食欲魔人日記 03年04月 第3週
4/14 (月)
だんな特製 具沢山ちゃんぽん (夕御飯)
テーブルパン
ベーコンエッグ
グリーンサラダ
牛乳

月曜日。今日の朝御飯は、我が家にしては珍しく"充実した洋風朝食"な風情のものにした。
大きな塊のパンをオーブンで温めている間に、ベーコンエッグとサラダの準備。パンもサラダも全て1枚の皿の上に盛りつけ、朝からボリュームたっぷりな光景になった。

アメリカのベーコンは、日本のものほど水分が抜けておらず、とても生っぽい。赤身の部分などは"干物"というよりは"生肉"に近いような色と弾力があって、焼くとじくじくと大量の油が染み出てくる。豚バラ肉が見つけられなかった頃は、本気でベーコンを豚バラの代わりに使ってしまおうかと決意しかかってしまったほどだ。目玉焼きでもスクランブルエッグでも、卵とベーコンの組み合わせはしみじみ似合う。

Nashville 「Shintomi」にて
 Daily Special Bento Box

午前中、大学に出かけていっただんなが昼過ぎに
「お昼食べに行きましょ〜」
と戻ってきた。一緒に食べる人がいなかったらしい。

今日もまた、外に出るなり水浴びしたくなってしまうほどの暖かさ。いや、これは"暖かい"というよりは"暑い"と表現しなければならないほどの気温だ。
「プール……プールが懐かしいよぉ……」
「ぷーる!? ぼくもね、ぼくもプールはいるんだよ。ボールであそぶんだよ!いついくの?」
と、私が漏らした一言で息子のプール熱に火がついてしまった。いや、今はプールじゃなくて飯喰いに行くんだし、と車に乗り込み、行ったところは日本料理屋さん「新富」。同じメニューでも昼と夜では値段がかなり違うこの店、味はまぁまぁなのでランチ弁当を食べましょう〜、と久しぶりに目指してみた。1時半を過ぎて、店の中はがらんがらん。奥の席で6人ほどのアメリカ人団体がわやくちゃと大笑いしている。

だんなも私も、$6.95の日替わり弁当。御飯と味噌汁とサラダ、2口分ほどのナポリタンスパゲッティと甘辛味のチキンウィング、酢の物と4〜5種類の天ぷらに加えて、2種類の日替わりおかずがついてくる弁当だ。日によっては"餃子とチキンカツ""クリームコロッケと照り焼きチキン"と、嬉しい組み合わせだったりするのだけど、今日の日替わりおかずは"餃子と春巻"。どちらも冷凍のものをちゃちゃっと調理しちゃいました〜みたいな手抜きな香りが漂ってた。ううう、何だかすごく損した気分。
天ぷらは、海老と人参と南瓜、そして茄子。どれも日本で馴染みのある食材だけど、米茄子は和茄子と違って柔らかく大味。グジュッとしてしまって、やっぱり日本風の茄子調理(揚げたり焼いたり)は似合わないようだった。アメリカの茄子は煮込むかキャセロール料理にするのがいいのね……。

だんな特製 具沢山ちゃんぽん
ビール(Longboard Lager)
苺 with コンデンスミルク

アトランタで買ってきた"ちゃんぽん麺"が台所の棚の上に置かれ続けて早や数週間。
「ちゃんと、魚介買ってきて作ろう……」
「イカとか海老とか入れてね」
と、安売りの冷凍イカや冷凍海老をちょこちょこ買い集めていた。さぁ材料も揃ったしちゃんぽんだ!という今になって、猛烈に暑くなってきているのはどうしたものか。もうちょっと涼しい時に食べたかったなぁ……と言いつつ、クーラー全開で、夕食はちゃんぽん。

具はイカと海老、かまぼこと豚肉、白菜、ニラ、青葱。具だけで鍋いっぱいになっちゃっているそれを炒めて湯と顆粒スープを加え、茹でた麺を入れて軽く温めたらできあがり。麺も多いが具もそれ以上に多いような具沢山のちゃんぽんになった。

「この具を、もっと汁気なくしてとろみつけてですね、」
「ふんふん」
「麺を炒めてその上からかければ、それが"やわさら"」
「ほほーぅ」
「……店によっては、具と麺をいっしょくたに炒めちゃうところもあるんですけどね」
「それは、邪道だと」
「うーん……邪道とまではいかないけど。で、麺がパリパリと固くて細いものになると、"皿うどん"になるわけね」
などと、だんなのちゃんぽん講座を聞きつつ、ずるずると太く縮れのない麺を啜った。この磯臭いスープがたまりませんなぁ〜。

4/15 (火)
Taqueria La Hacienda(Nashville)にて、Quesadilla de Fajita (昼御飯)
シリアル(コーンパフ) with 牛乳

予定では、本日の昼御飯は皆で連れ立ってメキシコ料理屋さんに行くことになっている。きっともりもり食べることになるんだろうなぁ、と、朝は軽めにシリアルを少しばかり。
パッケージに惹かれて買ったは良いけど、"コーンパフ"というやつは甘くもなくしょっぱくもなくどうにも掴みどころのない味で、しかも牛乳をかけるとコーンフレークよりも早くシナシナと水っぽくなってしまう。端的に言って、あまり好きな食べ物じゃない。でも、買っちゃったもんは食べなきゃねぇ、と砂糖ふって食べてみたりして。

Nashville 「Taqueria La Hacienda」にて
 Oysters
 Shrimp Cocktail
 Tostada de Ceviche
 Quesadilla de Fajita
 Horchata

お昼に留学生仲間たちと連れだって向かったのは、2週間前に行き、おっそろしいサイズのマルガリータを飲んできたお店。生牡蠣がけっこう安く食べられたので、
「これは生牡蠣好きなMさんを連れてこなければ!」
と言っていたのだった。

前回、この店の持ち帰り用のメニューを貰ってきていたので、よくわからなかった料理名などを今回は色々調べてから行った。
前回も食べた、揚げたトルティーヤの生地の上に魚介のマリネをこんもり盛りつけたものは"Tostada de Ceviche"。Ceviche(セビッチェ)とは、海老やイカ、白身魚などの魚介をライム果汁で和えた料理のことなのだそうだ。おなじみのタコスにファヒータ、ブリトー。Gordita(ゴルディータ)は、分厚く成形した小麦粉生地をこんがりと焼いて(揚げて?)、間に肉や野菜を挟んだハンバーガーのような外見のもの(調べてみたら、"Gorditaはお団子のようなもの"と書かれているホームぺージもあったけれど、とりあえずこの店のゴルディータはハンバーガーのような感じのものだ)。Quesadilla(ケサディーヤ)はピザ生地のように大きく薄いパリパリの生地の間にチーズや肉を挟んだもの。メキシコ料理も、やっと少しずつわかってきた。

そう、そして前回気になっていた、"周囲のお客さんがあちこちで飲んでいた白い飲み物"の謎もとけた。ピーニャコラーダにしてはアルコールを飲んでいるような風情ではないし(←ぐびりぐびりと盛大な勢いで飲まれていた)、容器もコーラを入れているのと同じ、ソフトドリンク用っぽいものだ。
持ち帰ったメニューに"Homemade Drink : Horchata"という記載があり、これを調べてみて、そうかこれか!とやっとわかったという次第。
Horchata(オルチャタ)とは、メキシコ特有のお米のジュース。米を煮て漉し、甘さをつけてシナモンの風味をつけたジュースなのだとか。自家製というのも気になるし、これは飲んでみるしか!と、うきうきとでかけた。

今日もかなりの繁盛っぷりのこのお店。高い天井にタイル張りの床、チープな椅子とテーブルに、今日も「なんか……銭湯みたいな」と思ってしまう。飲み物は、予定どおりオルチャタ。発音もよくわからず、
「えーと……おるちゃた、ぷりーず」
と言ったらすんなり通じた。席につくなりテーブルにやってきたトルティーヤチップをばりばり食べながらたっぷり頼んだ魚介料理を待つ。

オルチャタは、期待以上に美味しかった。甘酒をうんと薄くしてシナモンの香りをつけたような味だ。さらりとしていて適度に甘く、飲みやすい。元々甘酒のような味が好きなこともあって、これはかなりツボに入った。おいしー。

そして、テーブルには2ダースの生牡蠣と大サイズのシュリンプカクテル、そして魚介のマリネ乗せトルティーヤ"Tostada de Ceviche"。今日の牡蠣は前回よりぷりぷりツヤツヤとしていて新鮮だった。レモンやカクテルソースはないので、ライムとサルサで食べる。ライムとピリ辛トマトソースで食べる生牡蠣というのも、それはそれですこぶる旨い。シュリンプカクテルは、巨大なカクテルグラス入り。トマトソース(というかトマトスープ)の中に、小エビがざっくり沈んでいるようなものだった。ソースにはアボガドや香菜がどかどかと入っていて、一般に言うシュリンプカクテルとはだいぶ違う様相。さっぱりしたトマトソースがいい感じだ。

魚介をつつきまわした後は、1人1品のメインディッシュ。私は"本日のスペシャル!"という看板の中から"Quesadilla de Fajita"というものを。皆それぞれファヒータプレートやゴルディータ、ブリトーなどを注文していた。
円形にパリッと焼かれた生地2枚の間には、とろけたチーズと、鶏肉、ピーマン、玉ねぎの炒め物がたっぷりと挟まっている。レタスとトマト、レッドライスと煮込み豆がついてきた。このぐずぐずに煮えたペースト状の豆の煮込み、初めて食べたときは「なんじゃこりゃ?」と思ってしまったのだけど、これが妙にくせになる。これをつつかないとメキシコ料理を食べている気にならないようにまでなってしまった。
「君のそれ、美味しそう」
「ちょっと交換しよう」
「あの……私、多分これ全部食べきれないと思うんで……」
「あ、僕食べる。まかせて」
などと、テーブル上を料理が飛び交いつつ、テーブルを埋め尽くしていた料理は綺麗になくなった。

食べ終わる間際、そばのテーブルに座ったカップルが、2人で45onzマルガリータを飲み始めた。
「ああ、ほら、あれあれ。前回おゆきさん、アレ飲んだんだよ、一人で」
とだんながこっそり指刺すと、全員で振り返って
「うっひゃー」
「……でかい」
「すごい!」
と大騒ぎ。ええ、もうアレはしばらく飲みたくありませんです……しばらくはオルチャタで。(あのときは本当にべろんべろんになりもうした……)

だんなの研究室主催、"3rd Tuesday Party"にて
 サラミピザ
 ビール、スプライト

今日は今シーズン最後の"3rd Tuesday Party"。その名のとおり、月に一度の第三火曜日に開かれるパーティーで、だんなの所属する研究室が主催している。内容は、"日本人及び、日本に興味のある人は誰でもいらっしゃーい"というものだ。ピザやビール、ソフトドリンクが無料でふるまわれるということもあってか、この地に住む日本人の親子連れなどもちょこちょこ来たりする。中には、ものすごくお行儀の悪いお子様も混ざっていたりして、楽しいの半分、めんどくさいの半分……という感じ。でも、今日はけっこう色々な人と話せて楽しかった。

用意される料理は、ドミノピザのいかにもなアメリカンピザ。具はミートやサラミなどのシンプルなものばかりで、もちもちした噛みごたえのある生地のものがどかどかと10枚ほどは用意されている。あとはポテトチップのたぐい。ビールやルートビア(ノンアルコールビール)、コーラ、スプライトなどもたっぷり置かれ、あとは研究所1階のホールで好き勝手に騒ぐだけのパーティーだ。

昼に一緒に食べに行ったMさん夫人に
「……昼の料理、まだ胃にたまってたりしません?」
と話しかけると、
「そう!まだなんか……胃が重くて……」
と苦笑い。私たちだけじゃなく、他の男共3人ともが
「ううー、腹が減らない……」
「ピザが喰えない……」
と呻いていた。

で、夕飯はここで齧ったピザ1切れのみ。
明日の午後は野球観戦だー。

4/16 (水)
きじ焼き丼 (夕御飯)
味噌うどん
アイスティー

遊びの予定が目白押しだというのに、昨夜急に
「頭が痛い……」
とパーティーから帰宅早々寝てしまっただんな。ちょっと心配だ。早く寝た分、今朝はちょっと早く目覚めたらしくパソコンの前に座っていたけれど
「体調だいじょぶ?豚おじやとか作ろうか?それとも煮込みうどん……」
と病人食を提示してみたところ、
「そんなに体調悪くないって!」
と笑われた。でも、提示していた私の方がうどんを食べたくなってしまって、今日は朝から味噌うどん。今日も初夏と言ってもいいくらいの気温なのに、何故に朝から煮込みうどん。

具は豚肉と大根、長ねぎ。豚味噌鍋用の練り味噌で具を軽く煮込み、冷凍うどんを放り込んで柔らかくなるまで火を通した。酒粕と胡麻やにんにくがたっぷり入った練り味噌のスープは、何口か啜るだけで汗がぶわっと出てくる。
だんなは余裕で今日の野球観戦に行けそうで、とりあえず安心。

Nashville 「Greer Stadium」にて、野球観戦
 ポップコーン
 揚げドーナツ(Funnel Cakes)
 生ビール(Nashville Sounds Red Ale)
 アイシー

今日は午後3時から、我が町ナッシュビルの野球チームNashville Soundsの観戦。アメリカ野球、かの"大リーグ"の下にはAAA(トリプルエー、またはスリーエー)と呼ばれる下部球団、要するに2軍があるのだけど、ナッシュビルサウンズはそのAAA球団。ちなみに更にAA(ダブルエー、ツーエー)球団、A(シングルエー)球団と、下位の球団もあるらしい。

シーズン始まったばかりの今年だけど、今のところ10勝1敗と、なかなか強いらしい。話によると、マイケル・ジョーダンが一瞬このチームに所属していたらしい。でも、2軍の試合はあまり人気があるものじゃないらしく、バックネット裏のめちゃめちゃ良い席でもせいぜい10ドルで、しかもチケットは簡単に買える。それどころか、「水曜日の試合チケットはBuy One Get One Freeでお買い求めになれます!」なんてキャンペーンまでやっていて何がなにやらだ。結局今日の試合は税金手数料諸々入れて、親子3人で18ドル50セントで見ることができたのだった。しかもキャッチャー真後ろの席、前から6列目。

今日の試合は、Nashville Sounds(上位球団はPittsburgh Pirates)対Memphis Redbirds(上位球団はSt.Louis Cardinals)。
メンフィスレッドバーズには、元オリックスの田口がいるということで、
「田口を見に行ってみるか!」
と、今日の試合を見ることにしたのだった。

球場は、想像以上にガラガラだった。お客さんは300〜400人というところだろうか。元々小さな球場ではあったけど、それにしても空席だらけで非常にまったりのんびりとした観戦になった。開始前にいそいそとビールとポップコーンを買い込んで席につき、始まってからもパンフレット購入だドーナツだアイスだとぱたぱた動いていた私たち。
ビールは、この町の地ビール屋さん"Blackstone"の屋台が出ていて、その名もNashville Sounds Red Aleというこってり味の濃厚な生ビールが売られていたので、それを。メガホン型のプラスチック容器にどっさり入ったポップコーンは、食べ終わった後によくみると底が抜けるようになっていて、本当にメガホンとして使えるものになっていた。

1回表に1点先制された我がチームは5回裏に1点返し、そのまま得点がないまま延長戦に突入。最後は11回裏でサヨナラヒットが出て、めでたく我がチームの勝利に終わった。
試合運びはシャキシャキとハイテンポだったものの、とにかくのんびりマターリした空気。田口は5打席あったものの、ろくにヒットも打てずに終わってしまった。6回あたりで、あまりの暑さにアイスでも買ってくるか、と席を立ち、パンフレットをついでに買いつつフードコーナーへ。シャーベット状のジュース"アイシー"のストロベリー味を買ったところで、後ろのワゴンで売られている美味しそうなものと目があった。揚げドーナツのようだ。紙皿にスパゲッティのごとくうねうねぐるぐると茶色い生地がとぐろを巻いていて、上から粉砂糖がどっさりかかっている。1個4ドルと、少々お高い。
「あー……ひとつ、ください」
と告げると、
「ああ、今、揚げてあげるからね。待っててね」
と、おばちゃんが足元のクーラーボックスから生地を取り出し、鍋に放り込んで揚げてくれる。シナモンはふるかい?と言われたのにこくこくと頷くと、表面を覆いつくすほどの粉砂糖と共にシナモンパウダーもこれまたどっさりとふられ、
「はい、すっごく熱いからね」
と手渡された。

揚げたてドーナツ(正式名称はFunnel Cakes)は、期待以上にめちゃめちゃ美味しかった。甘さの少ないドーナツ生地に、粉砂糖。適度なシナモン感。ただ、問題は風が吹く度に粉砂糖がぶわーっぶわーっと周囲に飛びまくることだ。他の席のお客さんにまで被害が及ばないように、と抱え込むようにしていたら、私の服も体も数分のうちに真っ白に。横の息子を見ると、息子まで白の水玉模様が身体中に描かれていた。とりあえず、数分はほとんど試合そっちのけでモフモフとドーナツを食べる。うまー。

アメリカの野球は、大リーグだろうがAAAだろうが、7回表の攻撃が終わると、"とあるお約束"がある。
皆で一緒に歌を歌うそうで、曲名は"Take me out to the Ball Game"(私を野球に連れてって)。ボーイフレンドから映画に誘われても断ってホームチームの野球の応援に行ってしまう女の子の歌だ。選手たちを応援するためにこの歌を歌うのよ〜♪という歌で、みんなで一緒にサビの部分、
「ピーナッツとクラッカージャックを買ってくれたら、もう帰れなくてもかまわないわ〜♪」
などと歌うのだ。カントリーチックな甘ったるい懐かしいようなメロディの曲で、青空の下、コットンキャンディーやコークやポップコーン片手に歌うのになんとも似合う歌。とりあえずメロディーは覚えたものの、歌詞はとても覚えきれなくて鼻歌でふんふんと皆と調子を合わせるだけだった。

実は、明後日にも野球観戦。今度はセントルイスで、今日の敵チームの上位球団カーディナルス(カージナルス、と書かれる事の方が多いかも)を見る予定。AAAと大リーグの違い、どれくらいあるのかなぁとちょっとわくわくしている。

きじ焼き丼 ルッコラのせ
ビール(San Miguel)

試合終了は午後6時近く。球場でいろいろパクついていたので、しっかりした夕食を、という感じではなかったので鶏肉をジャッと焼いてきじ焼き丼。
本当はタレに味噌を混ぜたりするのが本来のきじ焼き丼のような気がするけど、我が家で"きじ焼き丼"というときは、大抵"鶏照り焼き丼"と同義になっている。塩胡椒でしっかり下味をつけた鶏肉をこんがり焼きつけ、最後に醤油と味醂と酒を同量ずつくらいに合わせたタレを流し入れ、軽く煮詰めて絡めるだけ。

残りもののルッコラがあったので、
「サラダにして添えようか?」
「いや……ルッコラさ、御飯と鶏肉の間に挟んだら変かな?」
「あー、ルッコラ、胡麻味だもんね。けっこう和風の味に似合うかも」
「でしょでしょ?」
とだんなとわちゃわちゃと話し合い、だんなの提言によってルッコラは肉の下に挿入されることになった。これがまた、けっこう似合って美味しいんです奥さん!

4/17 (木)
中華風スペアリブ (夕御飯)
納豆
御飯
麦茶

「俺、冷凍庫に残ってるフィッシュバーガー食べようかなぁ……」
「ぼくはねー、ぼくはねー、カリカリ〜」
「私は、なんつーか納豆な気分……」
と、三者三様協調性のないことをほざいている木曜の朝御飯。結局だんなはフィッシュバーガーになり、私と息子は1パックの納豆を分け合いつつ御飯を食べることになった。

「別にね、納豆の、この粘るところが好きというわけじゃないんですよ。粘らない納豆だったら、それはそれで……」
と呟きながらかっこんでいたところ、
「僕もね、別に納豆の粘るところが嫌いというわけじゃないんですよ」
とだんなが応えてきた。
粘りじゃないとすると……やっぱり匂いだろうか。私はあの匂いがたまんなく好きなんだけど。

自家製ピザ
 トマトソース・マッシュルーム・ゆで卵・チーズ・ルッコラ
 たっぷりサラミ・トマト・マッシュルーム・ゆで卵・大盛りチーズ・ルッコラ
コカコーラ

トマトソースが残っていたし、ピザ生地の余りも成形した後、冷凍庫にしまっておいてあった。ピザ生地はともかく、他の材料が悪くなっちゃいそうだったので、お昼はピザを決行。午前中に授業のあるだんなにも、昼に帰ってきてもらった。

1枚目は残り少なかったトマトソースにゆで卵とマッシュルーム。チェダーチーズ入りのミックスピザチーズをたっぷり散らして焼いてから、食べ際にルッコラを散らす。2枚目は表面を覆い尽くすようにソフトサラミをみっちりと。2〜3枚重なるように大量のソフトサラミを散らした後にゆで卵とマッシュルームとトマトを並べ、シュレッドタイプのモッツァレラチーズをこれまた大量に積み上げてからオーブンへ。こちらもルッコラをわさわさと乗せつつ食べた。

自家製ピザは、本当に美味しい。1枚1ドル以下で買えるスーパーの冷凍ピザに比べると材料費はかかるけれど、宅配ピザを頼むよりはよっぽど安く食べられる。好みの厚さに成形でき、パリッパリのおせんべみたいな生地にも作れるのが、アメリカンなパンタイプ生地全盛のこの地ではありがたいことだ。
「ピッツァ、つくるの?ぼくはねぇ、ピッツァが大好きなんだよ〜」
ピッツァピッツァと、こちらの発音でほざいていた息子(←テレビCMあたりで発音を覚えたらしい)は焼き上がるまで台所をうろちょろしてサラミをつまみ食いした挙げ句、きっちり4切れほどのピザを平らげていた。

中華風スペアリブ
ほうれん草のサラダ
大根の葉の塩揉み
わかさぎの佃煮
大根のナンプラースープ
羽釜御飯
ビール(Abita Ambar)
麦茶

中華味テラテラ系のものが恋しくて、スペアリブを買ってきた。以前、甜麪醤がみつからなくて代わりに買ってきた"Black Beans Sauce"なるものが大量に残っていたので、これをガバーッとジップロックに入れ、醤油やオイスターソース、紹興酒なども適当に加え、ついでにおろしにんにくとおろし生姜もたっぷり放り込んでから塊肉を突っ込んだ。空気を抜いて袋の口をみっちり閉め、袋の上からもみもみもみもみしたあと冷蔵庫で一晩放置。あとは200℃のオーブンで30分ほど焼くだけだ。

明日から2泊3日の旅行ということで、冷蔵庫内にはろくな野菜が残っていない。キッシュを作るつもりで買ってきた袋入りほうれん草はベーコンの熱いドレッシングをかけてサラダにする。しばらく前に作っていた大根の葉の塩揉みも出し、御飯の友にわかさぎの佃煮。スープは味噌汁という気分じゃなかったので鶏の骨と共に大根を煮込んだスープにナンプラーを落としてタイ風というか無国籍風というかよくわからないものに。そうこうしているうちに、スペアリブが焼けた。

でっかい骨つき肉が3かたまり。タレがすっかり染みこんで、それがチリリと焦げをつくり、肉の表面はテラテラと光っている。
「うひー、うまそー」
と、1人1かたまりをむんずと掴み、両手で持ってかぶりつく。ステーキも"肉喰ってます"気分が非常に盛り上がる食べ物だけど、骨つき肉を両手で持って歯でひきちぎりつつ食べるのも否応なしに盛り上がる。
「動物ですよね」
「肉食動物な気分ですよね」
と、ニヤニヤと笑う私もだんなも手と口がベタベタだ。肉は適度に柔らかく、適度に歯ごたえもあり、適度に脂が乗っていて最高に美味しかった。

明日から旅行……だけど、実はパソコンが(正確には内臓モデムが)絶不調。
一時的に使っていたプリンターのドライバを外した途端、モデムから"ビビビビビ"という連続音がひっきりなしに出てくるようになった。ネット接続はできなくはないけれど、その"ビビビビ"と共存しながら繋げることになってしまうので、普段56k出るダイアルアップが12kくらいしか出ない。私が初めて使ったモデムってそのくらいだったっけ……?と思いつつ、そんな速度じゃインターネットサーフィンもできないことに愕然とする昨日今日だった。
電源切ってもバッテリー外しても直らない。こりゃダメだと、カードモデムを探しに行ってみれば、そんなの近所の店にはどこにもない。Office Depotでやっとみつけた1種類だけのそれは、なんと90ドル。外付けのごついモデムを買ってきたら(それも50ドルもした……)、我が家のノートパソコンにはシリアルケーブルの口がついていないことが発覚。しょうがないので、ネット通販で35ドルくらいのものを買ったけれど、届くまでの数日間は不便が続くことだろう。とりあえず旅行中は、12kの速度であっても繋がることを祈るしかない。
ということで、もしも今後数日間更新がびたっと止まるような事があったら「あー、接続できなかったのねー」と思ってください。とほほほほー。

4/18 (金)
「Alpha Bakery」のカレーパン
牛乳

今日は午前7時起きで、留学仲間たちと一緒にセントルイスに小旅行。セントルイス行きの目的は、
「我が町ではできない、大リーグの野球チームの応援というものをしてみよう」
ということで、野球観戦。セントルイスには全米ナンバー1に何度もなったことがある"St.Louis Cardinals"(セントルイス・カーディナルス)というチームがある。金曜日夜の試合相手はArizona Diamondbacks(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)。こちらは一昨年に全米ナンバー1になったチームであるらしい。
試合開始は午後7時。それまでに到着するように、できればダウンタウン観光も少しはできるように、午前中早めの出発になった。

冷凍庫に保存してあったAlpha Bakeryのカレーパンで朝御飯。
こういうときにカレーパン分を補給できるのは、本当にありがたい。一日の活力がこう、もりもりと。

Illinois州Marion 「Steak 'n Shake」にて
 Bacon'n Cheese Double
 w/French Fries
 w/Cream Broccoli Soup
 Chocolate Shake

テネシーからケンタッキーに入り、そしてイリノイ州へ。朝御飯を食べてこなかった人が大部分(というか我が家以外は全員)だったので、11時頃に早めの昼御飯にすることにした。
「どうせだったら、少しでも美味しいところに行きたいよねぇ……」
「あ、僕はあそこに行きたいな。あの、シェイクとハンバーガーのあるお店」
「ステークンシェイクかぁ……そりゃいいやぁ」
と、Steak 'n Shakeを探して行ってみることに。手元にある『NEXT Exit』という、全米の高速道路の各出口近くに何があるかが書かれた本(というより辞書のようなもの)を眺め、「○番の出口にあったよー!」と、そこを目指す。ガススタンドの有無は当然、この出口を出るとWAL☆MARTがあるとかこのファーストフード店があるとか書かれたこの本は、なかなか便利。確か本屋の安売り本カウンターに並んでいたのを、渡米直後に買ったものだ。

皆でそれぞれシェイクを頼み、私はベーコンとチーズ入りのダブルハンバーガー。厚切りトマトもついてくる。サイドディッシュが2種類ついてくるセットにし、"本日のスープ"からブロッコリークリームスープと、フレンチフライをつけてもらう。
大の大人が何人も揃って、ズルズルビーとシェイクを啜っているのはちょっと笑ってしまう光景だ。ほどなくやってきたハンバーガーは、上のバンズを持ち上げて、卓上のハインツトマトケチャップをにょろにょろとぶっかけて食べる。パン・バーガー・バーガー・チーズ・ベーコン・パン、と積み上がったそれにケチャップかけてトマトも乗せて、上からぎゅうと軽く押さえてから齧る。

Missouri州St.Louis 「Nonna G's Cucina」にて
 Grilled Pear Salad
 ビール(Peroni)

午後2時、無事にセントルイスに到着。ダウンタウンに宿をとると高くつきそうだったので、ちょっと郊外のモーテルにチェックインし、車に乗って皆でぷらぷらと市内観光に出かけた。
モザイク装飾が美しいと聞いていたセントルイス大聖堂に行ってみると、ちょうど今日の午後はイースターの特別プログラム中ということで、"Good Friday - Celebration of the Lord's Passion"なるものが始まってしまったところだった。それぞれお洒落に着飾った人々が聖堂に集まり、パイプオルガンが鳴り響き賛美歌などが聞こえてくる。なんだか大変なところに物見遊山な自分たちがきちゃったね、と困ってしまいつつ、できるだけ邪魔にならないように音をたてずにそろそろと背後から見学した。噂以上に美しい教会だ。ドーム型の高い天井にパイプオルガンの独特な音が響きまくり、遙か彼方に十字架にかかったイエス・キリスト像が見える。背筋がぞわっとするような厳粛な空気が漂っていて、何だか貴重なものを見てしまった、という感じ。
その後、セントルイスでは外せない名物"Gateway Arch"(でかいでかいでかいでかい半楕円形のアーチ)を訪れたものの時間を見誤ってしまい、上まで行けるトラムのチケット販売時間に間に合わず、しょうがなくアーチの下でだらだらとアーチを見上げつつ休む。

野球観戦の後に、この地に昔っからある地ビール屋さんに行こうという予定になっていたものの、観戦後まで胃袋が持ちそうになかったので、アーチのそばにある再開発地域のレストラン街にぷらぷらと試合開始前に寄ってみた。
ここなら軽食っぽいものが食べられるかな?と選んだのはイタリア料理屋さん「Nonna G's Cucina」。この町にはイタリア人街があるそうで、それゆえに美味しいイタリアンが食べられるのではないかという期待もあった。なんでもこの地の名物料理に"Toasted Ravioli"(揚げラビオリ)というものもあるそうな。

午後5時過ぎて、店の前のテラスでは何人もの客がビールを傾けていた。比較的こぢんまりとした店は、何だか美味しそうな雰囲気が漂ってくる。
「ビールは何があるの?」
と尋ねると、
「イタリアのビール、ペローニがあります。あとは、ドメスティックのバドワイザー、クアーズ……」
ということだったので、私イタリアのビール、俺も僕も私も、と大人6人がイタリアのビールを飲んでみることにした。そういえば、イタリアのビールを飲むのはこれが初めてかもしれない。あとは、軽いものばっかり頼んでごめんねこれから野球観戦なんだ、などと言いつつ、ピザやパスタ、サラダなどを1人1品ずつ注文した。私はだんなからパスタを分けてもらうつもりで、"Grilled Pear Salad"。グリルした洋梨を上に乗せたサラダらしい。青カビチーズや胡桃もたっぷり入っていますよ、と説明文に書いてあった。

やってきた料理は、どれもこれも良い感じに美味しかった。バルサミコ酢の香りがふわりと効いたサラダは、細かく砕いたチーズと胡桃がルッコラやマーシュなどの香りの強い野菜と和えられている。上には頭の部分を繋げて細くスライスした洋梨が半個分、飾られていた。チーズや胡桃の脂分で、けっこう空腹感が癒されるサラダだ。
だんなの前には、カネロニが。トマト味のミートソースが板状のパスタの間にたっぷり詰められ、オーブン焼きされている。ミートソースは、アメリカで久しぶりに(いや、もしかしたら初めて)食べるまともな味のミートソースだった。変にトマトの味が強くない。ケチャップ臭くもない。肉の味がメインの、しっかりどっしりしたミートソースだった。

そして、他の人が頼んでいたトーステッドラビオリも一口味見させてもらったり。
四角くコロリとしたパスタ生地2枚の間に肉とハーブを練り混ぜたようなものが詰められ、それがこんがりと油で揚げられている。添えられたソースは魚介風味たっぷりのトマトソース。これもまた素直な味の美味しいソースだった。
何の気なしに飛び込んだお店が予想以上に美味しくて、そのままごきげんで野球観戦。

野球場にて
 Peanuts&Cracker Jack
 Funnel Cakes
 Lemonade

初めて見た大リーグの試合は、すごかった。何しろ球場が、でかい。一昨日行った、二軍のホームグラウンドとは当然比べものにならない。三階席の前から13〜14列目だった私たちは、
「た……高い……」
「怖い……」
と、おっかなびっくり席についた。今日は、7回表が終わった後に歌う歌、"Take me out to the Ball Game"の歌詞も大体覚えてきている。鼻歌でふんふん歌いながら会場を目指す途中、スタジアムの正面でピーナッツとクラッカージャックの袋をセットで売っていた。
「クラッカージャックって、どんなお菓子なんだろ?」
「あの歌に出てくるんだよね。"ピーナッツとクラッカージャックを買ってくれたら"って」
と、思わずそれを購入。2つの袋をぷらんぷらんさせながら球場入りしたのだった。

で、自分たちの町の気候とそう変わらないだろうと、基本的に薄着でやってきてしまった私たち。ここしばらく、ナッシュビルの気候は夜でも半袖で充分なほどの陽気続きだった。……が、セントルイスは寒かった。昼はともかく、日が暮れた途端にかなりの冷気が漂い始める。
「うわー……フリースの上着も持ってくれば良かった……」
「寒い、寒いよ」
「あー!○○さん、唇が真っ青だよ!」
と、各々試合の合間を見ては暖をとりに食べ物売り場やトイレを往復する観戦になってしまった。もう、"ビール片手にポップコーン"という感じでもない。必死でホットコーヒーを買ってきて体を温めながらお菓子をポリポリやる羽目になった。カーディナルスマーク入りの真っ赤なトレーナーを買って「あったかーい」と喜んでいたのはMさんの奥さんだ。一応薄手のセーターを持ってきたものの、私も本気でウィンドブレーカーなどが欲しくなった。ああ、寒い。

初めて食べた"Cracker Jack"、それはキャラメルがけのポップコーンだった。ほんのり塩気のあるポップコーンに、甘い褐色のキャラメルコーティングがかかっている。歯が抜けるほど甘いわけではなく、食べやすい。しかもビールにもコーラにも似合ってしまいそうな食べ物だ。殻つきピーナッツが、これまた妙に止まらなくなる。
途中、一昨日の試合観戦時にも食べた"Funnel Cake"(揚げドーナツ)を近くの席の人が食べているのを発見し、
「そそそ、それをどこで?」
と尋ね、「ああ、×××番の出口の近くにお店があったわよ」と言われ、だーっと小走りして探して買ってきてみたり。ドーナツの生地を細くにょろにょろと絞り出したものを十数秒、ジャッと揚げてから粉砂糖をふった、ベニエに似た味のファンネルケーキは今日もしみじみ美味しかった。いや、しかし寒い、寒いよ。

カーディナルスのチームカラーは、赤。応援席の席の色そのものも赤なのだけど、やってくる観客の多くが赤い服を身にまとっている。チームのユニフォームレプリカを着ている人も多いけれど、赤いTシャツや赤いトレーナーなど、とにかく赤いものをと身につけて来る人も多い。赤一色に染まる応援席は、なかなか壮観だ。今日の観客は3万人ちょっとだとか。一昨日の試合の100倍の人数だ。空席がちょこちょこあるものの、チャンス到来に応援する声は地鳴りのよう。

7回表終了後、全員が立ち上がって"Take me out to the Ball Game"を大きな声で歌う。序盤に着々と点を重ねたカーディナルスは、「完全試合か?」という展開にもなったものも9回表に3点取られてつつ、最終的に6-3でカーディナルスが勝利した。午後7時に始まった試合が終わったのは午後10時近く。みっちり3時間かかった試合だった。
「……で、地ビール屋、行きます?これから……」
と皆の顔を見ると、もう何だか歯の根も合ってない人もいたりして。プハーッとビールだ!という気持ちには今ひとつならず、どころか
「早くあったかいシャワーを浴びたい……」
「もう10時過ぎちゃって、なんだか眠い……」
というお疲れオーラが全員からむんむんと立ち上っていたため、地ビール屋は諦めてすぐにホテルに帰還。ああ、こんなことならさっきのイタ飯屋でもっとがっちょり食べておくんだった、と小さく後悔してみたり、いや、ファンネルケーキを食べられたんだからラッキーだったじゃないか、と慰めてみたり。

4/19 (土)
Cunetto House of Pasta(St.Louis)にて、Toasted Ravioli (夕御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
モーテル「Best Western」の無料朝食
 シナモンロール
 トースト
 グレープジュース

総勢9人のセントルイス旅行、2日目。今日の一番の目的は、この地に本社があるアメリカ最大のビール会社、バドワイザーのビール工場見学。週末ということで混むかもしれないと、朝9時の見学ツアー開始前に工場に到着するように出発することになった。
朝御飯は、ホテルの無料朝食で適当に。けっこう高めなモーテルだったのに、無料朝食の品揃えはかなり悲惨なものだった。コーンフレークは1種類しかなく、しかも牛乳がない。オレンジジュースとグレープジュース、コーヒーの他には、午前8時頃に私が覗いた段階で食パンが2枚きり置かれただけだった。しょうがないなぁ……と、食パンをトースターに放り込んだところで、奥からおばちゃんが大きな箱を抱えてのしのしと棚の前にやってきた。中にはぎっしりと各種ドーナツ。食べ物がなくて困っていた周囲のお客さんたち(特に子供)が押し寄せてきて、僕はチョコレートドーナツ、僕も僕もと大騒ぎ。しばらく子供たちに囲まれていたおばちゃんが、脇に立っていた、パンの焼き上がりを待つ私に向かって
「あなたもどう?」
と微笑んできた。あ、じゃあシナモンロールいただきます、とシュガーコーティングつきシナモンロールを1個皿に乗せる。

安くない宿泊費だけあって、部屋にはペンダント型ライトの下に小さな2人用のダイニングセットがついている。朝食コーナーからジュースや食べ物を部屋に持ち込んで、ささっと済ませた朝御飯。シナモンロールは、甘かった……。

St.Louis Centre内 「Sakkio JAPAN」にて
 チキン天ぷらコンボ
 スプライト

2杯の無料試飲つきバドワイザービール工場見学が、無事に11時に終わった。
さすがに、できたてのビールは美味しい。実のところ、バドワイザーをこんなに美味しいと感じたのは今日が初めてだったような気すらする。このへんのエリア一帯にホップに匂いが漂っているような工場はすごく巨大で、見応えもあった。古い古い時計塔があったのが印象的だ。

「11時からやっているっていう、セントルイス名物の"フローズンカスタード"屋さんがあるんだけどー」
と、見学後は"Ted Drewes"という名前の、ビール工場近くにあるらしい老舗のフローズンカスタード屋さんを目指してみた。"フローズンカスタード"なる食べ物は、セントルイスの名物らしい。その名前を聞いてからというもの、
「要するにアイスクリームみたいな?」
「ていうか、アイスクリンみたいな?」
「それとも、シェークみたいな?」
と食べたくて食べたくてうきうきしていたのだ。細い道をくねくね行きながら向かったその店、しかしながら店頭には「CLOSED」の文字がでかでかと張り紙されていた。後になってわかったことだけど、セントルイス内に2店舗あるこのフローズンカスタード屋さんのうち、こちらの店は夏にしか営業していなかったらしい。そんなことはつゆしらず、
「え……?やってないよ」
「閉店しちゃったのかなぁ」
「でも、もう1つの店ってのも、どこにあるか詳しいことがわからないし」
と、とりあえずその店を後に。その後、ダウンタウンにあるという、フローズンカスタードが名物という別の店を探してみたのだけど、それもマップにマークしていた場所にその店が見つからなかったりした。実はセントルイスに来て一番食べたかったものがこの"フローズンカスタード"だったのに、どういうわけか全然見つからないことに誰よりもショックを受ける私。皆をぞろぞろ振り回して連れ歩いたのも申し訳ないし、何より悔しい。一体どこで食べられるのフローズンカスタード。

今日は雷雨の予報も出ている曇り空で、予定していた"グラント農園"散策も、やめておいた方が良さそうだ。
だったら昨日上れなかったゲートウェイアーチにもう一度チャレンジしようと、2時間後に出発する頂上行きトラムのチケットを購入後、近くをぷらぷらして適当に昼御飯を食べることになった。
「ここ、再開発地域ってことで、新しいモールがあるところなんだけど、食べるところも多分あるんじゃないかと」
とIさんが連れて行ってくれたショッピングモールSt.Louis Centreは、一見した華やかさとは異なり、"開発したはいいけど入店してくれるテナントが少なくて困っています"という感じのところだった。綺麗だけど、すでにどことなく寂れ感が漂っている。食べ物があるところというと最上階にある、よくあるタイプのフードコートくらいだった。それもまた、メジャーなファーストフード店はひとつもなく、聞いたことも見たこともないような中華料理屋さん、ハンバーガー屋さんなどが並んでいる。「君たち、一回も日本に来たことすらないだろう」という南米系の顔立ちの男たちが2人並んで鉄板で何かを炒めている怪しい日本料理屋さんもあった。そもそも店名からして、どうやって読めば良いのかわからない。が、「どうぞ、サンプルサンプル」と爪楊枝に刺して一口食べさせてくれたチキンテリヤキは、そこそこ食べられる味がした。ここでいいや、とほとんどの人がこの店の料理をつつくことになった。

私が頼んだのは、チキン天ぷらコンボ。これは天ぷらという料理とは別の何かじゃないかという感じの、モコモコサクサクした衣で揚げられている鳥肉の揚げ物がごろりごろりと5本ほど。その下には塩味の野菜炒めが敷かれ、更にその下にはチャーハンがこんもりとよそわれている。多分、想定しているものは"丼"なのだろうと思うけれど、それにしてもちょっと面妖な盛りつけの食べ物だった。だんなが頼んだビーフテリヤキコンボは、チャーハンの上に野菜炒め、その上にテラテラと茶色く光る牛肉とマッシュルームの炒め物がごってりと盛られている。どちらも、見かけは凄かったけれど、有り難いことに味は比較的素直なまともなものだった。

昼食後、再びアーチに戻って、頂上を目指す。アーチの高さは192m。モニュメントとしてはアメリカ最大のものというこのアーチの中には、左右から頂上に向かうトラムが動いている。5人乗りのものが8個連結された形のトラムは、トラムというより遊園地で見かけるカプセル型の乗り物のよう。小さな椅子に座っても頭をぶつけてしまいそうな丸っこいカプセルに5人がぎゅうぎゅうに詰められて上に向かう。観覧車のように窓がついているわけではなく、入口のドアにガラスが入っているだけの、息が詰まりそうなものに乗って、上まで3〜4分。
頂上は頂上で、頭がぶつかりそうなほどの低く狭い空間の左右に細く窓がついている。頂上から左右にゆるやかに傾斜がついており、アーチの両側からのぼってきた人々がここでぎゅうぎゅうになりながら外を眺める。「ただ、高いだけ」と言えばそれまでだけど、自分が立っている真下には何もないと思うとちょっと足がすくんでくる。心配だった天気は、とりあえず小雨は降っていたものの眺めが悪くなるほどのものでもなかった。

一度セントルイスに来たことがあるというIさんは、ここでお別れ。「私も、今日のうちにできるだけ我が家の近いところまで戻ろうかと……」というMさんともお別れ。最後の最後まで私たちに同行してもう一泊しようかと迷っていたHさん一家も、「明日も天気が悪いって天気予報で見たので」と今日のうちに帰宅する道を選んだ。私たちはもう1日遊んで帰ろうと(何よりフローズンカスタードを食べていないし、イタリア人街にも興味があるし)、セントルイスを後にする仲間たちを見送って、今日の宿探しを始めた。突然人数が激減して静かになってしまった。

St.Louis 「Cunetto House of Pasta」にて
 Toasted Ravioli $5.95
 Bucatini con Salsa al Bolognese $8.65
 Fettuccine alla Cunetto $9.15
 Vitello Saltimbocca $13.50
 Vanilla Ice Cream $2.50
 Double Espresso $3.50
……を、家族で適当に分け合いつつ。

セントルイスのリトル・イタリー"The Hill"というエリアに宿を取った私たちは、"セントルイスナンバー1イタリアンレストラン"に選ばれたという人気のイタリア料理店に行ってみることにした。なんでも、予約は受け付けておらず、夕飯時には2時間待ちがあたりまえな店であるという。まぁ、開店直後に行けば大丈夫でしょう……と行ってみたら、甘かった。午後5時の開店に対して6時前に到着してみたら、店の前には大量の入店待ちの客がたむろしていて、名前を受付に告げたところ
「ん、2時間待ちってところね」
と軽やかに言われた。ほんとに2時間待ちだったのか……、と一瞬ハニワ顔になった私に対して、もう1人の受付のおねぇちゃんが
「家に戻っていてもいいわよー。またその頃に来てくれれば」
なんて事を言ってくる。ホテルまで数分の距離ということもあり、一旦ホテルに戻ることにした。

リトル・イタリーと言うけれど、とりたててこのあたりがイタリアイタリアしているというわけでもない。並ぶ民家も、普通のアメリカンな一軒家だ。ただ、このあたりの街灯にはイタリア国旗色の飾り旗がつけられている。
「……あんまり、イタリア!って感じがしないね?」
と、運転席のだんなに向かって呟くと、
「何言ってるんだよおゆきさん!そこらへんでガキがサッカーしてるじゃないか!それってすごいイタリアだよ!」
と鋭く返事が返ってきた。ああ、そういえばアメリカのお子さまというとバスケとか野球って感じだよね、と車内でしばらく盛り上がる。
美味しそうな食材が並ぶイタリア食材屋さんもあった。けれど、残念ながら夕方を過ぎて閉店。入口から中を眺めるだけだった。

そして午後7時40分頃に再びその店を訪れた。受付のカウンターに行って
「6時頃に来て名前入れてもらったんだけど……?」
と尋ねると、
「ああ、もう名前呼んじゃったわ。いないからキャンセルしちゃったけど、じゃあリストの一番上にもう一度名前を入れておくわね」
と。そして数分後に、無事席に案内された。

普通の家屋を改築したかのような、どことなく民家のような調度品。古めかしい壁紙の上には油彩画がいくつもかかっている。広いフロアに多くのテーブルがぎっしりと並び、わいわいとあちらこちらで賑やかな話し声が聞こえてくる。少なくはない店員さんは、誰もがバタバタと忙しそうに立ち動き、パンの籠も投げられるようにテーブルにやってきた。何だか凄いお店だ。

メニューには、前菜、スープ、サラダから始まって舌平目を中心とした魚料理、仔牛を中心とした肉料理に至るまでかなりの品数が載っていた。やっぱり"House of Pasta"と言うだけあってパスタの品数が多いような気がする。前菜に、この町の名物である"Toasted Ravioli"の文字をみつけ、それを皆でつつくことにした。あとは……パスタとメインディッシュを1品ずつ頼めばいいかな、と注文をする。
「私は、この"Cunetto風フェットチーネと、サルティンボッカ」
と伝えると、給仕のおっちゃんが目をぱちぱちさせて
「それは彼の分?」
と聞いてくる。うんにゃ、一人で食べるんだよ、と答えると、
「それはやめておいた方がいい。量がたくさんありすぎる。パスタは、大きなボウルみたいなのにやってくるんだ」
真面目な顔でアドバイスされて、そうかそんなに量が多いのかとメインディッシュはそのサルティンボッカ1品きりに。あとは私はクリームソースのパスタ、だんなはミートソースのパスタ。

この店のトーステッドラビオリも、非常に美味しかった。揚げたてのぶりぶりと巨大なラビオリにおろしチーズがたっぷりとかかり、ミートソースが小皿に入れられ、添えられる。サクサクした生地を噛みしめると、適度に塩気のきいたひき肉や野菜の練りものが肉汁たっぷりに出てくる。トマトの主張が強すぎないミートソースもかなり好み。グラスの白ワインをいただきながら、すっかり空腹になった胃を揚げラビオリでせっせと癒す。

そして、テーブルには残りの料理がずらずらっと並べられた。私のパスタに、だんなのパスタ。それに1皿だけ注文したメインディッシュがテーブルの中央に。それと一緒にミートソースのスパゲティ(小サイズ)までやってきた。……え?それは頼んでいないよ、と首をかしげると、
「これはサルティンボッカのセットのやつだよ」
とのこと。どうやら、メニューの説明書きを読み飛ばしていたようで、メインディッシュを頼むともれなく"本日のパスタ"がついてくるものらしい。知らずに頼んだ私は、パスタ2皿とメインディッシュを食べることになってしまっておっちゃんに止められていたのだった。……ていうか、普通、イタ飯屋に入ってメインディッシュ頼んでもパスタなんてついてこないじゃん……。

しかも、パスタ1皿が確かに巨大だった。確かにおっちゃんの言うとおり、大きなボウルみたいなのに入っている。一体何グラムあるんだよ……と思いながらフォークに絡めて口に運ぶと、素朴な外見のパスタが驚くほど美味しかった。私は"Cunetto風フェットチーネ"。バターと生クリームたっぷりのチーズソースのフェットチーネだ。アメリカでメジャーなアルフレッドソースのような感じだけど、かなり濃厚、こってりとしている。チーズの存在感がこれでもかとあって、そういうものは塩が強めになりがちだけれど食べやすい塩辛さ。私の料理も美味しかったけれど、だんなの"ボロネーゼソースのブカティーニ"が、すんばらしく美味しかった。一回ハンバーグのように焼き付けてからほぐしたかのようなひき肉が、ところどころ塊状になっていてつつくとモロモロと崩れていく。淡い味のトマトに、香草や香味野菜類もほどよく入り、甘すぎず、かといってワインの主張が強いでもなく、懐かしい味すらするミートソースのパスタだった。ボロネーゼは、妙に赤ワインの味が強かったりトマトっぽかったり更にはケチャップっぽかったり、パセリのとんがった味が漂いすぎていたりして「なんか……"これ!"って感じじゃないんだなぁ」と思うことが多かったけれど、この店のは「まさに、これ!!」と拳を握りしめたくなる味がした。微妙に異なる味だけれど、メインディッシュについてきたミートソーススパゲティだってなかなかのものだ。私はもとより、ミートソースが大好物なだんなは、目に涙を浮かべる勢いで
「うめーよ……今まで喰った中で一番旨いボロネーゼだよ……」
と大ボウルサイズのパスタを一気に喰いきった。

メインディッシュ、サルティンボッカは薄く叩いた仔牛肉を生ハムで巻き、グリルした後にチーズのソースを絡めたような料理。これもまた悪くはなかったけれど、パスタの美味しさに比べるとちょっと印象が今ひとつなものだった。何しろもう、パスタが旨くて、でも大量で。
最後に、「この料理、持ち帰ってもいい?」と尋ねると、円形のタッパーにクリームソースとミートソースのパスタを詰めて袋詰めにしてくれた。美味しかったけれど、さすがにちょっと多かった。
「なんで、美味しい料理を食べたのに、僕たちはため息ついてばかりですかー?」
「美味しい料理を食べたからだと思うけど、なんだか下が向けませんねー」
などと言いつつ、すっかり満杯の胃を抱えてよろよろとホテルに戻る。明日の朝御飯も、パスタかなぁ……(夜まで保ちそうだったら家に持って帰るんだけどなぁ……)。

4/20 (日)
これが噂の「フローズンカスタード」。うまー。うまうまー。
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
St.Louis 「Saint Louis Bread Co.」にて
 チーズデニッシュ
 牛乳

私たち家族だけの、セントルイス最終日。
今日の目的は、なんといっても"フローズンカスタード"。ついでに、息子が喜びそうなGrant's Farmというところにも行ってみることにした。どちらも、昨日のうちにホテルで調べたところによると、日曜日もやっているらしい。今日はただの日曜日ではなく、"イースターの日曜日"というちょっと特殊な日ではあるけれど、やっていることに賭けて一日動いてみることにした。

朝御飯は、道中にあったSaint Louis Bread Co.というパン屋さんで。なんでもセントルイスを中心に展開しているチェーンパン屋さんで、なかなか美味しいらしい。後になって調べたところによるとテネシー州にもちょこちょこ存在しているらしいパン屋さんだったけれど、日曜の朝からも営業しているのが有り難いこともあり「ここで食べよう〜!」と入ってみたのだった。

カウンターにはデニッシュやクロワッサンを中心に、美味しそうなパンばかりが並んでいる。サンドイッチやスープ類もあるらしい。
私はたっぷり両手で抱えるほどの大きさがあるチーズデニッシュにして、息子はチョコレートクロワッサン、だんなはチーズクロワッサン。どれも巨大だ。ミニパック入りの牛乳を飲みつつ食べたデニッシュは、シナモン風味のサクサク生地にクリームチーズベースのクリームがたっぷりと乗せられたものだった。店内は、どことなくスターバックスのよう。いかにも「これから日曜礼拝に行くんです」という、着飾った親子も簡単な朝食をここで摂っていた。
今日はイースター。ドライブしていると、あちらこちらの家にウサギの飾りや卵をつるした庭木を見ることができた数日間だった。

St.Louis 「Grant's Farm」にて
 フレンチフライ
 バカルディ

Grant's Farm(グラント農園)は、南北戦争時代北軍で戦ったグラント将軍が元々所有していた農園。バドワイザーを作っているビールメーカーAnheuser-Buschが現在は管理運営していて、"農園"という名があるものの、実際はミニ動物園として機能しているらしい。"吹き抜けのトラムに乗ってバイソンや鹿がいる敷地を周遊"だとか、"ヤギの子供にミルクをあげられる"などという話を聞いて、きっと息子が喜ぶだろうなぁと連れて行くことにしたのだった。

車の駐車代が5ドルかかるけれど、入場料は無料。しかも、中では2杯までビール類をタダで飲ませてくれるおまけつき。
まぁ、無料の小さな動物園でしょ?という軽い気持ちで行ってみたのだけど、これがなかなか楽しかった。トラム(というか吹き抜け座席の3連結のバス)に乗って動物園エリアに連れて行ってもらうのだけど、途中は放し飼いの牛や鹿や馬のエリアをのったらのったら通っていく。目の前を、おっそろしく大きな角を生やした牛がのんびり通っていったりして、なかなか面白い。

動物園では1個1ドルで子ヤギ用のミルクを販売していて、子ヤギが100頭ばかり放たれている柵の中に入ることができる。私の膝くらいの高さしかない小さな小さな子ヤギがうじゃうじゃと押し寄せてきて、それに潰されそうになる息子。私のジーパンには子ヤギの足跡がいっぱいつけられてしまった。しかし、すごく可愛い。1匹お持ち帰りしたくなるほど小さな子ヤギは可愛かった。
ウサギやカピバラ、ラクダやラマなどの草食動物ばかりがいる小さな動物園。柵が低く、その気になれば動物に触れられるようになっている。ラクダの柵の前にはラクダの餌の自動販売機があったりして、餌付けまでできるようになっていた。

ひととおり歩いて、息子も満足したようなので最後に休憩エリアでビールを1杯。私は瓶詰めカクテルのバカルディを1本もらった。
「……子供用のソフトドリンクはタダじゃないのね」
「しかも、ビールとか飲んでると、つまみも欲しくなるのよね」
と、経営側の思惑にまんまと乗せられるように安くはないホットドッグセットなどを購入してしまう私たち。
雲行き不安だった今日の空模様もこの頃には陽光も差すようになってきて、すっかり暖かくなってきた。青空の下で昼間っからアルコール飲みながらフライドポテトをつまんだりして、なんだかのんびり。

St.Louis 「TED DREWES」にて
 フローズンカスタード (プレーン・レギュラーサイズ)
 

昨日目指そうとして休みだったフローズンカスタード屋さん、Ted Drewes。嬉しいことに、昨夜泊まったホテルにこの店の案内カードが置かれていた。いつもだったらインターネットに繋いでさくさく調べるところ、モデムの調子が不安定でとてもネットサーフィンで検索などできない状況だったので、
「カードがあったよ、あったよ!」
「神様のお導き〜」
と本気で感謝しつつ、きっとオープンしているだろうこの店の本店を目指してみた。時間は午前11時過ぎ。多分今日の営業が始まったばかりだろうに、店には続々と車が押し寄せていた。

やたらと豊富なフレイバーの種類が書かれた看板を眺めて、
「んー、やっぱりプレーン、かな」
「僕は新発売の"キャラメル"にしてみよう」
と決意して、カウンターへ。パイナップルだのミントだのマシュマロだのモカだの、ただでさえ豊富なフレイバーなのに、更にホイップクリーム乗せとかココナッツトッピングとか色々オプションもあるらしい。メニュー見ているだけで「どうすればいいのだー」と頭を抱えたくなってしまう。

通常は紙コップに入れてもらうのだけど、サイズは3種類。$2.50のがレギュラーで、$1.60がスモール。更には$3.60の巨大サイズもあるらしい。私はプレーンのレギュラーを、だんなはキャラメルのスモールを。
出てきたレギュラーサイズフローズンカスタードは、日本のファーストフード店で買うMサイズドリンクのカップにたっぷりとソフトクリーム状のものが詰まったものだった。中央にぶっすとスプーンとストローが刺さっている。なんでもカップを逆さにしても零れないのがウリらしく、手元にあるこの店のカードの写真は、おっさんがカップ2つを逆さに持ってニヤリと笑っているものだ。

味と舌触りは、こってり濃厚めなソフトクリームという感じ。ねっとりと粘っこく、とても滑らかなソフトクリームだ。各種フレーバーは、基本のものに各追加材料を加えてミキサーで混ぜて作られるようだ。うっすらとマーブル状になって混ざったキャラメル味も、ふわんとキャラメルの味がただよう美味しいものだった。ちょっと甘さは強めだけど、甘すぎるというほどでもない。滑らかで口当たりが心地よく、いくらでも食べられそうだった。
「うまー!」
「フローズンカスタード、うまー!」
「……ストローが刺さってるということは……飲めということ?」
「溶けたら、飲めということでは」
「飲んでも旨いぞ、ということですね」
などと言いつつ、駐車場に止めた車の中でもりもり食べた。しかし、レギュラーサイズって1人で食べきるのが大変なほどの量なのだけど(スモールサイズが日本人にとってのレギュラーなような気が)、更に上のサイズを買っていく人が多くてびっくりしてしまう。やはりこれはシェイクのように飲めば良いものなのだろうか、と謎が少しばかり深まった。

ともあれ、念願のフローズンカスタードが食べられて、しかも旨くて大満足。そしてちょっと寄り道しながらの帰路につく私たちだった。

昨夜の残りのミートソーススパゲティ・クリームソーススパゲティ
アメリカンドッグ
ミネラルウォーター

行きはイリノイ州側からセントルイスに入ったのだけど、帰りはミズーリ州を南下していくことに。途中、ポパイの作者であるElzie Crisler Segarの生まれた町だというChesterに立ち寄った。ミシシッピ川を越えて入った町の入口に小さな小さな公園があり、ポパイの銅像が立っている。町の中には小さなポパイグッズ屋さんと共にポパイミュージアムもあるということだけど、こちらは残念ながら日曜日が休みということだった。話によると、この店でポパイのイラストつきほうれん草の缶詰を購入できるらしいのだ。
「ポパイ印のほうれん草缶、イカスー!」
「お土産好適品!」
と、これを密かに目当てにしていたのだけど、あえなく撤退を強いられた。しょぼん。

ミズーリ州を南下するルートは、ミシシッピ川とほぼ平行に走っていて、景色の良い場所が途中いくつもあった。ミシシッピ川を越え、ついでにオハイオ川も越え、ケンタッキーからテネシーへ。高速道路ではない、いわゆる"下の道"経由で我が町に至る高速道路の乗り口を目指したため、何度か道に迷ってミシシッピ川を合計5回も横断する羽目になったりもした。でっかい川にかかる橋は非常に数少ないのに、たったの片側1車線しかない橋ばかりだった。かなりのボロ橋ばかりだ。

"下の道"は、途中、なんにもなかった。そういえばお腹すいたよね、と言ってみても、見たこともない名前のガソリンスタンドや経営してるのかしてないのかわからないハンバーガー屋などが時折あるばかり。本当にこの道を行けば高速道路にぶつかるのか、と不安になるほどの田舎町を突っ走って東に向かった。やっとの思いで高速道路とのジャンクションに到着しても、そこにはチェーンガススタンドくらいしかなく(少々離れたところにマクドナルドもケンタッキーもあったことがわかったのだけど)、空腹きわまりアメリカンドッグやハンバーガーをここで購入。そういえば昨夜のスパゲティを持ち帰ってきたのがあったじゃないか!と鞄からタッパー入りのスパゲッティを取り出してガススタンドの電子レンジを借りて温めさせてもらった。

1日おいてすっかり麺もぐだぐだになってソースとべったり絡まってしまっていた、パスタ屋さん「Cunetto House of Pasta」のスパゲティ。でも、ミートソースは昨夜と同じく、やっぱり涙ちょちょぎれるほど美味しかった。なんでこんなにこの店のミートソースは旨いんだろう。私のハートもだんなのハートも掴んで離さない、絶品のミートソースだ。ジャンクな味のアメリカンドッグと、昨夜の残りものとはいえ温かくて旨いスパゲッティで胃も膨れ、すっかりご機嫌で残りの140マイルをかっとばして午後6時半、家についた。……さすがに、疲れた。

マルちゃん 黒い豚カレーうどん(ミニ)
麦茶

全くやる気のないまま、
「このまま寝てもいいけどー」
「でも、何か食べたい感じー」
と、早めに済ませた風呂の後、ミニサイズのカップうどんを2個、家族でつついた。私は"黒い豚カレーうどん"、だんなは"白い力うどん"。
「ちゃんと半分ずっこして食べようね!」
と、小さなどんぶりを交換しあいながらつつき食べる横から、息子が
「ぼくもー、ぼくもたべたい。いっぱい、たべたい」
とがんがん奪っていく。うー、なんだか半端に食べたせいで余計に腹が減ったような。……とりあえず、寝よう。