食欲魔人日記 00年9月 第3週
9/11 (月)
かけうどん
麦茶

先週バタバタと私が倒れ息子が倒れた我が家であったが、週末は至って平穏だった。ケンタのチキンも喰ったし、朝食なのに台場でビールなぞ飲んだりしていた。なのになのに、今朝起きてみたらば(いや、正確には昨夜遅くから)だんながうんうん唸っているのである。吐き気と下痢を伴った風邪であるらしく、熱があるうえに胃腸にダメージという大変ヒサンな状態なのであった。何だか息子まで下痢と熱が再発しているし。

「なにも食べられそうにない……あ、桃、くらいなら、なんと、か……。」
とだんなは食欲大魔人らしからぬ弱音を吐いている。ああ、ヒサンだ。いつも大量食物摂取の人が物喰えぬというのは悲壮感を漂わせる。

結局、かけうどんなら何とか、という話になり、1玉のうどんを茹でる。だんな1/3玉、息子1/4玉、私残り。
ヒガシマルの即席だしをお湯で溶き、ゆがいたカトキチの冷凍うどんを入れ、上から刻み万能葱をぱらり。いつもなら3人で3玉喰ううどんが1玉だなんて、本当に病人食みたいだ。

ツナとハム、サニーレタスのサンドイッチ
ピーナッツバターとバナナのサンドイッチ
ジャムバターサンドイッチ
マサラチャイ

だんな、スポーツドリンク以外は飲めず喰えずの身体になってしまっている。体調不良であるはずなのに妙に食欲旺盛な息子と二人、サンドイッチを作って食す。
片面にバター塗って片面にイチゴジャム塗ったジャムバターサンド(←実はすっごい好物)。ピーナッツバターと輪切りのバナナを挟んだやつ。それら2つは息子と半分こして、あとは自分用にツナサンドを作成。バター塗ったパンにサニーレタスを敷いて、玉ねぎたっぷりのツナペーストと薄切りハムを何枚か。食パンの大きさのサンドイッチをそのまま切らずにガブリと食べる。

供にはマサラチャイ。ティースパイスをたっぷり放り込んだ濃厚なミルクティーを作る。ミルクパンたっぷりに作ったチャイを、茶こしで漉して砂糖たっぷり入れて飲む。
うんうん唸っているだんなには悪いけど美味しかったです、はい。

永谷園 モコモコバニラ
山形白鳳桃カルピス

私は良いようにマスコミに操られるタイプであるらしい。先日より、お笑い芸人の爆笑問題がやっている"衝撃映像!"のTVCMが気になって仕方ないのであった。電子レンジの中でもわもわと膨らむケーキ。あうあう、食べたい食べたい食べてみたい。合わせ調味料の類(麻婆茄子の素なんていうもの)には全く興味がないくせに、こと甘いものだと嗜好は無限になってしまうのであった。ケーキ屋の高級ケーキも大好きだけど、私の興味は目下電子レンジの中で膨らむケーキに向いている。

で、その商品を先日見つけた。池袋サンシャインシティの裏手にある西友に、その「モコモコ」なる永谷園製品は煌びやかに並べられていた。
「こ、こここここ、これこれこれこれ!」
と籠の中にすかさず1箱入れる私を、だんなは呆れながら見ていた。

早速食べてみるのじゃ。
マグカップに粉を入れ、卵1個入れてかき混ぜる。ダマが無くなったらレンジで2分。
本当にCMの通りになるのか、電子レンジの窓に顔押しつけるようにして大人1名と子供1名がじっと見守る。果たして、ケーキは見事に膨らんだ。1分を過ぎて頃から"もももももも"と膨らみはじめ、15秒ほどで頂点まで"ずももももも"と膨らみ、そのままフツフツ言いながらケーキは焼けた。……いや"煮えた"のか"膨れた"のか良くわからないけど、とにかく出来上がった。レンジを開けてもしぼまないマグカップケーキにちょっと感動しながら、スプーンですくって食べる。

お供には季節限定カルピス"山形白鳳桃"。面白くて1ヶ月ほど前に買ってきたやつだ。氷たっぷり入れて、封を切った途端にもやもやと桃の匂いが広がるカルピスをグラスに注ぐ。

さて、"モコモコ"は蒸しパンのような味がした。ふわふわとやや頼りない食感で腹は膨れないけれどなかなか美味しかった。スプーンですくおうにも弾力があって全然切れず、熱いそのマグカップケーキを結局は抜き出して手でちぎって食べた。チープな味だけど、この"モコモコ"が楽しいので多分私はまたやってしまうのだ。

チキンジャルフレージー
スペアリブとクレソンのスープ
サフランライス
麦茶

「白粥みたいなのが食べたい……」
とだんなはまだ絶不調だ。私は元気だ。息子も元気(←腹下ってるけどなんでも食べたがる)。
だんなに塩を極力少なくした白粥を海苔の佃煮、ほうじ茶と一緒に食べさせて、私と息子は"風邪など吹き飛ばせスパイシーディナー"をお題に夕食を摂る。

先日、モニター商品として「ジャルフレージー」なる瓶詰めをいただいてしまった。「英国王室御用達」の文字が輝くSharwood's製というその瓶詰めは、カレーソースであるらしい。添付のリーフレットには玉ねぎと鶏肉を炒め、ソースを1瓶加えて煮込んで喰え、とある。舐めるとこれがかなり辛い。一緒に貰ったマンゴチャツネを入れると辛みも柔らぎそうなので、これを試してみることにする。

ご飯はやはりサフランライスだろうか。アジア料理の本を見つつ、サラダ油でシナモンとカルダモンとローリエを炒め、米も炒め、サフランと一緒に塩を加えて炊きあげる。ほどなく炊飯器からシュンシュンと怪しい匂いが立ち上り、ジャルフレージーで鶏肉を煮ているフライパンからは更に怪しい匂いが広がり始めた。昨日の残りのスープ、スペアリブとクレソンのスープも温めて、スパイスだらけのご飯を食す。

舐めた時はえらく辛かった"ジャルフレージー"なるものは煮込んでみるとそうでもなかった。カレーと言えばカレーなのだろうけど、あまりカレー粉的な匂いはしない。辛いけど、妙に甘い後味がある。リンゴとかパイナップルのような甘い後味。
シナモンの甘い匂いのするサフランライスに鶏肉ごろごろの初体験のカレーをかけた本日の夕食。あと半瓶分残ってるから、これはだんなが完治してから喰うことにしよう。

9/12 (火)

緑茶

今日は朝から下痢だった。
大体、「げり」という語感の何と宜しくないことか。「けり」とか「ぷり」とかだったらまだ軽症な印象があるのに「げり」っていかにも重症みたいじゃないか。そんなことを朝からベッドに突っ伏して考える私は寝不足だった。深夜キリキリと下腹が痛み出して、午前3時過ぎからトイレとお友達だったのだ。息子とだんなから伝染ったのは目に見えている。ああ、家族で一番強靱な胃袋保持者の私が……。

何も食べたくないというだんなを前に、とりあえず何か腹に入れようと桃を剥く。5個1000円だった柔らかな完熟桃。薄い皮をツルツルと剥いて、茶色く痛んでしまったところをこそげながらざくざく切って盛り合わせる。良い香りの皿を前にフォークを構えていたら、ぽそりと
「あ……おいしそう……。」
とだんな。結局横から手を出してきて息子と一緒に全員で桃をつつく羽目になる。

トラック売りだったこの桃、本当に本当にめっちゃめっちゃ美味しい。腹の痛みも吹っ飛ぶほど甘い。本当に吹っ飛んでくれたら言うことないのに。

水信の
 カツ丼・たぬきそばセット
緑茶

「喰って治す。病気は喰って治す〜。」
と血気盛んに店屋物を取ることにする。よりにもよってカツ丼とたぬきそばのセットだ。どちらもミニサイズとはいえ、なかなかヘビィな選択だ。だんなは鍋焼きうどん。

近隣のそば屋で最も信頼のおける味のものを届けてくれる水信、20分ほどで届けられた丼も麺も旨かった。揚げ玉がたっぷり浮いたたぬきうどんに、グリーンピースの散らされたカツ丼。玉ねぎたっぷりの、やや甘めの味つけのカツ丼はいかにも"そば屋のカツ丼"という風情だ。

……でも、やっぱり腹下してる時にカツ丼はまずかったらしい。
午後はずっと吐き気と胸焼けと腹痛と下痢に苦しむことになってしまった。でも、ここでお粥とかすうどんとか食べていたら本当に病気な気分になってしまうのだから、ぐっと我慢だ。がんばれ自分。

カマンベールチーズトースト
アイスカフェオレ

それでも食欲はあるのであった。我ながら天晴れだ。
サンドイッチ用の薄切り食パンに、カマンベールチーズを薄く切ってぺろぺろ乗せてトーストに。コーヒー少なめのアイスカフェオレを1杯。

そう、チーズの福袋というのをインターネット通販で買ってみたのだ。横浜クィーンズイーストの食料品売場にあるチーズ屋さんは実際にも何度か覗いたことがあって、「5000円相当」の煽り文句に惹かれて2000円のそれを思わず注文してしまったのであった。

本日届いた袋の中には
デンマーク産 BLUE CHEESE
デンマーク産 BUKO Rum
フランス産カマンベール
フランス産カマンベール Geramont
フランス産カマンベール FLEUR de LAIT
フランス産boursin(←にんにく入りチーズ)
フランス産 Pie d'Angloys
KRAFT フィラデルフィアソフトクリームチーズ パイナップル入り
KRAFT 粉チーズ
とざくざくと9つのチーズが入っていた。期待していたような、でっかいやつをカットしたようなエメンタールだのパルミジャーノだのは無かった。どこかで見たことあるようなパッケージのものばかりだったけど、2000円と思うと安いかもしれない。しかしカマンベールばかりあってどうしましょう。オーブンで焼いて簡易フォンデュでもしろということだろうか。

というわけで、カマンベール乗せのトーストをもりもりと食した次第。クリームチーズはリッツに乗せて喰ったらきっと美味しい。

9/13 (水)
イチゴジャムバターサンド
アプリコットジャムバターサンド
タカナシ低温殺菌牛乳

午前8時起床。腹……痛い。だんなの熱はやっと37℃台になってきた。
1人だけ元気な息子の為にサンドイッチを作り、それを横から私もつまむ。

目下我が家でブームになっている(いや、ブームなのは私だけ)ジャムバターサンド。小瓶のイチゴジャムがあとわずかだったので、イチゴジャムのサンドを1つ、アプリコットジャムでも1つ。1枚を半分に切った食パンの1つにバターをちょいと厚めに塗り塗り、もう1つにジャムをやっぱり厚めに塗り塗り。ぺたんと挟んで、上からきゅっと押してナイフで切る。これがこれが、アプリコットジャムでもなかなか美味しかった。でもきっとマーマレードには不向きだろうな。
そう言えば、先日「ピーナッツバターとイチゴジャムもイイ感じですよ。」というメールをいただいた。……それはちょっと勇気が要る組合せだ。今度体力万全な時にやってみよう。

で、いつも明治だの森永だのの普通の牛乳しか買わない我が家であるが今日はちょっとリッチなやつが冷蔵庫に入っている。
タカナシ製の低温殺菌牛乳。賞味期限が迫っているということで、1パック230円でたたき売られていたのを思わず買ってきてしまった。こってりと濃厚で、心なしかほの甘い牛乳。ちょっとシアワセだ。

玉子うどん
麦茶

「うどん……」
「だしはヒガシマルので……」
「卵入れて、それは半熟……」
まだロクに起きあがることもできない病人のくせに、だんなの注文はやたらとウルサイ。
病人の言うことに逆らうこともないかと、彼の言うとおりに昼食はうどん。インスタントのヒガシマルのスープに卵を割り落として数分火を通し、あつあつのうどんの上にそれをかけて食卓へ。万能葱をぱらり。

我らがうどんをツルツルと啜っている間の息子の保育園での給食は
しめじごはん、さんま蒲焼風、おひたし、うずら煮豆、すまし汁、ぶどう
だったようだ。おやつは
カステラ、あられ、牛乳
ときた。なんだかめっちゃ美味しそうである。保育園のご飯ときたら何だか豪華で、キッシュだの煮込みハンバーグだのコロッケサンドだのという文字が飛び交っている。いいなぁ……給食。

宅配寿司 味よしの
 味よし丼
インスタント吸い物
緑茶

私は思った。
「天津丼が食べたい……。卵ふわふわの、甘酸っぱいあんのかかった天津丼……。」
だんなは思っていた。
「味噌ラーメンが食べたい……。ご飯はちょっとイヤだ……。」
大概、どちらかが「これ食べよう」と言うともう一方がすぐに賛同するものなのに、今日の我らはどうも平行線であった。

「天津丼?」
「んんん〜」
「……味噌ラーメン?」
「ぬぬぬぬぬ〜」
結局、"寿司なら喰えそうだ、お互い"と宅配寿司を取ることで同意に至る。5店ほどの宅配寿司店が出入りしているこのエリアで最も喰える味のものを届けてくれる"味よし"の丼もの。ねぎトロにイクラにウニが乗せられたものを注文し、添付のインスタント吸い物を入れてあったかい緑茶も入れてこれを食べる。ちょっと臭みのあるウニに小粒すぎるイクラが悲しかったけど、まぁ宅配寿司に多くを期待しちゃいけないのだろう。

9/14 (木)
チョコブレッド
食パン with バター
牛乳

最近はデパートに出る余裕もないので、美味しいパンも買ってこられないのである。ああJohanの食パンでトーストしたい。木村屋のあんぱん食べたい。美味しいサンドイッチ食べたい。……でも、だんなはやっと熱が下がった、というところなのであった。

絶好調の息子は目の前で、コンビニで買ってきた4個入り100円なるチョコブレッドをシアワセそうにもしゃもしゃと喰っている。チョコペースト入りの、手のひらサイズの可愛いチョコパンだ。息子が2個喰い、私は1個。
だんなが
「半分だけなら喰えそう……」
と切なそうに言いつつ食べ始めた食パンの半分は私が引き受け、何だか中途半端な朝御飯。

でも、どうやら私もだんなも連休に向けて体調万全に整いつつある。連休に合わせて回復するなんて不真面目というか何というか。

ほっかほっか亭の
 鶏唐弁当
麦茶

11時50分、
「なにだったら食べられる?」
とベッドの上でごろんごろんしているだんなに尋ねると
「……牛丼なら喰えそう……」
という返事が帰ってきた。カツ丼は絶対無理、カレーもあんまり喰えそうにない。ハンバーガーのCM見てもぐぐっと来ない(←いつもぐぐっと来てるらしい)。でも牛丼は大丈夫。全く不明だ。そんなに吉野家が好きかね、君。

小雨のパラつく中、まだ微量に下痢で微量に腹痛を抱えていた私はあんまり外に出たくはなかった。
しかし私がつわりで苦しんでいた真冬の頃、"冷やし中華が食べたい"というリクエストに応えてデパートからスーパーまで駆けずりまわってくれただんなの希望である。重い腰上げて、キコキコ自転車こいで最寄りの吉野家へ向かう。

吉野家で牛丼の並(←いつもだんなは特盛しか喰わないのに、これを頼まれた)と味噌汁、そばのほっかほっか亭で自分用に鶏唐弁当を購入。どうやら私の嗜好はもう全開しているらしい。カルビ丼や鶏飯や煮込みハンバーグ弁当が美味しそうでたまらない。2つの弁当袋を抱えてキコキコ自転車こいで帰宅する。キャップがはめ込まれているとは言え、味噌汁を運ぶというのはなかなか大変な作業だった。

だんなに大感謝されつつ一緒に昼御飯。"唐揚げスパイス"なる顆粒の小袋とレモン汁入りの小袋つきの鶏唐弁当。でかい唐揚げがスパゲッティの上に5個、ごろんごろんと転がっている。ポテトサラダにキャベツのサラダ、漬物つき。白い御飯はやたらとたっぷり入っている。滅多に買うことがなく、これまでも買ったことのなかった"ほか弁"だけど、コンビニ弁当に比べればかなり美味しい。"5個しかないのね"とちょっと惜しみつつ食べていた唐揚げも見た目以上に食べ応えがあって満足できた。

……さ、そろそろまともな食生活に戻れそうだ。

たこ焼き
冷茶

だんなも動けるようになり、快気祝いの献立はいきなり「たこ焼き」。
先週末に"たこ焼きしましょう"と買ってきたゆでだこのパックが冷蔵庫で冷えているままだったのを思い出したのだった。快気祝いにたこ焼きは無いだろう、と思いつつ、それでもわくわくしながらタコを刻む。

卵を水で溶き、小麦粉を入れた生地を用意。キャベツを刻み、紅生姜を刻み、葱を刻み、揚げ玉と鰹節を小皿に盛り、いよいよたこ焼き作成を始める。カセットコンロの上に9個焼ける小さなたこ焼き鉄板を置き、油を敷いていざいざいざ。
生地を流してタコを放り込み、具をパラパラと上に盛り付けて、更に生地を流す。流した生地がちょっと乾いたところで千枚通しを手に持ち、ちょこちょことつついて丸く丸くしていく。ぶきっちょな私は、これが大層難しい。そもそも自分でたこ焼きを焼く文化は私の実家には無い。

「こう、生地を押し込んで、手前から奥にくいっと転がすのね。」
と大阪在住歴のあるだんなに教わりながら、だんだんたこ焼きはたこ焼きらしくなってきた。最初は半球の残り半分はヘンにうじゃじゃけた妙な塊にしかならなかったものが、なんとなくまん丸に出来るようになってきた。おおおー。楽しい。うりゃうりゃうりゃうりゃ。

まん丸にこんがり焼けたたこ焼きに、おたふくソースかけて青海苔ふって食べる。ホコホコで、小さめながらなかなか美味しい。9個焼きの台で2回焼き、ほんの少し残った生地で3個焼き、それでも足りなくて新たに生地作って更に2回焼く。更に最後に1回、
「じゃ、今度はおゆきさん一人でやってみますかね。」
とだんなに言われ、気分は達人を前にした「愛の貧乏脱出大作戦」の料理人である。
「鉄板の曇りは心の曇り……」
とブツブツ呟きながら生地を垂らして焼き始める私。何だかヘンな展開になってきた。

具をふって生地をかける。急いて半生の生地をつつこうとすると、
「まだ焼けてねぇだろ。」
と、だんな、すっかり達人気分だ。
ようよう9個のたこ焼きを焼き上げる。結局焦げそうになってだんなに手伝ってもらったのだけれど。
「はい、合格ですね。」
「これからは、この味を守ってだんなさんと息子さんを助けていってあげてくださいね。」
だんな、すっかりみのもんたモードに入っている。
「場所は簡単です。○○駅降りて、すぐ……。」
もう、ええっちゅーねん。

そんなこんなで、どうやら皆元気になった模様。
明日から、遊ぶわよ〜。

9/15 (金)
チーズトースト
牛乳

とろけるチーズを乗っけて焼いたトーストを1枚。お供の牛乳は、安売りしていて購入した「タカナシ特選牛乳」。こんなリッチな牛乳を購入するのは滅多にないことだ。恭しく口をつけるとこってりと甘みのある濃厚な味。コーヒーで味をつけるなんてとんでもなく、牛乳を牛乳のままごくごくと2杯ほど。

本日の予定は、中学時代の友人Kちゃんと一緒に、今月末に結婚する中学時代の友人Rの結婚祝いを買いに。その後、だんなと息子が先行して行っているだんなの祖母宅へご機嫌伺いに。明日も外出することを考えると、ちょっとハードな連休だ。

新宿 高野フルーツバーにて
 バイキング \2,500なり
 チキンスープ
 ブリオッシュ、食パン with バター
 卵のサンドイッチ
 ポテトサラダのサンドイッチ
 フルーツサンドイッチ
 ピラフ
 アスパラとハムのパスタ
 鶏のトマトソース煮
 グリーンサラダ
 フルーツサラダ
 魚介のサラダ
 フルーツポンチ
 ライチ、マンゴー、メロン、スイカ、パイナップル
 ぶどう、オレンジ、グレープフルーツ
 キャラメルムース
 マンゴーレアチーズケーキ
 バニラアイスクリーム
 ざくろのジュース
 オレンジジュース
 烏龍茶
 ミルクティー

Kちゃんと午前11時15分、新宿駅にて待ち合わせ。数ヶ月ぶりに合ったKちゃんは、すらりとスリムになっていた。
「へへへへへー。5kg痩せました。」
という彼女に
「カレーの食べ放題行く?」
と尋ねるが当然却下され、じゃあ女同志じゃないと楽しくないところへね、と高野に向かう。ここのフルーツバイキングは男性は女性同伴でないと入れない女人の園だ。2500円で90分、フルーツとパン、デザート、軽食の類が食べ放題になる。うーふーふーふーふー。

ここ数ヶ月ほどリニューアル工事を行っていたフルーツバー、リニューアル後に来るのは初めてだ。これまでは何となく"昔懐かし"な風情が漂っていてそれが良かったと思っていたのに、何だかえらく近代的になってしまった。スケルトンのピンクや青の飾りがキラキラ輝き、どことなくメタリックな感触のテーブルや椅子。全体的に白っぽくキレイキレイしているが、私には安っぽくやたらと女に媚びたような内装に見えた。前のほうが良かったのに……。

で、いざいざ、と料理の台に向かう。なんでも11時から14時までは手焼きのオムレツサービスがあるということで、オムレツ台付近は客がずらりと並んでいる。周囲にあるパンや皿が取りにくく、ヒーヒー言いながら皿にパンをいくつか乗せる。
3種類のサンドイッチに3種類の軽食。あとはたっぷりのサラダにもっとたっぷりのフルーツ、そしてケーキも6種類ほど。アイスクリームあり、ジュースも3種類あり、ととことん女性好みな仕様になっている。ううう、わくわくしますねぇ!Kちゃん!

彼女の男遍歴の話なぞ聞きながら、最初はパンと軽食を乗せた皿に取りかかる。タコやイカがたっぷり入ったサラダがなかなか美味しい。ついつい"タカノだし"と良くわからない理由で皿のそこここにフルーツを乗せてきてしまう。マンゴーやブルーベリーがざくざく入ったフルーツサラダはさすがに絶品だ。お供にざくろジュースをぐびぐびと飲む。午前11時45分、お客は続々と席を埋めていく。

2回目の皿には、バターたっぷりで美味しかったサンドイッチとサラダ、そしてフルーツを山盛り。ハネデューメロンにマスクメロン、パイナップルにフィリピンマンゴー。ライチも山盛りになっていて嬉しい。そしてこのマンゴーがめっちゃめちゃ美味しかった。繊維のざらりとした歯触りなど皆無で、トロリと濃厚で、甘い。口に入れると鼻から喉からマンゴマンゴマンゴー、という風味でいっぱいになる。普通に買ったら滅多に出会えない上質の完熟マンゴーだ。きっとこれでマンゴプリン作ったらサイコーに美味しいものになるに違いない。

そして3皿目。フルーツに、今度はいよいよデザート。アップルマンゴーの果肉が乗ったレアチーズケーキに、キャラメル色をしたムース。他にはアップルパイやミルフィーユやショートケーキやブルーベリーパフェなんてもんが並んでいる。ああ、どれもとても美味しそうなんだけど、実のところ私はケーキバイキングには弱いのだ。"甘いものは別腹"のくせに、ケーキの山を前にするとあんまり食指が動かなくなってしまうのであった。ゼリーやムースやババロアがあればかなり個数食べられるけど、"ケーキ"の類は数食べられない。実は情けない食欲魔人なのであった。で、ケーキ1つのムース1つ。Kちゃんが紅茶を持ってきてくれて、それを脇に置いてケーキと対峙する。

フルーツとして置いてあるのはフィリピンマンゴーであるのに、ケーキに乗るのはより甘くて美味しいアップルマンゴーなのであった。こちらもまた独特の香りが豊かでこってり甘い。甘味の少ないレアチーズケーキも良い感じだった。2500円という値段は決して安くはないけど、ここには乙女の心を鷲掴みにする要素が十二分に入っているのだろう。

さて、周囲を見るとすでに満席。ガラス窓を挟んだ向こうの通路にはみっしりと待ち客が行列を成していた。ガラス窓からこちらに向かう視線には、"あんたたちいつまで食べてんのよ"というメッセージが痛いほど込められている。時間は既に0時45分。90分の時間制限まで15分を残して店を出ることにしたのだった。

新宿サブナード NATURAL STATIONにて
 ストロベリースムージー

Rへの結婚祝いも無事買えた。デロンギ社のエスプレッソマシ〜ンだ。以前我が家に遊びに来たとき、だんながエスプレッソを煎れたのを見て、「いいな、いいなぁ〜」と言っていたR。彼女のリクエストによるエスプレッソマシンは、いくつか検討した結果デロンギ社のものになった。がんばって酷使してくれたまえR。

別れ際、Kちゃんと二人ジューススタンドで一休みする。新宿サブナードの中には、伊藤園直営のジューススタンド「NATURAL STATION」があるのだ。名物"白いバナナミルク"はめちゃめちゃ美味しい。砂糖も水も使わないというジュース類は、甘味は少ないけど濃厚でなんとも優しい味がする。

Kちゃんは私の勧めに従い白いバナナミルクを、私は初挑戦のストロベリースムージーを。
苺のシャーベットを攪拌したようなスムージーは、やっぱり砂糖は入っていないようでほのかに酸っぱい。鼻にふわりと苺の香りが漂ってくる。湿気が多くて汗ばんでしまう日には嬉しい飲み物なのであった。

お祖母ちゃん宅にて
 オレンジジュース
 紅白大福
 果物のヨーグルトかけ

 刺身盛り合わせ
 大根とちくわの煮物
 きんぴらごぼう
 茄子の炒め煮
 トマトのサラダ
 豆腐ときのこの吸い物
 炊き込み御飯
 赤飯
 コーヒー
 緑茶

午後5時前、伏見の祖母宅へ到着。座るなり、
「飲み物飲むかい?」
「ほら、ここに大福が。」
と御馳走攻勢が始まった。ここに限らず、"お年寄りの家"に行くといつでもこの御馳走攻勢は待ちかまえている。毎回必ずリピートされる昔話とセットで、これはもう逃れようのないものだ。
「夕飯まで、もう何も出さないね。」
と言うそばからヨーグルトだの果物が出てくるのにびっくりしつつ、それでも美味しいものは有り難く全部食べてしまう。

夕飯のメインは赤飯だ。元々いつも遊びに行くと作ってくれていたらしい赤飯だけど、大の赤飯好きが義弟1人からだんなと結婚した私が加わり2人になって、お祖母ちゃんはより一層赤飯作りに燃えるようになったらしい。今日は巨大な飯台に5合近い赤飯がみっちり詰まっていた。今日のは栗入り。壮観だ。ありがたいことだ。ひれ伏してしまう。

刺身の盛り合わせに、だしでほっこり煮られた大根やちくわの煮付け。お義母さんが作った茄子の炒め煮も並んでいる。胡麻がたっぷり入り、刻んだしそが和えられた茄子は、一度も食べたことのないものだった。香ばしい胡麻が茄子に良く絡んでいる。お世辞抜きでとても美味しい。
しその入った吸い物に、栗やキノコがごろごろ入った炊き込みご飯まである。炊き込みご飯を食べ、赤飯も山盛り食べ、そして私はいつも通りすっかり満腹になってしまった。だんなが病み上がりの体調を考えて刺身を遠慮している横で、私は帆立もサーモンもタイもマグロも満喫させていただいた。遠慮のないヨメなのであった。わはははは。

そして、たっぷりの赤飯をお土産に包んでもらい、オリンピックの開会式も終わった午後9時半、お義父さんの運転する車で自宅まで送ってもらう。
道路に光るオレンジ色の明かりを見て、隣に座る義妹がぽつりと呟いた。
「この車から見るこの光景、いつもこの満腹感と一緒に記憶に刻まれているのよねぇ〜。」
そう、お祖母ちゃん宅から帰る私たちはいつも満腹なのであった。
「満腹度120%っていうか?」
「そうそう、いつも微量にオーバーしててさ……。」
それもまたシアワセなのだ。うんうん。

9/16 (土)
コンビニの
 チョコクロワッサン
 ミックスサンド
アイスカフェオレ

牛乳が冷蔵庫に入っていない朝なんて、クリープのないコーヒーどころかコーヒー豆の入っていないコーヒー(←それって水!?)のようなものなのである。
「牛乳、買ってきてー。あ、あと朝御飯も。」
というどちらが主体なのか良く分からないお願いをだんなにしつつ、私は夕食を作っているのであった。

今日はおでかけ。2時開演のキャラメルボックスの芝居を見て、その後はホテルセンチュリーハイアットで食事会なのである。実母が来て、息子の面倒を見ていてもらうことになっている。夕飯くらい作っておかなきゃねぇ、とコーンシチューとキャベツのサラダを作っているところである。

だんなは、ほとんど何も言わずとも好きなものをちゃんと買ってきてくれた。チョコクロワッサンと、ツナと卵とハムの3種類がパックになったミックスサンド。彼はおにぎり2つに小さなもやしそばのカップ麺、というセレクション。カップラーメンというのはどうも横から一口貰いたくなってしまうもので、今日も息子と私がよってたかってだんなのもやしそばを横から食べているのであった。

午前11時半。母がやってきてくれた。
1時開場2時開演の新宿シアターアプルに間に合わせるべく、新宿へ向かう。

新宿京王モール街 壁の穴にて
 ミートソーススパゲッティ

1時間で御飯を食べて、劇場へ向かわなければいけない。
「アカシアでロールキャベツ?」
「時間もないし、マクドナルド?」
「中村屋でカレーとか。」
と相談した結果、「そうだ!壁の穴に行こう!」と話はまとまる。

新宿の地下街、京王新線に向かう途中にうなぎの寝床のように狭い「壁の穴」がある。確か私が小学生の頃からそこにあるお店だ。数ある壁の穴の店舗の中でも、ここの古くさくどことなくオヤジくさい雰囲気のこの店が私は好きだったりする。

昼12時を回ったところ、カウンター席以外は満席だ。カウンターにだんなと2人、腰掛ける。私はミートソース、だんなはイカたらこ。目の前の厨房、奥にはコンロが全開で中華鍋を熱していて、熱波がぶわっと押し寄せてくる。暑い。暑いけど、厨房の中が見えるのが何だか楽しい。炒め鍋が洋鍋ではなくて中華鍋だというのがまた良いじゃないか。

カウンターの上には、3つのマスに入った調味料。塩と胡椒と、多分昆布茶。小さなサジが入っていて、厨房のおっちゃんが時折そこからバババッと調味料を鍋に入れる。巨大な釜ではスパゲッティが茹でられていて、そこから巨大な竹ざるに茹でたてのスパゲティが乗せられていく。ワインの瓶には滑り止めに輪ゴムがたくさん巻かれていたり、何だかよく出来ている。目の前で、名物「若者のアイドル」が次々と出来上がっていく。野菜にソーセージがざくざくと入った若者のアイドルは、確かに美味しい。

ほどなく、奥では木の器に柔らかなバターが投入される。タラコも入り、茹でたてのスパゲッティも投入される。ざざざっとすかさず麺がかき混ぜられていく。こちらではミートソースがスパゲッティの上に木べらでこんもり盛りつけられて、2人分の皿がすちゃっと目前にやってきた。

優しい味のミートソースは懐かしい味がした。目の前には粉チーズ入りの容器と、刻みパセリ入りの容器が並んでいる。上にちゃっちゃとふりながら汗をかきつつミートソースを3分でかきこんだ。
だんなのイカたらこを一口貰うと、バターたっぷりの我が家よりも更にたっぷり入っているようなバターの香りが漂ってくる。たっぷり和えられたタラコに、上には細切りにされたイカが乗っている。どちらもイタリアンレストランで食べるよりは格段に太い麺で、それがまた嬉しいし美味しい。

ホテルセンチュリーハイアット 翡翠宮にて
周中・山岡洋2人のシェフによる中国料理祭
 宮廷戯球 (山海珍味の盛り合わせオードブル)
 萬壽菓生翅 (特上ふかひれのパパイヤ蒸しスープ)
 宮保鮮龍蝦 (伊勢海老のピリ辛炒め 宮廷風)
 冬瓜蟹拑扎 (冬瓜とタラバ蟹の飾り巻き 上湯ソース)
 香茅汁[火局]鵝肝 (フォワグラのソテー 特製レモングラスソース)
 黄豆[火悶]金錢鮑 (鮑と大豆のやわらか煮 上海風)
 炸菜鴨絲[火文]麺 (鴨肉入り炒めそば)
 点心雙[才并] (二種点心の盛り合わせ)
 茘蓉朱古力 (大和芋のチョコレート入り菓子)
 凍香芒布甸 (マンゴープリン)
生ビール

午後4時半の歌舞伎町をほてほてと歩く。小雨を通り越して、空は雷雨になりつつある。
明日に東京千秋楽だというキャラメルボックスの「また逢おうと竜馬は言った」を堪能した後は、6時15分にホテルセンチュリーハイアットのロビーで待ち合わせだ。

Sさんから、香港のハイアット・リージェンシーの周中シェフが来日するのだとお声をいただいたのが1ヶ月ほど前。
ハイアットリージェンシーと言えば、美味なるマンゴープリンの名声高き「凱悦軒」がメインダイニングだ。その料理長が周中氏。当然、メニューにマンゴープリンがあるでしょう!ということでご一緒させていただくことにした。
テーブルを一緒にしたのは全部で6人。"FSAKE"、"FCUISINE"なんて言葉も飛び出して、何だかノリはすっかり"niftyのオフ会"だ。どの方も中華料理愛している人ばかりで、"香港での○○が〜""こないだの中国で××を〜"なんて話が飛び交う。料理が出た途端にすかさずデジカメのフラッシュが焚かれるという、何だか初体験の空間での食事になったのだった。

さて、メニューはコース料理しかなく、\10,000、\15,000、\20,000という並びになっている。食べたい料理が多いのは\15,000のもの、しかしマンゴープリンが含まれるのは\10,000と\20,000のものだけだという。事前にSさんに交渉していただいて、\15,000の料理に別途\1200でマンゴープリンをつけていただけることになった。デザートたっぷりの豪華夕食。嬉しいことだ。

最初は前菜。中央に蘭の花と香菜が盛られた大きな白皿に5種類の前菜が乗っている。フカヒレに蟹の卵のようなものが乗ったものに、クラゲ、豚と思われる臓物の和え物、マコモ茸の辛いマリネ、鮎の甘辛く煮られたものなど。あまり見かけないものが多く、如何にも"山海珍味"という感じだ。特に子持ちの鮎なんてものは中華では食べたことがない。真っ茶色に煮含められた甘味のある魚は、和食と言っても通用するような味だった。

続いて、このコースの目玉とも言えるスープ、"ふかひれのパパイヤ蒸し"。
一人ひとつ、銀の器に縦に置かれたパパイヤ丸々1個。上がぎざぎざに切り抜かれ、くりぬかれた内部にはフカヒレのスープが詰まっている。パパイヤごと蒸されたその果実は温かく、ふくふくと柔らかくなっている。何だか凄い料理だ。スプーンでパパイヤの身をこそげつつ、スープと一緒にいただく、らしい。
「ど、どこまで喰っていいんですか?」
と戦々恐々と尋ねると、
「喰えるとこまでです。」
「そう、皮が薄く明かりが透けるようになるまで。」
そう言われても、パパイヤはかなり巨大だ。

スープは"ふかひれスープ"と言うほどにはフカヒレが感じられないものだったけど、金華ハムや鶏肉、海老が入ってコクのあるものだった。塩気のあるスープに甘いパパイヤをひらひらとこそいでは一緒に食べる。これが、想像以上に美味しかった。甘いパパイヤの香りも味も、スープと良く似合う。蒸されてアツアツになっているパパイヤをこそいでは熱いスープと飲み込み飲み込みしていると、テーブルは無言になっていく。

スープを食してほっと一息つくと、今度は伊勢海老。ざくざくと大降りに切られた海老は衣で揚げられ、甘辛いとろみの強いあんで和えられている。甘味はほとんどなく酢の効いた上品なあんだ。海老はプリプリと、でも柔らかい。

次は何だかヌーベルシノワのような一皿。とろみの強い上湯(←スープだ)が皿に敷かれ、井桁にニラが飾られている。中央には半透明の皮でくるまれた冬瓜と蟹、にんじんとニラ、しいたけ、金華ハムも入っていたと思う。春巻きのようなその巻物を、箸で掴んでツルリと一口で食べる。上品ではあるけれど、いまいちこれは印象に残らない料理だった。味つけは素材の他は上湯の旨味と塩気、という感じだけれどその素材の味はいまいちしない。
最初のビールを飲み終わった私たちは温かいお茶を飲みながら料理を食べている。ただ、お茶はジャスミン茶しかないとのことで、これが一同に大きく不評。1人1万円を軽く越えちゃうような中華料理店だったら、やっぱりプーアル茶かせめて烏龍茶くらいは置いておいて欲しい。

続いて、中華料理の食材としては滅多に使われない、というフォアグラのソテー。まるでステーキのように、厚さ1cmくらいのフォアグラが2切れ、こんがりと焼かれていてトマトベースの赤いソースがかかっている。フクフクとしたフォアグラは、囓るとじゅわっと肉汁が溢れてきてこれはすこぶる好みだったけど、ソースはいまいち似合っていない。やや甘味のある、レモングラスの香るスキッとした後味のソースはフォアグラを合わせるよりは帆立のバターソテーにでも合わせたほうが良い感じだ。それはそれとして何だかフォアグラ喰うのは久しぶりで、心なしか瞳が輝いてしまう。「肝」の臭みはまったくないフォアグラはこってりと柔らかかった。

「何だか機内食みたいな……」
と皆が一斉に呟いてしまった皿は「鮑と大豆のやわらか煮」。機内食の器というか、バターケースのような蓋付きの器に入っているのは小ぶりだけれど丸々1個の鮑。鮑の右にはオクラが2本、左にはたっぷりの煮大豆。上からは茶色いあんがトロリとかかっている。料理の見た目も、なんとなく機内食だ。高級食材に申し訳ないけれど、何だか笑ってしまう。
コリコリとした鮑はふっくらと良く煮込まれていた。磯の香りがじゅわっと染みだしてくる。味をつけて煮たわけではない大豆は、ただただ大豆の味がする。鮑と合うのかどうかがいまいち不明だけれど、悪くはない。

そして炒めそば。細切りにした鴨が、たっぷりとは言い難いけれどヒラヒラと混ぜ込まれている。炒めそばと煮込みそばの間のようなちょっと汁っぽいそばは柔らかく、良い感じに味が染みている。にんにくの茎が混ざっていて、それが良い香りを出していた。

デザートはコースに2種類、そしてマンゴープリンが待っている。
「2種点心の盛り合わせ」は、一つがセロリの蒸し餃子、一つはピーナッツあんの水晶餅。セロリ餃子は甘味がなく、肉あんに混ぜられたセロリがこれでもかこれでもかとセロリを主張するものだ。ピーナッツの餅は良い具合に甘い。ピーナッツと胡麻が練られ、ねっとりと甘いあんになっていて、それがくわい入りの薄くて柔らかな餅で包まれている。箸で持ち上げると下に落ちていってしまいそうな柔らかさの餅をつまんで、パクリと食べる。これがこれが、今日最高に感激する味のものだった。胡麻とピーナッツの練り具合は絶妙で、後味に残る甘味はすっと消えていく。バケツ一杯でも食べられそうな感じだ。ごっつぅ、旨い。

「これはいつもここで食べられるわけじゃないですよね?」
とSさんがウェイター氏に尋ねると、
「その日に御希望というのではお出ししかねますが、1週間前などにご予約いただけましたら……」
という返事が返ってきた。じゃあ
「あれ食べたいのでバケツ1杯作っておいてください。」
というのはアリなのだろうか、もしかして。

続いて摩訶不思議なデザート。「大和芋のチョコレート入り菓子」と来た。ねっとりとした芋とチョコレートとは、一体。芋を練ってあんや皮につかう和菓子はあるけど、チョコレートとは普通合わせないだろう。
やってきたのは1人1個の小さな揚げ菓子。パリパリの衣の中にチョコレートと練られた大和芋が層になっているような感じだ。持ち手のように、オレンジの皮の甘露煮が突き出ている。……味もやっぱり摩訶不思議だった。チョコレートに甘さはあまりなく、ねっとりどっしりとした口当たりと濃厚さを楽しむのが主のような菓子だ。不味いというほど不味くはないけど……摩訶不思議だ。

最後の最後に来た一皿が待望のマンゴープリン。
今頃になってがさがさとデジカメをバッグから取り出す私に、
「やっとメインが来ましたねぇ。」
と声がかかる。はい〜、やっとメインなんです(←お店に失礼な)。

アップルマンゴーがたっぷり入ったマンゴープリンは、期待にそぐわず美味だった。こってりどっしり重量感のあるもので、香港に店を構える貫禄十分、という感じ。でもきっと香港のはもっと美味しいのだろう。詳細はこちら

9/17 (日)
お祖母ちゃんの
 お赤飯
 きんぴらごぼう
麦茶

午前10時過ぎ、起床。
ぼけぼけと目を覚まし、"何を食べようかな……"と考える。そうそう、良いものがあったじゃないか、一昨日、お祖母ちゃん宅に行ったときにお土産に持たせてくれたお赤飯が。

お祖母ちゃんは、いつもいつも行った時には手製のお赤飯をお土産に持たせてくれる。最愛の孫であるだんなと結婚した私が赤飯大好き、というのを知ってからは尚のこと沢山の赤飯を持たせてくれるようになった。ありがたいことだ。
今日はそれにきんぴらごぼうもついている。両方チンして、ごま塩ふったたっぷりの赤飯を食べる。

今回のお赤飯は秋らしく栗がたっぷり。小豆ではなく、もっと大きな豆が使われていて、それがホコホコになっている。
味が染みて茶色に染まったきんぴらごぼうは、いつもちょっとピリ辛だ。唐辛子がピリリと効いている。

牛肉のにんにくバター醤油炒め
キャベツとタコのタルタルソースサラダ
コーンシチュー
御飯
モルツ、麦茶

昨日の朝、留守番をしてくれた母と息子の為に作って置いたシチューがまだたっぷりあるので、それを食す。サラダもあるのでそれを食す。御飯を炊くだけの簡単夕食……と思っていたら、体調大復活のだんなが
「肉も食べたい……」
と肉を炒め始めた。牛肉とにんにくをバターで炒め合わせて、ジャッと醤油をかけたもの。にんにくと牛肉の焼ける良い匂いを嗅いだらビールも欲しくなってしまい、1缶空ける。

タルタルソースを作ってキャベツとタコで和えたサラダに、息子の大好物のコーンシチュー。
学校給食を真似て作ったシチューは鶏肉とベーコン入り。鶏肉とベーコンと玉ねぎ、じゃがいも、にんじんをバターで炒めて小麦粉ふって、スープで煮込んで牛乳加える。最後にコーンのクリーム缶をどどどと入れて出来上がり。コーンスープのシチュー版のようなそれは案の定息子の気に入ったようで、いきなり3杯一気飲みされる。

にんにくバターの匂いの牛肉でビールを飲んで、シチュー飲みつつ牛肉おかずに御飯を食べる。
家族全員で囲う食事はやはり楽しい。