー大根餅の息子に大根餅を1個追加。だんな垂涎のニラ入り翡翠餃子に私の好物揚げ餅餃子(ハムスイコク)。蒸し物2つに揚げワンタン。ううう濃厚だ。
まずは揚げもの2品がやってきた。親指ほどの長さの随分と小ぶりな揚げ餅餃子と、こちらもやはり小さめの揚げ餃子。揚げ餃子には赤色の強い甘酢あんがかかっていて、あんの中にただよう黒い粒を見るとどうやら苺ジャムが入っている様子。ちょっと尖った味の酢が少々気になったけど揚げたてアツアツのワンタンもまたイケる。揚げ餅餃子も期待どおり美味。少なめの甘い具が餅に包まれてうっすらとカリカリに揚げられている。まだまだいけるぞー。どんどん持ってこーい。
続いて蒸し物皿が2つ。さっぱりした醤油味のイカ蒸しに、こってり甘辛口の豚バラ肉。豚バラは骨付きのやつがゴロゴロと入っている。
刻み葱がたっぷりまぶされたゲソの部分のイカ蒸しは香菜の香りも香ばしく、豚バ肉はビールがもう一度恋しくなってしまいそうな味濃いものだ。
最後の点心は翡翠餃子。鮮やかな緑色美しい皮にくるまれたニラたっぷりの肉あん。餃子や焼売はどれにも下に白菜やにんじんなどの野菜が下に敷かれていて、その細かい芸がまた嬉しい。蝦餃の下の白菜なんて、海老の旨みのつまった汁が染み込んでいてほんのり蒸篭の竹の匂いなんかもしちゃったりしてめちゃめちゃ美味しいのだ。翡翠餃子の下にはにんじんの薄切り。餃子と一緒にこれも美味しくいただいた。
つい1時間前に蓬莱の大きなぶたまんを食べてしまった所為もあり、さすがにそろそろ満腹だ。あうぅぅぅ、いつもだったらこれの倍量は食べられるはずなのに、やっぱり海外旅行を前に緊張して小食になっているのかしら(←そんなことはありません)。
シメには中華粥を1つ。そして合わせて青菜の炒めもとることにする。
青菜の醤油風味
中華粥
ほどなく小さな椀に盛られた白い粥、上には揚げたワンタンの皮が盛られている。特に他の薬味はないけれども干し貝柱の風味が濃厚に漂う塩加減も柔らかな一品だ。ああ、これなら何杯でも食べられそうだと思えてしまう。
醤油味のチンゲンサイの炒めはすっきりしたものだった。ニンニクなどが入っていることもなく、塩加減が強いこともない。アッサリアッサリした感じの炒めは中国産のものと思われるちょっと独特な風味の醤油味が絡みついて粥をひきたててくれる。
食事のシメはお粥だったけど、デザートはまた別に必要なのである。私の別腹回路は今日も絶好調だ。
揚げ胡麻団子 2個
マンゴープリン 2個
フルーツ入りアーモンドゼリー 1個
タピオカ入りメロンミルク 1個
を注文。言っておくが1人前ではなくて3人分の家族全員のものだ。それにしても数が合わないような気がするのはきっと気のせいだ。
菱形に切られた、見かけは普通の杏仁豆腐にうす緑色のメロンミルク、マンゴープリンは足つきのグラスに固められて上にエバミルクがかかったもの。おお、どれもこれも美味しそう♪
息子が取り組み始めた杏仁豆腐は、レンゲを入れるとホロホロを崩れる柔らかなもの。豆腐そのものは甘くなく、シロップは上品に透明な甘さがある。"フルーツ入り"と書かれただけあって、たっぷりのパイナップルに桃にさくらんぼ。かなりレベルが高い。
タピオカ入りココナッツミルクにメロンジュースを混ぜたようなメロンミルクもかなりイケる。ちゃんと生の果実を使ったような濃厚なメロンの匂いがほわほわと漂ってしまうココナッツミルクだ。
そしてやっぱりこれがあるなら食べなきゃいけないマンゴープリン。大阪に来てから6個目のマンゴープリンになろうかというところ、これがまたかなりのヒットだった。同じ日航ホテルでありながら東京の台場のお店よりは確実に美味しいマンゴープリン。定価はなんと1つ\1000もするらしい、気合の入ったマンゴープリンだ。
生地はふるふると柔らかでビロードのような歯ざわり。アップルマンゴーの甘さや香りが存分に漂う、ゴージャスなプリンだ。果肉はなし……と思って向かいのだんなを見ると、グラスから透けてたっぷりの果肉が入っているのが見てとれる。……あれ?
掘っていったら底から出てくるかと思って一生懸命掘ってみるものの、私のグラスからはマンゴーが出てこない。ああ、私のマンゴー、マンゴー、マンゴー。
お店の人に、
「あの……こっちには果肉がぜんぜん入っていないんです。」
と伝えると速攻新しいものを持ってきてくれた。当然果肉たっぷりのやつだ。うん、果肉も甘く美味しく、しかも異常にたっぷり入っている。これはかなり美味しい部類♪
果肉なしのやつもそれはそれで美味しいので、結局家族でマンゴープリン3個を食べることになってしまった。
いやぁ、食った食った。
また食ってしまった。
部屋に戻ると午後1時すぎ、午後3時にチェックアウトして午後5時45分発のJAL便に搭乗。
いよいよ今回の休暇のメイン会場、バリ島へ出発だ。思い残しは……なくはないけど(モダン焼き食べたかったー、とか)、これだけ大阪食を食って行ければ本望というか。
ビーフシチュー
白身魚の揚げ浸し
マカロニサラダ
野菜サラダ
ロールパン
オレンジゼリー
ジャワティー、白ワイン、日本茶
定刻から30分近く遅れての離陸。
午後7時頃の丁度夕飯時に機内食がサービスされた。和食の魚料理と洋食の肉料理が選べるということで、肉料理を選択。白ワインもつけてもらう。横を見ると、だんなも全く同じものを頼んでいた。ワインまで。
ビーフシチューに、添えものは幅広パスタににんじんのグラッセ。サラダに魚にオレンジゼリー。機内食なんて、と大して期待もしていなかったけど、思った以上にこれが旨い。多かったら残すつもりで食べ始めた機内食はあっという間に無くなってしまった。
そして息子にはチャイルドミール。
予約しておけば供される子供用の食事、一度見てみたかったのよ〜と一番気にしてるのは私なのであった。
甘そうなバナナブレッドにナポリタンスパゲッティ、鶏の唐揚げやかぼちゃのコロッケ、ポテトサラダ、パイナップルやキウイ、などなどなど。そして左上の、私たちにはオレンジゼリーが供されていたコーナーにはプリンが1個、乗っている。ホイップクリームつき、赤いチェリーも乗ったイカしたプリンだ。子供じゃなくてもちょっとどきどきしてしまう。美味しそうだ。
その美味しそうなチャイルドミール、御飯の時間には息子はぐっすり爆睡中だったのであった。
結局目がさめたのはその1時間以上もあと、機内では映画放映のサービスも始まっている頃だった。持ってきてもらったチャイルドミールを前にして、息子は幸せそうにバナナブレッドやプリンをたいらげた。……いいなぁ。
日本時間午前1時。バリの時間にして午前0時。数十分ほど遅れて飛行機はングラ・ライ空港に無事着陸した。ホテルの送迎リムジンに乗り、一路シャラトン・ラグーナ・ヌサドゥアビーチへ。ウェルカムドリンクのオレンジとストロベリーの2層になったカクテルのように綺麗な飲み物を飲み干すのも早々にシャワーを浴びて横になる。時間は午前1時半。日本時間なら午前2時半。あうー。おやすみなさい。
朝食ブッフェ
午前7時半、鳥のピチュピチュケチャケチャ言う音に目が覚め、起床。だんなと息子は爆睡中だ。
昨日はあまり疲れていたので窓の外もろくに見ないで寝てしまったが、窓の外には広いラグーンプールが広がっていた。対岸にはガゼボが見える。屋根つきの4畳くらいのあずま家にお昼寝が気持ちよさそうなマットと三角クッションが置かれている。部屋のベランダのすぐ横にはしごがついていて、すぐにプールに降りられるようになっている。そうそう、"ラグーンアクセス"という部屋をわざわざ指定して予約をしていたのだ。わーいわーい。アクセスできるぞっ
!
かくして私は一人、ベランダのテーブルに端末置いて一人で旅行記など打っているのである。
20分ほどしてだんなが起きあがってきて、皆で宿泊プランについている朝食をとりに「CAFE LAGOON」にほてほてと歩いていく。小道とラグーンが網目のように絡まったホテルは段差もあって滝になっているところもあり、歩いていてとても楽しい。吹き抜けの大きなホールのある長時間営業のカフェでバイキング式の朝食。
これがこれが、絵に描いたようなイカしたブッフェだった。卵料理は全部目の前でオーダーして作ってもらうようになっており、パンケーキやワッフルも焼かれている。たっぷりのフルーツに数え切れないほどのデニッシュ、ベーコンは普通のクタッとしたものとカリカリベーコンの2種類。バリニーズ朝食としてBUBUR AYAM(ブブル・アヤム=鶏お粥)、NASI GORENG(ナシ・ゴレン=炒め御飯)、MIE GORENG(ミー・ゴレン=焼きそば)なども用意されている。何故か御飯や味噌汁のような日本食までが完備。ジュースコーナーには「WATER MELON JUICE」なんて怪しげな文字のものも置いてある。す、すいかジュース、っすか……。
焼きたてのワッフルの匂いに魅惑されて、大皿にワッフルを。バターを添えて、カリカリベーコンとハッシュドポテトも盛り付ける。チーズやハムなどの冷菜を皿にとってテーブルへ。コップにフレッシュミルクと、噂の「WATER MELON JUICE」も持ってくる。うーふーふーふーふー♪
焼くときもバターたっぷり使ったようなワッフルはフカフカでバターの香りたっぷりですこぶる美味だ。向かいのだんなを見ると、ブブルアヤムとナシゴレンとミーゴレンの3点セットを持ってきてご満悦だ。お粥の上にはフライドオニオンや葱、ゆで卵なんかがしっかり盛り付けられている。あ、美味しそう……。
一口食べて、だんなは目をつぶってぶんぶんスプーンをふりまわしている。美味しいらしい。
「う、うまひーーーーー」
だんな、感動している。そ、そんなに美味しいか。どれどれ。
「う、うーまーひーーーー」
たかがお粥であるはずなのだが、何故か妙に美味しいブブルアヤム。私もワッフルを片付けて速攻貰いに行ってしまう。手のひらサイズのボールに葱たっぷり、フライドオニオンと揚げワンタンのようなもの、8等分にしたゆで卵に、サンバルソースもあったのでちろりとかけて持ってきた。ああ、幸せだ。
南国のブッフェだから、果物も異様な種類が置いてある。見たことないものばかりが氷の上に盛られている。SALAK(サラック)という表面が蛇皮のようないちじく形の果物は、白い果肉に強いアクのある薄甘いもの。小さなバナナ、PISANG(ピサン)にパッションフルーツMARKISA(マルキサ)、温州みかんそっくりのタンジェリン。匂いもそれぞれ強烈だ。
スイカやメロンなどと一緒に、見なれないフルーツも角切りにされたものを器に盛って、ヨーグルトかけて食ってみる。個性の強いフルーツが「俺が俺が俺が」と主張してくるけど、しかしその正体がわからないものばかり。
濃厚な朝食のあとは、部屋の前のラグーンでひとしきり遊んでみる。大人用プールは産まれて初めての息子はおおはしゃぎだ。
CHIKEN SATAY 55,000Rp
GINGER ALE 24,000Rp
「トラギアに行こう!」
といきなり燃えている一家なのである。
TRAGIAとは、各所にあるスーパーマーケット。怪しげな調味料や缶ジュースやお菓子などが現地価格で売られている。ビールなどは8,000Rp。日本円にすると90円というところだ。すばらしい。
隣接する"GALLERIA NUSADUA"というショッピングモール内にその店はある。一旦そこへ寄り、当面のお金を工面したところで周囲にあったレストランの1つに入ってみる。私は"CHIKIN SATAY"と表記されていたSATE AYAM(サテ・アヤム)を。だんなは目玉焼きの乗ったスペシャルミーゴレンを。
サテアヤムは、焼き鳥のこと。豚だったらSATE BABI(サテ・バビ)になるし牛肉だったらSATE SAPI(サテ・サピ)だ。甘いピーナッツソースをかけて食べる。
大きな皿に丸く盛られたタイ米にサテが8本、レタスとトマト、巨大なきゅうりのようなものが添えられる。きゅうりと言うより"瓜"のようなそれは直径が5cmくらいもあるものだ。大味であまり美味しいものではない。
サテ、旨かった。表面がちょっと焦げていたりして、そこのところがまた良かったりする。お米も何だか火で炊いたもののように墨の匂いがするようなものだった。バリ料理は、そんなに辛いもんじゃなくて、辛いもの嫌いなだんなもぜんぜん平気らしい。ていうかミーゴレンには魅せられてしまっているフシもある。
食後はトラギアでお買い物。
コカコーラ4,500Rp(56円)、ナシゴレンミックス5,000Rp(6.2円)、バニラビーンズ12,500Rp(156円←日本だったら700円くらいするもの)、などなどなど。思わず日本で使う用にスパイスやらサンバルソースやらを山のように買ってしまう。日清のカップヌードルのインドネシア版、なんてものもあってこれは1つ3,000Rp(38円)。笑っちゃうような値段だ。
私の大好物のマンゴスチンも売っている。「31,500Rp」(約400円)という値段に、
「1ピースでの値段ですか?」
と店員さんに聞いてみると1kgあたりの金額だという返答が。買うしか!
結局お土産ものやら色々買い込み、お会計は27万Rp。丁度3000円というところ。
ちなみにマンゴスチンは11個入っていました。1個40円以下。日本で買える冷凍ものは1個300円近くしたりするのに。ううう、幸せ……
Fire Dance Cultural Show
「230,000Rp/personでケチャとファイアーダンスショーをやるよ。ブッフェディナーつき。」
という案内をホテル内で見て、予約して出かけてみた。
プールサイドに仮設テーブルや椅子が美しくセットされて、前方に小さな舞台。私たちはその舞台のまん前に案内された。わーいわーい。
食べ物は、周囲に屋台になって用意されている。デザートの屋台にアイスクリームの屋台、スープに前菜に温菜のワゴンの数々。何だかうきうきしてくるではないかー。
食前酒代わりに"バリ・ハイ"なるビールを注文。バリの建築物のシルエットが印刷された、いかにもバリっぽいラベルのビールだ。なんでも、私たちの最愛のビール社、サン・ミゲール社が作っているようで、キリリと冷えているバリハイは後味すっきりでとても美味しい。バリの空気に良く似合う。
ダンスショーの前座で生バンド演奏が流れる中、とりあえず腹ごしらえ。
厚揚げのピーナッツソースかけの"ガド・ガド"に牛肉の辛みだれの前菜、ポテトサラダやクスクスのサラダ、前菜からして種類は豊富だ。スタッフも「スープ?」と色々とお伺いをたててくれる。前菜とスープの皿を抱えて、とりあえず着席。
すると、だんながニヤニヤしながら私に言う。
「おゆきさん。バビ・グリンがあるんですって。くふふふふ。」
BABI GULING(バビ・グリン)とは子豚の丸焼き。古くからバリにある、祭礼用の食べ物らしい。名前を聞いてからこれを食べたくて食べたくて、しかし前回の旅行では冷めたものしか食べることができずに残念だったものだ。
今、この場にバビグリンがありますかーーー。しかも食べられますかーーーー。か、感動だ!
本当に子豚の丸焼きが、温菜コーナーにはあった。こちらに顔を向けた豚さんはまだまだあどけない顔の小さなやつだ。ツヤツヤした皮がスタッフの切られて盛られている。白い肉もたっぷり♪
バビグリン担当者と思われる人に皿を渡し、入れてくださいと頼む。肉たっぷり、皮もたっぷり、ああでも皮はもう少し欲しい。
「モアスキン、プリ〜ズ♪」
と更に皮をいただいた。ちょっとピリ辛のソースを添える。
このバビグリンの乗った皿のテーマは"ナシ・チャンプル"。御飯を中央に乗せておかずを周囲に盛り合わせるというスタイルを真似して、中央に"ナシ・クミン"という名の黄色く甘い御飯をこんもりと盛りつけて、先のバビグリンと一緒に魚介のステーキやガドガド、野菜やステーキ、アヤム・ゴレン(Ayam Goreng=鶏の唐揚げ)などを盛りつけまくる。どれもほんの少し観光客用にアレンジされているらしく、匂いが強くて食べられない、というものや得体の知れないもの、というものは一切ない。若干の物足りなさを感じつつも、子供連れにはこのくらいで丁度良いのかもしれない。息子もガドガドの厚揚げにかぶりついていることだし。
パリッパリの茶褐色の皮は皮の下の脂肪がトロリと柔らかになっていて噛むとパリパリの中からじわぁと肉汁が溢れてくる。腹に香辛料を詰め込み、皮にターメリックをつけつつ焼くというだけあって、肉からもスパイシーな香りが漂ってくる。柔らかで味のある旨い肉だ。そうそうこれこれ!イメージしていた以上の味だ。ナイスバビグリン!
「スープ、どですかー?」
と日本語でスタッフに聞かれてしまい、苦笑しながら貰ってきたスープはオックステールのスープだった。細かい牛肉がぷかぷかと浮いている。それにたっぷりの野菜も。ちょっと香辛料の効いた匂いのあるスープは妙に美味しい。いけるいける。
そしてビールのあとはカクテルを1杯。「ピーニャコラーダ」ならぬ「バリコラーダ」という名のカクテルを頼んでみる。ウォッカベースかなんなのか、ちょっと苦味のある酒にパインやオレンジの果汁がたっぷり入ったカクテルだ。飲み始めたところで、ケチャが始まった。
やっぱり観光客用ということで、あまり気合の入っていないケチャ、それでも1時間程度のショーはなかなか楽しかった。テーブルから20cmくらいのところに上半身裸の男たちがうようよと座り、「チャッチャッチャッ!」なんてやられる体験はあんまりできないかもしれないしなぁ。