食欲魔人日記 04年01月 第5週
1月26日 月曜日
「ぐりとぐらのカステラ」作りにチャーレンジ。……けっこうおいしそう?
5日目のクリームシチュー(セーフ)
薄切りバタートースト
牛乳

先週木曜日に作ったシチュー(北海道シチュー コーンクリーム)。一日一回は火を通していたのだけど、土日の外出時は全くの放置プレイ状態で台所のコンロの上に置かれたままだった。さすがに、もうダメ?……と昨夜匂いをかいでみたのだけど、どうやらまだまだ大丈夫な様子。この冬の寒さに感謝しつつ、残り少ないシチューを朝に食べきることにした。温めてから改めて味見したけど、やっぱり大丈夫みたい。よかったよかった。

添えたのは、サンドイッチ用に買ってきてあった薄切りパンをバタートーストにしたもの。噛むとジュワッとバターが染み出るようなトーストをカレーとかシチューとか豚汁とかに添えるのが、美味しくて大好き。しっかり朝御飯を食べた後は、この週末の飽食を解消せんと、ジムでせっせと動いてくることに。

おうちで弁当
 ふりかけ御飯 いぶりがっこ
 牛しゃぶとキュウリのポン酢和え
 焼き豚
 かぼちゃのガーリックバター炒め
 蟹クリームコロッケ(冷凍もの)
鶏肉とゴボウと舞茸の吸い物

スポーツジム、いつもの人がお休みということで代行のインストラクターさんがエアロビクスを担当していたのだけど、ラッキー池田似のおねぇ言葉な人で、外見もすごいけど内容もなかなかすごかった。
「ハイッウルトラマンのポーズいきますよっ!ジュワッ!」
って、なんなんだそれは。苦笑いしながら、ジュワッ。
担当する人が違うとエアロビクスの内容も様々よね、面白いわぁ……と自転車キコキコこいで帰宅。今日は家族全員揃いの弁当がある日。ちょっと手抜きな内容になってしまったけれど、朝の30分ほどの時間で3人分の弁当を整えてあった。

御飯の上には軽くふりかけ、そしていぶりがっこ。先日、牛しゃぶのサラダ用にと茹でた肉が残っていたので、細切りキュウリと共にポン酢で和えてメインのおかずに。こっくりした味のものが恋しいよねと、バターとサラダ油小さじ1くらいずつ入れたフライパンでおろしにんにくと共に厚切りかぼちゃを炒めたものも。あとは、いただきものの焼き豚をスライスして、隙間に冷凍食品のクリームコロッケを詰めてみた。息子のにはコロッケを抜いた代わりにプチトマトを1個。

自分の分の弁当があると、「ああ、こういうおかずとこういうおかずはくっつけちゃいけないのね」なんていう研究もできるのが便利。昼に何も準備しなくて良いのも、更に便利。

仕切りをウジャウジャつけたりアルミのカップを大量に使ったりするのが好きじゃなくて、そういうものを使うのは1つだけにとどめるようにしている。味が移っても問題ないものをおかずに揃えてみたり、1個だけ使ったアルミカップの周りをうまく埋めてあまりベタベタ互いがくっつかないようにおかずを詰めてみたりして、そういう工夫も弁当を作り続けているとできるようになってくる。相変わらず渋茶色の、子供っぽくないお弁当しか作れないんだけれどもー……。

「ぐりとぐら」のカステラ
牛乳 with ミルメーク(コーヒー)

「ぐりとぐらのね、ケーキがね、食べてみたいなぁー」
ついに、ついに息子がそう言う日がやってきた。

「このよでいちばんすきなのは おりょうりすること たべること」と歌を歌いながら、大きな卵で大きなカステラをフライパンいっぱいに作る小さな2匹のねずみの話は、私もだんなも大好き。
「やっぱりさ、絵本っていったらこれでしょー」
と、息子に最初に買ってあげたのが『ぐりとぐら』だった。

私も幼い頃、母に「ぐりとぐらのケーキが食べたい」と言った記憶がある。その時の母は、確か
「ホットケーキでいいかしら?」
なんて、フライパンの直径みっちみちの大きなホットケーキを焼いてくれて、それはすごく美味しかったのだけど「……なんか、ちがーう」と思ってしまったのだった。やっぱりフライパンにたっぷりの、あの黄色いケーキを焼かなきゃね、と、私がリクエストされる側になったらちゃんとフライパンに大きなケーキを焼いてやろう、と思っていたのだ。

で、先日。このうえなく良い本を図書館でみつけた。
ぼくらのなまえはぐりとぐら』(福音館書店 2001)という、"絵本「ぐりとぐら」のすべて。"とサブタイトルがついたその本には著者のインタビュー記事や各著名人から寄せられたコメント、発行された各国語での文章なんかが載っていた。そしてその中にはフェルトで作るマスコット人形の作り方などと一緒に、あのカステラの作りかたが!
ちゃーんとフライパンで焼くようになっていて、材料も絵本に出てくるそのまんま。これはいいわぁ、とちゃんとメモして持っていた。

【「ぐりとぐら」のカステラのつくりかた 】

材料 (18cmフライパン型)
2個
卵黄1個分
グラニュー糖65g
薄力粉(ふるう)65g
牛乳大さじ1
無塩バター15g

  1. 卵と卵黄をほぐし、グラニュー糖を加え、白っぽくなるまでよく泡立てる。
  2. 牛乳とバターを60℃位に温めて1.に加え、かき混ぜる。
  3. 薄力粉を入れ、さっくり混ぜて型に流す。
  4. 170℃のオーブンで約40分、表面が色づくまで焼く。
参考:『ぼくらのなまえはぐりとぐら』(福音館書店 2001)

「おかあさんと、ぼくと、いっしょにつくるんだよ」
と息子が張り切っていたので、泡立て器もゴムべらも大小2個用意した。ぐりとぐらはベーキングパウダーなんか使わないから、私たちも使わない。ぐりとぐらはハンドミキサーなんか使わないから、私たちも使わない。でも、卵に砂糖を混ぜてンガーッと泡立て始めたところで
「……やっぱり、ハンドミキサーくらいは使って良かったかも?」
とほんのり後悔してしまった。手だけで卵をふわふわに泡立てるのは、けっこう大変。でもここでちゃんと泡立てないとちゃんとしたスポンジにならないしー。

息子も楽しそうに卵生地に小麦粉混ぜたり、ボールを押さえてくれたりした。あとは、直径20cmくらいの小型スキレットに生地を流してオーブンで焼くだけ。本当はフライパンから盛り上がるほどの分量が理想型だったのだけど、レシピよりもフライパン容積が微妙に大きすぎてしまって、あの絵本のまんま、とはいかなかった。それでも、まぁ、けっこう良い感じじゃないでしょうか。

実のところ、私はお菓子を作るのがすごーく苦手で、スポンジケーキ系は特に鬼門で毎回ろくなことにならなかったのだけれど、今日のはぐりとぐらの神様(どんなだ)が助けてくれたのかめっちゃめちゃ美味しいできあがりだった。ナイフでさくっと適当に切って持ち上げると、中は綺麗なクリーム色。気泡もまんべんなくばっちり入り、良い感じの生地に焼き上がっていた。ふわんふわんで、縁や表面はちょっとカリッとしていて、素朴な素朴な味。バターが少ないのでマドレーヌのようなしっとり感はほとんどなくてさっぱりしており、粉と卵の味が濃厚な美味しいケーキだった。

「わー!ぐりとぐらのケーキだー!」
と、息子へのウケもばっちり。牛乳にコーヒー味のミルメーク溶かして、ナイフでざっくりすくっては手づかみでわしわしと食べた。ぐりとぐらは森中の動物たちにカステラをふるまっていたけれど、私たちは特にふるまう相手もいなかったのでこれでもかと食べてしまう。せめてだんなの分くらいは残しておこう……と思ったのだけど、気がついたら息子が7割くらいも食べてしまっていて、まぁいいやと食べきっちゃうことに。
「おかぁさんおかぁさん、あしたもこれ、つくろう?つくってね?」
なんて息子が言うくらいだから、きっとすっごく美味しかったんだろう。ちょっと得意気分の私。

「松下」のうどん ひやひや

さて、だんなは激ジョブで帰れないらしい今日、当初の予定では鶏肉でも焼いて添えてカルボナーラスパゲッティ、あとはサラダでも……と思っていたのだけど、私も息子も「ぐりとぐらのカステラ」効果(単に食べすぎ)で夜になってもいまいちお腹が空かない。

「……スパゲッティ、食べられそう?」
「……んーん……」
「だよねぇ……」
とあれこれ考え、息子の
「つめたいうどんなんか、いーんじゃない?」
の一言で冷たいうどんを準備することになった。真冬だろうが氷点下だろうが、息子の好みは「冷たいうどん」。たまには熱いかけとか、釜玉も美味しいんだけどなぁ……と思いつつ、私も息子と一緒に冷たいうどんにすることにした。

冷凍庫に残っていた2玉だけの「松下」のうどん。千趣会から毎月届く冷凍麺と濃縮だしのセットは毎回手軽でそこそこ美味しくて、けっこう重宝している。スーパーあたりで売られている、ちょっと安っぽい天ぷらとか買ってくると、それがまた妙な本場くささを感じさせたりして。今では山菜うどんだ肉うどんだという月代わりの具つきのセットも出ているようで、これがまた気になっちゃってる我が家だった。遠からず、これも買っちゃうんだろうな、きっと……。

1月27日 火曜日
本日の焼き肉は、ピートロ!
具多 味玉叉焼麺
麦茶

昨夜、10時過ぎに帰ってきただんな。エメラルドグリーンの小袋を、「はい、プレゼント」と言って私にくれた。
「記念日でも何でもないけどー。ちょっとセールしててね。似合うかなって」
中には、天使の羽根をモチーフにした小さな銀色のペンダント。私の知らない、何やらブランド名がついている。えーへへへー、どうもありがとう。

んで、夜遅かったけれど、日曜日に筑波で買ってきた「La Cote d'Azurl」(コートダジュール)のロールケーキも少々。「わが家のろーる」と名のついた500円のロールケーキは、長さは15cmほどしかなかったけれど、断面積はなかなか大きめ。生地には蜂蜜が使われているということでカステラに似たしっとりさがあり、た〜っぷりのホイップクリームが巻かれていた。

かなり上質なものと思われる美味しい生クリームと、卵と蜂蜜の味が漂うスポンジ生地は想像していたよりずっとずっと美味しくて、
「……わ、やば……すっごく美味しい……」
「うん、めっちゃめちゃ美味しい……」
「1本といわず、2本くらい買ってくればよかった……」
とだんなと2人で大騒ぎ。最近立て続けに美味しいロールケーキをあれこれ食べることができて、私はすっかり御満悦(……腹の脂肪細胞も御満悦……しくしくしく)。

本日、だんなはお仕事お休み(有給休暇を消化しましょうキャンペーンの一環)。
「……なんかこう、あったかいもの食べたいな。……カップ麺?」
「あー、いいかもねー」
と、非常にやる気なさ気な感じに、買い置きのカップ麺をがさがさとやりだす。私が選んだのは日清「具多」の味玉叉焼麺。だんなは焼きそば「俺の塩」、息子は「UFO」。

お湯をたっぷり沸かしてどぼどぼそれぞれの器に加えつつ、
「……だんな、焼きそばくさー」
「おゆきさんこそ、豚骨醤油くさー」
「せっかくの休みなのに、お互いに臭いことに……」
なんて言いつつずるずると食べた。豚バラのチャーシューが2枚と半割にされた煮込み卵、メンマなんかも具としてちゃんとついてくる具多は、やっぱりレトルトっぽい味がすることはするのだけど、でも好き。特にこの豚骨醤油味のスープはなかなかのものだった。

稲毛海岸 「銚子丸」にて
 寒ブリ・アジ・イワシ・ニシン
 中トロ・大トロ
 イクラ・ウニ・煮穴子一本にぎり・しま海老
 帆立マリネ・うずら納豆
 あら汁(ランチ無料サービス)
……など。

せっかくの子供不在の午前中、でも、届け物がやってくる予定だったので外出することもなく家でだらだらしていた。やってきたのは、息子の自転車。同じ年頃の近所の子供たちが補助輪つきの自転車に乗り始めていた事もあり、昨年末からずーっと息子は自転車を欲しがっていたのだった。まだ2ヶ月も早いけれど誕生日プレゼントということでね、と、購入したのは無印良品の黄色い子供自転車。

ありがたいことにピカチュウがついてなきゃイヤだとかいうことが一切なかったので、店頭で
「これでいいかーい?」
「いいよぅ〜」
「……黄色でいいの?エンジ色とか白もあるけど……」
「きいろが、いいなぁ〜」
と、淡々とお買い物してきたのだった。

我が家を見渡すと、案外と無印良品ものが溢れている。台所にスチールラックが2つ、息子の部屋のベッドカバーや台所のロールカーテン、ああ、あと、居間のこたつも。ちなみに私がずっと欲しがっているのが壁掛式CDプレーヤー。換気扇みたいな形状のこれを台所の壁にでもかけて、料理しながら音楽聞きたいなぁと思っているのだけど……油っこくなっちゃいそうだなぁ、などと思うとなかなか手が出せない。

自転車が届いたのは、もう12時間近な頃だった。
「お昼どうしようか?」
「どっか食べに行く?……寿司とか!」
「寿司かよ!」
「だってほら、息子の自転車のカギとかも買ってこないといけないし……」
「……あー、ホームセンターとかあるしね、あのへん……」
と、自転車キコキコ漕いで千葉に展開しているチェーン回転寿司屋「銚子丸」に向かってみた。千葉駅前の同店は、行くタイミングによって妙に店員さんたちの愛想が悪かったり、回ってない握りを注文しても何だかイヤそうな態度取られたりと悲しい思いをすることがちょこちょことあるのだけれど、我が家最寄りの店は、割といつ行っても良い感じ。

今日は生ニシンが1皿150円、それに本マグロフェアだとかで大トロが1皿380円。わーいわーいとあれこれ注文して握りまくってもらってしまった。平日の昼間はあら汁が無料で出てくるので、だんなはそれもお代わりしていたりして(お代わりもタダ)。
「いろいろ食べたいから、1皿を半分こしましょう」
と、アジもイワシもシマ海老もだんなと1皿を半分こ。いろいろなものを1カンずつ分け合って食べたので、トータルの皿数の少なさに対して、充実感溢れる寿司喰いとなった。脂が乗っているのに淡泊な味わいのニシンも美味しかったし、てろてろ〜んと柔らかな大トロも良い感じ。久しぶりに食べた「煮穴子一本握り」はその名のとおり穴子1尾が1つの握りになった豪華なものなのだけど、これでもかと脂が乗ったほわんふわんなものだった。

その後は隣接するアウトレットショップなどがある小さなモールをぷらぷら。390円で自転車整備をやってくれるお店でブレーキが甘くなってしまっていた自転車を直してもらい、ちょっと気に入っている雑貨屋さんで牛柄モコモコスリッパの特売をしていたので1足購入し、型落ち品スポーツ用品を扱うお店で1着2000円のスキーウェアを物色し、ホームセンターの巨大花屋で白い花の苗を2個買った。そのまま幼稚園に息子を迎えに行き、スーパーをまわってビールや野菜を買って帰宅。なんてことない外出だったけれど、地味に充実していて楽しかった。

焼き肉
(骨つきカルビ・ピートロ・ソーセージ・かぼちゃ・茄子・玉ねぎ・長ねぎ・にんにくホイル焼き)
キムチ
サンチュ
御飯
ビール(モルツ)
アイスプーアル茶

数日前にドバッと届いた、大阪からの宅配便。
「……あー、こんなのもあるんだ……オイシソ……キムチと焼きそば、また食べたくない?おゆきさん」
とか言いながら、だんながペケペケとネット通販していたものだ。ブツは、「キムチでやせる」の焼き肉用の肉及び焼きそば及びキムチ。購入したものは、どうやら「骨付きカルビ&ピートロの焼き肉セット」であるらしい。これに焼きそばキムチを追加したのだろう、多分。しかし私たち、焼き肉好きだねぇ……。

「全部食べるには、ちょーっと多いかな?」
「んー、まぁ、タレに漬け込んでおいて、残ったら残ったで良いんじゃない?」
と、夕方がさがさと2人で準備。タレがついてきたのでこれで骨付きカルビを揉みこんだところ、家の中が一気に焼き肉屋チックな匂いに占拠された。んーいいねいいねいい感じだね、と野菜をざくざく刻み、袋詰めされていたキムチを器に盛りつけ、ホットプレートも取り出して焼き肉の準備。一応我が家には炭火焼き肉ができるセットもあるのだけれど、あまり大きなもの(骨付きカルビとか)は焼けないし、豚バラや鶏肉を焼いた日には煙が大変なことになってしまうので、なかなか出番が訪れないのであった。炭火で焼いた肉は、そりゃもう美味しい。そのうちあのセットも出して使うことにしよう。

ビール片手に、せっせと肉や野菜を焼いてはせっせと食べた。豚の脂でけっこう早く満腹感が訪れてしまい、サンチュに肉と共に巻いて食べた少量の御飯の他にはガーリックピラフも焼きそばも結局食べず、今晩の焼き肉はひたすら肉と野菜だけ、といった風に。それだけ満足感も高く、「あー、肉、喰ったぞー」という気分に満たされた。あー、焼き肉美味しい。焼き肉最高。

べろべろーんと長い骨付きカルビはキッチンばさみでジョキジョキと切りつつ焼き、マグロのトロに似た外見のピートロはじくじくと脂を染み出させながらゆっくりこんがりと焼き、自宅にあるあれこれのタレをつけつつ食べた。購入したお店の焼き肉のタレもにんにくたっぷりといった感じでなかなか好み。数百グラムの肉が余ったので、
「あら、私たち、けっこう小食になったのかしら?」
なんて一瞬思ってしまったのだけど、なんてことない、元々の量が1100gもあったのだった……。

1月28日 水曜日
ちょっと久しぶりのカルボナーラスパゲティ
フルーツグラノーラ with 牛乳

昨日から微妙に頭が重いなぁ……と思っていたのだけど、今朝起きてみるとより輪をかけて頭が重いわ喉が痛いわで、「あー、こりゃ、風邪だわ……」という感じ。家族全員分のお弁当を作るつもりだったのだけどそれも断念して、布団の中からだんなを見送った。

朝御飯は、いがらっぽい喉をなんとかしたいなぁと、冷たい牛乳をたっぷりかけたシリアルを。風邪ひいてても喉痛くても、食欲はなくならないのよね。はぐはぐ。

「ヨコイ」のハッシュドビーフ
牛乳

午前中はおとなしく寝ていたり、雪だるま模様の半纏を着込んで静かに活動してみたり。
「あ"〜……笑っていいともだぁ……」
こたつにずっぽり下半身を突っ込み、天板に顎くっつけてボヘーッとテレビを見ていると、今日のゲストの別所哲也さんが、
「名古屋のあんかけスパゲッティがね……」
なんて話をしていたものだから、耳がダンボに。

「えぇ?なにそれ?」
「いや、名古屋にあるんですよあんかけスパゲッティっていうのが。こう、ほんとにあんかけみたいなのがスパゲティにかかってて……八丁味噌、みたいな……」

八丁味噌とは違うよー……と思いつつ、全国ネットで「あんかけスパゲッティ」の名前を聞いてしまって、自分の名前でも呼ばれたかのように何故かドキドキしている私。あぁ、昼御飯はヨコイのスパゲッティにしようかな、と思ったのだけど、調理するのがちとダルかったので同じく「ヨコイ」ブランドのハッシュドビーフを食べることにした。

よくあるタイプの1人分のレトルトパックで、湯に突っ込んで温めたら御飯にかけて食べるだけ。名古屋では普通にコンビニやスーパーに置かれている商品らしいけれど、あんかけスパゲッティのソース以上に関東地方では見かけることがないように思う。

レトルトパック独特の匂いやテレンと光る独特のとろみがあるハッシュドビーフは、でもなかなか美味しい。具がたっぷり入って、ざっくりとした印象だ。カレーよりも赤みがかったソースをチンした御飯にとろんとかけて、「笑っていいとも」の続きを見ながらかっこんだ。うーん、風邪のときにレトルトものをかっこむのって、普段のときより微妙に悲しさが漂う……。不味くはないんだけれど、ていうか美味しいんだけど。

カルボナーラスパゲティ 鶏肉の塩焼き添え
コーンクリームスープ
アイスティー

恒例の英会話学校通いで、だんな不在の水曜日。昨日のうちからカルボナーラスパゲッティの材料が揃えられていたので、それをそのまま使うことにした。まずは鶏肉を1枚、皮目にたっぷり塩胡椒してオーブンに放り込む。そして鍋に湯をぐらぐらと沸かし、その間に小ボウルに卵を3個、生クリームを2たらし3たらし、そして塊のパルメザンチーズをガーリガーリとおろして合わせておく。パスタを茹で始めたところで刻みベーコンをじくじく炒め、火を止めてから小ボウルのチーズソースも合わせておき、最後に茹でたてのスパゲティをチーズソースの上からドッパーッと。パスタの熱でチーズソースの卵を半熟状態にすればできあがり。

卵をいい感じの半熟状態にするのは毎回大変で(しかもおおむね失敗し)、しかもカルボナーラというのは塩味を決めるのが他のパスタより難しいような気がする。その時々で使うベーコンの種類も量もチーズの量も非常に適当だったりするので、それらに含まれる塩分が毎回味を左右してくれちゃうのだ。パスタのゆで汁に加える塩の量を加減したりすると、今度はやけに塩気のぬるいパスタになっちゃったりして、それがまたイマイチだし。……で、今日はというとちょっと塩辛いものになってしまったのだった。完璧なカルボナーラへの道はまだまだ遠い。ていうか、なんだか一向に理想に近づかないような気がする……。

皿にこんもり盛りつけたスパゲティに焼きあがった鶏肉をざくざく刻んで添え、息子のリクエストで買ってきた紙パック入りのコーンスープをカップに注ぐ。息子はもとより私もこの紙パック入りのスープが大好きで、特に冷たいまま飲むのが好きだったりする。んが、息子に
「おかあさん、スープがつめたいからね、レンジでチーンってするといいと思うよー」
とアドバイスされてしまった。
「さむいからね、スープつめたいのは、よくないと思うなんだよ?」
……ごもっともです、すみません……。

かくして、鶏肉添えたスパゲティに、レンジでチーンってやったコーンスープ。使ったベーコンが安売りの薄っぺらいペナペナなものだったのでそれがいまいち味気なかったのだけれど、なかなか美味しい夕御飯だった。やっぱり塊のベーコンをざくざく大ぶりに刻んで加えた方が、カルボナーラは美味しいなぁと思う。

1月29日 木曜日
人形町某店で、ゴチランチ〜
「Cucina Tokionese Cozima」のトマトパン・グリッシーニ
ミルクティー

昨日もだんなは、英会話研修の後にCozimaで夕飯を食べてきた。「ディナータイムに申し訳ないのだけど、前菜とパスタくらいで……」と、ちゃちゃっと行っておまかせで作ってもらって食べてきているらしい。毎週行くものだから、シェフのKさんは「うわー、今週は何を出そう(同じものは出せない)」と楽しみつつも悩んでいるらしい。
未だかつて同じ料理が出たことがない、だんなは言っていた。事前に「今日はちょっと風邪気味でー」と伝えた時には、いかにもお腹に優しそうなカルボナーラが出てきたのだそうだ。……いいなぁ。

で、お店からの伝言をだんなが持って帰ってきた。
「今、真鴨を扱ってるんですが、これがもう、すんごく美味しくて!」
なのだそうだ。普通の鴨は、火を通すと縮んでしまうのだけど、その真鴨は火を通すと膨らんでくるのだとか。もう想像もつかなくて、鴨好き人間としてはわくわくしてきてしまう。今週末、先日潰れてしまった自由が丘散策も兼ねて行ってみようかという話になった。鴨〜、ふくらむ鴨〜。

朝御飯はそんな話をしながら、お店からのお土産のミニサイズのパンをもぎゅもぎゅと。茶色の紙袋にはトマト味のパンやバジル味のパンと共にグリッシーニも入っていて、
「朝食にグリッシーニというのも風情があるんだかないんだか……」
とか言いながらポーリポーリと囓りまくった。お供にはMitsuTeaのディンブラをミルクティーで。この紅茶はほんとのほんとに美味しくて、家には何種類ものお茶っ葉があるのに、気を抜くとついこれを手にしてしまう。ミルクティーにすると、砂糖も何も入れていないのにほの甘くてほわわわんと美味しいのだった。
今日はお仕事ー。

都内 某店で
 前菜盛り合わせ
 自家製ツナの油漬けとキャベツのパスタ
 パン・グリッシーニ

都内の某レストランから「うちの店のホームページ作成を手伝いませんか?」という話があがったのは昨年末の事で、今日は何度目かの打ち合わせ。今日はもう独自ドメイン取得の話になり、ホームページに掲載する原稿の話にもなり、話はおおむね決まったかな?という感じ。

気がつくと今日も時間が盛大に経過していて、一段落すると12時半になっている。
「食事!時間ある?ある?食べていかない?用意するから、さ。ね?」
今日は下でねどぞどぞどぞ、と打ち合わせしていたシェフに案内され、1階のリストランテで御馳走になってしまった。パスタ1皿でもいただければもう充分充分と思いつつ座して待っていると、出てきたのは美しい前菜盛り合わせとボリュームたっぷりのパスタ、フランスパンとグリッシーニの盛り合わせ。添えられたバターからはほんのりとバニラの香りが漂ってくる。食後のコーヒーもどぞー、という声に、すすすすみません息子のお迎えがっ、と急いで店を飛び出して帰ってきた20分ほどの食事だったけれど、すっかり満腹になって電車に乗り込んだ。

このお店は、ものすごく伝統的なイタリア料理を出すお店。悪い言い方をすれば「あか抜けていない」と言えるのかもしれないけれど、でも基本をちゃんと踏まえている地に足のついた美味しさがある、と思う。前菜の盛り合わせには生ハムを巻いたメロン、パルメザンチーズをたっぷり混ぜ込んだスフレに自家製らしきマーマレードを添えたもの、そして揚げた魚の切り身と赤玉ねぎをマリネにしたものが盛り込まれていた。

イタリア料理の前菜といえば、「生ハムメロン」が有名だけれどそれを出すお店はあんまりなかったりして、私もあまり食べたことがない。とろんと柔らかで脂が溶けそうなハムとひんやり冷たく甘いメロンという組み合わせは、「なるほどなぁ」と頷ける味。甘くてほのかに塩気があって、確かに美味しい前菜だと思う。ふわんふわんの卵とチーズの味のスフレと、柔らかく酸味が利いたマリネ。ゆっくり味わう時間的余裕がなかったのを心底残念に思いつつ、皿を空にしてすぐにパスタの皿もやってきた。

スパゲティは、自家製のツナ(マグロの油漬け)とキャベツのオイルベースのもの。唐辛子オイルが別添で小皿についてきて、好みで上からひと垂らしふた垂らしして食べる。前回と同じく、明らかに普通のパスタの分量じゃない、た〜っぷりの分量だった。このサイズって、家で食べているような分量だなぁ……と、リストランテらしからぬ分量にニヤニヤしながらツルツルと。
今度は……ちゃんとお金払って食べに来よ……。(さすがに子供連れじゃダメかなぁ……)

「R1/F」のお総菜
「アンデルセン」の食パン
ちぢみほうれん草のバター炒め
缶チューハイ(オレンジ味)

今日の息子のお迎えも、非常にギリギリだった。駅から我が家までダーッシュ、そこから自転車乗って全力疾走。ぎりっぎりで
「せんせーさようなら、みなさんさようなら」
と全員で挨拶しているところに間に合った。
「か、かぁちゃんはつかれたよ……」
「なにがつかれたの?」
「いやー、仕事でさー……いや、仕事は楽しいんだけどね……」
「ぼくはねぇ、ようちえんがたのしいなんだよー」

そういえば風邪気味だったんだよなぁ……と鼻啜りつつ息子を会話しながら自転車をこぎこぎ、夕飯は簡単にしよ、と駅ビルで総菜やパンを見繕ってきた。R1/Fで鶏の黒酢あんかけの総菜セット、アンデルセンで明日の朝用も併せて数種類のパン。あとは、家に"ちぢみほうれん草"の買い置きがあったのでバター炒めにしてもりもり食べることにした。ちぢみほうれん草はとにかく甘くて旨みがあるので、シンプルに炒め物にしたり茹でたりするのが美味しいように思う。ちょっとごわっとしているから、生で食べるには向かない……かな。

食卓に出したのは鶏の唐揚げに黒酢のあんをかけた酢豚に似た味のお総菜。蓮根のサラダやオクラとほうれん草のサラダなんかがセットになっていて、確か600円くらいだった。あとは店のカウンターに出てきたばかりのところを買ってきた焼きたての食パン。ちぢみほうれん草はバターと塩で炒めただけ。それらを缶チューハイ片手にテレビ見ながらこたつに入り、のんびりとつまんだ。だんなは激ジョブで帰ってこられず。これ幸いと、質素な食事を心がけてみてたりして……。

1月30日 金曜日
らくちんらくちんロコモコゆうはん
明治まんじゅう
牛乳

昨夜はイヤーな寒気がゾクゾクッと背筋を駆け上がり続けていたため、半纏着込んで湯たんぽ抱えて布団にくるまっていた。あーもー、風邪はイヤだなぁ。

今朝はスポーツジムに行くということで早くに家を出ていっただんな。私と息子はのんびり幼稚園登園直前まで寝こけてしまい、慌てて弁当の準備やら何やらをすることになってしまった。ゾクゾクしていた割には熱が出ていないのがありがたい事だけど、でも、鼻が始終詰まりっぱないなのはちょっとつらい。

バタバタしながらの朝御飯は、手っ取り早く息子と私で饅頭を1個ずつ。昨夜、だんなが
「同僚からね、"おみやげ〜"ってもらってきた……」
と渡してくれた箱の中には「明治まんじゅう」なる白い饅頭が並んでいた。新潟県柏崎にあるお菓子屋さんのものらしい。ふあふあの皮の中にはねっとりした白餡が入っていて、なかなか美味しかった。説明書きに
「天ぷらとして衣をつけて揚げると気のきいた一品になります」
と書いてあるのを見て、朝から揚げ饅頭に思いを馳せる私……。

「アンデルセン」の
 ハイジの白パン
 カスタードチョコデニッシュ
アイスティー

昨日の夕方、息子と一緒に朝食用のパンを買ってきてあったのである。それをすーっかり忘れて、1個もそれを食べずに皆を送り出してしまったものだから、昼に一人でいただいちゃうことにした。当初の予定では、苺とホイップクリームが乗った小さなデニッシュを息子の朝御飯に、「ハイジの白パン」なるふわふわパンとチョココーティングつきのカスタードクリームのせデニッシュは半分こしてだんなと私の朝御飯にしようという想定だったのだけど、
「……まぁ、いいか……」
と1人で白パン及びカスタードデニッシュを食べちゃうことにした。苺のパンは息子のおやつということで。

「ハイジの白パン」が美味しいのは、ひたすらにその品名の"ハイジ"効果が高いような気がして「なんか……ズルイ」と思ってしまったりもするのだけれど、でも確かにそれは美味しい。大好きな「カルピス特撰バター」をこてこて塗りながら柔らかいパンを囓り、続いてこってりしたカスタードクリームが絞られたデニッシュをアイスティー傍らにもぎゅもぎゅと平らげた。

……そういえば、アンデルセンのパンを買うと、しょっちゅう「今日中にお召し上がりください」シールが貼られる品があるのだけれど、それを守れた試しがない。食べるのはたいてい購入した日の翌日の朝か昼だ。ごめんよアンデルセン。

ベーシックロコモコ
アイスプーアル茶

7時半まで打ち合わせがあるけれど、今日はなんとか帰ってくるから……というだんなの言葉に、じゃあ今日はハンバーグ作って、人参のグラッセとかマッシュポテトを添えて、あとは具沢山の野菜のスープでも作って……と思っていたのだけど、どうやらやっぱり遅いらしい。風邪薬がいまいち効いてくれない体調の悪さもあって、料理するやる気がモリモリモリーッと減少してしまった。お腹が空いてきたということもあり、午後6時半頃にウリャーッと食事の準備をしてウリャーッと食べることに。添え物はパス、スープもパス。洋食セットメニューみたいになるはずだったハンバーグは、「ハンバーグ丼」という非常にシンプルな一品に化けてしまった。

ハンバーグ丼、ハワイ料理になるとこれが「ロコモコ」という名前になるらしい。
私はまだハワイに行ったことがないのだけれど、ケンタロウさんの著作『ケンタロウのハワイが好き!のんびりしあわせ一皿レシピ』(講談社・2000年11月)に載っているところによると「ベーシックロコモコ」「イタリアンロコモコ」「和風ロコモコ」と様々種類があり、それらはどれもとても美味しそう。和風ロコモコもベーシックロコモコも何度か作ったことがある。

ひき肉はおろし玉ねぎ混ぜて(←レシピでは確か刻み玉ねぎだったけど、最近私はおろし玉ねぎが好き)、塩胡椒して、ついでにナツメグとかチリパウダーも混ぜ、こねこねしたら成形。最初に半熟の目玉焼きを焼いておき、そのフライパンをチャッと綺麗にしたらハンバーグを焼いていく。焼き上がったらそこにケチャップやウスターソース、醤油や酒やバターを合わせたソースを流し入れ、ハンバーグと煮絡めたらできあがり。目玉焼きと共に御飯に乗せて、いただきます。ぐあーっとかっこめる手軽さと洗い物の少なさなんかが嬉しくて、私は今日も丼ものにはしってしまうのだった。

黄身が良い感じにトロトロ状態に焼けた目玉焼きに満足しつつ、それをつついてぐちゃぐちゃにしながら分厚いハンバーグが乗った丼飯を堪能した。いつどこの本でだったか、
「実は、自分が普段作るハンバーグはレシピとして公表している分量なんかじゃなく、すっげぇ大量の肉を使って大きなものを作っている」
なんて事をケンタロウさんが言っていたのだけど、ハンバーグは(そしてステーキも) ある程度の大きさのものを作らなければ、美味しい焼き加減は実現しないような気がする。1個250g〜300gといった風の大きなハンバーグは今日もなかなか美味しそうに焼き上がり、ケチャップやソースを合わせただけの簡単なソースも肉汁吸ってすごく美味しいものになった。だんなの分もハンバーグのタネ、ソース共に残しておいて、連絡あれば15分でできるわよー、という状態にしておいて、息子と一緒に「いただきます」。

ハンバーガーが大好きらしい息子は、ハンバーグもやっぱり大好きみたいで、
「おにくとたまごのごはん、おいしーねぇ〜」
と何やら嬉しそうだった。彼にも0.7人前くらいのサイズ……ていうか、レストランで注文したらこんなサイズかな、くらいのボリュームのものを出してあげたのに、
「これたべたら、もっとおかわり、あるのかな〜?」
とか言っている。最近の息子は、驚くほどよく食べる事がたびたびだ。

1月31日 土曜日
グアゼット、というイタリアの郷土料理。うまー。
バタートースト
カップスープ(コーンクリーム)

今日は一日、たっぷりとお出かけの予定。朝9時頃に目を覚まし、洗濯機をがこんがこんとまわしはじめ、簡単に朝御飯。
「厚切りパンがあるけど、2枚しかないからトーストしたら適当に切って息子にわけよう〜」
「飲み物は〜、あぁ、カップスープはどうだろう」
なんて言いながらぱぱぱっと準備した。

カップスープが大好きな私たちだけど、息子と私は圧倒的にコーンスープ派、そしてだんなは圧倒的にポタージュ派。
「ていうかね、いや、コーンスープは大好きなんだよ。大好きなんだけど、カップスープのコーンスープはちょっと甘すぎて苦手なんだな」
ということだ。……その甘さがまた大好きだったりするんだけどなぁ。

青山 「Cucina Tokionese Cozima」にて
 キャベツの一口スープ
 空豆のムース トマトのソース
 平目の昆布締めカルパッチョ 焼き味噌と柚子のドレッシング
 魚介のグアゼット
 野菜のパスタ
 アンコウのグリル じゃがいものピュレとハーブバター添え
 鴨のグリル 芹のサラダ 筍と百合根と空豆のグラタン
 できたてバニラジェラート 温かいチョコレートソースがけ
 エスプレッソ
 苺果汁割りのスプマンテ

「今年の真鴨、ぜっひとも食べていただきたい!!」
と勧められたこともあり、家族皆で青山の「Cucina Tokionese Cozima」に行くことになった。昼のちょっと遅い時間にぷらぷらと店を訪れると、びっくりするほどの席の埋まりっぷり。気合いの入ったカップルさんなんかもけっこう多くやってきていて、「思いっきり普段着でスミマセーン……」と席についた。料理はおまかせ。ただ一つの要望が「鴨を食べさせて!」ということで、あとは座して料理がやってくるのを待つ。

突き出しは、ほんのり塩だけで味をつけたようなデミカップに一口分注がれたキャベツのスープ。そして「アボガドのディップ?」と皿が出たときに思ってしまった、鮮やかな黄緑色の空豆のムースにざくっと果肉の残るトマトのソースを添えたもの。味はしっかりしているけど軽くふわふわとした印象の料理で胃袋が「よっしゃ、飯だー」と活動し始めたところでインパクトのある料理が続々とやってきた。

「これは……和風のイタリアンというより……」
「ちょっとイタリア風に仕立てました、みたいな和食の料理みたいだねぇ」
なんて笑ってしまったのが、平目のカルパッチョ。
「えー、平目を昆布締めにしまして、ドレッシングはですね、柚子の風味の焼き味噌仕立てで……」
と、説明からして既にイタリア料理のものじゃない。薄切りのシコシコッとした歯ごたえの平目の上には刻んだルッコラや茄子などの野菜がふわりと散らされ、上にかかるソースは確かに味噌の味。
「朝に掃除していて、厨房から味噌を焼いてる匂いがしてくるんですよねー。もう、何の店だここは、って感じでしたよ」
と給仕のスタッフさんも笑っていた。

そして「魚介のグアゼット」。グアゼット(guazzetto)とは、にんにくとローズマリーを利かせたトマトソースの煮込み料理で、イタリア中部あたりでは「ウサギのグアゼット」なんてものもあるらしい。皿を持ってきたKさんが教えてくれたところによると、
「この魚介のグアゼットは、フランスとの国境に近い町で私が修行したお店のスペシャリテだったんです」
ということだった。皿の一番下には薄切りにしたフランスパン、上にはトマトソースの煮物というよりは「魚介のトマト和え」といった風の具沢山な風情の小山ができていた。魚介は子持ちのヤリイカ、タコ、アサリに牡蠣に帆立、サーモンといったところ。

「うわー!ぶりぶりのヤリイカが美味しー!」
「いや、それよりも帆立だよ帆立!」
「わーい、牡蠣まで入ってるー」
と、まだ前菜の段階なのに大盛り上がりの私たち。割とシンプルな味つけなのに、魚介のそれぞれの味がトマトと絡み合い、そのソースがまた良い感じにパンに染みていたりして、たまんなく美味しかった。

パスタは、春からのグランドメニューに乗せようかと考え中なのだという「野菜のパスタ」。
大ぶりの器に2人分の茹でたてパスタが盛られ、そのパスタの茹で汁の中で軽く火を通した野菜(黒キャベツとか空豆とか大根とか人参とか玉ねぎとか、とにかくあれこれたくさん)がたっぷり上に乗せられている。そしてその上からふわふわと更にたっぷりな生ハムが。それらをテーブルでざくざくっと併せ、ざくざくっと盛りつけ、上から上質のオリーブ油をチャーッとまわしかけて、塊のパルミジャーノを上からガリガリ、そして黒粒胡椒もガリガリ。野菜は、そのほとんどが東京都内で収穫されたものなのだそうだ。大根は「亀戸大根」。

茹で野菜のなんてことないパスタなのに、不思議とこれが美味しい。妙に美味しい。しみじみと美味しい。
「……オリーブ油とか野菜の素材の違いかなー」
「うーん、なんてことなさそうなのに、家じゃ絶対この味にならないような気が」
「いや、ていうか、こういう生ハムがそもそも買えないし」
なんて言いつつぺろりと平らげる。なんでも、じゃがいもなんかを使っても、美味しくできるのだそうだ。パスタの茹で汁使って作るので、見た目華やかな割には簡単そう。でも、塩味をきちんと決めないと、イマイチな味になりそうで、そのへんが難しそうだ。

そろそろ鴨かな?と思っていたのだけど、もう1皿。アンコウのほんの2口分ほどのサイズのグリルで、下には柔らかなじゃがいものピュレ、そのピュレをとりまくようにハーブバターが敷かれている。プリッとした歯触りのアンコウの上には茹でたほうれん草が少々。アンコウにもしっかり脂は乗っているのだけど、それとハーブバターが(そしてほうれん草とハーブバターも)すごくよく似合っていた。

そして、真打ちの鴨!
「岩手の鴨なんですが……散弾銃の弾が入っていることがあるので、気をつけてくださいね……」
とのこと。野生の鴨は、昨年末に鴨鍋屋さんで食べたこともあったけれど、独特のケダモノ臭さがあって、そこがなんとも良い感じ。生肉の部分なのにレバーを食べているかのような独特な苦さに似た味があって、グリルした鴨の断面からは肉汁がじわっと染み出ているのが見てとれる。噛みしめると、更にジュワーッと肉汁が。バルサミコ風味の割とスタンダードな味のソースが添えられ、クリームベースのドレッシングで軽く和えた芹も少々。そして別皿でやってきた小皿には、筍と百合根と空豆を使った小さなグラタンがアツアツの状態で乗っていた。百合根よりも甘く感じる筍にちょっとびっくりしながら、ハツやレバーまで添えられた鴨を堪能。3〜4切れと言わず、10〜20切れくらい食べたい気持ちだったけれど、そんなに食べたら鼻血が出そうというか。

ドルチェは軽めに、バニラジェラートに温かいチョコレートソースを添えたもの。
「……あ、チョコレートの鍋、置いていきますね♪」
とテーブルにチョコ鍋が置かれたままだったので、盛大にチョコかけてみたり、スプーンに垂らして味見してみたり、しまいにはエスプレッソに入れてみたりとあれこれ楽しんでしまった。

息子は一人で鶏肉と舞茸とごぼうのクリームパスタを平らげ、バニラジェラートを自ら注文して完食していたのだけど、
「ダメ!ぼくの!たべちゃダメ!」
となかなか味見もさせてくれなかった、きりたんぽ鍋の具材みたいなクリームパスタがこれまた美味しかったのが、また。

新宿 「東京麺通団」にて
 ひやかけ(小)
 かしわ天・半熟卵天

昼食摂るだけのために外出ってのもねぇ、と、食後は念願の自由が丘散策。が、気になっていたスイーツフォレストは2時間半待ちの大行列で断念、その後行ってみた「ロール屋」というロールケーキ屋さんは店頭に無情にも「本日のロールケーキは完売しました」の文字。

「……これは、"ケーキはもう、やめときなさい"という神様のお告げ……?」
「そうそう、"今日、これ以上ケーキとか喰うのはやめなさい"ってことだよ」
と、悲しくなりつつも雑貨屋さんを覗きまくる。アメリカンな雑貨やアジアな雑貨を扱う店には「あ、あ、あ、気になる気になる〜」と私はフラフラ引き寄せられていくし、息子は息子でおもちゃっぽいものを置く店や公園などに「あ!あそこ!いってもいーい?」と引き寄せられていくものだから、だんなはちょっと大変そうだった。ごめんごめん。

さんざん歩いた割にはあまり収穫もなく、2500円でファイヤーキングのマグ(ブルーヘブン、という名のついた青緑とグレーのプリントがついている)をCounrty Spiceというアメリカン雑貨屋さんで買ったのが唯一の成果だった。うむ、今度はちゃんと平日にケーキを食べられるようにやってくることにしよう……。

時刻は午後5時半。ちょっと早かったけれど、新宿に出て「東京麺通団」で夕御飯にすることにした。先日、息子と私の2人だけで訪れたのだけど、
「だしが!うどんが!ゲソ天が!……いこうよいこうよ、絶対行った方がいいって、あそこ」
と、だんなを是非とも連れていかねば、と燃えていたのだ。だんなはだんなで
「……うん、ひやかけと釜玉1杯ずつくらいだったら、余裕だな」
とかやる気を見せている。

で、本当にだんなは「ひやかけ」の小と「釜玉」の小を注文し、更にゲソ天と半熟卵天も食べる喰いっぷり。私はさすがにランチの超フルコースが尾を引いていて、「ひやかけ」の小に半熟卵天と、巨大なゲソ天を断念する代わりにかしわ天を1個。息子も私と同じく「ひやかけ」の小を。

前回より、ちょーっとだしがぬるいかな(キンキンに冷えていた前回より、ちょーっとぬるいかな、ぐらい)とか、麺がちょーっと太いかなとか、細かなところが微妙に違っていたけれど、でもギュギュッとコシのあるうどんに、これでもかとイリコの効いただしの美味しさは変わらなかった。息子も「うん、これがぼくの好きなうどんだよ」という顔をして、今回も1玉綺麗に食べきった(汁も飲み干した)。だんなから1口2口分けてもらった釜玉は、温かいうどんにふわっと絡みつく生卵、だし醤油のいい香りがぷんと飛んできて、これまた美味しい。

「あーもー、このお店、超嬉しいね」
「香川熱が癒されるよね」
なんて言いつつ、
「もう1杯いけそうだなぁ……醤油うどんなら、楽勝……」
というだんなの言葉にギョッとしたりしながら、
「だってさー、今日は1軒だよ。これだけだよ?」
「……そうね、5軒6軒ハシゴすること思えば、楽勝だよね」
「そうそう楽勝楽勝」
などと。そこで納得しあってどうするのだと。さっき喰ったイタリアンフルコースはどこに行ったのだと。
(いや、さすがに3杯目は断念したようです)