ミルクティー
明日はクリスマスイブ。ここはいっちょ、何か大作料理をしようかと思い、あれこれ数日考えてみた。結果、これでもかと安い牛肉をたっぷり使ってビーフシチューを作ることに。確か以前にもクリスマスに作ったことがあったよなー……と自分の日記を検索したところ、1998年に作っていることが発覚した。あ、1999年にも作ってる。2000年はインド風チキンカレーで、2001年はチキンの丸焼き。色々やっているようで今ひとつ代わり映えのしないクリスマス料理なのだった。ビーフシチューは、どうやら3年ぶりのようで、めんどくさくて普通の日には全く作らないらしいということが我が身の日記で判明した。
「ちょっと午前中は研究室に顔を出してくる〜」
というだんなと、朝御飯は軽くちゃっちゃとカレーパン。冷凍保存しておいた「Alpha Bakery」のカレーパンを1分ほど電子レンジにかけてからオーブンでこんがり焼いてみた。日本から持ってきた「L'EPICIER」のテイスティングパック入りの"Morning Tea"はほんのりバニラの香り。牛乳と砂糖をだばだば入れて飲んでしまった。
食後、だんなが大学に行ってからはいよいよビーフシチューの仕込み。本気で作るからには、缶詰のドミグラスソースなどは使ってはならない。まずは小麦粉とバターでルーを作ることから開始。
100gのバターを鍋で熱して溶かし、120gの小麦粉を振り入れたら弱火でひたすらせっせとかき混ぜる。焦げ付かないようにせっせせっせとやっていると、20分ほどで見事なチョコレート色に。そこに赤ワインを500ccほどだばだばだ〜と入れ、更に熱しておいたビーフストック(これは手抜きして湯に顆粒ビーフブイヨンと溶いただけ)を3リットルだばだばだ〜と。600gの缶詰トマトピューレも放り込んだら、あとは具の準備だ。
にんにく1個を両断しただけの薄皮も剥いていないやつをスキレットで炒め、香りが出たらざく切りにした玉ねぎ2個にんじん2本セロリ1本を放り込んでざざざっと焦げ目が軽くつく程度まで炒める。炒めたらシチューベースの鍋に放り込み、空になったスキレットには続いてシチュー用の角切り肉(本当はスジ肉を使いたいところだけど、スジ肉もスネ肉もなかったので煮込み用角切り肉で代用)を入れて炒め、これも全面に焦げ目がついたらシチューベースに。最後に2kgの塊肉に塩胡椒して凧糸で形を整えて縛ったやつを焼き付けた後鍋に沈め、スキレットについた肉のカスは赤ワインで洗い流してこれもシチューベースに入れ、とりあえずおしまい。あとはアクを取りつつ蓋をしてひたすら弱火で煮込んでいく。
Old Fashioned Club Sand (Turkey, bacon, lettuce & tomato)
紅茶
昼前に、一応の仕込みは終わった。
「でも……最後にこれを"漉す"んだよねぇ……」
と、すっかり熱気が籠もった台所で大鍋を前にため息をついていたところ、だんなが帰宅。
「Mさんに教えてもらったんだけどさ、美味しいという噂の"Meat & 3"の店に行かない!?」
と帰宅早々、申し出された。「肉料理プラス付け合わせ(主に野菜料理)3品」という形態の"Meat & 3"はこのあたりではごくごくメジャーな料理の種類であるらしい。「美味しいイタリアンのお店!」などと同列に「美味しいミートアンドスリーのお店!」なんて店紹介をよく見かける。
では、と、とりあえず煮込みの鍋の火を消して車に乗って行ってみたところ、目当ての店は残念ながらクリスマス休暇。
「12/30に再開するわよーん!」なんて札が店頭にかかっていて、
「超ショック〜」
「超超ショック〜」
「こうなったら"P"なんだもんね」
「"P"に行っちゃうんだもんね」
と、おもむろに行き先をパンケーキ屋に変える私たちだった。あと3〜4日したら友人Sちゃんが日本からやってきてこの店に連れて行くことになっているのに、そういうことはあまり考えていないらしい。
私はなんとなくパンケーキ気分ではなかったのでオールドファッションクラブサンドを。だんなはパンケーキメニューから、未体験の「Blintzes」を。息子はM&M'sを散らした子供用パンケーキと、あとは"本日のスープ"からStew Boatsなるものを1皿。
だんなの「Blintzes」は、パンケーキメニューの中ではかつてなく異様なものだった。薄く焼かれたパンケーキは、ぷよぷよとしていて、まるで外見は中華の点心の「腸粉」のよう。四角く畳まれたその生地の中には、ほんのりシナモン風味のカッテージチーズが挟まれ、表面には粉砂糖とシナモンパウダーがかかっている。添えられているのはサワークリーム、シナモン風味のシロップと、パンケーキシロップ。
「こ、これは……」
と一切れ食べただんなはちょっと妙な顔をして
「あ、甘くない……」
と呟いた。
「う、うーん……不思議な味だけど……不味くはないっていうか……」
と困惑気味だ。一口貰った私も
「う、うーん……不思議な味、だね……」
と、それしか表現できなかった。もう1皿いるかい?と聞かれたらいらない、と答えるだろうけど、不味くはない(微妙だなぁ)。
そんな困惑皿を前、私の目前にはボリュームたっぷりサンドイッチがあるのだった。
ターキーハムとカリカリベーコン、そして大量のトマトとレタスが挟まるサンドイッチはクラブハウスサンドのように"パン・具・パン・具・パン"という構造になっていて、その厚さは人間の口の構造に挑戦してるんじゃないかと思ってしまうほど。ぎゅうと押さえつけて口に運んでも、具が端からこぼれてしまいそうなそれを必死になって食べた。染み出るベーコンの油にトマトの果汁、シャキシャキのレタス。パンはこんがりと焼かれていて、ハムとベーコンの適度な塩気が良い感じ。自家製らしい、ちょっと厚めのポテトチップスがサンドイッチを覆い隠すように添えられていた。
クリスマスイブを前日に控える今日、お店の店員さんたちは全員なんとなく赤っぽい服や緑っぽい服を着ていて、更に厨房で働く人々は皆サンタ帽をつけて動いていた。客席から厨房はそれほど見えはしないのに、時々カウンターの向こうにピョコピョコ動くサンタ帽が見えた。可愛いなぁ。
麻婆豆腐
煮豚
羽釜御飯
ビール
アイスウーロン茶
ここ数日ずっとずっとだんなが「食べたいなぁ」と言っていた麻婆豆腐をついに決行。
「クリスマスイブイブなのに麻婆豆腐なの!?」
と非難の声をあげてみたところ、
「いーじゃないかクリスマスイブイブの麻婆豆腐!ていうか"イブイブ"ってなんだ!」
と反撃された。
私が仕事のファイル作っていたり仕事以外のファイルを作っていたりする間に、いつの間にか米が研がれ材料が切られ、麻婆豆腐ができていた。いつもはだんながメインの料理を作っている脇でさりげなく味噌汁を作ってみたり食器を出したりしているのだけど、今日という今日は何もしてないぞ(←日本語がヘンだぞ)。すまんだんな、ありがとうだんな。イブイブなのに麻婆豆腐ぅ?などと文句たれた私の前には旨そうな麻婆豆腐。
だんなの好みな麻婆豆腐は「豆腐たっぷりだけどそれ以上に肉たっぷり。そいでもって汁気が多め、辛さは控えめ」というもので、今日のはまさにそんな感じ。なんとなく味噌っぽくてなんとなく豆板醤っぽくて、御飯に似合う麻婆豆腐だった。最後にはお約束の「麻婆丼」にして食べてるし。
「Williams-Sonoma」のパネトーネ
ホットココア
クリスマスイブの朝。昨夜から空模様はいまひとつで、今朝も早くから冷たい雨が降ってきている。今日と明日、周辺の飲食店や商店はほとんどが休みになる。大晦日や正月には普通に営業していたりするので、アメリカ人にとっては今日明日が私たちで言うところの大晦日と正月の感覚に近いのだと思う。でも、
「あー……マドレーヌ焼こううと思っていたのに型がないよ」とか、
「そーいや前菜とかのこと考えていなかったやー……サラダ野菜でも買ってくるか」とか、
全体的に煮詰まっていないクリスマスディナーの準備だった。
朝御飯は、クリスマスらしくイタリアのクリスマスパン「パネトーネ」とドイツのクリスマスパン「シュトーレン」で。
「パネトーネとシュトーレンでいいですかー?」
と、一応だんなにお伺いをたててみたところ
「理屈倒れの……」
とボケが返ってきた。だんなは幼少時に大阪に住んでいたことがある。東京生まれ東京育ち(母が秋田出身なので自分の感覚としてはなんとなく東北寄り)な私に、ツッコミを日々要求してくるのであった。この場合にはすかさず
「それシュターデン。しかも食べ物じゃなくて銀英伝だし」
といった反応が要求される。でも、難しすぎるってー、君のボケはー(しかもディープだしー)。
パネトーネもシュトーレンも、どちらもフルーツが入った甘いパンだ。パネトーネはふわふわしているけれど、シュトーレンはどっしり系。牛乳たっぷりのココアをいれて皆で囓った。
ビッグマック
フライドポテト
オレンジジュース
午前中は、近くのスーパーマーケットへお買い物。買いたいものはサラダ野菜とか、カルパッチョにでもしようかというマグロ程度のものだったけれど、店内の品はかつてないほど少なくなっていた。肉コーナーの肉はあらかた無くなり、魚コーナーにいつも積んであるマグロもナマズも売り切れだ。残っているのはわずかばかりのサーモンや帆立、海老などで、仕方ないのでスモークサーモンを買ってきてみた。ディナー前の最後のお買い物、といった感じで玉ねぎもラディッシュも売り切れだった。クリスマスって、なんだかすごい。
ともかくも買いたいものは買えたので、家に帰ってひたすら料理の仕込み。昨日煮続けていたビーフシチューは更に煮込み、それから塊肉以外の具をレードルで潰しながら漉して滑らかなスープに仕立てていく。火が通った塊肉は一口大に切って、更に煮込む。その間にマッシュポテトとにんじんのグラッセとパールオニオンのコンソメ煮(全部ビーフシチューに添えるためのもの)の仕込みを。クリスマスケーキは、結局ケーキではなくマドレーヌを焼いてみることにした。確か、だんなが一番好きな焼き菓子がマドレーヌだったので、作ったこともないそれに初挑戦。マドレーヌ型ではなくアルミ製のマフィン型を使って焼いてみたけれど、なんとかマドレーヌっぽく焼き上がった。
そんなこんなで昼はずっとコンロやオーブンが大稼働状態。それ以上にボウルや泡立て器、玉ねぎや小麦粉などで調理台が大変なことになっていた。
「というわけで、昼御飯の準備ができません」
と、昼御飯はどこかで買ってきてもらうことに。軽くでいいよ軽くで、マクドナルドあたりでいいよ、と、だんなに買ってきてもらった。昨夜の「クリスマスイブイブなのに麻婆豆腐」より「クリスマスイブなのにマクドナルド」の方が"いかがなものか"なものではないかと思わないでもない……けど、気にしない。
「マクドねぇ、おゆきさんが好きそうなソフトドリンクってオレンジジュースかレモネードしかないんだよねぇ……」
と、巨大なカップにたっぷりのオレンジジュース(おそらくHI-C)。ちょっと冷めたビッグマックとポテトを囓り、そして再び料理の仕込みだ。
ビーフシチュー
(マッシュポテト・にんじんのグラッセ・パールオニオンのコンソメ煮添え)
ロゼワイン(Brookside Rose)
マドレーヌ
牛乳
午後7時、クリスマスイブの夕御飯。
サービングポット(Lodge社のこれ※)にポートワインを少々入れて煮詰め、そこに煮込んだビーフシチューを今晩食べる分だけ移す。煮込んだ塊肉を一口大に切ったやつを入れ、蓋をして1時間ほど更に煮込んでいく。
数時間前までサラサラで、"これで本当に濃厚になるんだろうか"と心配していたシチューは、見事にドロンドロンに濃厚になった。一口大に切った肉が、もうグズグズと崩れつつある。
サラダ野菜はオリーブ油とすりおろしたホースラディッシュをベースにしたドレッシングで軽く和え、スモークサーモンを添えて簡単なサラダに。フランスパンでも添えたいところだけど、「ビーフシチューを御飯にかけると美味しいのよねー」という理由で御飯を添えた。グレートスモーキーマウンテン国立公園の麓町で買ってきたワインを出して、イブディナー。
こってり濃厚なビーフシチューは甘さ控えめで、子供向きではない味だった。息子はそれでもマッシュポテトやにんじんをバリバリ食べ、スモークサーモンも「おさかなおさかなー」とかぶりついていた。たまには子供向けなクリスマスディナーでも作ってやろうと思いつつ、いつもほんのり過酷なメニューになってしまって息子には密かに悪いなと思っている私。
食後はケーキじゃなくてマドレーヌ。シチューで満腹になった胃袋には1個のマドレーヌが案外とちょうど良かったり。
で、プレゼント交換。25日の朝とか26日(ボクシング・デー)にプレゼントの箱を開けるのがこちらでは一般的であるらしいけど、我が家は毎年24日の夜に交換していたから、今日のうちに交換。それでもこちらの風習に従い、クリスマスツリーの下にラッピングしたプレゼントをしばらく飾っておいたりしていた。
私からだんなへは、収集しているカバグッズ(オブジェ2つと「HIPPO XING」という看板)と、元素記号模様・スパゲッティ模様・寿司模様といった怪しい柄のネクタイ数本。一生懸命探しているし、それなりにお金をかけている割には毎回くだらないプレゼントだなと我ながら思う。だんなからは、欲しかった"デジカメが入って手帳が入って、でも小ぶりな"という私が欲しかったタイプのバッグと、腕時計。日本にいるときはずっと携帯電話が時計代わりだったので、私は腕時計を持たぬままアメリカで生活していたのだった。単独行動したりするときはデジタルカメラの時計を見ながら歩いていたりしていたので、時計は密かに欲しいと思っていた。秒の目盛りもついた、数字が大きな大振りな時計は私好みなもの。ありがとだんなー。
ベーコンエッグ
スモークサーモンのサラダ(昨夜の残り)
カフェオレ
昨夜の天気予報では「24日の夜から雪になりまーす」ということだったけれど、残念ながらホワイトクリスマスにならなかった。雪が降ってもおかしくないほどの、久しぶりの冷気だ(ここ数日、コートも要らないほどの陽気の日が続いていたし)。
「めり〜……」
「メリー……」
とだんなと半端な挨拶を交わしつつ(全て最近全巻揃えた『あずまんが大王』がいけない)、そういえば予定も何もない今日だったのだと気がつく。
朝御飯は、ベーコンエッグにクロワッサンに、昨夜の残りのスモークサーモン入りサラダ。
ベーコンをスキレットでじくじくじくじく炒めた後に卵を割り落として目玉焼きに。近所のスーパーマーケットで買ってきたクロワッサンは、やたらと巨大で腹一杯になってしまった。
アイスカフェオレ
昨日、息子にあげたクリスマスプレゼントは「Voyager Adventure Station」なる名前の子供向けコンピューターもどき。てっきりACアダプターでもついているんだろうと思って買ってきたところ、単2電池が要るということでせっかくのプレゼントで遊べない我が息子だった。
「でんちがないから、遊べないよー……」
と眉毛を垂れさせている息子がさすがに可哀相なので、だんなが電池を買いに外出。
「すごいすごい!今日は本当にどこもやってないよ!ショッピングモールの駐車場に車が全然いなかった!」
と興奮して戻ってきた。一年のうち最大の休暇かもしれないクリスマス休暇、それでもファーストフード店とドラッグストアくらいはやっていたらしい。息子は猿のようにおもちゃで遊び始めた。
特段何もすることがなく、ひたすらだらだらと過ごすクリスマス。
昼御飯には
「何かパスタが食べたい気分だけど〜」
「なんだかやる気もないしぃ〜」
と、チキンナゲットを乗せただけの超シンプルヨコイのスパ(とはなんじゃい?という方はこちら)を食べることに。クリスマス、アメリカはテネシー州で名古屋のスパゲッティ「ヨコイ」を食べるというのは、何かこう、我が家らしいというかなんか違うというか。留学生仲間のWさんは名古屋出身とのことで、先日「ほらほら、こんなの日本から持ってきました」と、そのレトルトパックを見せたところ
「ななな、なんでこれがこんなところに!」
とのけぞっていた。ええ、私たち、名古屋出身者でもないし名古屋居住経験もないくせにこのパスタが「心の味」になりつつあるのでございます。
茹でた麺を水で締めた後バターで炒め、更に盛ったら温めたレトルトパック入りソースをかけるだけ。上にはチンしたナゲットを乗せるだけ。とろみのあるソースは"ルウ"というより、"あんかけ"という感じ。ミートソースでもケチャップでもない、微妙にピリ辛でジャンクな独特の味はやっぱりクセになる。
「クリスマスですけどね」
「ヨコイ、美味しいですね」
「やっぱり美味しいですよね」
とはふはふ食べた。
ビール(Corona)
自家製マドレーヌ
全体的にやる気のないクリスマス。夕方になってもだらだらだらだらした挙げ句、結局昨日のビーフシチューの続きを食べることになった(もとよりその予定ではあったけど)。多少は格好つけた夕飯にしようと思いつつ、「御飯にシチューをぶっかける→マッシュポテトやにんじんのグラッセを上にどかどか添える」というだけの一皿料理になってしまった。なんか、普段の夕食よりも淋しい光景だ。これから数日、飽食が続くことになりそうなので気にしないことにする。
赤ワインたっぷりビーフシチューは、さすがに火を通して3日目ともなるとかなりマイルドな味わいに。トロンととろみも強くなり、御飯にかけて食べるのが程良い濃さにもなっていた。
デザートにはクリスマスケーキ代わりに昨日焼いたマドレーヌ。
話によると、アメリカには「クリスマスに"クリスマスケーキ"を食べる」という習慣は特にないようだ。クリスマスディナーのデザートとして、クッキーやパイなどと同列にケーキを準備することはあっても、日頃生クリームのケーキを食べない人がわざわざ「この日だけは食べる」と意気込むことはない、という感じ。スーパーマーケットに並ぶケーキも、少しばかりクリスマスな色合いで装飾を施したものが並んでいるものの、大量に準備されているということはなかった。
1日経ってマドレーヌもしっとりした感じに。23個もできてしまったマドレーヌは、今日同じ住宅内に住むお仲間さんたちに数個ずつお裾分けしてみたものの、まだまだまだまだ余っている。こりゃ、明日遊びに来るSちゃんたちにも食べさせることになるかなー……(日本から遊びに来た友人にいきなり手製の焼き菓子かい)。
緑茶
今日の午後到着の予定で、私の友人Sちゃんが2泊3日で我が町に遊びにやってくる。オラが町の美味しいものを色々食べてもらおうと、観光スポットの情報はあまり集めていないくせに食事の計画だけは綿密に想定していたりする我が家。中華や和食、韓国料理などを食べに行く可能性は限りなく低いので、これから3日間はこってりアメリカ飯が続くだろうなぁという感じ。
「そういうわけで、残ったビーフシチューはあるのですが"ちょっと違うな"と思うわけです」
と、起きるなりまずは洗濯になぞ行き、そして台所の棚をがさがさ漁る。なんかなー、冷凍ワッフルとか冷凍パンケーキという気分でもないし、と思っていたところ「どん兵衛」を発掘した。数週間前に日本食材屋で"もしもの時のために"と買ってきたやつだ。別に今日が"もしもの時"というわけではないんだけどなぁと思いつつ、朝御飯はこれにすることに。抜け目無く、ちゃんと2個買ってきてあるのでだんなと私と1個ずつ。息子には小皿に取り分けてやった。
ぺろぺろ〜んと薄いうどんに、ちょっと甘めのスープ。更に甘ったるい油揚げ。ジャンクでチープな味だけど、それはちゃんと懐かしい日本の味だった。この味に癒されてしまう自分がちょっとばかり情けない(でも美味しい……)。
中国茶(四季春)
昼御飯を食べるタイミングをなんとなく逸したまま、午後1時。予定から15分ほど早くダラスからの便(ナッシュビルには日本から直通便なんて飛んでやしないので、アトランタとかダラスあたりで必ず乗り換えなければならないのだった)が到着した。Sちゃんと一緒に到着ロビーにやってきたのは留学生仲間Mさんのフィアンセさん。日本から同じ便でこちらに向かうということは聞いていたのでSちゃんに「こういう人が同じ便でやってくると思うんだけど」と伝えておいたら、ダラスからの便で席が隣同士だったらしい。仲良く2人で降りてきた。
Sちゃん到着の1時間後にはSちゃんのお友達(現在ニューヨークに留学中)もやってくることになっている。が、ニューヨークは昨日から大雪で飛行機の遅れや欠航が相次いでいるらしい。空港の到着予定のモニターには30分以上の遅れと表示されていたので、一旦我が家にSちゃんを連れてきてしまうことにした。
お友達を迎えるまでの数十分、とりあえず「まぁ、食えー」と自家製マドレーヌなど出してみたり。初めてアメリカ大陸に足を踏み入れた友人に最初に食べさせたものが自家製マドレーヌとは、友人思いなのかそうじゃないのか微妙〜な感じ。
Sちゃんのスーツケースには、「お願い、これ買って持ってきて〜」と頼んだものが山のように。へんこの胡麻油に酒粕、仙台味噌、泡盛、日本の雑誌何冊か。
更に色々、スーツケースの中から出てきた。
「これ、デパートで見つけたから〜」と、へんこの練り胡麻。
「豚味噌鍋に、これも要るかなって」と、一味唐辛子。
「あとね、せりあちゃんのホームページの"一言"読んだから、これも」と、どら焼きまで(←なんだかすごく恋しいのだった、どら焼きが)。
持つべきものは友人だ。1日で消しちゃうようなところにちょろっと書いておいたようなものまで覚えてくれている友人だ。どうもありがとうSちゃん。
Sampler Platter
Hooters Chicken Wings 20pcs.
Hooters Salad
Curley Fries
ビール(MICHELOB LIGHT)
雪のニューヨークから無事にNさんも到着し、ダウンタウンをちょこっと散策。
夕御飯には、本当はカリブ料理屋からカレーソースかけ鶏の丸焼きをテイクアウトしてきて我が家で食べよう、というつもりだったのだけど、なんと今日はお休みだった。クリスマスイブとクリスマス、あとは元旦くらいを休むだけの飲食店が多い中、たまーに長期休暇にしてしまうお店もある。
「ダウンタウンのアメリカ飯屋に行きますか?美味しいけど……量はたっぷり」
「量が多いの……?」
「あとはね……すぐそこに地ビール屋さんがあって……あ、バッファローウィングならフーターズも良いかもしれない……あそこもある意味コテコテのアメリカだし」
などとホテルのロビーで話し合い、結局HOOTERSに行くことにした。
「アメリカ来たら、やっぱりここのおねーちゃんは見ておかなきゃー」
なんて言いながら。ニューヨーク住まいのNさんも、このチェーン店には未だ行ったことがないらしい。
お店のおねぇちゃんは、おしなべて美人だし、何しろスタイルが良い。ユニフォームは店のロゴがオレンジ色で入った白地のタンクトップ、そしてオレンジ色のホットパンツ、白いソックスにスニーカー(こんな感じ)、真冬でもこのスタイルでお店の中をかつかつと歩いている。
「ね、すごいでしょう?」
と飯を食べに来たのかおねぇちゃんを見に来たのかよくわからないノリになりつつ、20本セットのバッファローウィングを注文してもりもりと食べる。マイルド・ミディアム・ホット・スリーマイルアイランド(←原発事故が起きた地名、そのくらいとんでもなく辛い、ということらしい)・911(←救急車沙汰になるほど辛い、ということらしい)の5種類の辛さが選べるソースは、ソース抜きにするとただの"手羽の唐揚げ"なんだけど、それはそれで悪くない。ソース抜きのを20ピース注文し、「Sampler Platter」なる色々な料理の盛り合わせの中のバッファローウィングはマイルドソースにしてもらった。
ビールを飲みながら手羽先をバーリバーリと食べる。ここのバッファローウィングのソースはかなり酸味が強めで、この味はこの味でビールによく似合う。プラッターには茹で蟹と揚げた海老(バッファローウィングの海老バージョン)、シュリンプカクテルにバファローウィング、たっぷりのセロリが盛られていて、4人でつついて丁度よいくらい。ゆで卵やチーズが散らされた山のようなサラダもつついているうちに、すっかり満腹になった。
余談かつセクハラめいた話だけど、"女性の体のどこに最初の注目するか"でその人が"どのくらい心が若いか"が判別できるのだそうである(だんなの談による)。曰く、顔に注目するのが一番若く、胸、ウェスト、尻……といくほど老成している(?)のだとか。
「おー、あのおねぇちゃんの胸の谷間はすごい!」
「あのおねぇちゃんのお尻のプリプリ感も日本人にはなかなか無いものだわねぇ」
と観察してしまう私はまだまだ普通らしく、だんなの注目するところは、曰く「足首」。そ、そりゃまた何というか……マニアックな……(笑)
Chocolate Sin
クラムチャウダー
紅茶
SちゃんとNさんのナッシュビル滞在、2日目。
Sちゃんのこの地でのたっての希望が「Pに行きたい」ということだったので、中日の今日の朝食にそのメインイベントを持ってくることにした。この店、朝は6時からオープンしているけれど閉店は昼過ぎなので朝食か昼食に来なければならない。そして昼間は1時頃まで行列ができてしまうので、行くならば朝早めか昼過ぎか、ということになる。
「だから、朝にしましょう。朝8時半に迎えに来るよー」
と、約束し、迎えに行った。
ホリデーシーズンの朝8時半であっても(ホリデーシーズンだから?)店は大繁盛。客席の大半は埋まり、店頭で待つお客さんが数組立っている状態だった。4人がけテーブルに5人がつき、各々好みなものを注文。私とだんなは「とにかく全種類食べてみるんだもんね」という野望に燃えているので、未だ食べたことのないパンケーキメニューを選択した。
私は3枚の薄焼きパンケーキの内部と上部にチョコレートガナッシュをかけ、ラズベリーコンポートを添えた「Chocolate Sin」なるものを。だんなはスィートポテトが入った「Sweet Potato Pancakes」なるものを。Sちゃんはオムレツとプレーンパンケーキ3枚のセット、Nさんはカントリーハムとパンケーキのセット。朝食らしいものを頼んだ2人と、朝食っぽくないものを頼んだ1人、そして"それっておやつでは?"な選択の1人(私だ)。
説明文を読んだから知ってはいたものの、私の前にやってきたのはなかなかすごい皿だった。チョコレートガナッシュをくるんだパンケーキ(というかクレープ)の上からも格子状に美しくチョコレートガナッシュが。横には大量のラズベリーコンポートと山盛りホイップクリーム。色鮮やかな光景だけど、周囲にもブルーベリーパンケーキだのラズベリーパンケーキだのを食べている人が山のようにおり、自分のことを棚上げして「すごいよなぁ」と思ってしまう。みんな、良く食うなぁ(←また棚上げ)。
プレーンなパンケーキを前に、巨大な肉や卵料理と格闘するSちゃんとNさん。南部特有の「さぁ、たーんとお食べ」なホスピタリティ精神に圧倒されてはいなかっただろうか、ちょっと不安。でも、パンケーキ、美味しかったでしょ。ね。ね。
9時半を過ぎて店を出ると、店の前は既に大行列ができていた。タイミングが良かったねぇ、と言いながら、今日は観光名所の1つ、オープリーランドホテルへ。かつては遊園地が隣接し、カントリーミュージックのバンド演奏などがあちらこちらで聞くことができたらしいけれど、現在はホテルとミュージックホール、いくつかの博物館の他には巨大ショッピングモールがあるだけ、とちょっとばかり淋しいことになっている。
ホテルはガラス張りの巨大な中庭を擁する構造になっていて、中庭をはしる水路には小さな遊覧船に乗るアトラクションなどもあったりする。滝があり、ジャングルのような樹木あり、と、何やらラスベガスにあるような感じのホテルなのだった。ホテル内を散策して一休みし、最後に軽くショッピングモール「オープリーミル」でお買い物。
Crab Cake $9.95
Vegetable Beef Soup $5.95
House Salad $6.95
Prime Rib 12oz $25.95
Cream Spinach $5.95
Ice Cream $4.50
スパークリングワイン $40.00
そして夕飯は、これまたSちゃんリクエストによる「Stock-Yard Restaurant」。以前一度、A先生に招待されて留学生仲間全員で会食をしたことがあるお店だ。いつか個人でも行ってみようね、と言っていたお店だったので丁度良い機会と、息子を留学生仲間のHさん宅でみていてもらい、大人4人で食事に出かけた。
「ステーキレストラン北米ベスト10に選ばれた」というこのお店、内装はやたらとシックだけれど客層も働く人もけっこうくだけている。料理の量は南部らしい超級もので、だから私たちも昼御飯を抜いてこの夕食に臨んだのだった。
名物はプライム・リブ。塊肉をグリルして、それを注文の分量にスライスして出してもらう、というもの。"オリジナル"の味付けの他、黒胡椒をたっぷりまぶしたスパイシーなもの、スライスした後に更に炭火焼きにするもの、の3種類がある。他にも他種類のステーキ類やロブスターや魚介のグリル料理、南部らしい前菜類や1個500gくらいありそうなケーキまで、メニューは豊富だ。
Sちゃんは比較的少食なので、肉の皿以外にそれほど食べられるとは思えない。でも肉だけ頼むのもちと不自然だし……と前菜の「Crab Cake」を2人で1皿注文し、1皿に2個盛りつけられたクラブケーキを1人1個食べることに。そして私はスープ、だんなはサラダを頼んで途中で皿を交換しつつサラダとスープを両方食べ、その後に肉を、ということにした。スパークリングワインを1本とって、皆でぐびぐび飲みながら食べていく。
クラブケーキは、蟹コロッケのようなもの。蟹の身をクリームで和え、更にこの店ではチーズもたっぷり加え、それをこんがりソテーしたような感じだ。トマトベースのクリームソースがかかっている。ふわんふわんした舌触りで香ばしく、前回食べた以上に美味しく感じた。
「Vegetable Beef Soup」は透明なスープかと思いきや、ガンボスープに似た味の具沢山なもの。肉の塊がごろごろ入り、豆や野菜がたっぷりと煮込まれている。味はほんのりスパイシーな、やっぱりどこか南部な味。山のようなハウスサラダを平らげた後は、いよいよ肉だ。
私はちょっとヘタレ気味に12ozのプライム・リブ(やっぱりおすすめは16oz=1ポンドサイズらしい)。Nさんも12ozプライム・リブ。Sちゃんは鶏肉や牛肉のグリルを盛り合わせにしたちょっと軽めのものにし、だんなはというと22ozのTボーンステーキなど注文しているのであった。22ozというと623g!骨がついている分、食べられるところは幾分少なくなるだろうけど、それでも600g強の肉って、なんだよそれ、という感じ。だんなの前にやってきた皿は、他のどの皿よりも巨大で、そこに溢れそうなほどの分厚い肉がどどどーんと盛られていた。厚さは3cmくらい。断面積もただならぬサイズなのに、これを垂直に立ててもしっかり立つんじゃないかという厚さだ。だんなのよりは小ぶりとはいえ、私の前に来た肉もボリュームたっぷりだ。
添え物に南部な料理「クリーム・スピナッチ」(ほうれん草のクリーム煮)をつけてもらい、つまみながら肉をわしわしと食べていく。側面にはたっぷりと塩胡椒が揉みこまれ、内部も良い感じに塩味が染みている。ホースラディッシュベースのクリームソースとグレービーソースが添えられているので、それを時折シャバシャバかけたりしながら食べていく。少々の歯ごたえがある肉は軟弱さを感じさせない程度に柔らかで、噛みしめると肉汁たっぷり。ほのかに赤い肉汁が肉を切った断面からタラタラと流れていく。肉を食べるとはこういうことだ、という感じ。
だんなは22ozTボーンを見事に食いきり、私も12ozプライム・リブを完食。即座にウェイターさんが
「デザートはこのようなものがございまーす」
と見本のプレートを持って見せに来てくれたものの、Nさんは"もう下を向けません"というほどに満腹な様子だし、Sちゃんも"せりあちゃんがアイスクリーム注文するなら、ちょっと横から分けてもらうくらいで……"という様相。だんなも「あ、ぼく、エスプレッソだけで」とか言っている。ええ、私は食べますよ、アイスクリームを山盛り(でもケーキはムリ……)。
大ぶりサイズのアイスクリームグラスには大人の握り拳サイズのバニラアイスが2スクープ。注文したものの、1人では食いきれないそのサイズのアイスクリームを、結局大人4人で回しつつ平らげた。美味しいけど……めっちゃめちゃ美味しいけど、なんでこんなに量が多いかなぁ。もう。
子供を預けての大人だけの夜。カクテルでも飲みながらカントリーミュージックの生演奏が聞けるバーにでも行ってみようかなぁなどとも思っていたのだけど、「もう液体も1滴も胃袋に入りません」という状態になってしまってふらふらと帰還したのだった。
なんだか胃袋の限界に挑戦したような一日になってしまった……。
牛乳
Sちゃんのナッシュビル滞在3日目、最終日。
Sちゃんらが宿泊するホテルは、私たちが渡米して最初に泊まったところだ。セルフサービス式の朝御飯がロビーにて無料で供されているのだけれど、ジュースありゆで卵ありフルーツあり、とモーテルなどに比べると幾分豪華。自分でコーヒーをカップに入れベーグルをオーブンで焼き……というこういう朝食もある意味「アメリカならでは」という趣があり、
「せっかくだからそういう朝食も試してみる?」
と、今日の朝食は別行動。
私は自分ちでまだまだ残る自家製マドレーヌなどを囓ってみた。
さすがに昨夜の12ozステーキがまだちょっと胃に堪えている感じ……。
Sushi A Comb
Spicy Tuna Roll
ホテルをチェックアウトしたSちゃんたちを迎えに行き、特に観光に連れて行くところもないので近所のショッピングモールに連れて行ってみた。デパートが1〜2軒はいり(日本のデパートのように8階建てくらいある巨大なものではなく、2フロア程度のささやかな規模のもの)、GAPやBANANA REPUBLICなどの衣料品店、化粧品店、文房具店、雑貨店などが詰まったショッピングモールはここでは非常に"ありがち"なもの。折良く「アフタークリスマスバーゲン」なんてのがまっさかりで、どこもかしこも「40%OFF」「60%OFF」なんて札が飛び交っている。
「お買い物は……特に、別に」
と言っていたSちゃんだったけれどWilliams-Sonomaでお買い物をし、RESTORATION HARDWAREで半額セールをしていたクリスマスリースを買っていた。クリスマスが過ぎると、それまで1個10ドル以上していたツリー用のオーナメントが半額以下で叩き売られ始める。オーナメント以外、クリスマスリースやクリスマス柄の食器やグッズ類も同様だ。我が家用に12月初旬に揃えたクリスマスツリーは全体的に安く安く揃えてしまったので、安売られている今、まとめて買って日本に持って帰ろうと密かに思っている私。
昼御飯は、ボリュームたっぷりチーズバーガー屋を当初は考えていたものの、
「お肉じゃ、昨日の夜と同じような感じだし……」
ということで、「アメリカンなお寿司とはどういうものか」を体験しに行くことに。Sちゃんは今日ニューヨークに向かってそこに年明けまで滞在する予定だそうだけど、ニューヨークに行ったら「こてこてアメリカなお寿司」には出会えないかもしれないし。
向かったところは馴染みの「KEN'S SUSHI RESTAURANT」。
握りのセットを皆で注文し、スパイシーツナロールなる巻物も(本当はサーモンスキンロールを注文したはずなんだけど、間違えられてしまったらしい……)。私とだんなが大好きなのはなんといっても「Crunchy Shrimp Roll」。天かすと海老が巻かれた海苔巻で、ほどほどに油っこくて良い感じ。セットには数種類から選べる巻物がついてくるけど、この天ぷら巻も選べるのがちょっと嬉しい。
巻物の他は、玉子と穴子と海老と蟹かまぼこの握りが1個ずつ。微妙に生魚が入っていない握り寿司の光景もまた、アメリカ内陸部の寿司屋の光景という感じがしないでもない。数日前に日本に居た人に何もこういうものを食べさせなくても、と思いつつ……いつも私たちが食べているような味、ということで。
4種前菜の盛り合わせ
魚介のスープ
海老と中国野菜の塩炒め
五目炒飯
ハリバットの生姜蒸し
麻婆豆腐
牛フィレ肉の黒胡椒炒め
杏仁豆腐・タピオカ入りココナッツミルク・餡入り餅
ビール・紹興酒・ウィスキー水割・梅酒・アイスティー
午後3時過ぎの飛行機で、SちゃんとNさんはニューヨークに向かって行った。今日の夜は研究所仲間との忘年会。ちょっと郊外にあるベルビューという町にある中華料理屋さんに集まることになっていた。
昼も夜もブッフェをやっているお店だけれど、アラカルトメニューも大歓迎らしい。宴会したいんだけどー、と頼んだら、嬉々として料理を組み立ててくれたのだそうだ。メニューを決めるにあたっては食いしん坊の我が夫が中心になって仲間数人と共にお店と相談していたのだけど、メニューが定まった数日後に主幹事として動いていた別の仲間が
「ブッフェもやってるんですよねぇ……宴会に、ブッフェという選択肢もあるんですか?」
と聞いてしまったらしい。中国人シェフ、チェンさんが怒りまくって、
「ブッフェ料理に出しているようなチャイニーズはなぁ、あれは、リアルチャイニーズじゃねぇ、アメリカンフードだ!っけ!」
と言ったのだとか。それほどブッフェの内容と、本来お客に作りたい料理はかけ離れているということか。アメリカの中華料理人も苦労しているのねぇ……。
ともあれ、「ブッフェにならなくて良かった、ほんっとーに良かった」と内心思いつつ、6時半にお店に集合。宴会するにあたって"料理が全て"とは全然思わないけれど、"お店や料理の選択なんてどうでもいい、集まる場所さえあれば"みたいな人が幹事だと……食いしん坊としては少々つらい。脳裏には会社勤めの頃に何度も何度も何度も行った○民がよぎってしまい……何で銀座に勤めていたのに毎回毎回○民なのかと小一時間……(遠い目)。
私たちもすっかり空腹で、シェフもおおいに気合いが入った宴会となった。前菜の巨大皿には牛すじを甘辛く煮込んで刻みレタスと和えたものの他、煮こごり状に固まった蒸し鶏、きくらげ、春巻きが盛られていた。まずはビールで乾杯し、続いて紹興酒やらウィスキーやらをセルフサービスでぐいぐい飲みつつ料理を喰らう。ちょっと甘めの海老と野菜の塩炒めに、腸詰たっぷりの五目炒飯。ハリバット(←和名"おひょう"、ヒラメの仲間)は丸のままたっぷりの生姜と刻み葱と共に蒸されたもの。「いい肉が入ってるんだよー。これ、黒胡椒炒めにしたら絶対旨いぜ」とシェフから持ちかけられた牛フィレ肉は適度に柔らかく適度に噛みしめがあり、ビリッと強烈に辛い胡椒ベースの黒いソースがこってり絡まっていた。濃い味と薄い味が程良く交互にテーブルに出てきておしゃべりも弾み、すっかり満腹に。
しかもデザートには、注文していた杏仁豆腐の他に、タピオカ入りココナッツミルクの温かいもの、餡入りのお餅までサービスにどかどか出てきた。杏仁豆腐はぷるぷると柔らかく、シロップは透明ではなくうっすらと白いコンデンスミルク風味のもの。ちょっと変わっていたけれど、ふわふわ漂う軽い甘さがとても心地よかった。今度は家族で、そして当然ブッフェではなくアラカルトで注文して食べたいねぇと誓って午後9時半、店を後にした。
あー、この3日は何だか食べまくったぞという感じ。ちょっと胃を休ませなければー。
ベジ・ロール
メロンパン
カフェオレ
「今日は胃を休めるぞー」という気概に満ちた日曜日。その割に、台所には昨夜買ってきた「Alpha Bakery」のパンがいくつも置かれていたりするのだった。胃を休めるなら1人1個にしておけば良いのに、袋の中には5個のパン。私はコールスローが乗った"ベジ・ロール"にメロンパン、だんなはチョコクロワッサンとあんパン、息子にはチョコパン。ここのパン、外見も味も日本の菓子パン総菜パンとそれほど変わらないのに、ボリュームだけはアメリカンのそれだ。2個も食べると満腹になってしまう。
ちょっと甘めのコールスローがトッピングされたベジ・ロールを平らげた後は、表面のグラニュー糖のざらつきが心地よいメロンパン。メロン味のメロンパンなどメロンパンではない!……と思っている私には、ほんのり甘くふわふわなパンの表面をビスケット状のカリカリした"皮"が覆ったその素朴な味がとても嬉しい。……でも1個で止めておけば良かったかなぁ……。
アイスティー
今日は何も予定なし。アフタークリスマスバーゲンが気になるけれど、今日は日曜日。どうせどこにいっても凄い人混みなのだろうと思うと、家でだらだらしたくなってしまうというもので、今日はだらだら。テレビでえんえんと流されているフットボール中継をぼんやり見たりして、なんか気分はアメリカ人。
昼御飯も全体的にやる気無く、昨夜のパーティーから持ち帰ってきた残りの炒飯を食べることに。昨夜はどの料理もちょこちょこ余り、参加者それぞれ適当に残り物を持ってきたのだった。我が家の取り分は、嬉しいことに腸詰たっぷりの炒飯。腸詰の甘さが強く漂う炒飯はパラリとしていて翌日の今日も充分旨い。助かった。
豆腐と油揚げの味噌汁
羽釜御飯
冷や奴
サラダ
ビール
やる気のなさ、午後も夕方もずっと継続。買い物に行くのもめんどくさく、
「適当にやりましょー……」
「鶏肉があるから、親子丼にでもしましょー……」
「……味噌汁の具は?」
「豆腐があるから大丈夫でーす」
と、ありもので適当に済ませることに。豆腐は半量を油揚げと共に味噌汁に、半量は冷や奴に。一昨日買ってきたサラダバッグを皿に盛りつけるだけのサラダと、あとは親子丼。ビール飲みながらでもつつけるように、たっぷりと"親子煮"にしておいて、ビールで飲み食いした後に御飯に乗せて親子丼。三つ葉がないので非常に色気がない真っ黄っ黄な光景になってしまったけれど、気にしない。
それでも鰹と昆布のだしはしっかり取り、味噌汁に使うと共に親子煮にも入れる。醤油と味醂と酒を同量くらいずつだしに入れ、鶏肉を煮込んで卵をまわしかけ、火を通してできあがり。私がサラダや味噌汁の準備をしている間、親子煮を作っていてくれただんなは
「なんかさー……居酒屋で出てくるみたいな卵になったよ」
などと言い、ぷわぷわに"ちょっとだけ炒り卵"状になった卵を見せてくれた。味が良ければいいのよー、気にしない。
気にしない気にしない、とやる気のないままのんびり夕食を食べ、片づけをして居間のテレビをつけたら、やっていたのは「ダイ・ハード3」。
一日中のんびりしていたのに、1時間ほど心拍数が急上昇。私、アクションものは大好きだけど「はーやーくー!いーそーいーでぇー!」という気分になるやつはハラハラしまくってしまって苦手じゃけぇ。
カフェオレ
数日前、初めて買ってきた"セサミブレッド"なるもので朝御飯。長さ30cmくらいありそうな、三つ編みになったような外見の楕円形の巨大パンだ。スライスしてもらってきたそれを、2切れのうち1切れは冷蔵庫に残っていたカチョカヴァロチーズを乗せてオーブン焼き。柔らかく溶けてぴよょょょ〜んと伸びるチーズを楽しみながら、ちょっと遅めの朝御飯となった。
年末押し迫る今日このごろだけど、さっぱり「年末」という気分がしない。
いまだ我が家や周囲の家々、お店に飾られているクリスマスツリーがおそらく原因で、まだまだキラキラしているツリーを見るたびに「あー、まだ12月26日とか27日って感じ?」と体内カレンダーが巻き戻ってしまうのだった。欧米では1月7日までが"クリスマスシーズン"で、その間ずっとツリーを飾り続けるのが普通なのだとか。ちらちらとリースなどを片づけ始める店も出てきてはいるけれど、街はまだまだクリスマス。このままじゃ"いつのまにか年が変わっちゃったよ"ということになりそうで……怖い。
The Original Double Steakburger
Vegetable Beef Soup
Small Garden Salad
Strawberry Milk Shake
今日はアウトレットモールでバーゲン目当てのショッピング。
「Buy One Get One Free」(1個買うともう1個タダ)の長袖シャツをGAPで買ってみたり、1枚13ドルほどのDVDソフトを買ってみたり。今日はキッチンツールは全く目当てではなかったはずなのに、よく覗くキッチンツール屋さんが「閉店セール!全品40%OFF!」なんてものをやっていてアホみたいに買い物してしまった。元々アウトレットショップなので定価の2割引ほどの価格がそれぞれの品についているのに、その値札から更に割引してくれるのだとか。欲しかったデジタル表示のキッチンスケールを購入し、普段使い用の皿を購入し、最近ハマッているOXO社のフルーツナイフだのパン切りナイフだの蟹フォークだのを買ってきた。ああ、幸せ……。
そんなこんなで2時過ぎまで買い物してしまい、気がつけばめちゃめちゃ空腹。高速道路に乗っての帰り道、
「どこか飯屋は〜?」
「行ったことのないところで、気になるところ……」
「ああ!Steak 'n Shakeの看板はっけーん!」
と、わいわい騒いだ挙げ句、初めての店「Steak 'n Shake」に入ってみることにした。その名のとおり、ステーキとシェイクの店だ。ステーキと言っても"12ozサーロイン"なんてのじゃなくて、ハンバーガーのこと。
白と黒のチェック模様がトレードマーク(トレード模様?)で、24時間営業。ハンバーガーとドリンクがメインなのかと思ったら、スパゲッティや朝食向け卵料理セットなども豊富にあるお店だった。
2時半過ぎて、お客さんは5組ほど。私たちの背後に座っている家族(子供3人と両親)のところにミニサイズシェイク3つと、でかサイズシェイク2つがやってくるところだった。家族全員でシェイク。なかなか壮観だ。やはりこの店に来たらシェイクを頼まねばならないのか(←そんなことはありません)。
「でも、やっぱりシェイクよねー」
とか言いながら、「Steak 'n Shake Dinner」なるセットメニューにすることに。この店の基本バーガーである"Original Steakburger"(シングル・ダブル・トリプルと肉の枚数があるらしい)のダブルに、バニラ・チョコ・ストロベリーから好みのシェイク、そして10種類ほどあるサイドメニューのうちから好きなものを2つ選ぶようになっている。
アメリカのレストランのドリンクは大概巨大だけれど、ここのシェイクも笑っちゃうほど巨大だった。持ち上げると筋力トレーニングになってしまいそうなサイズのグラスにたっぷり詰まったストロベリーシェイク。ホイップクリームが飾られ、てっぺんにはチェリー。糖分たっぷりシェイクを飲みながら炭水化物と脂肪の塊のようなハンバーガーを食べるのだから、健康上は非常によろしくない感じ。すごい組合せだよなぁ、と思いつつ、やってきたこれまたボリュームたっぷりのハンバーガーに囓りついた。パンとグリルされた肉が重ねられ、横には玉ねぎやレタスなどの野菜とマヨネーズが添えられている。自分で野菜を乗せケチャップやマヨネーズをかけて食べるようになっている。ガンボスープに似たほんのりスパイシーな牛肉と豆と野菜のスープを啜り、ドレッシングがどっぷりかかったサラダを食べ、バーガーを囓る合間にシェイクを飲む。
満腹になってしまった。
冷茶
午後3時の昼食ですっかり胃がいっぱいになってしまい、「夕飯は軽く、鮭御飯でも作りましょう……」と言って材料を買ってきたその鮭御飯すら食べられないほどに。
今年の年越しは蕎麦ではなくてうどんにしようか、と、だんなが久しぶりに手打ちうどんを作ってくれたことを良いことに、「ちょっとだけ味見、味見」と明日の分がなくならない程度に軽く食べることにした。
フードプロセッサーで粉合わせし、軽くこねこねした後はビニールシートに挟んで踏み踏みし、麺棒で薄く広げ(←"すかし打ち"なる、パスタやクッキー生地を伸ばすのとは違う伸ばし方)、そして切る。だしはイリコと鰹節でしっかりとった、香川の味。確か最初は私も一緒に打っていたはずなのだけど(すかし打ちなんてものは出来ないのでパスタマシーンで"伸ばし"と"切り"の工程を済ませていたのだった)、うどん打ちはすっかりだんなの仕事になってしまった。
茹でたてのうどんを丼に盛り、出来たてのかけだしをたっぷりかけ、刻み葱を散らして啜りこむ。
明日の夜は"かしわざる"予定。鶏肉の天ぷらを作るのは、私の役目だ。
牛乳
10時過ぎあたりにだんなが起きだし、その後誰かと電話で話しているような声がぼんやり聞こえてきたような聞こえてこないような。
2002年の大晦日、私は昨夜今ひとつ眠れなくて午前4時すぎまでネットサーフィンしていたのだった。午前10時をすぎてもまだ眠くって仕方がない。
だんなの「さぁて、出かけるかな」という気配がうすらぼんやり感じられ、着替える音が聞こえてきたところでやっと目を開ける。ぱたぱた手だけ振っていたら、
「おゆきさーん?まだ寝てていいのよ?だんなはちょっと郵便局に行って来るね」
と、だんなが気付いて近づいてきた。
「はい……眠いです……けど、何時?」
「もう11時近く」
「昨日さぁ……寝たの4時過ぎでさぁ……」
「……そりゃ……なんでまた?」
「いや、最初は眠れなかったんだけど、気晴らしにネットサーフィンしてたら……つい……」
2002年も終わろうというときに、私は何をしていたのか。だんなは「もうね、あほかと、ばかかと……」とちょっと呆れたように呟いて出かけてしまった。あああ、行かないで、だんなー……。
2002年の締めくくりがこんなんでいいのか、と思いながら、すぐ後に起きてきた息子と2人で朝御飯(ほとんど昼御飯)。自家製マドレーヌが微妙な量残っていたのでそれを1個囓りつつ牛乳を飲む。息子にはフローズンストロベリー入りコーンフレーク。
まともな年越しの1日にしよう……と朝食喰いながら決意しつつ、食後にまたネットサーフィン。
カフェオレ
「いつもだらだらしているけど、正月は一層だらだらするもんね」
と、昼過ぎに1ポンドちょっとある豚ヒレ肉をオーブン焼きに。「豚肉(確か本当は塊ロース肉を使うんだったような)に塩と胡椒とすりおろしにんにくを揉みこみ、オーブン焼きしてから醤油と酒と味醂と柚子の絞り汁を合わせたタレに漬け込んでおく」という"ローストポークの幽庵漬け"は、確か栗原はるみさんの本に載っていたものだ。結婚直後に買った本に載っていたそれは何かと重宝するので頻繁に作るようになった。肉の味が溶けたタレをじゃばじゃばかけて食べる野菜や豆腐が美味しいのがまた手軽で嬉しい。今年の年越しは「ローストポーク喰ってだらだら酒飲み、その後手打ちうどんを食す」という事に決まった。
「お昼御飯、何か食べるー?……って、もう2時だや」
とだんなが帰ってきたけれど、そのタイミングで昼飯喰ってしまったら、また昨夜のようになし崩しになる可能性が。
「うーん……私は昼前にマドレーヌの残り食べたんだけど……」
と呟いた私に「いーないーな、マドレーヌ、僕もたべる」と即答されたので、またマドレーヌを食べることに。さっき1個食べて、今度は1個半。もう何が食事で何がおやつだかよくわからない状況になっているけど、気にしない。
バターたっぷり蜂蜜たっぷりのマドレーヌは焼いたその日よりも数日経った方が美味しく思える。それにしても、自分でお菓子作ると「うぉー、マドレーヌ1個にこんなに砂糖やバターが入ってたんだー!」と、"知らない方が良かった"的な事実を突きつけられてちょっとつらい。
刻み大根・アルファルファ・ブロッコリー
シュリンプカクテル
ワイン(Brookside Rose)
ワイン(La Crema '00 Chardonnay)
かしわざる
冷茶
豚塊肉は美味しく焼けた。数時間タレに漬け込んで(柚子はないので、日本食材屋で買ってきた"かぼす酢"を使ってみた)、いい感じに味も染みた。添え物はアルファルファと細切りにした生の大根、茹でたブロッコリー。薄くスライスしたローストポークを皿に盛り、野菜と一緒にタレを絡めつつ食べる。あとはスーパーマーケットで買ってきたシュリンプカクテル。茹で海老がプラスチックトレイに美しく円形に並べられ中央にはカクテルソース。"開けたら皿に移すことなくこのままどうぞ"という外見のそれを、「こりゃ簡単でいいやー」と買ってきてみた。20尾並んだ海老を囓り、肉を囓り、これまでの年越しだったら日本酒を傾けるところ、今日はワイン。テレビではいつもどおりクイズ番組などやっているし、やっぱり「大晦日」とか「元旦」と感じが今ひとつしない。
それでも、だんなが手打ちうどんを茹で始めた頃にはなんとなくそれっぽい気分が盛り上がってきた。
だんながうどんを茹でる横で、私は鶏肉の天ぷら作り。鶏の天ぷらだけをたっぷり作り、水にさらしてキュッと締めた冷たいうどんに濃厚ないりこ風味のつけだし。ワインで程良く酔っぱらったところで夜9時過ぎ、つるつると食べた。
2002年のナンバー1ニュースは「アメリカに来た」ことだけど、2003年のナンバー1ニュースは、きっと「日本に帰ってきた」というものになるのだと思う。
ごあいさつ。
この日記を読んでくださっている人も、いつのまにか1日1000カウントを越すようになってしまいました。
嬉しいやら照れくさいやら困惑するやらな心境で、心のどっかで「いや、10人が1日100回リロードしているだけちゃうんか(←冷静に考えるとそれはそれで怖い状況なような気が)」とか「きっと1000カウントのうち8割くらいは検索エンジンのロボットなのよ」などと思ってみたり。
食べ物のことばーっかりな日記ですが、おつきあい感謝感謝です。
2003年もどうぞよろしくお願いします。