食欲魔人日記 03年10月 第5週
10/27 (月)
久しぶりに作ったハンバーグは、うまうま〜 (夕御飯)
「アンデルセン」の
 フレッシュアップルペストリー
 クリームチーズデニッシュ
カフェオレ

午前6時20分に起きて、月曜の朝は弁当作成から。今日はだんなと息子と私の分3人分作る予定になっているので、パタパタと大量の御飯を温め、おかずを作り、あれこれ詰めた。

朝御飯は、
「チョコのパンが食べたいなー」
の息子のリクエストにより、菓子パン。最近店頭に並ぶようになったアップルペストリーと、定番商品クリームチーズデニッシュ。
「今日はプールに行く予定だからー、甘いパン2つでもいいのよねー」
と、なにやら本末転倒な事を呟きつつ、やたらと苦くなってしまった濃厚なコーヒーに牛乳だばだば入れて飲んだ。

おうちで弁当
 親子丼
 茹で鮭と葱の和えもの
 ほうれん草のおひたし
 梨
冷茶

午前中はプールでだばだば泳いできた。午後にはちょこっと仕事もしなければならぬ。弁当を作っておいて本当に良かったー、と自分に感謝しながら昼御飯にした。

今日の弁当は親子丼。薄口醤油を使って卵の綺麗な色を出すようにして、三つ葉も散らした。副菜に、茹でた鮭を刻んだ長ねぎと共にすり胡麻と胡麻油であえたもの、かつおぶしをちょろっと散らしたほうれん草を詰める。隅っこには、梨を一口サイズに切って添えた。息子は常々
「ねぎはね、きらいなのー」
と、頑なに長ねぎと万能葱だけは口にしないのだけど(でも玉ねぎはぎりぎりOKらしい)、弁当に詰めた鮭和えは全部綺麗に食べてきた。弁当に詰めるのであれば、ピーマンだろうがくさやの干物だろうがナマコだろうが生牡蠣だろうがどんとこいかもしれない。一体どのような成長過程で、そんなに「弁当好き」になっちゃったのか、母としてちょっと謎に思っていたりするのだった。わ、私は高校生の頃、母に作ってもらっていた弁当でもプチトマトとかは絶対口にしないで弁当箱に入れたまま持ち帰ってしまったりしていたけどなー……(あとは友達にあげちゃったりとか)。

「ほらほら、今日も食べたよ。ほらーほらー」
幼稚園から帰ってくるなり、空の弁当箱を自慢気に見せてくる我が息子。
「あしたはね、"おとうばんさん"なんだよ」
今日は殊更になんだか自慢気だった。

「ほー。"お当番さん"って、何するの?」
「"あしたのおとうばんさん、がんばってください"、"がんばります"」
「あー……挨拶するのね?」
「いただきますの、ごあいさつ。いただきます」
「あぁ、それも言うのね」
「きょうのおとうばんさん、どうもありがとうございました。どーいたしまして」
……挨拶だけ?お当番さん。
他にナニをするの?
息子の幼稚園生活はちょっとばかり謎に満ちている。

和風ハンバーグ with 大根おろし
ほうれん草のバターソテー
にんじんのグラッセ
マッシュポテト
ミックスサラダ
豆腐と油揚げの味噌汁
羽釜御飯
ビール・冷茶

安売りしていた合いびき肉(確か100g70円くらい)を、特に予定もなしに昨日買ってきたのだった。今日の夕方になって、
「そうだ、ハンバーグにしよう」
と思い立つ。弁当にはちょこちょこ作っているハンバーグだけど、夕飯のおかずには、不思議とあまり作ったことがない。いくつかのレシピを参考にしつつ、"いいとこどり"(単に適当、とも言う)でやってみることにした。

ボウルに合いびき肉を入れ、卵を1個割り落とし、ほんの大さじ2ほど残った生クリームを放り込み、パン粉を3つまみ。塩胡椒、ナツメグをしっかり効かせ、最期に加えたのはすりおろし玉ねぎ。刻み玉ねぎがざっくり入るハンバーグも好きなのだけど、毎回それのせいで表面が今ひとつ美しい仕上がりになってくれなかったので、いつか本で読んだ「すりおろし玉ねぎ」を試してみることにした。大根おろし器でこしこし削って半個分ほど肉に混ぜる。いーい感じにしっとりしたハンバーグ生地ができた。

せーの、で全員分が焼き上がるように、2個のコンロに2つのフライパンを並べ、同時に焼いていく。中まで火を通すために両面焼き付けてから少量の水を注いで蒸し焼きにし(ケンタロウさんの本で見かけて、「え?水?マジ?」と思ったのだけど、一度試してみたらこれがすごく上手く焼けてびっくり。焦げず、水っぽくもならず、ちゃんと中まで火が通る)、焼き上がったハンバーグを取り出したところで酒と醤油と味醂を同量ずつフライパンに入れ、バターもひとかけ落としたら肉汁をこそげつつ混ぜて煮つめてソースに。大根おろしと一緒に皿に盛りつけた。添え物は、ほうれん草のバター炒めににんじんのグラッセ、マッシュポテトという、ごくごくありきたりな組み合わせ。

「なんかねー、ハンバーグセットというより、ハンバーグ定食が食べたいのよね」
と、炊きたて御飯と味噌汁も準備した。幸い今日、たっぷり4人前くらいある葉野菜のセットが98円で買えたので、それも添える。絵に描いたような「ハンバーグ定食」になった。

で、ハンバーグは、かつてこんなに良い出来だったことはない、ってくらい、美味しかった。だんなまで
「今まで僕が作ったどのハンバーグより美味しい……」
と言っている。大根おろしを添えるには、最後に作ったソースがちょーっと薄味になってしまったけれど、私も想定していたより遙かに美味しいハンバーグでできあがってすごく満足だった。生クリームが良かったのかすりおろし玉ねぎが良かったのか、牛ひきではなく合いびきを使ったのが良かったのかさっぱり謎なのだけど、いかんせん適当に作ってしまったので、もう一度同じ味を作れる自信がない。そもそも肉が何グラムあったのかも定かではなかったりして。

10/28 (火)
大好物のきりたんぽ鍋〜♪ (夕御飯)
チーズトースト
ココア

暑い日は暑い日で「だるーい、やる気でなーい」と朝起きられなかったりするのだけど、寒けりゃ寒いで
「布団から出られなーい、やる気でなーい」
ということになる。私が心地よく活動できるのは4月から6月、9月から10月くらいのごく短い期間らしかった。だめじゃん。

いつまでも出られなーい出られなーいと言っていられもしないので、一人起きてお弁当作り。だんなは早めの出勤ということで、数十分後に起きてきてできあがったばかりの弁当箱をひっつかんでとっとと出勤してしまった。あわただしいのう。

で、私は息子と2人のんびり朝御飯。スライスされていない塊の食パンをたっぷりと厚めに切り、それにチーズを乗せてオーブンに。とろんと焼けたところで等分して息子と半分こして食べた。冷たい雨がどんどこ降ってきていた朝だったので、飲み物はホットココア。牛乳しっかり入れて砂糖も加えて甘くして、体を温めてから幼稚園に出発した。自転車で。

おうちで弁当
 豚肉と野菜の味噌炒め
 醤油味の卵焼き
 キュウリのにんにく味噌漬け
 ふりかけ御飯
 いぶりがっこ
抹茶入り玄米茶

明日は息子の幼稚園の「芋ほり会」。芋ほり会、おおいに結構なのだけど、数日前にプリントに書かれていた「準備品」はやたらとめんどくさいものだった。
その1、芋袋。タオルを2つ折りにして巾着袋に仕立てろ、とある。タオルでなければならないらしい。スーパーのビニール袋じゃダメですかー、ダメなんですかー?
その2、リュックサック。「どろんこになった芋袋を入れて良いもの」とある。「重いお芋を入れるので、肩紐は"ひも"ではないもの。くいこんで痛いです」とまである。ナップザックなどはダメなのだそうだ。肩にあたるところがちゃんと幅広のベルトタイプになっていて、泥だらけのものを入れても良い(つまり洗えるものか使い捨てかどっちかって事?)リュックサックとのご指定だ。

「100円ショップにリュックがあればよし、無かったら泣くよ私は……」
とぶつぶつ言いながら、とりあえずタオル袋は作成した。んもー、なんでスーパーの袋じゃダメなのかなぁ……そこに「手作り」を求める意図が、もうさっぱりわからない。

「んもー、んもー、んもー」
と鼻息粗く今ひとつやりがいのない仕事を終え、昼御飯。今日も詰め方や量に違いはあれ、親子3人お揃いの弁当だ。温かいお茶を淹れて、一人またーりと弁当箱を持つ。

今日のおかずは豚肉の味噌炒め。小さめの一口大に切ったにんじん、ピーマンと共に豚肉をさっと炒め合わせ、味噌と味醂と酒で調味した。脇にちゃっと醤油を混ぜて焼いた卵焼きを詰め、一晩漬けておいたにんにく味噌床漬けのきゅうりを添える。息子の弁当箱に詰めたおにぎりは、昨日のおかずの一品の残り、鮭と葱の和えものを混ぜ込んで握った。割と地味な色合いの弁当になってしまったけれど、味のバランスは悪くないかなと自画自賛。

きりたんぽ鍋
(鶏肉・ごぼう・せり・長ねぎ・舞茸・糸こんにゃく・きりたんぽ)
ビール

今日は美味しそうな安売りマグロのサクを買ってきたのだけど(そしてめでたく100円ショップに子供用リュックが置かれていた)、夕方になって嬉しい荷物が秋田の親戚から届いた。きりたんぽ鍋セットだ。
きりたんぽ、近所の八百屋でスープときりたんぽを先日から販売していて、通りかかるたびに
「いいなーいいなー、食べたいなー」
と思っていたりしたのであった。今日は涼しいし、ナイスタイミング。大きな段ボールの中には新米のあきたこまち(素敵すぎる)と、家庭菜園で採れたのだという枝豆や菊花(すばらしすぎる)、それに、鍋用の糸こんにゃくやごぼうやせりや舞茸等々、鶏肉以外の全ての材料が納められていた。もう、「宝の山」という感じ。

早速まだ仕事中のだんなにメールして、
「きりたんぽ鍋セットが届いたので今日はこれにしようと思いまーす。つきましては、肉はないので買ってこいやゴルァ」
と連絡。閉店間際のニュークイックで、阿波尾鶏(あわおどり)なる、名前はすごいけどけっこう美味しい肉をだんなは買ってきてくれた。秋田といえば比内鶏なんだけど、これはステーキ肉並に豪華な肉だったりして、ほとんど買ったことはない。

濃縮比内鶏スープを水で薄めてポットに入れて準備しておく。土鍋にスープをだばだばと張り、火をつけて煮立ったらごぼうと舞茸と長ねぎと鶏肉を投入。軽く煮込んだら糸こんにゃくも投入。更にせりもたっぷり投入。きりたんぽは、鍋に入れたら数分でぐずぐずになっていってしまうので、これは食べたい時に少しずつ加えていく。きりたんぽの他に、丸い形の「だだこ餅」なるものもセットには入っていた。秋田弁には「〜っこ」と発音する名詞が多い。「餅」は「餅っこ」、「牛」は「べっこ」、「漬物」は「がっこ」。そういえば、久しく秋田に行ってないから秋田弁もすっかりご無沙汰だわぁと思いつつ材料をざくざく準備している背後で、母は送ってくれたおばさんの家にお礼の電話をかけていた。

「あいゃねぇちゃ、ひさスぶりだなやぁ〜。あいゃ、まんズまんズいいもん送ってくれちゃって。んだども元気でいがったなやぁ……」
私は、秋田弁はヒアリングだけならなんとか。でも、話す方はさっぱりだ。母は見事にバイリンガル(?)で、秋田に住む人々を前にするとまるで異国人のような発音にすぐさま変化しちゃうのだった。「単語のイントネーションが違う」くらいだったらともかく、単語1つ1つがすっかり変わってしまうディープな方言になると時々私も首をかしげてしまう。だんなに至っては、以前秋田に一緒に行ったときは滞在時間の3割くらい、ハニワ顔に表情が硬直していた。

「まんズ、うめぇな」
「まんズ、うんめ」
つい発音が北方向に引きずられてしまいながら、きりたんぽ鍋をはふはふと楽しむ。煮えた具をつまんでは、肉や野菜やきりたんぽをうじゃーっと追加投入し、せっせと食べた。鶏のだしがたっぷり出て、せりやごぼうの風味を吸い込みまくったスープで煮えたきりたんぽは、「やっぱり冬にはこの味よね」と思わせてくれた。うー、きりたんぽ、サイコー。

10/29 (水)
「お芋ほり」の収穫物で「とんさつま」 (夕御飯)
昨夜のきりたんぽ鍋の残り
冷茶

「昨日のきりたんぽ鍋はうまかった……」
「いやー、まんず、うめかった……」
「というわけで、今日も朝から続きを食べるのであります」
「まだあるんかい!」
と、今日の朝もきりたんぽ鍋。

残ったスープに残った具を入れ、昨夜のうちにひととおり火を通してしまってあったので、それを再度温めた後きりたんぽを入れる。小さなどんぶりに具と汁ときりたんぽを盛りつけ、はふはふとかっこんだ。今日の陽気の中では、ちょっと暑苦しい朝御飯になっちゃたけど、気にしない。まだ残ってるけど、それも気にしない。私の昼御飯はきりたんぽ鍋続々編。

またまた昨夜のきりたんぽ鍋の残り
冷茶

無事に昨日からの雨もあがり、幼稚園に指定され私が手作りした"タオル袋"と、100円ショップで購入したリュックサックを持った息子は元気に幼稚園のイベント「お芋ほり」に出発していった。

「お芋ほり」のイベントに際しては、わざわざ弁当の内容にまでプリントで指摘があった。
「子供たちはすごく疲れて帰ってきます。お弁当は、いつも以上に食べやすいものを」
だそうである。それはなんというか……アドバイスとしてわからなくもないのだけど、密かに「よけいなお世話」とも思ってしまう。そんなの別に、その家庭家庭で判断するレベルのような気がするし、息子は私よりも元気に2〜3キロのトレイルを歩き抜く体力があるから芋ほり程度でバテるなんてことはないと思われるし……。ともあれ、彼の弁当箱には鶏肉とじゃがいものサラダを詰めたロールパンのサンドイッチと、好物の卵サラダのサンドイッチを詰めた。あとはプチトマトと柿。だんなの弁当は、今日明日明後日とお休みだ。

息子、きっと泥だらけになって帰ってくるんだろうなぁ……と思いつつ、私はスポーツジムに。帰ってきてから一人食べた昼御飯は、またまたきりたんぽ鍋の残り。いいかげん、スープも残り少なくなって具に吸い込まれ、「ごぼうと舞茸と鶏肉の煮込み」のような外見に。そういえば、我が家でしょっちゅう作っている鶏肉とごぼうと舞茸の吸い物って、要するにきりたんぽ鍋みたいな味なのよね。母の郷里では、この吸い物で雑煮も作る。きりたんぽ鍋は日常そうそう食べるものではないみたいだけど、「この味」は皆の馴染みのものらしい。

とんさつま
大人味の大学芋
マグロの刺身
ミックスサラダ
豆腐と油揚げの味噌汁
羽釜御飯
ビール

「おいも、おいも、おいも〜♪」
と、なにやら別の歌のメロディで「いもの歌」を独唱しながら幼稚園の門を出てきた息子。
「おいも、3まい、ほってきましたー!」
さ、さんまい?どんな芋だ……と笑ってしまいながら、
「お芋はね、3枚ではなく、3本って言うんだよ。せめて3個、とか」
と教えながら帰宅した。タオル袋は見事なまでにどろんどろんで、使い古しのタオルだったこともあってゴミ箱行き。息子と一緒に芋をタワシでガシュガシュと洗った。息子が横で飛び跳ねていて、もうこれは速攻調理しなきゃ辛抱たまらん、という様相だったので、早速1本ふかしておやつに食べた。残りは夕飯に加工。

まずは、大学芋。ざくざく切ったさつまいもを素揚げし、砂糖を熱で溶かして醤油をちらっと加えた飴にからめるのだ。頭じゃちゃんとわかっていて作業し始めたつもりだったのだけど、「砂糖を熱で溶かすだけ」だったはずのところをついいつもの習慣でカラメルに。
「うわー、ダメじゃん、ダメじゃん、カラメルにしちゃダメじゃん!」
と慌てて火からおろしつつ揚げ芋を絡めたのだけど、見事に茶色い飴が光る、大人味の大学芋になってしまった。不味くはないんだけど、少なくともこれは「大学芋」という料理じゃない。すまん息子。

そして最後の芋1本は豚肉と一緒に煮ておかずに。スライスしたさつまいもを揚げ、殻つきぎんなんも炒ってから殻剥いて揚げ、それを豚肉と共に醤油や味醂の甘辛味でこてっと煮絡める。これは「とんさつま」という料理名であるらしい(多分、小林カツ代さんのレシピ本で見た料理だったと記憶する)。
あとは、残りもののミックスサラダに、本来昨日の夕飯に使おうと思っていたマグロを刺身にしてテーブルに。息子にとっては、かなりの御馳走になったらしかった。「これも、おいも!あれも、おいも!」と騒いでいる。大人味の大学芋ですみません……。

あと1本さつまいもあったら、それはスィートポテトになったかもしれないのだけど、今回はこんな感じで、ひとつ。

10/30 (木)
渋谷で中国茶
「Cucina Tokionese Cozima」の
 トマトパン
 バジルパン
ダージリンティー

だんなは先週から、毎週水曜の夜に英語学校に通っている。学校の場所がそこからそう遠くないということで、授業の後には毎週「Cucina Tokionese Cozima」で夕食を摂ってくることにしたらしい。馴染みの店だから、「毎週水曜の夜このくらいの時間に、毎回サラダとパスタとドルチェくらいの軽めの食事で良いから食べさせてー」の一言で、内容はおまかせにしているのだった。毎週毎週(といってもまだ2回だけど)、
「今日のドルチェはね、プリンをモンブラン仕立てにしたものだったよー」とか、
「今日のドルチェは、なんとフルーツパフェでした!」
なんて、めちゃめちゃ羨ましい報告を日付が変わってから帰宅するだんなから受けている私。羨ましいにもほどがある。

で、今回はお土産も持ってきた。
「最後の方の客だったからー。"これ、奥さんにどうぞ"って」
小さな手提げ袋の中には、フローズンストロベリーを中に固めた一口サイズのホワイトチョコと、同じくピスタチオを固めたもの、そして「ちょっと作り過ぎちゃったから今日のお客さんに配ってたんです」という、いつもお店で出しているトマトとバジルのパンが入っていた。嬉しいけど、やっぱり羨ましさが倍増っていうか。

「ああ、君は、このパンとこのドルチェの前後に、そりゃもう美味しいパスタとか前菜を食べているわけだね」
と、言葉の隅にトゲを生産してしまいながら、今日の朝御飯はその美味しいパン。幼児の握り拳くらいの小さな小さな緑色をしたパンと、赤色をしたパンだ。もっちりした食感で、割るとパンそのものの香りの他にオリーブ油やバジルやトマトの香りもぷんと漂ってくる。いつもいつも、お店で食べていて美味しいなぁ……と思うのだけど、お店の外で食べてもやっぱりそれは美味しかった。温めても美味しいし、冷めても旨い。

「京樽」の
 ちらし寿司
抹茶入り玄米茶

今日は夜に大イベントが待っている。息子が幼稚園から帰ってきたら出発だ。
仕事が休みの母が家中に掃除機をかけたりしている間、私はせっせと荷造りしたり身支度を整えたり、仕事を片づけたり。
「ちょっと図書館行ってくるわねー」
と出かけた母が昼頃に戻ってきた時には、「京樽」のちらし寿司のパックを手にしていた。ああ、ありがたい。昼御飯について、私はなーんにも考えてなかったよ。

「パーティーに行ったら、がつがつ食べるんじゃないわよ。カッコ悪い」
「……そういう場所じゃそんなに食べないって。ていうか食べられないって」
などと語りながら、いまいち魚の量が少ないちらし寿司をつつく。具の大半は錦糸卵とでんぶと甘酢蓮根という感じ。

渋谷 「華泰茶荘」にて
 杏仁茶 アフタヌーンティセット

そういうわけで、午後4時に渋谷にやってきた。今夜は広尾で息子も同伴でパーティーに出席しなければいけない。多分会場を出られるのは午後10時半を過ぎた頃で多分たいそう疲れているだろうから、と渋谷に家族で一泊してしまうことになったのだった。宿泊したのは、駅に隣接した「エクセルホテル東急」。だんなは職場から直接会場に向かうとのことで、息子と私が先にチェックインして会場で落ち合う約束になっている。

部屋は狭いけれど清潔かつ機能的で良い感じ。それほど高い階層の部屋ではなかったけれど、窓からハチ公前の雑踏と共に新宿のビル群が良く見える。渋谷に泊まるなんて初めてだわー、とおのぼりさん気分で周囲をぷらぷら。お茶しがてら、出発前にチェックしてあった台湾茶と茶器を扱うお店に行ってみることにした。

台北市内に本店があるというその店の名は「華泰茶荘」。マークシティーを道玄坂方面に抜けたすぐ脇にある。4階建てで、1階が茶器と茶葉を売るお店。2階は高級茶器を扱うコーナーで、3階が喫茶になっているらしい。
「渋谷にある店だしなー……こう、上っ面だけそろえたような店だったりして……」
と、「渋谷」にあまり良い感情を抱いていない私は、さほど期待せずに息子を連れて行ってみたのだけど、これが想像を遙かに超えた良いお店だった。こんなに茶器が(しかもかなり素敵なものばかり)がずらずらと並んでいるお店って、台湾でもそんなに見なかったほど。しかも手頃な値段のものが多く、茶葉やお菓子も充実している。

一階に入るなり、「うわー、うわー、うわー」と棚を舐め回しはじめた私をよそに、息子はとても不満そう。
「のどがかわいたから、お茶のもうよ。上、行こうよ」
と、真横でえんえんとささやき始めたので、まずはお茶にすることにした。細かい茶器を扱う店で子連れは嫌がられるだろうなぁ、もしも混雑していたり、壊れもの満載の茶室だったら諦めよう……と上階に行ってみると、10卓ほどある席は2〜3ほどが埋まっているだけで、テーブルの間隔もけっこう広い。店員さんも、「どうぞーどうぞー」と笑顔で席に案内してくれ、私と息子は窓辺の4人卓のポットと茶盆の前に腰を下ろした。たっぷりの中国茶メニューに、デザート類もいくつか。シロップにお茶の風味をつけた杏仁豆腐、なんてものもあって、息子にはそれを。私は、お茶に500円足してお菓子がついてくるセットにしてもらった。選んだお茶は、杏仁っぽい香りがするという「杏仁茶」。

「せっかくお子さん、来てくれたんだし、一緒に飲みたいよね?」
と、子供分の茶杯も用意してくれ、功夫茶の作法でまろやかな甘みのあるお茶を楽しんだ。家でも何度もやっていることなので、息子も訳知り顔で"聞香杯"に残るお茶の匂いをかいだりしているが……そんな幼児は母としてもちょっとイヤだ。「あまくて、おいしいね」って、5歳で中国茶を語るのはちょっと早くはないか、息子。

丁寧に淹れたお茶は、とんがった渋みやえぐみは少しもなくて、とろりと柔らかい味がする。今日のセットのお菓子は、ジャスミンティー風味のシロップをかけた仙草ゼリーと、茶葉入りのパウンドケーキやクッキーの盛り合わせ。ちょこちょこっと何種類もの焼き菓子と共に冷たいデザートも楽しめて、かなりお得なものだった。

食後は一階で再び茶器漁り。焼き物の茶壺も良い感じのものがたっぷりあり、さんざん悩んだ後に、欲しかったガラス製の茶壺を買ってしまった。この店オリジナルのものだというガラスの茶壺は、茶こしの部分も丁寧なガラス細工になっている。他で多く見かけるタイプは注ぎ口の根元に針金製の茶こしが差してあるものが多かったので、その細工に惚れてしまったのだった。あとは、一度飲んでみたいと思っていた「八宝茶」を。

すんごく良いお店だったので、今度はだんなを連れてこよう〜。スタンプカードも作ってもらっちゃったことだし。

広尾 「ニューサンノーホテル」にて、立食パーティー
 ゆで卵・スモークサーモン・チーズ・クラッカーなどの前菜
 マッシュルームのフライ
 チキンカツ
 海老と茄子の天ぷら
 巻き寿司
 ビール・ワイン・ソーダなどなど

午後7時からは、広尾でパーティー。アメリカ滞在中さんざんお世話になったA先生、その研究室のン周年パーティーということで、研究室に所属していた者およびその家族、関係者等々で200人規模の大パーティーだ。なんだか偉い人もうじゃうじゃ来るらしいけど、でも子供も参加するカジュアルな会。場所は、広尾の「ニューサンノーホテル」。米国人向けのホテルで、入り口ではいきなり英語で身分証明書の提示を求められる。そんなこと言っても、私はクレジットカードくらいしか持っていないんですが……と、クレジットカードを提示してなんとか通してもらった。

3時間に及ぶパーティーで、途中にはカントリーミュージックの演奏や、元留学生たちによるプレゼンテーション、各関係者の長い長いスピーチなど、切れ目なくイベントが続いていく。並ぶ料理は、和洋混合なのだけど、アボガドを巻いた手巻き寿司とか、やたらとふわっとした衣をつけた海老の天ぷらとか、なんだか妙に懐かしい味がするディップつきの生野菜とか、どれもこれも最近涙が出るほど懐かしいと思っていた「アメリカ」を感じさせてくれるものだった。ローストビーフを挟んだハンバーガーもどき、なんてものもある。カクテルシュリンプもある。息子は「ハンバーガー、おいしいねー」と、もりもりとローストビーフサンドを食べていた。

4ヶ月ぶりに会ったA先生は
「お元気でしたか?、○○さーん」
と、息子の名を呼び、肩車して会場をぐるぐる走っていたりしたけれど、招待客のスピーチは「いかに自分がA先生と深い関係にあるか」を誇示するものがほとんどで、今さらながらにA先生はエライ人だったんだなぁと思い知らされる。って、その脇でまた息子かついで会場練り歩いてるし……おっさんおっさん……。

どうも、他の子供たちはA先生が怖いらしくて、あまり近寄ってこないようなのだった。背も高いしいかにも白人という感じの顔つきのA先生なので、子供によってはA先生が近づくだけで泣いてしまうらしい。「子供が好きなのに、泣かれてしまいます」と留学中に先生本人から伺ったことがあったけれど、臆さずA先生に近寄っては「だっこして」などと不遜な事を要求できる日本人の子供は我が息子だけらしかった。あー、まただよ、スーツ汚れちゃうよA先生……。

会が開けたのは10時過ぎ、幹事だっただんなは最後まで残り、会場を出たのは11時をまわろうとした頃だった。やっぱり渋谷宿泊にしておいて良かった……と心から思いながら、シャワーを浴びて即就寝。

A先生の奥様、そして研究室でお世話になった日本人スタッフのMさんも来日していて、久しぶりのお顔が見られて嬉しかった。5周年おきにパーティーは開かれるので、次は5年後だ。その前に一度くらいは、テネシーにまた帰りたいなぁ……。

10/31 (金)
Cozimaでごはん〜♪ (昼御飯)
渋谷 「エクセルホテル東急」で朝食ブッフェ
 クロワッサン
 オムレツ・ピラフ・ソーセージ・カリカリベーコン・サラミ
 サラダ
 フルーツカクテル・メロン・オレンジ
 牛乳・オレンジジュース・紅茶

昨日はパーティーに参加し、渋谷に宿泊。ダブルベッドの部屋だったのだけどベッドの幅はあまりない。息子に押され、蹴られ、結局けっこう早い時間に目が覚めてしまった。

出勤前のだんなと一緒に8時過ぎ、ホテル内の朝食コーナーに。宿泊代の中に朝食ブッフェ代もしくは和朝食セット代が含まれていて、「ブッフェよねー」「ブッフェなのよねー」と上階のブッフェレストラン目指してエレベーターに乗った。

あまり品数はなかったけれど、割と充実した内容で、満足できる朝食だった。果肉の粒がたっぷり入るオレンジジュースにグレープフルーツジュース、2種類のシリアルに牛乳、パンは数種類。卵料理はスクランブルエッグとオムレツとゆで卵。オムレツには生のトマトから作ったものらしいソースがたっぷり添えられていた。フルーツの種類も少なめではあるけど、フルーツカクテルはよくある「缶詰をただあけたもの」じゃなく、自家製らしい優しい甘さのもの。大きな窓からはばばーんとビル群が望めて、久しぶりなのんびりした朝御飯。息子はシリアルを2杯おかわりしてもりもり食べていた。

青山 「Cucina Tokionese Cozima」にて、おまかせコース
 赤ピーマンのピュレ、ゴルゴンゾーラチーズのふわふわムース添え
 うずらのグリルのサラダ
 穴子の網脂包み焼き 赤米のリゾット詰め ポルチーニのグリル
 トリッパのトマト煮込み
 マルガニのタリアテッレ
 ウサギとフォアグラのパイ包み焼き
 小さなドルチェプレート
 モンブランプリン
 白ワイン・エスプレッソ

朝食後、だんなは出勤。私と息子はホテルをチェックアウトした後、
「渋谷に子供連れで来るっていったら、ここに一度は来なきゃねー」と入場無料の電力館に行ってちょっと遊んできた。現在改装工事中のお詫びだということで、でんこちゃん柄のメモ帳などをもらってしまった。

お昼御飯は、荷物を抱えて青山の「Cucina Tokionese Cozima」へ。毎週水曜の夜に英語学校に通うようになっただんなが帰りがけにこの店で食事を摂るようになってあれが旨いこれが旨いといちいち報告してくれちゃうので、
「きーい!私も食べるぅ!」
と息子を連れて向かっちゃったのだった。
「料理はおまかせ!がつんと喰わせてください!そしたらきっとあと2ヶ月くらいは広い心で夫を見守れるから……」
と予約の電話を事前に入れ、大荷物抱えて店に向かった。子供も一緒だし、と上階の入り口近くの席にしてもらい、だけど豪華な昼御飯。どれもこれもピカピカな、一皿一皿がいちいちハイレベルな外見と味のものがゆったりと出てきた。

突き出しに、赤ピーマンのふわっとしたピュレを皿に敷き、その上にホイップクリームとゴルゴンゾーラチーズを合わせたムース状のものを乗せたもの。独特のカビ臭さのあるチーズが生クリームのおかげでふんわりとやわらかい味になっていて、赤ピーマンの甘さによく似合う……というか甘さをより一層ひきたてる感じ。

続いて、ウズラをカリッと焼いたものを中央に置いたサラダ仕立ての前菜。生のブルーベリーの果実や銀杏が添えてあるのが面白い。生ハムが2枚添えられ、肉の上にはカリッと揚げた蓮根のチップ。息子は、生ハムを見るや
「ぼくと、おかーさんで、一枚ずつ食べよ?はんぶんこしましょう?」
と取引を持ちかけてくる。彼には彼の、キジ肉のラグーを使ったクリームソースのパスタを作ってもらっているのだ。それだけでも贅沢だってのに、生ハムも?いつもはそんなにハムが欲しいとか言わないくせに、生ハムの時に限って「これはおいしいから」とか言うか、息子よ。ぶちぶち言いつつ、生ハム2枚を半分こ。カリッと表面が焼けたうずら肉は、ぎゅっと濃縮したような濃い肉の味がした。

更に、魚料理。赤米のリゾットを穴子でくるりと巻き、網脂をかぶせて火を通したもの。赤ワインベースのソースをかけ、かすかにほんのりカレー粉の香り。添えられているのは、たっっぷりの、ポルチーニのグリル。その表面はいかにも柔らかそうな外見だったので、
「ももももも、もしかして生のポルチーニですかぁ?」
と聞き、「そうですよー」と頷かれる。独特の、むわぁ〜っと生暖かいような独特の芳香があるイタリアのこのキノコは、イタリアにおける松茸(いや、どっちかというと舞茸?)みたいな感じ。シコシコッとした歯触りはエリンギにも似ていて、でも香りはすばらしく良い。な、なんか、松茸の網焼きとかよりも幸せかも……と思いつつ、シコシコ感を楽しみつつ穴子も囓る。ふわっと火が通った穴子の中には優しい味のリゾットがたっぷり。

次はトリッパの煮込み。煮込まれて煮込まれてホロホロに煮くずれそうなほどの一口サイズのトリッパが豆や米類と共にトマトクリーム味で炊かれている。
「フリウリベネツィアジューリア地方の、定番の料理のひとつです。昔からの料理ですね」
と舌噛みそうな紹介をされたその料理は、手のこんだ洗練された下ごしらえを感じさせるのとは裏腹に素朴な味。息子は自分のパスタをぺろりと平らげ、皿に残ったきじ肉のソースをつついている。

ここでやっと私の前にはパスタ料理。殻つきの"マルガニ"をざくざくと使ったタリアテッレで、トマトベース。蟹フォークとフィンガーボールもテーブルにやってきて、足の一本一本にちゃんと切込が入れられて食べやすくなった蟹をバラしにかかる。最初は上品に左手に蟹、右手に蟹フォークを持ってあれこれやっていたのだけど、そのうち両手で蟹をわしづかみにしてバリバリとやりはじめた。これがデートでの食事とかだったら、もう目も当てられないという感じ。うりゃーっと両手をフィンガーボールにつっこんでナプキンでぺたぺた拭き終わる頃には、蟹の身が綺麗にパスタにまぶされた状態になった。ふわふわの蟹の身がトマトとパスタに絡んで、なんとも幸せな味。両手にも蟹のエキスがしみこんだようになり、気分は一人蟹道楽。

そろそろさすがに胃に充実感を感じはじめたところで出てきたメインディッシュは、小ぶりなサイズのパイ包み焼き。中にはホロホロに煮込んでくずし身にしたウサギの肉と、フォアグラが詰められている。マルサラ酒風味のソースが敷かれ、周囲には模様のように温野菜が散らされている。東京の農家が作ったのだという小ぶりのズッキーニに、近くの有栖川公園のイチョウのものだという銀杏、それに、イタリア野菜の「ロマネスコ」。表面がサンゴのようにプチプチと独特な隆起を作っている、カリフラワーやブロッコリーの仲間の野菜。それぞれが適度な食感を残して火を通されて、パイの回りに飾るように並べられていた。サックサクのパイの中にはほんのりけだもの臭さが漂う肉とフォアグラが。濃厚なそれをソースと共に楽しみながら野菜を食べると、パイの添え物が野菜なのか、野菜を美味しく味わうためにパイがあるのか、わからなくなってきた。添え物の野菜が美味しいと、一皿の料理はいっそう美味しくなるものだ。

「でも、銀杏の殻剥くのって、めちゃめちゃ大変ですよね」
「ええ、ですからお店が暇な時間に、スタッフ総出でカリカリやってますよ。あの道具がいいこの方法がいいって言いながら、結局自分の手が一番だー、とか言いながら」
と、妙に生活感溢れる会話をマネージャーHさんとしてしまいながら、最後はドルチェ。

「夜のコースにもお出ししているプレートですが」
と出してもらった長方形の小さなプレートの上には、無農薬のライムを使ったのだというとろんと甘いジュース、ヨーグルトのソースを敷いたムース、巨峰のグラニテ、焼き菓子、甘いキウイ、フローズンストロベリー入りのホワイトチョコ、とそれらがほんの一口分ずつ乗せられている。階段を上がってきたシェフのKさんと私がちょっと話している間に、私はほんのひと舐めしただけのジュースは消えてるし、キウイも消えてるし、チョコは瞬殺されてるし。息子がそれはそれは楽しそうに、「これは、チョコ〜♪」「これはジュース〜♪」とひとつひとつ片づけていたのだった。や、やめて、食べてもいいけど私にもちょびっと残しておいて……と息子と真剣に奪い合いしていると、本打ちのドルチェが登場。リキュールでほんのり風味づけしたプリンの上に軽くホイップクリームを乗せ、甘さ控えめのマロンクリームをモンブランのように絞ったもの。横にはバニラジェラートがこんもりと添えられている。たっぷり料理を食べた後でもけっこう胃袋にするする入る、淡い甘さの自然な味のドルチェだった。卵の味がしっかりするプリンが、妙にマロンクリームとよく似合う。

昼からこんなに喰っていいのか、というくらい食べて、過ごした時間は2時間近く。
私が息子とちんたら昼食を摂っている間に、ささっと数人でやってきて30分ほどでささっと去っていった一団がいた。先頭を歩く黒衣の女性は、ブランド音痴の私でもその顔と名前を知っている人だった。向かいにある自社ビルの上階に住まいがあるという、コシノジュンコさん。世界に名だたるコシノジュンコさん。顔は雑誌かテレビかで見知っていたけれど、本人を見るのは初めてだった。ていうか、"有名人"を間近に見たのは、本当に久しぶり。えーとえーと、アメリカンプロレスを見に行って、ハルクホーガンやアンダーテイカーを見て以来?(なんかちょっと違う)
そこにいて歩いているだけで、なんとも言えない雰囲気を周囲にふりまく人だった。すごい存在感だった。はぁ〜。

枝豆
サラダ
菊花のおひたし
ビール

よれよれと帰ってきたのは、もう5時近く。スーツなどの荷ほどきをする気力もなく、へなへなへなーとしばしぼーっとしてしまった。何しろ2時間経っても3時間経っても、胃の膨満感は消え去りそうにない。隨分しっかり食べてしまったものだ。3ヶ月ぶり近いCozima訪問だったので、Kさんがこれでもかと腕をふるってくれちゃったらしい。あんなにあんなに食べたのに、そんな価格でいいの?というお会計だった。いつ行っても驚くような料理を驚くような食材の組み合わせで、しかも同じものを重ねることなく食べさせてくれちゃうので、だからイタリアンというと他のお店にはなかなか行けなくなっちゃってるのだった。ある意味不幸だけれど、このうえなく幸せな事でもある。

かくして、
「ぜ、ぜんぜんお腹が空かないんですけど……」
と言いながら、息子と母の夕食を準備する。だんなは今日も仕事で遅くなるらしい。
とりあえず、私用にはサラダと枝豆とビール。残りもののマグロを出し、菊花のおひたしも用意。息子には冷凍御飯をチンしてふりかけ御飯にし、母には冷蔵庫に残っていたちまきをふかす。簡単でごめん、ごめんなさい、とぺこぺこしながら、ごくごく簡単な夕飯となった。お腹がいっぱいな状態というのは、ぺこぺこに空腹な時よりもやる気が出ないということを思い知った。

明日から連休。今回はイベント盛りだくさんの連休だ。