食欲魔人日記 08年04月 第1週
4月1日 火曜日
ラムと、もやしと、ニラ。
ウィンナーロール
ミルクフランス
レタスとトマトとコーンのサラダ
カフェオレ

火曜の朝はジムに行っているだんなにと、「総菜パンかな、ウィンナーロールとか」と、昨日パン屋さんに寄ってきた。私もだんなとお揃いのウィンナーロール、そして大きめサイズのミルクフランスは息子と半分こ。

息子は盛大に春休みならではの朝寝坊を満喫中……と思いきや、毎日7時には起きている。それにつられてなんだかんだで私も早起きしていて、でもいつもと違うのは朝御飯も摂らずにだらだらゲームを始めてしまう人がいたり、家の中が静かなのをこれ幸いと本腰入れて仕事を始めてしまう人がいたり、結局子供と一緒にゲームしてしまう人がいたりすること。で、朝御飯が遅くなる。

結局朝昼兼用になってしまって、ウィンナーロールを温めて、レタスにトマト、スライス玉ねぎにキュウリのサラダを用意してしっかりめの朝御飯にすることにした。冷凍のコーンも少しばかり解凍してトッピング。ドレッシングは我が家常備のピエトロで、最近は私よりも息子の方がこのドレッシングがお気に入りらしい。私はあれこれ別のドレッシングを試すことも多いけれど、息子はここ最近、サラダを用意するとピエトロ一辺倒だ。

レタスとトマトのサラダ
ラムとニラ、もやしの炒め物
わかめと豆腐と油揚げの味噌汁(昨夜の残り)
羽釜御飯
ビール(BEER FINE)

今日はカラリと晴れた気持ちの良い青空の一日。でも気温は低く、風は強く、せっかく綺麗に咲いた桜もこの風では……と心配になる天気だった。

年度の変わり目、だんなは歓送会で遅くなるとの話だったので、息子と2人で簡単な夕御飯。
仔羊の薄切り肉が手頃な価格で買えるようになったここ最近は本当に何よりなことで、昨日スーパーで見つけてつい1パック買ってきてしまった。そうなると、「ニラもやし炒め」が熱烈に恋しくなるわけで、ニラともやしも籠の中に。にんにくと醤油、味醂、酒で自分で味をつけて炒めようかとも思ったのだけれど、ジンギスカン味が食べたいなー、ジンギスカンそのものが食べたいなーという気分だったので、ベルたれで味をつけてしまうことにした。そうそうこれこれ、という味のジンギスカン味炒め物が完成。炒め終わってから「あ、どうせだったらキャベツも入れれば良かった」と気がついた。

朝御飯時にたっぷり用意してしまったサラダの続きもそのまま出して、味噌汁は昨夜息子が具沢山のを作ってくれた残りがちょうど2人分。あとは御飯を炊いただけの、至極簡単な夕御飯になった。

昨夜の「アスパラに豚肉ロール」には難色を示した(で、熱烈に肉じゃがをリクエストした)息子だけれど、今日の肉野菜炒めは大歓迎だったらしい。フライパンを覗きこんで
「肉野菜炒めだ!」
と歓声を挙げて、
「うん、今日使ったのはラム肉ね」
の私の言葉にも
「そっかー、ラムかー」
と何だか嬉しそうなのだった。実際、私よりも山盛り気味の肉野菜炒めをしっかり平らげた息子。私は彼の好みのツボがわかりそうでわからない。単にアスパラが苦手なだけなのかも。

4月2日 水曜日
大根食べなきゃ、きのこも食べなきゃ、という感じの夕御飯
ワッフル(プレーン・紅茶・ココア)
カフェオレ

スーパーで、袋入りのワッフルが安売りされていた。プレーン、紅茶、ココアの3種類が1セットになっていて、
「1人2個なら……2袋要るよね」
と買ってきてみた。でも私を含めてきっとみんなが好きなのは「プレーン」味なのだった。

「というわけで、3種類が2個ずつだから、適当に食べようね。プレーン2個を1人が食べちゃうってのは、無しね」
と温めたワッフルを大皿に盛って、各自好きなものに手を出すことに。息子がプレーンに手を伸ばし、私が紅茶に手を伸ばし、だんながココアに手を伸ばし、2個目は息子がココアに手を伸ばし、皿に残るのは紅茶とプレーン。そうすると私はプレーン(でないと私が紅茶2個になっちゃうんで)。

「……でも、だんなもプレーン味食べたいよね。プレーン、だんなと私で半分こする?」
「いや、いいよ、そしたらおゆきさんが紅茶ばっかになっちゃう」

けっこうややこしい事態になったのだけれど、それを見ていた息子が自分のココア味ワッフルをぱかりと2つに割って、「じゃあ、こうすればいいのかな?」と私に差し出した。プレーンは私とだんなで半分こ、ココアは私と息子で半分こ、紅茶はだんなと息子で半分こ、と、結局家族全員3種類の味をめでたく口にすることができて、妙に嬉しく楽しかった朝御飯。3種類2個ずつのものを3人で分けるのはなかなかに大変な事なのだと思い知った。

モンドールと茹でじゃがいも、アスパラガス
鶏と大根と油揚げのさっと煮
きのこスープ
羽釜御飯
ビール(BEER FINE)

息子の春休みも後半戦というところだけれど、明日からちらりと旅行に行くことになっている。でも冷蔵庫の中にはきのことか、アスパラガスとか、早めに食べてしまいたい野菜類があれこれと。習い事に行く息子に、「帰りに鶏肉買ってきてくれる?」とおつかいを頼んだ。献立はまだ決めてなかったけれど、鶏肉だったらいかようにも調理できるだろう、ということで。

「鶏肉、買ってきましたー!もも肉だよね?"若鶏もも"っていうので、大丈夫だった?それが安かった」
「そうそうそうそう、"若鶏もも"でバッチリです。花丸です!」
レタスもキャベツも、指定した肉も間違いなく買って来られるようになった息子は、日々大変な戦力となってくれている。今日も午後から仕事のメールがあれこれ届いてパソコンの前に固まっていたので、本当に助かった。
「若鶏のもも、略して"若もも"!」
と、背後で勝手に若鶏のももが略されていた。ありがたく、その"若もも"で夕御飯。

残っているチーズも食べてしまいたいしと、茹でたじゃがいもとアスパラガス、クラッカーを添えつつ、でも残りの品は和風寄り。チキンコンソメで煮たきのこと玉ねぎのスープと羽釜御飯、そして鶏は大根と1枚残っていた油揚げと一緒に煮ることにした。「鶏と大根と油揚げのさっと煮」は、ケンタロウさんのレシピ本から。

鶏を細切りにして一度焼きつけ、半月切りにした大根も加えて炒め合わせてから油揚げと薄切り生姜を加えて醤油、味醂、砂糖、酒の味つけで5分ほど煮るという実に簡単な料理。味の具合は、肉じゃがを4倍くらいに薄めたような、そんな感じだった。少し焼きめがついた鶏肉が良い感じだし、油揚げが地味だけれど良いアクセント。鶏肉は、薄口醤油の味つけだけで炊く蕪との煮物がとても好きだけれど、大根と油揚げというのも悪くないなと思った。鶏を煮たのって美味しいのよね。

4月3日 木曜日
ホットドッグ
カフェオレ

今日から数日、台湾旅行。そこそこ溜まっていた航空会社のマイルが今年の末でいくらか失効してしまうことがわかり、春休みにどこか行こうと計画を立てていたのだった。
「台湾で買ってきた蒸籠が壊れちゃったから、蒸籠買いに行こう!」とか
「あのかき氷がまた食べたいから行こう!」とか、そんな理由で目的地は台湾に決定。
息子は帰国早々に新学期がスタートというハードな日程になってしまったけれど、マイルで行ける席はこの日程しか取れなかったのだった。

今日は午後の便での出発なので、家で軽く朝食を摂ってから向かうことにした。ドッグパンに買い置きのソーセージを炒めて挟んでチェダーチーズをトッピングした、キャベツは抜きの簡単なホットドッグ。今回、事前にそう熱心に下調べなどをしなかったこともあって、今ひとつ旅行という実感が湧かないまま、
「パスポート持ったねー」
「航空券も大丈夫だねー」
「それだけあれば、まあ大丈夫だよねー」
と、ゆるい気分で出発。

成田空港フードコートにて
 ココナッツチキンカレー
 生ビール

機内食
 焼肉丼
 ポテトサラダ
 海老フリッター
 豚バラ胡麻ドレッシング和え
 フレッシュ サラダ
 山菜蕎麦
 桜ケーキ
 柚子ジュース

成田空港に到着すると、すっかりお昼時。機内食も出るだろうけれど、口にできるのはきっと3時過ぎ頃だろうということで、フードコートに寄ることにした。息子はねぎとろ丼、だんなはカツカレー、私はココナッツ味のチキンカレー。ちゃんとアジアな味のチキンカレーはフライドオニオンがトッピングされていて、オクラが散らされ、筍入り。鶏肉も気前よくたっぷり入っていてすっかりお腹一杯になる。
成田空港は、年度頭の平日午後ということもあってか、かなりガラガラ。チェックインでも出国手続きでも全く待つことがなくて快適だった。

3時間半での機内食は、鮭のソテーと牛丼の選択。やけに甘ったるい味の牛丼の、肉と御飯の間にはゼンマイが大量に挟まれているものだった。定番の日本蕎麦(10年前に比べるとだいぶ美味しくなったと思うけど……でもやっぱり機内食の味の何物でもない……)を始め、あとはカレー風味のポテトサラダやレタスがメインのグリーンサラダなど。デザートは綺麗な桜入りのムースで、それらを柚子ジュース飲み飲み軽くつついて、全ては平らげず軽く終わらせた。チャイルドミールでドリアが出てきた息子と、さきほどカツカレーを食べたはずのだんなはかなりな勢いでほぼ完食。フルーツ盛り合わせに加えてゼリー、ビスケットまでついてくるチャイルドミールは相変わらず魅力的なのだった。

台北 寧夏路夜市 「[髟/胡]鬚張魯肉飯」にて
 魯肉飯小 26元
 苦瓜排骨湯 58元
 鴨卵 12元
 コンビニで買ったビール 35元

台北 寧夏路夜市 「余師[人専]湯包」にて  小龍湯包 一籠 60元
 蝦仁湯包 一籠 80元

現地時間17時頃、無事に台北の空港に到着。日本との時差は1時間(日本時間マイナス1時間が台北の時間)だ。
二度目の台湾、しかも宿泊ホテルも同じということもあって、土地勘も失われていない……はず。市内への移動バスも前回と同じく「國光運行」を利用することにして、大人125元子供65元のチケットを購入してホテル方面に向かう。夕方のラッシュに巻き込まれつつ、終点の台北駅に到着したのは、もう19時も回ろうというところだった。急ぎ徒歩でホテルに向かい、1泊2800元のトリプルルームにとりあえず荷物を置いた。

「さて、初日にどこ行こうとか、全然考えてなかったわけですが……」
「しかも雨だね、けっこう降ってるね」
"雨が降る"ということを全く想定していなかった私たち、確かに日本で確認したここ数日に台北の天気は「曇」マークが続いていたような。空港に着いた時から重い雲が垂れ込めて「びしゃびしゃ」といったけっこうな降りだった雨の中、台北市内は地下鉄地下道が発達しているのが幸いして、なんとかさほど濡れずにホテルに着くことはできた。

では、ホテルから出て、雨が大丈夫そうな具合だったら早速夜市に行って、降りが強かったらチェックしていた台湾料理のお店に行くということでどうだろう、と話がまとまったところで身軽な格好で外に出る。降りはサラサラとした小雨に変わっていて、これなら大丈夫そうじゃないかと、駅2つ北に移動したあたりにある「寧夏路夜市」に赴くことに。通り150mくらいに屋台が70軒ほどひしめき合う風の、大規模ではないけれど食べ物屋台がみっちりと並んだ実に楽しい夜市は、5年経った今も変わらずの風景だった。

この夜市の通りには「[髟/胡]鬚張魯肉飯」もあるんだよと、以前日本の支店でお弁当を買って食べたことのある魯肉飯屋さんで、魯肉飯を食べることにした。台湾のこの手のお店は飲み物が(水すらも)置かれていないことが多く、何か飲みたかったら自分で勝手に持参して、皆さん勝手に飲んでいるよう。私たちもコンビニでビール買ってそれを飲みつつ、旅行初飯の魯肉飯を早速堪能した。

魯肉飯は3種類大きさがあって、大は49元、中は39元、小は26元。大は軽めのどんぶり飯、小になると、幼児用の茶碗に御飯が軽く一杯、という可愛いサイズになる。まだ他のお店でも食べるだろうしと、私と息子は小にして、だんなは一人大サイズ。煮卵(鴨卵)も2つと、あと「苦瓜排骨湯」というスープも1つ。

テラテラと甘辛く煮込んだ豚肉を汁ごと御飯にぶっかけた、「煮込み肉ぶっかけ御飯」といったこの料理、見た目は上品とは言い難いものだけれど、そして味の方も上品とは言い難いものなのだけれど、「この味が嫌いな人間はいません!」と主張したくなるほどに素敵な味。お店によって八角がすごく効いていたりもするのだけれど、このお店のは日本人にも馴染み易い味だと思う。漬物がひとかけ添えられ、それもまた良い感じ。息子は煮卵もトッピングしてしまいながら、しばし無言で丼をかっこんでいた。

そうこうするうちに、雨が強くなってきた。
息子は前回も遊んだ"子供の社交場"的、ミニパチンコゲーム(1回1元でパチンコを動かし、当たれば紙製のチケットがにょろにょろと出てくる。チケットの枚数に応じて景品と交換)に興じ、50元分遊んでプラスチック製の小さな刀と銃のおもちゃをもらっている。雨は強くなる一方で、屋台にはそれぞれちゃんとテントつきのテーブルと椅子がそれなりに用意されているのだけれど、初日から雨に濡れて体調を崩しても、と、早々にホテルに戻ることにした。

それでもと、最後に食べたのが「余師[人専]湯包」という名前の小龍包屋台の小龍包を2蒸籠。8個入りの肉入り小龍包(つまり普通の小龍包)がたったの60元(200円くらい)、海老入りのは80元(300円弱くらい)。店頭でシューシュー蒸されている小龍包は、事前に作ったものを屋台背後に持ち込んだ冷凍庫に大量保存してあるようだったけれど、皮はもちもち、溢れるスープ、しっかりはっきり美味しい小龍包だった。海老入りのは大ぶりの海老が1尾まるごとごろりと肉あんと共に包まれている。蒸された小龍包の上には無造作に刻んだ生姜が散らされて、人数分のプラスチック製のレンゲや小皿も渡される。雨降る中、屋台背後の屋根つきテーブルで
「うま!この小龍包、超うま!」
「これで200円……台湾屋台、侮れぬ……」
と、わいわいやいやい平らげた。美味しいよ美味しい、おっちゃん、海老蒸籠も1つね!と肉小龍包に続いて注文している私たちに、片言に日本語を繰りつつ実に楽しそうに海老蒸籠を持ってきてくれるお店のおっちゃんなのだった。

雨はやっぱり降り止まず、ホテル近くのコンビニで牛乳や「風呂上がりに飲みたい感じのヤクルトもどき」を買い込んで、少し心残りを感じつつも部屋に帰還。
でも初日から美味しいものを食べられて幸せなのだった。

4月4日 金曜日
台湾に来たら、やっぱりこのピラピラかき氷を食べなくては。
この日の日記は、こちらの旅行記も併せてどうぞ
台北 民生西路 「佳佳豆漿店」にて  豆漿 小杯 15元
 焼餅加蛋 25元

台北 民生西路 「阿美意麺」にて
 意麺 25元
 油麺 25元
 乾麺 25元
皆でつつく。

昨日は疲れて早めの就寝だったものだから、今日は朝6時に目が覚めた。だんなと息子はまだまだ目覚める様子がないので、大人しく日記など書いていたのだけれど、7時半には全員がきっちり目覚めることに。ホテルから地下鉄で2駅の「雙連駅」近くでは毎朝朝市が開かれているというので、行ってみることにした。基本的には生鮮食品を扱うお店が並んでいるようだけれど、食べ物もの屋台やお店もぼちぼちとあるらしい。

「駅近く、行けばすぐわかる」とは聞いていたけれど、100mほどの通り沿いの道が、朝早くから大賑わいなのはなかなか壮観だった。冷蔵庫もなしに、大量の肉を積み上げて売っているお店が何軒も続き、美味しそうな蒸し鶏や角煮などの加工した肉料理を売っているお店もある。美味しそうな中国野菜は3束50元という値で売られていて、あとは日本風のお寿司のお店とか、衣類を扱うお店なども。一通りその道を見て歩き、並行する裏の通りも歩きつつ、通りすがった豆乳屋さんで軽く食事をすることにした。

壁の商品札を眺めつつ「豆漿」というだけの名で売られているそれを頼んだら、温かくほの甘い豆乳が出てきた。商品札をよくよく見れば別途「鹹豆漿」もあるようだったし、冷たい豆乳も選択できたよう。どちらかというとしょっぱい系か、甘い豆乳だったら冷たいのが好みだったので「しまったー」と思ったのだけれど、普通に美味しい豆乳だった。あまり濃厚でもなかったけれど、豆の味はほどよく感じる。でも、不味くはないけど、特別に美味しいというほどでもない、という。美味しいと評判の豆乳屋さんが近くに数軒あったようでもあるので、焦らずそちらを目指せば良かったかもしれなかった。

息子は肉髭入り(甘辛く味をつけた肉をほぐした、ツナのような食感のもの)のサンドイッチを食べ、私とだんなは豆乳と共に卵入りの焼餅も。葱入りの分厚いクレープ、というか「お焼き」のような焼餅は、煙が出そうなほどの焼きたてのもので、表面がほのかにサクッとした食感。小麦粉生地のパンのようなものだけれど、どこかパイにも似た感じでこちらはとても美味しかった。

その後も朝市をぷらぷらしつつ、今度は麺屋さん「阿美意麺」にて二度目の朝御飯。段ボールに手書きの文字で書かれた、なんとも読みにくいメニューを眺めながら「意麺」「油麺」を注文し、「確か、汁無し麺があったんじゃなかったっけ?」と試行錯誤しつつ「乾麺」も追加で注文。意麺と油麺は共に汁麺で、あっさりした味の鶏ガラスープに麺とニラ、もやし、葱、セロリなどの野菜と揚げにんにくをトッピングしたものだった。異なるのは麺だけで、意麺はきしめん風の平たい麺、油麺はラーメン的な、黄色みがかった太めの麺なのだった。「油麺」と見て「油そば」を想像してしまい、「これがスープ無しか?」と思ったのだけれど、違ったようだ。

で、「乾麺」が、醤油だれを底に敷いた、汁無しの麺。具は他と同じ。
あっさり味の汁麺もなかなか好みな味だったけれど、何と言っても美味しかったのは乾麺。適度に甘じょっぱいたれが絡む麺は、麺そのものも美味しいものだったんだなと感じさせるもので、ツルツルシコシコ、いくらでも食べられそうな勢いだった。すっかりお腹一杯になってしまい、少し歩き疲れたこともあって、ここで一旦ホテルに帰還。

台北 台北駅近く「鐵路弁當」にて
 古早香腸飯 70元

2時間ほどホテルで休んだ後、「昼御飯を食べて、今日は故宮博物院に行ってみよう」ということに。前回の台湾訪問では行かなかった故宮博物院、「せめて翡翠の白菜くらいは見ておきたい」と行ってみることにした。

昼御飯は、ホテル最寄りの飲食店を眺め歩いた結果、「鐵路弁當」なるお店で食べることに。「鐵路弁當」=「鉄路弁当」ということで、駅弁風のお弁当を売るお店だ。基本はテイクアウトのようだったけれど、2階にも食べられるところがあるよということで、店内で食べていくことにした。

当初私が注文したのは「鐵路酥炸排骨飯」なる揚げ排骨の弁当だったのだけれど、
「僕、ソーセージの弁当にする。……あ、やっぱり、"骨のついた肉のやつ"の弁当がいい!」
と言った息子のお弁当をうっかりソーセージで注文してしまったので、私のと交換。私が「古早香腸飯」なる腸詰弁当をいただくことにした。排骨飯もなかなかの大きさの揚げ肉が乗るものだったけれど、腸詰めも「これ、何本分ですか。ていうか一体どんな大きさの腸詰ですか」という感じのけっこうなボリューム。独特の赤い色がついた甘辛い腸詰めの下には御飯がみっちり。青菜炒めやピーナッツ、肉団子に固めの厚揚げのような練り物、漬物なども添えられていて、見た目以上に食べ応えのある弁当だった。

ランチタイムにはドリンクつきということで、紙パック入りの葡萄のジュースも1人1個。

台北 故宮博物院内「閑居賦」にて
 蛋香[女乃]黄包 80元
 香芒凍乳酪 80元
 中国茶(凍頂烏龍) 150元
 中国茶(阿里山) 200元
 中国茶(天霧) 200元
を、皆で

地下鉄の「士林」駅から路線バスに乗って故宮博物院へ。実のところ、私もだんなも「書」とか「仏像」とか「土器」にはあまり興味がなかったりして、多分展示物のありがたみの10分の1も理解できなかったと思うのだけれど、息子と一緒になって「刀剣だ!」「クロスボウの部品だ!」と変なところに注目して楽しく見学した。最大の目玉の「翡翠製の白菜」は、想像していたものの半分ほどの大きさだったのだけれど(どれだけ大きいのを想像していたのかと、自分……)、白菜の葉の緑も芯の白も、そして芯の中心の薄い褐色部分も気持ち悪いくらいに「本当に白菜」で、感動も感じつつ、微妙な笑いもこみ上げてくる。葉の部分に2匹の虫まで乗っていて、その目を見張るほどの見事な技術の発露が、なんで「白菜」でなければならないのかと。他のコーナーには見事な「翡翠の苦瓜」などもあったりして、これまたなんで苦瓜でなければならないのかと。

でも、それより衝撃だったのが、「どこからどう見ても豚の角煮です」という石。白菜と同じコーナーにあったので、何だか無駄にお腹が空いてきてしまった。表面のテラテラした感じとか脂身の部分とか、どこをどう見ても豚の角煮で、中国四千年の技術と情熱のすごさにただただ恐れ入った。しかし本当に、なぜ角煮。

と、そんな美術品鑑賞の最中、息子は体調が悪そうだった。昼御飯直後くらいからやけにトイレに行きたがると思っていたのだけれど、どうもお腹を下しているらしい。お腹痛い、けっこうつらい、でも何だかお腹空いちゃったし疲れちゃった……ということなので、「じゃあ、あったかいお茶でも少し飲む?」と、博物館上階にある中華の軽食コーナー(というにはすごく立派な店構え)に行ってみた。各自1杯ずつ中国茶を注文し、ついでにカスタード饅(蛋香[女乃]黄包)頼んだり、マンゴーパンナコッタ(香芒凍乳酪)を頼んだり。

不調なはずの息子は、マンゴーパンナコッタを食べたあたりで元気が戻ってきたようで、
「カスタード饅頭、半分ちょうだい。いや、もっとちょうだい」
と、気力も胃腸の具合も急上昇してきた模様。結局休憩後はケロリとした顔をして、腹痛も腹下しも治まったと宣言して「さぁ!海老釣りをして帰ろう!」などと言っている。お腹下しちゃったんだったら、夜市とか行かないで大人しくホテルに帰ろうよなどと話していたのだけれど、予定通り博物館後には今日も夜市に行くことになったのだった。ああ、息子が飛び跳ねて歩いている。あからさまに「デトックス完了」という感じだ。

台北 士林夜市

「辛發亭冰館」にて
 新鮮草苺雪片 90元
 巧克力雪片 60元

「阿宗麺線」にて
 大碗 55元

「攤號」の
 魯肉飯 2×20元
 滷蛋 10元
 綜合煎 50元

ジュース屋さんの
 缶ビール 40元

「昇記」の
 大腸包小腸 40元

博物館から再び路線バスで士林駅に。士林駅から隣の劍潭駅にまたがる形で、士林夜市のエリアが広がっている。長く伸びる屋外の通りは、衣類のお店が中心で、士林駅近くに屋根つきの巨大な飲食店のエリアもある。全体的に広く大規模で、夜市といったらここ!というイメージもあるエリアだ。でも何しろ、すごい混雑。夕方4時頃に到着したのだけれど、もう通りはそこら中ごった返していた。感覚としては、原宿とアメ横と巣鴨をごった煮にしたような感じ。

最初に目指したのは、何としてもここにはまた来たかったと思っていた、前にも来たお店「辛發亭冰館」。「雪片」なる、ミルク氷をふわっふわのかき氷にしてくれるお店だ。そうそうここここ!と見覚えのあるお店に入り、私が「新鮮草苺雪片」を、だんなが
「これ……コカコーラ、だったっけ?」
と言いつつ「巧克力雪片」を注文。

なんか、チョコシロップがかかっているような雪片食べている人が多いんだよね、あれ美味しそうなんだよね、などと話していたら、だんなの目の前にそのチョコシロップがけ雪片がやってきた。そう、「巧克力」はコーラじゃなくてチョコレートだったのだ。コカコーラは「可口可楽」。

腹下り直後の息子はかき氷は控えめにしつつ(と言いつつ、私とだんなの皿からもりもりと奪って食べつつ)、3人で2つの雪片を堪能した。事実、1人で食べるのはなかなかにつらい分量の大盛りかき氷だったするものだから、周囲のお客さんも「2人で1つ」「4人で2つ」の注文が普通になされている模様だ。

ピラピラふわふわのかき氷は相変わらずの美味で、しかも今回は生卵が乗っているなどということはなくて、甘い苺シロップにスライスされた生の苺、練乳という素晴らしいトッピングにひたすらうっとり。かき氷自体は、ミルクの風味はするものの甘さはほとんどなく、シロップや練乳がたまらなく良く似合う。
「俺のチョコ氷を乗せれば、苺チョコミルク氷……」
とだんなが怪しい事をやり始めてしまったりしながら(美味しかったです、はい)、器をあっさり空にして、次のお店へ。

その後、西門町に本店がある「阿宗麺線」のお店を見つけて大碗を皆で啜ったり(相変わらず美味しうございました……インドネシアのナシゴレンミーゴレン、シンガポールの海南飯などと並ぶ、その土地の誇るべき食べ物だと思う)、あちこちにあるUFOキャッチャーのお店で少し遊んでみたり。そのまま人の波に揉まれるようにしながら、飲食店がひしめき合う屋内エリアに突入してしまった。今日は祝日らしく、これまたすごい混雑だった。

屋内エリアの前の広場は、「子供の社交場」と化していた。射的に輪投げボール投げなどなど、「的に当たったら景品ね」というものが1回20元〜100元くらいで楽しめるようになっている。息子は早速ライフル(で、トイレットペーパーにぶら下げられた現金を狙い打ちするというなんとも即物的なもの)に飛びつき、帰り際にはアーチェリーも見つけて挑戦していた。10本100元だったアーチェリーではめでたく3個の風船的を射抜いて、「黒ひげ危機一髪」をゲット。

昨日の雨の夜市はちょっと悲しい感じだったけれど、今日の夜市は息子は目が輝く事ばかりだったよう。体調が悪かったのが嘘のように足取りは軽く飛び跳ね続けていて、待望の「蝦釣」にも挑戦していた。しつけ糸を使った小さな釣り竿が7本で100元(1本だと20元)で、水槽の中の海老を釣り上げるという「金魚すくい」の仲間のゲーム。実際、海老釣りの隣には金魚すくいの水槽も並んでいた。釣り針のついた釣り竿は、海老の口を狙うのではなくて尻尾を引っかけて釣り上げる仕組み。海老が暴れると糸はすぐ切れてしまうのでなかなかに難しい。私も竿を1本貰ってみたのだけれど、1匹も釣れる間もなく糸が切れてしまったのだった。

息子はそれでもがんばって、2匹の海老を釣り上げて、お店の人に「食べていく?」と。頷くと、その場で釣り上げた海老に串をブッスと刺し、まだピチピチ動く海老に粗塩揉んで問答無用とばかりにグリルに放り込み、こんがり焼けたところで紙に包んで渡してくれるのだった。息子は、海老フライならともかく殻のついた焼き海老はちょっと……という感じだったので(しかも腹下し後に、水槽で泳いでいたまま洗いもせずに串刺して焼いただけの海老というのもちょっと怖いというのもあり)、私とだんなが2人で美味しくいただいた。新鮮さにかけては言うことない海老ということもあり、プリプリしていて美味しかった。

大混雑の夜市で食べたのは、魯肉飯に、牡蠣や海老、帆立などを使った卵焼き([虫可]仔煎の豪華版、という感じ)、そして「大腸包小腸」なる妙なネーミングの面白いものも食べた。「大腸」は、餅米を腸詰めにした、太いソーセージ状のものを指しているようで、そして「小腸」はいわゆる普通の腸詰っぽいもの。紙にくるまれて渡されたそれは、一見ホットドッグのような形状のライスバーガーだった。米部分の周囲に腸の皮のネチモチした食感が感じられるのが新鮮というか馴染みのないものだったりして、とても面白い。ジュージュー焼かれた腸詰も香ばしく美味しかった。

専門店の周囲半径10mほどに強烈な匂いを発している「臭豆腐」も是非挑戦してみたいところだったのだけれど、やっぱりあの匂いを嗅いでしまうと少し躊躇してしまう。息子は匂いの片鱗をかいだだけで「これ、キライー!」と逃げていってしまうし、だんなも「多分好きではないと思うけど……食べられるよ、1切れくらいなら」という状態。私はきっと嫌いな味ではないと思うのだけれど(匂いも強烈だけれど、実のところ気になって仕方がない)、でも息子もだんなもほとんど口にできないものを1皿自分だけで平らげなければならない状況になったら、けっこうつらい事になりそうだ。台湾2日目、まだ挑戦できずにいる私……。

通りがかったフレッシュジュース屋さんで缶ビール見つけたのを良いことにそれを飲み飲み食べ物を満喫し、最後はゲームコーナーの一角で「太鼓の達人」(しかも日本と同じ最新版)を見つけてしまって、だんなと2人で太鼓に興じてあっさり「ベストスコア」など記録してみたり。早めの夜市散策だったので、ホテルの部屋に帰ってもまだ8時という頃合だったのだけれど、今日は何しろ歩き回っていたので後は部屋でのんびりとしていた。だんなのつけている万歩計は26000歩を記録していて、「そりゃ疲れるはずだ」と、ちょっとびっくり。

4月5日 土曜日
臭豆腐初体験。匂いがお届けできないのが、ほんと残念……
この日の日記は、こちらの旅行記も併せてどうぞ
台北 善導寺 「阜杭豆漿」にて
 鹹豆漿 2×25元
 冰豆漿 20元
 油条 2×18元
 蛋餅 25元
を、皆でもぐもぐ

今日こそ美味しい豆乳を!というわけで、今日の朝御飯は電車で一駅の距離にある豆乳屋さんに行くことにした。前回の台湾旅行時にも赴いたこのお店、それまで「豆乳なんて、要するに固まってない豆腐の薄いやつでしょ?」くらいの認識でしかなかった私の豆乳感をうち崩す味で、以来日本でもたまに豆乳を買って飲むほどまでになってしまった衝撃の味だった。昨日の朝食豆乳も悪くはなかったけれど、それはやっぱり私の普通に知る味で、どうしてもあの衝撃の豆乳をまた口にしたいなと、ホテルからてくてく歩いて食べに行った。

大変に怪しい感じのビル(1階は市場らしいけれど、前回も今回も市はやっていない曜日だったようで、それがまた閑散としていて怖い……)の2階にあるお店、ドアから階段に行列があふれ出すほどの混雑で、持ち帰り用のお客さんの列と、中で食べるお客さんの列に分かれていた。最初うっかり持ち帰り用の列に並んでしまいつつ、なんとか料理を手に入れて質素なテーブルにつく。なんといっても食べたいのは「鹹豆漿」、でも甘い豆乳も捨てがたいよねと冷たいものも1杯。豆乳が今ひとつ好きではない息子には「蛋餅」なる腸粉に似たプルプルした餅生地の卵焼き包みクレープのようなものを買ってやり、豆乳にはこれよねと油条も2本。朝からお腹がたぷたぷになるほど満喫してしまった。

やっぱり、このお店の豆乳はすさまじく美味しかった。甘く冷たいシンプルな豆乳も、なんでこんなに濃厚なのにくどさがなくて自然な味なのだろうという感じ。豆の青臭さのようなものが全くなくて、ただただ豆そのものの旨味がたっぷりという味わいだった。醤油だれを絡めたような油条のかけらが散らされた鹹豆漿は、碗の底に調味料と葱などを加えてから、膜が張るほどの濃厚なアツアツ豆乳をよそってくれるもの。ほどなくしておぼろ豆腐状に固まる豆乳は、茶碗蒸しでも食べているような感覚で、さくさくの油条をちぎっては入れつつ食べる。あ、やっぱり美味しい。危険なほど美味しい。

日頃豆乳豆乳言わないだんなが、
「持ち帰り用に、冷たい豆乳買って帰る?」
と言い出すほどにこのお店の豆乳は美味しいのだった。

結局、あまりにお腹がたぷたぷなので豆乳を買って買えるのは止めにしつつ、隣接するスーパーで少しお買い物。麺線の素や1瓶199元のXO醤などを買い込んで、今度は地下鉄に1駅乗って一旦ホテルに戻ってきた。

台北 杭州南路 「杭州小籠湯包」にて
 麻辣臭豆腐 80元
 豆鼓排骨 50元
 元[中皿]鶏湯 80元
 小籠湯包 2×90元
 蟹黄湯包 160元
 蝦仁焼賣 130元
 台湾ビール 4×40元
大変にお腹一杯に……。

午前中は、乾物街「迪化街」に。今回、乾物は特に買う必要がなかったのだけれど、
「家で使ってる蒸籠、ずいぶんボロボロになってきちゃったね」
「台湾で買ってきたのが、ものっすごく良い感じじゃなかった?」
と、5年前に買った蒸籠屋さんを探しに行くことにした。あちこちで買い足して使っている我が家の蒸籠は、同じサイズではあるけれど作りは案外とまちまちで、その中で一番丈夫で壊れにくい感じなのが、台湾の乾物街のお店で買ってきたものなのだ。金属の枠がついていて、すごく立派なのにすごく安かった記憶がある。もう一つ、以前からすみ屋さんで会った、ものっすごい美少年がどう成長しているか見てみたい、という小さな野望もあったりした。

地下鉄から降りて歩くにしては少し半端な場所にある乾物街なので、ホテル近くからタクシーに乗って向かった。通りの南端で降ろしてもらい、布の問屋街を眺めつつ、通りはいつしか乾物と漢方薬の専門店が並ぶ町並みに。そこを更に更に北上し続け、
「あ……この店だ……」
と、見覚えのある殺風景な蒸籠屋さん(というか、桶とかまな板とか、木製や竹製の調理器具のあれこれを扱っているお店)に辿りついた。お店の名前は「大華行」というらしい。

このサイズの蒸籠の、蒸籠を4つと蓋を1つください、と出してもらって、お会計はたったの400元。本体も蓋も全部1個80元(250円くらい)という、本当に幸せな価格なのだった。相変わらず丈夫で使い勝手が良さそうだ。

買えた買えたよ、蒸籠が買えた〜と更に北上を続けて、見覚えのある店構えの乾物屋さんに到着した。
「あった、美少年屋だ」
「うん、美少年屋だ」
と店を覗くと、大きな黒い犬(台北を歩くと、そこら中に犬がいる……首輪もつけずに歩いていたり)がのそりと通りから店に入ってきて、店の中からはダックスフントが出てきたりして、息子がやたらと大喜び。美少年の有無に関わらず、乾物街の端に位置するこのお店の価格は全体的に手頃な感じで、今日もあれこれ見せてもらって干し椎茸を買うことにした。1斤(600g)580元の干し椎茸を半斤包んでもらうことに。

……で、店には、おそらくあの時の美少年の5年後です、といった感じの、高校生くらいのお兄ちゃんがいた。椎茸椎茸……と半斤分をパッキングしてくれたのがそのお兄ちゃん。今風の長めの茶髪になっていて、えらく背が高い。180cm近くありそうな、ひょろりと長い風の青年だった。
「美少年、いたね」
「あのお兄ちゃんだよね、面影あるよね」
「はぁ……美しい思い出は、思い出のままで取っておいた方が良かった……かな?」
きらめくほどの美少年は、「小綺麗な感じの、でも割と普通のお兄ちゃん」に変わってしまっていたのだった。乾物街はそこら中を工事していて、また数年後には様変わりしているかもしれないという感じだったけれど、あの店もこの店もちゃんと変わらず再会できて幸いだった。

買い物を終えた後は、台北駅付近まで戻ってきて、台湾の新幹線「台湾高速鉄道」を見てきた。乗りたいわけじゃないんです、電車が見たいんです、と窓口の人に相談して入場券を作ってもらい(本当は別途入場券があるらしいのだけれど、今は扱いがないらしく、隣の駅までの自由席券を発券してもらった)、発車前の列車ホームに入れてもらった。白地にオレンジ色、シュッと長い先頭車両のフォルムがやたらと格好良い列車だった。座席は3列2列で、技術提供が日本だというだけあって、雰囲気は新幹線にとても近い感じ。もうちょっと旅程が長く取れたら台南日帰りとかしてみたかったけれど、それは次回にお預けだ。

どっさり買った蒸籠などを部屋に置いてから、向かってみたのは中正紀念堂近くにある小龍包屋さん「杭州小籠湯包」。
店頭の看板には
「鼎泰豐的實力 三六九的口味 路邊攤的價格」
などと書いてあって、それは「鼎泰豐の実力、三六九の味、屋台並の価格」という意味のよう。すごいキャッチコピーだねと笑ってしまいつつ、
「でも、こういうところに名前を出されるくらい、鼎泰豐はやっぱり有名なんだね」
という話に。

この手のお店にしては幸いな事にビールもちゃんと置いてあって、冷蔵ケースに入っている缶ビールを自分で持ってきて飲む仕組み。生姜や酢、醤油の類も一角にまとめられていて、自分で小皿に持ってくるようになっていた。注文は自分で伝票に欲しいものに個数を記入する。

天井が高く、適度にクーラーの効いた店内で、ついつい調子に乗ってあれこれ食べてしまった。
普通の小龍包を2蒸籠に加え、蟹入りの小龍包、海老入り焼売も1蒸籠ずつ。更に豆鼓排骨(この文字を見ると注文せずにはおられない……)と、ついに初挑戦の「臭豆腐」も頼んでみた。煮たり焼いたり揚げたりと色々な調理法のある「臭豆腐」だけれど、この店のは煮たうえで辛い肉味噌やパクチーを添えてくれるものらしい。それならビールのアテになりそうだし、写真で見る限り分量も少なそう、と、試しに食べてみることにしたのだった。息子はテーブルに臭豆腐がやってくるなり、鼻をつまんで遠ざかっている。確かに、この匂いはやっぱり強烈だ。

どんな匂いと言われると、「豆腐が腐った匂い」としか言い様のない匂い。「これは"発酵"ではなく"腐敗"です」と主張したくなりそうな強烈な匂いの豆腐は、実際口にしてもそのまんまの匂いなのだった。なのに食感と味は豆腐。匂いだけアレ。なんとも不思議な存在のその物体に、ビリッと辛い肉味噌や香菜、唐辛子のかけらなどなどがトッピングされているのだった。
「食べた!食べました!私、臭豆腐を無事に食べることができました!」
と胸を張って威張りたいけれど、でも実のところ、そう何度も食べたい感じではなかったというのも本当の話。沖縄の「豆腐よう」なども方向は似ているけれど、あちらは食感や味までもがチーズのように"発酵"しまくっていて、あれは前向きに大好き。

なんでも臭豆腐は

植物の汁と石灰等を混合し、納豆菌と酪酸菌によって発酵させた漬け汁に豆腐を一晩程度つけ込んだ物
Wikipediaより
なのだそうだけれど、豆腐そのものが変質しているわけではないのが違和感なのだな……。

ともあれ、この店の目玉は小龍包。こちらは素晴らしく美味しかった。しかもお安い。皮の端をぷちっと噛みちぎるだけでスープが溢れんばかりに出てくるし、適度な具合に上品すぎず下品すぎずな味のバランスもとても好み。リッチな味の蟹入り小龍包も悪くなかったけれど、スタンダードなものが結局のところ、一番美味しかった。大きな海老がごろりと1尾ずつトッピングされた焼売も、小龍包とは異なるムチムチっぷりで良い感じ。

スープだ排骨だとあれこれ堪能してしまい、麻辣臭豆腐の存在もあってビールが進んで1人2缶を空に。
本当はこの後ショッピングモールでも覗きに行こうかという話になっていたのだけれど、お腹はいっぱいだし酔っぱらってしまったし、雲一つない良い天気の今日は気温が高くてクラクラするしで、一旦ホテルに戻ることにした。

台北 長安東路「九番坑」にて
 おまかせコース 2人前
 猪油飯
 台湾ビール
で、全部で1600元

どうもだんな、体調が今ひとつ良くない様子。午後にぷらりと近くのデパートなどを散策しに出かけたのだけれど、その前後はベッドの上に倒れ伏している。夕飯は担仔麺のお店と台湾家庭料理のお店をハシゴしようかと話していたのだけれど、昼御飯がかなり重かったこともあり、だんなの体調が心配なこともあり、どちらか一ヶ所に行こうということになった。しばし悩んだ結果、やっぱり担仔麺が食べたいよねと、「台南大胖担仔麺」を目指すことに。

……が、タクシーで乗りつけたそのお店は、あいにくの休業。
「土曜は休みじゃないって聞いたのにー」
と、シャッターの降りた店の前に立ち、そこに貼られた紙を見たのだけれど、「第2、第4土曜日は休み」みたいな事が書いてある。でも今日は第1土曜日のはず……。

しょんぼりなーしょんぼりなーと、再びタクシーに乗って、目指したのは第二候補だった台湾家庭料理のお店「九番坑」。旅行前に、友人が「ここ、美味しいと聞きました」と教えてくれたお店だった。ネットなどで評判を見ても、なかなか素敵な感じ。何よりもだんなが食いついたのは「ラード御飯」の存在だった。御飯の上に、ラードと醤油だれを乗せて混ぜて食べるという、「ラード版 バター醤油御飯」といった感じのもの。体調悪いのにラード御飯はどうよと思いつつ、そのお店に行ってみることにしたのだった。

オーナーがインテリアデザイナーだったというこのお店、調度品のセンスがとても素敵。コンクリート剥き出し的なところもあるのに冷たい感じはなく、大きなテーブルが心地よかった。テーブルにやってきたのはヤカン入りのお茶と茶碗。ビールを頼むと大きなお猪口のような陶器製の深鉢がやってきて、それで飲むという面白いスタイルだった。

メニューを見せてもらったのだけれど、事前にチェックしていたメニューは今はないものも多く、結局「おまかせ」でお願いすることに。お店の人からも「おまかせにする?おまかせが良いよ」と勧められたので、お願いしてみた。問題は……だんなが今日はあまり食べられそうにない、って事なんだなぁ……食べ切れそうになかったら、包んでもらって明日の朝御飯かな……と少々の不安を感じつつ、料理がやってくるのを待つ。

最初に、「これだけは食べたい」とお願いしていたのは、看板料理でもある「封肉」なる、豚の角煮。素敵な盛りつけでやってきた、ドカンと巨大なバラ肉の塊を、目の前で鋏でジョキジョキ切り分けてくれる。肉部分も脂身も、同じような食感のホロンホロンのトロントロン。これでもかと柔らかく煮込まれていて、脂はかなり落とされた感じでさほどくどさはない。味つけも、若干淡めな感じだ。

続いての皿は、肉団子と魚介と冬瓜の炒め物、白身魚の甘酢あん絡め、そして「鮑魚糕渣」という品名らしい、厚揚げのような餅のような食感の揚げ団子が入った、とろみのある野菜のスープと3種類がのんびりペースで並べられた。2人分ということで、3人でつつくには軽めな分量、それが却ってだんなの体調にはちょうど良くて、結局家族全員が良い感じにお腹一杯になることができた。味つけも全体的に優しい感じで嬉しかった。

ほろりと柔らかい食感の肉団子入りの炒め物も美味しかったけれど、最後の「鮑魚糕渣」が素晴らしかった。
「これ、鮑……だよね?」
「だよね、鮑だ」
薄切りにされてヒラヒラとたっぷり入るシコシコした食感のものは深い味わいの鮑で、それが良いだしにもなっている。人参や筍などで具沢山の温かいスープに浮かぶ餅は、芋の粉も入っているらしい、口の中でとろけるように柔らかいものだった。

最後に、隠れメニューらしかった「猪油飯」を。角煮の煮汁を脂ごと御飯にかけてざっと混ぜた感じのもので、息子とだんなが2人して目を輝かしていた。御飯はキラキラと怪しく光り、いかにも美味しそう。息子がえらい勢いでかっこんでいたのが面白かった。

だんなの体調もじわじわと戻ってきたようで、一安心。

4月6日 日曜日
朝市の光景。もう、こういうの大好きなんです。
この日の日記は、こちらの旅行記も併せてどうぞ
台北駅地下街 「モスバーガー」にて
 日式猪排三明治 50元

台北駅近く 「阿忠麺線」の
 麺線 大碗 50元

早いもので、あっというまに今日は帰国。お昼前にチェックアウトして空港に迎えば良いスケジュールなので、朝起きたところで台北駅付近をぷらぷらして朝食を摂ることにした。朝食後は、一昨日も覗いた朝市に行ってみる予定。

ターミナル駅の台北駅付近は、学生街ということもあって食べ物屋がたくさん。でも、今日は日曜日ということもあってか、散策した時間が少し早すぎたのか(7時過ぎくらい)、思ったよりお店は開いていなかった。シンプルなお粥屋さんでも見つかれば幸いだったのだけれど、目につくのはサンドイッチ屋さん、ハンバーガー屋さんが多い。眺め歩いて悩んだ結果、地下街の一角にあった日系のお店ばかりが詰まったフードコートがあったので、そこに入ってしまうことにした。台北のあちこちで見かける回転寿司屋さんやモスバーガー、吉野家、ヤマザキのパン屋さんなどが並んでいる。中央にベンチつきテーブルがずらっといくつも。

私と息子は、モスバーガーで朝食セットを。私は「日式猪排三明治」なるカツサンド、息子は「火腿歐姆蛋堡」なるハンバーガーセット、どちらもドリンクつきで、アイスティーを選んだら実に甘ったるいものが出てきて閉口してしまった。そうだ、台北で飲むお茶は、基本的に甘いんだった……。
「日式猪排」は、日本風の豚肉揚げということで、つまりトンカツ。キャベツも挟まったソース味のカツサンドだ。パンは少し甘めのある食パンを使ったもの。「火腿歐姆蛋堡」の火腿はハム、歐姆蛋はオムレツ、ということで、息子のはハムオムレツサンド。バンズパンにレタスやチーズも挟まっているもので、出てきてみるとこちらの方が美味しそうだった。

だんなは、モスバーガー隣の吉野家で、牛丼と照り焼き丼の盛り合わせを頼んでいる。点心屋さんで蒸しスープが入って出てくるような容器に豚汁もよそわれており、何故か枝豆までついてきていた。

朝食後は、電車に2駅乗って「雙連駅」近くの朝市に。生肉にもたいそう心を惹かれつつ(だって、すごく無造作に烏骨鶏が丸々1羽売られていたりする)、さすがに生肉を買って帰るわけにもいかず、「空港でつつけるかな」と調理されたものを軽く見て歩いた。一昨日と同じ場所での市場だけれど、店の並びが隨分と違っている。一昨日はあまり見なかったお花屋さんがたくさん出ているし、少し気になっていた素麺屋さん(乾麺や瓶詰めのソースを扱っていてお土産に良さそうだった)は今日は出てきていない。それでも気になっていた加工肉屋さんはおおむね出ていて、2ヶ所でお買い物してきた。

甘辛く煮付けた系の肉ばかりを扱っていたお店で角煮と煮卵3個を買い(合計217元)、焼き物主体のお店で焼き鶏を買い、更に13個100元だったピータンも購入。英語も日本語もほとんど通じず、身振り手振りで買い物してきた。

一度ホテルに戻ってから、「パイナップルケーキを買いに行こう」と、美味しいと評判らしい世運食品の最寄り店に出向くべく、再びぷらぷらと。残念ながらその支店は移転済で、傷心のまま思わず通りかかったお店で麺線1杯買ってホテルの部屋に持ち帰ってきてしまう。小さな生牡蠣と煮込まれたモツが香菜と共にトッピングされた麺線は、「阿宗麺線」のそれに比べるとかなりワイルドな味わい。かなりケダモノ臭さの感じられる麺線で、それがまた美味しかった。

ちなみにパイナップルケーキは、お店の本店が歩ける距離にあることがわかり、だんながひとっ走りして買ってきてくれた。色々な味の詰め合わせ箱を買ってきてくれたので、帰宅してから食べるのが楽しみだ。

空港フードコートにて
 小龍包(大) 240元
 朝市で購入した角煮とか煮卵とか焼き鶏とか
 台湾ビール

慌ただしく荷造りを終え、来る時の倍近い重さになったスーツケースを引きずって(重さの理由は、台湾ビールとか蒸籠とか麺線の素とかXO醤とか、そんなものばっかり……)、行きと同じ公営バスに乗って空港に向かった。行きはずいぶん渋滞していたけれど、日曜昼間というタイミングもあってか、道路はガラガラ。思った以上に早く着いてしまい、空港内のフードコートで軽く休憩することにした。

10個入りの小龍包があったので思わず買ってみたのだけれど、1蒸籠なんと240元という驚きの価格。そして味は一番残念な感じなのだった。ビール飲み飲み、小龍包をつついて、ついでに朝市で買ってきた角煮なども取り出して軽くつつく。見た目よりはあっさりした味の角煮も煮卵も、骨ごと中華包丁でドカドカ叩き割ってパックに詰めてくれた焼き鶏も、実に美味しかった。ついつい調子に乗って食べ過ぎてしまい、搭乗ロビーで家族でモンスターハンターなどやりつつ搭乗時間を待つことに。

機内食
 ひつまぶし
 台湾風小菜
 うどん
 竹炭チョコレートケーキ
 ヱビスビール

機内食は「ひつまぶし」か「カツカレー」の選択という、ちょっと面白いものだった。他にはうどんとか、姫筍のピリ辛和えとか、茹で豚の棒棒鶏風とか。デザートは、炭色のふわふわしたトッピングの乗った四角いケーキで、「竹炭チョコレートケーキ」だったのだそう。

さすがに朝からあれこれ食べ過ぎて機内食までは余裕がなく、「鰻全部食べた、おかずもちょこちょこつついた、でもうどんはちょっとごめんなさい……」と半分ほど平らげたところで終わりにすることにした。もうちょっと余裕があったら、チョコレートケーキくらい食べてしまいたかったのだけれども。

そしてようよう、夜8時を過ぎた頃に我が家到着。10時間前は半袖で汗かきながら歩いていたのに、日本はやっぱり肌寒かった。
「ん、でもけっこう大丈夫な温かさかも」
「震えるほどは寒くないよね」
と、半袖Tシャツに長袖の薄手の上着をひっかけた状態で、いそいそと帰ってきた。

スーツケースの中からは、出てくる出てくる怪しい食材。一体どれだけ台湾の味を引きずるつもりなんだと苦笑いしつつ、とりあえず近々麺線を煮てみる予定。モツを入れよう、どっさりと。