食欲魔人日記 02年06月 第1週
6/1 (土)
ウェスティンホテル東京にて、Tさんの結婚式
ライ麦パンのトースト
アイスティー

6月最初の日。自治会の草むしり、息子保育園の運動会、友人Tさんの結婚式、と今日の予定は大変なことになっている。
朝御飯はとりあえず、ライ麦パンをトーストしてジャムやバターをこってりつけて囓るだけの簡単なもの。今日は暑くなるそうで、冷たい紅茶をコーヒーポットにたっぷり作ってガバガバと飲む。
うー、暑いよー。スーツなんて着たくないよ。

小僧寿司の
 いくら巻
 ネギまぐろ巻き
 地鶏巻き
冷茶

保育園の運動会は昼12時までと聞いた。結婚式には家を1時半に出なければならず、「大丈夫か、本当に大丈夫なのか!?」と思いつつ運動会を見に行く。
他の子らと並んで行進してきた息子は満面の笑みでパタパタと手をふってきて、それなりに一生懸命体操やらダンスやらを披露してくれた。障害物競走的な親子競技ではやたらとやる気を満喫させてだんなと一緒に園庭を猛ダッシュしていて……ああ、見に来て良かったなぁと久しぶりに親バカ気分を堪能。

幸い、3歳児クラスの息子の出場種目は10時半で終わり、「帰っても良いですよ」とのことだったので保育園からのお土産を持って帰宅。中身はシャボン玉セットとか水鉄砲とか駄菓子の袋とか。
帰り道、「軽く腹ごしらえしなきゃなねぇ」と「巻きもの80円!」とノボリの立っていた小僧寿司であれこれ買って帰ってきた。イクラ巻き、ネギまぐろ巻き(ネギトロ巻きじゃないのね。ちょっとマグロが大きな粒なのね)、そして大変怪しげな「地鶏巻き」。他にも「ハムタロー巻き」なるハムと卵の巻きものとか、イカゲソ巻きとかトンカツ巻きとか、「どこが寿司じゃ!」と突っ込みたくなるようなものが店頭にはたくさん並んでいた。

埃っぽい保育園の園庭から帰ってきたのでシャワーを浴び、半端に伸びていた息子の髪もついでに風呂場でぶった切り、アイロンかけたり荷物を準備したりしつつ寿司をつまむ。甘ったるい照焼のタレ状のものがまぶされた鶏肉が巻かれた「地鶏巻き」はやっぱり微妙に怪しいジャンクな味がした。
テカリ防止の下地も塗って、滅多につけないアイシャドーもつけて、これまた滅多につけないこってり色の口紅もつけて準備OK。息子も連れてくしワンピースは鬱陶しいし、とパンツスーツで出発する。

ウェスティンホテル東京宴会場にてTさんの結婚披露宴

Maine Lobster Mousse and Marinated Salmon Tartar
served in a Small Herb Garden with a Citrus Vinaigrette
メインロブスターのムースとマリネサーモンのタルタル
ハーブサラダと柑橘類のビネグレットソース
Mandarin Honey Glazed Duck Breast
with Truffle Havored Linguine Pasta
ダックブレストのマンダリンハニーロースト
トリュフ風味のリングイネパスタ添え
"Vichyssoise"
with Smoked Salmon Tartar and Caviar
ビッシソワーズ
スモークサーモンのタルタルとキャビア添え
Oriental Havored Sea Bass Fillet
served with a Capsicum-Shallot Confit
すずきのオリエンタル風
Apple Sherbet
with Calvados Granite
リンゴのシャーベット カルバドスのグラニテ
Prime Beef Medallion
served with Potato-Goose Liver Gratin and Rich Barolo Wine Sauce
牛フィレ肉のメダイヨン
ポテトとフォアグラのグラタン バローロワインソース
"Chef's Special Salad" Marinated Asparagus
and Hazelnut-Truffle Vinaigrette
"シェフのスペシャルサラダ" アスパラガスのマリネ
ヘーゼルナッツとトリュフのドレッシング
"Marjolaine Delight"
Caramel-Chocolate Cake with Pear Ice Cream and Cassis Couli
"ディライト マルジョレーヌ"
カラメルとチョコレートのケーキ
ペアーのアイスクリームとカシスのクーリ添え
Coffee or Tea
コーヒー 又は 紅茶

午後3時半、恵比寿のウェスティンホテル東京のチャペルで友人Tさんの結婚式。
Tさんは、だんなの高校時代からの親友だ。我が家にも何度も遊びに来てくれているし、当時「おつきあい」の段階だった新婦さんを先日我が家に連れてきてくれたこともあって、招待状の宛名には私の名も記されていたのだった。

自分が比較的地味な結婚式をしたものだから(式はしたけど親族の食事会で済ませて披露宴はやってない)、披露宴は正直退屈と思うところもあるものの、けっこう楽しい。綺麗な花嫁さんを見るのは楽しいし、チャペルの式の厳粛な雰囲気も好きだし、この時代、ずらーっと左右に4本5本と並ぶカトラリーや4個5個と置かれるグラスのテーブルセットを眺める機会も披露宴くらいしかない。
甘えん坊のTさんは、しっかり者の新婦さんを横にしてすっごく嬉しそうだったけどガッチガチに緊張していた。

4時半からの披露宴での会食は、3皿の前菜、魚料理にグラニテに肉料理と、見事なまでのフルコースだった。キャビアやフォアグラ、トリュフもそこここに登場し、かつてなく豪華。

料理はどれも盛りつけや器にも気を配った美しいものだった。
舌を噛みそうな長い料理名のそれらはフランス料理のスタイルを取っているけどイタリアン寄りだったりアジアな感じのものもあったり。トリュフのかけらが和えられたリングイネを敷かれた上には蜂蜜の甘さが染みたワイン風味の鴨肉が3枚。一見シンプルなサラダからはピーナッツオイルとトリュフの香りが漂い、滑らかなじゃがいもの冷たいスープにはスモークサーモンと共にキャビアが添えられていた。

息子には、お子さまランチ的プレート。ドミグラスソースがかかったハンバーグの上には目玉焼きが乗り、ポテトサラダに白身魚らしきフライが3本。一口サイズのサンドイッチ。オレンジジュースと、デザートにはフルーツコンポートとシュークリーム。大人用のフルコースもそりゃ美味しいけど、子供用プレートの方が実は美味しそうだったりして、周囲からは
「あ、うまそ、うまそ」
「俺、そっちのお子さまランチの方が食べたいなぁ……3プレートくらい」
なんて話が飛び交っていた。息子はフライを囓って御満悦。大声を出すこともなく、そこそこ"いいこ"に3時間に渡る披露宴を過ごしてくれた。

だんなは披露宴で友人代表のスピーチをし、二次会の受付時間に間に合わない、と終宴間近に先に抜けていった。二次会の幹事兼司会もするだんなは、今日は本当に大変そう。アルコールもほとんど飲んでいなかった。
私は引き出物を抱え、ついでに恵比寿の駅ビルでマンゴプリン探索などもしながら(3種類ゲット!幸せ〜)披露宴終宴後、息子を連れて帰宅した。

家に帰ってから開けた引き出物は、ティファニーのペアワイングラスと、「グラマシーニューヨーク」のニューヨークチーズケーキ。「グラマシーニューヨーク」はその名のとおり、ニューヨークが本店のケーキ屋さんだ。日本唯一の支店は名古屋にあったが、最近新宿高島屋にも出店した。すっっごく美味しい。マンゴプリンもあるけど、それまた超美味しい。ニューヨークチーズケーキもまた、とても美味しい。
ありがちなカタログギフトとかじゃなくて(あれって、選べて嬉しいような気がするけど、その実欲しいものなんてほとんど載ってない。載ってるものも似たようなものばっかりで、何度かカタログギフトが重なると、貰う方もネタが尽きて大変だったりする……)、とても嬉しい引き出物だった。

友人が結婚すると、その相手によって微妙に疎遠になってしまったり、あるいは家族ぐるみで仲良くなれてしまったり、付き合い方はちょっとだけ変わってしまう。私は私の友人と私の夫が仲良くなると嬉しいなぁと思うし、私も私の夫の友人と仲良くなれれば嬉しいなぁと思う。私の夫の友人の奥さんとも仲良くなれればいうことなし、と思う(えーい、ややこしい)。
しっかり者の新婦さんはチャキチャキとして食べることが大好きで、何だか趣味も合いそうだ。これからもTさんとは疎遠にならずに済みそうだ。それもかなり嬉しい。

そして午後10時半、二次会が無事に終わったらしい我が夫からTEL。
「無事に終わったよ〜。盛況だったよ〜。でね、みんなが"お前は全然飲んでないんだから一緒に飲もう!"って、お店に連れていかれてるところで……朝までコースになるかもしれなくて……」
と申しわけなさそうな声で、そう言っていた。久しぶりに会った高校時代からの友人たちが、今日さんざん働いていただんなを労って連れ回そうとしているらしい。良い友人たちじゃないか。じゃ、私は先に寝てるわねー。日記も書いたことだしねー。

6/2 (日)
だんな特製麻婆茄子(夕御飯)
「ブティック タイユバン・ロブション」の
 アプリコットのデニッシュ
 クロワッサン
アイスカフェオレ

「グラマシーニューヨーク」のニューヨークチーズケーキ

恵比寿には、その名を口にするのも緊張してしまいそうな超高級フレンチレストラン「タイユバン・ロブション」がある。一度だけ友人Sちゃんと休日のランチに行ったことがあって、それは確か5000円ほどだったとは思うけど、天井高く煌びやかな内装と美しい盛りつけの料理の数々に「ごめんなさい、まだちょっと分不相応でした」と感じた記憶ばかりが残っている。
夕食を摂ろうとすると5万円を下らないと聞いたことがあるけど……さすがにそこまで凄くはないだろう、と思いたい。
ともあれ、フレンチは全く未知なる世界だったりするものだから、その店の前を通る度にどっか緊張しちゃうのだった。

で、地階にはそのペストリーショップがある。ケーキとパンが売られているその店は別に敷居が高いこともなく、平常な心もちで買い物することができる。昨日、ウェスティンホテルで結婚式に出席した後、「せっかくだから」と閉店間近のそこに寄ってクロワッサンなどを買ってきてみた。1個150円前後のパン類は、それほど高すぎるという感じもなく、普通に美味しそうだった。

甘く煮たアプリコットが詰まるデニッシュと、クロワッサン。バターの香りのするクロワッサンは、確かに不味くはなかったけれど、正直言うと感動するほどには美味しくなかった。先日青山で買ってきた「デュヌ・ラルテ」のパンの方が好みだなぁ、という感じ。
「ふっふっふ、タイユバン、恐るるに足らないわね」
と、クロワッサン相手に勝ち誇ってどうする、自分。

食後に、昨日引き出物で貰ってきた「グラマシーニューヨーク」のチーズケーキをがさがさ開き、皆で囓る。人差し指ほどの長さの、ころんと直方体の焼き菓子だ。クリームチーズやらカマンベールチーズやらエダムチーズやらパルメザンチーズやらを混ぜ合わせたというケーキは、しっとりした口当たり。1つ1つのチーズの味がふわふわと漂ってくる、奥深い味がする。甘さ控えめだけど濃厚な口当たり。ううう、やっぱり美味しい。とても美味しい。

「築地 銀だこ」の
 たこ焼き
烏龍茶

昨日、「朝帰りかも……」と夜10時半すぎに恵比寿から電話してきただんなは、午前1時半、終電に乗って帰ってきた。息子だけは元気だけど、私もだんなも少々疲れ気味。夕飯の材料買いに行きますかね、と昼過ぎにぽてぽて歩いて駅前方面に向かってみた。

駅前には、数週間前にチェーンたこ焼き屋「築地 銀だこ」がオープンしている。元々、ここからすぐ近くの大型マーケットの1階にも入っていた「銀だこ」だけど、100mほどしか離れていない場所に、今度はテーブルや椅子も並べられた店舗がオープンした模様。
かつて銀座にある某社支店に勤めていた数年前は、会社の近くにこの店がオープンしたこともあって、何度も何度も食べていた、馴染み深い店だ。

でも、こそっと暴露すると、「築地銀だこ」という店ではあるが、築地にそんな店はないのである。
オフィシャルページにも載っているけど、一号店は平成9年に群馬県にオープンしている。「会社のそばにできた!」と喜んだその銀座の店は平成11年にできており(ちなみに築地は至近ではあるけど、そこの住所は銀座)、いつのまにかその店が「本店」になっていた。なんかわざわざ、「築地」に信憑性を持たせるために作られたような本店だった。裏通りに面しているし、あまり目立つところとは言えない店だ。内心苦笑しながら、それでも気に入って何度か食べていた。唐揚げ入りのおにぎりとかも買うことができて、それが割と好きだった。

そうこうしているうちに、隨分人気が出たようで、いつのまにか店舗は250を越えたらしい。我が家から徒歩圏内に2軒もあるのがちょっと驚きだったりした。
「久しぶりに、たこ焼き〜♪」
「いいねぇ、たこ焼き〜♪」
と買い物前に、そのテーブル椅子つきの店によって店内で食べていくことに。油をかけつつ焼かれるたこ焼きは、表面がカリカリサクサクとしていて、中はもっちりネトネトとしている。本来のいわゆる「たこ焼き」を想像すると、何だか邪道と思わなくもないけど、青海苔たっぷりかつおぶしたっぷりタレたっぷりマヨネーズたっぷりのそれは、やっぱりけっこう好みなのだった。タコもでっかいのが入ってるし。

そして、手渡されるときの
「美味しく召し上がれますように〜」
という文句も数年前からそのまま健在だった。
いつもながら、なんかヘンな言い回しじゃないかと思う。そのセリフを聞く度に、私の脳裏には「貴方の幸せを祈らせてください〜」という街角布教者の姿と微妙に重なってきてしまうのだ。そ、そんな祈られても。困っちゃうよ。

茹で枝豆
レタスのサラダ
イタリア風肉じゃが(一昨日の残り)
母特製 南瓜の煮物
だんな特製 麻婆茄子
冷やし中華
ビール

「茄子があるよ」
と夕飯の献立についてだんなと協議したところ、「豚肉と一緒に味噌炒めはどうか」という結論に。
幸いあれこれと残りもの類が冷蔵庫に入っていることもあり、何品か作るだけで充実した食卓になった。

だんなが味噌炒め(というか、結果として麻婆茄子になった)を担当し、あれこれやってくれている間にサラダを作ったり錦糸卵を準備したり。あまりの暑さにビール2缶開けつつ枝豆やらおかずやらとつまんだ後、大皿に3玉分の冷やし中華をどっかと盛りつけ、適当に皆で小皿に取りつつ啜ることになった。

じんわり辛い麻婆茄子は、ビールとすこぶる良く似合う。トマト煮込みした数日前のイタリア風肉じゃがと、昨夜母が煮たという甘辛い南瓜の煮物。玉ねぎやにんじんも放り込んだレタスのサラダ。そして冷やし中華にはきゅうりと錦糸卵、市販の焼き豚を細かく切って盛りつけた。

ところで、きゅうりを3本ほど買って帰ってきたところ、母も昨日買ってきていたようで、冷蔵庫の中で7本ほどのきゅうりと目を合わせることになってしまった。我が手にある10本ほどのきゅうり。
「……こりゃ、しばらく毎日きゅうり食べなきゃな……」
と、さっきから"きゅうり調理法"に思いを馳せる私なのだった。