食欲魔人日記 09年09月 第3週
9月14日 月曜日
ニューオーリンズの名物料理、ガンボ。
ミルキースティック
炒めウィンナーと目玉焼き

アイスカフェオレ

昨日、スーパープラプラして「朝御飯はどうしよう」とパン売り場を見ていた。食パンだったらちゃんとパン屋さんで買った方が美味しいし、こう、スーパーで買えるパンならではの感じのものがないかしらと棚を見ていたら、ペコちゃんのイラストの袋に入った「ミルキースティック」なる魅惑的なパンを発見。ドッグパンを2まわりくらい細くしたスティック状のパンで、少しトーストするとそこら中に甘い香りが広がった。
 
同じく昨日買ってきたウィンナーを軽く炒めて、目玉焼きも用意して、ミルキー風味のパンと一緒に朝御飯。
 
香りは良かったのだけれど、さすが大手メーカー製という感じか、食感の方はパサパサとちょっと物足りない感じだったのが残念。「ミルキー」の名がつくと、ソフトクリームだろうがパンだろうがキャラメルだろうがときめいてしまう自分をなんとかしたい。

茹でとうもろこし
茄子とズッキーニのマリネ
鶏とソーセージのガンボ
羽釜御飯
アイスプーアル茶

先日、安売りされていたオクラを調子に乗って3袋も買ってしまった。オクラを見て思い出すのは「ガンボ」。今日はそのオクラを使って、夕方早めの時間からガンボの仕込みをしていた。
 
「ガンボ」は、アフリカの方の言葉で「オクラ」そのものを指す言葉なのだとか。刻んだオクラがたっぷり入り、そのオクラと小麦粉のルウでとろみをつけた茶色い具沢山のスープは南部アメリカのニューオーリンズの名物料理。テネシー州に住んでいた時は、ごくあたりまえのようにステーキハウスやパンケーキ屋さんで
「今日の日替わりスープはガンボよー」
とメニューに登場していた。
 
ステーキハウスなどで「本日のスープ」として出されるガンボは、クラムチャウダーやらコーンチャウダーやらと同じようにクラッカーを砕いて散らして普通にスープとして食べるのが常だったけれど、本場ニューオーリンズのお店で食べた単品メニューのガンボは、スープ皿によそわれたガンボの真ん中、こんもりと島のように御飯が盛られていた。
 
御飯と一緒に食べるのもスタンダードな食べ方なのだそうで、私とだんなは初めてそれを見て
「これは我が国では雑炊って言うね」
「韓国ではクッパって言うかもね?」
などと話しながらおっかなびっくりスプーンをのばしたのだった。実際は、かなりとろみのあるスープだから、雑炊やクッパというより単に「シチューかけ御飯」という表現の方が近い料理だったかも。
 
ビーフシチューなどとは風味の違う、ちょっと得体のしれない褐色のスープに野菜や魚介や鶏肉が入り、そしてほのかにハーブの香りと胡椒の刺激が感じられる煮込み料理は、でも不思議と懐かしいような味もした。オクラそのものはさほど好物というわけではないのに、ガンボスープは素敵だわ気に入ったわと、ニューオーリンズ旅行の際に老舗レストラン「GUMBO SHOP」のレシピブックをお土産に買ってきたのだった。
 
で、そのレシピを見ながらガンボ作り。
 
刻んだオクラはサラダ油で数十分炒める。目安は実から種が外れて全体がクタクタになるあたりまで。平行して、鶏肉(できればスープが出るので骨つき)を大鍋で煮てスープを取っておく。
 
そして煮込み鍋を火にかけて、サラダ油と小麦粉を入れ、木べらでかき混ぜながらじっくりじっくり「ブラウンルウ」を作っていく。ベシャメルソースを作る時はバターで小麦粉炒めて、「焦がさないように」が鉄則だけれど、こちらのルウはかき混ぜつつどんどん茶色く色づけしていく。水分がかなり飛んでもったりした外見になる頃には、綺麗なチョコレート色になる。そこに刻んだ玉ねぎとピーマンとセロリを加え混ぜ、全体を炒めた後で水煮のトマト缶、刻んだソーセージ、最初に炒めたオクラを混ぜる。
 
スパイスはバジルとタイムとセージ、そしてたっぷりめの胡椒(黒胡椒と白胡椒両方使えとレシピには書いてある)。それも混ぜたら、鶏スープを適当に注いで、ことこと煮込んでいく。最後の方で鶏肉も加えて更に煮込んだらできあがり……というのが、鶏肉とソーセージ入りのガンボの作り方。魚介を使うとまたちょっと作り方が違うのだけれど、そちらの方はGUMBO SHOPのレシピページで見ることもできる。
 
海老だの蟹だの入っているガンボも美味しいけれど、でも私は「鶏とソーセージ(できればソーセージは燻製してあるもの)」の組み合わせが好き。
あと、「サンクスギビングのターキーが余ったら是非ガンボに!」なんていうレシピも見たことがある。ターキーも、あのちょっとパサパサした淡泊な身がむしろガンボにはお似合いだと思う。
 
そうしてできあがった、久しぶりの「家ガンボ」。
小麦粉のルウ由来とはまた違う、オクラならではのトゥルントゥルンした照りのあるようなとろみつきのスープはやっぱりちょっと独特なもの。
息子はカレー皿と鍋を見て
「カレー!?」
と一瞬喜んだ後にシオシオした表情になってしまって、ガンボを口にした後もちょっとばかりシオシオした表情が続いてしまっていた。カレーの味を期待すると「なんか違う」という印象だろうけれど、じわーっと体に染みてくるような美味しさがあって、私としては「そうそうこれこれ!」という感じなのだけどな。
 
お供には、網焼きした茄子とズッキーニをオリーブ油とバルサミコ酢でマリネした野菜1品と、茹でとうもろこし。

9月15日 火曜日
息子のリクエストでねぎとろ丼(……微妙にピンボケ……)
ガンボ&御飯
アイスカフェオレ

昨夜ガンボを煮たは良いけれど、だんなは家で夕飯を食べることができない平日まっただ中。
たっぷりお弁当につけるというわけにはいかないけれど、鶏の塩焼きにソースとして添えたりはできるかなと思っていたところ、
「弁当も嬉しいけど、朝御飯にちゃんと御飯にかけたのを食べたい」
とリクエストされた。
 
シンガポールの「バクテー」(スペアリブのスパイス煮込み)は朝御飯として食べても違和感はないのだけれど(実際、朝御飯として食べられるものだそうだし)、ガンボを朝御飯にというのはちょと違和感。というのも、ニューオーリンズでガンボを食べたのはランチかディナーかであって、朝御飯は普通にパンとか、ベニエ(揚げドーナツ)を食べていたからなのかも。朝食を食べられるようなところでガンボがありますよ、というお店は、あんまり見かけたことがなかった。パンケーキ屋さんの日替わりスープで飲むことができたくらい。
 
それはそれとして、確かにがんばって作ったガンボを家でちゃんと食べてもらいたいという気持ちは私にもあって、朝食はガンボと御飯。ガンボが今ひとつ好みでない息子はコーンフレーク。
 
今回、瓶入りのセージを切らしてしまっていてスーパーで探したのだけれど、なぜかスーパーでも売り切れていて、結局ハーブコーナーに売られていた生のセージを買ってきて刻んで使ってみたのだった。バジルとタイムはドライタイプのを使ったからセージだけ生というのも変かしらと少し思ったものの、できあがっていると少しも違和感なく良い感じ。ガンボはちゃんとハーブが香らないと「これ!」という味にならないから面白い。

焼き茄子の生姜和え
ねぎとろ丼
キャベツとベーコン、玉ねぎのスープ
麦茶

昨日の夜、息子に
「明日の夕飯、リクエストしたいなー」
と言われた。聞いてみると「ねぎとろ丼」だそうで、「だったら火曜日、習い事の帰りに材料買ってきてくれる?」とお願いした。
 
野菜やら肉やら、ゴルゴンゾーラチーズまでおつかいを頼んだことがある息子だけれど、魚を買ってきてもらうのはこれが初めて。肉と違って店に行ってみないことには品揃えはわからないし、刺身のサクの大きさなどもなかなか伝えにくいものがあるから、魚は私が買いに行っていた。今回、携帯電話で話をしながら、マグロのサクとだんなの明日のお弁当用の魚の切り身を見繕ってもらった。
 
「マグロはね、サクがいいの。切られてるのじゃなくて、塊のやつ。カツオのたたきみたいな形のやつ。わかる?」
「んー……あ、あったよ!でも、隣のカツオより小さいよ?」
「小さいってどのくらいよ」
「カツオよりは小さい」
「それじゃ全然わからない、基準がわからない」
「んとねー……あ!ゴーヤくらいの大きさ!キュウリよりは大きい!」
「わかったわかったゴーヤーくらいのサイズなら大丈夫だから、それ1つ買ってね」
 
「あと切り身のコーナー、わかる?」
「うん、わかる」
「何がある?」
「銀ダラと……アトランティック、サーモン?鮭?」
「サーモンって、サクになってるやつ?皮ついてる切り身の?」
「うん、オレンジ色してる」
「……色は聞いてないよー」
 
魚売り場での息子のリモート操作は大変だった。これなら私が普通に買い物に行けば良かったかと思いつつ、今日は一日必死に仕事をしていたのだった(連休前だしねぇ……連休は遊ぶからねぇ……)。
 
ともあれ、無事にメバチマグロのサクも、明日のお弁当おかず用のサーモンも手に入れることができ、息子の要望通り今日はねぎとろ丼。トロじゃないし葱は長ねぎじゃなく万能葱だし、適当だけれど息子は満足の模様だった。ちゃんと酢飯も用意したし。
 
昨日のガンボ用に用意した鶏スープがまだけっこう余っていたので、食べきる分量取り分けてベーコンとキャベツと玉ねぎを入れてスープに。たまたま肉屋さんでみつけた鶏ガラ1羽分を使って煮出したスープだから、素晴らしく美味しくて、これは明日はリゾットにでもしようかしら、という感じ。汁麺とかでも良いかもしれない。
 
あとは、焼き茄子に生姜醤油(おろし生姜と醤油、少々の味醂、だし汁)をかけて刻んだ茗荷をたっぷり乗せた小鉢も一つ。

9月16日 水曜日
わいわいと。
バゲットのバタートースト
ガンボ
アイスカフェオレ

ちょっとばかり煮詰まってきたので、ガンボを別鍋にとっておいてあるチキンストックでのばしたら、ちょっとのばしすぎてしまって薄味に。もとよりそれほど分量も残っていなかったので、そのまま軽めのスープのような感じでパンに添えることにした。買い置きのバゲットは1/2本を6枚にスライスしてバターを塗ってオーブンに。
 
スープカップに注いだガンボはあっという間に無くなってしまって、空になった器を前に、だんなは
「ガンボ無くなっちゃった……」
と何やらしょんぼりとしていた。そんなに好きだったのか、と思いつつ、オクラ炒めたりルウ作ったりで、シチューやカレーよりもよほど手間がかかってしまうので、なかなか「じゃあ作ろう」と重い腰がなかなか上げられないのが申し訳ないところ。
 
とろみのある濃厚なスープだから冬の方が似合うような気もするけれど、オクラの旬は夏。これが名物のニューオーリンズは、1月2月でもともすると半袖で大丈夫というほどの暖かいところだったりするから、蒸し暑い空気の中、額に汗してガンボを啜るというのが正しい有り様なのだと思う。……でも、真夏にこんなに作っていられないってば。実際。

稲毛 「坐・和民」にて
 鶏の唐揚げ \523
 チーズフライ \418
 牛つくね \523
 お刺身盛り合わせ \1363
 湯葉春巻 \523
 シーザーサラダ \523
 2色クリームチーズ \418
 カキフライ \523
 ベーコントマトピッツァ \628
 じゃことろろ焼き \523
 ブリ巻にぎり \418
 お茶漬け(鮭) \418
 石焼五目炒飯 \628
 生中とか泡盛ロックとか
5人でもぐもぐ

連休前の仕事も佳境。各方面に「連休中はお出かけしますよーメール受信もできませんよー」と伝えておいた甲斐あってか、「じゃあ休みに入る前に」と仕事がたくさんやってきた。気持ちの良い季候の中、静かな午前中から午後にかけてせっせとお仕事。
 
夕飯は残ったチキンスープと、塩漬けの豚バラ肉を使って何かしようかなと、ぼんやり考えていたところで
「今日これからお伺いしてもいいー?」
と友人から連絡があった。夏休みの旅行のお土産を渡したいのだけど、と連絡を貰っていたのは先週のことで、どうぞどうぞとお返事して急ぎ家の片づけをした。何しろ「どうせ数日後には出かけちゃうしー、その間猫たちが汚すしー、毛まみれになるしー」とばかりにここ何日か掃除の手抜きが甚だしかったので。
 
南の島に遊びに行った友人から小物や調味料などをいただきつつ、そのまま「飲みに行こう!」という流れになり、友人一家と私と息子の5人で居酒屋へ繰り出すことになった。
 
土風炉系の居酒屋「Uo魚」、安くて美味しくてたいそう気に入ったのに、なんと開店キャンペーンが終わるか終わらないかの8月末、実にあっさりと閉店してしまった。ここに行けないのは残念だけれど、あとはまだ行ったことのないモツが多めっぽい居酒屋と……といくつか候補を考えていたのに、息子は「"坐民"がいい」と。
 
坐民なら、お母さんはテング酒場の方が好きだなぁ……と店の前で立ち止まるも、結局息子の意見が通って「坐・和民」に行くことに。個室感覚の店内は割と良い雰囲気ではあるし、メニューも一通り過不足なく揃っているという感じなので重宝するけれど、そこはでもしょせん「和民」……というか。
 
それでも大人が3人子供が2人いればあれこれ食べられるもので、今日は刺身からピザからサラダからお好み焼き風の焼き物、唐揚げにカキフライ、と隨分あれこれ注文することができて楽しかった。胡麻と黒胡椒、からすみ粉をまぶした「2色クリームチーズ」はちょっと(いや、かなり)微妙な品だったけれど、居酒屋メニューを久しぶりに堪能できて満足。

9月17日 木曜日
塩豚とカラフルなファルファッレ
フレンチトースト
「サンジェルマン」のチョコブレッド
アイスカフェオレ

昨日食べたバゲットの残りが良い感じに水分が抜けてきた風だったので、「これはフレンチトーストだ!」と、卵液作ってたっぷり吸わせてバターでこんがり焼いてみた。
 
たいてい食べ際にバター添えてハチミツかけたりして食べるので、卵液には砂糖は入れないことがほとんど。今日のもそんな感じで、添えたハチミツは先日六本木ヒルズのイベントでもらってきた、「横浜にある森ビルの屋上で飼っているミツバチが集めたハチミツ」なるもの。イベントの参加記念でいただいたものだけれど、非売品というわけではなくて六本木ヒルズなどでちょこちょこ売られているものだとか。
 
フレンチトーストに1切れ添えたのは、昨日閉店間際のパン屋さんで2割引になっていたチョコブレッド。なぜか息子がここ数日これに執心で
「あの、食パンにチョコが入ってるみたいなの食べたい。前、よく買ってきてくれてたやつ」
と、それまでチョコものに興味などなかったはずなのに「食べたい」と言われたのを思い出して買ってみた。
 
「これですか?」
「そうそうこれ!」
……何でこれがそんなに食べたかったんだろう。私は元々このパンが大好きだけれど、息子が執心するとは想定外で、これは何かの漫画にでも載っていたのかしらん?

ルッコラとコーンのサラダ
スープ仕立ての塩豚の煮込み&ファルファッレ
アイスティー

まめに火を通しつつ残してある自家製の鶏ガラスープをなんとかしなければということで、玉ねぎ入れてセロリの葉の部分入れてスライスした塩豚入れて、ことこと煮込んでみた。
 
ショートパスタの手持ちがあれこれあるものの、瓶の中で飾りと化しているカラフルなファルファッレ(Padonniの)を使ってしまうことに。黄色にピンクにオレンジに緑と本当にカラフルだけれど、色の素はほうれん草にビーツにパプリカにウコン、と食品由来のものばかりだそう。でも、無精して、別茹でせずにスープの中でそのままパスタを茹でてしまったら、ウコンがスープに溶けだしてしまってスープ全体がほのかにカレーみたいな風味と色になってしまったことよ……(反省)。
 
塩豚は厚切りにして1人3切れ。買い置きのルッコラを食べてしまわなければと茹でてほぐしたコーン、刻んだ玉ねぎ、人参と共にピエトロドレッシングで和えて、これまたカラフルなサラダを添えた。色鮮やかなパスタ料理と色鮮やかなサラダが並んで「うわ!センスない!」という食卓の光景になってしまって、これまた反省。
 
それでも、ほんのりカレー風味(というかターメリック風味)になってしまったスープは、元々の鶏の味と塩豚の旨味が溶けあって、やたらめったら美味しいものになっていた。数百円の鶏ガラ1羽分買ってきただけで美味しいスープができるのだから、時間と心に余裕があるときはまたガラを買ってこようと思う。またフォーとかもいいなー。

9月18日 金曜日
がっつり魯肉飯。
「サンジェルマン」のコーンパン
ベーコンとチーズ入りのオムレツ
ルッコラのサラダ
アイスカフェオレ

だんなは今日から夏休み。遅めの夏休みをこの連休に絡めて3日もらえることになったのだそう。
今日から旅行ではあるけれど、旅程の方は息子の学校を休ませたりする必要のないもので、でもだんなが休めるのは幸い。旅行から帰った後も週末まで少しのんびりできるかなと、「シルバーウィーク」を思う存分楽しむことにした。
 
朝食は、冷蔵庫のものを片づけついでにベーコンとチーズ入りのオムレツ、ルッコラのサラダ添え。
 
最近めげずにオムレツを作る努力をするようになって、少しずつまっとうなものが出来るようになりつつある……ような気がする。バターが少なくてフライパンにくっついてしまうことがあったり、フライパンのサイズに比して卵液が多すぎてうまくまとまらなかったり、なかなかばっちり決まることがないのが悔しいけれど、一応、一見して「これはオムレツである」とわかるものが出来るようになったので、なかなか嬉しい。

だんな特製味噌ラーメン
 バターとコーン乗せ
ビール(ハートランド)

最後の飛び込みの仕事があって、午前中はヒーヒー言いながら私はお仕事。
だんなが隣で「お昼どうしようー」と何度か声をかけてきて、
「ゼリヤ?」
「うーん、むしろ天狗」
「銚子丸?王将?」
「どっちも微妙に遠いよ、めんどくさいよ……」
 
ラーメンも良いけど、"虎"って感じじゃないんだよねぇと唸っていたら
「じゃあ家で作って食べよう!バター乗せてさ」
のだんなの一言(主に「バター」の部分)で、私の心がぐらりと動いてしまった。旅行前にゴミが出るのが嫌だから、「外で食べよう」という話だったはずなのに、バターの一言で。
 
というわけで、だんながスーパーに走ってくれて、ささっと味噌ラーメンを作ってくれた。中華鍋でひき肉ともやしを炒めてスープ(今日のは味噌とんこつ味だった)を加えて分量の湯を注いで作る、肉のコクが出たスープで、インスタント麺を使うのにこの作り方だとやたらめったら美味しくできる。更にトッピングでバターとコーンも乗せたら、最高に幸せなラーメンになった。しかもランチビールつき。
 
「俺がランチビール飲みたかったんだよ」
と、冷凍庫にはグラスが冷えていて、冷蔵庫には瓶入りのハートランドビールが冷えていて、ますます最高に幸せな状況に。
「ラーメン屋さんのビールらしく、グラスにもこだわってみました」
と、出てきたのがオリオンビールのロゴ入りのいかにもなグラスだったので笑ってしまった。
 
「うん、すごい気遣いだよね、素晴らしいよね。……君、もてるでしょ?」
「いやぁ、それがさっぱり?」
などと話しながら、ラーメンずるずる。

横浜中華街「秀味園」にて
 台湾風煮こんだつまみ \1000
 コーンスープ \500
 水餃 \700
 五目チャーハン \700
 ルーローハン 2×\500
 生ビール 2×\500
 台湾ビール \500

そして、息子が学校から帰るのを待って、荷物持っていざ出発。
この連休、5泊6日で我が家は初めてのクルーズ旅行に行くことになった。出発も到着も横浜港、船は「ぱしふぃっくびいなす」、行き先は屋久島と奄美大島。
 
そもそもは、「クルーズ船の上から夏の花火を見てみたい」と思ってしまったのが事の発端で、でも思い立ったゴールデンウィークあたりのタイミングでは、既にもう7月8月のクルーズの予約なんて(ましてや船上から花火を見られるものとなると)いっぱいだったのだった。
 
あれこれツアー内容を見ているうちに、秋の大連休を使った「屋久島・奄美大島クルーズ」なんてものを見つけてしまって、
「これ!君も息子も学校や職場休まないでも行ける旅程だよ?屋久島だってよ!」
と急遽家族会議。基本的には年輩客が多いと聞くクルーズの旅だけれど、若い人でも小さな子供がいる人でも、ハマる人はハマるらしい。これも良い機会だねと、空席があるのもこれ幸いと予約を入れてみた。
 
蓋をあけてみれば、この連休の旅行はあちこちたいそうな人気で、各社の国内海外ツアーの価格も年末年始と変わらないくらいの高値っぷり。申し込んだツアーは「連休だから特に高い」という感じもなく、連休みっちり使って旅行できるのも何よりという感じだ。主な荷物は既に宅配便で送ってしまっていて、それでもキャリーバッグ1つと息子のリュックとカメラバッグと、と、なかなかの大荷物になってしまって、いざ横浜に。
 
出航は午後9時と遅めの時間だったので、中華街で御飯を食べてから港に向かうことにした。
横浜中華街での夕食は、「一度行ってみたいと思ってたんだー」とのだんなのリクエストで、魯肉飯が食べられる台湾料理屋さん「秀味園」に。
 
大きな豚の角煮が乗った「ルーローハン」のメニュー写真にうっとりしつつ、ビールの肴にと他のものもあれこれ注文。「台湾風煮こんだつまみ」に、
「ああ、台湾の屋台にこういうの、あったよね」
「そうそう、色々煮られてるんだけど、それが何だかさっぱりわからなくて」
と台湾の夜市を懐かしく思い出しながら、まずそれを注文。
 
これが「台湾風煮こんだつまみ」 手羽先、昆布、豚ミミ、干し豆腐、玉子が醤油味で煮込まれていて、ほんのわずかにピリリと辛いたれと刻み葱が添えられてきた。適度に味がしみていて、すばらしく良い感じのビールの肴。
 
息子のリクエストでチャーハンとコーンスープもいただきつつ、水餃子も1つ。自家製皮のもちもちとした食感の餃子を平らげた後は、だんなと私それぞれ1つずつルーローハン持ってきてもらった。
 
普通に想像する魯肉飯は、小ぶりの丼に御飯が盛られ、甘じょっぱく煮た豚肉(粗めに挽かれた挽き肉状のもの)がかかっているというものだけれど、ここのは丼のサイズが大きめで、親子丼とかカツ丼といったものとほぼ同じ大ぶりサイズ。
 
そこに高菜の炒めと魯肉、そして豚の角煮と煮卵1個がトッピングされ、「角煮ごと全部混ぜつつ食べる」のが美味しいのだそう。御飯には適量の煮汁も染みていて、プルンプルンの食感の角煮が混ざった御飯は、期待以上に美味しかった。この高菜がまた良い感じなんだな。
 
食後はてくてく歩いて大さん橋へ。
「あの船に乗るんだよ」
「でか!綺麗!」
と歓声あげつつ、船着き場のデッキから船の全容を眺めつつ乗船手続きをして早々に船に乗り込んだ。
 
私たちの部屋は、客室では最下層にあたる5階の部屋。名前の印字された乗船者カードと救命艇の番号が記されたルームキーを1人1枚ずつ渡されての乗船。
 
部屋は覚悟していた通りに、そう広くはないもので、狭めのシングルベッドが2台並んでその間にチェストが置かれただけでいっぱいという部屋の幅。本来ソファーがあるところに息子のベッドが作られていて、その向かいにデスクやチェスト。
 
アメニティは充実していて、湯が満たされた湯沸かしポットの隣に氷水がたっぷり満たされた保冷ポット、洗面所にも歯ブラシや綿棒まで一通りのものが揃っていた。収納もたっぷり、3人分区切られたロッカーがあったので、「君は右ね、私は真ん中ね」と各自の場所を決めて早々に荷ほどきをした。
 
そして午後9時出航。
昼間の出航だと紙テープと音楽でにぎやかな出航セレモニーがあるそうだけれど、夜ということで生演奏のジャズが流れるだけの静かな船出だった。
 
みなとみらいの夜景を眺めながらバックしつつ桟橋を離れた船はそのままベイブリッジをくぐって東京湾から南に抜けていく。ベイブリッジをくぐったところで「夜食」の提供時間が始まっていたので、ちらりと覗きに行くことにした。

「ぱしふぃっくびいなす」にて夜食
 オニオンスープ
 サンドイッチ(ハム&野菜)
 洋梨のケーキ
 フルーツ(オレンジ・メロン・パイナップル)
 紅茶

クルーズ中は、「朝食」「昼食」「夕食」以外に、「モーニングティー」(午前のお茶=お茶と小菓子)、「アフタヌーンティー」(午後のお茶=お茶とケーキ)などが無料で供されていて、更には「夜食」というものもある。食べる食べないは個人の自由だけれど、夜遅くに小丼サイズのラーメンやうどんなどの麺類、サンドイッチやケーキ、フルーツなどの軽食が食べられるようになっているのだそうだ。
 
出航直後ということで、お客はほぼ全員夜食会場に来たのだろうなという賑やかさ。ブッフェ台にはケーキやフルーツ、スープ、パスタなどが用意されていて、ほかにもきつねうどんたぬきうどん、塩ラーメンを注文すると小丼サイズのそれをテーブルまで持ってきてもらえる。
 
息子はさっそくきつねうどんを堪能していて、私はサンドイッチ1切れとフルーツを少しとオニオンスープをいただいた。紅茶をもらいに立ったところで、それまで出ていなかった洋梨のムースケーキのようなものもあったので、ついそれも1つ。
 
船は派手には揺れないけれど、ゆっくり左右に揺れるように動いていて、「ああ、やっぱりここは船の中なんだ」という感じ。夜食後は疲れてしまって早々に就寝したのだけれど、ゆっくり足先や頭の先から引っ張られるような感覚を感じながら眠りに落ちた。

9月19日 土曜日
今日の夕御飯はインフォーマルディナー
「ぱしふぃっくびいなす」にて
 トースト 1/2枚
 ベーコンとオニオン入りオムレツ
 ハーブ入りソーセージ・フライドポテト
 ウィンナーとキャベツの炒め煮
 サラダ
 梨・パイナップル
 紅茶・飲むヨーグルト・オレンジジュース

昨日の就寝が10時過ぎだったこともあって、私は朝5時にばっちり目が覚めた。
 
狭い部屋、電気をつけたりすれば家族を起こしてしまうしなと、こっそり身支度整えてカメラとポメラ持って外に出てみた。とりあえずエレベーターで上階に行って船内を散策してみようかなと。
 
船後方にある「スポーツデッキ」をめざし、その後は外階段を使いつつ、プールや展望風呂のある方に向かってみる。プール隣のジムスペースでは、すでに運動している人がちらほらと。明るくなっていく空をしばらく眺めた後は、ライブラリーに移動して、ポメラで日記をつけてみたりしていた。
 
朝食は、だんなと息子が起きるのを待って7時過ぎに会場に。和食はセットメニュー、洋食はブッフェ式になっている。
今日はとにかく船が揺れ揺れで、「大型客船ってこんなに揺れるものなの?」と、あんまり食欲もわかないし、満腹にしてしまっては余計具合が悪くなってしまいそうだし、と、軽め軽めでいただいた。
 
朝食の料理は、全体的に「都内のそこそこのクラスのホテルブッフェ」と同じくらい、という感じ。感激するほどの品揃えと味ではないけれど、まぁ美味しくいただける、というものだった。飲むヨーグルトがあったのが嬉しかったし、出てくるフルーツがどれもちゃんと甘いのがまた悪くない。今朝は梨があったので、これなら食べられそうともぐもぐ。
 
食後の船内放送で、小笠原沖の台風の影響で波が高いとの船長さんからの報告があった。今日のお昼あたりにはまたちょっと船の揺れが強くなるので、歩く時には手すりなどにつかまるように、とのこと。レセプションには酔い止め薬がいつでもいただけるようになっている(1錠ずつ分けられたものが籠に入れられ、カウンターの上に置かれている)ので、早速1つ飲むことにした。……30分ばかりベッドにうつぶせて寝ていたら、なんとか復活。「あー、やっと良くなったよ。今なら焼き肉も食べられるよ!」とだんなに言って「食べるなよ」とツッコミをもらった。
 
9時からは今回のツアーのオリエンテーションと、避難訓練。
部屋備え付けの救命胴衣を着用のうえ、上階のデッキの決められた「救命艇」の下に集合する。
「船は、何かあってもすぐに沈むことはありません。部屋に救命胴衣を取りに行くくらいの時間はあります。……が、身支度を整えているほどの余裕はないかもしれません。そして、クレジットカード10枚持って脱出するくらいなら、ペットボトル1本の水をお持ちいただくほうが、助かる確率は絶対に上がります」
と、私たちの乗る救命艇担当の饒舌な機関士さんが言っていた。
 
避難訓練後は、息子が遊びたくて待ちかねるといった様子だったので、水着に着替えてプールデッキへ。海水を引き込んだ5m四方くらいの小さなプールがあり、脇には温水ジャグジー(こちらは海水ではない)も。タオルもたっぷり用意され、さっそくデッキチェアを並べてもらって日光浴したり一緒になってプールに浸かってみたりジャグジーを満喫してみたり。
 
相変わらず船の揺れはなかなかのもので、遠くにかすかに見える紀伊半島が激しく上下に動いて見える。それでも酔い止めがちゃんと効いていてくれているようだし、外で潮風を浴びている分には気分は悪くなく、「360度水平線に囲まれた中で入るジャグジーってサイコー……天国……」と、クルーズ気分を満喫した数時間。
小物を作るワークショップとか、船内探険をするイベントだとか、ゲームなども催されていたらしいけれど、結局何にも参加せずにプールデッキでだらだらしていた。

「ぱしふぃっくびいなす」にて
 湯葉とトマトの磯和え
 鮭親子重
 烏賊ゲソと茗荷の土佐酢
 割り子しそ素麺
 香の物(若茄子わさび漬・野沢菜昆布)
 和菓子(上用饅頭)
 グラスビール

今日のお昼は和食のセットメニュー。
「決まった食事なのかー……」
と息子はちょっとがっかりした風だったけれど、それでも好物の鮭といくらの乗った御飯が出てきたので嬉しそうに箸を動かし始めた。量はややしっかりめで、素麺も碗にたっぷり。全部食べたらまた船の揺れでよろしくない気分になりそうだったので、素麺だけ少し残して、あとは綺麗にいただいた。茗荷好きとしては、ゲソと茗荷の酢の物がすごく嬉しかったりして。
 
食事時のアルコールは無料ではないものの、アルコール類の価格は比較的良心的で、グラスの生ビールが400円、売店で売られている缶ビールは350円といったところ。ハウスワインのボトルは2500円だったかな。で、ついグラスサイズの生ビールを注文して、飲みながらのお昼御飯。
 
食後はなんとなく疲れてしまって家族で昼寝。午後3時になって、
「3時になったよ……お風呂オープンしたよ。カクテルパーティー前に行っておかない?」
とだんなに声をかけ、全く起きられそうにない息子はそのまま寝ていてもらって展望浴場に。
 
洗い場は8人分、浴槽もそれほど大きくはなかったけれど、更衣室も機能的にまとめられ、なにより大きな窓から海が見えるお風呂はとてもありがたいもの。部屋の狭いシャワールームであれこれするよりもよほど快適に、けっこう混雑してはいたものの長風呂を堪能してきた。

「ぱしふぃっくびいなす」にてカクテルパーティー
 シャンパン
 カナッペ、チーズなど
 
「ぱしふぃっくびいなす」にてインフォーマルディナー
 若鶏のコンフィ 蜂蜜風味のピンチョス
 生ハムとフリットにした秋野菜の取り合わせサラダ バルサミコ風味
 ポテトのクリームスープ
 帆立貝のソテー 軽い白ワインのソースと茄子のグラタン
 苔桃のシャーベット
 特選牛フィレ肉のロースト 林檎とマスタードのソース
 自家製パン
 マンゴーとココナッツのムース
 紅茶
 白ワイン(グリーンポイント シャルドネ)

そして今日の夜はお洒落して、船長主催のウェルカムカクテルパーティー&インフォーマルディナー。
 
息子は午前中の疲れで昼寝からなかなか起きられず、30分のカクテルパーティーはだんなと2人で参加してきた。この夜のためだけに持ってきたスーツに着替えてパンプス履いて、煌びやかな衣装のお客さんたちと一緒に、ジャズの生演奏聞きつつ船長さんらクルーの挨拶を聞き、シャンパンをいただく。
 
船長さんの挨拶で
「今日はこのようにけっこうな揺れで皆様にご迷惑をかけておりますが……、この揺れが大丈夫だわ、へっちゃらだわ、というお客様がいらしたら、世界中どこをクルーズいただいても大丈夫だと言わせていただきます」
とのことで、やはり今日の揺れは相当に酷いものだったらしい。とりあえず夜半過ぎくらいまではこの揺れは続くそうで……帰りにはもう少し快適な船旅になると嬉しい。
 
立食ではなく、自由席でのんびり座ってのカクテルパーティーから帰ってみると息子も起きていたので、夕食までの時間、新調したスーツを着た息子を
「かっこいい!超かっこいいから写真撮ろうよ!」
と連れ出して、吹き抜けのレセプション前の階段あたりで記念撮影。
 
「メガネ男子!スーツメガネ男子!萌え!」などとたきつけて、だんな、息子それぞれ旅行に持ってきていた自前のメガネをかけてもらって写真を撮ってみたり、お洒落着で売店を覗いてみたりした後、改めてディナー会場へ移動した。
 
テーブルには大きな位置皿が置かれ、ずらりとならんだフォークとナイフ。グラニテまで来る本格的なフルコースディナーで、でも味付けは馴染みやすいものばかり。驚いたことに、息子は帆立もバルサミコ風味のサラダも含め、見事に完食した。何が出てきてもフォークとナイフでそれなりに器用に食べていく息子の成長っぷりに、改めてちょっとびっくり。
 
ワインもおおむねお手頃価格で、お気に入りのグリーンポイントのワインがあったのでシャルドネを1本いただきつつ。テーブルは6人がけだったけれど他の方と相席になることもなく、タイミングよく次々出てくるお皿をリラックスして食べることができた。
 
どれも美味しかったけれど、メインディッシュの牛肉の皿が一番素敵だった。甘く焼かれたリンゴとスライスして揚げたリンゴが添えられた、ほの甘いソースのステーキで、焼き加減も柔らかさも絶妙。香ばしく焼かれた帆立貝も美味しかった。
 
食後は、「今日は星が見えるかな?」と、一度部屋に帰って、星座盤と懐中電灯と望遠鏡を持って、10Fのスポーツデッキ、11Fのプールデッキに星を見に。
 
クルーズ船からは遮るものなく光源も周囲になく、晴れていれば素晴らしい星空が見えるよと教えてもらっていたので星座盤を旅行荷物に入れていた。あいにくと船そのものからの光がけっこう強かったものの、デッキの端まで行くと暗い夜空に星が大量にまたたいているのが良く見える。
「見えた見えた、あれ夏の大三角形!」
と、進行方向向かって少し左に見える明るい星の三角形を指さしつつ、しばらく船上からの星観察をした。
 
まだまだ船は揺れ揺れだけれど、明日の朝には屋久島に到着。トレッキングシューズ履いて、森を歩いてみる予定。

9月20日 日曜日
森歩きの合間のお弁当
「ぱしふぃっくびいなす」にて
 ポテトとチーズ入りオムレツ
 サラダ
 じゃがいもと玉ねぎの煮物
 ウィンナーとキャベツの炒め物
 ソーセージ
 シナモンロール・テーブルロール
 紅茶・飲むヨーグルト・リンゴジュース

昨日はすっかり疲れて(&ワインで酔っぱらってしまって)早々に就寝。なので私の今朝の起床は案の定5時過ぎ。息子も
「なんか、楽しみで寝ていられなくなっちゃった」
と早々に起きてきたので、2人で6時になるのを待って8Fのポートデッキを歩く「モーニングウォーク」に参加してきた。一周336mのデッキを潮風浴びつつ、マイペースにぐるぐる歩く。適当に1周した後は、オープンバーで供されている「アーリーモーニングティー」で無料のオレンジジュース飲みつつ抹茶マフィン1切れを息子と半分こしてつまんで部屋に戻った。
 
そして、出航から続く荒波の中、無事に旅程通りに船は屋久島に到着した。入港は午前8時、出航は午後6時。「最終帰船時刻」は午後5時半とのことで、とりあえず出発は早めにしたいねと7時のオープンを待って早々に朝食会場に向かった。お客さん皆同様のことを考えているようで、朝食会場は昨日に増しての大混雑。
 
和食のセットメニューを頼んだだんなの元にもなかなか料理がやってこないし、オムレツコーナーも大行列。フルーツを取るのも大変といった中、ちょこちょこと昨日と同じようなものを持ってきて今日はしっかりめにいただいた。小ぶりのシナモンロールがしっかり甘くて良い感じ。
 
寄港地でのオプショナルツアーが充実しているのもクルーズ船の特徴の一つらしいけれど、今回私たちは1つもそれに申し込まなかった。
今日はレンタカーを借りて好き勝手に島を巡ることにして、下船の時刻が来て早々に船を降りた後は、船の前まで持ってきてもらったレンタカーに乗り込んで、事前予約しておいた登山弁当を受け取りにお弁当屋さんへ。それから一路、最寄りの「屋久杉を見られる森」であるところの「白谷雲水峡」を目指した。狭い山道を車で登って登って港から数十分のところに入り口がある。ここから本格登山をすることもできるし、1周1時間ほどの散策をして帰ってくることもできる。
 
「……で、どこを歩くの?」
「んー……この、弥生杉って方のコース行って、そのまま原生林コース、小屋まで行って、その先の「もののけ姫の森」とかいうところを見て、下のルートで帰ってくる……って想定をしていたんだけど。これで大体4時間くらいみたい」
地図を見てあれこれ相談し、「あれ?弥生杉って行くつもりだったっけ?けっこう歩くから予定から外したんじゃなかったっけ?」と自分で口に出しておいて後からそう思い返しても後の祭り。いきなり急な石段をひたすら登るルートになってしまい、森歩き開始早々十数分で「これ、森じゃない……普通に"山"だよ、"山歩き"だよ」と思うことになった。
 
午前8時半頃から登りはじめて、休憩しいしいお昼御飯も食べて、帰ってきたのは午後1時。高低差はたかだか200mちょっととはいえ、4時間以上も山道を歩いたのは学生以来という体たらくの私は、後半は膝がガクガク。3月に折った左足首もずいぶん酷使することになったけれど、そちらは痛むこともなく最後までちゃんと歩いて帰って来られた。
 
屋久杉の巨木を何本も眺めつつ、コケとシダで鬱蒼とした森の中を歩くのは素晴らしく気持ちが良いもので、特に弥生杉歩道、原生林歩道はすれ違う人にもほとんど出会わず、人気のない森をひたすらてくてく、という感じで、言い様のない心地よさだった(その分きつい道だったわけだけど……)。
 
途中ではヤクシカの親子を見たり、立派な角を持ったヤクシカの牡鹿に出会ったり。マメに水分補給の休憩をしつつ、11時過ぎにはトイレと水場のある「白谷山荘」までたどり着いた。

「白谷雲水峡」にて
 「島むすび」の登山弁当 \600
 麦茶・水
 
「屋久島観光センター」内「レストイン屋久島」にて
 飛魚丼

昼御飯は、「島むすび」というお弁当屋さんの登山弁当。港の近くにあるお弁当屋さんで、前日夜までに予約すれば登山弁当を作ってもらえる。山の中にある縄文杉を目指す登山客には朝食も必要なので、朝食用のおにぎり弁当などもあるらしい。私たちは2段重ねの昼食用のお弁当。
 
2段になった下がおにぎり3種とたくわん2切れ。シンプルな海苔を巻いた塩むすび、梅干し、わかめまぶしの3種類のおにぎりが詰まっている。上段はおかずで、甘辛く煮付けた根菜とこんにゃくの煮物、きんぴらごぼう、鶏の唐揚げや鶏の野菜巻きのカツ、さつまあげや鯖の塩焼き、甘く優しい味の玉子焼きなどなど。
 
どれも素朴な味付けの、一見なんてことのないお弁当のようだったけれど、疲れもあってか染み渡るほどに美味しかった。一休みして、山荘の水場で空になったペットボトルに沢の水を詰め、いざ帰路に。
 
今回驚いたのは息子のタフっぷりで、私が慎重に足を滑らせないようにゆっくり足を動かす前を、猿のようにすいすい軽やかに進んでいく。少し前まではすぐに「疲れたよー」などというヘタレたところがあったはずなのに、今日は「まだまだいけるよ、大丈夫だよ?」と、最初から最後までケロリとした顔で森歩きを楽しんでいた。若いって素晴らしい。羨ましい。
 
白谷雲水峡ふもとの車に戻る頃には、私を含め、家族皆汗みどろ。気温は23度ほどとそう高くはないものの、飲んだ1リットル以上の水は全部汗で流れてしまった感じ。
 
まだ1時というあたりだったので、ちょっと無理すれば車で行ける「紀元杉」を目指せなくもなさそうだったけれど、もし帰船時刻に間に合わなくなったら、とこちらは諦めることに。
「空港の方に、立ち寄り湯のできる天然温泉があるよ」
と、空港方面に車を走らせ、「縄文の宿まんてん」で汗を流すことにした。汗みどろになるのは想定の範囲内だったので、着替えのシャツや下着も車に積んできている。
 
「疲れた……疲れたよ……」
と、その宿付設のコンビニでジュースなど買って軽く休憩すると、もう午後2時を過ぎる頃。チェックしていたお土産物屋さんに寄りつつ、ついつい小腹が空いてしまって、お土産物屋さん2階のレストランで、「飛魚丼」を食べてしまった。
 
卵かけ御飯にとろろを乗せて、飛び魚の刺身を乗せたような風の飛魚丼は、「そうそう、九州のお味噌ってこんなんだった」と、宮崎で飲んだ甘めの麦味噌の味噌汁と同じ味のわかめの味噌汁つき。添えられた沢庵には、屋久島名物のさば節を削ったのが和えられていた。
お土産に屋久杉でできたお箸とかごまさば節、パッションフルーツジュースなどを買い込んで、午後4時頃のちょっと早めの帰船になった。

「ぱしふぃっくびいなす」にて
 つぶ貝となめ茸の山葵和え
 秋刀魚のたたき造り
 南瓜と蕪の吉野仕立て
 豚肉と生若布の豆乳しゃぶしゃぶ
 きびなごの天麩羅
 吸物(菊花・柚子・三つ葉)
 香の物(白しば漬・野沢菜漬)
 御飯
 水菓子(梨・無花果)
 生ビール

息子が昔、プールで遊びすぎて、疲れたあまりに夕方発熱した事があったけれど、今日の私もそんな感じ。帰船してから微熱が出ている感じで、
「でも、夕飯は食べるよ。てか、ビール飲むよ……」
と、ふらふらしながら夕食会場に向かった。
 
今日は和食のコースで、献立を見た息子は「僕の好きそうなものが無い……」と釈然としない顔をしていたけれど(フランス料理だったらたいてい何でも食べられるというのもどうかと思う)、それでも果敢にほとんど全ての料理を平らげていた。豆乳しゃぶしゃぶはかなり好みな味だったよう。
 
私は、茗荷の和えられた秋刀魚のたたきが実に幸せで、ついビールをお代わりしてしまいつつ、御飯と吸物が来る頃にはすっかり満腹になっていた。ちゃんと揚げたてのが来たきびなごの天麩羅も嬉しかった。
 
それにしても、「年を取ると疲れは翌日、翌々日に出る」というどころではない、当日その日のこの足のだるさ。筋肉痛軽減用のタブレットを飲んだものの、これは絶対明日以降大変なことになるぞという状態だ。……明日、奄美大島でマウンテンバイクに乗る予定なのだけれど、どうなっちゃうのかしら。
だんなと息子が「夜食に行こう!」と盛り上がっているのを聞きながら、私一人早々に就寝。今日は本当に疲れました。でも後悔はしていない。