食欲魔人日記 03年03月 第1週
3/1 (土)
The Flying Biscuit Cafe(Atlanta)にて、絶品ビスケットの朝御飯
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
Atlanta 「The Flying Biscuit Cafe」にて
私:
 Smoked Salmon Scramble $8.95
 Chai Latte $2.50
だんな:
 The Flying Biscuit Breakfast $6.50
 Coffee $2.00
息子:
 One Egg Scrambled $1.99
 Milk $0.75

アトランタ2日目の朝。8時に起きて地下鉄に乗り目指したところは、Atlanta版Citysearchで"Best Breakfast"に選ばれたという店。そのサイトのランキングだけでは今ひとつ信用ならないけれど、その店名であれこれ検索してみるとなかなかの評判らしく、気になって行ってみることになった。

The Flying Biscuit Cafeという可愛らしい名前のその店は、ミッドタウン駅から歩いて5分ほどのところにある。食事をしたらここに来ようね、と"Margaret Mitchell House & Museum"の横を通りすぎてその店に向かった。午前9時を過ぎて、店の前には6人ほど入店待ちの人々がいる。中は大混雑で、皆美味しそうにワンプレートもの朝食をつついているのが見えた。店頭にコーヒーサーバーが用意され自由にコーヒーを飲んで待てるようになっている。

夏にはテラスになるのだろう煉瓦敷きの一角は、ビニールの壁が作られていた。天井にヒーターが吊されたそのコーナーの4人席に通され、この店自慢のビスケットが乗った朝食セットを注文する。各種卵料理にはビスケットと共にじゃがいも料理かグリッツがついてくるらしい。私はスモークサーモン入りのスクランブルエッグにグリッツをつけてもらった。飲み物はチャイラッテ。スパイスたっぷりの甘い紅茶は牛乳たっぷりで、小雨の降る涼しい朝には心地よい温かさだ。

そしてやってきた、巨大な巨大なビスケットつき朝御飯。卵4個ほどは入っているんじゃないかと思われるスクランブルエッグにはチーズとスモークサーモンがたっぷり入り、ものすごいボリュームだ。そしてその脇には大人の握り拳よりも巨大なビスケット。そしてココットケースに入ったグリッツ。
ビスケットは、お菓子のビスケットではなくてケンタッキーフライドチキンで出てくるビスケットと同じようなもの。あれほど油っこくなく、中央に穴もなく、あのビスケットとイギリスのスコーンとの中間のような形状かつ食感のものを多くみかける。かなり塩気が強いもの、ぽそぽそしすぎているものなどをちょこちょこ食べていたせいもあり、「ビスケットよりは普通のパンの方が好きだなぁ」とこれまでは思っていた。

が、"空飛ぶビスケット"という店名を掲げるだけあってか、この店のビスケットは絶品だった。うっすら適度に塩気があり、ぽそぽそ感はあるけれど適度に水気が感じられてぐずぐずと崩れない。表面は適度にサクッとしており、中はふわふわ。軽い食感でいくらでも食べられそうな感じだ。
「こ、これは……」
「このビスケットは、美味しいね……」
「止まらない美味しさですね」
と、ひたすらもっきゅもっきゅとビスケットを囓る私たち。そして、ビスケットの旨さに忘れ去られそうになっているグリッツ。

"グリッツ"とは、とうもろこしが材料のお粥のようなもの(コーンミールとはまた違う)。"風と共に去りぬ"の中にも出てくる、代表的な南部料理の1つであると聞いたことはあったけれど、実際に食べるのは今日が初めてだった。この店のはチーズ風味のチーズグリッツ。プチプチというかクニュクニュというかモニュモニュというか、なんともいえない微妙な歯触りの食べ物だ。全体的に粘度が強くもっちりしていて、その中にスクラブのような細かい粒々がもにゅもにゅと入っているもので、チーズの風味はするけれど塩気は薄めで掴みどころのない味がする。
「塩、かけて食べてみようか」
「ケチャップかけると案外旨いかも」
とあれこれひどい事をやりながらつついてみる……けど、やっぱり掴みどころのない味だ。何しろビスケットの方が旨いのでついついグリッツよりビスケットを真剣に食べてしまう。

だんなは好みの卵料理(目玉焼きにしてもらったらしい)とソーセージ、そしてビスケットとグリッツのセット、息子は卵1個分のスクランブルエッグとビスケットのセットを頼んでいた。それぞれ卵とビスケットですっかり満腹。そして店は相変わらず大混雑な人気店だった。

Atlanta CNNセンター内フードコート「Wendy's」の
 Chicken Breast Fillet Combo

朝食後は予定通り、"風と共に去りぬ"の著者マーガレット・ミッチェルの住居アパートを再現した"Margaret Mitchell House & Museum"を見学。リビングルームには小さなタイプライターが小さな机の上に飾られていた(実際に執筆に使っていたタイプライターはここではない別のところに展示されているらしいけど)。リビングとベッドルームの他は台所とバスルームだけの小さな小さなアパートで、台所は2畳ほどしかなく、ダイニングテーブルはベッドルームにあるような可愛らしい住まい。だんなさんと2人で寝ていたというベッドは、セミダブルほどのサイズしかなかった。

その後、1駅隣にある"High Museum of Art"を目指したものの、人気のある特別展示をやっている最中なのかチケット売り場には50人以上の大行列。美術館を見るのは断念して"CNN Center"に行ってみた。12時半に到着して"CNN Studio Tour"のチケットを買いに行ってみると、次の参加可能なツアーは3時のものだという。チケットを買い、ツアー集合までの2時間ほどをどうしようかと思案して、結局はセンター内のフードコートでだらだらして過ごすことに。

巨大な巨大なフードコートには、ハンバーガー店が3店にタコベル、ピザ屋、サンドイッチ屋とファーストフード店ばかりが20店舗近く並んでいる。中には怪しい「Fuji」とかいう名前の日本食ファーストフードも見えるけど、カウンターの奥に見えるおかず類はどう見ても不味そうだ。甘ったるいアメリカ〜ンな味の照り焼きダレが光って見える。で、結局"Wendy's"で買うことに。最近ケチャップ味に少々飽きがきていたので、チキンフィレサンドを注文。そのくせフライドポテトにはケチャップをどっぷりつけて食べてしまって、もう何がなんだか。

ウェンディーズのバーガーは、やっぱりウェンディーズの味がした。日本のそれより特別不味くもなく、特別美味しくもない。ただ、面白がって飲んでみたHi-Cグレープフルーツフレーバーはめちゃめちゃ不味くて泣けてきた。飲んでいる最中は心地よいグレープフルーツ味なのだけど、飲み込んだ直後にえもいえぬ後味(というか後臭)が……。

Atlanta 「Hanwoori」にて
 パジョン $15.95
 牛タン $16.95
 骨付きカルビ 2×$16.95
 いくら握り 2×$4.50
 マグロ握り $4.25
 ビール(OB Lager) 2×$4.00

ハーゲンダッツのクッキー&クリーム

CNNのスタジオツアーはなかなか楽しかった。今まさに放映中のニューススタジオを見学できたり、天気予報画面の収録の仕掛けが見られたり。
「今度、CNN見るときは、天気予報者の手の動きに注目してくださいね。ポイントを指さす、ということはしてないはずですよ、手でおおまかに"このあたり"ってやってるはずで。ポイントを指さすのは難しいんです。誰しもがキャスターになった直後にはやりたがるんですが、"こりゃダメだ"とそのうちやらなくなってしまう」
なんて事を言っていた。

ツアーが終わると4時過ぎ。かなり歩きまわって疲れたのでひとしきり部屋でごろごろした後、夕食へ。
本日の目的は"焼肉"。カルビ食べてぇ〜牛タン食べてぇ〜と思っていたところ、この地にけっこう美味しい焼き肉屋があるとの噂を聞き、期待して出かけてしまう私たち。ホテルからは10マイル以上も離れた、ダウンタウンからはちょっと離れたところにある。詳細なマップもないので
「多分この出口を出てちょっと行けば"Hanwoori"っていう看板が見えるはず……」
と不安に思いつつ助手席でナビしていたところ、高速道路を出た途端に派手な看板がいくつも見えた。"Hanwoori"という店名の下にはご丁寧に平仮名で"はんうり"と非常に怪しい字体で書かれている。
「ああっ!あれだぁ〜」
「間違いようがねぇ〜」
「迷うはずもねぇ〜」
と大笑いしながら駐車場に車を止める。中はアジア系の人々でけっこうな席が埋まっていた。個室で宴会なども開かれているらしい。

メニューはうどんや蕎麦、天ぷらや寿司まで並ぶ和韓混在という感じのもの。「たまごといくらのおすし、食べたいなぁ〜」という息子にそれを注文してやり、私たちは念願の牛タンやカルビを合計3皿注文した。テーブル担当のおばちゃんは、英語よりも日本語が通じてしまうほど日本語に堪能(というより英語に不堪能……というか)な人。
「タマゴとイクラね、アイ、わかったヨ」
と注文をにこやかに聞いた後、数分後に戻ってきて「タマゴ、ナイ」。じゃあマグロを1つとイクラを2つにしてくれる?と寿司オーダー用の注文用紙に書いて渡したところ、これまたにこやかにオッケーオッケーと言って去った後、マグロ1つとイカ2つを持ってきた。
「イカじゃないよー、イクラだよ。ほら、ここの、この場所、サーモンロウってところに書いてあるよ」
と、英語と日本語ごちゃまぜで伝えると
「これ、イクラ。持ってきたのはイクラじゃない?イカ?え?」
としばらく要領を得ない様子だった。数十秒押し問答した後、「イクラね、イクライクラ……」と呟いて去っていくおばちゃん。ほどなくしてやっと息子の前にはイクラの握りがやってきたのだった。もうオーダーを通すだけで何だか大変。

牛タンはかなり薄めだったけれど、骨付きカルビは期待以上のボリュームがある素敵なものだった。ただ、韓国人のおばちゃん、勝手にどっかどっかと焼いていってくれる。最初に牛タンを半皿分ほどドババーっと鉄板の上に盛りつけてしまい、「あ、あ、そんなに重ねて焼いちゃダメ……」と私たちが冷や汗をかいている前でぐっちゃぐっちゃと広げていく。カルビも鉄板に敷き詰めるようにどばばばーと並べて、無言でハサミでジョキジョキと切ったりひっくり返したりしてくれる。想定以上にワイルドな焼肉の夕べとなってしまい、ビールを飲むのも忘れてせっせと肉を食べる私たち。テーブルには各種キムチと共にほうれん草やもやしのナムル、ポテトサラダまでが並んでいて、サンチュもどんどん持ってきてくれる。最後にビビンバか冷麺でも食べたいねと最初のうちは言っていたのに、結局後半にご飯1つを持ってきてもらうだけで充分すぎるほど満腹になった。

高速道路をかっとばして帰ってきた後は、ホテルの真ん前にあるハーゲンダッツでクッキー&クリームのデザート。
アトランタ料理を満喫してるのかしてないのか今ひとつわからないまま、明日は歴史センターなるところでアトランタの歴史を学んでみる予定。

3/2 (日)
Mary Mac's Tearoom(Atlanta)の「Brunswick Stew」 (昼御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
Atlanta 「Silver Skillet Restaurant」にて
私:
 Skillet Country Ham $6.95
 Hot Tea $1.25
だんな:
 Omelettes w/Swiss Cheese $4.50
 Corned Beef Hash $3.00
 Coffee $1.25
息子:
 Egg Sandwich $1.75
 Milk $1.75

アトランタ3日目。2回目の朝御飯に向かったところは、昨日の朝と同じく朝食に定評があるらしいお店、"Silver Skillet"だった。他にもいくつか朝食用のレストランで気になる場所はあったのだけど、
「スキレット、ですってよ」
「やっぱり気になりますわよねぇ、奥さん」
と、名前で選んでこの店に行くことに。幸い、今日は車で移動して観光することになっていたので地下鉄の駅からちょっと離れたこの店に行くのに都合も良かった。

いかにもダイナーという雰囲気の小さなお店だった。渋いオレンジと黄緑の配色のソファーにタイル張りの床がいかにも古めかしい。店の歴史が刻みこまれたようなおばあちゃんが注文をとりに来た。私は私のやり方でオーダーをつけるからちゃんと順番どおりに言ってよね、という感じに
「OK、カントリーハムを食べるのね。卵の調理法は?ビスケットとトーストはどっち?あとグリッツかグレービーかも選んで」
と話しかけてくる。

朝食メニューはコーンビーフやカントリーハムなどのメインのおかずに、更に2個分の好みの卵料理がセットになっている。トーストかビスケットを選び、更にグリッツかグレービーがついてくる。大変にボリュームがありそうな朝御飯で、だんなはオムレツのセット(肉はついていない)にコーンドビーフハッシュをつけてもらっていた。息子は卵のサンドイッチ。

"グレービー"って一体なんだろう?と思いつつグリッツ(←とうもろこし粥)ではなくてグレービーを頼んでみたのだけど、ここ数ヶ月の謎が氷塊する食べ物がやってきた。楕円の大皿には骨つきの分厚いハムのグリルと、ポーチドエッグにしてもらった卵が2個。そして小さな器に白いシチュー状のものがテロンと入っている。
アメリカに来てから、あちこちのホテルの朝食で見かけたシチュー状のもの、それが"グレービー"だった。砕いたソーセージのようなものが入っていることもあるし、ただ練った小麦粉を湯で延ばして塩ふっただけのようなものもある。シチューよりはねっとりこってりと粘りが強く、シンプルな味。一体これはなんじゃろう……?とずっと思っていたのだけど、やっと名前がわかった。これは"グレービー"だ。茶色いグレービーソースとはまた違う。この店のは胡椒がこれでもかときいていてビリリと辛い。塩気も強めだけど、食べやすい。

好みな具合の半熟に調理されたポーチドエッグをつつきつつ、朝から分厚いハムに齧りつく。分厚い骨つきハムは塩気が強めで、食パン2枚分やってきたトーストやグレービーを食べつつ巨大な肉を平らげた。
メニューにはこのお店の歴史が書かれていて、アトランタオリンピックが開催された時にはCNNで「オリンピックを見にやってきた方々には、朝食にこの店が良いですね」なんて紹介されたのだ、などとあった。

Atlanta 「Mary Mac's Tearoom」にて
私:
 Fried Chicken (3 legs) $9.75
 w/Brunswick Stew
 w/Triple Cut Cream Corn
 Iced Tea $1.25
だんな:
 Fried Pork Chops $11.50
 w/Rice and Gravy
 w/Steamed Spinach
 Iced Tea $1.25
息子:
 Sprite $1.25

日曜日の午前中は皆さん教会に礼拝に行くのが基本だからなのか、美術館も博物館も日曜は昼から開館というところが多い。午前中に目指したのは郊外にある"Stone Mountain Park"。巨大な岩山が横たわる公園で、世界最大の花崗岩なのだとか。岩壁には、これまた世界最大のサイズである騎馬隊の彫刻がある。なんでも彫刻に彫られた人物の鼻の部分だけでスクールバスと同じだけの大きさがあるのだとか。

「すげえ!」
「でっかい!」
と巨大な岩山に感心しつつ岩山の上までロープウェイで上ったりしつつ、岩山を満喫して町に戻ると丁度お昼どき。アトランタのローカルフードを出す店、"Mary Mac's Tearoom"に行ってみた。

絶えずにっこにっこしている黒人の太ったおばちゃんが席に案内してくれ、1人1枚のオーダーシートをテーブルに置いていく。客はテーブルに置かれたメニューを眺め、テーブルに置かれた鉛筆を持ち、自らドリンクからメインディッシュ、デザートまでオーダーシートに自分で記入することになっているらしい。自分でオーダーを伝票に書けという店は初めてだねぇ、と笑ってしまいながら1皿10ドル前後のメインディッシュを選んでいく。載っているメニューは、確かにいかにもな南部料理。南部風フライドチキンやコーンブレッドドレッシング添えのベイクドチキンやローストポーク。バーベキュー類やミートローフなど。メインディッシュを頼むとサイドディッシュが2つ、更にパンかビスケットがついてくる。このサイドディッシュもオクラのフライとかマカロニチーズとか、蒸し野菜とか、いかにもなものばかり。

私は南部風のフライドチキン、サイドディッシュはこの地方の名物料理である"Brunswick Stew"(ブランズウィックシチュー)と、好物のクリームコーンにしてもらった。だんなはフライドポーク(つまりトンカツ)に、"ライス&グレービー"という味の想像が今ひとつつくようなつかないような……なものと、蒸しほうれん草。きっと大変な量が来るだろうということで息子にはソーダだけ。

大ぶりのフライドチキンはもとより、初めて食べたブランズウィックシチューがなんともいえず旨かった。印象は"ツナのトマトスープ クリーム風味"という感じ。ツナではなく鶏肉なのだれど、ほぐされてホロホロになった鶏肉の口当たりや味がツナ缶のツナによく似ている。豆やコーンもたっぷり入り、汁気は少なく"スープ"というより"煮物"と言った方がしっくりきそうだ。トマトが入っているけれど、牛乳か生クリームも入っているのかうっすらとクリーム色をして味もマイルド。ほのかに甘く、なんだか懐かしい味すらする。出発前にインターネットで検索して画像を見たそのシチューは、何だかすごい色とすごい外見で「これ、美味しいのかなぁ……美味しそうに、見えないなぁ……」と思っていたのだけど、めちゃめちゃいける。

そしてほのかにスパイスが効いた表面カリカリ、肉はふわふわのフライドチキンが3ピース。とろんと火を通したクリームコーンは息子にあげつつ、そしてテーブルの中央には山盛りのパン。ミニサイズのマフィン型のパンと、塩味のぽそぽそとした白いパン、そして適度な甘さのシナモンロールが人数分ずつ籠におさまっている。とてもじゃないけど全種類は食べられず、シナモンロール1個をだんなと半分こして食べた。しっとりしたパンは甘すぎない程度に甘く、シナモンがたっぷり。素朴な味で何から何まで美味しくて、しかも会計は家族皆がたらふくになって$26.75。すごく幸せなお店だった。

Atlanta 「McComick&Schmick's Seafood Restaurant」にて
私:
 Seafood and Roasted Corn Chowder $2.95
 Yelllowtail Flounder (Parmesan Crusted with Fresh Lemon and Caper Butter) $17.50
 Beer (Red Ale / Sweetwater) $4.95
 Ice Cream $2.95
だんな:
 Maryland Crab Soup $3.50
 Scampi Style Prawns (with Linguine tossed with Roma Tomatoes, Basil and Garlic) $20.65
 Beer (Red Ale / Sweetwater) $4.95
 Double Espresso $3.95

午後は"Atlanta History Center"でプランテーションハウスや19世紀時代の農家をガイドつきのツアーで見学。南北戦争の展示なども眺め、歩き疲れてホテルに戻った。少し休んでから今度は地下鉄に乗ってふらふらと。
今日の夕食の予定は特になかったけれど、昼間ずっと車に乗っていたことだし、と、地下鉄で移動できる範囲の手近なところで済ませようということに。
「ピーチツリーセンターに行けばなんとかなるんじゃない?」
と1駅地下鉄に乗り、ホテルや企業ビルが密集するショッピングモールもあるエリアに移動してみた……けど、今日は日曜日ということでショッピングモールは軒並み休み。ファーストフード店すら閉まっている。とほほほほ……とホテル方向に帰る途中にあると聞いていたグリル料理の店を覗いてみたけれど、まだ夜の営業時間までは30分以上もある様子。ならば、とホテル近くのショッピングモール"Underground"に行ってみれば、日曜は午後6時でモールそのものに入れなくなっていた。想像以上に日曜日は動きがとれない。かなりトホホな気分でホテル前まで戻ってきた挙げ句、
「……確か、CNNセンターの1階にシーフード屋さんがあったねぇ」
「魚介……食べたいねぇ」
と、地下鉄1駅分の距離をてくてく歩いていちかばちかでCNNセンターに向かってみた。めでたくそのシーフード店は営業していて、一見重厚そうな雰囲気の割には子供向けメニューもあったり、案外安価だったりと嬉しいことに。

メニュー、A3版の紙1枚に書かれたその裏はまるまるワインリストになっている。けれど喉の乾きに負けてついつい「ビールは何があるの?」と聞いてしまい、「ラガーはね、バドワイザーとミラーライトと、あと、ウチで醸造しているレッドエールがあるよ」と言われて当然そのレッドエールを。スープを1つずつ取ればあとはメインディッシュで充分だろう、と話し合い、私はイエローテイル(←ハマチ、らしい)のグリルとコーンチャウダーを注文。だんなはクラブスープとスカンピのパスタ。

多少アメリカ〜ンな感じの大雑把な味も感じられたものの、レモンがたっぷりかけられた魚のグリルは、ここ数日の肉料理続きにしみじみ美味しく感じられた。1切れたっぷり150gはありそうな魚が2つも、ほんのりチーズの香りがするパン粉をはたかれ、レモンバターでグリルされている。ああ、またホッケサイズの魚料理が……とびっくりしながら魚をつついた。小山のようなマッシュドポテトと千切りにして炒めたにんじん、茹でたアスパラガスつき。海老がごろごろ入るコーンチャウダーはトロンと粘度が高めで、これは素朴な味だった。

私の皿も(皿そのものが)巨大だったけれど、だんなの皿も同じサイズ。巨大な楕円の皿にはこんもりと山になってリングイネが盛りつけられている。そしてパスタの手前にその山のパスタが普通のサイズに思えてしまうほどの大ぶりな海老がごろごろと7〜8尾ほども並んでいる。炒めたにんにくは、全部で1房ほども散らされていたりして、
「おゆきさん、にんにく食べるの手伝いなさい。でないと数時間後、僕だけ臭くなっちゃって大変なことになるから」
と、"どうせ臭くなるなら夫婦で臭くなっちゃいましょう"作戦を展開する我が夫。他人のにんにくの匂いってのは妙に気になってしまうものだから、そうだねと頷いた私はせっせとにんにくを食べるのだった(にんにくをそもそも残せば良いのでは、という発想には至らなかったらしい)。

「子供用メニュー、注文しなくてよかったね」
「なんかね……メインディッシュがすっごく多いような気がしたんだよね」
「パスタ、手伝ってもらって本当に良かったよ」
などと言いつつ、息子の分の取り分け皿にはパスタを乗せたり魚を乗せたり。息子にかなりの量のパスタを手伝ってもらったにも関わらず、皿を空にするのはやっとの思いだった。

美味しそうなデザートプレートがフロアのあちこちに置いてあるのが気になりつつ、直径20cmはありそうなクレーム・ブリュレと目が合ってしまって「これは絶対たべきれない……」とアイスクリームをつつくことに。でも、そのアイスクリームがパフェグラス入りでやってきたものだから、やっぱり撃沈しそうになった私だった。

3/3 (月)
うめぞの(Atlanta)にて、「ちらし寿司」 (昼御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
Atlanta 「Haward Johnson Hotel」内「The View Restaurant」にて
 French Toast $3.75
 2 Eggs (Your Way) $1.95
 Milk $1.75

アトランタ最終日の朝。今ひとつ朝食の店のあてはなく、今日は帰宅の途につくので遠出もめんどくさい。
「このへん……朝やってるとこってファーストフード店ばっかだよねぇ……」
「車に乗って行くのもめんどくさいし、電車も往復で時間かかるし」
と、結局ホテル内のレストランに行ってみることに。

そのレストランは「The View Restaurant」なんて眺めの良さそうなネーミングではあったけれど、2階にあって見えるのは道路の向こうの噴水だけ。席数は20ほどの小さな小さなレストラン(というより喫茶店)だった。入ったところにブッフェ式の朝食コーナーがあったけれど、7ドルと書かれたその朝食はモーテルの無料朝食と大差ない感じ。ドリンクの他はパンしかないのに7ドルなんて!と驚きつつも席につき、メニューを受け取った。フレンチトーストは4ドル程度だし、それに卵料理をつけてもらっても6ドルほどだ。それならいいか、と私はフレンチトーストにポーチドエッグをつけてもらった。息子はシリアル、だんなはオムレツ。注文を取りに来た黒人のおっちゃんは、
「おぅ、コーヒーならあそこのブッフェ台のところにあるのを取ってきて飲んでくださいねー」
「牛乳もね、ほら、あそこにあるから持ってきてね」
と、なんだかアバウト。息子のシリアルも、ブッフェ台のシリアルコーナーから箱詰めされた1人分のシリアルを持ってきて「これでいいかい?」と皿にざらざらっとあけてきた。

なんだかすごいねぇ、と笑ってしまいながら待っていると、やってきたのはシナモン臭ぷんぷんのフレンチトースト。3枚分の食パンが三角形に切られて 合計6枚、皿に並んでいる。その横には薄切りパンの上に置かれたポーチドエッグが2個。すごいボリュームだ。注文を誤ったかもしれない。

……で、だんなはだんなで、巨大な小山のようなオムレツを前にしていた。"Classic Omelet"という名のそのオムレツには野菜たっぷりチーズたっぷり。卵とフレンチトーストを交換しつつわしわしと今日も朝から大量に食物摂取していた。
そして「美味しいかーい?」とやってきたさきほどのアバウトなおっちゃんが、
「バナナも食べるかーい?」
と、皿に乗った輪切りバナナをだばだばだ〜と息子のシリアル皿に放り込んだ。どうやら息子へのサービスらしい。最後までアバウトなおっちゃんであった。

Atlanta 「うめぞの」にて
私:
 ちらし寿司 $11.00
 (サラダ・味噌汁つき)
だんな:
 ランチ定食 $6.85
 (揚げ出し豆腐・刺身・サラダ・御飯・味噌汁)
息子:
 玉子の握り 2×$2.20
 味噌汁 $1.00

午前中はベースボールスタジアム"Turner Field"(ターナーフィールド)を見学。アトランタオリンピック開催時のメインスタジアムをオリンピック後に改築し、アトランタ・ブレーブスのホームグラウンドになっている。
「ミュージアムのツアーに参加すると、ロッカールームやベンチまで行けるらしいよ」
と、だんなはアトランタに来ると決まった頃から行きたい行きたいとわくわくしていた。

10時半に球場に到着し、ミュージアムを眺めつつ11時からのツアーに参加。シーズンオフ中の球場内をてけてけ歩き、プレスルームやVIP席、そしてロッカールームやグラウンドまで見学させてもらった。1時間10分ほどかけてたっぷり場内を歩き回り、想定以上に疲れてアトランタを脱出。最後に立ち寄るところは、我が町より圧倒的に充実しているらしいアトランタの日本食材屋さんだった。

昼御飯は、その日本食材屋さんの隣にある「うめぞの」という日本食レストランで。噂によると、ここのちらし寿司はウニやイクラが乗っていてなかなかゴージャスだということだ。メニューに値段が書いていない事に脅えつつ、そのちらし寿司を注文。だんなは数種類のおかずから2品選ぶ形の定食にしていた。

やってきたちらし寿司は確かにゴージャス……と言えるような言えないような。マグロに鮭にイカに海老に帆立に、そして上にはたっぷりのイクラ。ウニは残念ながら乗っていなかったけれど、ネタの種類はなかなか豊富。しかし、それらは全て1切れずつで、御飯もなんだかとっても少ない。外見はお洒落にまとめてはあるけれど、あれやこれやの分量が圧倒的に物足りない……と感じてしまうのは私がアメリカ人化しつつあるということだろうか。

ネタはそこそこ鮮度も良く、味も良い。すし飯の味も悪くないし、だんなが頼んだ揚げ出し豆腐には「あ〜、懐かしいかも……」と心を鷲掴みにされそうになった。けど、やっぱりちらし寿司は少々物足りなさを感じたし、味噌汁が洗剤臭かったり(器からちゃんと流れていなかった……らしい)、おかずは揃っているのに定食の御飯と味噌汁がこちらが伝えるまで出てこなかったりと、何だかちょっと違和感を感じる店だった。不味くはないけど、でもきっとアトランタに来ることはあってもこの店には来ないと思う。

そして昼食後に山のようなお買い物。
「無洗米があるぅ〜、田牧米ゴールドもあるぅ〜」
「たけのこの里、発見!」
「じゃあ俺はきのこの山だ!」
「ぼくはねぇ、こあらがいいなぁ〜」(コアラのマーチを抱える息子)
と、たっぷりの品揃えに興奮しながらついついあれこれ買い物してしまった。フルーチェとか。

ピータン豆腐
イクラ
焼き海苔
豚汁
羽釜御飯
ビール(Coors)
お茶

帰宅は午後4時半。旅行から帰るとやっぱり"我が家の御飯"が恋しくなってしまうようで、
「ご飯炊こう!ご飯!」
「ロシア人のおっちゃんの店でイクラ買っていこう!」
「あとは、豚汁だな!豚肉も買おう!」
と疲れているにも関わらずあちゃこちゃ立ち寄ってお買い物して家に到着。

簡単に酢醤油ベースのタレを作ってピータン豆腐の準備をし、鍋にたっぷりの豚汁を作り、あとはご飯を炊いて、ひたすら豚汁とご飯をわしわし食べようという豪華なのか質素なのかよくわからない夕食になった。イクラ乗せたり海苔で巻いたりして存分に白いご飯を堪能。私はそれほど味噌汁が好きではないと自覚していたのだけど、旅行から帰ってきての豚汁は涙ちょちょぎれるほど美味しく感じた。

そして、旅行中に「よろしくねー」と依頼されていたお仕事を夜になってからやり始める。今、午前2時45分。お、終わらぬ……(でも仕事そっちのけで日記書いてる自分ってば)。

3/4 (火)
Outback(Nashville)にて、オニオンスープ (夕御飯)
おにぎり
「Alpha Bakery」のカレーパン
2日目の豚汁
牛乳

昨夜(というか今朝)は午前4時半まで仕事して、ぱたりと布団に倒れた後、意識が戻ったのは11時。あいやー、何だか半日損した気分。
空腹で目覚めて「食べ物がなんにもなーい」と朝食に思いを馳せなければいけないのは非常につらいことだけど、今日は昨夜の豚汁が残っている。おにぎりもある。1人1個のおにぎりじゃちと淋しいね、と冷凍庫から引っ張り出したカレーパンまである。まったく調和がみられない食卓ではあるけど、かなりシアワセな状況だった。朝起きて、豚汁とかシチューとかカレーなんかがコンロの上に乗ってるとそれだけで目覚め後2時間はなんとも幸せな気分になれる。

トーストと豚汁は似合うのである。話によるとカレーライスと豚汁も最高に似合うらしい。従って(?)、カレーパンと豚汁もけっこう似合っちゃったりするのだった。豚汁と牛乳という組合せも、これまた不思議によく似合う。
で、カレーパンをひと齧りしては豚汁を啜り、またカレーパンを齧っては牛乳、そしておにぎりに移行して更に豚汁、と"四角喰い"。小学校の頃、先生に
「おかずと御飯と牛乳と、順々に食べるんですよー」
なんて"三角喰い"の指導をされたことを思い出す。別にねぇ、好きなように食べて良いと思うんだけど、私は牛乳をできるだけ飲まずに残しておいて、食後に一気飲みするのがすごく好きだった(そして余った牛乳があれば更に飲む)。そういえばバターを直舐めする男子なんかもいたっけか。

Nashville 「Outback」にて
 Too Right French Onion Soup
 Brisbane Caesar Salad
 Outback Special (12oz Center-Cut Sirloin)
 Jack Dundee’s Tea
   Iced Tea

だんなが大学に顔を出している間、私はお仕事してみたりネットサーフィンしてみたり。
「なんかなー、アウトバックのステーキが恋しい気分なんだよなぁ……でもなぁ、旅行してきたばかりだし、緊縮財政状態だし」
とぼんやり考えていたところ、「そろそろ帰るけど」という大学からのだんなメールに「アウトバックでも行く?」という一文が。だんなも同じことを考えていたらしかった。今日も夫婦間電波は絶好調。

Outbackは日本にも支店がある巨大ステーキチェーン。チェーン店だけど、ステーキの味は上々だし、しかも安い。15ドル前後のステーキ1枚で、たっぷり満腹になれるのが魅力的だ。スープやサラダもけっこう美味しいし。

空腹な私は12ozのサーロインステーキ。スープかサラダ、そしてじゃがいも料理か蒸し野菜がついてくる。オニオンスープをつけてもらい、じゃがいもはベークドで。だんなはサラダをセットにし、別にオニオンスープを注文する。
「2人で1皿で充分だよね?」
と注文したサラダは、ステーキのセットとは思えないほどのボリュームだった。チーズたっぷり、レタスたっぷりのサラダを家族でつつきまわしつつ、アルコールをぐびりと飲む。今日飲んでみた「Jack Dundee’s Tea」は、"ジャックダニエルのレモネード割り"みたいなもの。小さなジョッキになみなみと、アルコール度数の案外と強いそれがやってきた。甘くて飲みやすいけど……酔う。

そして、サラダと共に、カップ入りのオニオンスープもやってきた。炒めた玉ねぎがざくざく入る焦げ茶色のスープの上には、カップの口と同じほどのサイズのパンが浮かべられ、チーズがこれでもかと溶けている。浮いているパンをなんとかしないことにはスープが溢れて飲めないほど、あれこれすごいことに入っているスープだ。ほのかにジャンクな味も感じられるけれど、このスープ、かなり好物だったりする。サラダをバリバリ食べきってスープを飲みきった後、本命の肉がやってきた。

「やっぱりさ、"牛肉熱"はステーキでしか昇華されないのよね」
「そうそう、焼肉食べても"焼肉熱"は治まるけど、"牛肉熱"は治まらないのよね」
「"牛肉熱"は、やっぱりステーキなのよねぇ」
と、350gほどのサーロインステーキを前にする私。私の皿は円形だけれど、向かいのだんなの前には2まわりほども巨大な楕円皿。上には1ポンドのプライムリブがどどどーんと横たわっている。いつもながら、1ポンドの肉は迫力のサイズだ。私はやっぱり1ポンド肉は食べきれない。

今日もステーキは旨かった。上から一見すると余裕のサイズに見える肉は、しかし高さが4cmほどもある。普通に1切れ取り分けた後、更にそれを縦方向にいくつかスライスしなければ口に入らないほどのボリュームだ。ミディアムレアに焼いてもらった肉の断面は見事な肉色で、少しだけ赤みがかった肉汁がじくじくと切り口から染み出てくる。
肉食獣になった気分だ〜、などと言いつつ、十数分で合計800gの肉は綺麗に消え去った。さすがに満腹になったけれど、それ以前に私はすっかり酔っぱらっていて(強い、強いよカクテル……)、デザートを断念して帰宅した直後、布団に倒れ込んだ。遠くで
「ちゃんと布団かけて寝なさいよー」
なんて声を聞きつつ、そのまま爆睡。何だか体中がステーキ臭いような気がするけど、とりあえず気にしない。

3/5 (水)
Copper Kettle(Nashville)にて、とんかつ定食(←ちゃうねん)
Nashville 「Copper Kettle」にて
 Fried Pork Chops
     Grazed Carrot
     Butter Corn
     Chicken Salad
 Southern Egg Custard Pie
 Iced Tea

昨夜、午後7時半にして布団に倒れ込んだまま寝こけた私と、その後午後9時に後を追って布団に倒れただんなと息子。これでもかと寝て、12時間後の午前7時半に目が覚めた。うーん、早寝早起きで健康的かもしれない(早く寝過ぎたような気も、少しだけ。

そのままぽへぽへと昨日の分の日記など書いていたら、だんなが起床。続いて息子も起きてきた。そのままパソコンに向かっていたところ、だんなが背後から
「とんかつ……」
と囁いてくる。
「とんかつ……カッパーケトルに行かない?とんかつ……」
と、とんかつとんかつ言ってくる。今日は水曜日。調べてみると、南部料理屋さん"Copper Kettle"の日替わりおかずの水曜日はフライドポークチョップなのだった。それはすなわちとんかつだ。

ではお店が開いたらすぐに行きましょうと、11時になるのを待ちかねて何も胃袋に入れずに出発。しかも小さなタッパーにとんかつソースを入れて持っていくという念の入れような私たち。まだランチタイムには早めな時間だというのに、店には既に10人以上のお客が南部料理をつついていた。今日のおかずはお待ちかねのフライドポークチョップに、チキンポットパイ。そして相変わらず10種類以上も用意されているサイドディッシュの数々。おかずを盛ってもらった後、サイドディッシュを3つ(あるいは1つか2つか)を添えてもらって"Meat & 3"の形にして食べるのが一般的だ。

だんなも私もフライドポークチョップ。ドミグラスソースをかけたりもするようだけど、「ソースはいらないの」とフライのまま皿に盛りつけてもらい、更ににんじん、コーン、チキンサラダを添えてもらった。パンを1個ころりと乗せてもらい、今日はかなりな空腹だったのでデザートも1皿。それほど甘さが強くないアイスティーをグラスにたっぷり入れて、あとは好きな席につく。

フライドポークチョップは、確かに真剣にとんかつだった。こっそり持ってきたソースをこっそりかけて、
「とんかつだ〜」
「うまー」
「うまうまー」
「御飯持ってきたら、かつ丼が作れるね」
「……作るなよ。テイクアウトしろよ」
と、美味しさにニヤニヤしてしまいながら手の平よりも大きな巨大とんかつをざくざく切ってざくざく食べる。

マヨネーズ味のチキンサラダはふわふわとした優しい味で、リンゴやショートパスタが入っている。いつもはシチューっぽいキャセロール煮込みになっているコーンは、今日はバター炒め。そして、初めて食した未知なる味が"Grazed Carrot"だった。輪切りにされたにんじんが茶色くてろんとしたソースに絡まっているのだけれど、そのソースは甘く、シナモンの香りがぶわんぶわんと漂ってくる。そして茶色いソースは、煮込まれたすりおろしリンゴなのだった。要は"リンゴソースで煮たにんじん"なのだけれど、この人生で初めて出会ったちょっと珍妙な味。砂糖を入れたコンソメで甘く煮たにんじんは好きだけれど、リンゴ風味でしかもシナモンとなると、なかなか味わい深いというか……なんというか……。

息子にコーンやとんかつを奪われつつ、おかげで今日はデザートにも無事に到達できた。パンプキンパイかライムパイというところかな?と思ってデザートコーナーから取ってきた黄色いパイにはホイップクリームとチョコレートソースが添えられている。食べてみると、こってり甘く、卵の味が濃厚だった。こってり濃厚に甘く作った茶碗蒸しのような感じ……というか、卵を3倍量くらいにして作ったプリンのような感じ、というか。ちょっとばかりポクポクとした舌触りがあって素朴な素直な味がする。砂糖の量を2/3くらいにすればもっと美味しいんじゃないかなという気がしないでもないけれど。
帰宅してからテネシー料理レシピ本(←やはり住んでいる以上は学んでみなければと買ってきた分厚い本)を見てみると、どうも"Southern Egg Custard Pie"というのがそれらしい。なかなかデザートを食べる(=デザートに到達するまでに胃の余裕がある)機会がないので、なかなか南部デザートについては未知なる部分が多いのだった。

サニーレタスとトマトのサラダ
肉じゃが
いくら
わかさぎの佃煮
焼き海苔
豚汁
羽釜御飯
ビール(Abita Ambar)

昼食後、久しぶりに行ってみた大型スーパーマーケットWAL☆MARTは、イースターグッズがちらちらと並び始めていた。ハロウィンはオレンジで黒でカボチャで猫で幽霊、クリスマスは赤で緑でサンタでスノーマン、そしてイースターはパステルカラー各色に卵とウサギと小鳥と蝶々、そんな感じだ。ほやややや〜んという色使いのお菓子やらグッズやらにいくつかの売り場が占拠されつつあり、目がちかちかしてくる。面白いので思わず"卵色塗りキット"を買ってきてしまった。

食材の買い出し中に今晩の献立をあれこれ考え、
「肉じゃが、喰いてぇ〜」
「豚汁も、また喰いてぇ〜」
「じゃあ、両方作っちゃえ〜」
という結論に達してしまい、今日の夕飯は豚肉料理。息子が
「トマト……ちっちゃいトマト、食べたいなぁ」
などと言うので、サラダも作ることにした。

我が家の肉じゃがは、小林カツ代さん方式。一時は
「肉じゃがは、命のだしを取ることから始めるのよ」
なんて鰹節を鷲掴みにしていた時期もあったのだけど、小林カツ代さんの本で見た方法を一度試してからは、もうこの方法以外で作れなくなった。ちゃちゃちゃっとできるし、しかも早い。使う鍋は、フライパン。

サラダ油で玉ねぎを炒め、フライパンに中央をあけて肉を置き、肉めがけて砂糖と味醂と醤油をふりかける。その状態で軽く煮詰めたら、水と共にじゃがいもを入れ、蓋をして10分煮込めばできあがり。じゃがいもは煮崩れないし、ちゃんと味も染みるしで、かなり良い感じ。

そして、数日前に買ってきたいくらを今日も満喫すべく、御飯もたっぷりと。おかずありサラダあり、しかも豚汁といくらと御飯という、どこをどう食べても満腹コースという食卓になった。ビール飲みながら肉じゃがを堪能しまくると、御飯が喰えなくなる。いくらで御飯をわしわし食べてると、今度は佃煮や豚汁がおろそかになる。豚汁を飲み干すと、今度は御飯のお代わりが……。
「だからさ、どっかで何かを自制しなきゃいけないわけよ」
「ていうかさ……たまには"超満腹にはならない夕食"ってのが必要だなと思うわけよ」
「あえてたまらなく不味いものを作る、とか……」
「やだわぁ……」
と、今日も色々な方向に盛り上がった我が家だった。

3/6 (木)
ひっさしぶりの水炊き 根性のスープ (夕御飯)
いそべ餅
2日目の豚汁

最近どうも生活がただれている私は、昨夜も午前3時頃までネットサーフィンして遊んでいたりした。
「君もさ、もうピー歳なんだからさ、そういう高校生みたいなこと、やめなさいよ」
というお小言と共に10時に起こされた木曜日。寝ていたのは私だけで、息子はとっくに起きて朝御飯を平らげていた。朝御飯を食べずに待ってくれていただんなはすっかり空腹だったらしい。ごめんごめん、ただれててごめん。

朝食は、2日目の豚汁。一緒に食べるのはパンにしようかご飯にしようか、と夫婦して台所をうろうろした挙げ句、
「餅を見つけましたぁ!」
「それはいそべ焼きにしなければならない!」
と盛り上がって餅に決定。焼き網はないのでスキレットでこんがり焼いた餅を醤油に浸して海苔巻いて喰った。餅と豚汁という組合せも、いいねぇ……。

たけのこの里
カフェオレ

今日の夕食は"水炊き"と決まっているので、昼食は抜いて夜に備えることに。さすがにお腹がすいたので、午後早めの時間にチョコ菓子を皆でつまんだ。テーブルに並べたのは、"たけのこの里"と"きのこの山"、そして"コアラのマーチ"。先日アトランタ旅行に行ってきた際、帰り際に立ち寄った日本食材屋さんで買ってきた。「1人1個、好きなお菓子を買いましょうね」(大人子供の区別なし)ということで、各々好みのものを籠に放り込んだのだ。

私とだんなの食べ物の嗜好はかなり似通っていて、たとえば何種類かのカレーをレストランのメニューで見たとき、"好きな順番に並べてみましょう"なんてことをするとほとんど同じ順になる。互いに相談せずに料理を注文しようとするとびったり同じものになってしまうことも少なくなく、だからいつも
「君、なに食べるの?……あー、やっぱねー、それよねー……じゃあ自分はこっちにするから半分こしよう」
なんて会話が毎度毎度外食時には繰り広げられるのだった。

しかし、しかしながら、結婚してからこれだけは相容れないものがある。これだけはお互い譲れない。何度口論しても、この嗜好だけはお互い平行線のままだ。
 私 : "たけのこの里"派
 だんな : "きのこの山"派

「あの、サクサクのクッキー生地がいいんじゃないの」という私。
「わかんないかなぁ、あのカリカリのクラッカーの食感がいいんじゃないか」という我が夫。
チョコのフォルムがね、クッキーの食感がね、とあれこれ視点を変えて話し合ってみても、断固として私はたけのこで、だんなはきのこだ。アトランタの食材屋で
「たけのこだぁ……」
「きのこがあるぅ……」
と、各々火花を散らしながら(別に散らさなくても良いんだけど)籠にそれらを入れてきたのであった。ちなみに息子はそんな戦いに我関せず、
「ぼくはねぇ、ぼくは、こあらが好きと思うなー」
とコアラのマーチを選択していた。家庭内平和のためにはコアラの選択は非常に調和が取れていると思われる。

そういうわけで、わたしはたけのこの里、だんなはきのこの山、息子はコアラのマーチを前にしてポリポリポリポリ食べているのであった。さすがに1人1箱食べきるのは健康にもよろしくないので、半分ほど食べたところで蓋をして冷蔵庫に貯蔵(チョコが溶けちゃうと悲しいからね)。

ちなみに、男性がきのこ寄り、女性がたけのこ寄りであることが非常に少ない母集団(←私たちの友人知人関係)ではありながらも統計的に認められている。やっぱりたけのこなのよ、誰が何と言っても。

根性の水炊き
    (鶏肉・キャベツ・大根・にんじん・葱・豆腐・うどん)
Hard Lemonade

夕飯は、数日前から予定していた水炊き。水炊きの準備は、それはそれはそれは大変な労力と時間が要求される。ビーフシチューを作るより、豚味噌鍋の味噌を練るより面倒だ。冬になると気合いをため、ついでに鶏の骨も冷凍庫にため、よっしゃぁ!と盛り上がってやっと作れるものなのだった。

準備は、午前中から鶏の骨を終始強火で煮ることから始まる。ざっと湯通しした鶏の骨(1回の鍋で2羽分くらいあると嬉しい)を洗って大鍋に入れ、あとは大量の水を注いで強火にかける。火をゆるめることなくボコボコ言わせ続けていると、最初はこれでもかと大量のアクが浮いてくる。アクをすくっては捨て、すくっては捨て、20分くらいかかりきりになった後は約15分ごとに様子を見ていく。強火なのですごい勢いで水が減っていくけれど、煮詰めつつも減りすぎたら熱湯を足しつつひたすらボコボコと。4時間ほども頑張れば、骨の太い部分以外は叩くとモロモロ崩れてくるようになり、鍋底に木べらやお玉を突き立ててがっしがっしと骨を叩いているうちに、スープはとんこつラーメンのスープのような色合いになる。これが水炊きのスープ。1.5リットルほどに煮詰まったそれを最後に漉せば、コンロの火を止めて30秒後くらいに表面に膜が張ってしまうほどの濃厚な濃厚なこってりスープだ。このスープなくては水炊きは始まらない。

とにかく半日は鍋のそばにいなければいけないし、ものすごい水蒸気の中アクをすくったりしなきゃいけないしで、出来上がったスープは根性と執念の味がしてしまうのだった。でも美味しいからがんばる。

こってりできた会心の出来のスープには、まず下茹でしておいた肉だけを入れて食べた。午前中のうちに作っておいたカボス酢の酢醤油をかけつつ、刻み葱や胡椒をかけて肉を食べる。スープには軽く塩胡椒。スープはとんこつスープに似た甘さがあって、そのくせケダモノ臭くはなく、トロンと綺麗な乳白色。オーガニックスーパーで買ってきた肉も柔らかくて良い感じ。
で、肉を堪能した後にキャベツやにんじん、大根などをどかどか放り込んで食べていく。この鍋の嬉しいところは、野菜がやたらめったら美味しく食べられること。キャベツもにんじんも野菜自体の甘さが際だって、なんとも優しい味になる。スープ飲む、肉齧る、スープ飲む、野菜食べる、で箸が止まらないようになってしまうのだった。

恍惚としたまま、最後はうどん(餅やご飯を入れても美味しいんだけど、今回はうどん)。胡椒をガーリガーリとたっぷりかけて白いスープに浮かぶ白いうどんを啜った。調子に乗って買ってきた大量の鶏肉も余ってるし、スープもまだあるし、明日の朝は豪華雑炊になりそうな予感。

3/7 (金)
マグロの胡麻まぶし焼き (夕御飯)
水炊きスープのうどん
アイスティー

昨夜の水炊きスープ(しかも具沢山)が残っていたので、今朝はそのスープでうどん。キャベツも大根もにんじんも肉もざくざく入っていて、このうえなく豪華なうどんになった。一晩置かれて冷めたスープは表面が凝固してしまってすっかり"煮こごり"状態だった。温めてスープ状になったところで冷凍うどんを投入し、ことこと煮込む。
「コラーゲンたっぷりですね」
「コラーゲンたっぷりというより……コラーゲンのかたまりというか」
「コラーゲンそのものというか?」
「お肌ツヤツヤになりますね」
「元々ツヤツヤしてますけどね」
と、白いスープと白いうどんをどんぶりに盛りつけた。

昨日半日かけて根性でとった鶏がらスープは、一段と煮詰まっちゃってトロトロしている。湯気だけで手や口がベタベタしてしまいそうな濃厚なスープを飲むと、それだけで満腹になってきてしまいそうな感じ。ごろごろとした塊肉もいくつかつつき、朝から満腹になってしまったのだった。

「空也」の最中
「銀のぶどう」のさくらパイ
アイスティー

「大学行ってくらー」
と出ていっただんなは、夕方に最中と袋入りの菓子を手にして帰ってきた。
「ほらー、空也の最中〜」
くくく、くうやですか!日本の!銀座の!
「くうや!もなか!なぜ!?」
と最中を潰さぬように握りしめながら我が夫に問うと、なんでも日本からの客人がやってきたのだとか。お土産に持ってきたのは、"空也"の最中と"銀のぶどう"の焼き菓子類。心憎いチョイスだ。すばらしい。

顔も知らぬその人に真剣に感謝しながら、皆で最中を1個ずつ食べた。久しぶりの上品なあんこの味はしみじみと美味しかった。適度に小ぶりで皮が薄く、相変わらず絶品の最中だ。はー、幸せ。
顔も知らぬ誰かさん、どうもありがとう。ここで数人の日本人が癒されております。

マグロの胡麻まぶし焼き
いくら
ホワイトアスパラガスのアンチョビマヨネーズ
サニーレタスとトマトのサラダ
3日目の豚汁
羽釜御飯
ビール(Corona)

近所のスーパーマーケット「Harris Teeter」で現在マグロが安売り中。100gで100円くらいだ。
昨日から今朝にかけて"コラーゲンがおなかいっぱい"状態の私たちだったので、こりゃ嬉しいとマグロを買ってきた。日本で見られるような、薄く四角いサクに切られたものなどはアメリカのスーパーには存在しない。あるのは"魚肉"という表現がぴったりくる、ステーキ肉のように切られた分厚く丸っこい塊か、あるいはシチュー肉のように切られたごろりとした握り拳サイズほどのものだ。

ユッケ風の丼にするか、づけ丼のようにして食べるか、それとも刺身で……?と考えていたところ、だんなから
「あれ、あれがいいな。胡麻まぶして焼くやつ」
というリクエストを受けた。胡麻を全面にまぶし、スキレットでさっと両面を焼いてスライスしたらわさび醤油をつけて食べるだけ、な簡単な料理だ。Williams-Sonomaのカタログ見かけた食べ方で、けっこう気に入っている(Web版レシピもあった……そうそう、本当は黒胡麻と白胡麻を混ぜ合わせてまぶすんだったっけか)。

そして冷蔵庫の奥底から発掘されたホワイトアスパラガスは、茹でてマヨネーズをつけて食べることに。ただのマヨネーズだとなんとなくつまらないのでアンチョビを刻んで混ぜた。サラダと一昨日の晩に作った豚汁も用意し、今日はさっぱり味夕御飯だ。

ところで、最近我が息子が"焼き海苔怪人"と化している。
だんなの実家から数ヶ月前に日本食材の数々が届いたのだけど、その中に10袋ほどの大量の焼き海苔があった。
「こ、これは食べきれないかも」
「ただしまっておいたら、絶対なくならないね」
と、小さな海苔収納用の缶を買ってきて、海苔をざくざく切って食卓に出してみた。そしたら息子が、毎食のように食べる食べる食べる。海苔ばっか喰いよる。それは"御飯を海苔で巻いて食べている"というよりは"海苔に御飯を添えて食べている"という感じ。彼の主食が海苔と化した、そんな感じ。
まぁ、健康には良さそうだし……ともりもり食べさせていたのだけど、数ヶ月経った今、大量にあった海苔は底が見えてきて貴重品になりつつある。どうしよう、ワカメでも喰わせておこうかなぁ。

3/8 (土)
Red Snapperでアクアパッツァ (夕御飯)
コーンドビーフ入りスクランブルエッグ
フレンチトースト
カフェオレ

昨日、トップページ
「お風呂のタイルがカビてきてしまい、"アメリカ版カビキラー"はないかと探しに行き、見つからず。しょーがないので衣類用漂白剤でガッシュガッシュこすってみました。手が荒れました……。」
と書いたところ、「こんなんあるでよー」と、色々な方からメールをいただいたので忘れないようにここにメモしてみたり。

  • "Tilex mildew remover"でカビはイチコロです。
  • スプレータイプの商品名"Clorox"や、WAL☆MARTにある"mold(カビ)何とやら"がカビキラーに相当します。
  • アメリカのカビキラーはJohonson社の"Scrubbing Bubbles Bleach"というものです。スプレーしてこすらず流すだけ。
  • オススメは"Clorox Clean-Up・Cleaner with Bleach(Spray)"です。スプレーして15〜30分放置すればみるみるキレイに!
  • "X-14"を使えば、黒いカビもバッチリ!
  • トイレットペーパーを置いた上から液体の"Clorox"をかけて、しばらく置くとキレイになります。

この場を借りて御礼申し上げます。どうもありがとうありがとう。
こんなにオススメ商品があるにも関わらず、私が名前で選んで買ってきた"KABOOM"なるお風呂用洗剤はカビには全く効かなくてここ数日すさんでおりました。さて、どれを買って来ようかなー。

朝御飯は、非常に朝御飯らしい朝御飯。
大学帰りに一人スーパーマーケットに寄ってきただんなが
「コーンドビーフ買ってきた〜」
とハムコーナーでスライスして売ってくれるそれを買ってきたのが数日前。10cmくらい積み上げてどっかで食べたようなサンドイッチにしようかとか何とか言いつつ、今日はオムレツにしてみることに。

だんながオムレツ担当、そして私はフレンチトースト担当。数日前に買ってきたフランスパン、3日ほど放置していたらガッチンガッチンに硬くなってしまい、"もうこれはパン粉にするしか"と思い詰めたくなるほどの硬度になってしまった。トーストしても美味しく食べられそうにないので、フレンチトーストに加工する。卵と牛乳を混ぜた液に浸して浸して浸しまくって柔らかくなったところをバターで焼いていく。横に立つだんなはスキレットでオムレツ製作に励んでいたけれど、
「あ、無理だ、スキレットでオムレツは……無理だ無理だ難しすぎる……あああああ、スクランブルエッグになっちゃったぁ〜〜」
と悲壮な声をあげている。オムレツは大失敗だったらしい。

かくしてテーブルには卵色の料理が並んだ。
アメリカにおいて"コーンビーフ"は、日本で見るような缶入りで繊維状のぽろぽろしたタイプのものと、ハム状の薄切り肉タイプのものと2種類存在している。"Corned Beef Sandwiches"などとダイナーのメニューで見かける料理は、大抵後者の薄切り肉タイプのものがやってくる。ローストビーフよりも塩辛く薄くヒラヒラした肉はサンドイッチにすごく似合う。今日のオムレツのなれの果てのスクランブルエッグには卵以上に入ってるんじゃないかという量のコーンビーフが入っていて、なんだか幸せな気分になった。今度はサンドイッチにして食べることにしよう。コーンビーフは1ポンド8ドルほどもしたそうなので、食材としてはほんのり高級品という感じ。

ところで、今朝起きたら、額に吹き出物がいくつか出現している。
「水炊きの呪いだ!」
と唸っていたら
「はいはい、水炊き食べ過ぎたのね」
とだんなに返された。
「ニワトリの呪いかもしれない!」
「はいはい、食べ過ぎたのよね」
……だんな、相手にしてくれない。

豚骨ラーメン (うまかっちゃん)
アイスティー

つい先日旅行してきたばかりだというのに、5月にはまた休暇があるということで「多分、それが最後の大旅行になるはずだから」と、航空会社や国立公園のホームページを覗いてあーでもないこーでもないと検討していた今日。悲願のイエローストーン公園(←昨夏そこを目指したはずなのになぜかニューオーリンズ旅行になってしまったという経緯があるので)におそらく向かうことになるのだろうけど、どうもめちゃめちゃ寒いらしい。5月で最低気温が0度前後になるというのが恐ろしい。冬季に閉鎖される何ヶ所かの園内入口がオープンするのがちょうどその頃。春の息吹を愛でる旅というよりは寒々しい旅行になりそうな予感がする。

あーだこーだと議論したり予約しているうち、だんなが
「あー、お腹空いたなぁ、もー」
などと言い出して「インスタントラーメン食べる?素ラーメンでいい?」と豚骨ラーメンの準備をしてくれた。アトランタの日本食材屋で買ってきた"うまかっちゃん"だ。我が町の日本食材店ではあまり見かけることのない豚骨ラーメンだった。

具は刻み葱と、炒めウィンナーのみ。
「と、とんこつラーメンにウィンナーですか……?」
と困惑する私に、まぁ美味しいから喰ってみろとだんなは言う。その態度からは"俺は何度もウィンナー乗せラーメンを食ったことがある"という自信が滲み出ていた。学生時代にでも何度も作っていたのだろうか。私はウィンナー乗せラーメンは初体験だ。

いかにもなインスタントの豚骨ラーメンのジャンクな味。それでも「はぁ〜、とんこつスープは久しぶり」と癒されてしまう。スープをすっかり飲み干すほど、その手の味に飢えていた自分を自覚してしまった。
日本食材店などで籠いっぱいにインスタントラーメンを買ってしまう人を笑えないかもしれない。

Red Snapperのアクアパッツァ
かぼちゃのスープ
羽釜御飯(田牧米ゴールド)
Hard Lemonade

午後になってアジア食材店にお買い物。塊の豚バラ肉が目当てだったのだけど、久しぶりに赴いたその店は商品の配置が変わっていた。その店独特の魚介の血なまぐささと果物(特にドリアン)が熟して腐っていく匂いが混在する空気は相変わらずだけれど、氷詰めにされて大量に売られている丸のままの魚が大量に並び、魅惑的な光景になっている。いつもは目がどんよりと濁りまくった巨大な淡水魚やナマズ、あとはせいぜいアジっぽいものとか平目っぽいものなどが数種類並んでいるだけだったのに、今日はイカだのサバだのが巨大な容器に氷詰めにされて並んでいた。Red Snapperという体長30cmほどの鯛の仲間を見つけ、これは良いやと買ってきた。久しぶりの丸魚だ。鱗の感触すら懐かしくて、うきうきと鱗とり。

魚はイタリア料理、"アクアパッツァ"にすることにした。夕方、プチトマトを半割にして1時間ほどオーブンに放り込みドライトマトを作成。市販のドライトマトほど水分が抜けてはいないけれど、ふにゃりと柔らかく小さくなったプチトマトがこの魚料理には必要だ。本当は半日ほど天日に干すと良いのだけど、時間がないのでオーブン焼きのまま使用する。
うろこと内臓を取った魚をスキレットで両面こんがりと焼き、アサリと水を注ぎ入れる。熱されたスキレットの上で水が爆ぜるなか、ドライトマトとオリーブとケッパーとアンチョビをうりゃうりゃうりゃと放り込み、沸騰するその煮汁を魚にかけつつ煮込むこと数分。洋風な味のくせに妙に御飯にも似合う魚料理だ。

アトランタの日本食材屋で買ってきた和かぼちゃがあったので、コンソメで茹でてつぶして牛乳入れてスープにする。そして炊いたお米も、これまたアトランタで買ってきた米、"田牧米ゴールド"。
カリフォルニア米はピンからキリまであるけれど、"こしひかり""ひとめぼれ"など日本と同じ銘柄ではないものの中では、この"田牧米ゴールド"が非常に人気があるらしい。我が町の日本食材店でもかつては扱っていたらしいのだけど、いつのまにか米コーナーに「もう田牧米ゴールドは扱いませんよー」という張り紙が貼られるようになった。店主によると、アメリカ人の農家が広くこの米を栽培するようになったものの一部の気を遣わない農家が他の花粉がぷんぷん飛んでくるところでこの米を作ってしまい、非常に品質が悪くなってしまったのだとか。真偽のほどはわからないけれど、初めて食べた田牧米ゴールドは確かに美味しかった。あと、買ってきたのは"秋田おとめ"という名前の無洗米。ここしばらく使っていたのは"国宝 国府田米"というもので、この3種の中でこれがあからさまにダントツに美味しい!……と決めるのはちょっと難しい。どれもそれなりに美味しく食べられる。
しかし、"田牧米"の他に"田牧米ゴールド"があったり、"国宝"の他に"国宝 国府田米"があったり、種類が豊富すぎてもう何がなにやら。

久しぶりに骨までしゃぶれる魚が食べられて、しみじみ幸せな夕御飯だった。やはりたまには魚(しかも丸魚)を喰わねばならぬ。アサリと共に魚肉をざく食べた後は、ほぐした身を煮汁と一緒に御飯にしゃばしゃばぶっかけて食べた。あまり見目良い光景じゃないけれど、魚介のエキスたっぷりの煮汁が、御飯と絶妙に似合っちゃって、箸が止まらなくなってしまう。
瓶1本しか飲まなかったのにHard Lemonade(アルコール入りレモネード)が空腹に染み渡った挙げ句、満腹になるまで食べてしまって、食後はばたりとベッドに倒れ込んでしまった。
「レモネードの呪いだ!」
「今朝は水炊きの呪いで、今度はレモネード?……って、単にそりゃ酔っぱらってるだけだろ……」
と、呆れながらも食後の後かたづけをしてくれる心優しき我が夫。鍋の始末をしてくれてるだけかと思っていたら、皿を洗う音まで聞こえてきた。
「ノットオンリー鍋、バットオールソー皿!」
と感動していたら
「黙ってろこの酔っぱらい」
だそうで。酔っぱらいにはもっと温かい言葉が欲しうございます……。

3/9 (日)
牛肉と黄ニラの中華炒め (夕御飯)
コーンビーフサンド
かぼちゃのスープ(昨夜の残り)
カフェオレ

大学のSpring Break(春休み)は今日でおしまい(←アメリカ国内でも大学によってその時期はバラバラらしい)。だんなは来週中旬に試験を控えているというのに、
「どうせ1週間休みがあっても勉強し続けるわけはないから、前半は思い切り遊ぶんだ♪」
と前半アトランタで思い切り遊んだ挙げ句、何だか後半もそのまま遊び続けていたような気がしないでもない。さすがにヤバイと思ったのか
「今日は研究室行って勉強してくるね……」
と殊勝なことを言っている我が夫だった。

朝御飯は昼御飯と兼用ということでちょっとボリュームたっぷりめに、コーンビーフサンド。薄切り肉の形状のコーンビーフをチーズと共にドッグパンに挟み、チーズが溶けるまでこんがりオーブン焼きにして食べた。
コーンビーフは非常に旨い。缶詰のやつをじゃがいもや卵と一緒に炒めたりしてもそれはそれで美味しいけれど、アメリカに来てからは薄切り肉バージョンのそれに魅了されっぱなしだ。でも、ローストビーフとあんまり変わらない金額で売られていたりして、微妙に高級感が感じられてしまう食べ物なのだった。

だんな特製 牛肉と黄ニラの中華風炒め
だんな特製 煮豚と煮卵
だんな特製 簡単スープ
羽釜御飯
ビール (Abita Ambar)
チョコチップアイスクリーム

昨日、アジア食材店に行って"黄ニラ"を発見した。その名のとおり、黄色いニラだ。
よく中華料理店でその名を見ることがあり、黄ニラって美味しいなぁと思っていたのだけど、実物を見るのは久しぶりだった。日本ではデパ地下の野菜売り場あたりで見かけたことがあっただけで、近所のスーパーなどでは見たことがなかったはずだ。ほんの数束売られていた黄ニラ、気になったので買ってきてみた。やっぱりここは王道の中華炒めで食べるべきだろう。

"確か、日に当てないようにして育てたニラだったんだよなぁ……"と思って一応確認にと検索エンジンで調べたところ、あるある大事典でも特集されていたことがわかった。なんでも"アホエン"とかいう脳の老化をくい止める成分が入っているのだとか。
「アホエンですよ、アホエン」
「坂田師匠になる成分ですか?」
「違います、多分その逆かと思います」
と、アホエンへの理解を深めつつ、牛肉とピーマンと共に炒めることにした。

中華炒めは、だんなが得意とするところなので今日のおかずは彼におまかせ。せめて食材は刻んでやろうかと牛肉や黄ニラをだかだか切っていたところ、だんなはだんなで昨日仕込んでいた煮豚の汁にゆで卵なぞ浸して"煮卵"作成に励んでいる。しかも煮豚の煮汁を使ってのスープの準備まで進んでいたりして、私はただ牛肉とニラとピーマンを刻んだほどで夕食の支度が調ってしまった。らくちんだ。

緑色のニラほどあの独特のニラ臭さはなく、柔らかくひょろんとした黄ニラは上品な味。少量のオイスターソースで風味付けして塩と酒で炒めた淡い中華炒めな味によく似合っていた。御飯が進む旨いおかずだ。
「……これ、なぁに?」
と、おそらく黄ニラは初めてなはずの息子が困惑気味に黄ニラをつまみあげている。
「それ、黄ニラ。ニラの仲間」
と教えても、そもそも"ニラ"がピンとこないらしい(そういえばニラもあんまり買ってなかったなぁ……)。
「ぼくはね……これは、ねぎと思うな……ねぎはからいから、あんまり好きくないと思うな……」
と、勝手に"これは葱の仲間"と結論づけて困惑を極めている。いいから喰えって。葱じゃないから。旨いから。