食欲魔人日記 00年12月 第5週
12/25 (月)
茹でじゃがいものカレーソース (夕御飯)
ミニチャーシュー丼
たらこの和風スープ
麦茶

さて、今日から4日間は最後の出勤日。およそ1ヶ月休んでいたこの身体のなまり具合で、果たして出勤できるのだろうか。一抹の不安がよぎる。
起床7時10分、家を出るのは7時50分、はっきり言って慌ただしい。だったら早く起きれば良いのである。でも起きないのが私ならではだ。

怒涛のように寝癖を直し顔を洗い、あたふたとしている間にだんながサクサクと自家製チャーシューを切っていてくれた。小さなどんぶりに御飯を少なめに、上からチャーシューを4〜5切れヒラヒラ乗せてから煮汁も少々。白髪葱もぬかりなく盛られている。さすがだんなだ、ぬかりがない。
味噌汁を作る余裕などはさすがになく、しかし昨夜の残りのクラムチャウダーもチャーシュー丼との調和でいかがかと思い、インスタント味噌汁を入れる。だんなにはなめこの赤だし、私にはたらこの和風スープ。

先週末に作ったチャーシューは、ちょっと小ぶりで甘辛いタレを染み込ませまくっていた。ちょっと濃い目の味付けだけど、御飯と一緒に食べる分には丁度良いかもしれない。

銀座 山岸食堂にて
 幅広パスタのカルボナーラ

最後の銀座勤め4日間、昼御飯は馴染みの銀座ランチを満喫する所存である。
ヤマト運輸が経営母体だと知ってちょっとびっくりしたパン屋「スワンベーカリー」だとか、コロッケパンが忘れられない「チョウシ屋」だとか、馴染みの充実お弁当「かすみ亭」だとか、いやいやまだ行こうと思って行けてないあの店だとかこの店だとか、銀座福臨門のテイクアウト弁当だとか……4日じゃ、はっきり言って全然足らないのであった。

本日は、後輩に誘われて女性3人で「山岸食堂」なる手打ちパスタ屋に赴いてみた。小さな小さな店である。いつもチャリで前をツィーッと通るときに密かに気になっていた店だった。昼には行列、ますます気になる店だった。
ランチは税込み1000円。20種類ほどのパスタの中から1種類を選び、それにサラダと自家製パン、コーヒーがついてくるらしい。

築地近くの銀座の裏通り、かの「ラ・ベットラ」にほど近い小さな小さな店に、こっそり早めに会社を出た我ら3人、席につく。テーブル席が2つ、カウンターが7人分という本当に小さな店は夫婦で経営しているらしい。おっちゃんが鍋をふり、おばちゃんが給仕する。ずらりと並んだオイルパスタ、トマトソースパスタ、クリームソースパスタはかなり充実。チキンのクリームチーズソースだとか、ルッコラとトマトのオイルパスタだとか、スタンダードなものもちょっと独特なものも揃っている。手打ちパスタは2種類、細麺と太麺から選べるらしいが、後輩曰く「細いやつでも太いんです」とのこと。
それだけ太いパスタなら、こってりしたソースで是非食べたいものだと、カルボナーラを頼むことにした。もちろん太麺で。

ほどなく来たのは皿に乗ったレタスのサラダところっとした素朴な印象のパン。レタスはオリーブ油とワインビネガー、上からパルメザンチーズがガリガリとかかっているシーザーズサラダっぽいもの。それにやや茶色っぽいもちっとしたパンが添えられる。このパンがもちもちねちねちと、妙に味があって美味しい。そうしている間に12時を過ぎて店はあっという間に満員に、外にもちらほら並び始めた。

で、パスタだ。果たして「太麺」は15mmほどもありそうな平麺だった。パッパルデッレというやつだ。「細麺」は、大体10mmくらいのやはり平麺。黄色い濃厚なソースに綺麗に絡み、上からはこれでもかと黒胡椒がふられている。細く細く切ってあるベーコンだけが少々頼りない印象だけど、充分美味しそうな皿だった。
手打ち生麺の独特のもちっとした歯ごたえに、チーズたっぷりのクリームが良く馴染む。黒々とたっぷりの胡椒がまた効いていて、かなり良い感じだった。他の人の皿もどことなく素朴にざくっと盛られたパスタばかりで、何というか愛に溢れていた。こういう店、大好き。
100g強ほどのパスタをちゅるちゅると平らげ、デミタスカップのコーヒーを啜って出るとまだ12時半だ。外には相変わらず7人ほどが行列している。うーむ、やはり銀座、侮れない……。

M井さん来たりて宴会
 クラコット with ポークリエット・パイナップルチーズ・シナモンシュガーバター
 茹でじゃがいもとアスパラガスのカレーソース
 チョウシ屋のハムカツ・コロッケ・マカロニサラダ
 汁なしチャーシュー麺
 ビール、麦茶

アンジェリーナの
 モンブラン
 アイスティー
 

クリスマスである。ジングルベルの鐘の音と共に(←嘘)M井さんがやってきた。
「……用件は何だろう?」
と言うだんなに、
「……クリスマス、暇だからでしょう。」
とにべもない返答を返す私。もちろん大歓迎だ。

しかし今日は出勤なのだ。昨日のイブの準備でへろへろになってとても今日の下ごしらえなどしている筈もなく、夕方に会社からチョウシ屋に電話を入れることで夕食の支度は始まる。チョウシ屋は、コロッケパンがめちゃめちゃ美味しいお肉屋さんだ。無論コロッケも美味しい。
「すみません。5時半に取りに行くので、コロッケ2つとマカロニサラダと……牡蠣フライもあったらそれも。」
と頼むと、残念ながら牡蠣は切れたとのこと。代わりにハムカツをいただいてきた。

クラコットをばりばりと割り、手製ポークリエットとチーズ、バターをこてこてとつけてビールのお供に。チョウシ屋セットと、あとは茹で野菜に昨日のチキンカレーの残りのルーをぶっかける。酒の肴はこれで万端、あとはだんなが煮付けたチャーシューで汁なしチャーシュー麺。クリスマスにあるまじき不調和な夕食かもしれないけど、みんな好物なので問題はどこにもない。

20分程度で怒濤のように準備した夕食だったけど、それなりに見栄えの整ったものになった。結局肝心なのは楽しく皆で食卓を囲むことだ。家人が血相変えて厨房に籠もりっきりでいても、来客にはあまり嬉しいもんじゃないだろうというのが私の考え。だから簡単な料理しかできなくても皆で座って乾杯するに限るのだ。

ほんのり薄味スパイスのカレーソースつき野菜は思った以上に美味しかった。鶏肉のかけらがごろごろ混ざるこってりしたカレーソースは野菜に良く絡む。ポークリエットもビールと共にざくざく減ったし、コロッケ3個とハムカツ2個の盛り合わせも綺麗になくなった。無論、汁なしチャーシュー麺も皆してぺろりと平らげた。

さて、残ったのはビールの空き缶3つと山のような洗い物。
食器洗浄機が欲しいなあぁぁぁぁ……。

12/26 (火)
福臨門(銀座)の「焼物弁当」 (昼御飯)
フレンチトースト
クラムチャウダー
カフェオレ

昨夜遊びに来たM井さんは例によって宿泊している。
ちょいと仕事があって朝30分早く起床して端末の前に座している私に向かって、背後から
「ちょっと由紀さん、愚痴ってもよろしいですかぁ〜?」
などと話しかけてくるのだ。M井さんは甘えたさんであり寂しがりやさんである。はぁ、良い彼女はできないものか。顔も良いのに。性格はアレだけど。

朝は、数日前に買ったちょっと乾燥したフランスパンで山盛りのフレンチトーストを作る。フレンチトーストたるもの、やはりフランスパンで作るのが正統であろうかと思う。厚切りフランスパンをざくざくと13〜4切れほどにして、砂糖と牛乳入りの卵液にくぐらせてこんがりと焼く。カルピス製ソフトバターとシナモン&シュガーバター、ピーナッツバターを「お好きにつけてくださいな」とずらりと並べる。カフェオレと、イブの夜に作ったクラムチャウダーを出した。

スープはやはり、作った日よりも翌日あたりが味に馴染みが出て美味しくなる。じゃがいもがほろほろと崩れかけ、にんじんはすっかり角が取れてしまった。玉ねぎも跡形もないし、でもアサリとベーコンはざくざく入っている。良い感じだ。
「お代わりありますよ〜」
と言ったらば、M井さんが速攻飲み干してお代わりしていた。こういう有り難い客人は大切にしなければと思う。

銀座 福臨門魚翅海鮮酒家の
 フルーツプリンつき焼物弁当 \1500

さて、最後の労働4日間、2日目の今日のランチは「福臨門」のテイクアウトランチだ。
なんでも最近、かの高級中華料理店でテイクアウトの弁当を出しているのそうなのである。高級店にしては1500円と何とか手の届く価格で、しかも700円で販売しているマンゴープリンまでついてくるそうなのである。何ともお得な話ではないか。この話を仕入れてから、ずっとうずうずうずうずしていた私である。うずうずしていたのは私だけではなかった。同じシマの後輩Kさんもまた、うずうずうずうずしていたことが判明したのだ。てなわけで、女二人が連れ立って、昼休みになる少し前に会社を抜け出して自転車をこぎ、お店に向かった次第。

これまで店の入口のみがあった1階道路際に、見慣れない華やかな看板が出ている。つややかなローストダックが店頭にぶらさがっているのを見て、「ここだここだ」と小ぢんまりしたテイクアウト専門コーナーに入る。メニューは6000円の焼き物と前菜の盛り合わせや、冷蔵ケースに入る点心などなど。弁当の項目もしっかり壁にかかっている。焼き物が150g入る1500円の弁当は4種類。

 脆皮焼肉飯 (皮付き豚バラ肉の炭焼き弁当)
 蜜汁叉焼飯 (炭焼きチャーシュー弁当)
 明墟焼鴨飯 (家鴨の炭焼弁当)
 鹵水貴妃鶏飯 (蒸し鶏の冷菜弁当)

となっている。どれも魅惑的だ。そしてどれにも700円の時菓凍布甸(果物入りプリン)がついてくるとも明記されている。ますますうっとりだ。

Kさんときゃあきゃあと相談しながら「家鴨の炭焼弁当」を頼もうとすると、
「1種類で宜しいですか?盛り合わせもできますが。」
とカウンター向こうの店員のお兄さん、にっこりとそうおっしゃる。そそそそ、それを早く言ってくれなくちゃあ!
かくして私は皮付き豚バラと家鴨、Kさんはチャーシューと蒸し鶏という組合せで2種類ずつ入れてもらい、きっちり4種類のおかずを詰めてもらって会社に戻って来たのであった。

さすが福臨門なのである。プラスチック容器は2つ、おかず用と御飯用が用意されている。1つには焼き物をミニカップ入りのソースと一緒に詰め、副菜にいんげんのXO醤炒めときゅうりとにんじんの酢漬けが入れられている。にんじんは美しい蝶蝶型の飾り切り。御飯にはブロッコリーとザーサイが添えられている。その2つの容器が、更にお店のロゴ入りの紙箱に収められているのだ。そして別の袋に季節のプリン。白っぽいそのプリンは、残念ながらマンゴープリンじゃなかったけれど。

「あの〜、今日のプリンはマンゴープリンじゃないんですね?」
と御飯を詰め詰めしているおばちゃんに尋ねると、
「あ、はい。そうなんです。今日はロンガンという、ライチに似た果物のプリンになっております。」
との返事。まぁマンゴーの季節じゃないし、と心中呟いて納得すると、その心を見透かしたように焼き物を骨ごとぶった切っていた先のお兄ちゃんが
「マンゴーの季節じゃないので、作ってはいるのですが、あまり美味しくできないものでして……。早ければ3月頃から出ると思います。」
とおっしゃった。……3月に、また来なければならないらしい。とほほ。

いそいそと会社に戻り、休憩室でKさんと2人並んで弁当を開ける。何やらゴージャスだ。
焼き物を2人で半分ずつ分け合い、がふがふと御飯を食べ始める。土鍋で炊いたような、ほんの少し芯のあるように感じられるサラサラとした御飯には肉の煮汁か、旨味のあるスープが少々かかっている。自家製らしい塩味の薄いザーサイに、スープと塩で炒めたようなブロッコリー。ああ、これだけでもなかなか良い感じだ。
そして焼き物。皮付き豚バラ肉にはハチミツベースのような甘いタレが、蒸し鶏には葱ソースがついてきている。肉はどれも絶妙にふくふくと柔かく、噛むとじわっと肉汁が溢れてきた。豚バラ肉の皮はパリパリカリカリと良い具合の歯ざわりで、家鴨の皮はテラテラと光っている。ああん、美味しい。しかも肉ばっか。幸せな弁当だ。

柔らかでプリプリしている蒸し鶏も相当なものだったし、持ち上げると肉汁が垂れそうなジューシーなチャーシューも20枚ほどは食えそうな美味だった。でも、骨付き家鴨の燻した香ばしさは更に幸せだった。香港で感動したあの味が蘇ってきたような、皮パリパリの皮付き豚肉にも感動したし。この感動を1500円で味わえるならお安いものだ。

で、すっかり満腹になって龍眼(ロンガン)プリンを食す。直径10cmほどの容器のプリンに、これまた小さいプラスチック容器にエバミルクが満たされて添付される。もちろんスプーンもついてくる。
乳白色の淡い色のプルルンとしたプリンは、ライチに似た花のような香りのものだった。モチモチンとした弾力がある。エバミルクはあってもなくても良さそうな感じではあったけど、コンビニプリンじゃとうてい味わえない"本物"の味がした。きっちり大きな果肉もごろりと入っていたし。

全体的に、ホンモノの実力を見せつけるような、充実したお弁当だった。いや〜ん、満足。また買いたい。
このお弁当ひとつで、銀座という好立地の職場を去ることをちょっと後悔したりして……。

宅配寿司
 握り寿司セット
 握り穴子
 ねぎとろ巻き
インディアペールエール・インスタント吸い物・お茶

帰宅した私は色々と切羽詰まっていた。
会社から持ち帰った私物の袋は重いし、手はかじかんで冷たいし、帰宅してみれば仕事の訂正依頼がメールされているし、洗濯物はあるし風呂洗いはあるし、自分のホームページ更新作業はあるし(?)、先日買った「どこでもいっしょ」は楽しいし(??)……しかも料理する気はあまりなかった。

中華……今日の昼は中華じゃなかったか。洋食……最近そんなつまみが多い。エスニック……玉ねぎを山ほど炒めたツライ記憶がじくじくと蘇る。こってり系……昨日喰ったのはこってり汁なしチャーシュー麺だ。和食……なーんかなー、ちょっとなー。
えーい、なんか全然思い浮かばない。こういう日もあるさ。

諦めて、ひたすらしなきゃいけない作業をする。いつのまにか8時だ。「今から帰るよ」コールをしてきただんなに
「テンパってます。料理作ってません。どうしましょう。」
と正直に話す。「寿司がちと喰いたいです」と伝えたら「よきにはからえ」という返事が帰ってきた。よきにはからって、宅配寿司を注文。やや安めの3人前握りと穴子握り、ねぎとろ巻きはだんなと私で2本。

しかし、肝心なことを私は忘れていた。寿司を取ったら対価を支払わなければならないのである。
ちょっとリッチな昼食を取った私の財布はひもじかった。本当なら銀行に寄って帰ろうと思っていたところ、すっかり忘れていたのであった。そもそも「あると使っちゃうから」という理由で1万円以上は持ち歩かないのが常なのだ。確か先週末から財布から減るお金はあっても増えるお金はなかったのである。少々焦りつつ自分の財布を覗くと、なんと注文した金額にほんのわずか足りない。電卓まで持ち出して必死に計算すると、60円ほど足りないことが判明した。せりあ、ピーンチ。

だんなが帰ってきて助けてくれるのが先か、寿司屋の兄ちゃんが来るのが先か、悶悶と待つこと30分、寿司屋の兄ちゃんが早かった。ああ、どうしよう。だんな助けて。
「××××円です。」
のお兄ちゃんの声に
「あらあらあら、ごめんなさい。たった今新聞の集金が来ちゃって、細かいの払っちゃったんですぅ〜。」
と白々しく答えながら心中真っ青な私。
とりあえずあるだけの札を押しつけ、500円玉と100円玉をも押しつけ、
「足ります?足ります?足りなかったら言って下さい。」
とまた白々しく伝えてみた。
「……60円、足りませんね。」
兄ちゃん、冷静である。私は冷製になっている。身体の芯から凍えている。だーんなぁー、たーすけてぇー。

だんなの顔を思い浮かべていて、ふと思い出した。だんな、1円玉と5円玉をガラス瓶に貯金しているのだ。5円玉で12枚払えば、それでなんとかなるじゃあないか。
「ちょちょちょちょ、ちょっと待って下さいね。いまいまいまっ!」
と奥に引っ込む私。引っ込むなりジャラジャラジャラと瓶を逆さにして振り回す怪しい音が。兄ちゃん、一体何を思うだろうか。私にはそんなことを考える余裕もない。なんとか12枚の5円玉を入手して、へらへら笑いながらお兄ちゃんに渡した。
「ごめんさいね。あと、大きいお札しかなくって。」
大きいお札どころか小さいお金もないのである。うそつきだ、自分。

ようよう寿司屋の兄ちゃんを帰した後、ぐにゃぐにゃになっていたところにだんなが帰ってきた。あ、あと2分早かったら私はこんな思いしなくて済んだのに。今日は人生で最大のピンチを迎えてしまったじゃないか。んもう。半べそかいて訴える私に、だんなはしれっと
「待たせておけばいいのに。どうせもうすぐ帰るのわかってたんでしょう。」
と言った。え?「お財布がもう少しで帰ってくるからもうちょっと待っててください。」とでも言えって?言えませんよ、そんなこと……。

12/27 (水)
風月(月島)にて「牛すじ葱もんじゃ」 (夕御飯)
うーん、やっぱり見た目グロい……

卵ぶっかけうどん
チョウシ屋の
 マカロニサラダ
抹茶入り玄米茶

寒い寒い寒い。
「さむいよさむいよ。熱いものが食べたいよ。」
と布団の中でもぞもぞしていたところ
「じゃあうどんですか?」
とだんなが冷凍うどんを茹でてくださった。

生卵を溶いたどんぶりの中にアツアツのうどんを放り込み、えいやっとかき混ぜて良い状態に半熟にしたぶっかけうどんだ。刻み葱少々、醤油を少々落として食べる。一昨日買ってきたチョウシ屋のマカロニサラダも冷蔵庫から発掘されたので、これも出す。熱いお茶も用意して、いただきます。

ああ、ちょっと前までは「なんてコシのあるうどんなんだろう」と絶賛していたカトキチ冷凍うどんであるのに、今の私には全く物足りない。コシが足りない。喉ごしもいまいちよろしくない。ツルツルツルーッといかない。

東京の家庭で喰えるうどんにしては最高峰に美味しい部類であろうそれであるのに、頭の中には「ゾンビだわ。うどんのゾンビ。良い感じに腐っている状態なのだわ。」などという不穏なフレーズが駆けめぐる。ああごめんなさいカトキチさん。カトキチさんが悪いんじゃないんです。本場讃岐の製麺所うどんを知ってしまった自分がいけないんです。とほほほほ。

アツアツうどんを食していざ労働へ。

品川 Mario Gelateliaにて
 マンゴープリン

午前中、ちょいと仕事の予定があって山手線に乗る。確か品川駅そばのビルにマンゴープリンが美味しいらしいジェラート屋があったよな、と思い至ったら即行動。駅前ビル1Fにあるジェラート屋に寄り道してみた。

一軒普通のジェラート屋、ドリンクやミニカップ入りデザートも数種類売られているようだ。マンゴープリンは230円。透明カップに入ったそれはふるるんと柔らか滑らかで、ココナッツのソースがついてきた。ソースは固く濃厚で、小さなソース用カップを傾けても垂れてこないほどだ。ソースをスプーンでこてこてとプリンになすりつけながら淡いオレンジ色のプリンを食べる。

何故私はこうもマンゴープリンに執着して食べ続けているのだろう。マンゴープリンオンリーホームページを作ってから早や3年、カウントすると(するなよ)200個前後の種類のプリンを喰っているらしい。そりゃ香港で食べた本場のマンゴープリンは涙ちょちょぎれるほど美味しかったし、日本でも数は多くないけれどめっちゃめちゃ美味しいお店も存在する。でも、一口食べてゴミ箱直行レベルの市販品も少なくないのだ。ここまで探して食べ続けるというのは……意地かもしれない、はっきり言って。

今日のは、期待以上に美味だった。ふわふわの"なめらかプリン"系クリーミーな生地は淡い甘さで酸味もあり、こってりこってりしたココナッツソースと似合っている。上に乗る生の果肉はちょっとばかり酸味が強かったけど、しっかり全体的にマンゴー果実の風味が漂っていた。値段もお安い。幸せなことだ。
すっかり満足してランランランと品川を出る。ちょうどお昼間近だ。今日はだんなにたかることにしよう。

内幸町 LA VELDEにて
 フレッシュトマトと茄子とモッツァレラチーズのスパゲッティ
 (サラダ・桃のアイスティつき)

「お昼、ご一緒しませんかぁ?」
とだんなに"ゆすりたかりコール"をする。「ご一緒しませんかぁ?」はすなわち「ご馳走してくれませんかぁ?」だ。
「全く僕の奥ちゃんは……」
と言いつつ、昼御飯をいつもおごってくれるだんなに感謝。

しかも今日は
「ラ・ベルデのスパゲッティーが食べたいのですー。」
と店指定ありだ。店を指定されてまで奢らされるだんな、不幸。なんだか今日はスパゲティー気分。

昼12時過ぎて、富国生命ビル地下1階のラ・ベルデは大混雑だった。10人ほどが並ぶところ、辛抱して並んで店に入る。昼はスパゲティーとピザのメニューのみ。どれを注文してもサラダとコーヒーor桃のアイスティーがついてくる。ここの名物はカルボナーラだ。

千切りキャベツときゅうりのサラダをわしわし食べつつパスタを待つ。ここのパスタは量が多い。大盛りにすると170gというボリュームで大皿がやってくる。大喰らいの私たちには嬉しい店だ。

私のパスタは白ワインベースの「フレッシュトマトと茄子とモッツァレラチーズのスパゲッティ」である。ワインの香りがぷんと漂う、シンプルな色合いのパスタ。上には輪切り茄子とざく切りトマト、手でちぎったようなモッツァレラチーズがざくざく盛られている。上からイタリアンパセリの刻みがパラリと。もちもちしたモッツァレラチーズを食したくて注文したスパゲティ、あっさりしていてとても良い。……でも、だんなの大盛りカルボナーラも気になっちゃうのよねー。

ここのカルボナーラは相変わらず凄い。ソースそのものは卵黄にパルメザンチーズに、というごくごく普通のものだけど、巨大なベーコンのかけらがここのカルボナーラを名物たらしめている。厚さは1cm弱ほど、そして5cm角ほどの巨大なベーコンがパスタの上にごろんごろんと4つ5つ乗るのだ。少々塩辛くて油っこくて、でもじゅわっと肉汁が出るベーコンはこの厚さならではのものだ。これが嬉しくて皆ここのカルボナーラを注文する。食卓の粒胡椒をガリガリと削ってかけつつ、だんなの大盛りカルボナーラを相当量奪い取った。うむ、やはり美味しい。

会社にて
 缶ビール
 乾きものおつまみ

月島 風月にて
 牛すじ葱もんじゃ
 風月もんじゃ
 焼きウィンナー
 鶏そぼろ焼きそば
 ビール、烏龍茶
 

さて、世間では明日が仕事納めである。弊社も勿論そうである。
でも、明日休んじゃう人も結構いらっしゃるということで、今日が課の"なんとなく仕事納め"の日なのであった。私の退職に伴っての机の移動などもあり、今日は午後総出で片づけをした後、時間外にビールで乾杯。どこからともなくざくざくと乾きもののツマミが出てくるあたりが恐ろしいところだ。

「ま、ま、ま、あるだけ飲んじゃいましょう。」
と課長の号令の元、先ほどまで仕事していた机に缶ビールをずらりと並べて小さな宴会をした。缶1つ開けて、速攻で抜けさせてもらって午後6時半。慌てて息子の保育園に迎えに行くと、ちょうどだんなが保育園に先に来ていてくれたところだった。保育園の前で合流し、
「夕飯、どーする?」
「どーする?」
「はっきり言ってね、急いで帰ってきたわたくしはヘロヘロだよ。」
と寒風吹く中家族会議。
「もんじゃ、食べよう。もんじゃもんじゃもんじゃもんじゃ。」
と乗ったばかりの自転車を再び駅に止め、数駅先の月島に向かうことにした。

さて。
月島には先日都営大江戸線が開通した。有楽町線だけの心もとないエリアは、一気に雑誌などで特集もされて知名度アップが図られたらしい。年末とはいえ、水曜日の月島は何やらすごい人だった。忘年会まっさかりだ。
混んでる店をあれこれ見つつ、結局はもう4度目かにならんとする「風月」ののれんをくぐることにした。はっきり言って安くない店だ。ぼったくりとまでは言わないけど、もんじゃ1つで1000円とか取るのはなんとかならんかと思う。でもそれ故にかいつでも大概並ばずに入れる。味は悪くない。ていうか美味しい。こざっぱりとしていることもあって、何かとここを使ってしまう私たちなのではあった。ちなみに名物は「ゴジラもんじゃ」。火を吹くほど辛いもんじゃだ。これは一度食べて懲りた。

会社で1缶開けているにも関わらず、生ビールを速攻注文。牛すじ葱もんじゃと、ここのスペシャル「風月もんじゃ」を続けて注文。息子用に焼きウィンナー。

焼き担当はだんなだ。汁を入れないよう、具のみ鉄板に落としてヘラで細かく具を砕きつつじゃかじゃかと炒める。炒めたら中央にまとめ、しかる後に中央をぐりぐりと穴を開けるようにしつつドーナツ状に具を広げていく。その中心にボウルに残る小麦粉汁をじょじょじょじょ、と流し入れ、それがグツグツ煮立ったらざざざとかき混ぜて広げて、あとは"ハガシ"でこそげて食す。書くは簡単だけど、スマートにやるのはなかなかどうして難しい。しかも見た目はグロイ。どこから見てもゲ…………やめておこう。

牛すじ葱もんじゃは、その名のとおり牛すじ肉の煮込みと長ねぎがたっぷり入ったものだ。あとはキャベツ。ねちねちもちもちした牛すじが入るもんじゃはソース味と相まって、ぐぐっと惹かれる。惹かれてしまう。たかが小麦粉汁をソース味で焼いたやつに具が入っているだけだというのに、焦げていく生地の具合だとか、キャベツと混ざる具の感じであるとかが妙に美味しいのがもんじゃの秘密だ。相変わらず牛すじもんじゃ、美味しいのであった。

して、「風月もんじゃ」。こちらは牛肉と海老、卵、切りイカ、コーンなどが入る豪華版だ。具と一緒に卵も炒めてすっかり野菜炒めのようになったそれを生地と一緒にべろっと広げてこそげて食す。これまた濃厚な具の取り合わせにビールが進む。要はソース味なのに、やっぱりこれまた美味しいのである。換気のために開いてる窓から寒風がぴーぷー入ってくる中、熱い熱い鉄板に向かい合って小さいヘラでもんじゃをこそぐ。しみじみ冬の美味しさを感じるひとときであった。

最後には、甘辛く煮付けた鶏そぼろがたっぷり入った焼きそばを。キャベツやもやしもたっぷり入ったそれをわしわしと食べて8時半帰宅した。
やっぱりもんじゃは良いですなぁ。

12/28 (木)
アクアパッツァ(南青山)にて指輪型詰め物パスタ (夕御飯)
だんな特製チャーシュー炒飯
だんな特製お手軽中華スープ
麦茶

「東京X」なる豚肉のバラ2本を、ことこと煮込んでいたチャーシューも残りほんのわずかになっていた。
今朝はだんながその残りのチャーシューをざくざく刻んで炒飯を作ってくれる。いつもながらバリエーション豊かな朝食だ。

「周富徳中華鍋」なる大変怪しげな名前を冠していた我が家の中華鍋は、もう10年ほど前に購入したものを私が嫁入り道具に持ってきたものだ。当時は少しも使われていないまま、うっすらと錆びついていたものだったのだが、今や使い込まれてテラテラキラキラと黒光りした艶やかな鍋になった。もう焦げ付くこともほとんどない。私からもだんなからも無上の愛を注がれて、「たとえ海外にお引っ越しする時が来たとしても、お前は第一に持っていくからねっ」と愛の言葉を捧げられている。

その鍋を使い、だんなはわっせわっせと炒飯を作る。葱とたっぷり卵入り。チャーシューの煮汁で味つけた炒飯はこんがり茶褐色、やや甘めのこってり味だ。
スープ椀に刻み葱と顆粒鶏がらスープを入れ、湯を注いで少々のチャーシューだれで味つけただけの簡単スープもだんなが作ってくれた。

はふはふ言いつつ12月28日の朝御飯。今日は最後の労働だ。

築地 木村屋ペストリーショップにて
 トロピカルサパー
 ディリースープ・ミルクコーヒーつき

昼休み間近、隣席後輩のKさんが
「どこか食べに行かれます〜?」
と聞いてきた。折しも丁度、"最後にスワンベーカリーかな、いやはや木村屋ペストリーショップも捨てがたい。あるいはドカンとかすみ亭の唐揚弁当……?"と思いめぐらせていたところだった。
「じゃっ、一緒に木村屋に行ってみる??」
とKさんと先輩同僚Oさんと3人でサンドイッチを食べに。

この会社に入って、最も足繁く通ったところと言っても過言ではないパン屋さんだ。私の中では「木村屋」という名称は銀座本店のあのあんぱん屋さんと築地の木村屋ペストリーショップ、両方が同割合で想起されるものになっている。12月初旬の「アド街ック天国」築地特集でも放映されて、「ああっ!ミックスサンドがっ!」と妙に嬉しくなってしまったものだった。
もう……20回は軽く来ているかもしれない。妊娠中も、休日にもお世話になったパン屋さんだ。

今日は、ツナペースト入りの「トロピカルサパー」を注文。レタスやトマト、たっぷりの野菜と一緒に特製ツナペーストがたっぷり挟まっているトーストサンドだ。この店は初めてだというKさんとOさんは、膨大な種類のサンドイッチメニューを前に硬直している。Kさんは「パークアベニュー」を、Oさんは「ミックスサンド」を。全員ドリンクとディリースープをつけてもらった。

本日のスープはほんのりトマト味のクリームスープ。タイムかローズマリーか、ハーブの香りが漂うじゃがいもベーコンたっぷりのスープだ。ケチャップに似た酸味が少々入る、野菜が崩れるほど煮込まれたスープ。添付のクラッカーをバリバリ砕いて散らして飲む。身体が温まる、僅かに濃いめの味付けスープはいつもながら絶品だ。3人3様のサンドイッチを前にわしわし食べる。こんがり焼かれた薄切りパンに挟まったスパイスたっぷりツナペーストのサンドイッチの上にはパイナップルの飾りがちょこんとついている。パンの厚さの3倍はありそうな卵や野菜入りの具を堪能して、シメは当然「ミルクコーヒー」。ちょっと砂糖を入れて、牛乳多めのコーヒーを飲み干し、会社員最後の昼食を終えてみた。でも、またきっと来ちゃうんだわ。

南青山 アクアパッツァにて忘年会
 バーニャカウダ
 フォアグラと大根の煮もの
 指輪型詰め物パスタ
 タラのソテー バルサミコ酢ソース
 乳飲み仔羊のオーブン焼き
 パン
 キールロワイヤル
 スプマンテ - Ferrari Brut
 赤ワイン - MONTEFALCO ROSSO

 アップルパイのシナモンアイスクリーム乗せ
 デザート盛り合わせ
 エスプレッソ

本日、仕事納め。今年の仕事納めでもあれば、私自身の仕事納めでもある。社内では、午後5時を過ぎた頃から上階の社食では打ち上げパーティーが行われていた。私はそそくさとこっそり会社を抜け出して、待ち合わせの表参道スパイラルビルへ急ぐ。今日は私たちの忘年会。高校時代の仲良しグループが年に2度ほど集まる会合だ。ニューヨークで仕事している者もいればマスコミで働くものあり、会計士に公務員と皆さんバランバランの業界にて最前線で働いている。だから滅多に揃わない。

会場は私の推薦により青山アクアパッツァ。「大人数でなければ食べられないものがあったら是非それを」とリクエストしておいたらば、大きな仔羊のもも肉を用意して待っていてくれた。ピレネー山脈の、まだ草も食べていない乳飲みの羊だそうだ。良く考えると可哀相だけど、美味しそうなことに変わりはない。地下の薄暗い穴蔵のような店にぞろぞろと入り、厨房そばの大きな席につく。仕事が長引いたらしいTさんの到着を待ちつつ、とりあえず皆で乾杯。ぎゃーのぎゃーの雑談をしながらメニューを検討する。

「もしも数種類のパスタをお選びならば大皿でどん、どん、とお持ちしますし。」
のマネージャーSさんの言葉にうんうん、と頷き、
「皆さんお腹はすいてらっしゃいますか?宜しければお肉の前にタラの切り身が入っているのでソテーしてお出ししようと思いますが。」
の声にうんうん、と再び頷く。
結局、前菜の1番目は皆で一緒にバーニャカウダを食べ、続く2皿目は皆でバラバラの前菜を。パスタもこれまたバラバラで、メインディッシュは魚・肉を皆で同じものを食べることになった。店内にお客は少なめで、グループ客やカップルが静かに食している中、私たちは騒がしかった。

バーニャカウダとは、にんにくとアンチョビのペーストをオリーブ油と一緒に熱したソースに野菜をつけて食べるもの。聞き慣れない名前の黄色いカリフラワーとか紫色のブロッコリー状のものが登場する。にんじんやチコリなどなど。食前酒のキールロワイヤルを飲み干してスプマンテに移行しつつ、野菜をポリポリと食べる。
続いて、各人それぞれの前菜。私はフォアグラと大根を煮たものを注文した。何故って前菜メニューのそこだけに「☆」印が入っていたから。他にタラの白子のタルタルパン粉やテリーヌなどがずらりと並ぶ。

こってり濃厚なフォアグラは、それに負けない甘辛いソースでしっかり味付けられていた。年代物のバルサミコでも入っているのか、微妙な酸味の中に甘味があるような感じ。それと大根の取り合わせというのも、何だか和食じみていて面白かった。ナイフとフォークで、というよりは箸で日本酒を傍らにでも食べたいような感じだ。

続いてパスタ。奇妙なことに全員がショートパスタを注文、しかもほとんどが手打ちものだ。オマール海老のラヴィオリやムール貝ソースのコンキリエッテ(貝型パスタ)、きのこのソースのアニョロッティ(詰め物パスタ)、5種類がテーブルに並んだものだから、途中から皿をぐるぐる交換しはじめる。私のは「本日のパスタです」と勧められた、指輪型の詰め物パスタだ。赤、緑、白と色鮮やかな生地の中には旨味のある肉が詰まっている。澄んで美しいコンソメスープに詰め物パスタが浮かび、上からイタリアンパセリの刻みがかかっている。更に上からパルミジャーノチーズをガーリガーリとこすってかける。
澄んだスープは旨かった。ごろごろしたパスタが濃厚な分、スープがとてもさっぱりとしている。もちもちした手打ちの生地も良い感じだ。

そしてそして、いつしかワインも赤に進んで魚が来る。小ぶりのタラはバルサミコ酢ソースとのことで、こんがりくたくたに焼かれた長ねぎが添えられていた。甘さのあるソースの魚だ。ほろっと崩れる柔らかな魚。
そしてそしてそして、いよいよ第二のメインディッシュ。厨房から巨大な肉の塊が隣のテーブルにうやうやと運ばれてきて、シェフKさん自らざくざくと切り分けている。塩をまぶし、タイムなどの香草と一緒に焼いた肉にポテトのピューレを添え、バターでオーブン焼きにしたような芽キャベツやにんじんなど数種の野菜も盛り付けられた。分厚い肉の塊が2つほど、中が微妙にピンク色にキラキラとしている肉汁たっぷりのものが中央にドン!と。

ちょっとばかり塩が強めの肉に、ポテトのピューレやフレンチマスタードをなすりつけてがぶりと食べる。シンプルなバターと素材の味だけの野菜に、甘く染み出た肉汁を絡めて食べるのもこれまた旨く、肉そのものがまた旨かった。ああ、じゅわっと香草の匂いのする肉汁溢れる嬉しさよ……って、Sちゃんはそろそろ満腹らしい。2切れもらって私が食べる。

真面目な話あり、高校同期の周囲の人々の近況報告あり、趣味の話ありと今回も楽しい忘年会だった。元漫画研究会ならではのディープな話題も満載だ。「CLAMPが」「999のリバイバルが」「チンプイが」なんて年頃のお嬢さんがする話じゃないだろう、と思う。しかも1年に2度しか集まらないこの希少なタイミングで「メーテルって元は白服なんだってさ!」ってどういう話題なんだ一体。

で、デザート。大好物のアップルパイが出てきた。シナモンの香り濃厚なアイスクリームがアツアツパリパリのパイの上にごろんと乗せられている。このリンゴがまた酸味があってしゃきしゃきしていて美味しいんだなぁ。春のバルサミコ酢かけイチゴも面白く美味しいけど、このアップルパイもまた季節の名物のようになってきた。
「まだ、食べられますか?」
マネージャーSさんの声にうんうんと盛大に頷いたのは……私一人である。さすがに皆さん、満腹らしい。でも食べる。私は食べる。パンナコッタ、美味しそうだし。
最後の最後に、盛り合わせられたデザートをなおも食べる。パンナコッタ・ティラミス・ズッパイングレーゼ・イチゴのタルト・チョコレートケーキ・いちぢくのタルトという具合。各自エスプレッソを啜ったりカプチーノを飲んだりなぞしながらデザートをつつきまくる。

積もる話もまだまだ続き、7時半に入店した私達が店を辞したのは10時半を過ぎていた。3時間もディナー食べながらどんちゃんしていたことになる。Yからはニューヨーク土産の日本未発売のリップグロスなどをもらい、フラフラになって帰宅したのは11時半になろうとするところだった。
美味しい食事と楽しい会話があるだけで、世の中はなんと幸せなのかと思う。

12/29 (金)
ご飯と佃煮 (夕御飯)
冷凍ピラフ(鶏ごぼう)
麦茶

だんなも私も、今日から正月休みである。だんなは昼から夜まで、いや、多分明朝まで高校時代の友人と忘年会であるらしい。ぼへぼへと起床し洗濯機を回したところで、私はお掃除モードに入ってしまった。ここ数日掃除機をかける余裕が無かったので床がすごいことになっているのである。そういえばクリスマスツリーもまだ出したままなのである。朝食の事は頭からすっ飛ばして、おもむろにクリスマスツリーの解体など始めてしまう私なのであった。

だんなが冷凍ピラフを炒めてくれた。私には鶏ごぼうピラフ、だんなはカレーピラフ、だんなのものには上に薄焼き卵が乗っている。

だんなを忘年会に送り出した後、私はひたすらお掃除だ。窓ピカピカにして、ちょっと満足。

チーズトースト
チャイ

本日は「休肝日」ならぬ「休腸日」もしくは「休胃日」と勝手に決めた私。ここ数日、ちょっと飲み過ぎたし食べ過ぎたような気がする。そもそも今月は高松で福岡で、なんだか恐ろしい量の食物を摂取してしまってるような気がするし。

今日はおとなしく節制しよう。料理すると大量に作っちゃうから、質素に質素に何もせずにいよう、と心に決める。で、菓子パンには目もくれずに食パンを買ってきてチーズトーストに。コンビニの乳製品コーナーにて息子が欲しがった「チャイ」だけは買ってきて、スパイス入りミルクティーを息子と一緒にぐびぐび飲んだ。

パンにバターも塗らず、ぺろっと1枚とろけるチーズを乗せて焼いただけのチーズトースト。それはそれでなんかシアワセに美味しかったり。

ご飯 with 佃茂の佃煮(あみ・大海老)
きゅうり
インスタント味噌汁
緑茶

苺 with コンデンスミルク・牛乳

「粗食、粗食、今日は粗食」
と呟きながら冷蔵庫等々を漁る。発掘されたきゅうりは調理法を考えるとついつい棒棒鶏など作りたくなってしまうのでグッと堪えてマヨネーズと味噌をつけて食べるにとどめた。肉や魚の摂取は止めて、あとはご飯とインスタント味噌汁のみ。築地の佃煮専門店で以前買ってきた豪華佃煮でも添えればなんとなく格好もついた。

炊きたての白いご飯を食べることが、何だか久しぶりだ。
ほこほこ湯気を立てているご飯に佃煮乗せてかっこむだけで、「そうそう、こういうのが食べたかったのよ」としみじみしてしまった。普段は「パンが好き」だの「パスタが美味しくて」だのほざいているけれど、結局のところはお米をしみじみと美味しく感じてしまう。特に疲れているときには。私もやっぱり日本人だ。

だんなは今頃、鍋を皆でつついているのだろう。「豚味噌鍋するんだ♪」と彼は我が家から自家製練り味噌を持っていってしまった。男6人が囲む豚味噌鍋っちゅーのも何だか凄そうだ。楽しそうね。

12/30 (土)
黒船亭(上野)にて「ステーキ丼」 (昼御飯)
上野 黒船亭にて
 チーズ牡蠣
 ハーフサイズ ステーキ丼セット
 (前菜・ステーキ丼・スープ)
 アイスティー

いよいよ年末差し迫ってきたのである。年末年始の一大行事と言えば、やはり食料の買いだしなのであった。
昨今、近所のイトーヨーカドーでも元旦営業をしているのだから食料の買いだしなどははっきり言って必要ない。ないんだけれど、やっぱりほら、築地やアメ横でのマグロのたたき売りなんかはどうしても気になってしまう。「千円千円、マグロ大トロ千円だよ〜、もってけもってけ〜」などというダミ声を聞きたくて、ついつい足を向けてしまう。混雑は百も承知。

今年はアメ横に行くことにした。2歳児の息子を連れていくには、築地はあまりに狭々としているし、肉を買える場所が少ないのも難点だ。
「上野ってことは……」
「黒船亭、ですかね!?」
「ですねっ!」
と、10時過ぎ、起き抜け早々何も食べずに上野に向かう。大江戸線「上野御徒町駅」なんてものができて、上野に向かうには我が家からはとても便利になっていた。

12月30日なんて日に営業しているのかと思った黒船亭は、しっかり営業していた。11時半オープンの5分後に滑り込むとなんとか座れ、その後15分ほどですぐに満席になる相変わらずの繁盛ぶりだ。
洋食屋のこのお店、名物はやはり「ステーキ丼」であるだろう。"高級バター醤油ご飯"という、私たちの理想とするステーキ丼そのままを供してくれているので、私たちここが大好きだ。醤油味のタレがたっぷり染み込んだご飯に、ミディアムレアのステーキ肉、上には白髪葱と大葉の刻みが添えられる。

「ややややや、牡蠣がある!」
「1個からできますって!」
「生牡蠣、チーズ牡蠣、ベーコン牡蠣、はう〜〜〜〜」
と急遽豪華前菜もつくことになり、合わせて白ワインでも取ろうかとして断念し(だってこれから大混雑の中で買い物だし)、私はハーフサイズのステーキ丼セット、だんなはミックスフライ。フライのセットは蟹コロッケ・白身魚・帆立のフライとサラダ、ライス(かパン)、コーヒー、デザートがつくものであるらしい。息子にハーフサイズのハヤシライス。このハヤシライスも美味しいんだ。困っちゃうんだ。
いつも"今度はドミグラスソースものを食べよう""オムライスも美味しいらしいし"と野望を新たに店を出るのに、次に来る時もついついついついステーキ丼を喰ってしまう私なのであった。

しばし待ち、じゅくじゅく言ってる牡蠣がやってくるのをじっと待つ。大きな殻つき牡蠣が2つ、1つはホワイトソースにチーズをたっぷり絡ませたやつと、もう1つは刻みベーコンがたっぷりかかっているやつと。オーブン焼きされたアツアツの牡蠣をちゅるんと食べる。ぷりぷりの牡蠣、期待通りに美味しい。しかもクセのない濃厚なホワイトソースがまた旨い。やっぱり白ワインが恋しくなる。ぐっとぐっと我慢だ。

ステーキ丼の前菜は、盛り合わせ。
スモークサーモン、タコのマリネ、鶏肉のテリーヌ、ハム、茹で海老の玉ねぎソース、牛バラ肉の煮込み、ポテトサラダなどなどがこちゃこちゃと盛られている。どれもこれも素朴な感じの、素直な味のいかにもな洋食屋さんの前菜。じゃがいもごろごろのポテトサラダは息子にほとんどが奪われ、とろんと煮込まれた牛バラ肉の煮込みはだんなに半分奪われた。その代わり私はだんなのフライも息子のハヤシライスも奪うのだからお互い様だけど。

そしてそして、今日のステーキ丼はヒットだった。前回ハズレだっただけに、ちょっと嬉しい。厚さ5mmほどの肉は見事にミディアムレア状態で、切り口から肉汁がタラタラとご飯に吸い込まれていくところだった。茶色く染まったご飯の具合も、バターたっぷりのタレの味も最高だ。牡蠣を1つ取ったしね、なんてハーフサイズにした私が愚かだった。この味のステーキ丼ならフルサイズどころか大盛りでも喰えそうな勢いである。気取った味のものは何も入っていない、醤油味ベースのシンプル極まりないステーキ丼だけど、それがまた美味しいのだ。

だんなから奪った、自家製の柔らかい味のタルタルソースがたっぷり添えられたフライもサクサクふくふくで最高だったし、息子のハヤシライスも牛肉ゴロゴロゴロゴロでこれまた旨かった。だんなのセットについてきたデザートは柔らかなプリンで、とろけるような食感の中にバニラビーンズの粒々が際立っていた。ああ、またもやどれもこれも美味しいじゃないか。今世紀最後のステーキ丼、とてもシアワセだった。

モロゾフの
 ミニエダムチーズケーキ
 ミニレアチーズケーキ
カフェオレ

アメ横にてお買い物。2500円のでっかいでっかい大トロを買い、20尾1000円のブラックタイガー(←海老ですじゃ)を買い、1kg1000円の冷凍貝柱を買い、1000円の蒲鉾・伊達巻セットを買った。正月、我が家は魚介ばっか喰って過ごすつもりなのであろうか。先の事はあまり考えないで買っているのである。そして肉や野菜も買い込み、帰宅。

16時半、今世紀最後の訪問とばかり、友人M井さんがやってきた。今日はM井さんの友人Iさんもやってきた。Iさんの噂はM井さんから相当聞いていたし、Iさん側も我らのことをM井さんから散々吹き込まれていたようで、お互いあまり初対面という感じがしない。お二人とも、有明ビッグサイトで開催中のとある巨大イベントに参加しての帰りである。私とだんなはもう数年前に卒業してしまったイベントだけど、彼らにとってはまだ青春の場所であるようだった。本、今回は委託スペースだったということで10冊しか売れなかったそうで、残念。(この数行の意味が分からない人は私に追求などしちゃいけません)

上野で買ってきたモロゾフのチーズケーキなどずらりと並べて歓待する。エダムチーズケーキにレアチーズケーキ、プレーンチーズケーキにチョコレートケーキ。直径5cmほどの小さなケーキをお皿に10個ほど並べ、皆で適当に手を出してお話する。今日も変人な友人M井さんは、理解者3人、もとい4人(Iさん、だんな、私、そして息子)に囲まれてなんだかとても楽しそうだ。休日だけど、いつもと全く同じ、黒ズボンに白ワイシャツ、紫色のジャケットという出で立ちのM井さん。私はこの服装以外の彼をほとんど見たことがない。白シャツでなく、色つきシャツでも着てきようものなら、それはM井さんではなく別の人だ、と思うくらいである。だが、今日のジャケットは良くみると、ちと違う。色も形もいつもとほとんど変わらないけど、生地の素材感がほんの少し、違っていた。

「あ、あ、あ、M井さん、そのジャケットはおニューですかっ!?」
と尋ねると、
「そうなんですよ〜、この数ヶ月前に買いまして。」
だそうである。
詳細に観察しないとおニューだか何だかわからないM井さんの服選び、誠に疑問だ。やっぱり変な人。今世紀最後のM井さんに別れを告げる。きっと来世紀もいろいろやらかしてくれることだろう。

炭火焼肉(タン塩・骨付きカルビ・にんにくのバター焼き・長ねぎ・玉ねぎ・茄子・ピーマン)
牛肉とワカメの中華風スープ
ご飯
モルツ、麦茶

メンバー募集の抽選に当たり、現在私は料理雑誌『dancyu』が主催する「dancyu100人委員会」なるもののメンバーに何故か入っているのであった。たまに試食品つきアンケートが来たりイベントの案内が来たりしている。先日またもやモニター商品の案内があり、送られてきたのは卓上炭焼き器であった。何でもテーブルの上で炭火焼きが楽しめるセットだとか。焼き肉を頻繁に行う我が家においては願ってもないことだ。数日前に届いたこの機械を早速使ってみようと、大量のタンとカルビを購入してきた。

炭というものは、何でも扱いにくいものであるらしい。火をつけて消す工程がなかなかめんどくさいのだとか。この器具を使えば、簡単に炭火調理ができるそうだ。炭を網に並べ、ガスコンロにかけてしばし待つ。炭の底が赤く色づいたらテーブルに置いた台に炭網をセットし、焼き網をセットし、そしておもむろに材料を焼き始めた。炭を自分で使ったことがそもそもないので、これが簡単なのかどうかはいまいちわからない。ホットプレートに比べればそりゃ手間はかかるけど、炭で焼く肉はきっと美味しいだろう。

これがこれが。
ホットプレートの焼き肉で今まで満足していた自分がアホらしくなるほど旨かった。タンを焼いては涙ぐんで「うま〜〜〜ひ!」と叫び、カルビを焼いては「いやあぁぁぁぁぁん」と身もだえしてしてしまう。「つけダレも自家製にしてみよ」とこの器具の説明書にあったので素直にそれに倣ってみる。醤油5に対し蜂蜜1を混ぜたもの。それにざく切りにんにく1かけと鷹の爪1個を落として1時間ほど置いただけのタレ。そいつを焼きたての肉や野菜に漬けて食べたら、これまた「もう市販のタレは要りません」というくらい旨かった。何だったんだ今までの焼き肉は。

1〜3人用だという小型タイプの器具は少々小さかった。ホットプレートでいつもやるように、野菜をたっぷり周囲に並べて焼いて、なんてことは全然できない。しかも炭に脂が落ちたりする度に、室内は火災報知器が作動するんじゃないかと思うくらいに煙だらけになってしまう。場所によって火の強さも違うし、それはそれで大変ではある。大変だけど、肉がふっくら柔らかに肉汁たっぷりに焼ける炭火の威力にはただただ感動するしかなかった。ああ、これはきっと魚を焼いても焼き鳥やってもきっと美味しいぞ。

300gの牛タンと、500gのカルビを黙々と平らげてしまい、ただただ幸せな私たち。
このモニター商品、買い取り希望な人は25%OFFで売ってくれるそうである。……買ってしまう自分が予想できてしまう今日このごろ。

12/31 (日)
年越し蕎麦&天ぷら (夜食)
正調卵どんぶり
牛肉のワカメの中華風スープ
麦茶

午前9時、もそもそと起床。今日は一日家から出ずにのんびりするのだ。お煮しめ作る以外の予定はなし。

「朝御飯、何食べますか〜?」
の問いかけにだんなが「ん〜〜……」と言いつつ答えを思いつかないのか固まってしまったので、
「……卵どんぶり、作ろうか?」
と提案。
「おおお〜、いいですねぇ。卵どんぶり。」
と即座に返事が返ってきた。

だし汁と醤油、味醂と砂糖。割り下を作って火にかけ、煮立ったところで溶き卵を落とす。最初は蓋をせず、周囲がじくじくと固まってきたところで蓋をして数十秒。見た目まだまだ半熟のところでご飯にぶわっと乗っけて食べる。上から三つ葉をばらりと散らす。
ふくふくの半熟卵がけご飯は、寒い日の朝には嬉しいものだ。

大トロの刺身
カンパチの刺身
蒲鉾・伊達巻
日本酒(神亀 ひやおろし)
麦茶

大晦日である。大晦日ならば、やはり夕食メインは「年越しそば」であろう。
昨日、小さな小包が届いた。我が家に何度か自家製の手打ちうどんや蕎麦を送って下さったKさんからの荷物だった。中には年越し蕎麦用日本蕎麦がたっぷり。こりゃあ嬉しい。コシのあるKさん製うどんは旨かった。先日送って下さった十割蕎麦は、ちょいとプツプツ切れてしまったけれどもそば粉の風味が濃厚でこれまた悪くなかった。きっと今回も旨いに相違ない。楽しみに夜を待つ。

午後7時、まずはささやかに第一の夕食。日本酒開けて、ちびりちびり飲りながらアメ横で買ってきたマグロを食す。蒲鉾などの封を切るのは明日が良いのだろうか、などと思いつつも蒲鉾と伊達巻も皿に並べ、わさび醤油をつけた蒲鉾を食しながらお猪口を傾ける。
大トロだと言われて買ったマグロ、一見赤味が強くて「ホントにトロ?」と首を捻りつつ、でも脂の具合は濃厚だ。こってりしたマグロと、カンパチのサクも切って食す。

酒は埼玉「神亀酒造」のひやおろし。冷たいのを一口含むと、トロンと艶っぽい辛口の酒が喉を降りていく。いつも、飽きるほど神亀の「活性にごり酒」ばかり飲んでいるため、この酒を飲むのは初めてだ。相変わらず良い香りの、ふわりとした柔らかさの中に一本芯が通ったような酒なのである。これまた美味しいのである。
「いやいやいやいや、美味しいねぇ〜。」
「こりゃちょっと、止まりませんねぇ〜。」
だんなと差しつ差されつ、すっかり午後7時過ぎに我ら酔っぱらいである。

風呂が先?蕎麦が先?え、じゃあ風呂にしましょうか。
紅白歌合戦が演歌だらけになってきた頃に蕎麦を茹でよう。天ぷら揚げよう。

天ぷら蕎麦
 手打ち蕎麦・海老天・さつま芋天・貝柱と海老のかき揚げ)
日本酒(神亀 ひやおろし)
冷茶

午後11時前、NHKでは美川憲一が空飛んでいた。
だんなと二人、台所でてんやわんやしながら天ぷらを揚げ、蕎麦を茹でる。天ぷらは貝柱と海老を刻んだもののかき揚げをメインに、海老天と私の好物の芋天を作製。氷水を使って練らないように生地を作ってみたものの、これがなかなか難しい。最初に揚げたさつまいもはサクサクに揚がったものの、続く海老とかき揚げは何となくペショッとなってしまった。弱火でじくじく揚げたかき揚げは何とかカリカリにはなったけど、天ぷら職人への道はまだまだ遠い。

弱冠不本意な出来の天ぷらを傍らに、茹でたての蕎麦をザルに盛る。蕎麦と一緒にKさんが送ってくれた麺つゆは、鰹節の効いた甘さ控えめなもの。天ぷらをつけて食べると、油の溶けたつゆがどんどん濃厚に甘くなる。またそれが美味しかったりする。
たっぷり3人前ほどの蕎麦を啜り、そば湯もたっぷりと飲み、さて、もうすぐ2001年の年明けでございますね。