食欲魔人日記 03年01月 第2週
1/6 (月)
ビーフシチューかけご飯 (夕御飯)
わかさぎの佃煮
ふりかけご飯
わかめの味噌汁

昨夜はちょっとバタバタとトラブルがあり、だんなも私も寝不足気味。
「大学行ってくる……」
とご飯も食べずに出ていっただんなを見送り、息子も寝ていることだしと私もご飯を食べずにぼへ〜っとしていた午前中。

すっかり「昼」となった時間帯に本日1回目の食事。今ひとつやる気がなかったので冷凍ご飯をチンしてふりかけをかけ、佃煮を出し、昨夜の味噌汁を温めて飲んだ。準備は5分。
私はこれまで"我が家で一番佃煮が好きなのは私"と思っていたのだけど、先日来、思わぬ伏兵がいたことを把握せざるをえなくなった。息子だ。
「おさかなー、おさかなー、食べても、いーい?」
と聞いてきて、いいよと答えたら最後、お菓子じゃないんだからという勢いで佃煮を食べようとする。貴重品なんだからヤメロ、3匹も一気に口に入れるな、1匹ずつ噛みしめて味わって喰え!と言ってはみるけど小魚は身体にも良いものだから喰うなとも言えず。焼き海苔も際限なく喰うし生野菜のサラダが大好きだし人参も喜んで喰うし、私自身の子供時の偏食っぷりを思い出すと「あなたは本当に幼児?」と息子を問いつめたくなってしまう。あ、でもひじきはちょっと苦手らしいと昨日発見。

ビーフシチューかけご飯
グリーンサラダ
コーンスープ
ビール(Corona)

ピザを作ろうと材料を揃えていたものの、半端に買い漏らしがあったのでピザは延期。
「今日の夕飯、思いつきませーん」
「どうしましょー?」
とだんなと夕方ゴロゴロしながら(もう眠くて眠くて……)相談した結果、「冷凍庫にビーフシチューの残りがあるじゃん!」ということに。クリスマスディナー用に力を入れて作ったシチューの残りを冷凍してある。それを温め、ご飯にかけて食べることに。

「ビーフシチューかけご飯」、だんなの実家ではこれを「ハヤシライス」と称している。肉がホロホロに煮崩れ、煮詰まってトロトロになったビーフシチューは確かにハヤシライスのルーに似てるし、そういえば作り方もおおむね同じ。ハヤシライスと表現するにはちょっと豪華な味なような気がしなくもないけど。
ご飯が炊ける間に、じゃじゃじゃっと他のものを準備。クリームコーン缶を鍋にあけ、その缶3杯分ほどの牛乳も加え、顆粒コンソメを溶かす。熱してフツフツしてきたらバターをひとかけら落とせばコーンスープのできあがり。これでいいのか、みたいな簡単なスープだけど息子はこれが大好物(私も大好物)。あとはサラダバッグの中身を各自の皿に盛りつけるだけ。今日の食事は、一日合わせて「台所滞在時間25分」などというものになった。とほほ。

冷凍保存していたビーフシチューは、それほど味も損なわれていなかった。ホロホロに煮くずれまくった肉に、甘く煮たにんじんがごろごろと。汁気がほとんどなく、"シチュー"というより"煮付け"な外観だ。食事の準備をする間、
「ぼくはねぇ、ご飯にカレーと、コーンのスープがたべたいなぁ……」
と台所で私にリクエストしていた息子にとっては、カレーよりもアダルトな味かもしれない(ワイン臭いし……)。
カレー、そういえば今年の正月は食べていない。なんとなく毎年、和食続きに飽きてしまって4日か5日頃にはカレーを食べているような記憶があるんだけど……。作るか、カレー。

1/7 (火)
Copper Kettle(Nashville)にて、「Meat & Two」 (昼御飯)
カフェオレ
だんな特製 中華粥

んぼーっと起きると、台所からはコーヒーのいい匂いがしてきたりして、
「おゆきさん、コーヒー入ってるけど飲む?」
とだんなが私の好みの割合に牛乳を入れたカフェオレを差し出してきた。
「だんなが優しい……何かウラがあるのだろうか……」
と髪ボサボサのまま呟いたら、
「失敬じゃないか!僕はいつだって優しい!」
と憤慨された。
まだだんなの大学の授業も始まってないここ数週間、目覚まし時計もかけていない。毎朝先に目を覚ますのは、大抵だんなだ。台所のコンロには米と干し貝柱を水に浸したやつが既に乗っていたりして、もうどっちが主婦だかわからなくなる。

「そういうわけで、今日は中華粥です」
と、ことこと煮込んだ中華粥が今日の朝御飯。水に浸しておいた(本当だったら一晩漬けておくほうが良いらしい)米と干し貝柱を、水で30分ほどかけて炊いていくだけ。塩で味つけして、あとは油条とか香菜とか皮蛋などを心のおもむくままに準備すれば完成。今日は香菜も皮蛋もなかったので冷凍保存していた油条だけを小皿に盛りつけ、粥に浸しながら食べた。
……が、最近のだんなにしては珍しく、塩の加減を失敗してしまったようで今日の粥はちょっとしょっぱい。
「お粥、ちょっとしょっぱかったね」
と後で言ったところ(いや、食べながらも言っていた)、
「おゆきさんが僕を憤慨させるからー、もー」
と逆襲された。"何かウラがあるのでは"発言が中華粥の味をイマイチにさせてしまったらしい。反省。

Nashville 「Copper Kettle」にて
 Southern fried chicken
 Cream corn
 Mashed potatoes
 Grilled chicken & parmesan soup
 Iced tea

今日のお昼は、研究室のスタッフMさんが「おいしいわよー、ほんっと、おいしいわよー」と勧めてくれたミート&スリーのお店に行くことに。
「Meat and Three」というのは、アメリカ全土でメジャーなものというわけではないらしい。南部独特なものなのかどうかは今ひとつわからないけれど、とりあえずテネシーではこの「Meat and Three」という料理ジャンルが確立しているようだ。"メインディッシュと添え物3品"という意味で、腹具合によっては「Meat and Two」とか「Meat and One」とか、あるいは「Vegetable Three」(メインディッシュはなく添え物のみ3品)なんていうのまでアリらしい。とりあえず出かけてみた。

デリショップのようなカフェレストランで、カウンターごしに並ぶ料理を指さして盛りつけてもらうようになっている。今日のメインディッシュは2種類。南部風フライドチキンと、カントリースタイルミートローフ。だんなと私で別々のものを注文し、10種類ほどあるサイドディッシュからは、私はマッシュドポテトとクリームコーンを、だんなはマカロニチーズといんげんのキャセロールを盛りつけてもらった。そして2種類のパンから好みのものもつけてくれる。ついでに鶏肉とパルメザンチーズのトマトスープも1カップ。

カウンターの向こうには髭面の体格の良いあんちゃんがいて、
「ん?チキンか?チキンだな、よーし」
と巨大なフライドチキンをわしっわしっと2個盛りつけ、「あとね、コーン」の声に
「よっしゃ、コーンだな」
とココットケースにがばーっとコーンチャウダーのようなものを注ぎ入れて皿に乗せ、「んと……あと、マッシュドポテト」の注文に
「グレービーソースもかけるか?かけるな?……よし」
とてんこ盛りにしたマッシュドポテトの上にぐりぐりとお玉でくぼみをつけ、褐色のグレービーソースをシャバシャバシャーとかけてくれた。仕上げに、芋の横にコーンブレッドの塊をドガンと乗せると、もう皿の上は大変な状態に。結局「Meat and Two」にしたものの、これで3種類盛った日には皿の上の光景はすごいことになってしまいそうだ。

だんなも私もお互いの皿を見て、「なんだかすごいね……」と笑ってしまいながらの昼御飯。幸い、何も彼用には注文していなかった息子が横からがつがつとコーンやポテトやチキンを食べてくれ、それで何とか食べきれたという感じだ。
でも、どれもこれも確かにすこぶる美味だった。ほんのりスパイスの効いたバリバリッとした衣の巨大なフライドチキンに、生クリームたっぷりという感じのクリームコーン。皮つきの芋を柔らかく潰したマッシュドポテトにくどさのないグレービーソースがよく似合っている。メジャーすぎる料理のマカロニ&チーズもパルメザンチーズの味が濃厚な安っぽくない味のものだったし、田舎風ミートローフがまた、「ドミグラスソースで煮込んだ巨大ハンバーグ」てな感じの肉肉したものだった。一見普通のデリみたいな店なのに、妙にあれこれ細部にこだわりが感じられた。鶏肉もブロイラーじゃないような味がしたし。

このお店、毎週日曜日にはサンデーブランチをやっているらしい。ブッフェスタイルで、1人14ドルと安くはないものの、卵料理を注文に応じて作ってくれるほか、ワッフルや肉類、スモークサーモンやフルーツ、菓子パンやデザートまであるらしい。
「次は朝御飯だー」
「日曜の朝御飯だー」
と盛り上がって帰宅したのだった。いや、しかし、「Meat and Three」は食べきれる日が来るのだろうか。私はTwoで腹一杯だ……。

自家製ピザ (生ハムとルッコラ)
ビール(MICHELOB)

ボリュームのある昼御飯を食べたので、夕御飯は軽くピザをつまむことに。昼食帰りに寄ったオーガニックスーパーマーケット「Wild Oats」で、ほうれん草みたいに束になった旨そうなルッコラを見つけ、ラッキー!と購入してきた。野菜は新鮮だし美味しそうだし、魚の種類は豊富だし、他のマーケットでは肩身が狭そうに売られているWhole Milk(減脂肪してない牛乳)はたっぷり売られているし、ここ近郊では一番美味しいと思われる豆腐も売られているので、このスーパーは大好きだ。……でも、何もかもが高い。いつもWAL☆MART価格と比べては
「うわー、あっちなら倍量買える……」
「あっちなら1/3価格……」
などと呟いてしまいつつ、それでも欲しいと思うものだけを買っている我が家だった。"それでも欲しい"と思うものは、大抵野菜や乳製品、豆腐くらいだ。冷凍スープや缶詰なども豊富だけど、なかなか手が出せない。

ピザ生地は、すっかり最近ハマッてしまった自家製。ぬるま湯にドライイーストと塩とオリーブ油を混ぜ込んで、それを強力粉の上からドバーッと注いでこねるだけ。ひとまとめにしてラップして温かいところに1時間くらい放置すれば見事にんぷーっと膨れあがるので、小分けして円形に伸ばせば生地の完成。手打ちパスタ作るより、どころかクッキーやケーキを作るより圧倒的に簡単だ。膨れた生地を上からむしゅーっと潰して空気を抜くのが楽しくて楽しくて……(その一瞬のためにピザ生地を作ると言っても過言ではないくらいに……)。

本日の具は、モッツァレラチーズと生ハム(←ずっと探していて、WAL☆MARTの総菜売り場付近でついに発見)、ルッコラ。3分ほど高温で素焼きした生地の上にモッツァレラチーズを散らして2分。生ハムとルッコラを一面にぶわっと散らしたら最後に1分。
「扉あけまーす」
「よっしゃこーい!」
「ピザだー」
「切りまーす」
「おさえまーす」
「ピザやけたー?」
「お皿でーす」
「スライドしまーす」
「ピザ、たべるよー」
と家族で大騒ぎしながら(一部の人は騒ぐだけ)焼き上がるやいなや急いでテーブルへ。伸びるチーズももどかしく、全員でかぶりついた。

今日のルッコラは本当に美味しかった。いつも見かけるのは茎も葉も同じ歯ごたえのふにゃふにゃとした軟弱なものばかりだけど、今日のは茎はシャキシャキ、葉がバリバリとした育ちまくったもの。胡麻に似た特有の香りが、葉に触るだけで周囲に漂ってくるような感じで、久しぶりに食べた美味しいルッコラだった。
結局2枚を立て続けに同じ具で焼き上げ、家族でぺろっと平らげた。息子が1/2枚分ほど食べたのが、ちょっと計算外……(そんなに美味しかったのか、息子……)。

1/8 (水)
自家製ピザ カプリチョーザ我が家風 (夕御飯)
磯辺焼き
抹茶入り玄米茶

「日本の正月」な気配はほとんどなかったアメリカでの正月(七草粥の存在すら思い出しもしなかった……)、それでもお餅を食べるとなんとなく「おおー、冬だー正月だー」という気分がじわじわと感じられる。今朝は磯辺焼き。
焼き網などは我が家にないので、鉄製フライパン"スキレット"を弱火にかけて焼いていく。フライパンでも案外と良い感じに焼けることに感謝しつつ、ンプーッと膨れた餅を醤油に浸して海苔巻いて食べた。

母の実家(秋田)では、磯辺巻きを作る際に「砂糖と醤油を同量程度合わせたものに漬けて」ということをしてたりする。更に「マヨネーズ醤油」に餅をつけて食べたりもする。すごい文化だなぁと始めは思っていたけれど、なかなかどうして「砂糖醤油」も「マヨネーズ醤油」も悪くない。でも家で食べるときは醤油100%だ。

Nashville 「Hong Kong」のお弁当
 豚肉と野菜の甘辛炒め
 麻婆豆腐
 野菜の塩炒め
 焼きそば
 炒飯
烏龍茶

学生さんたちは今日から授業が始まるらしい。だんなの授業は明日から。
「でも、ちょっと研究室に顔を出してくるよ」
と出かけていっただんなは、「おひるごはんだよ〜」とお弁当を持って帰ってきてくれた。

ニューヨークあたりの都市部なら話は違うかもしれないけれど、オラが町には「パック詰めされたお弁当」という文化は存在しない。スーパーなどでプラスチックカップに入った寿司や鶏のフライ、サラダ類を見かけることはできるけれど、1つのパックにあれこれ詰まった日本的な"お弁当"というものはまず見かけない。そういうものは、デリ的な店で「あれとこれとこれ、詰めてね」とドギーバッグにどばしゃー、どばしゃーっと盛りつけてもらうのだ。発砲プラスチックの底部が漠然と区切られただけのドギーバッグに大量にあれこれおかずを詰めるものだから、どこの店の"お弁当"でも大抵それぞれのおかずの境界が曖昧になっている。だんなが買ってきてくれたお弁当も、たっぷりの炒飯の上にかぶさるようにドバーッと炒め物、それとびったり寄り添って麻婆豆腐がドバーッ。別の容器には炒飯と焼きそばがどっかんどっかんと盛りつけられ、これまた上にかぶさるように野菜の炒め物がドバー。……毎回思うけど、なんだか「餌」みたいだ。1パック5ドルで、量だけはたっぷり。味はまぁまぁ。

あまりに色気がないので、各自皿に取り分けつつはふはふと食べた。このお店、葱に和えられた蒸し鶏がかなり美味しいのだけど、残念ながら今日はカウンターに出ていなかったらしい。干し海老がどっさり入った麻婆豆腐にくわいの食感が楽しい野菜炒め。どれも味がちょっと濃いめでご飯に似合うんだけど、ドギーバッグにたっぷり2杯の料理はさすがに多かった。家族3人でやっと平らげた感じ。

午後はちょっと近所にお買い物。
帰りの道すがら
「帰ってぇ〜……帰ってぇ〜」(←帰宅してからするべき事を考えていた)
と私が呟いていたところ、運転席の我が夫が
「帰ってキャンディ〜♪」
と続きを歌い出した。いや、私は歌っていたわけじゃない。考え事をしていたこともあって一瞬私の反応が遅れたところ、だんな自ら
「キャンディ追い出すのかよ!キャンディ押しかけでもしたのかよ!」
と自分で自分にツッコミを入れていた。変な人だ。
暫く我が家の流行歌は「帰ってキャンディ〜♪」になりそうな予感。

自家製ピザ カプリチョーザ我が家風
ビール

昨日ピザ生地を作ったので、今日もピザ。「生地を冷凍しておく」(丸く広げた状態で冷凍しておけば、あとは焼くだけなのでらくちんらしい)という技は、なかなか我が家では繰り出されない(冷凍庫に余裕がないもんで……)。作った生地を丸めてラップして冷蔵しておき、焼く前1時間半ほど前に室温に出しておけば大丈夫、ということを経験上学ぶことができている。

本日は具沢山ピザにしましょう、と卵を茹でる。生ハムを出してルッコラやバジルを出して……と準備しているとき、せっかく買ってきたガラス瓶入りのピザソースを落として割るという粗忽な事をやらかしてしまう自分。何やってるんだかなー、もー、とたまたま買い置きがあったトマトペーストにちょっと水を加えて火にかけ、オリーブ油とドライバジルと塩で調味して適当にトマトソースを準備した。
1枚目のピザは、トマトソースを敷いた上にモッツァレラチーズを散らし、ゆで卵とトマトとパプリカとオリーブ。2分ほど軽くそれで火を通してから、仕上げに生ハムとバジルを散らして1分だけ加熱。2枚目のピザはバジルの代わりにたっぷりのルッコラ。

最近の我が家のブームはルッコラと生ハムのピザだったりして、
「"トマトとバジルとモッツァレラチーズ"のイタリア国旗色ピザも勿論美味しいけどねー」
「生ハムとルッコラとモッツァレラチーズのイタリア国旗色も負けず劣らずいい感じよねー」
と盛り上がっている。今日はゆで卵ありトマトソースあり野菜ありの、かなりボリュームのあるピザになった。トマトソースと生ハムとゆで卵が妙に似合って、ビール片手にとまらなくなってしまう。「俺、すっごい腹が減ったんだけどピザで足りるかなぁ……」と言っていただんなが腹一杯だ、と呟くほど食べ応えがあった。自家製ピザはつくづく美味しい。アメリカ食文化を満喫する上で「やはり冷凍ピザや宅配ピザにも挑戦しなければ」と思ってはいるものの、焼きたての旨いピザがけっこう簡単に家で作れるとなると、なかなか手が出せそうにない。とほほ。

1/9 (木)
ジェノベーゼリングイネ (夕御飯)
「Alpha Bakery」の
 カレーパン
 セサミパン with 農場バター
カフェオレ

「これね、農家の人が自分の家で作ったバターでね、とっても美味しいのよー」
と、先日、研究室スタッフMさんに一塊のバターをいただいた。見つけたらぜひお裾分けしなければと思っていたそうなのだけど、なかなか店頭に出てこなくて、やっと数日前に入手したのだそうだ。色が濃いめな黄色のバターはラップにくるまれていて、一見したところバターというよりチーズのよう。冷凍保存しておいたセサミパンをトーストして、さっそくそのバターをつけて食べてみることにした。幸いカレーパンも冷凍庫に保存してあったので、それも温める。

適度な塩加減のバターは牛乳の匂いがぷんぷんと漂ってきて、これは確かにすごく美味しい。たらこスパゲッティなどにしたらさぞ旨いだろうなという濃厚なこってりした味に、
「これはいいねぇ〜」
「これは美味しいねぇ〜」
と皆でこてこてこてこてバターをつけつつ食べてしまった。しばらくバターを使うのが楽しくなりそうだ。

ミートローフ&マッシュドポテト(冷凍食品)
アイスティー

だんな、春学期初講義。午前中で授業は終わったらしく、
「今日はイントロダクションでね、先生が決めた2人1組で自己紹介してきたよ。俺と組になったのキューバ人の男子学生だったんだけど……英語がもう、わかんなくてわかんなくて……」
と初手から泣きが入っている。

明日から3泊4日(帰路の道中1泊予定なので実質は2泊3日)でニューオーリンズ旅行に行く予定。現地集合で最大11人が集まるちょっと規模が大きな旅行だ。飛行機で行く人もいるし、我が家はIさんと共に1台の車で行く予定。なので食材を買うより消費しなければならない状況で、けれど冷蔵庫内には今ひとつ昼食に向いた食材が残っていなかった。
「この肉のパックあけちゃうと後々面倒だしなぁ」
「適当に冷凍もので済ませますか?」
と、昼御飯はこれ以上なく適当に冷凍食品。「手軽さを追求するなら徹底的に」というアメリカ人のニーズがあるのか、冷凍食品コーナーにはワンプレートディッシュの種類が呆れるほど豊富に揃っている。ライスボウル(丼もの)系やマカロニなどのショートパスタ系の他に、マッシュポテトやパスタが添えられた肉料理ものもたっぷりだ。面白がって、ちょこちょこと買い込んでいる我が家だった。冷凍食品独特の味ではあるけど、嘆くほど不味くはない。

本日食べてみたのは、マッシュドポテトを添えたミートローフ。てれーんとした茶色いドミグラスソースがミートローフとポテトにテロテロとかかっている。たまんなくジャンクな味だけど、時々こういうのも悪くないなぁと思ってしまう私。

ジェノベーゼリングイネ
ルッコラと生ハムのサラダ
ビール

今日の夕御飯は"ピザ食材を使い切りましょう"がテーマ。バジルもルッコラも生ハムも半端に残っているのでなんとかしなければならない。
「とりあえずバジルはパスタにしちゃいましょー」
と、バジルは松の実とにんにく、オリーブ油と一緒にフードプロセッサーでギャギャギャギャギャと粉砕してジェノバペーストに。茹でたてのパスタを絡めれば、それだけでパスタ料理が1皿できる。

「そいでもってルッコラはサラダでバリバリ食べましょー」
と、ルッコラは一口大にしてサラダボウルに盛りつける。白ワインビネガーとオリーブ油、塩胡椒と少量の砂糖を合わせたドレッシングを適当に用意し、上からパルメザンチーズを軽くふったルッコラにふりかける。生ハムはサラダの上にペロペロと散らす。
今回買ってきたルッコラはほうれん草のように巨大に育っていて生で食べるにはちと固く思うところもあったけれど、肉厚の葉が香り豊かでかつてなく美味しいものだった。バジルも茎の長さが20cmはあるかという大ぶりなもので(普通は新芽に茎10cm程度がついているようなものがパック詰めされて売られている)、そのまま土に植えたら簡単に育っていくんじゃないかと思えるようなもの。両方とも、オーガニックスーパーの「Wild Oats」で買ってきたものだ。このスーパー、何もかもが高いけれどやっぱりモノは良いのよねぇ……。

1/10 (金)
Red Fish Grill(New Orleans)にて、「1/2doz Oysters」 (夕御飯)
店の照明が暗くて暗くて、こんな写真しか撮れませんでした……とほ
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
車内でサンドイッチ弁当
 ハムサンド
 ツナサンド
 卵サンド
 ジンジャーエール

今日から3泊4日のニューオーリンズ旅行。留学生仲間に声をかけ、現地集合で最大11人が集まることに。我が家はIさんを乗せて4人で自家用車にてニューオーリンズに向かうことになっている。予約できる飲食店は予約したし、あとはカジノに行ったりジャズ聞きに行ったりして適当に各自楽しみましょうねという感じで、男性陣は明日の午後はタイタンズの試合をテレビ観戦するのだとか。我が町のアメフトチーム「TITANS」は現在スーパーボール(日本でいう日本シリーズみたいなものでしょうか)の予選中ということで、ナッシュビル市民は妙に盛り上がっているのであった。でも、ニューオーリンズまで来てテレビでアメフト観戦しなくても良いのにねぇ。

出発は午前7時半。昨夜のうちにサンドイッチのお弁当を作っておいて1人分ずつアルミホイルにくるんである。
「これ、だんなのねー。これ、Iさんのねー」
と手渡し、車を走らせながら食べた。
パン・ハム・チーズ・ハム・パンと挟んだ豪華ハムサンドに、玉ねぎ入りのツナサンド、卵多めの卵サンド。さすがに1斤全部をサンドイッチ加工したら多かった……。

ミシシッピ州Meridian 「Cracker Barrel」にて
 Chicken 'n Rice (with corn, mashed potato gravy)
 Lemonade

Nashvilleから南下してアラバマ州に入り、ミシシッピ州を抜けてルイジアナ州のニューオーリンズへ、というのが行きのルート。帰りはメンフィスにちょっとだけ寄り道して帰る予定になっている。
「君の家と一緒に行動したら旨いもの食べられそうだからさぁ」
と、我が家の車でほぼ全行程を一緒に動くことにしたIさんは、食べ物運がものすごく悪い。食べることにそれほど情熱を傾けていないから、ということもあるかもしれないけれど、「この美味しい店に来て、よりによって数少ないハズレであるそれを注文しちゃうなんて……」というような選択をしてしまう人だ。大学のフードコートに売られる数種類の寿司パックのうち、一番壊滅的な味のものを選んでしまうのが彼。
以前一度、ニューオーリンズに一人でやってきたことがあるというIさんは、「食べ物屋、どこに入っていいかわかんないしなぁ」と早々にこの食い倒れの町を後にしてしまったのだそうだ。あああ、もったいない。

昼御飯は、道中通りがかったチェーン南部料理屋さん「Cracker Barrel」に。チェーン店はどれも同じと思っちゃいけないよ、とにかくここはなかなか美味しいんだから、と我が家近辺にもごろごろあるこの店に。
Iさんには前回だんなが食べてなかなか美味しかった「Chicken Dumplings」を。私は新メニューらしき「Chicken 'n Rice」なるものを、だんなは「Friday Fish Fry」を。それぞれ2つずつ、10種類ほど選べるサイドディッシュがついてくる。息子にはパンケーキを。

レモネードが妙に美味しいんだ、ということで、全員グビグビとレモネードを啜る。冷凍庫でキンキンに冷やした(凍らせた)ジョッキに、レモンの果肉の粒まで入っているような濃いめの味のレモネードがたっぷりと。ジョッキの温度でシャーベットみたいな食感になったレモネードが、移動で疲れた身体に染みるように美味しい。1杯1ドル39セントでお代わり無料がすごく嬉しい。

私の料理は、バターピラフにクリーム煮の鶏肉のシチューがかかっているようなもの。添え物は炒めたコーンにマッシュドポテト、と全体的に黄色や白やベージュ色に偏った色気のない皿にしてしまった。鶏の煮込みもピラフも、どこかで食べたことがあるような安心できる素朴な味だ。お互いに「あ、これ旨い」「こっちも美味しい」とつつきあいながら大きな皿に盛りつけられたボリュームたっぷりのランチを平らげていく。息子に頼んだパンケーキがまた、たっぷりのバターで表面をカリッとさせたような面白い食感のものでなかなか良い感じ。
ね、ね、クラッカーバレルはなかなか美味しいでしょう、とIさんを納得させて(納得してくれたかしらん)店を後にしたのだった。

New Orleans 「Red Fish Grill」にて
 Dozen Oysters $8.00
 Oyster Provencal $6.00
 Oyster Rockfellar $7.00
 Gumbo Soup $5.00
 Soup Du Jour $5.00
 Shrimp Creole $18.95
 Shrimp Carbonara $18.50
 Beer (Abita Amber Draft) 4×$4.00
 Espresso 2×$2.75
 Vanilla Ice Cream $3.00
を家族3人で。

ホテルは見えるのに一方通行の道に悩まされ、なぜか有料道路に入ってしまってミシシッピ川越えをしてしまったりもしつつ、午後4時半に無事に今回の宿にチェックインできた。飛行機組も、他車組も前後して到着し、本日の夜は「まず生牡蠣!ケイジャン料理!クレオール料理!」と盛り上がりまくりつつ予約の店に総勢9人で行ってきた。行ったところは「Red Fish Grill」。シーフードの美味しいお店として人気があるらしく、「ここは旨そうだ」と予約してみたのだけど、この町の観光パンフなどに載りまくるメジャーなお店だったようだ。7時半の予約で、店はもうオイスターバーで待つ人続出という感じ。

「アビタってビールが美味しいよー」
「じゃあそれー!」
「全員それー!」
「あと、生牡蠣ダメな人いないよね?」
「いませーん」
「全員食べまーす」
「じゃあ、まず生牡蠣を1人半ダースずつということで」
とわいのわいのやりながら、まずはビールと生牡蠣。あとは各自スープを注文し、メインディッシュを取ろうということになった。だんなとあれこれ相談したけっか、「とにかく今日は牡蠣を食べに来たのだから」と、生牡蠣とスープの次には更にロックフェラーとプロヴァンカルオイスターを1皿ずつ。代わりにメインディッシュはシュリンプクレオールをだんなと1皿を半分こ、という注文にしてみた。とにかく牡蠣。ひたすら牡蠣。牡蠣牡蠣牡蠣。

夏も美味しい生牡蠣だったけれど、冬のそれは比べものにならないほど美味しかった。大きさはけっこうまちまちで、一番長い部分が10cm足らずのものもあれば15cm以上のものも、という感じ。殻の上に乗ったみずみずしい牡蠣にレモンを絞ってはカクテルソースをなすりつけつつ啜りこむ。生臭さのない牡蠣はほんのりと甘く、プリプリと期待以上に新鮮な味だった。私の向かいで牡蠣を啜っているHさんは
「こんなに生牡蠣を一気に食べるの、初めて……」
と心なしか目がうるんでいる。

私のスープはアリゲーター(←ワニ……)のソーセージ入りのガンボスープ。海老や鶏肉も入った焦げ茶色のスープは、じんわり舌の根に溜まるようなスパイスの味がじんじんとする。だんなのスープはローストガーリックスープ。コンソメっぽい透明な褐色のスープは、器のそばに鼻を近づけるだけで目がチカチカしてしまいそうなほどにんにくの香りが強く、美味しかった。まるでオニオングラタンスープの玉ねぎをにんにくに変えて炒めたみたいな、そんな感じ。濃厚だ。

そしてオイスターロックフェラー、オイスタープロヴァンカル、シュリンプクレオール。
「牡蠣のオーブン焼きほうれん草のクリームソースがけ」といった料理であるはずのオイスターロックフェラーは、牡蠣の殻にほうれん草のソースを敷き、揚げ牡蠣を乗せた、ちょっと変わったものだった。揚げ牡蠣がほんのり甘く、ソースもほんのり甘いちょっと独特な味。苦手な人もいたようだけど、「これはこれで……」と思いながらぺろりと食べた。でも、普通のタイプのロックフェラーの方が好きかもしれない。
そして、野菜と牡蠣を和えてパン粉をふってオーブン焼きにしたようなプロヴァンカル。バジルの香りがする、ちょっとイタリア風な味のもので、これがめちゃめちゃ旨かった。小型のグラタン皿にアツアツの状態でやってきたそれ、牡蠣はプリプリで野菜やソースの味とよく似合う。2皿の牡蠣料理を、だんなと皿を交換しつつ片づけた。
最後に「海老のトマトソース煮込みをご飯の上にかけたもの」といった料理のシュリンプクレオール。ニューオーリンズらしいスパイスの風味が効いたご飯料理だけど、どこか懐かしい味もする。食後はエスプレッソを飲む人あり、食後酒を飲む人もあり。最後は男性陣は夜の町に消え(だんなは一度私やHさんと共にホテルに戻ってはきたものの、また出かけて行ってしまった)、私とHさんはビールを飲みながら私の部屋でくっちゃべり。
夜11時を回って部屋に戻ってきただんなは
「カジノ行ってきたよー!100ドル勝った!」
と上機嫌で戦勝報告してきたのだった。あ、明日は、私が。

1/11 (土)
Gumbo Shop(New Orleans)にて、「Crawfish Etouffée」 (昼御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます

New Orleans 「Cafe du Monde」にて
 Beignets 3×$1.25
 Cafe Au Lait (Sm) 2×$1.25
 Chocolate Milk (Sm) $1.25
を、家族3人で

同じホテルに留学生仲間9人で滞在中のニューオーリンズ2日目の朝。
8時半に集合し、皆で向かった朝食先は「ベニエと言ったらここ!」の「Cafe du Monde」だ。ホテルからは少々距離があるので皆で路面電車に乗り込み、お洒落な雰囲気などみじんもないその店に向かった。

カフェテーブルがゆとりなくぎゅうぎゅうに並び、立ち働くアジア系な顔立ちの店員さんたちは誰もがおしなべて愛想がない。床もテーブルもベニエにまぶした粉砂糖でなんとなくベトベトしている感じだし、あまり落ち着ける雰囲気でもないところだ。でも、ここのベニエは本当に美味しい。涙ちょちょぎれるほど美味しい。
ベニエとは、ニューオーリンズ名物の揚げドーナツのこと。稲荷寿司のような外見と大きさのごろんと四角い揚げたてのドーナツに、どっぷり粉砂糖がかけられて出てくる。日本でも同名のチェーン店がダスキンの資本で展開されているらしいけれど、話によると大きさも味も全然違うのだとか。やっぱりベニエは「3個食べたら相当に腹一杯」の、あの容赦ないボリュームがなくてはならないものだ。
「大体1人1セット(3個)だけど、2セット頼む人もいます」
と皆に伝え、1人1セットずつのベニエを注文。我が家は息子の分も含めて3セット。ニューオーリンズ名物のベニエに合わせるのは、これまたニューオーリンズ名物のチコリコーヒー。チコリの根を粉末にしたものが入っているチコリコーヒーは、少しばかりほろ苦さがあり、カフェオレにするのがたまらなく良く似合う。

席は案内されるわけでもなく、適当に空いているところを見つけて腰掛けるとそのテーブル担当の人がすすすっと近寄ってくる仕組みになっている。けれど、私たちが座ったテーブルの担当は、ちょうどシフト入れ替えのタイミングにあったらしい。待っても待っても注文は取られず、そのへんの店員さんを捕まえて「注文していい?」と言うと「私、そこの担当じゃないのよねー」とつれない返事。やっとそのテーブルの担当の人が現れた時には「すっっっごい待ったんだけど!?」と怒りもあらわに注文してしまい、担当の人を脅えさせてしまったのだった(ごめん……でも、すっごく待ったんだ……)。
「待たせてごめん、ごめんなさい」
と、驚くほど早くベニエとカフェオレを持ってきて、「3セットの注文だったよね、今1セット揚げているところだから、すぐに持ってくるね」と2回に分けて揚げドーナツを持ってきた。かつてなく揚げたてのものがやってきてしまったベニエは持つこともできないほどの熱さで、表面にまぶされた砂糖が溶けていってしまうほど。表面にうっすら揚げ油が残っているようなドーナツを囓ると、じゅわっと熱い油が染み出てくる。軽い甘さのドーナツに、溶けていく粉砂糖がたっぷりと。待たされた不満もなんとなく薄らいでしまって、ハフハフ言いつつ3個半のドーナツを私とだんなでそれぞれ食べた。1個は息子、そして残ってしまった1個は「あ、僕、ちょっと物足りなかったんで……」というHさんの胃袋に。「じゃ、行きましょう」と立ち上がった皆の服は粉砂糖で白っぽく粉粉しているのであった。それもまたベニエ。

New Orleans 「Gumbo Shop」にて
 Turtle Soup $3.95
 Crawfish Etouffée $12.95
 Beer (Dog Beer)

朝食後の数時間は自由行動で、我が家は今はもう運営していない旧造幣局を見学に行ってきた。昔々の造幣局なので、近代的な設備は全然ない。分銅を使うはかりだとか硬貨の大きさを測る木の枠だとか金属を溶かす鍋だとかが展示されていて、あとは特設展示ということでニューオーリンズジャズの変遷と、画家マティスとジャズの関わりの写真や絵画の展示があったり。ぷらぷら買い物した後は、11時すぎに再び集合し、昼御飯は正当派ケイジャン&クレオール料理を食べに行きましょう、と「GUMBO SHOP」に向かった。本当は大規模なパーティー以外の予約は受け付けてくれないお店だそうだけど、子供がいるんです、とメールであれこれ相談していたところ、マネージャーさんが「では私が11時から半までの時間は席を抑えておきましょう」と取りはからってくれた。

11時に開店した十数分後のお店はまだまだガラガラ。テーブルを4つ繋げた席に9人がつき、昼間っからビールを注文しまくる私たち。黒人のおばちゃんが
「ようこそ!本日のアントレは〜〜です、本日のスープは〜と、〜と……」
とにこやかに説明し始める。その中に「Turtle Soup」の単語を聞きつけ、「それ!亀スープ!」と、夏にこのお店にやってきた時に売り切れで飲めなかったそれをすかさず注文。メインディッシュは、一度食べてみたかったクロウフィッシュ エトフェ。クロウフィッシュはザリガニのこと。ちょっとスパイスを効かせたクリーム感たっぷりのザリガニの煮込み料理がご飯の上にかかっているものだ。だんなは「今日の特別料理です」と紹介されていたアリゲーターのソーセージを、他の人もガンボスープやシュリンプクレオールなど、いかにもなニューオーリンズ料理を注文していた。

亀とザリガニという(しかもだんなはワニ料理)、馴染みの薄い食材を使った昼御飯となった。亀は亀と言われなければ乳臭さのない牛肉のような感じだし、ザリガニもちょっとだけ泥臭くはあるけれど海老を食べているのと大差ない感じ。茶褐色のトロリとした濃厚なスープはガンボスープほどの強いスパイス臭はないものの、やはりこちらの地方独特なスパイスの使い方がされている味がした。細かく砕いたクラッカーが上に散らされていて、給仕のおばちゃんが「中までよぉくかき混ぜてね」と言ってくる。料理を持ってきたまま立ち去らないおばちゃんを前にして器の中身をかき混ぜて一口啜った後、おばちゃんは「これ、ちょっと垂らしてみる?シェリー酒なんだけど、これがまた美味しいのよ」と小さなグラスに入った酒を上にふりかけてくれた。酸味のあるツンと尖った香りのある酒が入って、スープは思った以上にまろやかな味になってより一層美味しくなった。

そして「野菜とザリガニのスパイスクリーム煮」といった感じのクロウフィッシュ エトフェ。葱が散らされたご飯がたっぷりついてきて、日本人としては妙に安心できてしまう光景が広がっている。辛さのないほんのり甘さのある煮込み料理で、どこか懐かしい味もする。私が「あ……やっぱりベニエが多かったかもしれない……」と必死に目の前の料理を平らげている横で、自分の分の料理はちゃっちゃと食べ終えていたIさんとMさんが、テーブル上に残っていたパンをもりもり食べていた。
「なんかね、これかけると美味しいんだぁ……」
とテーブル上に置かれていたこの店のロゴ入りの"クレオールスパイス"をパッパとかけてはパンを囓っている。チリ系のスパイスをはじめとしてオレガノやらタイムやらガーリックやら塩やらが入っているこのスパイス、確かにふりかけのような妙な旨さがあってパンにも似合う(いや、本当は多分煮込み料理などにささっとふって食べるものじゃないかと……)。あまりにこのスパイスが気に入ったらしいIさんは、一瓶買って帰ることにしたようだ。

New Orleans 「ACME」にて
 Oysters on the HALFSHELL (Dozen) 2×$6.49
 Fried Oyster Po-Boy $6.99
 Creole Jambalaya $3.49
 Smoked Sausage $3.99
 French Fries $1.99
 Beer (Dexie)
 Beer (VooDoo)
 Coke
を家族3人で。

午後、私のだんなを含めた一部の男性陣はホテルの部屋でアメフト観戦。今日は私たちの町のチーム、タイタンズのスーパーボール予選(←地域の代表が戦う、日本シリーズみたいな位置づけのもの)があるとあって、いてもたってもいられない人が何人かいるようだった。子供たちも部屋で見ていてあげるよと言われたので、私とHさんは2人でカジノへ。ラスベガスでは散々だったのに、40ドルの投資が最終的に138ドルになり、かなり舞い上がりながら部屋に戻ることができた。その後、夜も行って40ドルの投資が78ドルに。ニューオーリンズのカジノはラスベガスと違って相性が良いらしい。ちょっとシアワセ。

夜はひたすら牡蠣を喰おう第二段ということで、「ACME」へ。昨日の夕方町を発って途中で一泊してきたTさん夫妻も合流した。
予約は受け付けていないお店なので「まぁ、適当に入れる人から座るということで……」とアメフトの試合後(めでたくタイタンズは辛勝して、すっかりハイテンションな一団に……)にぽてぽて歩いて店の前へ。午後8時を過ぎた店の前は10人ほどの行列ができており、数十分待ちだという列について待っていたところ、11人用の長テーブルの席を作ってくれた。もうほとんど合宿のノリだ。
店員さんにそれぞれ飲み物を注文し、
「牡蠣は?ハーフダースずつ持ってくる?」
と聞かれたのに対して
「いや、みんな1ダースね。大人9人だから9ダース」
と答えて「マジ?ホントに?OK、1人1ダースね」と笑いながらメモされた。前回ニューオーリンズに来て何ヶ所かで生牡蠣を食べた経験によると、この店が食べた中では一番旨くてしかも安かった。みなさん、昨夜もしっかり食べたはずなのに生牡蠣に期待しまくりだったようで、昨日の勢いに勝るとも劣らないペースで生牡蠣をしゃぶり始める。

私も追加注文して結果的に1ダース食べたことはあっても、目の前に自分だけの分の1ダース牡蠣が並んでいたのは初めてだったんじゃないだろうか。レモンをチュッと絞ってカクテルソースをちょっとなすりつけ、殻のかけらがちょっとだけ唇にザラついてくる牡蠣の端から身をちゅるっと吸って食べていく。これ以上なく新鮮な牡蠣はプルンプルンで水っぽく、ほのかに甘い。
「うまい、うまいよ〜」
「もう半分食べちゃったよ〜」
「いや、Mさんはもう10個も食べてるよ!」
「しあわせ〜」
「いいよねぇ〜」
と、日本人11人の団体が牡蠣のプレートを1人1個前にしてニタニタしながら食べているのであった。かなり怪しい集団だ。

このお店、しかしながら残念なことにその他のメニューはそれほど充実していない。「Po-Boy(ポーボーイ)」と呼ばれるサンドイッチの他は、"これだけは止めておいた方がいい"という感じの寿司類、フライ物、あとはニューオーリンズ料理の基本であるジャンバラヤとガンボスープ、そのくらいだ。各々ガンボスープをメインディッシュとして食べたり、ポーボーイを囓ったり。私はだんなと2人1皿で牡蠣フライ入りポーボーイを注文し、それだけでは物足りないかとサイドディッシュサイズのミニジャンバラヤを持ってきてもらった。息子にはフライドポテトとスモークソーセージ。牡蠣フライがこれでもかこれでもかと詰まった巨大なサンドは、1人1皿ではまず食べきれないボリュームがある。端からフライとぼとぼと落としながらふっといパンのサンドイッチをわしわし喰い、またもや皆して満腹になって店を後にした。
その後はジャズバーに行く人あり、カジノに向かう人あり。後で交代する約束をして、だんなに子供たちをみていてもらって私とHさんは一緒に1時間ほどカジノへ。私がホテルに戻った後は、だんなが一人でカジノへ。全体的に皆してそれぞれニューオーリンズを満喫した模様。

1/12 (日)
Brennan's(New Orleans)にて、バナナフォスター (朝御飯)
この日の詳細は、旅行記にもより詳しくございます
New Orleans 「Brennan's」にて
 プリフィックスブランチ
 (Southern Baked Apple, Oyster Benedict, Banana Foster)
 オレンジジュース、紅茶

ニューオーリンズ最終日の朝。総勢11人でサンデーブランチにと向かったのは高級料理店「Brennan's」(ブレナンズ)。この店で朝食を摂るのがステータスだった時代がかつてあり(今もステータスなのかもしれない)、「バナナフォスター」というデザートを最初に出したのがここだということだ。
「11人なんだけど……子供も2人いるんだけど」
と、子連れは断られるかもと思いつつ予約を入れてみたところ、「喜んで承ります!」と嬉しい返事をいただいた。ブランチにしてはちょっと早めの午前9時、ホテルから揃っててくてく歩いて店に向かう。

恰幅の良い給仕人のおっちゃんたちがきびきびと立ち動く店内、テーブルには真っ白なクロスがパリッとひかれ、フォークやスプーンが数本ずつ綺麗に並べられている。夕食の光景としてもあらたまっているように映る光景だ。
アラカルトメニューもふんだんに用意されているけれど、ブランチセットとしてプリフィックスメニューがお勧めらしい。35ドルで前菜とメインディッシュ、デザートが何種類もの中から選べるようになっている。前菜はスープやフルーツのダブルクリーム和え、メインディッシュはエッグスベネディクトを始めベネディクト系の料理を中心に10種類ほど、デザートは名物のバナナフォスター他5種類くらい。目覚めの一杯に皆してオレンジジュースをいただきつつ、メニューを検討した。子供用には席につくなりバナナにダブルクリーム(←ちょっと濃いめの生クリーム)をかけたものが出され、ものすごく子供慣れしている感じが。

私は前菜にベークドアップルのダブルクリームがけ、メインディッシュは揚げ牡蠣のベネディクト、デザートはバナナフォスターにすることに。
焼きリンゴを前菜で選択したのは私だけ。周囲はほとんどがオニオンスープやオイスタースープなどのスープ類、Hさんだけが"苺のダブルクリームがけ"という中、私の皿のボリュームが一番すごかった。何しろリンゴが丸々1個、深皿に盛られている。シナモンを効かせて皮ごとグリルした焼きリンゴが皿の中央におさまり、底にはたっぷりと、ほの甘いクリームが敷かれている。甘さはさほど強くなく、リンゴそのものも甘さの中に心地よい酸味のある美味しいものだ。アツアツのリンゴを一口大に切ってからクリームにじゃぶじゃぶ浸しつつ食べる。高級感溢れる味だ。

そしてメインは揚げ牡蠣。エッグス ベネディクトと同じソース(オランデーズソースだかホーランデーズソースだか)が皿にたっぷりの揚げ牡蠣の上にかけられ、ハーブパン粉を乗せた焼いたトマトがついてきている。大ぶりの牡蠣はサクサクに揚げられていて、とても上品な味。ソースは"卵の黄身をベースにほんのりビネガーやレモン汁で酸味をつけたクリーム状のもの"といったものなのだけど、このお店のは酸味にとんがった感じがなくてとても滑らか、上品な味になっている。エッグス ベネディクトは、これまでは正直それほどには美味しいと思えない料理だったのだけど、このお店のソースを舐めて考えが改まった。ポーチドエッグにもハムにもものすごく良く似合う。

朝から牡蠣フライなぞ食べて、すっかり良い感じに満腹になったシメはバナナフォスター。バニラアイスクリームの周囲に、バターとブラウンシュガーとシナモン、バナナリキュールで炒め煮したアツアツのバナナが添えられているというのがそれ。Hさんが苺のクレープ、Mさんがチョコレートケーキを選択した以外の全員がバナナフォスター。ずらりと7つのバナナ添えアイスが並んだ光景はなかなか壮観だった。焼かれてトロンとなったバナナは甘く甘く、カラメル状になっているところもある。柔らかいバナナをソースのようにアイスと絡めて食べるのだけど、朝からこんなもの喰っていて良いのでしょうか、と感じてしまうほどの濃厚な味。バニラアイスも、いかにも卵がたっぷりという風の黄色みが強いこってりとしたものだった。

「高級なお店だった〜」
「他のお客さん、お洒落した人ばっかだったね」
「貴重な体験だったよ」
と言い合いながら、ニューオーリンズ最後の食事は終了。いやー、美味しかった美味しかった。貴重な体験だった。

「Cafe du Monde」のベニエ

ホテルを正午前にチェックアウト。今日のうちに車で帰る人もいるし、夕方飛行機で帰る人もいる。私たちはIさんと一緒に今日はメンフィスで一泊する予定。ボリュームたっぷりな朝御飯を食べてしまったので昼御飯は必要ないでしょう、とベニエを2セット(6個)だけ買って車に乗り込んだ。車の中で粉砂糖をまき散らしながらのおやつ。

ベニエを買ったところは本店ではなく、ホテル裏のショッピングアーケードの中にあったセルフサービスの支店。ガラス張りの厨房で、ベニエができあがる過程を外から眺めることができた。生地をプレス台に通し、刃のついたローラーで自動的にカットしていく。それを店員のおにいちゃんが揚げ鍋にじゃっぼんじゃっぼんと生地を放り込んでいき、揚がったドーナツを30個ほどまとめて油切り台にどざっとあける。そして注文が入ると、そこから3個、ぽいぽいぽいと皿に乗せ、冗談みたいな大きな粉ふるいで粉砂糖をこれでもかとまき散らしてお客に渡すのだ。テイクアウト用の注文には、皿に乗せて粉砂糖をかけたそのドーナツを紙袋にざらっと放り込み、それで終われば良いのに更に上から2つかみ分ほどの粉砂糖がふるい入れられる。ドーナツ買ったというより、粉砂糖を買ったのでは、と疑いたくなる砂糖の量だ。

車内で粉砂糖をぱふぱふと払いつつ、それでも真っ白に染まったドーナツを紙ナプキンでつまみつつ食べた。揚げたてのがそれはもう最高に美味しいのだけど、冷めたものは冷めたものでもちもちとした食感が良い感じ。私の黒い服も息子のジーンズも、どころか車の座席まで真っ白になってしまった。ありゃー。

Memphis 「Alfred's」にて
 Alfred's Hot Wing $6.50
 Pulled BBQ Pork Platter $10.99
 ビール (Sierra Nevada Draft) $4.50

ニューオーリンズから6時間ほどかけて、無事にテネシー州メンフィスまで戻ってきた。あと200マイルも走れば我が家にたどり着けるけど、メンフィスもちょっとだけ立ち寄ってみようということで今日はメンフィスのダウンタウンにあるモーテルに宿を取った。時刻は6時半。さすがに空腹となってしまい、
「名物料理はメンフィスバーベキューだよね」
「でも、お店は全然チェックしてないから適当に……」
と町一番の繁華街Beale Street(ビールストリート)に出て、適当にお店を選んでみた。メンフィスバーベキューの店、本当はちょっと旅行前に調べてみてはいたのだけど、気になる店のほとんどが日曜休業でどうしようもなかったりした。

都市としては、我が町ナッシュビルより大きいらしい。けれど繁華街は想像以上にひっそりとこぢんまりとしていた。200mほどのストリート沿いに生バンドの音が路上に溢れているジャズバーがネオンをきらきらさせて建ち並び、しかしそれ以外の通りは不安になるほど人気がなく、ひっそりとしている。このメインストリートの光景なら、我が町の方がちょっとだけ華やかなような気がしないでもない。

ちょっとぷらぷらしてみた結果、ジャズバンドが生演奏をしていた「Alfred's」という店に入ってみることに。メニューには「BBQ」の文字があり、店内をちらっと覗くと子供連れも入っていたので、息子連れでも大丈夫なようだ。
生演奏を聴きながら、バッファローウィングを前菜に取ってビールで乾杯。メインは、私はバーベキューポーク、だんなとIさんはバーベキューリブ。「メンフィスバーベキュー」とは、豚肉をグリルしたものをかなり細かくほぐし、それにバーベキューソースをかけるという面白いものだ。バーベキューと言えば牛肉でしょ?と思っていたけれど州によって色々あるらしく、テネシーでは「豚肉ほぐしてソースをかける」がスタイルなのだとか。バーベキューリブは、その同じソースを絡ませた骨つき牛肉をグリルしたもの。楕円の皿に、おそろしく大きな肉塊が乗せられたものが、だんなとIさんの前にやってきた。私のは"小山"という感じ。コールスローサラダと、豆のBBQソースグリル、ガーリックトーストがついてくる。いかにも南部の料理という光景だった。

バーベキューソースは、かなり甘い(ブラウンシュガーをどかどか入れるのがこちらのバーベキューソース)。こってりと甘く、とんかつソースとケチャップを合わせたようなタイプの味がじわ〜んと広がる濃厚な味。全体的に濃い味の料理だったけれど、ビールが進む旨さがある。
バンド演奏がされているステージの前の空間では、2〜3組の客がくるくるとダンスをしていた。食事中に降ってきた雨は店を出る時には雪になっていて、色々と雰囲気たっぷりの中ホテルに帰還。