食欲魔人日記 01年03月 第2週
3/5 (月)
イカとイクラのサラダ (夕御飯)
おでん
御飯
抹茶入り玄米茶

「朝食におでんがあるなんてシアワセだなぁ〜」
と、だんなは起きるなりおでん入り両手鍋の火をつけていた。2日目の大根が彼を舞い上がらせている。彼は大根愛好者なのであった。

昨日はちょっとばかり固かった大根も、中心まで茶色に染まってやわやわとなっている。だんなならずとも、こういう大根はとても美味しい。
「卵、取っちゃうね」「僕はうずら巻きを食べちゃうよ」などと言いながら、好みの具を盛りつけて御飯と共に食す。がつがつ。

牛タンの塩焼き レモンと胡椒ぶっかけ
ワカメの中華スープ
御飯
冷茶

週末、賞味期限の関係で半額シールのついた小さな牛タンパックを買ってきた。一人(いや、息子もいるけど)あぶって食す平日の悦びよ。250円で7枚も入っている。ちょっと嬉しい。

焼き網で焼くのが好ましいけど、後の始末を考えるとちょっと避けたい。ここはフライパンをカンカンに熱して、一気にジュッと焼くことにする。塩と胡椒をたっぷりすりつけたタンをささっと両面焼いて、1/4割にしたレモンを皿に準備しておく。胡椒挽きもテーブルに。焼きたてのタンを皿に盛り、用意しておいたワカメのスープと御飯を前に、レモンを絞り胡椒をガリガリかけて喰うべし喰うべし喰うべし。準備10分食事5分。タンは冷めるとゴムのようになっちゃうからここは急いで喰わねばならない。

はふはふ言いながら、私5枚息子2枚でタンを食べ尽くした。ああ、やっぱり牛タンは焼き肉屋で15枚くらいたっぷりと食べたいところだ。

イカとイクラのサラダ
牛肉のたたき
昨夜のおでん
ワカメと油揚げの味噌汁
御飯
モルツ

残ったおでんを喰わねばならぬ。イクラも喰ってしまわねばならぬ。じゃあ、和風の献立を考えよう、とあれこれと準備。

キュウリを薄切りにたっぷり用意してイカとイクラのサラダ。刺身用のイカとイクラをキュウリと一緒に盛り合わせ、ドレッシングは酢と油と塩胡椒、砂糖を混ぜたところにおろし玉ねぎを混ぜたもの。
ついでに安売りしていた牛の塊肉をバターで焼き付けてからオーブン焼きにしてローストビーフ状に。これは茹でたほうれん草と盛りつけておろしにんにくがたっぷり入った醤油だれにつけて食べる。あとは、大根がごろごろ残るおでん。味噌汁に御飯。肉が多いのかそれとも魚が多いのか、野菜が足りないようでいてなかなか充実しているような、ちょっと奇妙な献立になった。

だんなが帰ってくるであろう10分前くらいに、オーブンから出してからアルミホイルでくるんでおいた牛肉をサクサクとスライスする。美しく良い具合に薔薇色に焼けた肉の断面、思った以上に良い感じになっていた。平皿にほうれん草を敷き詰めて肉を飾る。別の皿にはきゅうりを円形に飾ってイカを盛りつけイクラを散らす。美しく盛りつけるというのはなかなか難しいことだ。

ビールでサラダと肉を喰い、おでんをよそって御飯を食べる。イクラがまだまだあるので、醤油を垂らして御飯に乗せて、イクラ丼。
ローストビーフ、まだ半分近く残ってるから明日の昼はローストビーフサンドにしよう。そうしようそうしよう。

3/6 (火)
合桃糊〜くるみのお汁粉 (おやつ)
最後のおでん
納豆
御飯
抹茶入り玄米茶

こないだ、卵1パック99円セールをやっていたので2パックも買ってきたのだ。……でも一向に減らない。悪の根元は日曜日から喰い続けているこのおでんにあるのであった。おでんがあるから、目玉焼きやオムレツを作る必要性がないのである。恐るべし、おでん。

だが、このおでん三昧の日々も今日で終わる。鍋の底に頼りなく沈んでいるのは大根が2切れと茶色く染まったハンペンと、エッジが崩れまくったちくわぶ1つ。ちまちまっと具を盛りつけて最後のおでん。毎日食べて不味くなっていくんじゃ楽しくないけど、だんだん美味しくなってくるから煮込み料理はたまらない。

大根1つとちくわぶ1つ。それだけじゃちと物足りないので納豆も取り出した。日本の食卓だなぁ。美味しいなぁ。

ローストビーフのサンドイッチ
アップルカルピス

昨夜作ったローストビーフもどきが残っている。ここは美味しい食パンを買ってきてサンドイッチにすることにしよう。

午前中、ぷらぷらと近所に買い物に出向き、「ホテル食パン」なる名前のついた食パンをパン屋で買ってきた。そのまま喰っても旨そうなそれをさくさく切ってガーリックバターを塗り、2枚のうち1枚にとろけるチーズを乗せてトーストする。焼き上がったところにレタスをどかーん、きゅうりもどかーん、分厚く切ったトマトもどかーん、ローストビーフも何枚かスライスしてから醤油れに一度漬け込み積み上げる。てっぺんにチーズトーストをかぶせれば、豪華ローストビーフサンドのできあがり。

……ちょっとやりすぎたようだ。切ったパンも厚ければ具も多すぎたようで、高さが7cmもあろうかという巨大なサンドイッチになってしまった。ビッグマックよりも高さのあるこいつは、口に押し込むのも一苦労だ。柔らかいパンを上からぎゅうぎゅうと押さえつけて無理無理食べる。ああ、何だか格好悪くなっちゃったぞ。すまんサンドイッチ。

厚いトマトもしゃきしゃきの野菜も、とろけたチーズとごま油の風味のローストビーフと思ったより調和していた。適当に作ったにしては、充分いけた。

合桃糊 〜 インスタント胡桃のお汁粉

友人のKさんが香港土産を送ってくれた。乾麺のセットにインスタントお汁粉類。おお、胡麻や胡桃のお汁粉だなんて懐かしい。さっそく1つ開けておやつに食べる……というか飲む。

どろっとした温かい液体のこのデザート、香港ではメジャーなものであるらしい。食した料理店でも多くの店がこういうデザートを置いていたし、喫茶店のようなところにも多くの種類が売られている。こしあんの汁粉のように粘度があって、とても甘い。味は黒胡麻とか白胡麻とか杏仁とか胡桃や各種のナッツなど。冬には温まって嬉しい飲み物だけど……食後に飲むには隨分と胃にたまるものではなかろうか。

パッケージには中国語と英語で作り方が書いてある。要するにお湯で溶けば良いだけだから至極簡単だけど、中国語の説明文というのはなかなかに味わい深い。
「把一包合桃糊粉倒入杯内或椀内」だの「冷蔵後飲用均可」だの「放任清涼乾爽的地方」だのという文字が並んでいる。漢字で並べられると妙に説得力があって、
「は、杯か椀に入れればよろしいのですね。」
「冷蔵庫に入れて冷やしてもよろしいのですね。」
と素直に従いたくなってしまうのは私だけか。

薄いクリーム色の粉をカフェオレボウルに入れてお湯200ccで溶く。とろっとした甘い匂いの汁粉になった。そうそう、こんな感じ。
練り胡麻にも似た胡桃のペーストがたっぷり入ったような、甘い甘い飲み物。あああ、憧憬募る香港よ。今年の夏には行っちゃうんだもんね。絶対絶対行っちゃうんだもんね。

ほうれん草のナムル
回鍋肉
豚汁
御飯

苺 with コンデンスミルク・牛乳

「回鍋肉が食べたいなぁ。」
とだんなが先日より繰り返すので、ご要望にお応えして回鍋肉。どういうわけか冷蔵庫にキャベツが2玉もあるので喰ってしまわなければ、という事情もある。春キャベツが安くなったと、調子に乗って買いまくっていた結果であるらしい。

まずは豚バラ肉のブロックを生姜と葱を放り込んだ鍋でぐらぐらと茹でることから始まる。その間に大根やにんじん、ごぼうを切り刻んで豚汁の準備。ごま油で細切れの豚肉を炒め、大根類も炒め、そこへ先の下茹でしていた豚のスープを入れて煮込む。いつも下茹でのスープは色々なものに利用しているが、今日は豚汁に化けてもらった。

ほうれん草は茹でてにんにくとごま油とすり胡麻をたっぷり絡めてナムルにし、ブロック肉はキャベツとピーマンと炒め合わせて回鍋肉に。私もだんなも豆板醤の辛さにあまり強くないので、うちの回鍋肉はXO醤をだばだば入れる。これならあまり脳天にくるほど辛くないのにじわじわと辛さが染み出て良い感じ。
XO醤は各社から出ているけど、できるだけ本格的なのがやっぱりあからさまに美味しい。香港のレストランオリジナルのものを買うのが野望だけど、とりあえず今は横浜中華街の食材店で買ってきた店オリジナルの具沢山のやつを使っている。オイルに浸った海老だの帆立だのがたっぷりと透けて見えていかにも美味しそうだったのだ。事実、美味しい。

回鍋肉はビールにも合うし御飯のおかずにもなる。山ほどのキャベツとピーマン、赤ピーマン、300g強の豚肉を使って作った回鍋肉はさすがにちょっと多かったらしい。小皿に移してラップをかけて、このおかずは明日に持ち越し。

3/7 (水)
ウニの和風カルボナーラ (夕御飯)
回鍋肉(昨日の残り) 豚汁
ご飯

2日目の豚汁を温め、昨日の残りの回鍋肉をレンジでチン。
豚汁は「2日目の」とか「3日目の」などと言えるけど、回鍋肉は「2日目の回鍋肉」などとは言わない。本当なら作ったその時に食べ切らなきゃいけない回鍋肉が残っちゃっていたものだからいそいそと温める。

我が家の豚汁には、食べる間際に刻み葱と七味唐辛子をふる。刻み葱ぶっかけは私が持ってきた文化で、七味唐辛子ぶっかけはだんなが持ってきた文化だ。

かなり昔、夏休みに母と二人で上高地に行ったことがあった。そこで宿泊したホテルの朝御飯に豚汁が出た。
食事はパンなのである。いや、洋食か和食か選べたとは思うけど、私が食べていたのは確かトーストにオムレツ、サラダに紅茶という感じだったはずだ。なのに、パンを持ってきたウェイターは
「あそこにセルフサービスですが豚汁をご用意してあります。」
などと言うのであった。パンに豚汁。いいじゃないかいいじゃないか、と嬉々としてよそってきたのだった。

上高地の朝は寒い。真夏であっても長袖を2枚くらい重ねなければ震えがくるほど寒かった。「避暑」というより「寒地」に来ている、という感じだった。
だから、その豚汁はとてもとても有り難かった。給食鍋のような巨大な寸胴鍋になみなみと味噌汁が入り、その脇には刻み葱がたっぷり用意されていた。味噌汁の表面には、今垂らしたばかりのようなごま油の香りがして、これがまたとても温かくて良い感じだったのだ。ごま油の香りの豚汁は具沢山で、上からどっさりかけてきた葱がしゃきしゃきと香ばしくて旨かった。
ああ、煮込まないで上からかける葱って美味しいんだなぁ、としみじみ思った記憶がある。

というわけで、我が家の豚汁は葱を後からトッピングすることになった。
上高地での一番鮮烈な思い出がこの豚汁だってんだから、私の情緒もどうかと思う。

ローストビーフサンド
チャイ

昨日に引き続き、ローストビーフサンドを堪能。昨日の顎が外れそうに巨大にできてしまった教訓を生かし、今日は薄く薄くパンをスライス。トースターに放り込む前にガーリックバターを塗り、1枚にはとろけるチーズを乗せる。具はレタスと玉ねぎ、きゅうりと厚切りトマト。これを焼きたてのパンに積み上げて、ローストビーフも積み上げて、今日は塩胡椒をたっぷりかけてマヨネーズを挟んで完成。
上からぎゅっと押さえると、今日は顎が外れない程度に食べやすそうなサイズになった。

お供にチャイ。鍋にて湯で茶葉を濃いめに煮出し、そこへ牛乳をだばだばと美味しそうな色になるまで注ぎ、最後にスパイスミックスをふりかける。砂糖も入れなきゃ美味しくない。ほの甘いくらいに味をつけて、表面の牛乳の膜を寄せつつマグカップへ。

牛乳の膜っていまいち苦手だ。ポタージュスープの表面の膜は大好きなんだけど(ほの甘くて美味しい)、ホットミルクやミルクティー、カフェオレなんかにできる膜は必死になって除けてしまう。多分栄養がそこらへんにあるんじゃないかと思うんだけど、でもキライなのだ。仕方がないのだ。

ウニの和風カルボナーラのリングイネ
アールグレイティー

これより3日間、だんなは帰宅が遅くなるらしい。お仕事大変であるらしい。

だんなのいない食卓は、彼のキライなものを作ってしまうに限ると、それなりにだんなのいない食卓をエンジョイする。まずはウニを買ってきた。彼はウニを「臭い」と言って好かないのだ。「鮮度が良くて上質のやつなら臭くないから喰える」などと贅沢なことを抜かしている。それも一理あって、それはとても良くわかるけど、でも私は安いウニは安いウニで愛しているのだ。だんなのいない食卓で、彼のキライなウニのスパゲティ作り。

まずはリングイネを茹でる。その間、片手鍋にウニを1パックうりゃと入れ、スプーンで粗くつぶしておいて卵黄1個を落とす。生クリームを適当に入れ、醤油も適当に入れてソースにする。混ぜ合わせたソースの中に茹でたてのパスタを落とし、火にかけて卵黄を固めつつ絡め合わせる。こってり粘度がついたところで食卓へ。てっぺんにイクラをちょっと飾ってみた。ついでにイタリアンパセリも。

どこを喰ってもウニの味がする幸せなパスタだった。しかもイクラが絡んで更に豪華だ。磯臭くて醤油の味がして和風ではあるのだけれど生クリームも入っていて和洋折衷の不思議な風味がした。

しかし、問題は息子だ。パスタの通常1人前見当80gをぺろりと食べるのはまぁ良いけど、ウニの塊をつまんでは「うにぃ〜」とほくそ笑みながら食べるのはいかがか。私のウニをも狙うのもいかがか。
私は20歳過ぎまでウニの美味しさがわからなかったのだ。「こんなぷよぷよで気色悪いもの」と食べられなかったのだ。それをこの目の前の2歳児は旨いと思っているらしい。
「……うに、おいしい?」
と尋ねると
「おいちー!」
という返事が返ってきた。育て方をちょっと誤ったかもしれない、と思った一瞬だった。

3/8 (木)
牡蠣ごはん (夕御飯)
冷凍海老ピラフの目玉焼き乗せ
3日目の豚汁
冷茶

だんなは良く冷凍ピラフを買ってくる。先日も
「冷凍食品が安売りしてたよぉ〜」
と4袋も買ってきた。海老ピラフが2つ、ガーリックピラフに五目ピラフ。何故海老ピラフが2つあるのかということは多く問わないことにした。私自身は滅多なことじゃ冷凍ピラフは買わないくせに、あるとあったでついつい喰ってしまうのだなぁ。そういうのは、時折喰いたくなってしまう。冷凍もののアメリカンドッグとか、安っぽい味のピザだとか。

昨夜パスタにしていたということもあり、今日はめでたく冷凍ピラフ日和。バターでピラフをちゃっちゃと炒め、豚汁をよそう。煮詰まったおかげで味噌の香りが飛んでしまった豚汁にごま油を1滴2滴落とし、刻み葱をぶわっとかけて食卓へ。

ピラフには、半熟目玉焼きを盛りつけた。塩ふって胡椒もかけて、黄身を崩しながらピラフを食べる。卵を絡めるにはちと薄味のピラフではあったけど、これで冷蔵庫にぎっちり詰まっていた卵が減って良かったなというか。

稲毛 Shibaにて
 チキンカレーのサービスターリ

本日は、夜に雪がふるかもとかいう。それにしては午前中は見事な青空だ。今日はホームセンターに行くことにしよう。ちょうど花の苗のセールを昨日からやっているのだ。目当ては花ではなく、食用のハーブだというのが何とも言えないけれど。

自転車を十数分こいで、ホームセンターへ。荷物はそれほど持てないはずなのにオレガノとチャイブ、ディルの苗に加えてエリカの大きな鉢とテーブルヤシの苗と高さ1mくらいはあるユキヤナギの苗を買ってしまった。しかも陶器の植木鉢を2つも。泣きたくなりそうにヨロヨロしながら帰宅。ユキヤナギの苗をハンドルにぶらさげてきたせいで、左の手の甲に盛大な引っ掻き傷までできてしまった。我が買い物に悔いなし。

昼御飯は一度家に戻って荷物を置いてから、歩いて旨いカレー屋に行くことにした。「サービスターリ」が名物であるらしい、「Shiba」というお店だ。開店の12時丁度に入店すると、常連らしい一人客が間を空けずに席を埋めていく。

ここ何度かカレー類に浮気していたけれど、本日は「サービスターリ」にすることにした。大きな大きなアルミの皿にサフランライスがたっぷり盛られ、4種類から選択した肉のカレー(マトンとかチキンとか)が1種類と、野菜のカレー、青菜のサグという煮込みが小さな器に盛られてライスの横に並べられる。そして鶏肉のスープらしき黄色く濁ったアツアツのものもくる。ライスの横にはピクルスのような酸味のある野菜も少々。
これら全部をライスの上にぶっかけて、ビビンバのごとくかきまぜまくって食べるのが方式。できあがりはこの日の日記にあるように、こんな感じ。あまり美しくはないけれど、これが妙にじわじわと美味しいのだ。あとは熱いチャイもついてくる。

本日の選択カレーは「中辛」のチキンにしてみた。これまで脅えて甘口ばかりを頼んでいたような気がする。ちょっとばかりのチャレンジだ(私は辛いものに強いとは言えない)。「中辛」の次にはマトンの「劇辛」が待っている。ここに到達するにはまだまだステップが必要だろう、きっと。

今日もぐちゃぐちゃと盛大にかき混ぜ、極彩色と化したカレーとも混ぜご飯ともつかぬものを口に運ぶ。全体的に水分がやや多く仕上がる、食感は「ぺしょっ」という感じだ。「青菜入ってます」「野菜入ってます」「肉入ってます」と口の中で色々な食材がわちゃわちゃと主張する、なんとも口中が騒がしくなっちゃうような料理だ。妙にクセになる。

息子は横で、薄くパリパリに焼かれたスパイシーな「パッパル」だか「パッパレ」だかいうおせんべを喰っていた。ほんのわずかにピリピリと辛いけど、適度な塩加減があってそのパリパリ加減がなんとも美味しい。

でも、ホントはその「パッパル」だか「パッパレ」ではなくて「チャパティー」が絶品なのだ。ナンとちょっと似ている、表面はサクッとしていて中はふわふわもちもちとしたパンのようなナンのようなそれは、絶妙にスパイスが良い感じに効いていて、辛さのある甘酸っぱいマンゴーのチャツネのようなソースがなんともこれまた旨いのだった。
忙しいと全然作ってくれない。もう3回注文して断られてるのよね。注文するたび、奥で頑固おやじのような声が「注文いっぱいでいっそがしいから作れねぇよ〜」とか困惑した音色で聞こえてくるのだ。いっそがしくないときに行かなきゃいけないらしい。でも、いつ行っても混んでるんですけど。どうしましょう。

豆腐の変わりやっこ
豚汁
牡蠣ごはん
冷茶

だんなの遅い週間、2日目。今日は牡蠣を買ってきて、牡蠣ごはん。
良くあるレシピだと、炊飯器に調味料や米と共に生牡蠣を放り込め、とある。……でも、それって牡蠣に火が通りすぎはしないか。やはり美味しさを考えるに、牡蠣は仕上がり間近に入れるべきじゃなかろうか。そう思ってレシピを各種探してみると、いつかメモした中村孝明さんのものが発掘された。和食の鉄人である。彼のレシピは旨そうだった。

まずは酒と醤油で牡蠣をさっと煮る。ぷくっとしたら牡蠣は除け、ご飯にその煮汁を漉して混ぜ込み、生姜の刻みを放り込んでまずは炊く。で、炊きあがってから一度火を通した牡蠣を混ぜ込んで、数分蓋してできあがり。牡蠣がぷっくりと膨らんで良い感じに炊きあがった。

あとは、豆腐で冷や奴よりも少しばかりボリュームのあるおかずを。
豆腐の上にしらすをぶわっとかけ、刻み葱もぶわっとかけ、かつおぶしは更にぶわっとぶわっとかけ、そこへ熱したごま油をジャーッとかける。かけた途端にかつおぶしと葱が一瞬にして揚げられたような状態になって、そこに醤油を垂らして豆腐を食べる。

ごま油は当然京都の「へんこ山田」さんのもの。1年ほど前に友人が教えてくれたお店だけど、「な、なんて旨いごま油なんだぁ!」と感動するに至った前後に「どっちの料理ショー」の特選素材になっちゃったりしてえらく有名な店になってしまった。
でもでも、本当に美味しい。琥珀色の美しいごま油は、ビビンバを作る時などにものすごい威力を発する。この油使ったら、何使ってもその味はプロ級!という感じだ。いやいや、ホントに。
今日の豆腐も、そういうわけでシンプルなくせにえらく旨かった。ちなみに「へんこ」とは京都の方言で「がんこ」という意味であるそうな。

腹一杯になって、「美味しいくわいと言われても……」と困惑しながら見ているのは豚バラ丼VS中華丼の「どっちの料理ショー」。美味しいくわいよりも美味しい紹興酒が味わえる方が嬉しいし、少し遅く帰ってきただんなは牡蠣ごはんをかきこみながら
「そりゃ、豚バラ丼だよなぁ〜」
と言っている。

そうなのよね、豚の脂って美味しいんだわ。美味しい豚バラ肉ってのは本当にやわやわでふかふかでそのくせギトギトしてなくて美味しいんだわ。
……でも、中華丼にうずらの卵がたっぷり入っていたらちょっと傾いてしまうかも。

3/9 (金)
10秒後に食したことを後悔した、うな丼 (夕御飯)
目玉焼き
ラスト豚汁
牡蠣ご飯
抹茶入り玄米茶

昨夜炊いた牡蠣ご飯は3合あったのだ。お代わりせずに家族が食して約3食分。牡蠣が入っているゆえに、残ってしまったところで冷凍保存はしづらいなぁ……と思案していた。
そんな心配は杞憂であった。昨夜は家族全員がお代わりして2合弱を消化し、今朝も私とだんながやや大盛り、息子は子供茶碗で2膳しっかり食べてくれて、めでたく2食で3合完食したのであった。すばらしい。

昨日のぷりぷりした牡蠣の食感はさすがに保温モードで水分が少々抜け気味で、ふにゃっとした感じになっていた。でも醤油と生姜の味が染みたご飯はやはり旨い。
4日ごしの、もう具が渾然一体となった豚汁も飲み干して、ついでに半熟目玉焼きなぞも作った朝御飯だった。

バタートースト
ベーコンとパルミジャーノのオムレツ
チャイ

1ヶ月ほど前に、またケンタロウさんの本を買ってきてしまった。ついつい書店で彼の新刊を見ると「ややややや」と釘付けになってしまう私がいる。簡単に作れるものばかりで、実際美味しいものが多い。同い年の彼に教わるように実践しちゃってる私はちょっと情けない気がしないでもない(私は創作料理はほとんどできない……)。

その本は、『ケンタロウのハワイが好き!のんびりしあわせ一皿レシピ』(講談社)だ。中はひたすらハワイチックなメニューが並んでいて、眺めているとパンケーキとか具沢山オムレツだとかを作りたくてたまらなくなる。スパムやトロピカルフルーツを買ってきたくもなってしまう。ハワイというところはいまいち好きになれないけど、その本は良い感じだった。

「パンケーキ作っちゃおうかなぁ……いやいや、パンがあるし」
「じゃあ卵処分も兼ねてオムレツだな、うん」
と結論づけて、オムレツ作成。本来載っていたものはアメリカンソーセージ入りであったりハムやチェダーチーズ入りのものであったりしたけれど、冷蔵庫の中身と相談した結果ベーコンとパルミジャーノ・レッジャーノチーズの具に確定した。

卵3つ溶いておき、ベーコンはちょっと大きめにコロコロと切り、チーズは粗くすりおろしておく。卵をフライパンにじゃーっと流し、くるくると数秒かき混ぜてから具を半分側だけに散らし、半熟のうちにパタンと畳んでから、皿にえいやっと盛りつけるだけ。洋食屋のオムレツみたいにフライパンをトントンと小刻みに動かしたりはしない。しても私の技術では到底できない。パタンと2つ折り、そして盛りつける。本に書いてあったとおりに実践すると、それで案外綺麗にできた。ありがとうケンタロウ。

バターたっぷり塗って焼いた厚切りのトーストと、卵3個のボリュームオムレツ。そして、今日はスパイス多め砂糖多めで濃い味に煮出したチャイも用意。いつもは「スパイス香ってます。ほんのり甘いです。」くらいにしているところを、「スパイス山盛りです。甘味も濃厚です。」レベルに盛り上げて作ってみた。

濃い味のチャイ、美味しいのなんのって。こっくり甘く、ちょっとばかり辛みまで感じるくらいのスパイスが爽やかだった。息子はその未知なる味に「おぉぉぉぉ、おいっちぃ〜」と目を白黒させて感動しきり。あつあつのチャイをえらい勢いで一気飲みしていたのであった。おーい、火傷しちゃうぞ。知らないぞ。

うな丼 改め 鰻の大和煮混ぜご飯
抹茶入り玄米茶

本日の午後は、何やらイベント満載なのであった。ベランダでは業者がやってきて何やらシャッター取り付け工事(←防犯対策)にギャーのギャーのドリルをぶちかまし、夕刻にはKさんが車でやってきた。ついでにお義父さんが入院したという情報までその直後飛び込んできた。なんてこった。

2ヶ月前に東京から千葉に引っ越してきた我が家だったが、この転居に大歓迎の意を表してくれたのがKさんだ。何しろもう1年近くも「いつか会いましょうね」とメールでやりとりしつつ実現していなかったものが、いきなり数キロ圏内に住居が近づいてしまったのだから。

本日は、
「山ほどのパンと巨大なアップルパイを買っちゃったのでおすそわけしたいのですが〜」
と電話があって数十分後、車でやってこられた。呆れるほど巨大なパン袋(ロールパン程度の大きさのパンが50個ほど詰まっている)は400円で、直径50cmはあろうかというアップルパイは800円であったらしい。すごすぎる。ていうか、そういう理由で初顔合わせというのはちょっと凄くはないか。
有り難く、沢山のパンとアップルパイのでかい切り身を頂戴する。日記の内容のごとくな方で、
「お近づきの印と言っちゃなんですが、どうぞどうぞどうぞ〜。」
とポテチの袋とかリンゴジュースまでどかすか貰ってしまった。豪快である。しかも自画像にそっくりだ。
今度は食物交換会じゃない理由でお会いしましょう。のんびりと。

そして数分後、息せき切っただんなから連絡が入った。お義父さんが入院しちまったというのである。折り悪く、お義母さんと義妹の2人は昨日から10日間のフランス旅行に旅立ってしまったところだ。どういう状況なのか良くわからないので、私と息子は家で待機。とりあえず食事の支度も取りやめて、ご飯だけ炊いておく。

で、8時過ぎてどうやら胆石が理由の腹痛だったようで、それほど心配する程度でもないということが判明。腹が減ったこともあって、じゃあ……と冷蔵庫の中から鰻の蒲焼きを取り出した。3枚セットのそれは、鰻の大和煮と共に昨年末にインターネットのプレゼント応募にて当たったものだった。レンジでチンしてご飯に乗せるだけ。良く見たら、賞味期限が2ヶ月近く前に過ぎていたけど、とりあえず気にせず喰ってみることにした。(←賞味期限の判断基準はいつも自分の五感頼り……)

さて。
痛んだ蒲焼きの味、というものを皆様はご存じだろうか。甘辛いタレの絡んだ味の濃い鰻が腐ったらどうなるか。
酸っぱいのである。やっぱりというか何というか。醤油の甘辛いタレの味はそのままに、鰻本体からワインビネガーのごとくの酸味がじわっと立ち上ってきた。匂いは特に不審なところはないが、明らかに味はアヤシイ。
「もしかして、こういう味なのかも」(←んなわけないだろ……)
とそのままもりもりと1切れだけ喰い進み、「……やっぱりヘン」と箸を置いた。1口2口囓っていた息子の分も回収し、鰻にすまぬと頭を下げてゴミ箱に直行していただく。
あうあう、鰻を捨てなきゃいけなくなっちゃうなんて、早めに食べなかった私のバカバカ。
後には、鰻のタレ(←別添でついてきたのをぶっかけた)の染みたご飯だけが残り、食卓は大層寒々しくなった。

……そういえば、蒲焼きと一緒に「鰻の大和煮」なるものも来たのである。あっちが駄目ならこっちも駄目かもしれないが、とりあえずこれも温めて試食することにした。ごぼうが入り、蒲焼きよりより強めの味でこっくりと煮られていた大和煮は、どうやら問題なさそうだ。匂いも見た目も大丈夫そう。
「大和煮が勝つか、私の胃袋が勝つか、勝負勝負〜」
と呟きつつ、大和煮を混ぜご飯にして、食事続行する私たちなのであった。

ここだけの話だけど、お義父さんの入院先に立ち寄って、もうすぐ戻る予定のだんなにも同じく混ぜご飯を食べさせる予定。
明日、全員腹痛で動けないとかだったら、ちょっと恐怖よねぇ〜。

3/10 (土)
青山アクアパッツァにて「トリュフのプリン」 (夕御飯)
酔っぱらっちゃいそうな程旨かった……
ミニホットドッグ ダブル
アイスカフェオレ

昨日の夕飯、私は傷んで酸っぱくなった鰻を1切れ食してしまったのだけど、無事に私は鰻との戦いに勝利したのであった。実のところ、夜半に入ってからちょっとばかり胃痛と吐き気がしていたのだけど、朝はスッキリ。この日の日記の更新が遅れたのは、鰻に敗北したのではなくて、ただ単に豪華夕食を食べて酔っぱらっていただけなのでありました。ぺこりぺこり。(今は日曜日のうららかな午前中……)

さて、朝食は昨夜Kさんからいただいてしまった大量パンを食すことにした。
「冷蔵庫にソーセージ余ってるから、ホットドッグかなっ?」
とだんなは動き出す。このヒトの頭の中には、"食パンでも菓子パンでもないパンとソーセージがあるならば、それはホットドッグにしなければいけない"とでもいう命題でも掲げられているようだった。ドッグパンじゃなくて、丸っこいころんとしたパンなのである。それでもホットドッグにするというのである。そんなに好きか、ホットドッグ。

お義母さんにかつていただいた、長ねぎ入りだという長いソーセージをフライパンで焼く。いつもはカレー粉ふりかけて炒めるキャベツを、長ねぎとは合わないかもと濃厚なバターソテーに。丸っこいパンに切れ目を入れて、キャベツを詰めて長ねぎ入りソーセージ乗せて、とろけるチーズかけてトースターへ。チーズが溶けたらケチャップをにょろにょろとかけて食べる。ミニホットドッグ、1人2つの朝御飯。

パンは、どことなく給食を思い出させる味がした。ちょっとポソポソで素朴な味がした。素朴な素朴なホットドッグになったのだった。

帆船の
 焼きそば
 餃子
 あんまん
 杏仁豆腐
だんな特製野菜炒め
だんな特製炒飯
プーアル茶

「帆船」と書いて、「ジャンク」と読むらしい。そういう名前の持ち帰り専門中華料理屋がこの近辺にあるらしい。近所の八百屋ではその店のパック詰め総菜各種を販売しているのであった。案外と美味しい。

どうもだんなはキャベツともやしのシンプルな野菜炒めが食べたくて仕方がないようで、八百屋で1袋10円だというもやしを総菜類と共に買ってきた。野菜炒めを作り、炒飯を作り、総菜もずらりと並べて昼御飯にしてはやけに豪華な食卓になった。

塩味のシンプルな焼きそば(そのくせ、妙に美味しい中華ハムが入っている)に、魚介も詰まった豚肉の焼き餃子。胡麻油の風味がこってりと漂うあんまんに、100円のくせにふわふわと柔らかくて美味な杏仁豆腐を食す。
だんなのオイスターソースと塩味の野菜炒めに卵たっぷりの炒飯も旨かった。プーアル茶を4杯5杯とがぶがぶ飲みながら、ちょっと遅めの昼御飯。これからちょっと早めの夕御飯を食べにいくというのに、こんなに喰って良いのだろうか。

青山アクアパッツァにて「小嶋スペシャル」ディナー
 突き出し・オリーブのフォカッチャ テリーヌと空豆のピューレ添え
 ミニバーニャカウダ
 海の幸のコンソメゼリーと岩海苔かけ
 焼きイカ 臓物のリゾット詰め プッタネスカソース
 牛タンと根菜の煮込み 野菜のソース
 サフランを打ち込んだタリアテッレ 魚介の少し辛いソース
 海苔のソースのストラッチ
 牛ロース肉のグリル バルサミコ酢ソース ルッコラとトマトのサラダ
 女峰いちごのスプマンテ割り
 白ワイン:DANIELE ILLUMINATI '98

 トリュフのプリン
 女峰の熱いタルト ピスタチオのジェラート添え
 プチフール
 エスプレッソ・ダブル

今日は、数カ月ぶりに青山アクアパッツァへ一家揃って出向くことにした。
お店にパソコンが入ったのでインターネット接続の設定やらメールソフト設定やらをやってくれい、と頼まれつつ数週間もほったらかしにしていたので、食事ついでに設定もしちゃいましょうということで、夕方の開店前に出向くことに。

まだ日も暮れない時間に、新橋からバスに乗って十数分で到着。息子も一緒なんです、すみません〜と伝えておいたら、ガラス張りのドアがビタッと締められる個室状態のテラス席を取っておいてくれた。煉瓦敷の床をパタパタ歩き、ガラス窓にべたっと張り付く息子の姿は、なんだかまるで動物園だ。

数十分で設定も無事に完了し、ではいざいざと夕食をいただく。料理長のKさん(実物はこんな感じ……でもこの写真は"ジゴロみたい"と周囲で噂されている。本当はもっともっと格好良い。)は、だんなと同い年であるということがついこの間発覚して、ますます仲良しさんになりたいと思っている私たちなのであった。

甘い苺のピューレをスプマンテで割った食前酒を飲みながら、「何を食べようか〜」と話していたら、そそそと寄ってきたスタッフが
「"小嶋スペシャル"も、できます」
と言って去った。すぺしゃる。なんだそれは。しかしそれは喰わなければいけないだろう。ただ、バーニャカウダ(野菜をアンチョビとにんにくの熱いソースにつけて食べるもの)は食べたいねぇ。ついでに桜海老のパスタができたら食べたいねぇ、と小嶋シェフと御相談。

もう半年くらい前、だんなの誕生日祝いに食しに来た時以来から、だんなはすっかり「プリンの好きな人」とこの店で認識されてしまっている。やってきたKさんが
「ドルチェは、プリンをご用意してあります。」
と最初に言った。だんなはすっかりプリン男と認知されたらしかった。良かったねぇ、だんなー。

残念ながら桜海老は今日は入ってきてないということで、少しばかり相談しつつ基本的に"おまかせ"で持ってきてもらうことにした。何が来るかは全然わからない。知らない店でやると少し怖くもあるけれど、何度も来て気心の知れた店でやるならとてもとても楽しいことだ。

最初に"突き出し"とオリーブを練りこんだ小さなフォカッチャの上にちょっとレバーの味のするテリーヌが分厚く乗せられ、上に空豆の黄緑色が綺麗なピューレがかかったものが出てきた。指でつまんで一口で食べる。豆の香りがふわっと漂って良い感じだ。
それと同時に小さなミニサイズのバーニャカウダ。小皿にアンチョビとにんにくをオリーブ油で練ったソースが盛られ、パプリカや生の根菜類を浸して食べる。

食前酒がここで無くなったので、白ワインを1本もらうことにした。
「白で辛口で、個性的なものが飲みたい」
と伝えると、3種類のイタリアワインを紹介して貰った。辛口の味が秀でたすっきりしたものと、果物の香りがとても強いというものと、あとはワインリストに載せていないけどスタッフが大好きでいつも置いてあるというワイン。樽の匂いが濃厚で、というその3本目のワインは下1/3ほどがぽてっと丸くなった面白い瓶の形状だった。スタッフが大概好きで、ついこれを勧めてしまうのだという「DANIELE ILLUMINATI '98」という1本をいただくことに。

うっすら琥珀色のワインは、樽のキナ臭いような香りが強くてほんのり甘さも漂うものだった。香りがものすごく強く、口にした時も強い香りと味が感じられるけど飲み下すとすっきりと消えていく。冷えたワインがグラスの中で少しずつ温まってくるとまた強烈な香りがふわふわと漂い始める面白いワインだった。こういうワイン、大好きだ。めちゃめちゃ美味しい。後でしっかりラベルも貰ってきた。どこかで買えると良いなぁ。

で、食事続行。
深さのある皿に生牡蠣やイカ、海老などの魚介が盛られてコンソメゼリーと岩海苔がかかったものが出てきた。魚介と岩海苔とはまた和風な感じで、冷たい分塩味がしっかりついたコンソメゼリーがかかってツルツルと食べられる。ぷりぷりの生牡蠣が殊に旨ひ。

イタリア料理店とはなっているものの、この店のコンセプトは「CUCINA(=台所) TOKIONESE(=東京風)」という、日本の素材を生かしたイタリア料理、ということになっている。
オーナーに先日聞いた話では、
「最後、ドルチェを食べ終わったときに"今日はイタリア料理を食べに来たんじゃなかったか"と疑問に思わせなけれど、途中でどういうものを作ってもいいよ、と言ってある」
のだそうである。

実際、香菜をどかんと乗せた、中華風のような魚の蒸しものを食べたこともある。通して食べると、どこかしらバルサミコ酢とかケッパー、ドライトマトなどの効いたものもしっかり出てくるので、やはりこれはイタリア料理なのだと思う。

魚介のゼリーかけに続いて、焼きイカが出てきた。こんがり焦げ目をつけて焼かれたイカの内側には、イカの臓物を入れて炊いた黒っぽいリゾットが詰まっている。上にはトマトたっぷりのケッパーやオリーブの入ったプッタネスカ風ソース。焼いたイカの香ばしい味はどこか日本のおかずのようであるけれど、これにトマトのソースが良く似合う。甘味と酸味のあるソースに、イカと少しばかり苦みのあるリゾットを絡めて食べる。

そして、牛タンの煮物。ホロホロに煮込んだ牛タンと、一緒に炊いたようなにんじんやかぶが盛られている。上から濃厚な緑色のピューレがかかっている。
「イタリアにも"おでん"のような煮込み料理がありまして、スープでバラ肉や野菜を炊いたりするんです。それにこの、酸味のある緑色の野菜のソースをかけて食べるんです。」
とスタッフが教えてくれた。緑のソースは、舐めると確かにワインビネガーの味がする。日本の練りがらしにでも相当するものなのだろうか。
ほこほこに煮えた野菜と柔らかいタンにソースをこてこてつけて食べていく。だんなはよほど気に入ったと見えてか、私の倍近いスピードで平らげていた(彼は気に入った料理を平らげるのがやたらと早い)。

パスタは2種類。
サフランを打ち込んだ、平たい麺"タリアテッレ"にイカや海老をコロコロと切ったピリ辛のオイルソースが絡んだものと、海苔がたっぷり入った生クリームのソースが海老と一緒に絡む"ストラッチ"という名前の布切れ状のぺらぺらとしたパスタ。それぞれたっぷり1人前ありそうな感じのものが2皿続いてやってきて、「この先、もしも魚料理と肉料理が来たらさすがの私らの胃袋もピンチかもしれない」とふと思うけどそれは杞憂だった。

次の皿が最後の料理のものだった。
ミディアムレアに焼いた牛肉のステーキは塩胡椒がしっかり効いていて、バルサミコ酢の香りの良いソースが周囲に垂らされている。肉の下にはころころとしたじゃがいものソテー、肉の上には肉が見えないくらいにルッコラが乗せられ、甘いフルーツトマトがころころと置かれている。野菜をがつがつと食べつつ、肉を見つけてフォークで刺す。程良くボリュームがあって、丁度良く満腹になった。バルサミコ酢は「酢」とは言うものの、熟成させた年代もののものはキツイ酸味はほとんど無い。濃厚なワインにも似た香りと、甘さが感じられるようなとろみのある味になる。胡麻の味のルッコラとバルサミコ酢はとても良く似合う。

腹八分目くらいに満腹したところで、デザート。
トリュフが大量に混ぜ込まれたカスタードプリンの上に、どっかんどっかんとトリュフの薄切りがかけられた1皿と、あとはメニューから選んで苺の熱いタルトもいただいた。10種類近く盛り合わせれた小さなお菓子、プチフールも1皿やってきた。盛り沢山だ。

プリンはひたすらトリュフの香りがする濃厚なものだった。トリュフは何でも媚薬の効用があるのだそうで、大量のトリュフを囓りながら赤ワインをがぶがぶと飲むとそりゃもう良い気持ちになっちゃうものだとどこかで知った。
やたらと香りの良い白ワインを散々飲んだ後のトリュフ味のプリンは、何だか血行が良くなってしまいそうな味だった。

カスタードクリームと苺が詰まった焼きたてのタルトには"豆のアイスクリーム"といった風情のピスタチオのジェラートが添えられていた。だんなが頼んだチョコレートのミルフィーユは、パリパリのパイ生地にこってりと甘いチョコレートクリームが挟まり、上からカラメルが筋状に飾られていた。添え物はミルクのジェラートときんかんの酸っぱいコンポート。苦い苦いエスプレットをダブルショットで飲み干して、お店を出たらもう8時半を回っていた。

お店に入ってから3時間半以上経過してから、バスに乗って再び新橋駅へと向かい帰宅。私たちはこれから帰るというのに、渋谷駅から満員で来たバスは麻布と六本木でガラガラになってしまった。皆さん、夜はこれかららしい。9時を過ぎて、六本木は写真屋からドラッグストアからまだまだ営業中だった。ああ、若人はパワフルじゃのう。

3/11 (日)
油淋鶏もどき (夕御飯)
目玉焼き乗せバタートースト
カフェオレ

食パンが余っていたので、こいつで朝御飯。
「バタートーストが良いですか?それともチーズトースト?海苔バタートースト?」
とだんなに問うと、
「……目玉焼き乗せ、じゃないですかねぇ、やはり。」
との答えが帰ってきた。半熟目玉焼きを作り、バタートーストに乗せ、塩胡椒して食べる。
この料理(これが料理と言えるのか、果たして)の出典は実は「天空の城ラピュタ」なのであった。

確か、シータとパズーの2人が逃亡して洞窟に迷い込んだ時にお弁当として喰ってたやつだ。鞄の中からパンと目玉焼きを出して食べるその様が妙に美味しそうで、それから目玉焼き乗せトーストは私の好物になった。
「アルプスの少女ハイジ」を見ればシチューだのチーズ乗せパンだの"おばあさんの白パン"だのにドキドキし、「となりのトトロ」じゃおばあさんの畑で採れるとうもろこしやキュウリが美味しそうだと大騒ぎし、私という人間は、もうちょっと別のところに感動すべきところはないのかと思う。
……でもだって、あの目玉焼きトーストは本当に美味しそうだったのよ。

だんな特製上海焼きそば
プーアル茶

昨日買ってきたモヤシを早めに食べねばならない。だんなが「焼きそばしましょう〜」と、焼きそば麺を3玉買ってきてうりゃうりゃと中華鍋をふるってくれた。もやしとキャベツと豚肉が具の、オイスターソースが少々入る塩味の焼きそば。深さのある大きな皿にどかんと盛ったら、それはそれは壮観な量になった。皆で小皿に取り分けて、がつがつと食べる。
「焼きそばだけの昼御飯」などとはとても言えないような大量の麺は、それでも皆で綺麗に平らげた。

XO醤青瓜
鯛とまぐろの刺身
油淋鶏もどき
小松菜と油揚げの味噌汁
ご飯
モルツ、ほうじ茶

買い置きの鶏肉を喰わねばということで、「油淋鶏もどき」を作ることにした。本来は揚げた鶏に葱たっぷりの甘酢のソースをかける料理が「油淋鶏」だけど、揚げ鶏にせずに焼き鶏にするので「油淋鶏もどき」。揚げなくても充分美味しいおかずになる。そりゃ揚げた方が美味しいのだけど、そこは美容と健康のためにぐっと我慢。今更我慢したところでいかほどの効果が……と思わなくもないが。

酢はあまり入らず、代わりにバルサミコ酢が入る「油淋鶏もどき」のタレは、とんがった酸味がなくてなかなか良い感じだ。鶏肉1枚のそれではちと足りないので、マグロと鯛のサクもざくざく切って刺身の盛り合わせも作る。ついでにキュウリを塩もみし、ざくっと切ってXO醤とごま油を和えた酒の肴も準備した。ビールで乾杯し、キュウリをつまみつつ鶏肉を囓る。ウロコと骨が取りきれなかった鯛の刺身は少しばかり食べにくかったけど、そんなことはあまり気にしない。

それとやっぱり、炊きたての御飯。醤油に浸した刺身を乗せて食べ、「海苔で食べよう」と焼き海苔を取り出して海苔で巻いて食べ、味噌汁をすすって食べ、幸せな日曜の夕食は終了した。

さて、骨とウロコがたっぷりついた鯛は、捌いた1尾が丸々パック詰めされたやつを買ってきたのだった。目玉付きの頭も入ってるし、骨がしっかりついた片身もまだ残っている。どうやって食べようか。「鯛飯」だろうか。「鯛の中華風サラダ」も捨てがたい。しかし目玉付きの頭はどうしよう。いくつものパックの中から「こいつと目が合ったからこいつにするよ」と買ってきた鯛だからして、頭も美味しく喰ってやらなければ。