食欲魔人日記 01年11月 第1週
11/1 (木)
わかしのたたき丼 (夕御飯)
卵のホットサンド
カフェオレ

昨夜、卵を茹でておいた。サンドイッチ用の食パンも買ってきた。というわけで、今朝はホットサンド。
20年近く前に買ったと思われる、だんなが嫁入り(嫁入り?)道具として持ってきた1個焼きのホットサンドメーカー。それでは足りないと、数年前に買ってきた2個焼きのホットサンドメーカー。電動のそれらが我が家にはあって、一度に3個のホットサンドが焼けるようになっている。1個焼きの年代物のやつが、実は一番使い勝手が良くてお気に入り。

刻んだゆで卵をマヨネーズで和えただけのやつを、マーガリンをたっぷり塗ったパンに挟んで焼き上げる。数分待っている間にコーヒーも入って、
「ん〜、すっかりホットサンドが美味しい季節だねぇ〜」
とホットサンドの季節を有り難く噛みしめながら食したのだった。今日はお仕事。

い和多の日替わり弁当
ほうじ茶

今日は仕事が忙しそうな予感がしたので、大学に向かう途中の蕎麦屋でお気に入りの弁当を買っていくことにした。おかずもしっかり詰まっていて、もしかしたら学食よりお値打ちかもしれない弁当だ。その蕎麦屋と弁当屋が同じ母体になっており、弁当が届けられると蕎麦屋の店頭の黒板に献立が記される。今日は
 エビチリ春巻・海鮮焼売
 キャベツと鶏肉の甘酢炒め
 すけそう鱈の胡麻揚げ
 豚しゃぶしゃぶ
 かに玉・隠元胡麻よごし
 デザート付
となっている。今日は中華な弁当であるらしい。時々チキンライス弁当などもあって嬉しい驚きもあったりする弁当は、御飯のパックが別について560円。正直言って、ありがたい。

この4月から、私は友人の後任という形で大学教授の私設秘書をやっている。週に2度勤務、接待や営業の必要は全くないし、それどころかお茶汲みの必要すらない(教授は「あ、いいです、そういうことは自分でやれます、はい……」とせかせかと自分で汲んでしまうのだ)という気軽すぎる仕事だ。学生と変わらない格好でふらふらと行ってしまう。

今日の教授も忙しそうだった。11時半過ぎにふらっと研究室に戻ってきたかと思うと
「今○○大学の○○教授がいらしてて、私が対応する担当なんですね……」
と机の上の書類を漁り、
「で、ホテルの手配とかもしなきゃいけないんです……」
と今度は何やら封筒を探し始め
「いえ、なんといっても大学の教室の手配が一番めんどくさくて……」
と最後の声はフェードアウトしながら部屋を退出しかけた。直後に踵を返し、
「あ、ペン、そう、ペンを忘れました!」
とパソコンデスクの前に赤ペンをしっかと握って、そのまませかせかと出ていってしまった。
教授……今のは仕事の指示でしょうか、それともただの愚痴だったんでしょうか……。

さっきの話はなんだったのだろう、と少々不安に思いつつお弁当を食す。
おかずのパックを開けると、隅っこにオレンジゼリーのパックがスプーンと共に入っていてちょっと嬉しかった。どれもいかにも大量に作っているような、給食っぽい味がする。蟹肉っぽいヒラヒラが入った焼売だとか、ほのかにケチャップの味が感じられる甘酢炒め、鱈も柔らかくて脂が乗ってて冷めても美味しかった。卵焼きのように固く作られた「かに玉」も、いかにも弁当おかずという感じ。どれも冷めてもそれなりに美味しく食べられるように、色々工夫されているのであった。すっかり虜。

わかしの刺身
わかしの葱生姜たたき
豆腐と油揚げの味噌汁
羽釜御飯
よなよなエール、アイスウーロン茶

最近何かと買い物をしているクック&ダインの鮮魚セット、日替わりで色々な魚が2000円弱でセットにされているのだけれど、昨日は30cmの金目鯛と38cmのわかし(←ブリの幼魚、関西では「わかし」ではなく「つばす」と呼ぶ……らしい)がセットで1480円だった。魚屋で買うよりも安いのが泳いでいた翌日に食卓にのぼるとなるといてもたってもいられなくなり、
「明日は仕事だけど、午後7時以降の指定で届けてください〜」
とお願いしたのだった。

午後8時前に届いた魚を待ちわびたようにその直後だんなも帰ってきて、やいのやいのと出刃包丁振り回しつつ魚の解体ショー。40cm弱の魚ともなると背骨も頑丈だし小骨もぶっといし、色々と大変だ。最近は私ばかりが魚をさばいているので、「君もやってみなよ」とだんなにわかしの解体をお任せしてみることにした。出刃包丁を構えつつ、
「綺麗におろせないよー」
「皮が取れないよー」
と泣きそうになりつつ、なんとか巨大な魚を3枚におろす。私が刺身にしている間、だんなは中骨や皮に残った身をスプーンで丁寧にこそげてたたきにしていた。山盛りの葱とたっぷりめの生姜も細かく刻んで混ぜ合わせてテーブルへ。あとは味噌汁と羽釜で炊いた御飯だけというシンプル極まりない夕食だったけど、食べることができたのは午後9時を回っていた。

お供には、昨日届いたよなよなエール。オレンジ色の缶のデザインがイカしている、長野の地ビールだ。柑橘系の匂いのするちょっとクセのある味だけど、はまる人ははまるらしい。私とだんなははまった。M井さんは「わたくしは、ちょっと苦手です……」と言っていたけど。久しく飲んでなかったので、先日1ケース注文してみたのだった。魚介料理や鍋にすごく合うと思う。

「久しぶりのよなよなエールにかんぱ〜い」
「頑張っておろした、わかしにかんぱ〜い」
といつもは2人で1缶のビールを2缶飲んでしまい、山盛りのわかしの刺身にかぶりつく。「体積比から言って、お前は大人の1/5くらいの量でいいはずじゃないか?」というサイズの息子も、「おさかなー、おさかなー」とえらい勢いで刺身を食べている。ちょっと待て、お前それ、10切れ以上喰ってんじゃないか、もう止めろ、などと言いつつ38cmのわかしが、あっというまに消え去った。

で、御飯にはたたき。葱と生姜を混ぜ込んだたたきには味はつけておらず、
「胡麻油垂らしたら美味しいんじゃないかなぁ……」
と胡麻油をテーブルに出し、ついでに
「もしかして、醤油じゃなくて岩塩削って混ぜたりなんかしたら超美味しいんじゃないかなぁ……」
と岩塩もテーブルに出したら、だんなの顔が輝いた。「やだなぁ、そんな旨そうなこと言って、もぅ〜」と胡麻油を垂らし、ちょっと強めに塩をふり、たたきに軽くなじませてから御飯に乗せて食べるや否や、バンバンとテーブルをたたきだした。……美味しいらしい。
「これは……美味しいとか不味いとかってレベルじゃないよ……"すごい"」
と、そんなに美味しいものであるらしい。

私もやってみた。たたきと胡麻油、塩を混ぜ合わせて御飯に山盛り。岩塩独特のショリッとした歯触りの塩加減と、胡麻油の香り、新鮮なピチピチの魚の身に生姜の風味。醤油を混ぜた時のような水っぽさがなくて、危険なほどに美味しかった。これは確かに……ヤバい。
「ヤバイよヤバイよ、止まらないよ」
「腹一杯なのにお代わりしちゃうよ」
と、今日も御飯3合が空になってしまうのであった。

〜 おそろしく簡単なわかしのたたき丼 〜
  1. わかしでもブリでも、鯵でも、そういう味の魚の身を細かく細かくたたく。
  2. たっぷりの刻み葱と、心持ち多めの刻み生姜をそれに混ぜこむ。
  3. 胡麻油ひとたらしと、塩を"そのまま食べるに美味しいよりは、ちょいしょっぱめ"に混ぜ合わせる。
  4. 御飯に乗せて、がふがふといく。
ただひとつ重要なのは、魚も御飯も塩も美味しいものの方が何よりだけど、胡麻油だけはへんこ山田のものを使わなければならないこと。この油さえあれば、食べ物の味が5割増しに美味しく思えちゃったりなんかして(いやもうマジにマジに)。

つい先日は日本橋高島屋の京都フェアに出店し、喜び勇んで買いに行っただんながちゃっかり名刺交換までして
「ずっとずっと東京に来るの待ってたんですよ〜!」
と言ったらお店の人に大喜びされておまけをたっぷりゲットしてきた……らしい。11/6までは名古屋の丸栄の催し物場に、それ以降は静岡、姫路あたりにも行くとか行かないとか。お近くの方は、ぜひぜひ胡麻油とラー油を買ってきてみておくんなまし。いや、別にお店の回し者じゃないんだけど……あまりに旨すぎて……。

11/2 (金)
金目鯛のアクアパッツァ (夕御飯)
チキンクリームシチュー
チーズ海苔バタートースト
アイスカフェオレ

昨夜は、夜9時を過ぎての夕飯で、刺身がすこぶる美味しくて、久しぶりに飲んだ「よなよなエール」も染み渡るほど美味しくて、結局腹一杯頭もぐにゃぐにゃという体たらくになってしまった私たちは夜10時半に寝てしまったのだった。この日記の更新どころか、風呂にも入らなかった。

そういうわけで、今朝は朝6時半に目覚ましをかける。風呂の準備をして、家族全員順次朝風呂。曇りガラスの向こうに青空が見える風呂というのは何とも気分が良くて、みんな頭から湯気を出しているような風呂あがりにて朝御飯。
残りもののシチューを温め、薄切りパンをトーストにする。だんなはバタートーストに焼き海苔1枚べろんと乗せた海苔トースト(これって妙に美味しいのだ……)。私は更に海苔とパンの間にとろけるチーズを仕込んで「チーズ海苔バタートースト」。これも微妙〜に漂う美味しさがどことなく切なくて私は大好き。

おばあちゃんのお赤飯
かまぼこ
アイスウーロン茶

ここ1週間ほど、出勤日でない日も家で仕事しまくっている今日この頃。
数日前に義妹に「いそがしいのー」と泣き言を垂れたところ、
「おねぇちゃんおねぇちゃん、忙しいんでしょ?お昼御飯に食べられるように、お赤飯持っていくねー。おばあちゃん家から送られてきたんだー」
と嬉しい電話が本日午前11時45分に入った。あ、ありがとう妹よ。ありがとうおばあちゃん。
明日はおばあちゃん(←だんなのお母さんのお母さん)の誕生日だ。その直前にお赤飯を送ってくるとは、「遊びにおいで」のメッセージ以外の何物でもなく、なんだか微笑ましい。ああ、でも明日も多分仕事が……だんなと息子の2人に御機嫌伺いに行っていただこう。

そして私は一人、おばあちゃん手製赤飯を昼御飯にもっきゅもっきゅと食べる。和菓子が入っていたような紙箱には御飯茶碗に3杯分ほどのお赤飯が入っていた。最近のおばあちゃんの中では小豆を甘く炊くのがマイブームであるらしい。前回もほのあまい小豆のお赤飯を御馳走になったけれど、今日のもほんのり甘かった。ぱっつんぱっつんのころりとした小豆がツヤツヤと紅色の御飯の中で光っている。甘いお赤飯も悪くないけど、ごま塩とちょっとばかり相性が悪いのがちょっと悲しいところだ。

おかずは、何故かかまぼこ。
「これねー、これねー、家にあったからお母さんが持っていけってー」
と赤飯と共に義妹が差し出したのは1袋のかまぼこだった。お、おかずのつもりかなぁ……と苦笑しつつ、本当におかずとして喰ってみた。

金目鯛のアクアパッツァ
茄子とパプリカのオリーブ油炒め
ルッコラとパプリカのサラダ
ポタージュスープもどき
羽釜御飯
よなよなエール、アイスウーロン茶

昨日届いたお魚のうち、「わかし」は昨日のうちに食べてしまった。今日は残りの「金目鯛」を使ってアクアパッツァにしてみることにする。本来は漁師が海の上で保存食であるところのオリーブやらケッパーやらアンチョビやらドライトマトやらをつかって海水で魚を煮立てて食べていた漁師料理だということだ。店名に料理名「アクアパッツァ」を掲げて名物料理に仕立て上げた日高良実さんの作り方が、日本では一番メジャーのような気がする。

イタリアでは、本当は魚をこんがり焼き付けたりはしないのだそうである。でも、日本人は「こんがり」が大好きなのでこんがり焼く。色々日本人向けにアレンジされた作り方であるらしい。
フライパンをカンカンに熱して、塩を多めにふった金目鯛をじゅうと焼く。裏返して両面こんがりと。皮が剥けて取れちゃったりするけど、細かいことは気にしないことにする。なんとなくこんがり焼けたら、アサリをぶわっと大量投入。続いて水ハネに注意しつつ100ccほどの水もジャーッと投入。水が煮立ったところでオリーブとかケッパーとかみじん切りアンチョビとか自家製ドライトマト(←半割にしたプチトマトをオーブンで1時間ほど焼いて、ついでに1日ほど外に出して乾燥させたらできあがり)を放り込み、じゅわじゅわと沸騰するスープをおたまですくっては魚にかけて熱していく。適当に火が通ったら、魚の上にパパパパパとエキストラヴァージンオリーブ油でもかけてイタリアンパセリを散らしたらできあがりだ。イタリアンパセリはベランダでもりもり育ってるやつをちぎってきた。

フライパンの中は、またえらく豪快なことになっている。お店で食べるともうちょっとお上品な見栄えになっているんだけど……気にしない。
ナイフとスプーンでわしわしと身を取って、スープやその他の具と一緒に皿にどっかと乗せて食べていく。
残りもの野菜のサラダとか炒めものとか、ついでに残りシチューは具を潰してしまって牛乳たっぷり入れて薄めに伸ばし、塩を加えてポタージュスープのように加工してみた。イタリアンな夕食だけど、パスタでもリゾットでもパンでもなくて羽釜御飯。家で食べるアクアパッツァには御飯が欠かせない。

ほろっと柔らかく煮くずれるような金目鯛の身と、アサリやらオリーブやらの色々な旨味を吸い込んですっかり複雑な味になった塩気のあるスープがなんとも良い感じ。パセリよりツーンとした香りの強いイタリアンパセリもさっぱりしていて良い感じ。アサリもドライトマトもこれでもかと投入されていて、味そのものはリストランテで食べるほうがやっぱり何倍も美味しかったりするんだけど家でがちゃがちゃと盛大に食べるのもそれはそれで最高に美味しいものだ。

大体の身を食べたところで行うのは、「アクアパッツァ丼」。白い御飯にスープや魚やアサリなどをぶっかけて食べてしまうのだ。甘酸っぱいドライトマトの味なんかが御飯に合うのか不安になるところではあるけど、これがなかなかどうして御飯に似合う。当初はお上品に、皿に残った汁に御飯を浸して隠れるようにして食べていたけど、最近は魚の身やアサリなどを御飯の上にトッピングまでして堂々と食べるようになってしまった。お店じゃ絶対不可能な、至高の逸品「アクアパッツァ丼」。ま……見かけはあんまりよろしくないんですけれども……。

11/3 (土)
R1/Fの秋刀魚のサラダ (夕御飯)
おむすび
いぶりがっこ
ほうじ茶

今日は、だんなのおばあちゃんの誕生日だ。義妹から、「皆で御機嫌伺いに行こうよー」と誘われていたけど、私は片付けなきゃいけない仕事があったりなんかして、だんなと息子に行ってもらうことにした。
おばあちゃん家では大量の御馳走が今日も待っているに違いなく、バナナと牛乳だけを食した彼らは午前10時に出発していった。雨の日の肌寒い我が家に私一人。

洗濯物を干した後、昨夜残り御飯でだんなが作ってくれていたおむすび2個を囓る。薄ら寒いのでほうじ茶入れて、塩味がついただけの具抜きおむすびをわしわしと食べた。なんかお弁当でも食ってる気分だ。

ダブルチーズトースト
チキンクリームポタージュ
アイスカフェオレ

忙しい忙しいと言いつつ、昨日こともあろうに古本屋で『うしおととら』全34巻を買ってきてしまった愚か者の私(←一昨日中華定食屋で1巻読み始めたら止まらなくなっちゃって……)。昨日の夜は仕事などほとんどてにつかず、7巻ほど読み終えたところで今日も全34巻が「読め〜、わしらを読め〜」と訴えてくる。

で、結局、おばあちゃん家に行かずに一人家に残った甲斐もなく、午前中はずーっと漫画を読みふけってしまった。阿呆だ。
これではいかんと昼12時、チキンクリームシチューの最終形態「チキンクリームポタージュ」(具をつぶして牛乳で薄めて塩ふっただけ……)を啜りつつチーズトーストを作って食べて気分転換。誰も見てない日の御飯は微妙な無茶をしたくなるもので、今日は、本来1枚乗せるところのとろけるチーズを豪華に2枚乗せてみた。

いつも常々思ってるんだけど、チーズトーストを作るときに食パンにあの正方形のとろけるチーズを乗せた時、周囲のチーズ無しの空白がなんとも寂しいのである。やはりチーズトーストを作るならば、パンの周囲からチーズが落っこちてしまうほどの大量なチーズが嬉しい。
で、1枚のチーズを食パンの左下の角に合わせて配置させ、上部と右部に余った空白に更に1枚のチーズをちぎりつつみっしりと並べてみた。
「うへへ、チーズ、みっしり……」
と一人呟いてトースターへ。

溢れんばかりのチーズが乗ったトーストは「これだ!」という感じがした。
いつも2枚乗せて焼きたいところだけど、いつもは2枚乗せちゃいかんのだ。2枚乗せた時の悦びが半減しちゃうから。

R1/Fの
 海老とブロッコリーのサラダ
 秋刀魚のサラダ
崎陽軒の
 シウマイ・特選シウマイ
羽釜御飯
いぶりがっこ
胡麻おかかふりかけ
モルツ、アイスウーロン茶
ラ・フランス
ほうじ茶

午後7時ちょい前になって、二人が帰ってきた。
「雨で買い物行けなくてー(←行きたくなくてー)」
と電話で言っていたところ、崎陽軒の「シウマイ」を買ってきてくれた。崎陽軒は「焼売」ではなく「シウマイ」と書くのが正式であるらしい。だんなが得意気にそう言っていた。
ついでにサラダも2パック。

「……味噌汁、作る?」
「……いや、ビールでサラダ喰って、焼売と御飯でよろしーんじゃないですか?」
と、用意したものは御飯だけという大変に手軽な夕食になった。

ころんころんと小さく可愛い崎陽軒の焼売は嫌いじゃない。高校時代、母が毎日作ってくれていたお弁当のおかずにしょっちゅう入っていたから「思い出の味」という感じもする。むちっとした歯ごたえが少しも昔と変わらない。ヒョウタン型のキュートな醤油入れも相変わらずだった。
スタンダードな「シウマイ」と、6個入りの小ぶりの箱は「特選シウマイ」。こちらは大きさが2倍ほどある巨大なやつだった。味がわかるとは思えないのに、息子は「そっち!そっち、ちょうだい!」と巨大な方の「特選」を1つ2つとがつがつ食べていく。あ、そんなに喰うな、コラ。

買ってきてくれたサラダは、だんなが「これが一番好き!」とおっしゃる海老とブロッコリーのタルタルソース和えのサラダ。もうひとつ、揚げた秋刀魚にたっぷりの水菜が入った秋刀魚のサラダ。醤油味の大根ドレッシングがついてくる。ちょっとばかりトゲトゲした舌触りの、シャキシャキと張りのある水菜が油っこい秋刀魚と良く似合っていた。ビールに良く合う。

炊けた羽釜の御飯に沢庵添えてふりかけも出して、最後はがふがふと白い御飯を堪能して今日の夕食はおしまい。
食後はまた、『うしおととら』を読み進む(←ダメじゃん……)。

11/4 (日)
鶏団子鍋 (夕御飯)
資生堂パーラーのカレーパン
塩おむすび
牛乳

「こんなのみっけた」
と、昨夜だんなが買ってきてくれたものの1つに資生堂パーラーのカレーパンがあった。紙コップの中に、親指と人差し指で円を作ったくらいの小さなサイズのカレーパンがころんころんと5個入っている。本当は買ったその場で持ち歩いて食べる用に作られているような感じだ。電子レンジでチンして、皆でつまんで喰ってみることにした。
「カレーパンのカレーは御飯に合うしね」
とめっちゃめちゃな理論でおむすびも1人1個。

「カレーパンにお茶、って感じじゃないし」
「おむすびにカフェオレってのも相当ヘンだし」
「そうだ、牛乳にしよう」
「おぉ、牛乳なら違和感ないなっ」
と違和感ありまくりの会話を繰り広げてお供は牛乳。

細かい細かいパン粉の衣で揚げられたらしい小さなカレーパンは、細かい具入りのねっとりとしたカレーが辛くもなく甘すぎもなくて良い感じ。町で買って歩き食いするには、ちょいと手がベタベタになりそうだし5個喰ったら腹も膨れそうだし、「……流行るかなぁ」「……んー、なんとも……」という感想ではあったけど。(でもHanakoとかには載っちゃうのね、きっと……)

稲毛 東魁楼にて
 棒棒鶏涼麺

同じ市内の地酒屋さんに「菊姫大吟醸酒粕」が入荷したらしい。
酒粕は、我が家において超重要なアイテムだ。冬の到来は「味噌練り」と共に始まる。その「味噌練り」に必要なのが酒粕なのだった。スーパーで買えるような板状のものはあまりよろしくなく、ムースのようにふわっとしていて米の香りがふわんと漂ってくるような大吟醸酒の酒粕がやっぱり美味しくできるのだ。この酒粕が、毎年やっぱり10月も末くらいにならないと出てこない。酒の仕込みの行程が毎年変動するはずもなく、この時期になると私たちはじりじりとして酒粕が販売されるのを待っているのだった。特にだんなが。

で、とうとうその酒屋さんから「入荷しましたー」との連絡を受け、だんなは本日自転車をかっとばして酒粕を買いに行ってしまった。
私と息子は「じゃ、今晩のおかずの材料でも買ってこようかねー」と二人でスーパーに買い物に。白菜や鶏肉、三つ葉なんかを買ってきた。今日は鶏団子鍋だ。半個の白菜や1本の大根、8個入り玉ねぎなどを買ってしまったら、自転車の籠に余裕がなくなった。昼飯の材料などは持って帰れそうにない。

私たちより30分ほど遅れて帰宅しただんなと一緒に、
「じゃ、シバでも行こうか〜」
と近所のカレー屋さんに行くことにした。時間は午後2時。さすがに空いているかと行ってみたら、10人以上の行列ができていた。こんなローカルな地にあるのに、カレーの本やら雑誌の特集やらにやたらと掲載されるようで今日も大繁盛だ。

「……やめよ」
と、「焼きそばが食べたい気分〜」というだんなに連れられて駅ビル内の中華料理店に方向転換。なんでもだんなは学生の頃から、そこの青椒肉絲麺を良く喰っていたらしい。
「美味しいというほど美味しいわけじゃないけど、普通に美味しい……ていうか、不味くないところ」
とはだんなの評で、確かにそんな感じの店だった。口当たりが冷たいものが食べたくて注文した「棒棒鶏涼麺」は酸味のある普通の冷やし中華のタレに麺ときゅうり、きくらげ、蒸し鶏が盛りつけられていて、別添の胡麻だれをぶっかけて食べるようになっている。ねっとりと舌の根に絡むような胡麻だれはほの甘くて、酸味のある下のスープに溶けていくとまた全体がちょっと違う味になって悪くない。自家製らしい杏仁豆腐もついてきた。

帰宅後だんなは、エプロンつけて早速「味噌練り」を始めた。酒粕を始め、仙台味噌や練り胡麻、醤油日本酒などなど合わせてじっくりとろ火で練っていく。ケチャップほどの濃度になるまでじっくりじっくり、当初は「トットロットットーロッ♪」などと鼻歌を歌っていただんなも、だんだん静かになってきた。
「なんかね、"無"というか"空"なキモチ……」
とか言っている。いや、ていうか君の場合は「喰う」な気持ちじゃないかと……。

鶏団子鍋(鶏団子・白菜・大根・人参・椎茸・三つ葉)
羽釜御飯
日本酒:98年山廃純米 黒帯

先ほどの「味噌練り」で、だんなは今日地酒屋で買ってきた「1998年山廃純米 黒帯」なる金沢の酒を使っちまったのである。
「……開けちゃったし、今晩鍋でいっぱいやりますか」
「……じゃあ、風呂も入って"あとは寝るだけ"の体制で腰据えて飲みますか♪」
と、日曜の夜だというのにすっかり「飲み」モードに入っている私たちだった。

土鍋に水張って昆布だけ入れておき、塊で買ってきた鶏もも肉はフードプロセッサーにかけミンチにして刻み葱や刻み生姜、塩と胡椒を混ぜ込んで練る。ねっちもっちねっちもっちとかき混ぜた後は、沸騰した土鍋の湯にスプーン2本を駆使してぽちゃんぽちゃんと落としていくのみ。野菜も放り込んでガーッと煮込んだ後は柚子絞ったり醤油垂らしたりしつつアツアツのところをハフハフ言いながら食べる。ああ冬だ、ああ鍋だ。幸せな季節だ。

用意した鶏肉は、実は800gもあった。鶏もも肉3枚パック612g也をスーパーの肉コーナーで手に取り、
「……最近息子も大喰いだしなぁ……」
と思わずもう1パック買ってきてしまったのだ。鶏肉4枚分をギャギャギャギャを粉砕して作った肉団子はそれはそれは大量で、息子も私もだんなも寄ってたかって食すこととなってしまった。

で、「黒帯」。ごっっっつぅ旨い酒だった。第一印象は水のようで、喉を落ちるまで香りも味もそれほど感じられないのに喉を滑った途端にぐわっと口から喉から鼻まで濃厚な酒の香りが広がっていく。後味もやたらとすっきりしていて、いくら飲んでも悪酔いはしそうにないような味がした。食べものが美味しく食べられる日本酒だ。なんでも「黒帯」が、「日本酒って、旨いんだ!」とだんなを開眼させた酒だたのであるらしい。「思い出の酒」というものなのかもしれない。

「旨いっす、旨いっす〜」
「美味しいね、美味しいね」
と鍋と共に酒も盛大に進んじゃったりなんかして、食後1時間私も夫もふにゃふにゃになって動けなかったりした。はっきり言って、べろんべろん。