食欲魔人日記 03年04月 第4週
4/21 (月)
鮭いくら丼 (夕御飯)
1ダース ベニエ
チコリコーヒーのカフェオレ

旅行から帰ってきての翌朝というのは、大抵なんにもないのである。しかも大概、前日の夕飯が半端な時間だったり半端な量だったりするものだから、大抵すごく空腹になって目覚めちゃうのである。
「……冷凍ワッフルがあるよぅ〜?」
「ん〜、なんかね、違うんだなぁ」
「……苺も冷蔵庫にあるよ?」
「ん〜……それもね、なんか違う……」
違う違う、と言っているのは私なのだった。一生懸命これはどう?と言ってくれるのは我が夫。何だか立場が微妙に違うような気がしないでもない。

結局、
「ベニエはどうだ!?」
「ベニエはいいねぇ〜幸せだねぇ〜」
と、朝からドーナツを揚げることになった。

ベニエミックスの表示によると1カップの粉で1ダースのベニエが作れるということだけど、1カップ半の粉で1ダース作る方がお店で食べるものに近くできる。水分が多めのちょっとベタッとした生地にして、それに小麦粉をぶわっとかけながら麺棒で軽く伸ばし、ナイフで長方形に切って油に放り込んでいくだけ。油の温度が低いと、カリッモチッとしたうまい具合に揚がらずに妙に固くなってしまうような感じなので、なるべく高めの温度の油で揚げる。

……と、何度か作っていてポイントもわかってきたのだけど、今日は油の温度が高すぎた。ちゃんと温度計を鍋に刺しておいたのだけど、中央部と端とでは全然温度が違っていたらしい。入れるなり焦げそうになるベニエを
「うわっダメッ、焦げちゃダメッ!」
などと言いながらさささっと短い時間で揚げた。随分短い時間で揚げたような気がするけれど、ちゃんと中まで火が通っていて一安心だ。

やっぱり粉砂糖は多めにかけなきゃね、などと言いながらこんがり揚がったドーナツにだばだばだ〜と粉砂糖をぶっかけて齧る。表面からじわっと熱い油が染み出てくるような揚げたてのドーナツは、口の中を火傷するほどアツアツだった。
今日もやっぱり暑い我が町、カフェオレはちょっとぬるめに。

Nashville 「China Dragon」の
 蛋花湯 $1.75
 叉焼炒飯 $5.35
 蝦撈面 $6.25
麦茶

一度大学に向かっただんなが、
「美味しいって仲間が言ってた中華料理屋さんに寄ってきた〜」
と、弁当箱抱えて昼過ぎに戻ってきた。
なんでも、テイクアウト専門の中華料理屋さんらしい。袋の中に突っ込まれていたペラ紙のメニューには、品名が100種類以上も並んでいた。
「注文してからね、厨房で作ってくれるの。ラージサイズのスープ頼んだらあなた、大変な量が出てきてさー!」
と盛り上がるだんな。紙袋の中からは、マクドナルドで飲む"ドリンクラージサイズ"より巨大なプラスチックカップが出てきた。1リットルは入るんじゃなかろうかという透明な容器の中に、卵スープがみっちりと詰まっている。うわー。

あとは、紙製のランチボックスに詰められたチャーシュー炒飯と海老入りの焼きそば。紙パックの外見からするとそんなに大量に入っているようには見えなかったけれど、じゃあお皿にあけましょう、と出したら大変な量があることが判明した。なんでも、大食漢Mさんに
「いやー、あそこのラージサイズ炒飯、食べきるの、きついっすね」
と言わしめるほどの分量なのらしい。だんなが報告してきたところによると、その紙ボックスに炒飯が詰められたとき、山盛りに盛りつけたそれを上からお玉でぎゅうと押し込み、更にぎゅうぎゅうと圧力をかけつつ蓋をして手渡されたのだそうだ。掘っても掘っても紙箱から炒飯が出てきよる。恐怖炒飯ボックスを、皆で
「まだなくならない……」
「底が見えない……」
「ぼくね、もうね、おなかいっぱいだなぁ」
などと言いつつつつくことになった。

なかなか安いし、しかも旨い。1人分だろう小サイズなら4ドル前後で大体のものが食べられる。香港あたりの小汚い一品料理屋さんで食べられるような、独特の煙の匂いがしてくるような焼きそばに炒飯だった。自家製のものらしいチャーシューはテラテラと良い感じに紅色に光っている。豚の脂がじゅわっと染みてくるチャーシューは、久しぶりに食べたまともな味のチャーシューだった。
「……大学近くの"Hong Kong"より断然美味しいね」
「しかもここ、日曜日もやってるって」
「うぉー、貴重な存在かも」
「メニュー豊富すぎるし」
と、盛り上がる私たち。くそぅ、もうちょっと早くこの店を知っておきたかった。

鮭いくら丼
大根の味噌汁
麦茶

旅行から帰ってきた翌日は、やっぱり醤油味のものとか白い御飯が恋しくなる。
「そう、例えばいくらみたいなものとか、いくらみたいなものとか、それともいくらみたいななんかも……」
と、いくらいくら呟いていたらだんなが買ってきてくれた。ついでに鮭も買ってきてくれたので、今日の夕御飯は鮭いくら丼。魚介版親子丼だ。

鮭は酒をちょっとふってほぐしながら炒めていく。塩気がたりないのでちょっとばかり塩をふり、適度にぐずぐずにほぐれたところで御飯の上に盛りつける。中央には、いくらをたっぷり。これでもかとたっぷり。あとは大根の味噌汁だけを用意して、ビールすら無し。味噌汁と麦茶を傍らにひたすらに鮭いくら丼を堪能する準備を整えた。

「そうそう、こんな感じにいくらたっぷりのものが食べたかったのよー」
と言いつつがふがふとかっこむ。いくらはロシア人のおっさん兄弟が運営しているガソリンスタンドのショップで販売されているのを買ってきているのだけど、毎回彼らに限りなく感謝しながらいくらをいただいている。ただ、買ってきた段階では味は何もついていないので醤油と酒で味をつけておかねばならない。鮭にも塩をふり、いくらも醤油をちょっと強めに加えたので、味が全体的に濃いめになってしまった。
「ん〜、ちょっと、味が濃いかも」
と、御飯をどんぶりに足しているだんな。あ、ごめんねごめんね塩が強かったかなぁ、と呟いたら
「いや、お店で食べるいくら丼とかって、こんなに大量に乗ってないし。いいよ、これで」
とフォローされた。食べててしょっぱく感じてしまうほどの鮭いくら丼。けっこう贅沢かもしれない。

4/22 (火)
Sylvan Park Restaurant(Nashville)にて、Meat&3 (昼御飯)
おにぎり
大根の味噌汁
麦茶

ここ暫く私も早起き傾向にあったのだけど、今日は久しぶりに寝坊した。
息子が一人で起きあがって活動し始めた気配がし、続いてだんなも起きだしてメールチェックなどを始めている模様。あー、起きなきゃ起きなきゃーと思っている間にまた意識が遠のいてしまい、はっきり目覚めた時にはだんなが
「大学に行ってくるねー」
とぱたぱたと手をふっていた。昨日の昼御飯に食べた炒飯の残りをだんなは一人で食べた模様。テーブルの上には息子用に残しておいてくれたものらしい、味噌汁が1杯残されていた。

あらー、まぁー、としばらく呆然とした後、息子と2人で朝御飯。
「昨日作ったおにぎりと、あと、冷蔵庫にいくらがあります。おにぎりといくら御飯、どっちが食べたいですかー?」
と息子に決断をゆだねてみたところ、
「いくらごはん!」
と即答された。……そりゃそうだ。私もいくら御飯の方が好きだ。

あと1人分ほどの半端な量のいくらしか残っていなかったので、それは温めた御飯と共に息子の椀によそってやった。私は、昨夜残った御飯で作って置いたおにぎり1個。好物の"すきやきふりかけ"をどばーっとかけて齧る。

「おかーさん、それ、その、赤いの、なに?」
「すきやきふりかけー」
「ふりかけ?ぼくもー、ぼくもふりかけー」
「君はいくらがあるじゃん。ちゃんとそれを食べなさい」
「いくらもたべるよ。ふりかけもたべるー」
「じゃあ味噌汁半分よこしなあい。うらうらうら」
と、食卓の上をわちゃわちゃしてしまいながら、ふりかけおにぎり1口と味噌汁3口分ほどのトレードに成功。ていうか、息子よ、あんた御飯喰いすぎ……。

Nashville 「Sylvan Park Restaurant」にて
 ローストビーフ
 w/スクワッシュの煮物
 w/コールスロー
 w/きゅうりと玉ねぎのマリネ
 ココナッツクリームパイ
 アイスティー

帰国までもう1ヶ月ちょっとという現在、アメリカで食べられる美味しいものをできるだけ経験してから帰りたい、と、ここしばらく外食熱に拍車がかかっている。今日、昼御飯に向かってみたのは「フライドチキンが美味しいわよー」と友人Rさんに以前勧められたことがあるMeat&3の店。

天井が低く、テーブル数も10ほどしかない小さな店だった。民家を改築したような内部の壁は綺麗な水色に塗られている。随分と使い古されてボロボロになったメニューには、「Tuesday」と上に掠れて書いてある。メニューは曜日代わりで用意されているものらしい。
お勧めと言われたフライドチキンをはじめ、ミートローフやローストビーフなどが並んでいる。メインディッシュには、10種類以上あるサイドディッシュから好みの3種類がついてくる。子供用には、"おかずだけ"とか"3種サイドディッシュだけ"なんて注文もできる。

甘くないアイスティーをずびずびずーと飲みながらメニューを検討。だんなはダークミート(もも肉)のフライドチキン、私はローストビーフ。カーネルコーンとかコールスローとかフルーツサラダとかフライドポテト、さやいんげんのキャセロール煮など、各自適当にサイドディッシュも注文した。
やってきたのは、比較的量が少なめな1プレートディッシュ。同じくMeat&3の店である「Copper Kettle」に比べると、あの店の溢れんばかりの料理よりもかなりささやかに感じられるものだった。

グレービーソースをじゃばじゃばかけた薄切りのローストビーフの小山に、ちょっと甘めなピクルス風のキュウリと玉ねぎのマリネ。セロリの香りが強く 胡椒も効いたコールスローに、スィートポテトに似た味のスクワッシュ(西洋かぼちゃ)の甘い煮物。どれもほんのり田舎臭さが漂うような優しい味の料理だった。"Copper Kettle"の味は若々しさが漂っているけど、こちらはアメリカンなおっかさんの味、という感じ。どちらもそれぞれ良いところがある。フライドチキンもローストビーフも、期待以上にしみじみと美味しかった。
店内は、老夫婦がのんびりと食事していたり、昼休みにやってきたのかスーツ組のおっちゃん2人組などもいたりした。

で、案外と軽めの料理だったので、"本日のデザート"からココナッツクリームパイを頼んでみることに。料理の量からして、けっこうささやかなものがくるのでは……、と思っていたら、甘かった。
やってきたのは、角度45度にカットされた巨大なパイ。ほんのりココナッツ風味のカスタード生地が下層にあり、上層はメレンゲがこれでもかと厚盛りされている。そして表面にもココナッツフレーク。全体的に甘〜い甘〜いパイだった。だんなは一口食べて、
「うげ」
と蛙のような声を出したきり、二度とフォークを出してこようとしない。私と息子だけが
「……そんなに、甘すぎるというほど甘くないよ。まぁ、甘いんだけど」
「うん、おいしーよー?」
と意に介さず2人でもりもり平らげたのだった。もしかしてアメリカンな甘さに慣れつつあるのだろうか。

五目炊き込み御飯
鶏肉とごぼうと大根の吸い物
麦茶

ポップコーン
ビール(Foster's)

今日は夜7時半からプロレス観戦。WWEの"Smack Down"の興業が来るということで、我が家・Hさん一家・Iさん・Mさんの合計8人で観戦しに行くことになっている。現在イチオシのUndertakerさんは、現在怪我で欠場中。それが少々つまらなくもあるけど、アメリカンプロレスの楽しさが最近じわじわと感じられるようになったこともあって楽しみにしていた。

6時過ぎに早めの夕飯を食べて、ダウンタウンへ。
「簡単にパスタか?」
「うーん、牛丼とか」
と悩んだ結果、"素"を使っての炊き込み御飯となった。丸美屋の五目釜飯の素を3合の米に混ぜ、羽釜で炊くだけ。困ったことに、箱に記載されている"作り方"のところに英文の材料名などのシールが貼られてしまっている。
「え?何合用なの?……3合か。で、水の分量って……えーいもう、全然見えないじゃないか、もー!」
と、ウキーッとなりながらシールを剥がして確認し、ようやっと釜に米をセットすることができた。
お供に、鶏肉入りの吸い物。日本でもよく作っていたごぼうと大根入りの吸い物で、本当だったらこれに舞茸を入れたいところだけど、アメリカに来てから生の舞茸は一度もお目にかかったことはない。乾燥舞茸はオーガニックショップで見つかったけど、これがまた「松茸じゃないんだから」と思うほどに高価だったのだ。

テーブルの中央にどかんと釜を置き、せっせとよそいつつわしわし食べた。ちゃんとお焦げもできていて、かなり懐かしい味がする。吸い物を飲み干し、御飯は軽く3膳ほどかっこみ、そしてダウンタウンにある我が町のアイスホッケーのホームグラウンドである会場に向かった。
これが2回目のプロレス観戦。アメリカに来て、テレビで毎週のプロレス放送を見始めたときは
「なんて"お約束な流れ"が多いんだ!」
「これは本当に格闘技なのか!?」
と頭を抱えていたのだけど、友人Yに
「やだわー、せりあちゃん、あれは"格闘ソープオペラ"なのよ♪」
と言われてから、何かこう、悟りを得たような気分になっている。そう、これは格闘ソープオペラ。あー、この伏線があって今度の有料放送に繋がるのね、とか、こういう因縁をつけておきたいから今ここで彼は奴と戦っているこの人の助っ人に出てきているのね、とか、試合以外のところがわかってくるとこれがけっこう楽しかったりするのだった。

今日も楽しいプロレス観戦となり、3時間たっぷり楽しんで帰宅したのは午後11時。
とりあえず風呂にも入らず寝ることにしよう。明日は息子の誕生日だし、気合い入れて夕食作ってあげなくちゃだわ。

4/23 (水)
息子の誕生日祝いに、スペシャルお子さまランチを作成
インスタントクロワッサン (チーズ入り・プレーン)
カフェオレ

私はもとより、だんながすっかりお気に入りなのがPillsbury社Crescent Rolls。缶入りの生地を、手でパカンと開き、切り目が入っている生地を三角に切り取りくるくると巻いてオーブンで10分程度焼くだけでできあがるクロワッサンだ。我が家最寄りのスーパーでは、ミニタイプしか見かけなかったが、先日別のスーパーで大型サイズも発見した。巨大サイズクロワッサンも嬉しいねぇ、とほくほくして買ってきている。今日は、買い置きのミニクロワッサンを焼くことにした。

そして、私はもとより、これまただんながすっかりお気に入りなのが"チーズ入り"。生地を巻く時に中央にブリーチーズを匙1杯分ほど乗せ、溶けたチーズが溢れてこないように端をきゅっと押さえるながら丸めて焼いたもの。溶けたチーズがてろーんと端から出てきて、焼きたてアツアツの楽しさがより一層楽しめる。私もかなり気に入っていたけど、だんなの方が
「明日、アレ食べよう。クロワッサン」
などと言ってくるようになった。

今日も、8個分の生地を半量プレーン、半量チーズ入りに。我が家のオーブンは、どうもこういったものの説明書どおりに作ると焦げがちなので、375度という記載は350度くらいに、13分と書いてあるところは10分程度に、とやるとうまくいくようだ。最近、けっこう上手い具合に焼けるようになった。
「チーズいり、どれー?」
「……うーん、これだと思うよ」
「おゆきさん、僕の両方ともプレーンな気がする」
「あ、じゃあこっちがチーズだから」
などと、これがチーズあれがチーズとわいわいやりながらの朝御飯。今日判明したことだけど、だんなも息子もチーズ入りの方が圧倒的に好きなのだった。次回からはチーズ入りだけ作っていれば良さそうな感じ(でも、若干めんどくさいんだわ、チーズ入り)。

昨夜の残りの炊き込み御飯
麦茶

今日は息子の誕生日。起きるなり、
「君は今日、5歳になったんだよ。おめでとう」
と伝えたら、だんなの研究室などで留学生仲間に会ったりする度に
「ぼくね、今日ね、5さいになったんだよー」
などと報告して歩いていた。本当にわかっているのかどうか、ちょっと疑問。更には、午後になって取りに行ったお祝い用のショートケーキを眺めて
「あー、たんじょうび、あったー。ぼくのたんじょうびー」
と冷蔵庫の中を指さしている。息子の脳内では"誕生日"というものはショートケーキの外見をしているものらしい(あながち間違ってはいないと思う)。

そして、午後はちょこちょこと夕食の仕込みを。
じゃがいも茹でたり肉炒めたり、とわちゃわちゃしていたこともあって、昼食は簡単に昨夜の残りの炊き込み御飯となった。炊きあがりにちょっと火を強めにして炊いた御飯には、しっかり焦げができている。炊き込み御飯のおこげってば、なんでこんなに美味しいのかしらん。

息子の5歳の誕生日お祝い
 特製お子さまランチ
     海老ピラフ・ナポリタンスパゲッティ
     ポテトコロッケ・海老フライwithタルタルソース・チキンマカロニグラタン
     千切りキャベツ・茹で枝豆・プチトマト
 コーンスープ
 ハードレモネード

 「Alpha Bakery」のショートケーキ
 カフェオレ

そして、夜は予定通り"お子さまランチ"。夕方からだんなと2人台所に立って、せっせと料理の準備をした。だんなはグラタンとナポリタン担当、私はその他担当。最後の揚げ物は、私が衣をぱたぱたつけ、だんなが揚げ鍋の前に立った。
「あーもー、お子さまランチって面倒〜」
「どのくらい面倒かというと、ビーフシチューより面倒〜」
などと泣き言を言いつつ一品一品仕上げていった。食べるのは楽しいけど、準備が泣けるお子さまランチ。

バターとケチャップで炒めただけの具なしのナポリタンスパゲティに、海老とグリンピース、コーン入りのピラフ。大人の握り拳よりも大きなじゃがいもを3個使った大量のコロッケと、なるべく大きめの海老を買ってきて揚げた海老フライ。マカロニグラタンは小皿に焼いて鶏肉を少しばかり混ぜ、あとは彩りに千切りキャベツとか枝豆とかプチトマトとか。なるべく息子の好物そうなものを選んで、大皿にどかんと盛りつけた。コロッケは15個くらいできてしまったので、これは明日の朝御飯にもなる予定。

そういえば、息子が産まれて以来、状況が許す限り誕生日にはお子さまランチを作っている。
1歳の誕生日にはコーンクリームコロッケと海老フライとミニハンバーグ、マッシュルーム入りのバターライスにナポリタン。ケーキは"ドゥリエール"のミルクレープ。
2歳の誕生日にはメンチカツに海老フライにオムレツ、グラタンとポテトサラダと海老ピラフとコーンスープ。赤坂の"しろたえ"のレアチーズケーキ。
3歳の誕生日は名古屋に旅行中だったので味噌煮込みうどんなど喰っていたりして、"グラマシーニューヨーク"のケーキをもりもりと。
4歳の誕生日はドミグラスソースかけハンバーグと海老フライ、揚げウィンナー、フライドポテト。バターピラフとナポリタン、コーンスープ。ケーキはちょっと手抜きめに不二家のショートケーキ(でも不二家のショートケーキってしみじみ美味しいのよね……)。

「毎年毎年、よくやってますよね」
「ほんっとーに毎年作ってたんですね」
と、食後に過去日記を見返してだんなと2人苦笑いしてしまった。どうも、毎年毎年「もうイヤだ、お子さまランチを作るのはイヤだ」と思いながら作り終えているような記憶がある。そのくせ、食べてみると大人も幸せなもんだから、これ幸いと息子の誕生日が来るとお子さまランチを作ってしまうのだ。

そういえば、ポテトコロッケを作ったのはアメリカに来てから初めてだったような気がする。アメリカのじゃがいもは、日本のものとはまた違ったぽくぽく感があって、コロッケにしても似合うと思う。玉ねぎと豚ひき肉を炒めて混ぜ込み、ほんのちょっと練乳を隠し味に加えてしっとりと握って作った。

デザートは、Alpha Bakeryの10人前のホールショートケーキ。数日前から予約して、「Happy Birthday」の文字も入れてもらった。先日Mさんの結婚祝いパーティーにも大型ショートケーキを作ってもらったばかりだけど、あの時は
「生のクリームだとね、パーティー会場の持っていったりするとすぐにダレできちゃうからちょっとやめておいた方がいいかも」
と言われて"生クリームに似ているけど形が崩れにくい別のクリーム"なるものにしてもらっていたのだった。今日受け取ってきたものは、正真正銘生クリームのケーキだ。牛乳の濃い風味が漂うふわふわとしたクリームがこれまたふわふわとしたスポンジ生地の間にたっぷりと挟まっている。「これ!」という感じの素直なシンプルな味のショートケーキだった。
あと何年お子さまランチは作れるかなぁ。私たちの作る気力が尽きるのが先か、息子が「もういいよ、お子さまランチなんて恥ずかしいよ」と訴えてくるのが先か。

4/24 (木)
Bobbie's Dairy Dip(Nashville)にて、チョココーティングソフトクリーム
コロッケサンド
牛乳

昨夜の、息子の誕生日用に作ったコロッケが山のようにあった。そもそも残るようにと作ったのだけど、それにしても「なんでこんなに?」と思うほど大量にできてしまった。じゃがいも……たったの3個しか使ってないんだけど、アメリカのじゃがいもの大きさを見誤っていたらしい。

それはそれとして、今朝は"コロッケサンドを作ろう"という予定になっていた。昨日、誕生日ケーキを受け取りに行っただんなに頼み、そのパン屋さんの食パンも買ってきてもらった。
「コロッケサンドのパンは、やっぱりトーストじゃなくてそのままふわふわのがいいのよね」
などと言いながら、食卓にパンとバターと千切りキャベツとブルドッグとんかつソース(←小さなボトルで$3以上もするので、けっこう贅沢品)を並べる。コロッケはオーブンで軽く温めておき、
「私はパンにバター塗って、"キャベツ→コロッケ→ソース"の順だなぁ」
「いや僕はだね、"コロッケ→ソース→キャベツ"の順なんだよなぁ」
「ぼくはねーぼくはねー、ジャムのパンでいいなぁ」
などと各々主張しながら各々のサンドイッチを作成した。コロッケサンドはソース多めが美味しいのよねー、とソースをだばだばだば。

コロッケは準備が面倒だったり揚げるのが面倒だったり、更にはカロリーも気になっちゃったりして夕食のメニューとしてはつい遠ざかりがちなのだけど、作ってみると夢中になってしまう魅惑のおかずだ。あらゆるじゃがいも料理の中で一番旨いのがポテトコロッケではあるまいか、と食べている間は本気でそう思ってしまう。コロッケ5個くらい余裕で一気食いできてしまったりして、その点もかなり危険だ。

子供の頃、母が「きっと残るから明日のお弁当のおかずにできるわね」と揚げてくれたコロッケを最初の晩でもりもりと私が喰いきってしまい唖然とさせたことを思い出し、そういえば翌日の弁当は冷凍食品オンパレードだったんだっけ、ということまで記憶が蘇ってしまった。コロッケ丼というのが、これまた何気に美味しいのよね。

Nashville 「Bobbie's Dairy Dip」にて
 Bobbie's Dancin' Dip (Vanilla/Small) with Chocolate Dip $1.50+$0.25

セントルイスで"フローズンカスタード"なる魅惑のデザートを先日食べてきてから、
「果たして我が町にあのような旨いアイスクリーム屋があるのか否か」
がここ数日の私の小さなテーマ。

我が町の飲食店情報を探るには、Nashville Citysearchがおおいに役だってくれる。ベストバーベキューだのベストステーキだのベストチャイニーズだのと毎年色々なジャンルのレストランランキングが作られ、投票で決められる" Audience Winner"と編集者が選ぶ"Editorial Winner"の2種類のチャンピオンが決定する。上位10軒は、"ノミネートされました"という情報も掲載される。

載っている情報は、非常に玉石混淆(←今までずっと"玉石混合"だと思っていたのだけど、"玉石混淆"(ぎょくせきこんこう)が正しい言葉なんだと、今日初めて知った)。明らかにそれよりマシな店がいっぱいあるだろう、という全米どこにでもあるチェーン店がランキングで上位ノミネートされてしまうこともあるし、小さなアジア系料理店あたりになるとサイトに掲載すらされていなかったりする。が、「ここ旨いよ!」と感動した店の店頭に"XXXX年のBest XXのWINNERになりました"という額がかかっていることも多い。日本語のガイドブックを見たとしても数ページ分の紹介しかないような小さな町となると、やっぱりこのサイトが頼りになるのだった。大抵どこの町にもこのCitysearchがあるので、旅行前には「美味しい朝飯処はないかー」などとチェックするのが常になっている。

というわけで、美味しそうなアイスクリーム屋さんはないものかと"Best Icecream"を眺めて目星をつけてみる。サーティーワンアイスクリーム(アメリカでは"Baskin-Robbins"という名)が3位だったり、同じくチェーンの"Ben & Jerry's"がAudience Winnerになっているのにがっくりしつつも、"Bobbie's Dairy Dip"という気になる店がみつかった。チェーンではなく、高速道路と平行に走っている太い道路沿いにあるアイスクリームショップのようだ。なんでも、ベストハンバーガーとベストフライとベストアイスクリームとベストキッズフレンドリーに過去選ばれたことがあるらしい。一体何屋だよ!とツッコミを入れつつ、美味しいアイスクリームを求めて行ってみることにした。

アイスクリーム屋というよりハンバーガー屋といった風情に近い、屋外に向かってカウンター販売しているだけの小さな店だった。店の横には申し訳程度のベンチ席が4テーブルほど用意されており、そこでは2家族がハンバーガーをばりばりと食べているところだ。10種類ほどのハンバーガー類とソーダの他はデザート系が充実している。ストロベリーにコーヒー、チェリー、パイナップル、バタースコッチ、スパイスアップル、オレオ、ピーナッツバター、チョコレートチップ……と多種類あるシェイクとサンデーの他、"Bobbie's Dancin' Dip"という名のソフトクリームがバニラ・チョコ・ミックスの3種類。ソフトクリームには25セント増しでチョコディップやコーヒーディップ、スプレーチョコなどのトッピングをしてくれるようだ。
「私、スモールサイズのバニラソフトにチョコディップ〜」
「じゃあ僕はスモールバニラにコーヒーディップだな」
と、注文した。

5口くらいで食べられそうな可愛らしいサイズのソフトクリームをにょろにょろと絞り出し、厨房の兄ちゃんはそれをチョコの鍋にどぼんと浸してコーティングしてくれる。アイスの冷たさでチョコがすぐにパリパリの薄皮になり、それをパリパリパリパリさせながら食べる。コーヒーディップもほどよく苦く、良い感じ。ソフトクリーム自体は独特のものではないごく普通のもののように感じたけれど、"チョコ味アイスにコーヒーディップ"なんてなかなか楽しいかもしれない。

メニューには、$15.95もするおそるべきデザートも載っていた。"The Kitchen Sink"というそれは、「家族連れや友達同士にどうぞ!」と書かれている。なんでも、たっぷりのチョコレートとイチゴとカラメルのソースで彩られたアイスクリームの巨大なタワー(複数)にバナナやベリー、ホイップクリーム、ナッツやチェリーや季節の材料を積み上げたものなのだとか。食べ物の説明文に"Giant Towers"なんて単語が出てくるあたり、想像するのも恐ろしいものがある。さぞでっかいアイスクリームなんだろうなぁ。

周囲のお客が食べていたハンバーガー類も美味しそうだった。チリドッグやベヒーモスバーガー、なんてのもあるらしい。
「今度はベヒーモスバーガーかな」
「で、デザートにソフトクリーム、と」
と、ちょっとこの店が気に入ってしまった私たちだった。

タンドリーチキン
ポテトコロッケ・海老フライ(昨夜の残り)
千切りキャベツ(昨夜の残り)
茹で枝豆
クラムチャウダー(缶詰もん)
羽釜御飯
ビール(Corona)

今日は何だか、コリアンダーとかクミンとかチリパウダーとか、そういった感じのスパイスがっちょり系料理が食べたい気分だった。幸い、冷蔵庫には昨夜の調理に使った鶏肉の残りが入っている。
「タンドリーチキンにしてみましょー」
と、外出ついでにミニカップ入りの無糖ヨーグルトを買ってきた。ジップロックに鶏肉を入れ、ヨーグルトと刻みにんにく刻み生姜、チリパウダーとガラムマサラと塩とレモン汁を適当に放り込んで揉み揉みしたあと4時間くらい放置しておく。あとはそのタレをちょいとぬぐってからオーブンで20分ほど焼いたらできあがり。インド料理屋さんで食べるような乾いた感じのパサパサしたタンドリーチキンにはならなかったけれど、適度にスパイス臭漂うおかずになった。やっぱりヨーグルト入れなきゃこういう味にならんのよねー。

ざく切りしたライムを用意し、薄く切った1切れはコロナビールに突っ込み、残りはタンドリーチキンにかけて齧る。昨夜の残りのコロッケや海老フライもあったので、おかず大量の夕飯になった。
「コロナってこう、スパイスがっちょり系料理に似合いますよね」
「でも枝豆には似合わないよね」
「で、冬のコロナはいまひとつ美味しくない、と」
「夏にはこれ以上なく美味しく感じるビールなのにね」
と、コロナの魅力について語り合いながらの夕御飯。ビリッと辛いタンドリーチキンとコロナはすごく合う。が、ブルドッグとんかつソースとの相性はいまいちだ。ビールをぐいぐい飲み干しながらチキンにかぶりつき、続いてコロッケをおかずに御飯を食べる流れになった。
さー、夕御飯食べたら木曜恒例のプロレス番組を見るのよー。

4/25 (金)
Outback(Nashville)にて「Rockhampton Rib-Eye」 (夕御飯)
コロッケサンド
卵サンド
牛乳

一昨日に揚げたコロッケが、まだ1個だけ残っていた。正確に言うと、「だんなが残していた」。よっぽどコロッケサンドが好きなようで、昨夜の夕飯のうちから
「明日も〜♪コロッケサンド〜♪……え?キャベツもうないの?」
などと言っていた。いや、コロッケサンドするなら明日の朝刻んであげるけど?と答えたら、妙に嬉しそうにニカニカと笑っていた。……そんなに好きかね、コロッケサンド(いや私も大好きだけど)。

昨夜、自分の取り分のコロッケを残していたのはだんな1人だったので、本日のコロッケサンドの取り分もだんな1人ということになる。そこらへん、割ときっちりしている我が家であった。
「……じゃ、私は卵サンドでもするかな〜……」
と今朝、朝食の算段を呟いていたところ、僕も僕も卵サンド食べたい、とそちらにも強い興味を示してきた我が夫。結局、食パン2枚で作ったコロッケサンドと食パン2枚で作った卵サンドを半分こして食べることになった。息子にも卵サンド。

アメリカで買うマヨネーズは、瓶詰めになっている固めのものが多い。酸味が少なくねっとりと濃い味がして、卵サラダを作る時などにはこちらの方が美味しくできるような気がする。スプーンでうりゃ!とすくってボウルに入れたりするのが豪快でまた楽しい。
2個のゆで卵をマヨネーズで和え、パンに挟んだだけの簡単卵サンド。息子にも食パン2枚分のそれを「……さすがに多いかな?」と皿に盛ってやったら、もりもりと平らげられてしまったのだった。しかしコロッケサンドは旨いね。

Nashville 「Outback」にて
 Rockhampton Rib-Eye $16.99
 w/French Onion Soup
 w/Baked Potato
 Beer(Foster's) $3.75/2

自宅で
「Alpha Bakery」のショートケーキ
カフェオレ

午前9時半頃に食べた朝食は、案外ヘビィだった。お昼になってもお腹が空かず、1時を過ぎて息子に
「……おなかすいた?」
と聞いてみても
「ん〜とね、まだたべられないと思うよ」
とつれない返事。3時を過ぎてさすがに空腹を感じ始めたけど、今更昼御飯という気分にもならず、
「あー、このまま空腹極めてステーキをがっちょり……アウトバックでがっちょり……」
という方向に気分が盛り上がってきてしまった。

4時を過ぎて、大学から
「4時半頃帰るけどなんかいるー?それとも銅鍋屋とかに食べいっちゃう?」
とメールを投げてきただんなに
「猛烈にOUTBACKのステーキが恋しいキ・モ・チ☆」
と"弾けてるアタシ"を演出したメールを返してみる。モニターの向こうで「☆はやめれ、☆は」と苦笑いする我が夫が目に浮かぶようだわい、とニヤニヤしていたら「OK、ボス」と速攻返事が返ってきた。☆については言及されていない。……ちっ。

ともあれ、Outbackでステーキ。7時までに入店すればビールがBuy One Get one Freeになる。だんなと同じビールを頼み、半額だ半額だと喜びながら一気に飲んだ。外はまだまだ青空で、太陽はまだまだ上にある。半端な時間だというのに、店は今日も混雑していた。
ラムチョップにしようかどうしようか悩みつつ、私もだんなも14ozのステーキにした。私はリブアイ、だんなはニューヨークストリップ。ステーキを注文するともれなくついてくるサラダかスープでは2人ともフレンチオニオンスープを、更にサイドディッシュは私はベイクドポテト、だんなはベイクドマッシュルーム。パンもついてきてそれで15ドル前後なのだから、山のようなステーキの対価としては安いよなぁと思ってしまう。

お気に入りのフレンチオニオンスープは、今日もやっぱりどことなくジャンクな味。焦げ茶色のスープには形の残る玉ねぎがざくざくと入り、いかにも冷凍して大量入荷してますみたいな丸いパンがチーズをたっぷり乗せられ、浮かんでいる。でも、このスープがジャンク風味含めて妙に美味しく、クセになる。この店に来る時は、大抵猛烈な空腹状態に陥っているので、このスープを飲んでやっと一息つくというのがいつものパターンだ。

そして各々の前に400gサイズのステーキが。リブアイはあばらの部分、ニューヨークストリップはサーロインだ。リブアイの方が圧倒的に脂こってり。どちらも塩胡椒をガツンときかせただけの、液体のソースはかかっていないステーキ。じゃがいもとマッシュルームがそれぞれ添えられている。息子にはキッズメニューのマカロニ&チーズ。
9oz(250gちょい)のステーキを、「案外大きいかも」と思って食べていたのは何ヶ月前の事だろう。最近は、オンスの桁が1桁の肉は肉と思えないようになってきて大変に危険だ。1ポンド(16oz)の肉はさすがに多いけど、12oz、14ozくらいならどうってことないように思えてくる。今日の14oz肉もべろりと綺麗になくなった。やっぱりストリップはちょっと脂が少ないよね、リブがいかにもアメリカンなステーキって感じ、などと言いながらだんなの肉と交換しつつ肉塊をざくざく切っては食べていく。ミディアムレアに頼んだ焼き加減は、まんま生というわけではないけど中央がかなり赤めな、好みな感じの生っぽさだった。厚すぎて、ただ縦に切っただけでは口に入りきらない肉を、更に一口大に切り分けると柔らかい肉がぷるんぷるんと揺れて肉汁が垂れてくる。肉というものは焼いて塩ふっただけのが一番おいしいよなー、と思い知るひとときだった。

今日はデザートにも余裕でたどりつけそうだったけど、
「いや、ここでデザート食べる前に、家にあるじゃん!」
「そうか、誕生日ケーキが残ってた!」
と、とっとと帰宅。店を出た6時過ぎにも、まだまだ日は沈んでいなかった。サマータイムだと8時過ぎまで明るい日が続く。なんだか夕御飯を食べたという実感が薄らぎそうになってしまった。

4/26 (土)
Cracker Barrelにて、ビーフシチューセット (昼御飯)
海老ピラフ (自家製冷凍もん)
牛乳

"残り少ないアメリカ生活、特に我が家周辺の遊び場を満喫しよう"キャンペーン第一弾ということで、今日は我が町最寄りの国立公園、Mammoth Cave(マンモス・ケイブ)に行くことになった。マンモスが埋まっていた洞窟……というわけではなく、巨大な巨大な洞窟であるらしい。自分の足で歩いて回れるものもあるらしいけど、基本的にはレンジャーの引率がつくツアーに参加しないと洞窟内は歩けないようになっているようだ。「予約を強くおすすめします」と書いてあったので、昨日のうちにインターネットでツアー参加の予約を済ませておいてみた。目当てのツアーは、10時出発。朝7時に起きて現地に向かうことになった。

朝御飯は、息子の誕生日ディナーに作成した残りを冷凍しておいた、海老ピラフ。あまり時間もないので、それだけチンしてがふがふと食べての出発となった。あー、こういうときのためにカレーとかシチューとか大量に作って冷凍しておけば良いんだよなぁ……と思いを馳せつつ、でもいざ作る段になると冷凍するのが何だかもったいなくなってしまって食べ切っちゃうのが常なのよね、とため息。ともあれ出発〜。

Kentucky州Bowling Green 「Cracker Barrel」にて
 Homemade Beef Stew
 w/House Salad
 w/French Fries
 Lemonade

国立公園についたのが9時半。参加した10時からの"Frozen Niagara Tour"は100人以上が参加できる一大ツアーで、所要時間は約2時間。歩く距離は3/4マイルと軽いものだけど、その代わりに最初に長い長い階段を下り続けなければならない。全体的に高低差がけっこうある、なかなかキツイものだった。最後には、巨大な滝のようになっている鍾乳石、Frozen Niagaraに到達する。頭がつかえるところや、体を斜めにしないと通れないところなどもあって、子供連れもOKという割にはなかなか疲れるものだった。民間の会社がやっているこの手の洞窟ツアーは、やたらめったら派手な照明や演出がされているものだけれど、国立公園となるとすごく地味。それが逆に"探検心"を盛り上げてくれて、想像以上に楽しい洞窟ツアーになった。ナイアガラも綺麗だったし。

終了したのはちょうどお昼時。週末ということでまだまだ続々と人々がビジターセンターに集まる中、じゃあ帰りましょうと帰路についた。
「お昼ごはんは〜?……クラッカーバレルかなぁ」
「ああ、私、あそこで買いたいケーキがあったんだわぁ」
などと言いつつ、20マイルほど離れた町にあったチェーン南部料理屋さんCracker Barrelに。どこにあるお店に入っても、必ず広いスペースをとったお土産もの屋さんが併設されているファミレスで、どこの店に入っても「あれ?いつかここに来たっけ?」と妙な既視感を覚えてしまう店だ。だが、今日の店はあからさまに見覚えがあった。
「この出口、なんか来たことがあるなぁ……というか、地名に見覚えが」
「ああ、そうだよそうだよルイビルにプロレスに見に行った時にここで昼御飯食べたんだ!」
と、わちゃわちゃ言いつつ2度目に入ったケンタッキー州の小さな町のCracker Barrel。

注文したのは、これまたその時に食べたものとほぼ同じ、ビーフシチューセットにレモネードだ。添え物は1ドル追加料金を払ってサラダにしてもらい、それとフレンチフライ。
ここのビーフシチューは、なかなか美味しい。皮付きのままざっくり切ったじゃがいもと、これまた皮つきのままざくざく切られたにんじんがどちゃっと入り、玉ねぎやさやいんげんなども入っている。肉はすっかり煮くずれてモロモロとしていて、割と素朴な味。一番最初にやってきたハウスサラダは、ベーコンやチーズが散らされた大皿に盛られたサラダで(とてもメインディッシュの添え物というサイズには思えないようなサイズで)、厚切りトマトが3枚添えられていた。けっこう幸せに腹一杯になれる店だ。高速道路上にマクドナルドとかタコベルとかケンタッキーフライドチキンなんかの看板しか見かけられなかったりするときにはここの看板を見かけるとちょっとホッとできる。

今日も空腹を癒してもらい、そして目当てのケーキもちゃんと買って帰った。
買ったものは"Tipsy Cake"。テネシー名物ジャックダニエルを1本につき1/2カップも使って作られたウィスキー臭ぷんぷんのケーキであるらしい。渡米直後に噂を聞いて、いつか買おうと思いつつすっかり忘れていたケーキだった。片手に乗るくらいの長方形の缶に入っており、それで10ドル弱。安くはないけど旨そうだ。食べてみて「いける!」と思ったら日本の家族のお土産にすることにしよう。

とんこつラーメン (うまかっちゃん)

「なんだか筋肉痛になりそうだよ」
と帰りの車の中で呟いたら、だんなに
「運動不足だよ、う・ん・ど・う・ぶ・そ・く!」
と高らかに笑われた。えーえ、どうせ最近はとみに動いていませんよ、と軽口を叩いて帰ってきたら、帰った途端に私もだんなも爆睡。車の中で寝ていた息子だけ充電完了で超元気。どうも夫婦揃って運動不足な今日この頃らしかった。

昼寝から目覚めても、もう眠いわだるいわで大変な状態。そんなに階段500段はハードだったというのだろうか。情けない。
「なんだか御飯作る気力が沸きませ〜ん」
「僕も沸きませ〜ん」
「……ていうか、昼御飯がけっこう重かったよね」
「なんか、お腹空かないのよね」
と理由をつけて、夕飯はこれ以上なく手抜きなインスタントラーメンとなった。とんこつラーメン、"うまかっちゃん"。湯で顆粒スープ溶いて、麺茹でてどんぶりに入れて、香油入れて、あとは刻んだ葱とメンマと胡麻でもぶっかければできあがり。飲み物を用意するのもめんどくさく、コップには水。もう果てしなくやる気のない食卓になった。息子よすまん。「ラーメン、すきだなー」とニコニコと言ってくれるのが逆に良心に突き刺さる。「ラーメンは、かーちゃんが手抜きしたいときに作る食べ物だ」なんて刷り込みされたら、ラーメンも息子も可哀相なことになる。今度から手抜き料理もバリエーション豊かにしておかなければ、とぐにゃぐにゃな脳味噌で考えながらラーメンを啜った。……あ、けっこう旨いわ。

4/27 (日)
だんな特製 麻婆豆腐 (夕御飯)
インスタントクロワッサン(チーズ入り・ハム入り)
カフェオレ

最近すっかりハマっているPillsbury社Crescent Rolls。"缶を開けて生地を巻いたらあとは焼くだけ"のクロワッサン、本日初めて焼いてみたのはジャンボタイプだ。割とどこのスーパーでも売られているのは、小型サイズのものが8個できるタイプだけれど、時折見かけるのが大型クロワッサンが6個焼けるタイプ。こちらの方が朝食には丁度良いかと、見つけた時に買ってきてみた。

今日は、ピザを作った時に余っていたシュレッドモッツァレラチーズを巻きこんだものを3個、そして残りもののハムを巻いたものを3個。350度Fで十数分焼けとあったけど、設定温度より高くなりがちな我が家のオーブンの様子を見い見い300度くらいで10分焼いてみる。ちと足りない気がしたのであと2分。外見は良い感じにこんがり焼けたけど、齧ってみると冷たいハムを巻き込んだせいか内部の焼き上がりがいまひとつ。……今度は325度くらいで焼いてみることにしよう、と今回の復習と今後の対策を考えつつの朝御飯になった。

ここ何回か巻き込んでいたブリーチーズは、白カビチーズ特有のツンとくる匂いが漂う、塩気がちょっと強めのタイプ。それはそれでこっくりした味が良かったけれど、今日巻いてみたモッツァレラはモッツァレラで淡泊のトローンとした具合がとても心地よかった。ハム巻きも、適度な塩っぽさと肉っぽさが良い感じ。ハムクロワッサンなどを売っている店は近所にはないので(オーガニックショップなどで売られているのを見るけど、これがまたおっそろしく高い)、自分の家でこういうのを朝から手軽に食べられるのは嬉しいことだ。

「今度はチョコ巻きかな」
「……いや、チョコが溶けて溢れてきたらチーズ以上の悲劇な光景になりそうかも」
と、次回策をもにゃもにゃ考えながらアツアツのクロワッサンを齧る。ああ、今日も美味しいよ。この手のインスタントものって今まで倦厭していたのだけど、日本で売られていたらばんばん買っちゃいそうだ。クロワッサン6個買うよりも安上がりな感があるし。

Nashville 「China Dragon」の
 牛炒面(Beef Chow Mein)
 宮保鶏(Kan Po Chicken)
 蛋花湯(Egg Drop Soup)
麦茶

だんな、明日が今期最後の試験であるらしい。数日前からせかせかと勉強していたけれど(その割に洞窟探検とか行ってるし……)、いよいよ切羽詰まってきたらしく
「今日は一日研究室におこもりしてくる!」
と出かけていってしまった。

「じゃあ、行ってくる!」
鼻息荒くドアを開けるだんなに
「あ、お昼はねー、チャイナドラゴンが食べたいなー。あそこ、日曜もやってるし……」
と声を掛けると、
「まったくもう……おゆきさんてば……」
と苦笑いしながらもわかったわかったと頷いて出ていった。何時間もぶっ通しで勉強してもはかどるもんじゃないから、一度帰ってきてゆっくりちゃんとしたお昼御飯食べようよという妻の心遣いである。断じて手抜きしたいとかめんどくさいとかいう心もちからじゃないぞー。ホントだぞー。

研究室には、妻子がいるHさん、奥さんがいるMさんなども来ていたらしい。家だと集中して勉強できない人々が週末の研究室に集まってきていたらしかった。1時過ぎ、厚手のクラフト紙の袋に入った料理を持っただんなが帰ってきた。私のリクエストによる宮保鶏(鶏肉のカシューナッツ炒め)、牛肉入りの炒め麺のつもりで頼んだ"牛炒面"、そして卵スープ。んが、事前にメニューを見て「これはきっと焼きそばに相違ない」と思って頼んだ牛炒面は、麺ではなくて、御飯とおかずのセットだった。店のおばちゃんに
「あら、焼きそばが食べたかったの?ごめんなさいねー、よく間違えられちゃうのよ」
と言われたらしい。で、でも、メニューには"炒面"とあり、前回食べた焼きそばは"撈面"とあって、どっちも麺っぽいような気がするんだけど……何故か前者は御飯とおかずのセットなのだった。おやー?

ともあれ、数日前に初めて食べてから、妙に気に入ってしまったこの中華料理のテイクアウト専門店。前回はチャーハンと焼きそばを試しに買っただけだったので、今回は改めて「じゃあ、おかずはどうよ?」と炒め物を食べてみることにしたのだった。メニューには酢豚も載っているが、アメリカ酢豚の恐ろしさを体験してからというもの(甘ったるくてねー、ジャムみたいな甘さでねー……もう吐き気がするような味だったショッピングモール内のファーストフード中華店……)、微妙にトラウマのようになってしまって大好物のはずの酢豚に食指が動かない。で、あまり外れた味にはならないと予想される鶏肉のカシューナッツ炒めを食べてみることにしたのだった。

紙袋の中からは、アルミの深皿に盛られたカシューナッツ炒め。深皿には盛り上がるような形のプラスチック製の蓋がついているのだけれど、その中にぎっっっちりとおかずが詰まっている。蓋を開けるのも困難なら、それ以前に「これ……どうやって詰めたの?」と謎に感じてしまうほどの詰めっぷりだ。この店、紙箱容器に入れてくれる焼きそばや御飯類もぎっちぎちに詰めてくれちゃうのだけれど、おかずも同様らしかった。値段が6ドル前後だったから2人で食べるのに適当な量かなという想像していたのに、これはどう見ても4人分はありそうだ。で、カシューナッツ炒めに付属して大きな紙箱に入れられた御飯が1つ。牛肉の炒め物は比較的小さめなプラスチック容器に入れられ、それには小型の紙箱に入れられた御飯がついてきていた。ああ、これでおかずが5人前、という感じ。この店の料理の分量がまだまだつかめない。

中華料理というと、"回鍋肉の素""八宝菜の素"みたいな化学調味料てんこ盛りの合わせ調味料(しかも粗悪品)で味をつけたようなものが何かと目立ってしまうアメリカ田舎町の中華料理店だけど、この店のはすごくまともな味がする。日本のセロリに比べると格段に風味が強いこちらのセロリがどの料理にも入っているので全体的にセロリ臭が漂いまくってしまっているのだけが難点だけど(セロリは嫌いじゃないけど、どの料理もセロリ臭いとくると、ちょっと……)、それでもかなり安心して食べられる味のものばかり。牛肉炒めも鶏肉炒めも、どちらも期待以上に"ちゃんとした中華"を感じさせてくれるものだった。

……しかし、カシューナッツ炒め、まだまだまだまだ余ってるんだけど……これは夕御飯にも食べることに決定。

だんな特製 麻婆豆腐
鶏肉のカシューナッツ炒め(昼の残り)
羽釜御飯
麦茶

昨日の洞窟探検から帰ってきて、
「あぁあぁ〜……筋肉痛になりそう……」
と呟いてだんなに「やーい、運動不足〜」と高らかに笑われていたのだけど、今日の私は見事なまでの両腿前面筋肉痛だった。平地を歩き続けるのはけっこう大丈夫なんだけど、私は坂道・階段にはすこぶる弱い。踏み台昇降なんて、始めて15秒後に泣きじゃくりたくなってしまうほど苦手だ。今日の私はヨレヨレしていた。

だから、というわけではないのだけど、今日の夕食作成はだんな担当。先日から「そろそろ食べたいな食べたいな」とうずうずしていただんなが、
「よし!日曜の夜は麻婆豆腐!」
と数日前に高らかに宣言していたのだった。我が家の掟"その料理を好きな人がその料理を作るべし"に従い、我が家一番の麻婆豆腐好きであるだんなが鍋をふるう。私は米をセットして御飯を炊く。スープでも作ろうかと思ったけれど、昼の炒め物が大量に残っていることもありパス。

だんなの勉強は、思うようにはかどらないらしい。
「で?一通り終わったけど深く掘り下げられてないってこと?それとも範囲最初からだーっとやってて、まだ最後まで辿り着いていないってこと?」
心配しつつもニヤニヤと聞いてみたところ、
「……両方だ両方!」
と吼えるような返事が返ってきた。「今日はビールは飲まないぞぉー!」といつにないやる気を見せているだんなに感心しつつ、昼に続いての中華な夕御飯を食す。

今日の麻婆豆腐は、甜麪醤が多めな感じの甘いものだった。豆板醤もそれなりに入っているようだけど、「とにかく味噌!!!」という味がする。だんなの好みな、豆腐より肉が多いような、そして汁っぽい麻婆豆腐だった。御飯にかけて食べるのが一番美味しい。本当は、最後に鍋に混ぜ込む刻み長ねぎを、食べ際に散らして食べたら、これがなかなか香ばしくて好みな風味になった。

食事も終わり、残った御飯は明日9時から試験だというだんなの朝御飯にとおにぎりに加工。1個は鮭フレーク入り、1個は佃煮入り。ついでに壷漬けの残りがあったのでラップにくるんでおにぎりと一緒にアルミホイルでくるんでおいた。
勉強を再開しただんなの脇では、最後のおかず一皿を平らげつつある息子がスプーン片手に格闘している。
「おとーさん、べんきょう、たいへんなの?」
「……すっげー、大変」
「だいじょうぶよ?ぼくがついてるからね。だいじょぶだいじょぶ」
「……応援、アリガト……」
がんばれー、がんばれだんなー。