牛乳 wtih ピーチ味ミルメーク
今日は休日、お休みの日。ぐーたら寝ていても良いはずだったのだけど、どういうわけか7時半に目が覚めた。顔洗って、燃えるゴミを出しに行き、ぼへーっとしていたらだんなも起き出してきた。
「ビスケット1枚あったらあったら♪」
なんか歌っている。
「ジョリィにやらずに、俺食べる♪」
なんか違う歌詞になっている。
「ねぇ、おゆきさーん。"名犬ジョリィ"のあらすじって、どんなだっけ?」
唐突に話題がこちらに振られた。素直に答える私。
「ジョリィとー、飼い主の少年が冬の日に大聖堂に行ってー。死ぬ」
「……ちがう、それ、パトラッシュだから。フランダースの犬だから」
朝から今日も仲睦まじい私たち。
息子が起きてくるのを待たずに朝御飯食べちゃおうかね、と、食パンをトーストに。海苔バタートーストが久しぶりに食べたいね、とトーストしたパンにバターを塗り、それが溶けてきたところで焼き海苔1枚ぺろりと乗せてかぶりつく。たった焼き海苔1枚乗せただけのトーストだけど、これが妙に美味しくて好き。
「飲み物……」
「コーヒー淹れるのめんどくさいね」
「牛乳でいいやー」
と飲み始めたところでミルメークの存在を思い出して私はピーチ味、だんなはコーヒー味のそれをさらさらと牛乳にかき混ぜていただいた。小学生の給食の友だったミルメーク(でも私は子供の頃、給食でそれに出会えたことはなかった……)、ここ数年ですっかり市民権を獲得したようで、近所のスーパーでもコーヒー味とイチゴ味が売られるようになった。100円ショップでも個数少なめのそれが売られていて、かなりシアワセ。
麦茶
明日から4泊5日の台湾旅行。
「薬の容器が欲しいなぁ……消化薬、持ってくでしょ?」
「あとね、着替えを入れる袋も、ロクなのないから欲しいなぁ。100円ショップにあるかな」
と、近所のスーパーにさらりとお買い物に。
「塩、塩もいるよ。家にあるのはイタリアの粗塩とか岩塩とか、そこそこ良いものばっかりでもったいない」
「悪霊退散の塩に品質は関係ないんじゃない?専売公社ので充分だよ」
「イタリアの塩は台湾の幽霊に効かないとか、日本の幽霊には"伯方の塩"が極めて有効とか、そういうのないかなぁ……」
「ないでしょう」
くだらない事を言いつつ、塩も購入。アメリカのボロモーテルで、「これは絶対自分たち以外に何か(しかもすごく悪い感じのするモノ)がいる」という恐怖の一晩を体験してから、何が見えたわけでも見えるわけでもないけれど旅行に塩は必需なものとなっている。気休めかもしれないけど、「悪霊退散!」と投げつけられる武器があるのは、それだけでも心強いというか。ふた握り分ほどの塩をきっちりジップロックに詰めてバッグの底に入れておいた。空港のチェックで何か言われたら「塩です。ゴーストバスターに使用するのです」と胸張って答えよう……。
あまりの暑さにアイスクリームも買ってきて、買い物から帰ったところで1人1個のアイスクリーム。息子はピノ、だんなはバニラアイス、私は大好物の「カルピスウォーター ボトルアイス」。私はもうもう、このカルピスアイスが大好きで大好きで、この夏何個食べたかわからないほど好きなのだった。氷の粒が適度に細かく適度に大きく、シャリシャリした食感がたまらなく好み。
昼御飯は、先週末から材料は揃っていたけど食べていなかったラーメンを。麺とスープと具がバラバラに小分けされていたものを、適当にだんなが買ってきてくれたものだった。とんこつスープに、煮卵にチャーシュー。メンマやコーンまである。炒めたもやしをトッピングして、全員汗まみれになりながらちゅるちゅると食べた。インスタントとしては、まぁこんなものかなー、という普通の味。本格的なコラーゲンきときとのとんこつラーメンを福岡あたりで食べたいなぁ。
レタスと玉ねぎときゅうりとパプリカのサラダ
羽釜御飯
いぶりがっこ
ビール・麦茶
梨
明日から旅行ということで、
「やはり最後には醤油及び味醂味のものを食べておかなければ、日本人として」
という気分が盛り上がり、本日の夕食メインディッシュは「肉豆腐」。下手に食材を買ってしまっても一人で留守番の母があれこれ調理して使うとはあまり思えなかったので(母はパンと美味しいハムとサラダがあれば満足できる人……)、あるものを適当に片づけることにした。肉は、一昨日お肉屋さんで買ってきた、美味しそうな切り落とし和牛。玉ねぎを炒めたフライパンの中央に肉を置き、醤油と味醂と砂糖を肉めがけて放り込んでこってりくつくつ肉に火を通してから水と豆腐を入れて煮込んでいった。小林カツ代さんの本で見てからその作り方にするようになった、肉じゃがの作り方と全く同じ。サラダの材料も冷蔵庫に揃っていたので、レタスと玉ねぎときゅうりとパプリカをざくざく刻んでサラダにした。その時にあるもので、セロリを入れたり人参を入れたりもするけれど、レタスと玉ねぎときゅうりが最低限揃っていないと、我が家のサラダは今ひとつ物足りない。
こってり濃いめの味の肉豆腐と、生野菜だらけのサラダ。炊きたて御飯に漬物に、ビール。あまりに暑くて味噌汁はなし。けっこう地味な光景な夕飯だったのだけど、夕食直前にタイガースの優勝が決定し、だんな(年期の入った阪神ファン)と母(年期の入ったアンチ巨人)は大喜び。夕食の途中にちらちらと胴上げのシーンなど見に移動したりしながら、えらく浮ついた雰囲気の夕食となった。
「あしたは飛行機に乗る前に、デイリースポーツを買っていこう……いや、日刊スポーツもだな」
旅行中に優勝が決まったんじゃなくて、良かったねぇ、だんな。阪神の次の優勝は、俺が死ぬのが先か、ハレー彗星来るのが先か、なんて言ってたもんねぇ……(やっとこれで少しは静かになるかしら)。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
アイスカフェオレ
今日から4泊5日の台湾旅行。飛行機は午前中の便なので、7時過ぎには家を出なければならない。何も腹の中に入れないわけにもいかないので、1枚の厚切り食パンを半分に切ったものをトーストして1人1枚食べていくことにした。バター多めに塗ってトーストしたところに、はちみつを軽くとろりとかける。濃いめに淹れたコーヒーで頭をしゃっきりとさせつつ、洗面道具類の最後の荷造りも終えて、いよいよ出発だ。
牛肉のすき焼き風 御飯添え
パストラミ、ソフトサラミ、チーズ
ポテトサラダ
冷しきつねうどん
オニオンサラダ
きな粉のケーキと抹茶葛団子
ビール・日本茶
今回の旅行は、「年末失効するマイレージが1万マイル以上もあってもったいないからどっか行こう」ということで決まったものだった。使えるマイルをかき集めると近場のアジアエリアに親子3人が行ける程度で、香港はどうだ沖縄はどうだなどといろいろ考えた結果の「初めての台湾行き」だった。乗る便はJAA。必死に通じない英語で「ジンジャー、エール、ぷりーず」とか言わなくてもほしいものが飲み食いできる楽しさを満喫しつつ、調子に乗って食前にビールなど飲んでしまったり。
機内食は普通にそこそこ美味しく食べられるものだったけれど、見逃せないのは息子用に頼んだチャイルドミール。オムライスにフライドポテト、にんじんのグラッセに、ウサギ型に作られたポテトサラダ。やけに美味しいミルクババロアとフルーツの盛り合わせと、うさぎ模様のメロンパン。しかも小袋入りの「きのこの山」つき。
「……あ、それ、いいなー」
「僕もそっちがいいなー」
とだんなと私で左右から覗き込んで羨ましがっていたのだった。チャイルドミールは、いつもなんだか美味しそう。
超級芒果牛[女乃][包リ]冰 130元
台湾時間(日本との時差は1時間。台湾が12時なら日本は13時)でお昼12時過ぎに到着するはずだった便は30分ほど遅れて着陸し、しかも入国手続きにやけに時間を取られて空港の外に出たのは13時半を過ぎていた。バスに乗って台北市内を目指すと、もう14時をまわっていてチェックインタイム。速やかに予定のホテルにチェックインし、早速町にくり出すことにした。
「……なんかおなか、すいちゃったね」
「機内食、こっちの時間で10時頃食べたことになってるし」
「さっそく小龍包とか食べに行っちゃおうか」
と、ホテル前でタクシーを捕まえて「ディンタイフォンに行ってくださいー」と地図を見せてお願いする。手にした資料によると、夜の営業は4時半からだということだったのでまだ1時間半ほども時間がある。近隣には気になるお茶屋さんや甘味屋さんもあったので、適当に時間はつぶせると思われた。
で、予想とおり、2軒目に入ったプーアル茶専門のお茶屋さん「沁園」でお店のおっちゃんにプーアル茶を何杯も何杯も淹れていただきつつ、のんびりお買い物。お店のロゴが底に小さく入った茶杯が非常に好みな質感のものだったので、早速お買い物に励み、続いて「マンゴーかき氷」で有名な「冰館」というお店に。店頭には何枚かの写真入りメニューが飾られ、「超級芒果牛[女乃][包リ]冰」「人気商品」なんて文字の下にはしっかりと「マンゴーかき氷練乳がけスペシャル」という日本語も添えられている。スペシャルだよスペシャル。やっぱりここ来たらスペシャル食べなきゃダメだよ、とよくわからないまま力説し、3人で1皿のマンゴーかき氷を食べることにした(このあと山盛りの小龍包が控えてると思うと控えめにしなければと思い)。お店の人も、3人で1皿のかき氷注文ということで、大きな皿に盛られたそれに3本の巨大なスプーンを刺して出してくれた。
写真で見たことがあるし、「美味しい!」という噂も聞いていたけれど、目の前に出されたものは本当にすごいブツだった。お店のロゴ入りの皿(シチュー皿というかカレー皿というか)に、こんもりと山形にかき氷。練乳がかかっているのか氷の中に埋もれているのか、それは定かではなく、ただただ氷の上からはたっぷりとマンゴーの生の果実の果肉とソースとマンゴーシャーベットがどっかんどっかん乗せられていた。一面マンゴー色で、屋外のお店のテーブルの板もオレンジ色なものだから、目がチカチカしてくる。かなりの迫力だ。
うっひゃー、ひえー、どっしぇー、などと雄叫びをあげつつ、自分の分のスプーンを死守しながら3方向からマンゴー氷りを攻めていった。甘く柔らかなマンゴー果肉はこれ以上なく美味しいし、ちょっと繊維質が感じられるシャーベットもマンゴーを凍らせたような自然な味。ねっとりした甘さのマンゴーで口の中が充満していくその中にはシャリシャリの練乳風味のかき氷。
台湾には、一部の飲茶店以外ではほとんど「マンゴープリン」というブツにはお目にかかれないものだと聞いていた。マンゴープリンよりは、マンゴーかき氷とかマンゴーミルクとかいうのがメジャーらしいと。確かにこの蒸し暑い中(今日の気温は33℃)、ミルクたっぷりのプリンをプルプルいわせながら食べるよりは、かき氷とかがぶ飲みできるシェイクの類が美味しく感じられるし現実的なのかもなぁ、とマンゴーかき氷を味わって思い知った。あああ、美味しいよマンゴーかき氷。1人1杯余裕でいけそうだよ、と「お代わり」に後ろ髪ひかれつつ、次はそこから徒歩2分の小龍包屋さんへ。
蛋炒飯 50元
小龍包 170元×3
ビール 100元×2
日本にも新宿高島屋などに支店があって大人気の小龍包の店、それが「鼎泰豐」(ディンタイフォン)。台湾が本店のこの店だけれど、他にも小龍包を名物とする店はあちこちにあるらしく、ここが旨いあそこが旨いと大変なことになっているらしい。ともかくも、「○○より美味しい」と基準となる味の店が「鼎泰豐」であるらしく、
「だったらやっぱり行ってみなくちゃ?」
と待望のこの店にまず最初に行くことにしたのだった。何しろ、日本でもこの店、行ったことがなかったのだ(だっていつも大行列なんだもの……)。
4時15分ごろ。まだやってないよね、まぁやってなかったら店の近くで待ってても良いし、と訪れてみると、あっさりと営業中だった。「いらっしゃいませー」とナチュラルな日本語で店員さんに案内され、なんだかフェミレスのような内装の2階に案内される。階段の壁には、「御好評にお応えして、昼の休みをなくして連続営業にしました〜!」なんて貼り紙がされていた。今はもう、ぶっ通し営業をしているらしい。
大きな蒸籠に納められてやってくる小龍包は10個で170元。追加注文してもすぐにやってくるということだったので、とりあえず1蒸籠注文し、あとはビールと息子用に炒飯。200円弱という値段のシンプルな卵炒飯はきっちり1人前くらいの分量で、炒め方は悪くなかったけれど悲しいほどに化学調味料の味がした。ビールをくぴくぴ飲みながら炒飯をつつき、
「……う、舌がピリピリしそう」
「小龍包も化学調味料ピリピリだったらイヤかも……」
と戦々恐々と待っていたところ、美味しそうな小ぶりの小龍包が。ちょうどレンゲに乗るくらいの、日本の飲茶屋で食べるそれよりは隨分小さめのサイズの饅頭には美しくヒダがついていて、箸で持ち上げると中のスープが皮の中でぷるんと揺れる。見るからにスープが多めな小龍包で、その割に皮は不思議とペショついていない。テーブルには山盛りの生姜と黒酢、醤油が置かれている。
私は悲しいほどに猫舌なので、まずはレンゲの上に乗せた小龍包の端を囓り、そこからストローのように中のスープをちゅるちゅると少量啜る。適当にスープが減ったところで、はふはふと大口あけて口で息しながら皮もあんも残りのスープもいっしょくたに口に入れる。食べ進んで適度に冷めてきたところでは、小龍包をそのまま丸ごと口の中に放り込む。ちょうど放り込めるくらいの、手頃なサイズなのだ嬉しかった。
で、小龍包は化学調味料ぷんぷんということはなくて。皮はかなり薄めでさほどの存在感を感じさせず、肉は肉でぷりぷりぶりぶりとしたものではなく、これまた割と淡泊なもの。じゅわっと大量に詰められているスープも、美味しいことは美味しいのだけど、洗練されまくっているというわけでも、野性味溢れているということでもなく、割と「普通」なもの。でも、それらが一斉に口の中に入って喉から胃袋に滑り落ちていくと、なんともいえない美味しさがあった。
「おいっしーいぃぃぃぃぃ!」
と大騒ぎしてしまうタイプの味ではないのだけど、止まらなくなる。ものの数分で1蒸籠が空になる頃には、
「あ、あと2蒸籠追加ね」
軽やかに追加オーダー。
結局、「ぼくはね、チャーハンがあればいいんだー」と一人寡黙にチャーハンを平らげる息子をよそに、だんなと2人、ビールを酌み交わしながら30個の小龍包を美しく平らげたのだった。店を出るとまだまだ日は高く、
「酔っぱらっちゃったねー」
「ひとやすみしなければ」
台湾初日のっけから酔っぱらいながらホテルに一時帰還。
困ったことに、これは夕飯ではなくて「おやつ」であったらしい。
金桔檸檬汁 30元
排骨麺 70元
紅焼肉飯 70元
[虫可]仔煎 45元
……を皆でパクつく
「さっきのは夕食じゃなかったの?」
「え?おやつじゃないの?」
「じゃあ夕食はどうするの?」
「夜市行くんじゃないの?」
もう初日から飛ばす飛ばす。結局、夕方5時に一度ホテルに戻った私たちは、数時間してまた地下鉄に乗って出かけることになった。台湾の町には「夜市」があちらこちらに出没する。夜5時くらいからちらちらと屋台が出没しはじめ、9時から午前1時くらいまでがピークだとか。食べ物も怪しい衣類も雑貨も、これでもかと売られているらしい。香港で言うところの男人街とか女人街みたいなものだろうか。
台湾滞在中一番の目的夜市は「士林」という場所にある夜市だったのだけど、これはいかにも大規模で大変なことになるらしい。最初は軽めのところにしてみようか、と、地下鉄で数駅先にある「公館夜市」に行ってみることになった。時間も早めだったので屋台も少なめ。さらーりと流して、その割にあれこれ食べて帰ってきた。豚の臓物なんかをそのまま煮込んでいるんじゃないかと思われるようなすさまじいケダモノ臭のお店もあれば、おしゃれなフルーツドリンク専門の店もある。あそこ美味しそう、ここ美味しそうと眺め歩き、なぜか焼き豚丼なんてものまで食べていた。
最初に試したのは「金桔檸檬汁」なるもの。「冬瓜汁」とか「西瓜汁」といった、ちょっとキテレツなドリンクを売っている屋台はあちこちにあり、その中でも「金桔檸檬汁」はかなり目立つ存在。どうやら金桔はキンカンのことらしく、キンカンとレモンのジュース、であるらしい。怪しく蛍光黄色に輝く液体が、氷の入ったプラスチック製タンクの中で揺れている。1つください、と言うと、なんだかよくわからないものをカップに1匙入れ、更によくわからないものをカップに1匙入れ、あれを入れこれを入れ、そこにその蛍光黄色の液体をだばだばだーっと注いで渡してくれた。もう何がなんだかさっぱりな飲みものだったけど、ちゃんとそれはレモネード的な味で、甘さはかなり強めだったけれどなかなか美味しい。だんなは一口飲んで「うえ……」という顔をしたけれど、私と息子は奪い合いながらがぶがぶ飲む。
で、通りかかった美味しそうな(お客がいっぱい入っている)丼&麺屋さんでだんなは排骨麺、私は焼き豚丼。そこでかなりおなかいっぱいになっちゃったのに、
「あの店で、おねぇちゃんが焼いていた牡蠣入り卵焼きがねぇ……美味しそうだったんだよねぇ……」
とか言いながら、それを1パック持ち帰り用に包んでもらって帰ってきた。ホテルに帰ってからもりもり平らげる。
飛ばしすぎ、飛ばしすぎです、初めての台湾で夕食2回(いやそれ以上)食べてるなんて……。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
肉包 20元/3個
焼きそば 35元
豆乳 15元
アイスコーヒー 15元
ミルクティー 10元
を皆、で。
初めての台湾の夜に「夜市」など行きあれこれ食べてきたにも関わらず、胃袋絶好調の2日目(ただし小龍包を食べて舌火傷気味)。なんでも宿泊している台湾車站近辺は予備校が密集する学生街で、安い飲食店が軒を連ねているらしい。ホテルを出て、近所をぷらぷらしてみることにした。
午前8時過ぎ。普通のお店はまだまだ営業していないけれど、確かに饅頭屋さんとかサンドイッチの屋台、ビュッフェ式のお店など、食べ物関係のお店はこれでもかと目に入ってきた。どれも安くて美味しそう。いろいろ悩んだあげく、店頭で次々焼いてはどんどん売れていく「3個で20元」の饅頭屋さんが目につき、ここで食べることにした。中で食べる人はほとんどおらず、大抵皆、袋に詰めてもらって持って行っている。日本語も英語もほとんど通じないようなお店で、
「これー!このお饅頭ください。あと、豆乳。ソイミルクー」
身振り手振りでほしいものを伝える。ニラ饅頭や野菜饅頭などから私は肉饅頭を。だんなはその場で炒めてくれる焼きそばを注文した。お供に、甘く冷たい豆乳。しょっぱくて温かい豆乳も飲んでみたいのだけど、それは明日以降にしよう……。
表面が油でキトキトになっている饅頭は、下部はカリカリサクサク。ふわふわもちもちとした皮に、適度に味のついた肉あん(それこそ肉まんの中身みたいな)が詰まっていて、見た目以上に美味しかった。1個がミカンくらいのサイズで、なかなか食べ応えがある。だんなの焼きそばも、ケチャップともソースともつかぬ怪しいジャンクな調味料で炒められていて、これが妙に美味しかった。
朝から台湾を満喫し、ちょっと部屋で休んで準備した後、タクシーに乗って「迪化街」に。ここは台湾最大の乾物問屋街なのだそうで、日本で言うと「合羽橋」みたいな感じ?同じ通り沿い、南の方は布地の問屋街になっていたり、中には料理器具のお店もあったりするのだそうで、わくわくしながら出かけていった。時間は10時。開いていない店もちょこちょこあったけど、歩いているうちにどんどん開店していく。
「やっぱりいろいろ見て、安いものを買わなきゃねー」
なんて言いつつ歩いていたのに、カラスミと干し貝柱を購入したのは、店員の少年がめちゃめちゃかわいかったお店……と、よくわからないことに。「あ、ぼく、おとーさんに頼まれて店番してて……英語も日本語もわからない……」といった顔つきで緊張しまくりながら「あー、えっとー、これが、貝柱」てな風に商品を見せてくれた少年は、小学4〜5年生といった感じ。ボーイッシュな女の子といっても問題ないくらい(というか本気で最初女の子なのかと思った)可愛い顔をしている。帆立買うよ、あとカラスミもけっこう安いから買うよ、と交渉していたところでお父さんがやっと帰ってきてくれた。やや大粒の干し貝柱を1斤(600gくらい)に、カラスミを2パック購入して2000元。支払いを終わったところで、例の少年が
「これ、サービス」
とポカリスエットの缶を3つ手渡してくる。キンキンに冷えていて、「そろそろ疲れたね、お茶でも買わないと」と言っていた私たちは大助かり。結局、他の店の値段も確認しながら歩いたところ、この店は少しも高くなく、どころか安い買い物ができたみたいで、初手から大満足の買い物だった。美貌の少年、どうもありがとうー。
その後、がっしりした良い感じの蒸籠を買い(日本で使っているのが崩壊寸前だった)、杏仁豆腐の材料、「北杏」と「南杏」を買い、ドライマンゴーおよびドライイチジクを買い、とどめに白キクラゲを買い……と、乾物問屋を満喫しまくる。通り中に干し貝柱や干し海老の独特な香り、それに花茶類の華やかな香りが混ざり合って、なんともいえない風味の空気が漂う街だった。
小龍湯包 95元×2
炒青菜 65元
元[中皿]鶏湯 100元
蛋炒飯 ?元
大量の乾物類をホテルに置いた後、お茶器屋さん巡りをしながら昼飯を摂りに行くことにした。巡ったお店、1つはショッピングモールの改装中でお休み、1つは今ひとつピンとくる品揃えではなく、少しばかり残念な気分でタクシーに乗り目当ての昼食処へ。行ってみたのは「上鼎泰」というお店。なんでも「鼎泰豐」で長年修行した人が独立して作ったお店なのだとか。「鼎泰豐」より上の味!と自信があるから「上鼎泰」という店名になったらしい。……が、まさにランチタイムという時間帯、外の店や屋台はどこもそれなりの混雑ぶりを示しているのに、目当ての店に客は1人もいなかった。薄暗い店内、壁には日本のガイドブックで紹介された記事が所在なげに何枚も何枚も貼られていて……なんだか激しくハズレの匂い。それでもせっかく来たんだから、と小龍包を2蒸籠注文した。塩気のあるものも欲しかったので青菜炒めも1つ。店員さんに勧められ、鶏の蒸しスープも1つ。
「あついぎょうざはね、食べられないと思うよー」
という息子には炒飯を1つ。
ほどなくやってきた小龍包は、不安をよそになかなか美味しいものだった。スープは少なめ、皮は少々厚め、肉は比較的おおざっぱなぶりっとしたもので(全部「鼎泰豐」比)、具の味がやや濃厚。ちゃんとスープがたぷたぷしていて、悪くないものだった。でも、「鼎泰豐より上」かどうかというと、私的にはビミョーなところ。あきれるほどスープが詰まっていた「鼎泰豐」、あれはやっぱり好みな味だったんだなぁと思ってしまった。「小白菜」を炒めたのだという、にんにくたっぷりの青菜炒めはシャキシャキと香ばしく、そして鶏スープはかなりツボの味。少しばかりのケダモノ臭さが漂う濃厚な鶏スープには骨つき肉もたっぷり入っていて、葱や生姜の風味も強くただよいとてもとても美味しいものだった。……でも、お客さんは相変わらずいない。
干貝湯包 100元×2
「上鼎泰」から600mばかり北上すれば、これまた小龍包が美味しいと噂される「小上海」なる店がある。
「ま、さっきは2セイロだったしね」
「まだまだいけるしね」
と、先の店の近くにあるコンビニでペットボトルのお茶を購入飲み飲みしながら歩いてみた。店頭でどんどん蒸されている蒸籠からの湯気ですぐにわかった、大通り沿いの小さなお店。
ここの小龍包は「干貝湯包」という名前。その名の通り、干し貝柱がごろごろと入っていて、やや高級感漂う香りが皮の中から溢れてくる。その割に値段は安め。セルフサービスの温かいお茶もあるものの、他のお客がペットボトルのお茶を片手に小龍包を食べていたので、私たちもペットボトルのお茶を遠慮なく飲みつついただいた。
皮厚め、スープはタプタプの小龍包(やっぱり「鼎泰豐」比)。「肉とスープが詰まっている」というより、「スープにまみれた肉が詰まっている」といった風の、具が渾然一体となった感がある小龍包で、スープを端からちょっと吸い出してから丸ごと食べてもこれでもかと肉と皮の隙間からスープが口中に溢れ出てくる。下味もけっこう強めで、味のある小龍包だった。これもまた、美味しい。要するにどこで食べても美味しくて、困ってしまう。
唯一残念だったのは、添えられた針生姜が太すぎて、辛さばかりが強く感じられてしまったこと。もっと繊細に、ほそーく切った方が美味しく食べられると思うのね……。
ものの10分ほどで小龍包を食べ終わり、600円ちょっとになるお会計を済ませた後、再びてくてくと。ここからまた600mほど斜めに南下したところには、気になっていたお茶屋さん「吉軒茶語」という店がある。
「これ寄ったら、ホテルに帰ろうねー。モノレールに、乗るんだよ」
と息子を激励しながら今日も猛暑のなかを歩きまくり、目当ての店で30分ほど盛大にお買い物。
「ここは茶器が充実」「ここは洒落ている」とガイドブックの記事を見ても、実際に行ってみないとわからないもの。この店は想像以上にすてきなお店(というか私的にツボな店)で、入るなり素敵な"粉青釉"の薄青色の茶器セットに釘付けになり、欲しかった竹製の茶盆も手頃な値段で置かれており、そこそこ広い店内にはお茶もお茶菓子も揃っていてそのディスプレイのセンスもすばらしく……とこれ以上なくシアワセな店だった。結局ここで15000円ほどのお買い物を盛大にしてしまい、だんなはだんなで
「うーん……この茶器、素敵だなぁ……高いなぁ……でもなぁ……」
と10分以上たっぷり悩んだところで別の茶器セット(1680元)を購入。こんなにお茶器ばっかりあってどーするのー?と苦笑いしながらいったんホテルに戻るのだった。
ホテルに戻る間際、「飲脚亭」というなんだか混雑しているドリンク屋さんで「椰香[女乃]茶」25元を購入。甘くて冷たくでココナッツの香り満載のアイスティー。たっぷり入って80円くらい。おいしー。
「揚記花生玉米冰」にて「玉米冰」 60元
「阿宗麺線」にて小碗 35元
「台北牛乳大王」にて木瓜牛乳60元、芒果優酪乳70元
いつのまにか、そろそろ夕方と言っても良い時間。不幸な事故で小龍包のスープを白いタンクトップにぶっかけてしまったのでホテル内のコインランドリーにお洗濯をしに行き、その間お部屋でだらだら。隣接するデパートをぷらぷらと眺めに1時間ほど出かけ、再びホテルに戻ってから改めて夕食を摂りがてら探索にでかけた。
まず向かったのは、台湾における渋谷か原宿、といった風情の「西門町」。ここには老舗の「コーン氷」屋さんがある。大人気の麺線屋さんもあるらしい。地下鉄で行くにも微妙な場所に目当ての氷屋さんがあったので、タクシーすっとばして近くまで運んでもらった(なにしろ初乗り250円とお安いもので)。
「揚記花生玉米冰」という、古めかしい壁床タイルのお店、かき氷屋さんなのだけど、その具はイチゴとマンゴーを除くとあとは「緑豆」「紅豆」「花生(ピーナッツ)」といった豆やナッツが主体。とうもろこし氷は「玉米冰」。やっぱりこれを食べなきゃねー、と思っていたので練乳などのトッピングはせずに、ただ「玉米冰」を食べてみることにした。だんなと息子と1皿を皆でつつく。
スィートコーンをかけるかき氷、味の想像がつくようでつかないようで非常に楽しみだったのだけど、やってきたのは本当に「スィートコーン、そのまま氷にかけました」みたいなもの。クリーム状のコーンと粒状のコーンを適当に混ぜ合わせたような、本当にただただコーンというものがかき氷の上にどっぷりとかけられている。皿の端からコーンがぼっとんぼっとん垂れるほどに大量のコーンが氷の上に乗っていた。
「あっはっはっは、なんだこりゃー」
と喜んで笑ってしまいながらスプーンでさくさく食べていく。ただただコーンの味だ。笑えるけど美味しい。悪くない。だんなは「……コーンそのままだ……美味しいけど、美味しいんだけど……」と複雑な顔を見せているけど、息子は何の違和感もなく、
「おいしいねー!コーンだねー」
ともりもりコーンと氷と食べていく。コーンのほの甘い黄色い汁を吸ったかき氷。奇妙で素敵な味だった。
で、次は繁華街ど真ん中あたりにある「阿宗麺線」という麺線屋さん。「麺線」とは、煮込みそうめんのこと。とろみのあるスープに豚の臓物肉などが入り、醤油ベースのしょっぱ甘い汁で麺をぐだぐだに煮込んだもの。箸ではなくレンゲで啜るように食べる。屋台でも頻繁に見かけていて気になっていたのだけど、どの店もどの店も、ほぼ例外なくその屋台からは「とんでもないほどのケダモノ臭」が漂っていて、気になっていたけどチャレンジできずにいたのだった。豚の内臓全部鍋に放り込んだんですか?とでも言いたくなるような、クラクラするほどのケダモノ臭は、気温の高い中汗だくで歩いているときには気が遠くなりそうなものだった。麺線、食べてみたい、でもどんな味なのか今ひとつ想像もできない、と、とりあえず人気の店と評判の高いこの店に行ってみることにしたのだった。
席などなく、路上販売のようになっている店。大と小の2つのサイズしかメニューはなく、店頭や近くの植え込みの柵などに老若男女が寄っかかったりしゃがんだりしながらハフハフとどんぶり抱えて食べている。だんなが小サイズのそれを1つ買ってきてくれ、それを一緒につつかせてもらった。
ものすごく鰹節の風味が強い麺線。とろーんととろみ強めの汁からは"ほんだし"の存在感も多分に感じられるのだけれど、でも鰹節そのものもどっさりヒラヒラと汁の中に混ざっている。スープのとろみと一体化したようなぐだぐだの麺の隙間には豚のモツもたっぷり入っていて、上からは香菜がたっぷりと。やはりケダモノ臭さはあるものの、でもこの店のはほとんど気にならず、全然余裕で食べられる。ていうか美味しい。すごく美味しい。これ1杯が100円ちょっとで食べられるなら、近所にあったらおやつ代わりに通い詰めてしまいそう。
「……あ、美味しいよ」
「めちゃめちゃ美味しいじゃん!」
「1人1杯にすべきだったかなぁ……」
「ていうか、大サイズでも良かったかも」
なんて言いながら、続々と客の集まるその店を後にしたのだった。ああ、麺線美味しい。麺線ブラボー。
そして、さっきかき氷喰ったのに、またデザート屋に行くのである。麺線屋から2ブロックほど離れたところにある「台北牛乳大王」。
「なんたって大王なんだよ。牛乳の王様なんだよ。きっとすごいよ」
と、しょっぱ辛くなった口を癒しにフルーツ牛乳を飲みに行った。この地では、もう何年も前から「パパイヤミルク」が大人気、らしい。「大王」の名を冠する店ならきっと美味しいに違いない、と根拠不詳な事を思いながら行ってみることにしたのだった。
冷房がガンガン効いた涼しげな店内。ファーストフード然とした、小洒落た明るい店だった。ミルクを入れてくれるカップにはピンクと黄緑で牛の絵柄が印刷されて、これがまたキュート。牛柄のマグや皿も売られていて、それまたキュートだった。
スイカミルクだのパッションフルーツミルクだのバナナミルクだのがある中、私はもちろんパパイヤミルク。「牛乳」の他に「優酪乳」の名がつくドリンクもあって、こりゃなんじゃと思ったところそれはヨーグルトドリンクであるらしい。だんなはマンゴーヨーグルトを注文し、適当に3人で交換しながらずるずると飲んだ。
パパイヤミルクは、「牛乳よりパパイヤが多いんじゃなかろうか」と思われるほど、パパイヤパパイヤした濃厚なもの。適度に冷たく、果汁どっさりのとろーんとした飲み物だった。甘さは果実のそれだけみたいで、かなりさっぱりと飲める。ほのかに甘いマンゴーヨーグルトも、これまたさっぱりした味で期待以上に旨かった。旨いもの3連チャンで、
「シアワセー」
「イカスー」
とか言いながら次の土地へ。ちょうど8時を過ぎたところだし、台湾最大の夜市にお出かけするのだ。
「好朋友」の「涼麺(小)」 35元 「温州大饂飩」の「魯肉飯」 20元×2
「辛發亭冰館」の「鶏蛋雪片」50元、「珈琲雪片」50元
「士林夜市」はてっきり「士林」が最寄り駅かと思ったら、その手前の「劍潭」駅が最寄りだったらしい。後戻りしたり、駅のトイレに寄って「台湾トイレの洗礼」(すごいの……女子トイレ、お尻なんてつけられないの……)を受けたりしているうちに午後9時に近づいてきた。夜市は午後9時くらいから深夜までが盛り上がりのピークらしい。台湾最大と言われるだけあって、とんでもなく広範囲に渡る夜市だった。温泉街にありそうなパチコン台で遊んだり、子犬や子猫を売る店をひやかしたり、怪しいTシャツを購入したりと11時近くまで楽しんだ。もうよれよれ。
「あー、涼麺、美味しそうだね」
と屋台の裏に小さなテーブルセットも用意されていた店で冷たい麺(胡麻のピリ辛だれで、豚肉とザーサイとキュウリのトッピングつき。うまー)を食べ、
「そうそう、魯肉飯が食べたかったんだよ」
と、その品名がちゃんと明記されていたお店(明記してなくてもけっこうあちこちで食べられるらしい)に入って、豚の甘辛そぼろぶっかけ飯をがつがつと食べ、とどめにかき氷。
「おいしいおいしい、とにかくおいしい」と絶賛されるそのかき氷屋さんは「辛發亭冰館」という名前で、名物は「削りミルクアイス」といった風の「雪片」。「鶏蛋雪片」というメニュー名のものを、「これって……つまりミルクセーキみたいな?カスタード味みたいな?」と思って注文したところ、本当に生卵がかき氷の上にトッピングされていて深夜おおいにのけぞることになってしまった。だんなは「珈琲雪片」。どちらも小山のようなサイズで、1個180円くらいだ。
「かき氷」ではなく「削り氷」という感じ。薄いレースのように、ミルフィーユのパイの層がそのままアイスにでもなったかのように、薄い薄いミルク色の氷(というかシャーベット)がひらひらとこんもり山になっている。そっとすくって口に入れると、一瞬で溶けていく。ほのかに甘く、でも甘すぎず、未知なる食感のデザートだった。これは全然、「かき氷」というジャンルのものじゃない。だんなのそれはミルクのヒラヒラを覆うようにコーヒー色のヒラヒラが盛られ、上からはコンデンスミルクがとろーんとかかっている。実のところ、私の「生卵ミルクアイス」は別に卵がなくてもよろしいんじゃないかなぁ……と思われる味だったのだけど(それはそれでミルク味の氷が楽しめて良かったんだけど)、だんなのそれは、そりゃもうすばらしい調和のとれた、「甘いカフェオレを微細な氷のフリルにしました」みたいな魅惑のデザートになっていた。こんなもの食べている時、時間はすでに10時半。犬だー猫だー、おもちゃだー、と喜んで歩いてつきあってくれた息子もさすがに疲れた様子。
明日はゆっくり寝てましょう……と、速攻でホテルに戻り、ざっとシャワーを浴びてからすぐにベッドにもぐったのだった。
胃袋はまだまだ元気。どうか腹下しとか起こしませんように……(かき氷何杯も食べていてそんな事を望む)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
三種饅頭(肉・韮・野菜)
三明治(ツナみたいなもの・卵焼き・ハムとコーン)
三明治(ポテトサラダみたいなもの・卵焼き・ハム)
アイスカフェオレ
台湾3日目の朝。
私はイヤになっちゃうほど貧乏性で、旅行に行くとまず絶対「朝ダラダラ寝ている」ということができなくなってしまう。家にいるときは10時になろうが11時になろうが放っておけば眠り続けるくせに、旅行中だとどういうわけだか午前6時頃に起きて活動を始めてしまうのだった。今日もやっぱり早起きしてしまい、昨日できなかった日記の更新作業などしてみたり。
昨夜ベッドに入れたのは日付が変わってからだったということもあって、だんなと息子はできるだけ寝させてあげようと思っていたのだけど、8時過ぎても8時半過ぎても一向に起きる気配がない。私は私でなんだかお腹がすいてきてしまって、「……ちょろっと抜け出してサンドイッチでも買ってこよう……」と思ってそろそろと着替え始めたところでだんなが目を覚ました。
「……朝御飯、買ってくるよ。もう9時になるし」
目をしぱしぱさせているだんなに告げると、しっかりした声で
「昨日の……あの饅頭屋さんの饅頭がまた食べたいな。美味しかったし」
とリクエストされた。近くの店だし、いいよ、全然問題ないよ、と一人で買い物に行ってきた。日本語も英語も全然伝わらないような状況で、
「えっとー、お饅頭、1セット。1セット、ください。」とか、
「これとこれとこれ、ください」などと、
よくわからない言語を駆使してあれこれ買ってきた。
朝の商店街ではサンドイッチがたくさん売られているのだけど、その看板には「三明治」と書いてある。「三明治」がサンドイッチのことであるらしい、と昨日把握したところだ。どの店で売られているのも、だいたいがクラブハウスサンドスタイル。3種類程度の具が4枚のパンの間に挟まって、それらを一気にがぶりと食べるようになっている。具は、割と謎なものが多い。フライみたいなの、ツナみたいなの(ツナもあるんだけど、ツナじゃないツナっぽいものもある)、ポテトサラダみたいだけど、その割に人参がこれでもかと入っていてピンク色になっているもの、などなど。メインな具はそういうもので、更に卵焼きやハム、ハムとコーンを合わせたマヨネーズ味のもの、が別の段に挟まっていたりする。4枚のパンの間にひたすら苺ジャムを挟んだようなものもあり、それはそれで美味しそう。だんなリクエストの饅頭も無事に購入でき、ものの5分ほどでホテルに帰った。
ホテルの部屋には空の冷蔵庫がついていて、ありがたくあれこれ入れて使っている。スターバックスで買ってきたアイスコーヒーとコンビニで買ってきた牛乳でカフェオレを作ったり、パック入りのパパイヤミルクを買っていつでも飲めるようにしていたり、本当に便利。饅頭をがぶがぶと囓るだんなはペットボトル入りの中国茶を、私はカフェオレ、息子はパパイヤミルクを傍らに朝御飯を平らげた。
怪しい具のサンドイッチ、素朴な味でとても美味しい。
招牌孔雀蛤 200元
空心菜 80元
蛋炒飯 60元
白飯 15元×2
コーラ 25元
台湾ビール 70元
水 15元
本日は、地下鉄(途中からモノレール状になる)をひたすら北に行き、「淡水」というエリアに行ってみる。カップルに人気の「夕日が綺麗なスポット」ということだけど、その雰囲気は「お台場」というよりは「熱海」に近いものだった。河口に漁船みたいな渡し船が十数分おきに通っていて、本当にのどか。午前11時頃に到着してみると、町はまだまだ眠っている状態だった。どうも夕方に近づくほど元気になる町であったらしい。
特にこれという目的はなく、「電車や船に乗って、海を見に行ったら息子が喜ぶかなぁ」というくらいの気持ちで、あとは名物料理でも食べられれば嬉しいなという思いで遊びに来たのだけど、なかなかどうして、楽しい1日になった。まだまだ店の開いてない中、てくてくと船着き場まで移動して対岸に移動。「宋記皮蛋」なるお店で16個100元のピータンをつい買ってしまい、卵がざくざく入るビニール袋をぶらさげて名物の貝料理を食べに行った。なんでもここの名物は「孔雀蛤」という名前の綺麗な色をしたムール貝であるらしい。「孔雀蛤」の看板を出した店はいくつもあったけれど、平日の昼間はあまりオープンしている店は多くなかった。一番目立つところにあったその名も「余家孔雀蛤大王」という店が営業中だったのでそこに入っちゃうことにする。
その名物貝を1皿と、口直しに空心菜の炒めも1つ。息子のリクエストで炒飯(台湾に来てからこっち、息子はなぜだか炒飯ばかりを無性に食べたがる……謎)を1つ。飲み物は水も含めて、自分で冷蔵庫から出してきて伝票にチェックしてもらうシステムだった。
孔雀の名を冠する貝は、確かにすんばらしく綺麗な色。縁が見事な緑色で、褐色から黒へとグラデーションになっている。内側のオパール色をした殻の中にはぷりぷりとした身が。緑色の鮮やかな色の貝は、負けず鮮やかな色合いのバジルと共ににんにくと唐辛子で甘辛味に炒められていた。かなり辛い。辛いものがそれほど得意とはいえない私たちは、ほどなく「水っ水っ」「ていうか、白い御飯ー」と騒ぎ出すことになった。
ピリ辛味の貝はビールにも御飯にもすこぶるよく似合う。卓上のティッシュで手を拭きながら、箸など使っていられなくてバリバリと手で殻を開けては貝を食べていく。窓からは河口の景色が見え、対岸はどこか香港のような感じ。
1時間ちょっとの昼食を堪能した後は、再び船に乗って対岸に戻る。午後になるとお店もぽつぽつと開き始め、お客も増えてにぎやかになってきていた。
「正宗 阿給老店」の魚丸湯 25元 ・ 阿給 25元
「洪媽」の酸梅湯 25元
屋台の蝦捲 10元 ・ 熱狗 15元
淡水の各お店が営業を始めたのを良いことに、名物の食べ物を食べては移動する私たち。
「魚丸湯」は、魚のすり身団子を入れたスープ。はんぺんをもっと圧縮して濃厚にしたような白い団子の中には豚肉の塩気強めの具が更に入り、それがセロリと葱を散らした透明なスープの中に浮かんでいる。「阿給」は「アーゲ」と発音するらしく、それは日本語の「油揚げ」から来ているらしい。厚揚げと油揚げの中間のような皮で味をつけた春雨とか肉を巻き込んで、こってり味のスープに浸したもの。店によっては「麻辣阿給」とか「牡蠣阿給」といった具のバリエーションも豊富なようだけど、私たちが食べたのは春雨だけが中に詰められて魚のすり身で蓋をしたもの。甘さ強めの味噌味スープに浸っていて、じんわりとした懐かしい味がした。
更にぽてぽてと歩き、「酸梅湯」という梅ジュースを1杯。乾物街に漂う香りを濃縮してジュースに溶かしたような、かなり強めのスパイス臭が漂うジュースで、でもその甘酸っぱさがさっぱりしていてけっこういける。ずびずびずー、と飲みながら歩いていくと「蝦捲」なる、これまた名物の"海老を春巻きの皮のようなものでくるっと巻いて揚げたもの"の屋台がみつかり、だんなと2人で1串(くるっと巻いたそれが3つ刺さってた)を食べる。息子はアメリカンドッグを1人で1本平らげて、なんだか熱海の温泉街あたりで夜店をひやかしているような錯覚に陥ってしまったり。
この町に着いた時にはまだ開店していなかったので気づかなかったのだけど、通り沿いにはかなりの数のマッサージ屋さんが軒を連ねていた。だんなは足裏マッサージをやってもらいたいなと思っていたそうで、私は私で顔の産毛取り「挽面修眉」をしてもらいなと思っていた。で、申し訳ないけど息子に待ってもらってだんなはマッサージ、私は産毛取りにチャレンジ。顔中に白い粉をはたかれ、1本の糸を使っておばちゃんにシパパパパッと産毛を抜いてもらうそれは、話に聞くよりもめっちゃめちゃ痛かった。苦行だった。本気泣きする寸前で、「なんで私、お金払ってこんなつらい思いしてるんだろ」とまで思い詰めたりしたのだけど、できあがりは顔の皮がツルツルピカピカすべすべの、かつてない快感を味わうことに。だんなはだんなで足の裏をぐりぐりやられて腑抜けになり、全体的にぐにゃぐにゃな気分になったままホテルに一時帰ることになったのだった。
吉祥午茶膳 198元
(お茶・お茶菓子・[女乃]烙)
ホテルに帰って一休みすると、もう夕方と言っても良い時間になっている。が、まだ夕飯には早いし、夕飯までホテルにこもっているのはもったいない。私が買い物したいと思っていたお店があったので、そこに行きがてらお菓子を食べられる店で休憩することにした。
向かったお店は「京兆尹」。伝統的な台湾の菓子が楽しめるお店だそうで、中でも「台湾ヨーグルト」などと称される「[女乃]烙」という食べ物が名物らしい。夕方4時半までなら「吉祥午茶膳」というお茶セットが楽しめるそうで、中国茶1種類(固定)とお菓子1種類(6種から選択)、更に菓子1種類(スープやヨーグルトなど3種から選択)がセットになって198元ということだった。セットでその噂のヨーグルトも楽しめるそうなので、それを注文してみることにした。
選択したお菓子は「驢打滾兒」。きなこをまぶした餅菓子で、甘さはかなり控えめ。和菓子にも似ているし、中華菓子的な部分もある。もちもちほわほわとしていて、お茶請けとして良く似合っている。お茶は「欽賜紫陽茶」という花茶が蓋碗でやってきて、茶葉の入った器から茶葉を出さないように蓋をずらしながらお茶を啜る。ポットもやってきているので、何杯も何杯も湯をつぎ足してはぐびぐびといただいた。
噂のヨーグルトは、「ヨーグルト」というよりは「ミルクプリン」に近いもの。牛乳と酒粕を使って発酵させたものなのだそうで、酸味はほとんど感じられない。表面に薄切りのアーモンドが散らされ、中にもそのアーモンドがちらちらと入っている。これまたふんわりと優しい甘さでぷるぷると頼りない食感。牛乳だけの風味ではない独特な香り(酒粕の香りなのかしらん)があって、疲れた身体にしみじみ美味しかった。
元気が出たところで、お買い物。「波克」という店は"中国結び"が好きな人ならはずせないお店だそうで、最近本など買ってせっせと紐を編んだりしている私は気になって気になって材料を買いに行きたかったのだ。たっぷり巻かれた紐が一巻たったの300円程度だったりして(日本じゃたった数メートルの紐でそのくらいの価格だったのに……)、調子に乗ってざくざくと大量に紐をお買いあげ。中国チックなビーズ類も可愛いものがしこたま揃っていて、それもざらっと何種類かお買いあげ。そろそろグデグデに疲れつつあった私たちは今一度ホテルに帰還し、シャワーをゆっくり浴びてから夕食に繰り出すのだった。
小龍湯包 240元
小龍包 130元
元[中皿]土鶏湯 150元
ビール
なんだか毎日呆れるほど、いや飽きるほど小龍包を食べているのだけど、残る気になるお店は「京鼎樓」。「鼎泰豐」で修行した人が独立して作ったお店なのだそうで、台湾にはその手の「鼎泰豐ゆかり」の人が多いのだなぁと思い知らされる。さぬきうどんで言うところの「宮武」みたいな存在なのだろうか。……って、全然わからんがなー。
一見狭そうな店内には地階もあって、満席だった1階から案内されて地階に降りれば、そこには日本人の大集団が2組宴会の最中だった。
「偶然かもしれないけど……」
「地階は"日本人隔離部屋"?」
なんて呟いてしまいながら、ともあれ注文。このお店の名物は、「小龍湯包」。本家「鼎泰豐」でも休日の限られた時間に食べることができるメニューだそうだけど、この店ではいつでも注文することができる。「小龍包」より小ぶりの饅頭が蒸籠に並べられ、別添で錦糸玉子を入れたスープがやってくる。お客はその小ぶりの饅頭をスープに浸しながら食べる、というものなのだそうだ。当然それを1蒸籠。そしてノーマルな小龍包も1蒸籠。昨日「上鼎泰」で食したのを同じ、鶏肉の蒸しスープをここでも注文。このスープ、私はすっかりはまっていた。シンプルだけどとても好みな味なのだ。
やってきた小龍包は、若干「鼎泰豐」より大きいような気がした。あの店ほどのスープのタプタプ感はないものの、でも充分満足できるスープの入りっぷり。淡泊な印象が強かった「鼎泰豐」よりは、ちょっと濃厚な感がある。皮の厚さや肉やスープのバランスは、すごく良かった。私は本家と甲乙つけがたいほど美味しいなぁ……と思ったのだけど、だんなは
「僕はこっちの味のが好き」
と断言していた。
そしてそして、待望の「小龍湯包」。単に小龍包をスープにつけるだけでしょー?と内心思っていたのだけど、全然違っていた。全然違って全然美味しい。饅頭はころりと2まわりほども小さくかわいらしく、でもスープもちゃんと包まれている。さっぱりとした味わいの黄金色のスープには薄焼き卵がひらひらと沈み、そこにレンゲに乗せたミニ小龍包をとぷんと落としてからスープと一緒に啜り込む。それがもう、普通の小龍包とは全然違う食感や風味で、止まらなくなる美味しさだった。
「う、うまい」
「高いけど、旨い」
「止まらなくなる……」
と、1蒸籠が速やかに空に。
あー、美味しかったぁ。3日連続小龍包もりもり食べても……食べ飽きぬ……。
担仔麺 40元×2
滷蛋 10元×2
魯肉飯 30元
夕食に家族3人で小龍包2蒸籠というのは、全然少ないのである。そもそもハシゴするつもりで外出していたので、速攻次の店に通う私たちだった。次の店は、400mほど離れているところにある担仔麺屋さん。魯肉飯も美味しいのだそうで、
「やっぱり台湾来たなら担仔麺は食べなきゃね」
「どうせだったら美味しいとこのがいいよね」
とアタリをつけて来たのがこの店だった。20人も入ればぎっしりという感じの狭い小さなお店。店に入ってすぐのところで兄さんが鍋を前に担仔麺を作っている。担仔麺を2つで、卵もいれてー、あと、ルーロー飯もくださいね、と注文した。
ほんの小碗に一杯の担仔麺。黄色くちぢれのない麺は褐色のスープに沈み、上には甘辛味のひき肉炒め。茶色く染まった卵も添えられ、上にはこれが欠かせない香菜がひとつまみ。じんわり辛さもあり、肉はこってりした味だけど舌に溜まらずツルツルと食べられる。あー、そうそうこれが担仔麺。美味しいよねぇ……と地味に感動したのだけど、もう一品の魯肉飯には派手に感動してしまった。
「豚ひき肉の炒めかけ御飯」が魯肉飯なのだけど、昨日も士林夜市内で入った店でそれを食べたのだけど、この店のはもう、「そうそうそうそう、こんなのが食べたかったのー!」と拳握りしめてふりまわしたくなるほど美味しかった。肉はバラ肉。その脂が溶けてなくなりそうなほどにほろんほろんに煮込まれたそれが、汁ごと御飯にぶわっとかかっている。普通サイズの御飯茶碗に一杯ほどのその飯が、涙出そうなほど美味しかった。不思議な味はしない、知っている調味料で作られて知っている味のもの、といったものなのだけど、肉のほろんとろん感がなんともたまらない。2軒目の夕食で、何こんなカロリー高そうなものつまんでるんだろ、と思いながらだんなと奪い合うように1杯の飯をかっこんでしまった。
今日も隨分いろいろ食べてしまったけれど、気がつくと
「そういや今回の旅行、布のテーブルクロスとナプキンが出てくるような店、一軒も行ってないね」
ということに。高級店の料理も気になってはいるのだけど、なんだか「それどころじゃない」という感じで巷をうろうろしている数日になってしまっている。あさって帰国で、動けるのは実質あと1日間。明日はどこに行こうかなぁ。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
黄ニラ炒め
牛肉炒め
焼き豚
皮蛋豆腐
地瓜粥
を皆で食べて280元
自由に動けるのは今日が最後の台湾4日目。なんでも数駅先には「お粥横町」とか「お粥通り」とか言われている場所があるらしい。24時間営業しているとか、けっこうな数のお粥屋さんが並んでいるとかいう記述を本で見て、
「じゃあ今日はお粥だ!」
と行ってみることにしたのだった。地下鉄からモノレールに乗り換え、「科技大樓站」なる駅に。確かにそこそこの数のお粥屋さんがモノレールの走る道路沿いに並んではいたものの、想像していたほど営業中のお店は多くなかった。というか、ほとんどない。多くの店は昼頃からの営業で、深夜もしくは早朝までが営業時間らしく、午前8時9時といった時間帯にはお休みしているらしいのだった。
24時間営業しているという店もそんなになく、
「な、なんかちょっとがっかりだね……」
と言いつつ「永和清粥大王」なるお店に入ってみることにした。同じ店、違う出入口が数メートル離れたところにあり、そこは「永和清豆漿大王」という豆乳のお店になっている。タイミング悪く、その粥大王には観光バスが到着したところで、続々と観光客がセルフサービススタイルのワゴンの前に列をなしていた。しかしそれ以外にめぼしいところも見つからず、空腹でもあることだし、と少々トホホな気分での観光客に入り交じっての朝御飯。
カウンターには20種類くらいの総菜が並べられ、「これくださいー」と指さすと小皿に盛りつけてくれる。1人用のおかずにするには2皿くらいがちょうど良いかな、というサイズで1皿70元。あまり安くはない。黄ニラの炒めを取って、いかにも甘辛そうな味の牛肉の炒めを取って、チャーシューも取って、支払いを済ませた後によそってくれる粥は1種類。「地瓜粥」という、台湾特有のお粥なのだそうで、塩気のないさらりとした粥の中にさつまいもがごろりと入っているものだ。巨大な釜に人数分の粥がだばだばっと盛られ、どうやらそれはお代わりも無料でできるものらしい(でもよそってくれるのを平らげるだけでけっこう満腹に……)。
総菜類は要するにバイキング方式のようなものなので、けっこう冷めていたりする。ものによっては店員さんがその場でレンジでチンしてくれるのだけど、やっぱり作り置きな味であることに変わりはない。安いなら全然納得できるのだけど、あまり安くはないものだから、どうもビミョーな心持ち。
それでも、お粥は素朴な味で美味しかった。塩気もなんにもないものだから、チャーシューをつっこんでみたり、胡麻油や醤油を垂らしてみたりして、あれこれ味を変えつつ食べる。
杏仁[女乃]茶 25元
檸檬蜂蜜水 30元
草苺雪泡 25元
朝食後はホテルの最寄り駅から1駅離れた「西門町」に赴いて、途中「天仁銘茶」でお茶を収納する缶など買ったりしながら、「書店街」(ここは本当に本屋だらけのブロックで神保町のような匂いがするところ)をひやかしながらホテルに帰還。途中、ホテルの近くにもお店がある「飲脚亭」というドリンク屋の前を通過したので1人1杯好きなものを頼んでみた。1杯100円程度だけど、量はおそろしくたっぷり。マクドナルドのLサイズ並のサイズが出てきて、味もなかなか。実はすごく気に入っているお店だ。
私は杏仁味のミルクティー、だんなはハチミツレモン水、息子は苺味のシェイク。杏仁ティーは、アーモンドの味ではなく、本物の「杏仁」の味でほんのりだけど苦みがある。甘さ控えめ。ヨーグルト味みたいな、程良い酸味のあるイチゴシェイクに、独特の渋みと酸味のあるハチミツレモン水。どれも見知っている味とはちょっとだけ違う世界の味がして、けっこうツボにはまる。注文するのが大変そうだけど、甘さの濃度や氷の量、更にはタピオカを追加とか仙草ゼリーを追加とか、いろいろ好みで変えてもらえるらしい。素敵な店だー。
排骨飯(小) 85元
排骨麺(小) 85元
今日はホテルの近隣をぷらぷら。台湾版「無印良品」とでも言えそうな「生活工場」という店(無印ほどそっけなさはなく、妙にキッチュな模様の皿とかあったりして良い感じ)でランチョンマットやバーゲン品の竹製の盆などを買い、CD屋では妙に安いCD類を購入。ぷらぷらついでに昼食も、と思っていたのに妙に大荷物になってしまい、一度ホテルに戻ってから改めて昼食に出かけた。
行ってみたところは、その名も「排骨大王」。台湾は大王だらけで大変なことになっている。
店名のとおり、排骨麺やら排骨飯がメニューの中心で、あとは総菜類が数種類とスープなど。店頭で次々に豚と鶏を揚げていっては積み上げられていて、それらがどんどん麺や丼に化けていく。厨房と客席が一体化しているようなお店で、1時半を過ぎているのに大混雑。だんなは麺、私は丼を注文した。
やってきたのは、どんぶりを覆い尽くすほど巨大な豚肉が乗った丼。衣は少なめ、更に、カレー粉の風味がする排骨が多い中、ここのは醤油的な割とシンプルな味。端の部分がカリッと揚がっていて、下味もしっかりついていて良い感じ。その揚げ肉と共に高菜のようなものと青菜炒め、更に「魯肉飯」に乗せるような肉の煮込みが肉の下に埋もれている。全体的に「喉が乾きそう〜」(というか実際ものすごく喉が乾く)な味ではあるのだけど、水は出てこない。コップもない。人々はスープを別注文して飲んでいるか、あるいは自らペットボトルのお茶などを持ち込んで飲み食いしている。
なんともワイルドな外見の排骨飯は、そりゃもうめちゃめちゃに美味しかった。ちゃんと衣がついていて、サクッパリッとした食感が味わえる排骨も好きだけど、この店のもとても美味しい。挽き肉のタレがしみこんだ御飯も甘じょっぱくて美味しいし、添えられた野菜が適度なアクセント。息子に横から奪われながらもがつがつと平らげた。
茘枝 85元
草苺 35元
椰子 60元
甘辛いものを食べた後は喉が乾いてしまうわけで、先の店から200mほど離れたところにあるアイスクリーム屋さんに寄ることにした。「雪王冰淇淋供應中心」は、73種類ものアイスクリームを販売しているアイス専門店。キワモノメニューも多いらしい。アイスケースがずらっと並ぶ店内だけど、アイスを目で見て買うというよりはメニューから選ぶ、という感じ。ずらずらと並ぶメニューには
「豆腐(無甜)」 (豆腐だ……甘くない豆腐アイス……)
「猪脚(鹹的)」 (しょっぱい豚足……)
「[口加]哩」 (カレーだ……)
「苦瓜」 (ゴーヤ……)
などというなかなか怖いものも確かにあった。当然美味しそうなものも多く、果物類の名前が並ぶ様は壮観だ。私はライチー、だんなはイチゴ、息子はココナッツ。懐かしげな風情の足つきグラスに盛ってくれて、安いものは100円くらいから。
ライチアイスは、「こんな濃厚なライチ味アイスは食べたことない」と断言できるほど、ライチライチライチしたものだった。その分、果実の繊維とかちょっとした皮のかけらみたいなものも混ざってしまっている。ほのかに繊維感が感じられるココナッツアイスも、苺の粒が感じられるようなイチゴアイスも、どれも素敵に美味しかった。あまりミルクミルクしたアイスではなく、どちらかというとシャーベットに近い。排骨の甘じょっぱさが薄められ、すっかりご機嫌になって地下鉄で再びホテルに帰る私たちだった。
「老圓環三元號」の魯肉飯 20元×2
「老圓環三元號」の魚のすり身の刺身? 50元
「麺食棧」の炸醤麺 35元 ・ 麻醤麺 35元 ・ 滷蛋 10元
屋台の肥肉胡椒餅 25元
屋台の[虫可]仔麺線 35元
屋台の愛玉子 25元×2
夜に備えて、日が暮れるまでホテルでだらだら。4回の夜のうち3度も夜市に入り浸るというのは、台湾旅行のあり方としていかがなものかと思わなくもないのだけれど(おかげで、最後まで純粋な「台湾料理」の店舗というのは行っていないような気が……)、私たちは夜市に夢中だった。屋台巡りが楽しすぎる。日本ではもう味わえない、「100円玉1枚あったらどこで何が買えるかなぁ」というレベルの、わくわくするものが異様にたくさんあるのだった。たっぷり入ったジュース1杯が100円くらい。小どんぶりの麺料理も食べられるし美味しそうな腸詰とか卵焼きとか煮物もやっぱり100円前後で購入できる。射的とかピンボールなどのゲームは1回30円とかせいぜいが150円。1000円持てば前菜からメインディッシュ、デザートまで堪能できてしまう魅惑の世界だった。
本日向かってみたのは中山駅から歩いて15分ほど、乾物街である迪化街にほど近いところにある「寧夏路夜市」。最近になって出現した夜市らしく、ガイドブックによっては載っていないものも多かった。なんでもかつては近くに「圓環夜市」が存在していたのだけど、そちらはもうすっかり寂れてしまっているらしい。圓環夜市の消滅と入れ替わりで台頭してきた夜市のようだ。
「うわー、こっちの本には"圓環夜市はもうありません"って書いてある」
「こっちは圓環も寧夏路も何も載ってない」
何冊か持ってきていた本をひっくり返しながら「本当にここ、夜市やってるのかなぁ……」と激しく不安になりつつ、それでもなんだか気になるので行ってみることにした。
まず寄ってみたのは、創業ン十年になる、老舗の魯肉飯屋さん。夜市エリアの端に位置するお店で、「たしかこのへん……」と向かってすぐにやたらとお客の入りが良い魯肉飯屋さんが目の前に現れた。魯肉飯は20元。青菜の炒めとかスープ類、おかずもちょこちょこあるようだ。だんなと私で魯肉飯を1杯ずつ持ってきてもらい、それだけだとなんとなく寂しかったのでガラス扉のケースから魚のすり身で作ったお刺身のようなものを持ってきてみた。かまぼこほどに練られておらず、魚のぽろぽろした食感がそのまま残っている白い物体が刺身のようにスライスされ、山盛りの針生姜とわさび、醤油が添えられている。こってりした魯肉飯の味に対し、さっぱりとしたその魚すり身のおかずが、なかなか良い具合。魯肉飯は脂っけ少なめなぽろぽろとした肉が使われていて、油のじゅくじゅく感がほんのりと物足りなくはあるけれど味は最高。茶色く染まった御飯を片手にわしわしとおかずを食べているお客さんで店内はいっぱいだった。
さらさらっと食べた夕食第一弾を終え、いよいよ夜市に。道幅7mはありそうな、比較的広い道路の両脇に食べ物の屋台ばかりがずらずらずらーっと300mほどに渡って並んでいる。時間帯にもよるかもしれないけれど、私たちが行った午後7時〜8時半頃の間は、9割以上が食べ物屋さん。時折子供向けのパチンコゲーム台があったり金魚すくい台があったりする他は、ひたすら食べ物食べ物の光景が広がっていた。面白いことに、ここの屋台は魚介が多い。屋台ごとにつけられた電灯が揺れる中、決して衛生状態はよろしくないだろうに、やけに美味しそうな生の海老や丸のままの魚、マグロのサクなどが氷をみっちり詰めた箱の中に並べられている。注文するとその場ですぐに炒めたり麺に仕立てたりスープにしたりしてくれるようだ。牡蠣入り卵焼きをじゃんじゃん作っている屋台もあったりして、どこを眺めても素敵な世界。
で、
「汁麺じゃなくてね、タレかけただけの乾麺が食べたいんだよねぇ……」
というだんなが看板を見つけ、「ここで食べよう」と「麺食棧」なる屋台に最初に立ち寄った。道幅広めの屋台街なので、屋台の裏にはイスとテーブルのセットが数組ちゃんと置かれていてそこで食べられる。テーブルのすぐ後ろがコンビニだったのでペットボトルのお茶を買い込み、路上に置かれたテーブルについて麺を啜った。肉と豆腐を炒めた味噌味のタレがかかる炸醤麺に、胡麻風味濃厚な麻醤麺。添えてもらった煮込み卵「滷蛋」には刻み葱と甘辛味のタレが添えられていて、そんなものまでいちいち美味しい。
麺食後すぐにだんなが再び動き出し、「あー、ピンだピン」とか言いながら「肥肉胡椒餅」を購入。肉入り饅頭かと思いきや、焼き釜の中からオヤジが出してくれたのは「肉入りパン」のような物体で、しかも巨大だった。中身は胡椒の辛さがビリビリ伝わってくる、こってり甘辛醤油味噌味の肉に葱に高菜みたいな野菜にその他色々。想定していたものではないものが渡されただんなは、それでも一口食べて
「うーめー!」
と叫んでいた。旨いらしい。
そして台湾滞在中2回目の挑戦になる「麺線」も。とある屋台の前を通りかかると、麺線屋なのに全然エグいほどのケダモノ臭は漂ってこず、どころかとても美味しそうな匂いが漂ってきた。看板には「[虫可]仔麺線」という文字が。小ぶりの牡蠣をいれた麺線のようで、「鵝血入」にすると15元お高くなるらしい。牡蠣入りの麺線にガチョウの血を入れるんですか……?とびっくりしながら、とりあえず血抜きのを1杯いただいてみる。繁華街にある大人気の麺線屋のものはとても美味しかったのだけど、果たして屋台で食べるものはどんな味であるのか、興味津々ながら戦々恐々。
さすがに1人1杯も食べられるほど胃袋に余裕はなかったので、テーブルの中央に丼を置いて両側からだんなと私でレンゲをのばす。見かねたオヤジさんがもう1つ器を貸してくれ、取り分けてからはふはふ言いつつ啜ってみた。
……うまーい。
めっちゃめちゃ、うまーい。
なんだよなんだよ、西門町の人気店に全然負けてないじゃないか、ていうか、こっちの方が圧倒的に美味しいじゃないか!と、その麺線はのけぞるほど美味しかったのだった。スープは鰹だしの風味(ほんだしもたっぷり、てな感じだけど)。豚のモツもどっさり入っているけれど、それ以上に小粒の牡蠣がこれでもかと20粒近く入っている。じんわりと好みな程度にケダモノ臭が漂ってきて、でもそれ以上に牡蠣の香りが濃厚で牡蠣そのものもぷりぷりと柔らかく美味しい。ぐずぐずに柔らかい素麺をとろみのついたスープと共にレンゲでずるずると啜ると、暑さも忘れる美味しさだった。最初は「半分……食べられるかな」「2人で1杯ならなんとかなるでしょ」とか言いながら注文したのに、半ば奪い合うような感じで麺線は消えてしまった。
「おいしー!おいしいよ、ハオチーだよ」
「ヘン、ハオチーラ(とっても美味しい)。ありがとう、シェシェ。美味しかったぁ」
片言の日本語を話すおっちゃんに旨かった旨かったよと言いながら屋台を去り、とどめにデザート、オーギョーチー。
プラカップに甘酸っぱいレモン水とぷるぷるとしたゼリーをいれ、更にかき氷状の削り氷を詰めたら軽くシェイクして渡してくれる。スプーンではなく、添えられるのは太めのストロー。ゼリー入り飲料を飲むかのように、ストローでずびずびずーと吸って食べるようになっている。1杯25元。とりあえず1杯もらって飲んだところ、そのまま息子が抱えて放さない体制になってしまったので「すんません、もう1つ……」と追加してもらい、皆で交代してずるずる飲みながら帰路についたのだった。歩いては食べ、歩いては食べばかりをしていた寧夏露夜市。何しろ食べ物屋台しかなくて、身動きとれなくなるほどの混雑でも寂しくなっちゃうほどの人気のなさでもなくて、非常に非常に好みな雰囲気の夜市だった。
これだけさんざん飲み食いして、今日の夕食は全部で1000円くらい。やっとやっと、屋台の文字を見て、「ああ!あれはぁ〜!」と駆け寄れるほどに理解できるようになってきたのに、明日の昼にはもう帰国だ。また絶対来なければ、夜市……ていうか台湾。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
鹹豆漿 18元
冰豆漿 18元
焼餅 15元
油條 15元
蛋 10元
宿泊したホテルには、時計がついていなかった。目覚まし時計がないわけなので(モーニングコールサービスはあるけれど)、携帯電話のアラームで起きる。だんなが設定した曲は「スターウォーズ ダースベイダーのテーマ」。午前7時半にそれが流れ出しても一向に息子が起きる気配がないので、
「てーいこくはー、とーてもーくーさいー。ダースベイダーも、くーさいー♪」
と耳元で歌ってやる。そう、私たちは一家揃って、なんだか臭かった。にんにく臭というか臓物臭というか、なにやら得体のしれぬ成分が毛穴から出はじめているような感じ。いろいろ臭いもの、食べてきたから……(でも臭豆腐とか豚の血入りのソーセージとか、そういうのは食べなかったんだけどなぁ……←勇気不足)。
最後の朝食はさっぱりと、それでも「いかにもな」ものを食べに行ってみようか、と朝から午前中にかけてだけ営業している豆乳屋さんに行ってみることにした。本当のところ、私もだんなも豆腐および大豆料理は嫌いではなく(どころか前向きに好き)なのだけど、豆乳はちょっと苦手。特に甘く冷たい豆乳はあんまり好みとはいえなかった。温かく味のない豆乳も、「だったら豆腐の方がいいなぁ」という感じ。それでも、創業は46年前だという、市場の中にある豆乳屋さんのそれは、なんだかすごく美味しそうだった。JAAでもらったパンフレットに掲載されていた店だ。駅もちょうど隣だし、駅から歩いてすぐらしいし、と向かってみたのだった。
駅前通りに面するビルの2階、あまり目立たない看板にその店名を見つけ、
「ここだー!」
「2階だったのか……」
と薄暗い階段を上っていく。2階にたどり着くと厨房の熱気と共に20人以上が集まっているお客さんたちの熱気押し寄せてきた。いかにも市場の中の店、といった感じの雑多な雰囲気。そこかしこで巨大な扇風機がぶんぶんと回っている。蒸し暑い。
私は具入りのしょっぱい豆乳「鹹豆漿」、だんなは冷たく甘い豆漿「冰豆漿」を。添え物に焼き餅(厚焼きクレープを折り畳んだようなもの)、油條(細長い揚げ餅。中身がスカスカのチュロスみたいなもの。甘くはない)、蛋(卵焼きだった)をいただいた。これでお会計280円というところ。おやすい。
「ハイ、トウニュウね。しょっぱいのね」
品名をメモして手渡すと、片言の日本語を繰りつつ厨房のおばちゃんがどんぶりに豆乳を注いでくれる。私のはどんぶりの底に葱やら海老やらその他なにやら調味料を放り込んだ上で湯気もうもうの豆乳をだばだばだーと。上にちらりと醤油と胡麻油を混ぜたようなものをひとたらししてくれる。いれてくれた調味料の中に「にがり」でも入っていたのか、注いでくれた時には液体だったはずの豆乳は、席に持っていく頃には「ゆるめの茶碗蒸し」といった風に固まりつつあった。
油条や焼き餅を浸しながら食べる豆乳、食べるのは初めてだ。これがもう、「今まで飲んだ豆乳はなんだったの?」というくらい、絶品だった。なにしろ、冷たく甘い豆乳からして、そこらへんで買うものとは全然違う。変にくどい甘さや匂いがなく、わずかに黄色い豆乳は大豆そのままの味。甘さも強くなく、とても飲みやすい。キンキンに冷えているのがまた嬉しい。しかも鹹豆漿がもう!おぼろ豆腐に香ばしい海老や葱や油条が入り、適度に醤油や胡麻油で味がついているようなもので、目から鱗がだばだばと落ちてくるほどの驚きの美味しさだった。こんなに豆乳って美味しかったのかー!と大感動。スーパーで売られている豆乳はやっぱりあまり飲む気がしないけれど、この店のだったら毎日飲んでも嬉しいかもしれない、と力強く思えるシアワセな味だった。
中で食べていくお客も多いけれど、テイクアウトしていく客もものすごく多い。金魚すくいの金魚をいれてる袋のように、豆乳をぷらぷらさせて持ち帰る人が続々とやってきていた。あああ、美味しかったよぅ。昨日の朝の観光客うじゃうじゃのお粥屋さんの数億倍幸せな朝御飯だったよ(価格も1/4くらいだったし……)。
「鴨肉扁」の鴨肉 300元分
白飯 50元×2
ビール 100元
アイスコーヒー 60元
飛行機が発つ時間は午後1時半。12時には空港についていたいし、そうなると1時間前には台北駅からバスに乗った方が良いから……と計算すると、ホテルを10時半過ぎには出なければならない計算になる。多くの飲食店及びデパートなどの小売店がオープンするのは11時。せいぜいが10時というところで、あれこれ行動するのは不可能にみえた。が、
「ホテルの近くにある"鴨肉扁"ってお店がさぁー、気になっていたんだけど……午前9時半からやってるってよ」
「お、テイクアウトもできるみたいじゃん」
「肉を買っていって、空港で食べるとかいうことは可能かなぁ」
「やってみるじゃーん。最後まで美味しいものが食べたいじゃーん」
と、「空港で美味しい昼御飯を食べようプロジェクト」が急遽スタート。私が最後の荷造りをしている間、だんながホテルからひとっぱしりして鴨肉を買ってきてくれた。1人分がいくら、というものではなくて、「100元だとこのくらい」という従量制になっているらしい。30分ほど経過したところで汗みどろのだんなが店のロゴ入りの袋を抱えて帰ってきてくれた。
「鴨肉扁」は、本当に鴨肉(実際はカモではなくてガチョウの肉なのだそうで)だけを売っているお店。それに汁ビーフンなどの主食が別にあり、つけてもらうようになっている。だんなは汁ビーフンも買ってきてくれたのだけど、それはさすがに空港まで持っていくことはできなさそうで、部屋でずるずると食べた。鴨のだしのスープに揚げにんにくと揚げ葱が入り、もやしもたっぷり。透明なスープに揺れるビーフンは、なんてことない外見なのに、これまたやたらと美味しかった。あと15分でチェックアウトという時間に、何故か部屋でそば啜ってる私たち。
で、バッグの上に鴨肉詰めて、いよいよホテルをチェックアウト。歩いて数分の距離にあるバスステーションに大荷物を引きずっていき、そこからバスで1時間ほどかけて空港へ。出国手続きも済ませてあとは搭乗のアナウンスを待つだけ、という状態になったところでセルフサービス式のレストランをみつけて一休みすることができた。寿司とか丼もの麺ものを販売しているカウンターで、「白い御飯だけが欲しいのです」と主張して、どんぶりに1杯50元の白飯をいただいてきた。1缶のビールをだんなと半分こし、ガチョウ肉の入った箱をあける。紙箱の底には肉から染み出た肉汁と油が溜まっていて、それを吸わせるかのように刻み生姜が1つかみ分ほども敷かれている。赤く酸味のあるピリ辛だれもビニール袋に入れられて添えられていた。よくある駅弁サイズくらいの紙箱の中には、みっちみちに骨つき肉が詰まっていた。香港でも「繼L」のダックを弁当仕立てにしてもらって持ち帰ったりする人が多いけれど、それと似たような感じ?
シンプルな塩味の肉には生姜の香りがぷんぷんと染みついていて、肉汁たっぷり旨みたっぷり、冷めてはいるけどそれは期待以上に美味しかった。手をべたべたにしつつレストランの紙ナプキンを使わせてもらい、「すんませんすんません、白飯だけ取って、こんなもん喰っててすみません」と隅っこの店でそれなりに肩幅狭く保ちつつ(でもレストラン、ガラガラだったのでまぁいいかな、と……)、ビールにも御飯にもすこぶる似合うガチョウ肉を楽しんだ。台湾での食事は、これが本当の本当に最後。最後の半日どころかものの数時間に、絶品のガチョウ肉と、これまでの豆乳概念をうち崩すような美味しい豆乳が味わえて最後の最後まで楽しめた。台湾ブラボー、台湾最高。またきっと来るのよ、と決意も新たに残ったお金は換金せずにそのまま持ち帰ることにした。
和風アントレ(白身魚の甘酢かけ・筍御飯)
台湾風小菜
アーモンドミルクゼリー
日本風味"そば"
ジンジャーエール、日本茶
台風シーズンの旅行ということでどきどきしていたのだけど、幸い今回の旅行中、雨には一度も遭遇しなかった。帰りの飛行機でニュースを聞いていると、今になって台風が近づいてきていたらしい。今日は沖縄あたり、月曜日には関東近辺をかすめるかも……などという内容を聞きつつ、飛行機はそれなりにガタガタと揺れていた。
台湾時間で午後2時半、日本時間で午後3時半という半端な時間に出てきた機内食は、麻婆茄子か和風魚料理かの選択。鶏肉のハムのようなものや、蔓草のような不思議な野菜の炒め物を盛り合わせた前菜、それに日本蕎麦とアーモンドゼリー、という、そこそこ軽めの内容だった。機内食でしかない味ではあったけど、でもアーモンドゼリーはかなり好みな味。牛乳たっぷりのぷるぷるババロアに薄切りアーモンドがたっぷり混ぜられていて、そのぷるぷるぽわぽわした食感も悪くない。
息子は以前、アジアビーチに行った帰国便の飛行機を降りた後になって「おうちには帰らないのよー、お部屋(ホテルの部屋のこと)に帰るのよー」と大騒ぎしたことがあったのだけど、さすがに「家ではない他の場所に滞在した後、次に飛行機に乗ると家に帰ってしまう」ということは理解できてきたらしい。コーラとおつまみを堪能し食事前にトイレに行き、チャイルドミールもそこそこ平らげ、ヘッドフォンを装着してしばし音楽を楽しんだあと静かに着陸するまで寝続けた。
握り寿司
ビール
雨の中、無事に成田に到着し、タイミングよく発車間際の快速に乗って我が家にたどり着いたのは午後8時頃。夕飯を作る余裕もなく、まだオープンしていた駅ビルでいなり寿司と握り寿司を買ってきた。5日ぶりにのびのび肩まで浸れる風呂を堪能してから、台湾の思い出(主に味の思い出)に浸りつつビール飲み飲み寿司をつまむ。寿司飯の味とか、油揚げの甘辛醤油&味醂味はやはり懐かしい味。
今日の朝食後に道中のスーパーで買ってきた「滷味香 滷包」(肉や厚揚げや卵などを煮込む時に使うスパイスミックス。八角やクローブ、シナモンその他各種スパイスがぶわーっと詰められているらしい)がかなりすごい匂いを発散させているのを「どこにしまえば良いんだか……」と途方に暮れつつ、おみやげ物に囲まれてかなり幸せな帰国後の夜だった。
プーアル茶
山のような洗濯物があるのに、今日は一日ずーっと雨。
「しょうがないねぇ……」
と居間をハンガーだらけにしてしまいながら、今日は一日ごろごろだらだら。やっと涼しく過ごしやすい気候になっている中、朝から息子はヘンだった。
「ピザ!ピザを食べましょー!」
起きるなりピザピザ言っている。おなかすいたね、朝御飯どうしようか、でも買い物に行くにも大雨でイヤだしね、とだんなと相談している脇でも、
「あさごはんは、ピザー!」
とイタリア人みたいなことを言っている。いや、イタリア人でも朝からピザは食べないだろう、いくらなんでも。
息子の要望はとりあえずなだめつつ、冷凍庫に残っている(いつから残ってるかというと昨年春頃から残っている……)吉野家の冷凍牛丼を温める。冷凍御飯もあったので、それをチン。簡単に食べられるものが台所にあるというのは嬉しいことだ。冷凍牛丼がなかったら、あやうく台湾で昨日買ってきたばかりの「魯肉飯の素」を御飯にぶっかけて食べるところであった。怪しい怪しい「豚ひき肉炒め煮込み缶詰」、だんなが面白がって見つけるたびに買っていたのだけど、ピリ辛味とか五香粉味とかいろいろあるようで、実は私も興味津々。こっそり開けてお弁当とかに詰めちゃったらのけぞられちゃうかしら。
南瓜の種
武夷岩茶
「せっかく綺麗なお茶器色々買ってきたんだから、一生懸命使わないとね」
と、朝はプーアル茶、おやつには武夷岩茶、と色々淹れて飲んでみる。台湾で買ってくるまでもなく我が家には中国茶葉が大量にあったものだから、今回の旅行ではほとんど茶葉は購入しなかった。今ある茶葉をなんとかしないことには次回、中国茶圏旅行が叶ってもお茶っ葉を買うに買えないのである。憧れだった竹製の茶盤が手に入ったので、以前より一層中国茶を淹れて飲むのが楽しくなった。何しろ私は粗忽者なので、あとはせっかく買った茶器を割らないようにしなければならぬ。
「お腹すいたね」
午後3時を過ぎて、おやつになるものはないかなー、と麦チョコを出す。息子は背後であいかわらず
「おやつはねー、ピザがいいと思うよー」
とイタリア人化(いや、もしかしたらアメリカ人化しているのか)している。一体どうしたんだ息子。
麦チョコ、あのパフパフ感がなんとも心地よい。適度なチョコ感もたまらない。家族3人ぱりぽりぱりぽり麦チョコを平らげてしまったので、お茶うけにと南瓜の種も出した。殻つきの種なので、前歯でカリカリ割りつつ食べる。
「かぼちゃー、かぼちゃー、おいしいね」
楽しそうに南瓜の種を囓っていた息子は、
「でもね、ピザが食べたいんだよ」
と上目使いに私を見つめた。……わかったよ、夕飯はピザにしよう。
キッズ4ピザ(バーベキューチキン・たまごコーン・アイダホスペシャル・ハワイアン)
ハーフ&ハーフ(カルボナーラ・韓国風プルコギ)
カレーポテト
コーンサラダ
ビール
アメリカに住んでいたころはそりゃもうしょっちゅうピザを焼いていたような気がするのだけど、日本の台所だと今ひとつその気になれない。300℃くらいまでは軽く出せたアメリカの巨大なオーブン(さぞ電力を喰っていたんだろうなぁと思われる)に比較すると日本の家電のそれはどうも頼りなく、焼くのにものすごく時間がかかる。どうやらダッチオーブン(とかスキレットといった鋳鉄鍋)でもピザは焼けるらしいけど、ピザが食べたくてしかたのないらしい息子の前でピザ焼きを失敗してしまったら、きっと漢泣(おとこなき)に泣いてしまうに違いない。失敗は許されなかった。だいたい、大雨で材料買いに行く気力も沸かないし。
で、
「久しぶりじゃん久しぶりじゃん。メニュー取ってあったっけ」
「最近届いたのがあるはずだけど……捨てちゃったかなぁ」
と宅配ピザ屋の広告をせっせと発掘。宅配ピザ、頻繁に続くとげんなりするけど、あれはあれで悪くない。たまに食べると美味しいなぁと思ってしまう。あれこれ眺め、ピザハットの「キッズ4」なるものを取ることにした。子供向けのピザが90度ずつに組み合わされた4種ピザ。Mサイズのそれと、同じくMサイズのハーフ&ハーフで、「カルボナーラ」に「韓国風プルコギ」なるちょっと怪しいものを注文してみた。合い言葉の「チーズくん」を電話口で伝えるとカレーポテトが無料でついてくるらしい。
この雨で同様の事を考える人は多かったらしく、配達までに50分ほどの時間がかかるという。早めに風呂に入り、だらだらしながらピザを待った。
4種ピザは照り焼きチキン系甘辛味の鶏肉ものと、卵たっぷりのコーンマヨネーズもの、じゃがいも系マヨネーズ味、パイナップルたっぷり甘めのもの、といかにも子供が好きそうなものばかり。息子は「コーンだー」「おいもだー」と、予想どおり大喜びしてくれた。その横で密かに私も「パイナップルだー」「コーンだー」と喜んでいる。どうも私は子供向けのピザの味がかなりツボであるらしい。今日初めて自覚したのだけど、
「旨いわこの子供ピザ……」
と真剣にキッズピザに取り組んでしまった。ベーコンが乗る卵味のピザ、カルボナーラも、ほのかにニンニクの風味がするピリ辛味プルコギピザも、悪くない。チーズが挟まれた食べ応えのある生地をもりもりと皆でつまみ、Mサイズ2枚が大人3人幼児1人の手でおおむね消え失せた。
怪奇ピザ魔人は満足した様子。もしかして息子、中華料理圏よりアメリカ料理圏の方が肌に合うようになっちゃったのかしら、と本気で心配してみたり……。