食欲魔人日記 01年08月 第5週
8/27 (月)
2日目のカレーにて、カツカレー (夕御飯)
冷やしたぬきうどん
アイス烏龍茶

昨日、スーパーで50円パックの揚げ玉を買ってきた。チープなチープな揚げ玉だけど、妙に美味しい。
「冷凍庫入れておけば長持ちするんじゃない?」
というだんなの助言に基づき、冷凍庫で保存することにしてみた。これでいつでもたぬきうどんが満喫できる。うふん。

というわけで、今朝は冷やしたぬきうどん。冷凍うどんを茹でて氷水で引き締め、市販のめんつゆを適当に薄めてぶっかける。刻み葱と炒り胡麻と揚げ玉を適宜たっぷりぶっかけて、食べる。揚げ玉の存在だけで、妙に豪華な朝食になった感じ。

今朝は、台風の時もかくやという感じの土砂降りだ。すごい天候。

くるみのパン
アイスカフェオレ
葡萄

今日は1日家で仕事。雨が止んだり降ったりしている窓の外をたまに眺めつつ、ペケペケとキーボードを叩きまくる。
昼は、くるみのパンを軽くトーストして軽くバター塗って食べる。お供にアイスカフェオレ。ついでに葡萄をぽいぽいとつまみ、お仕事続行。気がつけば、8月ももう最終週に突入しているのであった。
「あんにゅい〜」
とか呟いてみたりして。

ツナペーストとサラダ菜のサラダ
さやいんげんと赤ピーマンのXO醤炒め
カツカレー ゆで卵乗せ
冷たい南瓜のスープ
モルツ、アイスカフェオレ

鍋にまだ半分くらい残るのは、2日目のカレー。ちょっと煮崩れつつあって見た目はあまり宜しくないけど、とても美味しい2日目のカレー。
カツカレーにしたくなってしまったので、だんなに帰宅途中にとんかつを買ってきてもらった。サラダや野菜料理を準備、スープもその間作ってみた。

ツナ缶は、同量くらいの玉ねぎのみじん切りを混ぜ、ついでに刻んだオリーブやピクルスなんかも放り込んでマヨネーズで和える。サラダ菜は1枚ずつちぎったままの大きな葉を皿に盛り、ツナペーストをその横に。さやいんげんと赤ピーマンは適当に刻んで薄切りにんにく、XO醤と一緒に炒め、軽く酒と醤油と砂糖をふってカレーの付け合わせのようにしてみた。

現在、冷蔵庫の野菜庫の中に5kg近い米が入っているので(←米櫃に入れておいて虫が湧いてしまったため避難措置)、かなり野菜庫がいっぱいいっぱいなのである。「南瓜も使っちゃおう……」と、皮を剥いてざく切りにした南瓜をひたひたの水に多めの顆粒コンソメをぶっこんだものでぐわーっと煮込む。柔らかくなったところでバーミックスをつっこんでギャギャギャギャギャとピューレ状にし、そこに冷たい牛乳を入れて適当な濃度にしてから冷蔵庫で冷やしておく。至極簡単な南瓜のスープ。最初、バターで玉ねぎやら南瓜やら炒めてから作るとまた美味しいらしいけど、夏の時期はあまりコンロを使いたくないのが本音だったりする。

色々副菜も準備できたところで、「さぼてん」のカツを抱えただんなが帰還。大きなカツをざくざくと切り、カレーと一緒に盛りつける。更にゆで卵も添えちゃう。豪華だ。
「カツカレーの盛りつけ」に関する私とだんなの見解はちょっと異なっている。
「御飯、カツ、カレーの順に盛りつける」がだんな、
「御飯、カレー、カツの順に盛りつける」が私。
つまりカツの上にカレーがかかっているのを是とするか非とするかの違いだ。私は、カレーにまみれまくったカツよりは、ちょっぴりついているくらいの方が好みなので、一番上にカツを乗せることにしている。でも、外で食べる時はカツにカレーがかかっている方が圧倒的に多いような気がしないでもないけれど。

サラダといんげんをつまみながらビールを飲み、カツと卵をつつきつつカレーを食しスープを飲み、いつのまにかすっかり満腹になってしまった。食後よろよろと居間に逃げ込み、ばたりと倒れ伏して30分動けなくなってしまうほどの満腹だ。我ながらアホみたいだ。
「す、すみません……動けるようになったら片づけるから〜」
と皿の1枚も流しに運ぶことなくヨロヨロとソファベッドで苦悶していたら、だんなが苦笑しながら皿を洗ってくれた。どころか、無くなったお茶を作り、飲み干したコーヒーも入れ直し、余ったおかずは小さな容器に入れ直し、あまつさえ残り少なくなったカレーをカレーうどんのだしに加工までしちゃったりしてくれた。うわぁ……だんな、主婦みたい……。

8/28 (火)
鶏肉の香草パン粉焼き (夕御飯)
カレーうどん&冷やしたぬきうどん
アイス烏龍茶

「カレーを作った最後にはカレーうどんにする」というのが、だんなの実家より伝来してきた我が家の文化だ。
美味しい上に、鍋肌にこびりついたカレーがそれは綺麗に取れてくれるので、なかなか重宝している。作り方は簡単で、残ったカレーに鰹を昆布のだし汁を注ぎ、醤油と味醂で適当にそれっぽく味をつけるだけ。今回は、残ったカレーが大層少量だった為、1人分ほどのカレーうどんしか作れなかった。

で、1人前のカレーうどんと1人前の冷やしたぬきうどんとで朝御飯。どんぶりをだんなと交換しつつ、両方をずるずると啜る。
溶けきってしまいそうな微細なじゃがいもとにんじん、肉のカケラがほえんと漂っているカレーうどんはちょっとばかり薄味だったけど温かで美味しかった。今度は濃度たっぷりの、こってりしたカレーうどんを作ることにしよう。

大学内教職員用学食にて
 夏野菜のカレー
 (サラダとコーヒーつき)

本日、お仕事。いつもの昼休みは一人勝手に食べているのだが、今日は珍しいことにボスたる教授から
「お昼、一緒に学食に行きませんか?」
と誘われた。当初は私と教授の2人であったはずだけど、道中1人増え、学食に到着したところでもう1人増え、結局3人の経済学者と一緒に昼飯を食べることになってしまった。学生時代はゼミの指導教授でもない限り「教授と雑談」なんて事態はそうそう無かったのだ。緊張する。

大学内には、学生用の学食とは別に「教職員用食堂」などというものが比較的新しい建物の中に入っている。重厚な木の扉つきの、大学のマークなぞが椅子の背に刻まれた、妙に高級な感じのそれは"レストラン"なのだった。給仕の男性も蝶ネクタイつきの黒服で、紙製のメニューが恭しく差し出される。その中には「今日のランチセット」なんてメニューが1000円前後の値段で書かれていたりするのだけれど。

私のボス以外は全員「夏野菜のカレー」、ボスは「舌平目のなんちゃらか」みたいなやつを頼んだ。春雨の乗る、醤油味ドレッシングのサラダをつまみつつ待つこと数分、やけに凝った感じのカレーがやってきた。滑らかなカレーのルーがサフランライスにかかっており、ルーの上には揚げた南瓜だとかオクラ、ししとうに茄子などがそれは美しく飾られていた。辛さの少ないカレーはバターの香りがしてきて、「英国風」という感じ。歯ごたえの適度に残る野菜も美味しかった。

食事よりも興味深かったのはやはり教授陣の話だ。世界の経済情勢と糖尿病とイギリスの料理の不味さを同列に語る"先生方"は「不況を研究してはいるけど、僕たちの生活には不況は関係ないもんね〜」てな感じの好々爺そのものだった。

そもそも、「経済学」は役に立つようで実はあんまし役に立たない学問だ。数字を扱ってはいるけど、ともすると文学でもやってる気分になってくる。
経済学迷名言集などという楽しいホームページを見て笑ってしまったけれど、確かに
「経済学とは全く反対のことを言っている2人の学者が、ノーベル賞を取れる唯一の分野であり、去年何を買えばよかったを教えてくれる学問」
であり、
「経済学者の第一定理 : ある意見を持つ経済学者がいると、反対の意見を持っている経済学者が必ずいる。」
「経済学者の第二定理 :  二人とも間違っている。」
のが真実と思えてくる学問なのだ。

今日聞いた一番面白かった話。
「"俺の理論は正しいんだ!証明してやる!"って、I大かどこかの教授がスーパーを経営し始めたんですよね」
「……それで、どうしました?」
「……あっという間に潰れました」
「そうですよねぇ〜」
「やっぱりねぇ〜」
「それは潰れますよねぇ〜」
……先生方は何を学んでおられるのでしょうか(汗)

サラダ菜とツナペーストのサラダ
さやいんげんとパプリカのXO醤炒め
小松菜とコーンのバター炒め
鶏肉の香草パン粉焼き
冷たい南瓜のスープ
御飯
モルツ、麦茶

ここ数週間、仕事が多忙続きだっただんなが、やっと一山越えたらしい。帰宅してから適当におかずを準備し、幸いなことに昨夜の残りものもあったりしたのでそれなりの夕食ができあがった。

先日一度作ってなんとなく美味しくできたので、鶏肉の香草パン粉焼き。鶏肉を一度フライパンで皮目からこんがりと焼き、適当に焼けたところで取り出して皮目に粒マスタードをこってりと塗る。上から乾燥のミックスハーブとパン粉、それに今日は粉チーズも混ぜたものをふりかけてみた。上からきゅっと押さえてからオーブンへ。パン粉が焦げたらできあがり。案外とマスタードを多くしても、あまり辛くならなくて良い感じなのだ。

昨日のサラダにXO醤炒めにスープ、それに小松菜をたっぷりのバターで炒めて塩をふったものをおまけに作り、小松菜を敷いた上に焼けた鶏肉をごろんと乗せる。実のところ、買ってきた2枚の鶏肉は合わせて500gくらいあったのだけど、それでも1人1枚ぺろっと食べられてしまった。鶏肉の塊をガツンと食べるのは、妙に充実感があって好きだ。皮があって厚みもあって、染み出る肉汁は牛肉のステーキとも違う魅力がある。

「これさぁ、肉の厚さ半分に切り込み入れて、チーズとか挟んだらもっと美味しくなるような気がする……」
肉をもっきゅもっきゅと噛みしめながらそう提言するだんな。
……そしたら、なんかとんでもなくハイカロリーになるようなならないような。

8/29 (水)
双葉(人形町)にて「スペシャル定食」 (昼御飯)
だんな特製チャーシュー炒飯
麦茶

「シーッシシシシシ」と、ケンケンの目覚まし時計が笑い声を立て始めたのは覚えている。「時間だヨ、早くオキロ」の声の後に爆弾が爆発する音も確かに聞こえた。その後、だんながバシッと目覚ましを止め、そのままずるずると沈み込んだのは……あまり記憶にない。そういうわけで、家族全員微量の寝坊。

時間がないない、と焦りつつ、だんなが炒飯を作ってくれた。「汁なしチャーシュー麺」用に作ったチャーシューの残りを細かく刻み、その煮汁も使いつつ卵と葱を炒め合わせる。焦げ茶色に光る炒飯は、朝食べるには少々こってりと濃厚な味がした。でもそれがチャーシュー炒飯の美味しさだ。

今日は人形町で仕事の打ち合わせ。 午前10時、約束の時間よりも相当早く家を出る。せっかく人形町に行くのだから「んじゃ、"玉ひで"で親子丼でも食べてみるか!」という趣向である。

人形町 双葉にて
 スペシャル定食 \1000
 ランチビール \200

11時半に「玉ひで」は店を開ける。以前、通りかかった時には11時過ぎた段階で店の前には長蛇の列だった。それを見越して11時に店の前に行くようにしてみた……ら、誰もいない。店頭脇に掲げられたメニューには、親子丼の文字の上に「親子丼はお持ち帰りのみの販売をさせていただきます」の文字。どうやらお店は改装中のようだった。

だが、コース料理なら中で食べられるらしい。「軍鶏鍋・香の物、御飯〜つき。○○○円プラスで御飯は親子丼になります」の文字にくらくらしてくる。私の頭の中は全面的に親子丼になってしまっているのだった。600円程度の親子丼が、いつのまにか4000円の軍鶏鍋コースに頭の中で変換されていく。「一人でも……大丈夫よねぇ」と店の前で思い詰め、そうして私は開店までの30分の空き時間を近所の本屋を覗くことでつぶした。

11時半、5分前。中で食べられないとはいえ、それでもテイクアウトものを求めて客は店の前に長蛇の列を作っていた。お店の半纏を着たおっちゃんが
「本日は親子丼は中では召し上がれません〜!」
と案内を叫んでいる。
「コースなら、中に入れるんですよね?」
と尋ねると
「はい、お時間になったらそのままお入りください」
とのこと。1人でコースなんてちと気恥ずかしいけど軍鶏鍋に心は躍る。心はすっかり鬼平犯科帳。

うきうきと店の周囲で列に並ぶことなくぷらぷらしながら待つこと数分。やっと開店したようだ。「いざいざいざ!」と鬼平は入口にいざる。が、最後の最後に厳しい通告がなされてしまったのであった。
「も、申し訳ありません。コースは御二人様からでして……」
がーん。鬼平、超ショック。最初に言ってちょうだいよ、この30分の苦労は何だったんだよ……と一人寂しく「玉ひで」を後にした。

で、結局、豆腐料理なぞ喰ってるのである。
「甘酒横町」の中に、ずっと気になっていた「双葉」という豆腐屋さんがあるのだが、そこの2階がその店の豆腐を使った定食屋になっているらしい。揚げだし豆腐定食だとか、肉豆腐定食だとか、とにかく豆腐がおかずなのである。ふらっとそこに入ってみることにした。入口で食券を買い、居酒屋のような店内に入って適当な席に腰掛ける。食券機に「ランチビール 200円」なんて文字を見て、ついふらふらと小銭を投入してしまったのは秘密だ。

やってきたのは御飯。豆腐たっぷりの味噌汁。よもぎと黒胡麻が入ったような、竹筒入りのだしかけ豆腐。卵焼きと味噌田楽と炒りおからを盛りつけた小皿に、ひき肉と葱を詰めた揚げだし豆腐。そして、ビール。
小ぶりのグラスに入るビールをくいくい飲みつつ、ちょっと酢の酸味がただよう、醤油味濃厚なだしのかかる揚げだし豆腐をつつく。味噌汁の豆腐も、竹筒の豆腐も、全体的にどっしりと密度のあるものだ。豆の香りがぷんぷんと漂ってくる。
軍鶏鍋と比べて、隨分とヘルシーな昼飯になってしまったけれど、まぁこんなこともあるのである。でも鬼平のショックは消えない。

人形町 初音にて
 氷宇治あづき

充実した打ち合わせの後、甘酒横町を抜けて水天宮方面に歩いて帰宅の途へ。途中、いかにもな感じの古めかしい小さな甘味屋を見つけた。「氷、あります」の言葉に思わず汗だくの顔を拭きつつ入店。そういえば今年はまだ一回も「甘味屋でかき氷」を体験していなかったような気がする。やはり甘味屋のかき氷ならば「抹茶」であろうと思う。そして「あずき」であろう。メニューを見ると「氷宇治あづき」の文字が目に入り、それを頼むことにした。
化石のようなおばあちゃんがゆっくりと奥の鉄鍋から湯を急須に注ぎ、熱い緑茶を茶碗に注いでぺたしぺたしと近づいてくる。おばあちゃんの動きは遅いが注文が来るのは早く、1分ほどで目の前に「氷宇治あづき」がやってきた。

外見、真っ白なかき氷だ。平べったい、深さのあまりないガラスの器にこんもりと氷の山ができている。下は緑色に染まりつつあり、シロップやあずきは全て埋没しているらしかった。かき氷の器の、更に3まわりほど小さな器に白玉が4個、別についてきた。シロップやあずきと同じく埋没していたスプーンをゆっくりと発掘し、上からしゃくしゃくと削るようにシロップに浸しつつ、食べる。自家製らしい小豆の甘煮は粒1つ1つがはっきりとして適度な甘さがある。しかも大量だ。抹茶シロップも小豆も、やけにたっぷりと下に敷かれているのだった。うかつに食べるとシロップが足りなくなりそうなかき氷があったりする昨今、何とも嬉しく甘いかき氷だ。小豆の部分をこそいでは白玉と一緒に食べ、シロップと氷を絡めてはあずきを一緒に食べ、汗はすっかりひいていた。時間はまだ2時を過ぎたばかり。……銀座でもぷらぷらしてから帰ることにしよう。

銀座 福臨門魚翅海鮮酒家の
 焼物弁当(マンゴプリンつき)
 ピータン
モルツ

ぷらぷらと銀座を散策。確か「秋物の服でも眺めよう……」と思っていたはずなのに、陶器製の花瓶を買い、怪しいカバのオブジェを買い、「ベノア」のスコーンを買い、それでいつの間にか「福臨門のお弁当買って帰ろう〜♪」と事態は相変わらず食べ物を中心に回ってしまうのであった。

銀座にある高級中華料理店、「福臨門魚翅海鮮酒家」はそうそう足を踏み入れられるお値段のところではないけれど、隣接してテイクアウト専門のお弁当屋さんがある。1500円のお弁当は肉のおかずを4種類から選べ、更に1つの弁当に2種類を盛り合わせたりもしてくれる。しかも700円で販売しているフルーツプリンもついてくる。何とも幸せなお弁当なのであった。

店のドアを開けると、広くない店内に男性が3人、大きな機材つきで詰まっていた。……テレビの撮影、らしい。リポーターは、いない。
気にせずカウンターににじりより、「お弁当ください、これとこれをね……」と伝えていると、おもむろにカメラの男性が弁当を作ってくれるおっちゃんに張り付いた。鴨の足をだんっと切る!カメラマン、それを写す。おっちゃん、御飯を詰める!カメラマン、それを写す。詰め終わった後は、レンズが弁当につきそうなほどのアップで弁当収録。あああ、私の弁当が世界デビュー……(←ちがうって)。

「ま、珍しい体験だよな……」
と呆然していると、今度は話しかけられた。
「あの〜、テレビ○○なんですが、"買いに来たお客さん"ってことで写してもいいですか?」
あああ、今度は私が世界デビュー!?(←ちがうって)。歩き回って化粧は崩れてるし荷物持ちまくって服も乱れてるし、かといって「顔治してもいいですか?」なんて言うのも恥ずかしいし、結局心臓バクバク言わせながら頷くことしかできなかった。うひ〜、カメラが、カメラが……。
「すみません、店員さんがちゃんと手渡しで、お願いします」
などと演技指導まで入り、そのまま背後を撮影されつつヨロヨロと店を後にした。店を出る直前、奥から出てきたコック姿の細身のおっちゃんは、確かテレビで見たことのある顔だ。ああ、料理長さんだ……「ありがとう」と言っている……ああ、でもカメラが……(←ちょっとパニック中)。

そういえば、何の番組でいつ放映されるのか全然聞かなかったぞ。とほほ。

日記も自ずと長くなってしまうバタバタだった一日の夕食、せっかくここ数日仕事が楽になったらしかっただんなが、また今週来週と忙しくなってしまうことが確定してしまった。だから買ってきた弁当も1人分。息子には葱と野菜入りの花巻。ついでにピータン1つ。「剥きますか?」と言われて頷いたら、殻を剥いてくれたどころか綺麗にスライスしてパックに詰めてくれた。ああ、ありがたい。

選んだおかずは「皮付き豚バラ肉の炭焼き」と「家鴨の炭焼」。他にチャーシューと蒸し鶏も選べるようになっている。
おまけについてきた「フルーツプリン」はマンゴプリン。何とも幸せなお弁当だ。
買ってきたものをずらっと並べ、ビールを片手に息子と2人の夕御飯。

弁当パックは二重底になっており、蓋の上についている紐を引っ張ると内部から熱い水蒸気が吹き出してきて一気に弁当が温められるような仕掛けになっている。「豚肉と鴨は除けてから」と書いてあったのでおかずを別皿に移してから紐を引っ張る。アツアツに温まった御飯、添え物のもやしのピリ辛炒めも温まった。ザーサイや大根とニンジンの甘酢漬けまで温まってしまうのはご愛敬だろう。

どこかケダモノ臭さのある黒っぽい肉の鴨にはもれなくテラテラと茶色く光る皮もついている。香ばしく焼けた鴨の皮が何とも香ばしい。同じく皮がカリカリのクリスピー状になった豚肉も脂の層もこってりと、ざく切りされている。御飯はうっすらと茶色に染まっていて、どうやら肉の焼き汁か何かをかけたような感じ。にんにくの風味のするブロッコリーもついている。添え物の1つ1つも妙にしみじみと美味しくて、その味は確かに香港の街角にありそうな感じもする。値段は2倍以上の違う気がしないでもないけれど。

黄身が見事に年輪のように筋をつけて「黒身」になったピータンもまた、アンモニア臭さのない、甘ささえ感じるような上品な味。パックに入ったピータンの底には、寿司の"ガリ"よりもかなり甘さを強くしたような甘酢漬け生姜がこんもりと入っていた。生姜をつまみつつピータンを囓り、ビールを飲む。
鬼平は……ピータンなんて食べなかったよなぁ。今の時代で良かったと思う水曜の夜。

8/30 (木)
海老といんげんのレッドカレー (夕御飯)
……のつもりが、どう見てもイエローカレー……(汗)
「ベノア」の
 紅茶のスコーン
 プレーンスコーン
ホイップクリーム
アイスティー

昨日、銀座の松坂屋の地下で「ベノア」という店のスコーンを買ってきた。独身時代、母がさんざん買ってきたスコーンの店だ。母と私は「ここが一番美味しいよね」と、何度も何度ものここのスコーンを買ってきた。

紅茶とプレーンのスコーンを2個ずつ買い、息子にはチョコのマフィン。うきうきと帰宅して、自宅のそばのスーパーでクロテッドクリームを買おうとしたら……売ってなかった。ちょっとばかり落ち込みながら「ホイップクリームも悪くないしねぇ」と生クリームを買ってきた。もちろん非植物性油脂の、乳脂肪分高めのやつだ。

昨夜のだんなの帰宅は、なんと4時過ぎだったらしい。朝から眠そうな目で風呂につかっているだんなに生クリームつきスコーンなんて可哀想かとも思ったけど、
「大丈夫だよー。食べるよー」
と言う。せめて冷たい紅茶でさっぱりと……と、ダージリンセカンドフラッシュをポット一杯に作り、氷をぎっしり詰めたポットに一気に流し込む。
冷たい紅茶に、ホイップクリームをたっぷりつけた熱いスコーン。美味しかったけど……やっぱりだんなは眠そうだった。

冷やしうどん

今日はお仕事でホームページのレシピコーナーの作成。「あああ、美味しそうかも……」といかにも美味しそうな写真を眺めながらの空腹の作業は辛い。でもあまり時間的余裕もない。結局昼御飯はうどんを茹でてつるつると啜るにとどまった。せめてもと鰹節と昆布でだしを取り、醤油と味醂と酒で自分でかけ汁を作ってみた。上から刻み葱と刻み海苔をたっぷりと。

細切りきゅうり with マヨネーズ
海老といんげんのレッドカレー
ナン
モルツ
メロン

昨日、「ココナッツミルクってどんな料理に使うのでしょう?」という主旨のメールをいただいて、「これこれこうすると美味しくて、ああ、あんなことしても美味しくて」とお返事を書いていたら無性にココナッツミルクが恋しくなった。折しも、夕方に寄ったスーパーでブラックタイガーが大安売り。
「おお!神はカレーを作れと言っている!」
と勝手な解釈を施して、海老を買ってきた。

「海老と筍のレッドカレー」という、ケンタロウさんの本にあったレシピを一応参考にしてみた。サラダ油とバターでにんにくとXO醤(本当は豆板醤だった)を炒め、海老と加えていんげん(本当は筍だった)を炒める。カレー粉をふり、ココナッツミルクとローリエを加えて少々煮詰める。最後に塩と砂糖で味を調えてできあがり。
できあがったものは、確か「レッドカレー」という名前であった筈なのに、どこから見ても「イエローカレー」になっていた。豆板醤をXO醤に変えたのがまずかったのか、それ以前に量が少なかったのか。だけれども、じわじわと辛さが舌に広がるカレーは、それなりにそれっぽい味になっていた。
スーパーで幸い見つけた、冷蔵のナン2枚セットも温めてテーブルへ。こういうカレーなら御飯よりナンの方が似合うような気がする。

そして、今朝貰ったばかりのきゅうりは長さ半分、太さを4分割にしてマヨネーズを添えただけでテーブルへ。
午前中、お義母さんが
「ほほほほ、八百屋に行ってきたのよ〜」
と山のような葡萄といんげんとほうれん草ときゅうりを持ってきてくれたのだ。更に数分して
「ほほほほほ、忘れていたわ〜」
と枝豆まで置いて行った。還暦を過ぎて以前元気な義母である。丁度野菜を買わなきゃと思っていた頃なので、実は大変に有り難かった。
新鮮なきゅうりはあまり加工しないでシンプルな味で囓るに限る。

バリバリときゅうりを囓りながら、辛くて甘い、とろんと黄色いカレーをナンでくるみつつ食べる。
ココナッツミルク、1/3くらい残ったのでこれは水と牛乳で薄めて砂糖入れて、ココナッツミルクドリンクにして一気飲みする予定。

8/31 (金)
青山 クチーナ・トキオネーゼ・コジマにて「くたくた野菜のフジッリ」 (夕御飯)
木村屋のクリームパン
カチョカヴァロのチーズトースト
アイスカフェオレ

スーパーにて安売りしていた菓子パンを買ってきてみた。「木村屋」の文字のついた、同じ装丁であんぱんも売られていたやつだ。
「木村屋だったらきっと美味しい……」と思い、家族分籠に放り込んでみたのだ。

これが、あんまり美味しくない。粗悪な水飴が入ったようなクリームは、心地よくない感じにねっとりとしている。卵や牛乳などの香りもあまりしない。同じ名前のついた菓子パンではあったけど、やはり銀座4丁目のあの老舗のあんぱん屋で買うものとは天と地ほども違うのだった。
……もうスーパーの菓子パンは買わないぞ。

あとは、アンデルセンの小さなサイズの食パンにチーズ"カチョカヴァロ"を乗せてトーストしたもの。分厚く切ったチーズがとろんと溶けたところで、アイスカフェオレをグラスに入れて朝御飯。
今日はお仕事。夜には生まれて初めての「レストランオープン記念のレセプションパーティー」にお呼ばれだ。ちっとはお洒落しようと思いつつ、結局いつもとあまり変わらない格好で出勤したのであった。

大学教職員用学食にて
 Cランチ(うな丼セット)

「昼は一人で学食(←もちろん学生用)かな〜」
と思っていたところ、
「今日もお昼、ご一緒しますか?」
とボスの教授に誘われた。4月から勤めはじめて5ヶ月、今週の火曜日に初めて昼食を共にしたばかりなのに、続くときは続くものであるらしい。今日は2人で連れだって教職員用学食へ。

今日初めて認識したのだけれど、妙に小洒落た(そして味も悪くない)教職員用学食は、パレスホテルが運営しているものなのだった。
日替わりランチは3種類。丼や麺、カレーなどの軽めのAセットと、スープもついてくるちょっと豪華なBセット、そして和食のCセット。

普通、「目上の人と食事を共にする場合、その人と同じものかあるいは値段が下のものを注文すべし」という鉄則があるらしい。確か就職活動の時に読んだ本か、先輩からの話とか、そんなもので学んだような記憶がある。
んが、今日の私は「Cセット」に目が釘付けになっていた。「鰻」と書いてある。あああ、鰻は久しぶり。Aは冷麺でBは洋食。やはりここは「鰻」だろう。でも……お値段が一番お高い。

すると、私の煩悶を見透かしたように教授が
「何でもお好きなものを……ああ、鰻がありますよ、どうですか?」
なんておっしゃるのである。そのくせ御自分は
「僕はね、冷麺を食べます」
などと言うのである。ちなみに冷麺は、一番安い。……ま、いいや。
「はい、鰻、大好物なんです〜。鰻食べますっ!」
と、"謙虚をもって良しとすべし"の権化のような私の母が聞いたら頭を抱えるような返事をしてしまった。でも、鰻が私を呼んでいるのだ。

大きなどんぶりに御飯、その上には1尾分の大きな鰻が黒々と光っている。野菜入りの柔らかな卵焼きと、揚げたししとう、ガリが飾りでついてくる。漬物の盛り合わせの他には、茗荷を散らした白魚の吸い物がついてきた。ふかふかと柔らかく香ばしく、なんとも上品な鰻だ。甘すぎず辛すぎないタレも丁度良い。
4人がけの席に2人でついていたところ、途中から先日も同席したY教授もやってきて、結局3人での食事となった。

話はいつのまにかホームページ運営の話になり、更にいつのまにか私のサイトの話になった。「どのくらいの訪問者があるのですか?」という質問に
「先日累計で10万人を超えまして、日記のページは……それだけを見に来る人もいまして、17万くらいだったと思います」
と答えたところ、「それは無料で公開しているんですか?そんなに見られていて?」と重ねて質問した私のボスは
「……それは……経済的行動ではないですねぇ……」
と至極経済学者らしい結論を出した。"経済的かどうか"の視点で眺めたら、私の日常活動はほとんど経済的でないと思います、教授……。

「青山アクアパッツァ」改め「Cucina Tokionese Cozima」にて
 レセプションパーティー
 スプマンテ、白ワイン
 パルマの生ハム
 前菜盛り合わせ
 パスタ5種
自宅にて
 エスプレッソ
 梨

本日、生涯初めての「レセプションパーティー」。午後3時から午後9時まで好きな時にいらしてねん、という招待状をいただいた。
今日は「青山アクアパッツァ」が「Cucina Tokionese Cozima」を名前を改めてリニューアルする記念パーティーの日だ。いつもこちらの小さな仕事を多大なサービスで返してくれるので、せめてもと大きな花を贈ってみた。良く「笑っていいとも」のゲストの背後に並べられるような、足つきの盛り花だ。筆書きで「クチーナ・トキオネーゼ・コジマ様」なんて入れてもらったりなんかして。

だんなと連れだって午後6時半、店は既になかなかの盛況だった。入口には私たちが贈った花と並んで「キハチ」や「山田宏巳」さんなどの花もある。山田さんからの花は、大きな籐の籠に山盛り入ったひまわりだった。何だかとても"らしい"気がする。店内にも胡蝶蘭や花籠が沢山置かれていた。「パーティー」というから立食なのかと思ったら、お客は入口でスプマンテと生ハムを貰い、適宜用意された席に案内されるようになっている。店の入口には、いきなり一抱えもありそうな巨大なハムの塊が置いてあり、それを薄く薄くスライスして皿に乗せてくれた。

お店のスタッフ総力で、という感じに見知った顔の店員さんたちが全員てきぱきと動いていて、次々に「まぁ食べてってよ〜」という感じに皿が並べられる。名前が店名に冠してしまった料理長のKさんも、ワインのボトルを持ってグラスに注ぎつつ挨拶して回っている。
前菜の盛り合わせと、パスタが5皿やってきた。

秋刀魚か鰯か、秋の魚の味がする魚のグリルや、新鮮なウニが乗ったクロスティーニ、温かい肉詰めのパイにふわっと揚がった海老のフリッター。温かい前菜と冷たい前菜が、美しく8種類ほど盛られている。いつも手間がかかっている前菜に驚かされてはいるけれど、今日はまた一段と気合いが入っているように感じられる。
私がくねくねするほど美味しいと思ったのが、小さなティースプーンに1杯ちんまりと皿の隅の方に置かれていた前菜。フォアグラとトリュフを滑らかに練り合わせたムース状のものに、上にはいちぢくのピューレが細く糸のように飾られている。いちぢくのこってりした甘さと、独特の柔らかい苦さのあるフォアグラの味がなんとも良い感じ。多分、ティースプーンに1杯だから美味しいのかもしれない。でもバケツ一杯食べたい感じ。

そして、次々出てくるパスタ類の数々。柔らかいタコが入ったオイルベースのスパゲッティーニ、くたくた野菜のソースのフジッリ、チーズとかぶのリゾット、ジェノベーゼソースの手打ちパスタ、更に海苔と柚子胡椒のクリームソースのストラッチ。ソースはもちろん、パスタの種類も全て異なっていた。
牛と羊と山羊の乳を混ぜて作るという、ちょっと面白いチーズやモッツァレラ、タレッジオなどのチーズを混ぜ合わせたというリゾットの糸引く美味しさも素敵だったけど、私は素朴な素朴な味のくたくた野菜のフジッリがとにかく美味しかった。じゃがいもがほとんとピューレのように柔らかに煮込まれたものがスープやらにんじんやらイタリアンパセリやらの味と混ざり合って、螺旋の筋がついたショートパスタに絡んでいる。バターの香りがしてくるような、どこか懐かしい味だった。

招待客は続々と増えてくるようで、ウェイティングバー代わりになっている1階はかなりな混雑になっている。食べるだけ食べて、すっかりほろ酔い気分満腹気分で店を後にした。何だかすっかり"お祭り"という感じ。
帰りには、小さな紙袋入りのお土産まで渡された。中には生の手打ちパスタが袋に入り、店名入りのシールが貼られている。
「そうそう、これこれ、秘密のスパイス〜」
と私と同い年のマネージャー、Sさんが渡してくれたのは、「アーリオオーリオペペロンチーノ」の素。オリーブ油と一緒に茹でたてスパゲッティに絡めると、あっという間に「アーリオオーリオペペロンチーノ」になるという秘密の粉だということだ。
「お店で、"いいねいいね、これ作って配ろう!"って決めたのは良いんですけどね、作るのがとっても大変だったんです〜」
とSさんは苦笑していた。小さな瓶にも店名のシール入り。