食欲魔人日記 01年11月 第3週
11/12 (月)
アサリのXO醤蒸し (夕御飯)
バナナ
アイスカフェオレ

朝7時、目覚まし時計が鳴っても、だんなも私も起きられなかった。決死の思い、という風情でもってだんながパシリと時計を止め、再び寝に入る。もとより私は目覚ましを止めようともしないまま寝くさっていた。7時半。もにょもにょとだんなが起きて、
「……朝御飯、外で食べるから今は寝る〜」
と呟くと共にまた寝始めた。結局起きたのは8時も過ぎた頃だ。月曜日だというのに、全体的にやる気がない我が家だった。

だんなを送り出した後、おもむろにバナナを囓る朝御飯。
お義母さんの話によると、ここ近辺で木曜日にバナナが特売なのであるらしい。「大きいの、買うのはいいけど食べきれないのよねー」と、毎週木曜日に我が家は"バナナのおすそわけ"をいただいてしまっている。最近、バナナは一度も買ったことがないはずなのにいつでもバナナは常備されている状態なのだった。

バナナの歌なぞ歌いながらバナナを食べる。
「バナナ〜はどーこへ行ったかな♪バナナンバナナンバ〜ナ〜ナン♪」
ま、昨今バナナブームみたいだし(←スマスマの中居くん)。

ツナサンド
ラム酒垂らしホットミルク

お仕事いっぱいの一日、今日はもう一日中モニターの前に張り付いて電磁波と仲良しな一日。
それでも昼にはガツンと蛋白質が食べたくて、ツナ缶詰を開けて刻み玉ねぎを山ほど加えてマヨネーズをにょろにょろと絞りまくり、8枚切り食パン2枚の間にたっぷり挟んでツナサンド。マグカップに牛乳入れてレンジでチンして、あつあつになったところに砂糖放り込んでラム酒垂らして気合い入れ。
「おーしっ、カルシウム補給完了〜!」
と気合いは充実したはずなのに、ホットミルクは"ナイトミルク"の効果があったのか違うのか、なんとも昼寝に良い感じの気分になってきてしまった。眠い。ヤバい。仕事しなきゃいかんのに……ぐー(←で、寝てるんかい!)

アサリのXO醤蒸し
ターツァイのオイスターソース炒め
舞茸とごぼうの吸い物
羽釜御飯
モルツ、よなよなエール、冷茶

中国野菜に「ターツァイ」なるものがあって、これがちょっとばかりほろ苦くてシャキシャキしていて、炒め物にすると超旨いのだ。先日マーケットで売られているそれは50円だった。ほうれん草買うより小松菜買うより安い価格にさっそく1束買ってきた。青梗菜より筋張っていて葉脈が青々としているような、ちょっと面白い青菜だ。
合わせて「ほいじゃ、XO醤蒸しにでもしよう」とアサリも買ってきた。中華な晩飯。

アサリは深さのある皿にどかっと入れて、刻み葱と刻み生姜と刻みにんにくをこれでもかとまんべんなく散らし、上から一瓶ン千円した香港で買ってきたXO醤をスプーンですくってうりゃうりゃとかける。「ああ、スプーン1杯300円くらいかしら」と思いながら。いつもながら使うのに勇気が必要なXO醤だ。でも、たっくさんかけた方が美味しいから容赦なくかける。表面が綺麗に赤く彩られたところで、蒸していく。

ターツァイも、にんにくをたっぷり効かせた方が良いのはわかっている。わかってるけど、そういえば明日はS英社の人と打ち合わせだったよなニンニク臭かったらもう台無し仕事なくなりまぁ大変……とここで思い出してにんにくは抜きで。オイスターソースと塩だけのシンプルな味付けでじゃじゃじゃと炒める。ビールも日本酒も紹興酒も旨そうなおかずになった。ビールを2缶立て続けに消費しつつピリ辛アサリと牡蠣風味ターツァイを堪能。

アサリの器の底には白く濁ったスープが溜まっていて、その上にはXO醤の赤い油が点々と美しく浮いている。殻や身にも金華ハムらしき塊とか干し貝柱らしき塊とか、XO醤ならではの具があちらこちらにこびりついていて、それ全て旨味なり、という感じ。アサリの身をつまんだ後は殻でスープもすくって啜ってみたりして、ピリピリと舌が痺れてくるピリ辛アサリをしゃぶりまくる。塩気がガツンとききすぎるほどきいてしまったターツァイもシャキシャキで良い感じ。

で、よせばいいのに、赤い油の浮くアサリのスープを御飯にぶっかけてまでして喰ってしまった。さすがにしょっぱいし、辛い。でもアサリそのものの味とXO醤の風味と葱と生姜とにんにくと……と渾然一体となった怪しいスープは実に実に美味しかった。……後で喉、渇いたけど。

11/13 (火)
イクラ山盛り飯 (夕御飯)
鯵の干物
舞茸とごぼうの吸い物
卵御飯
抹茶入り玄米茶

昨日、「青木農園の生みたて卵」をもらってしまったのである。昨今、やたらとこのお店の店長さん及び支配人さんと仲良しさんになっているだんなが、「オススメっすよ!」と胡麻油を送ってみたり練り味噌を送ってみたりしていたらしいが、店長さんがお返しにと味噌だの卵だのをお裾分けしてくれてしまったのであった。……わらしべ長者だ……とほくそ笑んだりは……しない。多分。にやにや。

放し飼いにしている鶏が産んだ、20個1000円の卵だ。不味かろうはずがない。
「新鮮なうちに生で食べなきゃねー」
と早速朝から羽釜飯を炊いてみた。鯵の干物に吸い物、卵御飯と揃ったら民宿の朝御飯のようだ。これで納豆と焼き海苔と卵焼きなんかがあったらカンペキ、という感じ。

近所のスーパーにて10個99円などで買ってくる卵は、どうも殻がやわいものが多いといつも思っていたけれど、今日の目の前にある卵はガッチンガッチンに堅固な殻だ。バカッと力強くヒビを入れ、わしっと割る。白身はもちろん美しい2層に分かれ、黄身はプルンプルンと薄い膜の中で黄色く揺れている。いっかにも美味しそうな卵なのだった。実際、美味しい。

黄身に箸を突き立ててもなかなかほぐれてくれないところをなんとかかき混ぜて御飯に落とす。羽釜で炊いたあきたこまちに黄身がピッカピカの卵、塩気がいい感じに効いた干物。
こってりと濃厚な味のする黄身をしっかり味わいつつ噛みしめつつ、気が付いたら朝から御飯2合が異次元(胃次元ともいう)に消え去っていた。食べ過ぎだろう、いくらなんでも。

エクセルシオールカフェの
 アールグレイブレッド
 カフェチョコラータM

今日は出勤日。しかも夜には別件の打ち合わせ。
分厚いジャケットの前をしっかと合わせても、今日はたいそう寒かった。大学へ向かう道中にはエクセルシオールカフェがある。ついつい寄り道、
「さむいよさむいよー、……あ、カフェチョコラータ、ひとつ、Mサイズで」
と注文するついでにアールグレイブレッドも1つぽいと買ってきた。何しろ朝たらふく食べたので、昼は軽くせねばと思う。しばらく腹も空きそうにない。

何も考えずに買ってきてしまったけれど、どうやらチョコレート風味のコーヒーなのであった。ホットチョコレート的甘さを期待して口にしたら、案外と苦くてハニワ顔に。に、苦い……チョコレート風味はするのに、苦い……(←実はブラックコーヒーはちょっと苦手)。

昼はおとなしく、パサパサと床に崩れゆくアールグレイブレッドを食べる。パイ生地とパン生地のあいのこのような乾いたパンはサクサクの層であるのは嬉しいんだけど、どう喰っても床にパサパサと崩壊物が落下していく。しかも上にまぶした粉砂糖まで落下しまくり、床はともかく私の膝までクズクズのコナコナになってしまうのだった。なんか、美味しいとかそういう問題以外のところで色々と大変な昼食であった。

おかーさんのクリームシチュー
おかーさんのイクラ
羽釜御飯
モルツ、冷茶

午後5時から、某出版社の方々と打ち合わせ。「こんな原稿、書いてちょ」と頼まれたのは先月のことで、のほほんと構えていたら「え?表紙に当然せりあさんの名前が入りますよ?」と衝撃の事実を知らされ、慌てまくる。……マジですか???

頭真っ白のままピヨピヨと帰宅すると午後7時半。
息子はだんなの実家にてしっかり夕飯も御馳走になったところだった。
「シチュー作ったのよぉ。持って帰るぅ〜?」
とのお義母さんの言葉に一も二もなく頷いて(今晩は宅配ピザ覚悟だった)、タッパーにたっぷりとシチューをいただいてきた。更に
「イクラも作ったのよぉ。持って帰るぅ〜?」
とこちらはイクラのどんぶりごと貰ってきてしまった。しかしお義母さん、シチューとイクラという組合せはいかがでしょうか。

いかがでしょうか……と言いつつ、結局シチューとイクラの夕御飯。海鮮シチューだと思えば違和感がない……かもしれない。
速攻で羽釜で御飯を炊きまくり、シチューを温めイクラと共にテーブルへ。シチューの器と御飯茶碗だけ、中央にイクラ、という殺風景な食卓ではあったけど、あったかいシチューも炊きたての御飯も、空腹にはこれ以上ない御馳走だった。何しろ、ホントのホントに羽釜御飯がヤバイ。普通だったらせいぜいお代わり1杯で終わるはずの御飯が、羽釜になると再現なく食べられてしまう。おかずはもう、正直なところなんでもいい。胡麻塩でも塩昆布でもふりかけ1袋でもいい。そんな感じ。

3合炊いた御飯はさすがに今日はちょっと余ってしまい、「……冷凍しなきゃ」と皿洗い後におひつの蓋を開けた途端、一粒一粒がピカッとしているその御飯を見ていたらムラムラといけない感情が沸き上がってしまった。う、うまそうだ。実は2.5膳ばかり御飯を食した後だけど、でも、旨そうだ。しゃもじですくった御飯をラップの上に落とすはずだったのに、そのまましゃもじは斜め上にスライドし、私の口元にやってくる。あ、ダメ、やめて私の右腕!……食べてしまった。ああああああ(泣)

11/14 (水)
今日は、鴨鍋♪ (夕御飯)
冷凍もんの海老ピラフ
うどんですかい
冷茶

よっぽどの事がなければ「明日の朝は○○を食べよう」と前の晩からうきうきと準備していたりするのだけれど、今日はどうやら「よっぽど」な日であったらしい。昨夜、な〜んにも考えずに準備もせずに寝てしまったので、御飯もパンも何もない朝になってしまった。こういう時には、冷凍ピラフ。「何もないから冷凍ピラフ」というシチュエーションは、ちょっとばかり虚しさがただよう。冷凍ピラフは嫌いじゃないだけに、何となく冷凍ピラフに申し訳なく思ってしまう。

ピラフのお供のスープ代わりにと用意したのがカップ麺。朝からやたらとヘビィな食卓だ。一応ミニカップとはいえ、ピラフに添えるのがカップ麺だなんて、私らは食べ盛りの高校生ででもあるのだろうか。とほほ。

いくら丼
冷茶

今日も一日お仕事で(というか多分12月に入るまでずっとお仕事で……ヒー)、昼には一瞬立ち上がって冷凍御飯を電子レンジに突っ込み、5分するまで仕事を続け、御飯がアツアツになったところで茶碗にどかっと放り込み冷蔵庫からイクラを取り出し山盛り乗せて食べるだけ、という10分昼食とあいなった。なんとなく虚しくなったので、せめてもと、刻み海苔でもかけてみる。更に切なくなったので、デザートにと冷蔵庫秘蔵のヨーグルトなど食ってみた。あ。そういえば棚の上にミニチョコが……ああっ、麦チョコなんかもあったりなんかして……(←デザート超過の模様)。

鴨鍋
 (鴨・春菊・せり・椎茸・長ねぎ・豆腐・白滝)
羽釜御飯
よなよなエール・冷茶・焙じ茶

先日、250gほど入って480円などという素敵な値段の合鴨肉が売られていた。
「鴨じゃ鴨じゃ!」
「鴨鍋するじゃ!」
と喜び勇んで2パックほど買ってきた。500gの鴨肉で本日は鴨鍋。ちょっと豪勢で嬉しい。

実は鴨鍋をするのは初めてだったりして、良くわからない。調べてみたところ、だしと醤油と味醂の甘辛い割り下を作っておいて、そこで煮てそのまま喰うものらしい。酒と味醂を煮切ったところに薄口醤油と濃口醤油を投入し、鰹節と昆布のだし汁の中にちろちろと流して味つけしてみた。
具は、参考にしたサイトのとおり(……って、今確認したら調理師学校のページだった。ほほー)、春菊やせり、椎茸なんかを買ってきた。我が家、初鴨鍋。

「やっぱり葱はクタクタに煮た方が美味しいし〜」
「椎茸もやっぱりクタクタがいいし〜」
などと言いながら、だんなと一緒にぽいぽいと具材を鍋に放り込んでいく。「おそば!おそばたべるのよー」と息子が言うので「いや、それはおそばじゃなくて、しらたき……」と一応教えつつ"おそば"も鍋に放り込む。最後に上にヒラヒラと分厚い脂の層のある合鴨肉を並べていく。色が変わって煮えたところで香りの強い野菜を噛みしめつつ鴨の肉汁を堪能する。水炊きとか鶏団子鍋も美味しいけど、鴨鍋はまた格別だ。美味しい……♪

茶色く煮えまくった豆腐も愛しいし、ぐずぐずに鍋中に散らばってしまう白滝も悪くない。菊の葉独特の青臭い匂いが口の中にもやんと漂う春菊も捨てがたいし、シャキシャキととんがった味のせりもまた鴨に良く似合う。椎茸も、必死こいて十字に切り込みを入れた自分を誉めてあげつつ、味の染みたところを食べる。

汁がだんだん煮詰まって、最後の方にはすっかり鴨せいろのスープのようになってくる。表面に"脂が浮いている"というよりは"脂の層ができあがっている"という状態で、火を止めた途端に膜を張り始める盛大な脂のギトギト感も楽しく思いながら、最後は御飯につゆをぶっかけて食べた。食後も何だか口の中がニカニカテカテカする感じ。鴨喰ったぞー(いや、合鴨だけどそこはそれ)、という充実感でなんともシアワセな気分になっちゃったのだった。
食後のほうじ茶が美味しいです。ずるずる。

11/15 (木)
イワシの刺身 (夕御飯)
サンジェルマンの
 モンブランデニッシュ
 コーンパン
カフェオレ

「イカ焼きパン、買ってきたのー」
そう伝えると、寝起きのだんながハニワ顔になった。だんなはイカ焼きが好物だ。
大阪に行ったときには「デラバン、デラバン♪」とデラバンを連呼して旨そうにそれを喰っていた。だから、パン屋で「新発売:イカ焼きパン」の文字を見たときに「これだ!」……と思って買ってきたのだけれど、だんなはいまひとつ感動してくれない。

「イカ焼きパン?……もしかして、こう、うすべったくて、"デラパン"といかいう名前だったりして……」
「ちがうよー、イカ焼きパン、だよー」
だんなのハニワ顔はしばらく直らなかった。イカ焼きが好きだからと言ってイカ焼きパンが好きだとは限らない。確かに私もモンブランは大好物だけれどもモンブラン丼なんかは食べたくない。そういうものなのだろう、きっと。

丸っこいロールパン状の生地の真ん中に、イカ団子が入ったイカ焼きパン。中央には青海苔だの紅生姜だのもトッピングされている。先ほどから、一向にだんなにハニワ顔は直らない。口にしたあとも、「へんだよ、これー」と泣きそうな顔になっていた。
「もう買ってこないでね。これだったら焼きそばパンの方が好きだからね、僕」
と言われてしまった。今回の妻セレクションは大失敗だった模様だ。

私はというと、マロンペーストがてんこもりになったモンブランデニッシュと、好物のコーンパン。もちもちしたコーンパンは、まんま「Johan」のヒット商品 のパクリのような品物のような気がしないでもないけれども、美味しいので気にしない。

「い和田」のお弁当
 栗ごはん
 鮭の塩焼き
 炒めスパゲッティ
 スコッチエッグ
 きゅうりとワカメのわさび酢味噌和え
 根菜の炊き合わせ
 がんもどき
 海老シュウマイ
 漬け物
しみじみ緑茶

今日はおにぎり屋に行こう、懐に余裕があったらフォアグラ丼を食べるのだ、そう思いつつ出勤。いつものお弁当屋の前を通ると
「本日のお弁当 旬の栗御飯」
なんて書いてあって、その場足踏みを5秒ほどした挙げ句、その弁当を買ってきてしまった。ボリュームたっぷり、肉あり魚あり野菜ありで560円。お得なお弁当だ。

今日も、おかずの蓋を開けるとえらいことになっていた。目に入るのは半割にしたゆで卵がごろんとこちらを向いているスコッチエッグ。ゆで卵のまわりにハンバーグの具をつけて揚げる、子供も好きそうな料理だ。その巨大なスコッチエッグがどかんと盛られている。その下には、にんじんや玉ねぎ入りの炒めスパゲッティ。

鮭のグリルがあったり、がんもどきがあるかと思うとその横にはふわふわとした浮粉の中華チックな海老シュウマイがあったり、今日の弁当はどことなく国籍バラバラ。牛肉らしきヒラヒラ肉がはいった大根や里芋、蓮根やにんじんの炊き合わせが一番栗御飯には似合っていた。

しっかし、いつもちょっとボリュームが多すぎるように感じるお弁当ではある。御飯なんか、茶碗大盛り2杯分はあるんじゃないかという感じ。最初から盛られて販売されるから「あ、御飯軽めで」と伝えることもできなくて、いつもちょっとだけ満腹に過ぎる。でも自分で買ったものを残す気分には到底なれない。
以前読んだダイエット本の
「カツ丼:お肉の衣は剥がしましょう・御飯は1/3、残しましょう」
という記述が頭に蘇ってきた。んな、衣剥がしてカツ食べるくらいならカツ丼なんて喰わなきゃいいのだ。お弁当だって、多すぎると思ったらおにぎりにしておけばいいのだ。でも、買っちゃったものはやっぱり食べなきゃ。

そして今日も満腹に。研究室は今日から暖房が入って、昼寝にとても気持ちよさそうな気温なのだ。ちょっと危険な午後の仕事だった。

いわしの刺身
大根の味噌汁
羽釜御飯
モルツ、冷茶

6時半帰宅、でも帰宅後もこの仕事とあの仕事があってバタバタしている時に、いわし16尾がクール宅急便にてやってきた。だんなが「いわしぃぃぃぃ」と騒いで昨日注文したやつだ。
このイワシ、「どっちの料理ショー」の「特選素材」で紹介されたところのものということもあって、思わず注文しちゃったらしい。で、でも、私は仕事が……だんなは帰ってこないし。

悶々といわしを気にしつつ仕事を続け、だんなが帰ってきたのは午後9時半。こっちも食事の支度どころじゃなかったもので、午後10時を前にして夫婦並んで御飯炊いたり魚さばいたりと、何だか壮絶なことになった。16尾のいわしの頭を落としワタを出し、いつのまにか周囲は血みどろスプラッタになっている。頭にいわしの頭がごろんと転がっていたり、私の左腕は返り血で何だか犯罪を犯してきたような様相になっている。すごい。

頭とワタを出した半量は明日のつみれ鍋用にと冷蔵庫に放り込み、残りは刺身にして喰うことにした。小骨がプツプツと細い細いイワシなもので、
「抜くのめんどくさいからこのまま食べちゃえ〜」
と。更にウロコも綺麗に取れて、皮を剥ぐという状態でもなかったので
「剥ぐのめんどくさいからこのまま食べちゃえ〜」
と。なんだか船の上の料理料理よりも豪快なものになってしまった。小骨ありありのいわしを前に、ビールと御飯をがふがふといく。

骨は全く気にならないというほど気にならなくはなかったけれど、新鮮でムチムチしている生のいわしは美味しかった。薄紅色の身が皮のテカリにも負けずにキラキラと光っている。脂の乗った、どことなくブリにも似たこってりした身が空腹にしみじみ美味しかった。
いっそいで準備して片付けもせずに食べたものだから、食後気が付けば、台所がまだスプラッタ……時刻は午後11時。あらまぁ〜。

11/16 (金)
Cucina Tokionese Cozima(南青山)にて「渡り蟹のリングイネ」 (昼御飯)
だんな特製タマゴ炒飯
大根の味噌汁
冷茶

最近、何かといっぱいいっぱいな私は、息子の保育園送迎すらめんどくさい今日この頃だった。
「だんなー、保育園、代わりに行ってくれない〜?」
と昨日ねだると、
「いーよー」
と二つ返事のまま、「ついでにちょっと遅れていくことにしよう、うんうん」と急遽のんびり出勤になってしまった。良いのか、悪いのか。

朝8時、遅めに起きた後、だんなが中華鍋をふるって炒飯を作ってくれた。卵と葱だけのシンプル炒飯、昨日の味噌汁に冷たいお茶。胡麻油がふわっと効いた炒飯は朝から食べるにはちょっとコッテリ系だったけれども体力がみなぎってくる。身体もあったまるし。

南青山 Cucina Tokionese Cozimaにて
ランチコース+パスタで3200円也
 生牡蠣の岩海苔入り海水ゼリー ゆず風味
 渡り蟹のリングイネッテ
 エゾ鹿の赤ワイン煮
 リンゴのタルト バニラジェラート添え
 エスプレッソ
 グラス赤ワイン

本日は、お仕事のお話ついでにお昼御飯。(いや、昼御飯のついでにお仕事話、というか)

午後1時半、食べ終わった頃には他のお客さんはほとんどはけているだろう時間を狙って予約を入れてもらい、一人電車に揺られてでかけていった。平日のお昼は前菜(かスープ)、メイン(魚か肉か、あるいはパスタ)、一皿もののドルチェとコーヒーで2500円。この味このサービスで2500円はすごくお得だと思う。700円プラスするとパスタを別途、つけてくれる。

「本日の前菜は生牡蠣の岩海苔ゼリーで……」
の声に首をぶんぶんと縦にふり、
「お肉はエゾ鹿を赤ワイン煮にしたもので……」
に眼を輝かせ、
「パスタは……そう、渡り蟹のリングイネッテなどができます」
の提案に一も二もなく頷いた。一人昼飯、超豪華。

「生牡蠣の前菜」と聞いて、牡蠣1個に色々とトッピングされているものかと思ったら、ごろんごろんと3つも4つも5つも牡蠣が皿の中でプルプルと揺れている。ふわふわの岩海苔がたっぷりかかり、それとは別にゆるいゼリーも和えられる。ぱらぱらっと柚子の皮。海の味のする牡蠣は程良い酸味で柚子の芳香がまとわりついて、イタリアンというよりも懐石料理か何かのようだった。牡蠣1つ1つがブリブリと詰まっていて、これだけでワイン半分開けてしまいたくなる感じ。食後に話をしなきゃいけないし、とここは水でぐっと我慢。

続いて、フィンガーボールと殻用の皿と共に渡り蟹のリングイネッテ。蟹1匹をバリバリと割ったものが殻ごと身ごとソースになってパスタに絡んでいる。赤い殻の中にはまだ身がびっちり詰まっていて、足やハサミにはしっかり包丁で切り目も入り、食べられるようになっている。左手でわっしと殻をつかみ、右手のフォークでがさがさと身をほじくりつつ、パスタに絡めて一緒に食べる。オイル多めのパスタがこってりと白い身に絡んで、これまた酒が美味しく飲めそうな……(←最近すっかり飲んべえ)。

一人皿を前にわしわし食べていても、この店だったら見知った顔のスタッフも多いことで何かと話し相手になってくれる。「インターネット、楽しいっすよー」という話をしたり、「最近羽釜にはまっててー」という話をしたり。
地階と1階に別れているこの店の、今日は珍しく1階で食事をしていた。どうやらもう客は1組も残っていないらしい。次なるメイン料理、料理長のKさんがとてとてと階段を上って皿を持ってきてくれた。「こちら、鹿肉の赤ワイン煮ですね」とテーブルに皿をおくやいなや、
「あ、お酒、ワイン、飲まれますか?ちょっとだけ……ねぇ?」
と踵を返すとグラスと赤ワイン1本持って戻ってきた。「さささ、どうぞ」とグラスにたっぷり赤ワインを注いで
「あ、どうぞお代わりも」
と瓶ごとワインを置いていった。一人ワインの瓶を抱えて鹿肉を食べる午後2時の女一人。かなり怪しい光景になった。

赤ワインのあの渋めの葡萄の香りがまだふわんと漂ってくる、香りで酔っぱらってしまいそうな濃厚なシチュー状に煮込まれた鹿肉。ほろんほろんに柔らかいけれど、ケダモノの風味も漂ってきた。ワインの効果で和らいではいるけれどそれでもしっかりケダモノだ。レンコンや赤かぶ、小玉ねぎとポレンタの添え物が肉を飾るように美しく周囲に配されている。このまま太めの手打ちパスタにぶっかけて絡めたり、いやいや白い御飯にぶっかけて食べても相当美味しいだろう料理だった。甘さはほとんどない、こってりはしていないけど濃厚な大人の味。ワイン、もう一杯飲もうかなぁと瓶を見つめて数秒考え、酔っぱらったら元も子もないから止めておいた。

ドルチェは、リンゴのタルトにシナモンをふり、バニラビーンズどっさりのジェラートを添えたもの。ジェラートの上からはカラメルが糸状に飾られている。確か去年の真冬にはあっつあつのアップルパイにジェラートを添えたデザートがあった。あのサクサクのパイに冷たいジェラートのドルチェもめっちゃめちゃ美味しかったけど、しっとり系の冷たいタルトにジェラートというのも悪くない。
昼から肉やら牡蠣やらパスタやら、かなりしっかり食してしまった。久しぶりに充実したお昼御飯で超満足だ。

午後2時半、今日の本題だったはずの相談事をお店の人に持ちかけてみた。二つ返事で引き受けてもらい、ここ数日考えまくっていた懸案事項の荷がスッと軽くなる。良かった良かった。万歳。

いわしのつみれ鍋
 (つみれ・白菜・水菜・長ねぎ・豆腐)
羽釜御飯
よなよなエール、「黒帯」98年山廃純米、冷茶

昨日届いた新鮮な16尾のいわし、今日は残りをつみれにすることに。
なんでも「新鮮なものをこそつみれにして鍋で食すのが超贅沢」という格言があるらしい。(ありません)

我が家には、数ヶ月前に買ったムーランがある。ザルを円錐型にとんがらせた形の漉し器を"シノワ"と言うけど、そのシノワにハンドルつけてぐりぐり手動で漉し作業を簡便にできるようにしたやつが"ムーラン"だ。ビーフシチューとか水炊きスープ作りとかに便利だろうなぁと思って買ってしまった。買ったからには使わなければならぬ。フードプロセッサーもあるけれど、今日はムーランにてつみれ作り。

頭とワタと中骨を取ったいわしをぶつ切りにして放り込み、ムーランでぐりぐりとすり身にしていく。底から出てくる挽肉状のものはしっかり細かくなっていて、しかも空気を含んでムースのようにふわふわしている。たっぷりの生姜と味噌、小麦粉を混ぜ込んで団子にしては鰹節のだしに放り込んで煮ていく。他の具は白菜、水菜、長ねぎ、豆腐。

実は、私は魚の練り物があまり好きではなく、特におでんに入る"つみれ"(茶褐色でぷよぷよしていて黒胡麻が点々と入っているヤツ)ときたら、ほろ苦いし、なんか臭いし味気ないし、アレが入っているだけでおでんが嫌いになってしまったような、とにかく苦手なシロモノだった。目の前のいわしのつみれも、似たような外見なのだ。
「昨日の刺身は美味しかったけど、つみれも美味しいものかなぁ……」
と疑い半分に食べてみた。魚のつみれ鍋は、初めてだ。

これが、これが、これが。
ふわふわでホロホロで、生臭さなんかは全然なくて、生で食べるのとはまた違う新鮮な魚の香りと味がして、だしはどんどん魚の旨味を溶かして美味しくなっていく一方で、「ごめんなさい鰯さま、疑ってしまって申し訳ありません」と平身低頭してしまいたくなるほど旨かった。肉喰いの私が「あ、これなら鶏団子鍋より好きかも」と思ってしまうくらい、美味しかった。一緒に潰した小骨も何もかも、少しも舌に感じられない。ひたすらふわふわでホロホロだった。んもぅ、ビールと日本酒が進む進む。あれだけ魅惑されている羽釜御飯を食べることも忘れてひたすら猪口と傾けつつハフハフと鍋の前に張り付いてしまった。超、シアワセだ。

……で、夜10時からの夕食はだらだらと午後11時を回り、そして現在午前0時を前にして
「お風呂どうするー?」
「んー?」
とだらしない会話をしているのであった。いかんなぁ……。

11/17 (土)
牛角(稲毛)にて「もなかアイス」 (夕御飯)
いわしのつみれ鍋の、残り
いくら
御飯
冷茶

のんびり寝坊の土曜日、土鍋には昨夜のつみれ鍋がまだちょっと残っていた。団子5個ばかりと野菜が少々煮えたまま鍋の底に沈んでいて、それを温め直して家族で分け合いつつ、食す。御飯の残りも電子レンジで温めて、ついでにお義母さんからお裾分けしてもらったいくらの残りも食卓に出した。

私にとって「いくら」というものは"買う"ものであって"作る"ものではなかったのだけど、だんなの実家ではずっといくらは"作る"ものであったのだそうな。筋子を買ってきて、ぬるま湯をかけるか浸すかしながら粒に分け、醤油と酒で漬け込んでいくらにするらしい。そもそも筋子といくらの原料(と言って良いのか悪いのか)が同じものだということを知らなかった新婚当初の私はめっちゃめちゃ驚いた。「え!?、いくらって、いくらの状態になっているのを買ってくるんじゃないの!?マジマジ?!」と。だって、筋子は筋子でそのまま御飯に乗せて食べるものであったから。

お義母さんが作ったいくらは、買ってくるものよりも塩気が少なくてほんのり日本酒の味なぞして、でもちゃんといくらの味だった。御飯の上に山盛りかけて食べると超旨い。朝からはぐはぐと、家族全員お代わりして食べる白い御飯。

千葉そごう内「天一」にて
 サービスセット
 (天ぷら盛り合わせ・茶碗蒸し・サラダ・しじみ汁・御飯・漬物)

「でんしゃ、のるよー」
と昨日から何故か息子が大騒ぎしていた。
「でんしゃのって、ねー」
「乗って、どこ行くの?」
「でんしゃのって、でんしゃにいくのー」
……それは総武線に乗って秋葉原まで行き、「交通博物館」へ行けということだろうか。息子にとっては手段も目的地も同じものであるらしかった。

で、息子のリクエストに応じて電車に乗って出かけることにする。ただし数駅先の千葉だけど。
現在欲しくてたまらないカラープリンターを物色し、本屋を歩き、午後2時になって腹が空いた。「何だか和食の気分でござるー」「天ぷらとか、食べたいでござるー」と、とりあえず入ったデパートの中の飲食店街をぷらぷらする。「天一」発見、入ることにした。

だんなは天丼、私は定食。さくさくっと揚がった海老だのイカだのししとうだの蓮根だのカボチャだのは、思っていたよりもよほど美味しく、こっくり濃いめの味付けの天丼をだんなから奪って食しつつ、私のについてきた茶碗蒸しもあげつつ食事。肉も買って野菜も買って、明日は煮込んだラグーの手打ちパスタにする予定。

稲毛 牛角にて
 おぼろ豆腐の牛角風冷奴
 にんにくホイル焼き
 ねぎ舌塩
 塩ダレカルビ×2
 熟成ハラミ(タレ)×2
 けむり焼き(塩ダレ)×2
 サンチュ
 御飯(小)
   特選厚切り上タン
 ビビンバ(ハーフ)
 石鍋ゴマネギラーメン
 白玉deきなこアイス
 もなかアイス(バニラ)
 生ビール×3
 生グレープフルーツサワー
 コカコーラ
 ……を家族3人でばくばくと。
 

サイコロステーキ肉が安かったので、買ってきてみたのではある。
だが、午後4時に帰宅してからだんなと息子が長い昼寝に突入し、私も買ってきた本など真剣に読みまくり、気が付いたら午後7時半を回ってしまっていた。今から夕食の準備をするやる気もあまりなく、サイコロステーキ肉には冷蔵庫で眠っていていただいて、「焼き肉じゃー」「割引券持って行くじゃー」と、数百円の割引チケットを握りしめて御近所焼き肉屋「牛角」へ向かう。そこそこ安く、そこそこ美味しい。御飯ものとかデザート類が充実しているのがまたちょっと嬉しい店だ。

座るなり
「あ、生中2つとコカコーラ1つ」
「ネギタン塩と、カルビ塩2つ、ハラミタレ2つ、けむり焼きは塩で2つに……」
「あ、サンチュと御飯の小さいのもお願いします」
と流れるように注文する。最初から700gの肉を頼んでどうするのだ。

アルミホイルで作られた皿に乗った、オイルに浸ったにんにくは網の隅でじくじくと焼きつつ、まずはタン。最近は「片面焼き」がマイブーム。肉をぺろっと網に乗せ、上面の周囲がチリチリと焼けて肉汁がぶわっと染み出た頃、表面はうっすら綺麗なピンク色のままの状態で葱をくるんでレモンを絞ってぱくりといく。焼き面はこんがりと焼き目がしっかりついていて、上面はうっすら生焼け。それが妙に美味しくて最近はまってしまっているのであった。最初のタン塩&ビールだけはどうしても外せない。

今日は塩ダレものを多めに注文したので、やたらと肉が進む。タン用についてきたものが残った葱とレモンをカルビや豚肉にもしっかりまぶしつつ食べると、いくらでも入りそうだ。カルビもハラミも豚肉も平行して一気に6皿食べすすみ、
「あとは、御飯ものとー」
「何か、肉一皿って感じぃ〜?」
と、最後の厚切りタンを噛み締めつつビビンバとラーメンを分け合いつつ食べた。息子も「おそば、たべるよー」「おにく、食べるよー」と果敢に焼き肉屋を堪能した模様だ。

最後はしっかりデザートも。最中の皮1つにあんこと白玉、もう1つにバニラアイスが乗ってきたやつを自分でバカッととじ合わせて食べる「もなかアイス」と、きなこアイスに黒蜜がかかって白玉がくっついてくる「白玉deきなこアイス」を注文してみた。
パリパリサクサクと乾いた皮にあんことアイスが挟まるやつも美味しかったけど、きなこアイスに黒蜜かかっているやつが、まんま信玄餅の味がしてこれが笑えた。バニラアイスの口当たりなのに、味はまんま信玄餅だ。
「ふへ、ふへへへ……これ、これ、信玄餅まんまな味〜」
「どれどれ。……あー、ホントだー、うへへへへ」
とアルコール分も回ってしっかりへべれけな様相の私たちだった。あとは帰って風呂して寝るだけ。ちょっと幸せな土曜日。

会計の時、直前に支払っていたカップルの金額が我らの支払いの半額以下だったことは、あまり考えないようにしよう。

11/18 (日)
手打ちタリアテッレ、ミルクで煮込んだラグーソース (夕御飯)
アンデルセンの
 クリームチーズデニッシュ
 ほうれん草とベーコンのカルツォーネ
カフェオレ

今日は良い天気。朝から3回洗濯機を回しまくり、布団も干し、清々しい気分で朝御飯。身体がなんとなくにんにく臭いのは……気にしないでおこう(※昨夜は焼き肉……)。

パン屋"アンデルセン"には、キッシュだとかカルツォーネだとか、「それってパンじゃなくておかずって感じ……」なブツも多く売られている。昨日、うきうきとだんなはキッシュ、私はカルツォーネを買ってきた。それと甘いデニッシュとかソーセージがパンにくるまれたフランクロールだとか。

オーブンで中までじっくり温めたカルツォーネとキッシュ、中身は両方ほうれん草とベーコンだ。カルツォーネは香りの強いチーズがたっぷりと挟まっていて、キッシュは卵たっぷりの茶碗蒸しのようなプルプルの生地。どちらもコーヒーに似合ってそれぞれ旨かった。

だんな特製親子丼
冷茶

昨日あたりから無性に醤油と味醂がコテコテに効いた丼ものが食べたくてしょうがないのである。昨日の昼は、そう思いつつ天ぷら定食なぞ食べてしまった。今日こそは丼を、丼を食わねばならぬ。

「おゆきさーん、お昼御飯、どうするー?」
とのんびり問いかけてきただんなに
「……親子丼。羽釜で炊いた御飯に、旨い卵使って、三つ葉ぶわーっと乗せて、親子丼。親子丼。親子丼」
と親子丼を連呼したところ、鶏肉を買いに行ってくれた。私は家でお仕事。ありがとう、だんな。

「桃屋のつゆ使っていいですかー?」
と台所からパソコン前に私に問いかけてくるだんなに
「却下ぁ〜。醤油と味醂で、だしは顆粒の使ってもそっちのが美味しいよー」
とぺけぺけとキーボードを打ちながら返す。私は何もやらない。ひどい妻だ。

羽釜で炊いた御飯に、一人分ずつだんなが作ってくれた親子丼。鶏は柔らかく煮えていて卵は半熟、こっくり濃いめの味付けもばっちりな、かつてなく上出来な親子丼だった。そうそう、こういうのが食べたかったのだ。醤油と味醂とだんなに感謝。

確か
「軽めの丼でいいよ、うん、軽めの」
とか言っていたにも関わらず大きなどんぶりによそった御飯をぺろりと平らげ、あまりに美味しくて息子が食べ残したものまでぺろりと喰ってしまった。……全然、軽くない。

手打ちタリアテッレ、ミルクで煮込んだラグーソース
フランスパン
モルツ、アイスカフェオレ

午後は、仕事しながら手打ちパスタに取りかかる。「こてっこてのラグーが食べたいの」と昨日豚肉と牛肉を買ってきた。パスタ生地を寝かしている間に平行してソース作りしつつ晩飯の準備。

強力粉とデュラムセモリナ粉、卵と塩とオリーブ油を混ぜ合わせてこねこねこねこねと練っていく。15分こねたら30分休ませて、その後5分こねたら30分やすませて5分こねたら30分休ませて……と何度か繰り返して滑らかな黄色いパスタ生地を作っていく。手首と手のひらの境目あたり、一番体重が乗るところを使ってぎゅうぎゅうをこねていたら、筋でも違えたのか左腕がビキッと攣ったように動かなくなってしまった。……痛い。

そこからは、だんなにパスタ生地作成を代わってもらい、私はソース作りに専念。玉ねぎとセロリとにんじん、粗く刻んだやつをオリーブ油で炒めてサイコロ状に切った豚肩ロース肉と牛バラ肉を投入。白ワインと牛乳を同量注ぎ、缶詰のホールトマトをぶちこんで、あとは水をひたひたまで加えてひたすら煮ていく。ちょっと弱めの中火くらいにして蓋をしておくと、適当に水分を減らしながらぐつぐつと煮えていってくれる。30分毎に鍋を覗き込んでは「ふへへへへ」とニヤけつつ、煮込むこと2時間ほど。水分も肉も野菜もいっしょくたになった煮込みは、見事な油の層もできている。いかにも"煮えました"という光景に「煮えた、煮えたよー」とパスタも完成型にこしらえていく。

ちょっと平たくした生地をパスタマシーンに何度か通して薄っぺらい滑らかな生地にしていき、適度な厚さになったところでカッターに通していく。幅6mmの平麺"タリアテッレ"ができた。ちぎれもしない、滑らかなパスタ生地はこれまでで一番良い出来かもしれなくて、しかも茹で加減もばっちりで、更にソースも想像通りの素晴らしき出来映えだった。手打ちパスタにはソースものが良く絡む。肉の煮込みなんかは相性ばっちりなのだと聞いた。

茹でたてのパスタを皿に盛り、肉がごろごろとまだ塊部分もある柔らかい煮込みをどばっとぶっかける。上にパルミジャーノ・レッジャーノのおろしたやつを添えて、いただきます。もう、サラダだのスープだのを作る余裕は全然なく、パスタだけをわしわしと食べる。それでも満足。

赤ワインもケチャップも入れておらず、トマトの分量も少なめのラグーはミートソースとはまた違った味がした。牛乳を入れた風味はほとんど残ってはいなかったけど、白ワインと牛乳で煮込んだからなのか、後味が赤ワインのものほどくどくない。本で見たとおり牛肉と豚肉を両方使ってみたけれど、両方使ったメリットはいまひとつわからなく、それでも分別つかないホロホロの肉は美味しかった。大人の味のラグーのパスタ。

フランスパンも用意して、皿に残ったソースをぺたくたとパンに吸わせつつぺろりと食べた。見ると息子も顔と手を赤茶色に染めながらパンと麺に格闘している。おお、肉も喰ってる。
「お、喰ってるね、美味しい?」
と聞くと、
「うん、おそば、おいしーよー」
と返ってきた。そういえば、彼好みの甘めのカレーライスとかじゃがいものコロッケなんてものは我が家の食卓には滅多に登場しなくて、申し訳ないなと思う。やたらとスパイスの効いたココナッツミルクのカレーだとか、ワインの味の煮込みスパゲッティなんて、3歳児の味覚にはちょっと過酷じゃないかと思いつつ……そうか、旨いか、良かった良かった。(←反省の色なし)