食欲魔人日記 03年04月 第2週
4/7 (月)
ちょっと久しぶりなイクラ御飯 (夕御飯)
インスタントクロワッサン(プレーン・ブリーチーズ入り)
ヨーグルト
カフェオレ

先日初めて試してみたPillsbury社Crescent Rolls。8個分入っているミニクロワッサンの生地を丸めてオーブンに放り込んで10分ちょっと焼くだけ、という手軽さ(と生地を巻いたりするちょっとした手間)がけっこう楽しく、しかもなかなか美味しいので密かに我が家でブームだったりする。この間WAL☆MARTに買い物に行ったときに
「もっと買っちゃえ〜」
「いっぱい買っちゃえ〜」
と、更に2缶買ってきたのだった。

半量はそのまま焼き、残り半量は前回使った残りのブリーチーズを詰めてみた。チーズが溶け出さないようにチーズバージョンは端をぎゅっと押さえて畳み、そしてオーブンへ。あとはカフェオレとヨーグルト。

8個のクロワッサンは、親子3人で食べるには丁度良い量だ。息子は2個で私とだんなが3個ずつ。簡単に作れる割には、けっこうまともなクロワッサンのサクサク生地になるのが嬉しかったりする。

鮭とちりめんじゃこの葱和え
御飯
麦茶

ここ数日こってり系アメリカ飯が続いていたので、そろそろ御飯と醤油味のものが恋しい気分。
今日の夕飯は"イクラ御飯"と決まっていたけれど、それさえ待ちきれないほどに、ちょっと日本の味に飢えていた。

息子も同様だったらしい。
そろそろお昼御飯の準備でも……と私が思い始めた少し前から、息子が
「おなかすいたなー。何かたべたいなー」
と台所を徘徊し始めた。一体何を食べたいと言ってくるのだろう、と興味津々観察していると、
「バナナ〜」
と調理台に置いてあるバナナを指さした後、
「ん〜……イチゴのカリカリかなぁ〜?」
と冷蔵庫の上を見上げている。かと思うと、今度は冷蔵庫をあけて
「ぎゅうにゅう〜、ちーず〜」
と指さし確認を始めた。

いいから早く冷蔵庫を閉めてくれぇ……と止めに入ったところ、
「あ!おかーさん!おさかなあるよ。しゃけだよ、しゃけ」
とラップをかけた器を取り出して私に差し出してきた。ああ……金曜日に作ったやつだ。大丈夫かなぁ、とくんかくんか匂いを確認し始めた私の背後で、「しゃけたべよう!ごはんたべよう!」と飛び跳ねる息子。バナナよりコーンフレークより、息子もそういう味が恋しかったらしい。

茹でた鮭とちりめんじゃこと刻み葱を混ぜ、塩と醤油と胡麻と胡麻油でじゃじゃじゃっと調味しただけのおかずは、混ぜ御飯とはまた違った感じに御飯とよく似合う。で、結局息子に「しゃけ!しゃけいっぱいちょーだい」と残り少ななおかずは大量に奪われちゃったのだった。私が食べたのは"鮭乗せ御飯"というよりは"鮭風味御飯"……。

鶏肉のオーブン焼き
冷や奴
枝豆
イクラ
わかさぎの佃煮
豆腐と油揚げの味噌汁
羽釜御飯
ビール(Corona)

そういうわけで、今日は和食デー。大学からの帰りに、だんなにイクラを買ってきてもらい、あとは残りものの鶏肉を塩胡椒だけしてさっぱりとオーブン焼きに。味噌汁には豆腐を入れて、残った豆腐は冷や奴。冷凍ものの枝豆を茹でたら、かなり日本チックな食卓になった。ロシア人のおっちゃん兄弟が経営しているガソリンスタンドのショップで買えるイクラは、今日もプチプチと美しい。味はついていないので、買ってきたら醤油と酒をひと垂らしして冷蔵庫に入れておく。

日本を感じる食事内容が多かった今日、日本の懐かしい人からメールが届いた。だんなの10年来の大友人、"M井さん"からだ。だんなが私の友人と仲良くなったり、私がだんなの友人と仲良くなったりということがけっこうある我が家だけど、とりわけM井さんは家族ぐるみな仲良しさんになっている。彼はとびきりの変人だ。本人も相当変だけど、メールの文体も相当変だ。いつもなんともいえない空気を漂わせるメールをくれるのだけど、今日のそれも格別だった。

「こちらは既に4月8日となってしまいました。お誕生日の3日後とあっては、祝福パワーも半減の3乗で8分の1に減少しているような気もしますが、ともかくお誕生日おめでとうございます。
「今少し待つば、息子殿(注:息子のこと)にも祝福の日ぞ来るとぞ思い、更にめでたきこととにて、四千里の彼方からなれど祝杯を仰がん。乾杯(三日遅れ)。」

云々かんぬん、と近況が記されて、「4月からはちょっと暇」という一文が。アメリカに来るなら5月の連休が最後のチャンス、と書かれていて、それに対して「はーやーくーこーいー」と全力で返事を書いておいた。だから早くいらっしゃいって。1ポンドのステーキ喰わせてあげるから。

「早ければ3週間後、遅ければ2ヶ月後の再会の日まで壮健なれ。2ヶ月後だったらおわびに焼き肉でもご馳走するので胃も壮健なれ。」
とか愉快な事書いてないで、遊びに来てよねぇ〜。

4/8 (火)
アンガスビーフのステーキ〜♪ (夕御飯)
自家製マロンケーキ
牛乳

だんなが
「今週末からビッグウィークだなぁ……」
とぼやいている。週末はMさんの結婚お祝いパーティー、来週月曜日は大学の研究室の発表担当だそうで、火曜日の夜はパーティー、水曜日は野球観戦で木曜からセントルイスに旅行。その次の週はプロレス観戦に息子の誕生日。それが明けるとすぐ試験でその直後の休暇も旅行で……と、要するに遊びの予定ばっかり(でもないけど、まぁほとんど遊びの予定……)だ。こんなに遊んでいたらバチがあたりそうな気がする。今後5年くらいは節制して節約して浴槽やトイレのタンクにペットボトルでも沈めつつ生活すべきかもしれない。

そんなわけで勉強も微妙に大変らしいだんなは、
「ドーナツでも買って大学行ってくるよー」
と早めに家を出て行ってしまった。私と息子はちょっと遅めの朝御飯を軽めに食べる。先日焼いた、栗の甘露煮入りのバターケーキをさくさく切って牛乳飲みながらテレビをつけ、だらだらと飲み食い。
息子よ息子、「ほら、セサミストリートだよ」という私の言葉に
「ちがうよおかーさん。セトゥリィーだよぅ」
とめちゃめちゃ本格的な発音で訂正するのは辞めてくれると嬉しいなぁ。もしかして私が我が家で一番英語がダメな人ですか?

バナナ

今週末の結婚式お祝い会に向けて、ちまちま進めていた準備が現在佳境。"クイズ・ミリオネア"もどきのアトラクションをやるというので問題表示用やオーディエンス用のそれっぽいボードを作り、音源を捜索。更に配布用の新郎新婦プロフィールペーパーの原稿を作って、あとは印刷して、ああズレた……と今日は一人常以上に真剣な面もちで作業していた。

「おかーさんおかーさん。ぼくはね、何か食べたほうがいいと思うなぁ……」
と、すごく婉曲な表現で"腹減った"と息子が訴えてきた時には、午後2時。ごめんごめん昼食すっぽかしててごめんと謝りつつ、とりあえずバナナを齧る。息子には鮭フレーク入りのおむすびを握ってやって、私はそのまま作業に復帰。
午後4時を過ぎる頃には、これ以上なく空腹になっていた。「昼飯は忙しくてカップラーメンだったよ……」というだんなも帰ってきて、一家揃って日も暮れてないのに極めて空腹に。冷蔵庫には大きなステーキ肉がある。今日の夕飯はステーキだ。

アンガスビーフステーキ
マカロニ&チーズ
千切りキャベツ
羽釜御飯
ビール(Longboard Lager)

我が家最寄りのスーパー、Harris Teeterで、おっそろしく安いアンガスビーフのボンレスリブが売られていた。元値12ドルくらいのところ、なんと5ドル50セントくらい。パックの中には分厚いステーキ肉が2枚、みっちりと入っていた。ラベルを見ると、1.4ポンドとある。
「……やっすーい」
「100gが……90セントくらい?」
「牛肉の値段じゃないよねぇ……」
と、おののきながら思わず買ってきてしまった。アンガスビーフは、黒毛牛なのだとか。ステーキやハンバーガーが自慢の店に行くと、けっこう頻繁に「当店はアンガスビーフを使用しています」という表示を見ることができる。明らかに、普通の牛肉を買ってくるよりも美味しい肉だ。

嬉しいねありがたいねと吟味して1パック選んでいる我が家の背後で、二の腕が素晴らしく太いマッチョなおっちゃん2人組がガバガバとその安売り肉をカートに突っ込んでいた。巨大なカートがアンガスビーフで埋まっていく。15パックほど籠に入れると、満足そうにおっちゃんらは去っていくのだった。私たちもステーキが好きだけど、やっぱりアメリカ人のステーキにかける情熱は数段上かもしれない。

今日、挙式をしたハワイから戻ってきた留学生仲間、Mさん夫妻からお土産でもらったハワイのビール"Longboard Lager"を飲みながらステーキな夕御飯。1人分300g以上はあるステーキは、かなりのボリュームだ。あまりに空腹で添え物を準備する余裕もなく、冷蔵庫に残っていた千切りキャベツと、買い置きのマカロニ&チーズ(マカロニ茹でたら牛乳とマーガリンとチーズミックスを入れて混ぜるだけ)を添えた。割とこってり味のハワイのビールは、なかなか好み。だんなが焼いてくれたステーキは、今日はミディアムレアな焼き加減。バターと醤油を最後にジャッと絡めた肉は、塩味もちゃんと効いていて今日も美味しかった。この迫力の一皿の原価がたったの3〜4ドル。そのへんでハンバーガー食べるより安いよねぇ、とニヤニヤしながら食べてしまった。

ところで、私も参加している巨大日記リンク集"日記才人"が、数日前にリニューアルオープンした。リニューアル寸前にちょこっとだけテスターとして参加していたので新機能の存在は概ね把握していたのだけど、始まってみるとこれが妙に面白い。何人かにいそいそとメッセージ(日記才人のサーバー内でやりとりする一言メール機能)を送ってみたり、"マイ日記逆探知"を眺めてみたり。ああ、いつも空メールくださっている方のIDだありがとうありがとう、ああ、この方ともお互い長く日記を見続けているなぁ……と喜んだり感動したりしているうちに、まさかまさかこの日記に興味を持つことはあるまいと思っていた憧れの日記書きさんのIDを発見して、のたうちまわることに。
「だんなっだんなっだんなっ○○さんの名前が〜っ!リストにあるぅぅぅぅ」
「……おー、ホントだ。それは嬉しいねぇ」
「ダメだよ、もう照れちゃって、あたしゃ日記が書けないよ……。例えるなら、"学生時代の恩師に自分のページが見つかった気分"と申しましょうか」
「まぁまぁ。落ち着いて。茶でも飲みなはれ」
と、麦茶一杯飲み干して今日の日記をつけているのでありました。ああもう、どうしよう。明日から日記を敬語に変えるとか。(うそです)

4/9 (水)
カツカレー♪ (夕御飯)
冷やしたぬき蕎麦
抹茶入り玄米茶

たまには和風な朝御飯も恋しいねということで、昨日のうちから
「明日の朝は日本蕎麦だ!」
「ざるそば、いいねぇ〜♪」
とだんなと話し合っていた。……が、今日は激寒。つい昨日あたりまで半袖着て歩いていたのに、今日の最低気温は4℃くらいであるらしい。

それでも、一度食べたいと思っていた日本蕎麦(しかも冷たいの)への情熱は簡単に冷めるものでもなくて、
「……うう、寒い」
「寒いけど、蕎麦は食べたい……」
と震えながら湯を沸かし、日本から年末に送ってきてもらった蕎麦を茹でる。乾麺くらいならこの地でも容易に買うことはできるけれど、あんまり美味しいものがなかったりするのだった。送ってもらった蕎麦は大変な貴重品だ。

茹でて水で締めた蕎麦を皿に盛りつけ、蕎麦猪口は手元にないのでいつも味噌汁を飲んでいる器にだしを入れる。蕎麦の上に揉み海苔を散らしたところで、そういえば以前天ぷら揚げたときに作っておいた揚げ玉があるじゃない〜、と冷凍庫から自家製揚げ玉を取り出した。これで急遽"ざるそば"は"冷やしたぬき蕎麦"にグレードアップ。朝からちょっと嬉しい食卓になった。

それにしても、今日は本当に激寒だ。もうしばらくは着ることはあるまいと思っていた長袖の薄手のセーターまで出してくることになった。

Nashville 「Chez Jose」にて
 Gourmet Fajita Burrito with Steak $5.55
 Quesadilla (Steak) $5.95
 Itty Bitty Quesadilla (Cheese only) $3.25
 ……を一家で食べてみた。うまー。
 

今日も、留学生仲間Mさんの結婚祝いパーティーの仕込みでぱたぱた。午前中は特に用事がないというだんなと一緒にOffice Depotへ行って1枚97セントのカラーコピーをがちゃこんがちゃこんとやりまくる。あとは研究所のコピー機で裏面に白黒印刷……と思いつつ、しかし研究室のコピー機は今ひとつ画質が綺麗じゃないことが判明して今度はKinko'sで白黒コピー。
この段になって判明したことだけど、アメリカでは"A4サイズ・A3サイズ"なんて用紙は全然全くメジャーじゃないのであった。売られている紙も、コピー機のカートリッジも、メインは"レターサイズ"と呼ばれる、A4よりちょっと幅が広くちょっと高さが少ないもの。レターサイズを横に並べた大判もあるのに、A4の存在はものすごく希薄だった。さ、さすがアメリカ。

昼御飯は、最後に作業したKinko'sの裏にあったファーストフードチックなメキシコ料理屋さんで。私たちが来たのは今日が初めてだったけれど、留学生仲間から"なかなか美味しくて"という噂を聞いていた。店内の壁には「この町の"ベストブリトー"に選ばれましたよーん」という額が飾られており、丁度ランチタイムな店内はスーツを着たサラリーマンなどでけっこう混み合っている。レジで注文して金を払い、ドリンクはセルフサービスでとってきて席で待つと、ワンウェイ容器に入れられた料理を持ってきてくれる。料理はタコスよりもブリトーがメイン。"Tortilla Salad"、"Quesadillas"などという料理もメニューに並ぶ。
「このね、"ケサディーラ"とかいうのがけっこう美味しいらしいよ……」
「……ほー。じゃぁ、それ頼む?私はブリトー食べてみる」
とレジでやいのやいの相談しながら注文した。

ブリトーは、柔らかく焼いた小麦粉の皮で具をぐるりと巻き、アルミホイルで包んだもの。熱いチーズとワカモレ(アボガドのディップ)と共にグリルチキンが巻かれている。更にオプションで牛肉や海老を加えたりもできる。ステーキ入りにしてもらったブリトーは、一見ごろりと小さく見えたけれどずっしりと重かった。端から齧ると、いきなりアボガドディップが大量に口に流れ込む。アボガドにまみれて肉がざくざく出てきて、そのうち熱いチーズも断面に見えてきた。見た目を遙かに越えるボリュームだ……というより、食べても食べても短くならない。

目の前のだんなと、横に座る息子がつついているのは"ケサディーラ"。直径30cmくらいのトルティーヤを薄焼きピザの生地のようにパリッと焼き、間にチーズや具を挟んで半月型に畳んだもの。息子はチーズだけの具で、だんなはそれにステーキを加えたものだ。シンプルだけど、これがすこぶる美味しい。アボガドのニトニト感にちょっと飽きた私は
「あー、それ、ちょっとだけ、ちょっとだけちょーだい」
と息子の料理を奪い、更にはだんなと「ケサディーラとブリトー、半分ずっこにしよう」と取引することでやっと全部を食べきることができたのだった。ブリトー、おそるべし。……ていうか、アボガドディップ、おそるべし。

カツカレー
かぼちゃのスープ(出番なし)
福神漬
ビール(Corona)
チョコチップアイスクリーム

今日は水曜日、トンカツの日。何も毎週食べる必要は全くないのだけど、留学生仲間うちで人気沸騰中の南部料理屋さん"Copper Kettle"の水曜日のおかず、フライドポークチョップをなんだか毎週食べている私たちだった(更にあと2人ばかり毎週食べている人を知っている)。
数日前、だんなが目をきらきらさせて提案してきたことによると
「奥さん!火曜日の夜あたりにカレーを仕込んでおくとですね。なんと、"カツカレー"が実現可能です!」
だそうなのである。私は正直、「んな、毎週トンカツ喰わなくても……」とそろそろ思い始めていたのだけど、カツカレーとなったら話は別だ。猛烈な勢いで賛成したところ、昨日のうちにだんながカレーを仕込んでくれた。豚肉たっぷりポークカレーだ。

で、今日の夕方、フライドポークチョップを人数分テイクアウトしてきてくれて、「カレー、食べる食べる〜」とやってきたのが留学生仲間のIさん。店で見るカツも巨大だが、我が家で改めて眺めるカツはこれまで感じていた以上に巨大だった。御飯よそってカレーかけて、カツを乗せるともう御飯が見えない。どころか皿から溢れそうだ。
「この店のカツ、こんなにでっかかったのか……」
「いつも"食べ応えがあるなぁ"とは思っていたけど……」
「こりゃすごいや」
などと言いつつ、ビール片手に御飯を"発掘"するような体制でカツをよけつつカレーライスを食べた。肉の厚さ2cmはあろうかというトンカツは、今日も衣はサクッと、肉はふわっと、非常に良い感じだ。ただただでかい。

そして、せっかく準備したかぼちゃのスープの存在さえ忘れ、ひたすらカツカレーを平らげた一同だった。私やだんなは、カツの存在感のあまりの大きさに、カレーをお代わりすることすらできなかった。ビールを飲み干して少しした後に
「あぁ!そういえばスープも作ったんだった!」
と思い出したものの、そのころには皆揃って「そんな隙間、胃袋にないよ……」という状況に陥っていた。

食後は軽くチョコチップのアイスクリーム。カレーは改めてまた明日あたりに堪能することにしよう。

4/10 (木)
Salathai(Nashville)にて、バジルと鶏肉の炒め飯 (昼御飯)
ディナーロール
カレー
かぼちゃのスープ
牛乳

鍋いっぱいにカレーがあるというのは嬉しいことだ。昨夜作ったカレーはたっぷり10人前以上あったので、大人3人子供1人でがつがつ食べてもまだ充分残っていた。朝からカレーライスというのもちょっと芸がないかなと、学校給食のように小型のボウルによそってパンと一緒に食べてみる。"今日の献立:カレーシチュー、かぼちゃのスープ、パン、牛乳"なんて、本当に給食のようだ(汁物が2つ重なっているので、"りんご入りコールスローサラダ"あたりがスープの代わりに欲しいところだけど)。

スーパーで、1ドル引きになっていたのを買ってきたパンは、生地を三つ編みにしたような外見のぼてっと大きなふわふわなもの。半量ほどをオーブンで軽く温め、適当に皆でちぎりつつ齧った。パンをカレーに浸して食べるというのも、それはそれで旨い〜。
こういうのを食べると、食後には冷凍みかんが恋しくなっちゃったり。

Nashville 「Salathai」にてランチセット $6.95
 春巻
 ココナッツスープ
 バジルと鶏肉の炒め with ライス
 タイアイスティー $2.00

これまで大学に出かけるとそこで昼御飯も食べてくることが多かっただんなだけど、最近は昼御飯を食べるためだけに家に帰ってくるようになった。一人暮らしだったMさんが結婚して奥さんと2人で暮らし始め(新婚さんなので当然、昼は家に帰って一緒に御飯を食べている)、Iさんは「ヤバイよ、太っちゃったよ、しばらく外食控えなきゃ」とつきあいが悪くなり、Hさんも緊縮財政だからと家で食べるように……と、仲良しさんと軒並都合が合わなくなってしまったらしい。
「そういうわけで、今日はタイ飯屋に行きましょう!」
と、帰ってきただんなに誘われた。

大学近くの大通り沿い、なかなか良いロケーションにあるタイ料理屋さんが「Salathai」。留学生仲間が揃ってお世話になっているタイ人のおっちゃんが経営している「PK」という名の自動車整備工場があるのだけど、そこのオーナー、サムさんの兄弟が経営しているレストランであるらしい。なかなか旨いらしいという噂もあり、一度行ってみようと言っていたところだった。

ランチには、6.95ドルのセットメニューがある。単品価格が5ドルちょっとのアラカルトメニューから1品選び、それに春巻とスープがついてくるらしい。スープはレモングラススープかココナッツスープの2種類がある。

私が頼んだのは、ココナッツスープとバジル肉炒めのご飯添え。「辛さは?」と問われて「え……えーと……(メニューを確認)マイルドで」「肉は?チキンとビーフと……」「あ、チキンで」と、あれこれ細かい注文も加え、給仕のお兄ちゃんは厨房に戻っていった。飲み物は、普通のアイスティーより50セント高い、"Thai Iced Tea"なるもの。一体どんなものが来るのかと思っていたら、コンデンスミルクがたっぷり入ったアイスティーがやってきた。お茶自体もこの地で普通に飲むものとはちょっと風味が異なる。独特な甘い香りが漂う、そのくせカラッとした後味のお茶だった。これにコンデンスミルクが入ると、ほの甘く柔らかい味になって期待以上に好みな味だ。

春雨がたっぷり入った、カラリと揚がった春巻には蜂蜜ベースのような甘いタレが添えられてきた。スープは鶏肉入りの、ココナッツの香りがぶわんぶわん漂ってくるもの。だんなの前にはトムヤムクンに似た甘辛酸っぱい、大量のレモングラスと鶏肉が入ったスープがやってきている。
そして、楕円の皿にこんもり盛られたご飯とおかず。タイバジルがどっさり入った炒め物は鶏肉とピーマンと菜の花入りで、ご飯に似合うこってりした甘辛味。油たっぷりの炒め物はテラテラと光り、口に入れると火傷してしまうほどのアツアツっぷりだった。下手な中華料理店でアメリカ〜ンな味の炒め物を口にするよりは、よほど見知った味がする。見た目以上にボリュームのある昼御飯で、すっかり満腹になって帰宅したのだった。

3日目のカレーライス ゆで卵乗せ
福神漬
ビール(San Miguel)

充実した昼御飯を食べたので、夕飯は控えめにカレーの残り。卵を茹でてスライスし、皿にたっぷりご飯とカレーを盛りつけて茹で卵を並べる。あとは、ビール。

「3日目のカレーって、美味しいですよね」
「ていうかさ、"家カレー"って美味しいよね。そりゃカレー専門店のカレーもそれはそれで美味しいけど、別の次元で」
「家カレーは、"日に日に旨くなる"という過程がたまりませんよね」
などと、家カレーについて分析を加えつつ、残ったカレーは結局これで全て食べきってしまった。カレーうどんにするほども残りゃしない……。(←それはそれで、ちょっと悲しい)

4/11 (金)
Noshville(Nashville)にて、フレンチトースト (朝御飯)
Nashville 「Noshville New York Delicatessen」にて
 French Toast $5.95
 Grill Onions $0.95
 Lemonade $1.65

今日は私一人でかなり寝坊。起きると、息子は一人コーンフレークを食べ終えたところだった。だんなが、
「もう起きるなりさ、"ぼくはおなかがすいたなぁ〜"って、大騒ぎだったんだよ」
と苦笑いしている。ああ、もうセサミストリートが終わってしまった……(ということは、午前10時)。

朝食を食べるにも半端な時間になってしまったので、前々から気になっていた"Noshville"という店に行ってみることにした。ナッシュビルにあるノッシュビルという店。何だか非常に分かりづらい。
休日の午前中に行ってみたら長蛇の列で入れなかった人気の店だけど、さすがに平日の午前10時過ぎは席に余裕があった。それでも半分以上の席が埋まっている状態だ。

お勧めしてくれた友人によると、スモークサーモンとケッパー入りのスクランブルエッグやフレンチトースト、ニューヨークチーズケーキあたりが美味しいらしい。朝食用メニューには、オムレツをはじめとした卵料理各種が並んでいる。スモークサーモンとクリームチーズ、ベーグルのセットなども載っている。
私はフレンチトーストと、塩気のあるものが恋しくてサイドディッシュのグリルオニオン。だんなはコーンドビーフ入りのオムレツと、ハッシュドポテト。いかにもアメリカの田舎町のダイナーでございます、という("ツインピークス"あたりにナチュラルに登場しそうな感じの)店内はボックス席が多い。ほどなくやってきたフレンチトーストは、デニッシュ生地にたっぷりと卵液が染みこんだものだった。ボトル入りのシロップもやってきて、4切れあるパンは厚切りでボリュームありまくり。小皿に盛られたグリルオニオンは、うっすら茶色になるまで炒めた、味つけは塩胡椒だけのシンプルな玉ねぎ料理だった。小判型にまとめて炒められた(というか、"揚げられた"というかな)ハッシュドポテトも素朴な味だ。

確かに人気があるかもなぁ……と思えるメニューの充実ぶりとボリュームだったけれど、だんなのオムレツは今ひとつ美味しくなかった様子。かなり塩気が効いているはずのコーンドビーフが今ひとつ味気ないものだったようで、オムレツ全体も何だかぽやんとした味だったようだ。
「ん〜、オムレツはいまいち……」
と唸りながらフォークとナイフを操っていただんなだけど、「ん、今度はアレだな。パストラミサンドだな」と次回への抱負も口にしていた。私は次回、スモークサーモンにチャレンジしようと思う。

だんなの研究室にて、スタッフMさんの誕生日パーティー
 イタリアンクリームケーキ
 ポテトチップス・オレオ
 スプライト

明日は、だんなの所属する研究室のスタッフMさんの誕生日。研究室は明日お休みということで、今日のうちにボスA先生の音頭のもと、小さなバースデーパーティーが開かれることになった。ケーキが準備され、小さな花束が準備され、午後3時、会議室に紙コップやスナック菓子が準備された。たまたま今日が誕生日だというA先生の講義を選択している女子学生(←見事なナイスバディで留学生仲間がいつも鼻の下を伸ばして眺めている……らしい)もやってきて、賑やかな会になった。

テーブルの中央に置かれたケーキは直径30cmほど、高さ15cmほどの円形かつ巨大かつ白色の物体。"Happy Birthday"と真っ青なクリームで文字が書かれており、こってりと甘ったるいねっとりクリームの内側にはナッツ入りのシフォンケーキっぽい生地が入っていた。生地はさほど甘くないけれど、クリームはガツンと脳天にくるアメリカンな味のもの。砂糖にバターを混ぜてねっとりするまで混ぜ合わせたような、アメリカにやってきた直後にA先生の誕生日パーティーで洗礼を受けたケーキと似たような味がした。ああ、アメリカの食べ物、美味しいものもとても多いと知ったけれど、このクリームだけはやっぱりちょっと2歩ばかり引いてしまう。ポテトチップの塩気が恋しくて、ケーキの皿片手にポテトチップばかりぽりぽりぽりぽり食べている私だった。

丸鶏のダッチオーブン焼き じゃがいも・にんじん添え
グリーンサラダ
大根の葉の塩揉み
羽釜御飯
ビール(Abita Ambar)
抹茶入り玄米茶

4ポンドの丸鶏が、なんと3ドル80セントくらい!……というわけで、先日、鶏を1羽買ってきた。凝った料理にしようかなぁ……とも思いつつ、結局シンプルにダッチオーブンで蒸し焼きに。腹の空洞には薄皮を剥いたにんにくを1株分詰め、これでもかと腹の中と皮に塩胡椒し、カンカンに熱したダッチオーブンで両面こんがり焼き付けてから火を落として蒸し焼きにしていく。最後30分くらいの段階でじゃがいもとにんじんを放り込み、野菜に火が通ったらできあがり。コンロにかけたらほぼ放置状態でできあがる簡単料理だ。

あとは、今日オーガニックスーパー、Wild Oatsで買ってきたサラダ用ミックス野菜にルッコラを混ぜたサラダ。今日は葉つきの小ぶりな大根が売られていたので、それも買ってきた。葉は細かく刻んで塩もみしてから湯通しし、更に塩振ってちりめんじゃこと胡麻を混ぜ合わせて御飯の友に。丸鶏のグリルと大根の葉の塩揉みが並ぶ光景は、なんとも似合わない映像になってしまったけれど気にしない。

丸鶏をさばいて食べるのは楽しい。
「ここが手羽〜」
「背中がけっこう美味しいよね」
とか言いながらフルーツナイフを使いながらばさばさと解体していく。ももの部分は"Dark Meat"と呼ばれ、どうもアメリカでは人気のない部位らしい。胸の部分は"White Meat"。私たちはもも肉が圧倒的に好きなのだけど、スーパーで生肉を買うときも、グリルドチキンを店で頼むときも、もも部分は胸より安い。私たちにとっては嬉しいことだ。

たっぷり詰めたにんにくは、鶏の腹の中で栗のようにほこほこになっていた。鶏と共に鍋に詰めていたじゃがいもやにんじんは、鶏から染み出た肉汁を吸って良い感じに煮えている。
でもやっぱり、近所のスーパーで買ってきた若鶏は、独特のブロイラー臭さが鼻についた。このところ、オーガニックスーパーでばかり鶏肉を買っていたので、余計に匂いが気になってしまう。染み出る油も、これでもかと大量だ。
思いの外、こってり味になった鶏肉を腹一杯食べた後は、大根の葉の塩揉みをたっぷり散らした御飯をさらさらと食べる。
「これ、お茶漬けみたいに食べてもいいよね」
「ほうじ茶かけたりね」
「……でも、ほうじ茶、うちに無いし」
などと言いつつ渋い味のものを食べた後は、玄米茶を一杯。

4/12 (土)
ベトナム飯屋で、バーベキューポークサンドイッチ (昼御飯)
Nashville 「Miss Saigon」にて
 生春巻
 バーベキューポークサンドイッチ
 海老とカニカマ入り2色麺
 ココナッツジュース

今日は、留学生仲間Mさんの結婚お祝いパーティー。仕込みはほとんど完了したけど、何かとバタバタしていたので、早めの昼御飯をベトナム料理屋で済ますことにした。
"Miss Saigon"という店がある、ちょっと郊外のその一角は小さなベトナム人街のようになっている。ベトナム食材店もあったりして、そこでは春菊が買えるという噂だ。すっかり廃れた人気のない小さなショッピングモールの中にその"Miss Saigon"と、もう一軒のベトナム料理屋さん"Kien Giang"があるのだけど、人気があるのは後者のようだ。私たちは密かに前者の方が好き。ガランとした殺風景な店で、厨房近くの席にはいつもやる気なさげなベトナム人のおっちゃんが数人だらだらとたむろっていたりする。客はちらちらとベトナム人が来る程度で、全然流行っているように見えない。でも、割とこの店が好きなのだった。

ココナッツの透明なジュースを飲みながら、生春巻をつつく。春雨たっぷり、海老や豚肉、バジルや香菜たっぷりのやたらと太い生春巻だ。息子用にバーベキューポークサンドイッチを注文したやったものの、
「ぼくは、おそばの方が食べたいんだよぅ……」
と言うものだから、サンドイッチは私とだんなで食べることになり、麺料理のかなりの分量を息子に奪われることに。

だんなが頼んだ牛肉のチャーシュー入りの汁麺も、私が頼んだ魚介入りの汁麺も、どちらもアジア臭溢れる味で美味しかった。海老とカニカマがどっちゃり浮かぶ薄茶色のスープの底には卵麺とビーフンのような半透明麺の2色の麺が沈んでいる。別皿には大量のモヤシやタイバジル、香菜や唐辛子、ライムなどが盛りつけられていて、それらを好みでスープに放り込んで食べる。

思いの外美味しかったのがサンドイッチ。フランスパンのような円筒形のパンに切込が入れられ、豚肉と共にきゅうりや人参、そして大量の香菜が挟まっている。テラテラ光るバーベキューポークは想像していたジャンクな味ではなく、素直な感じの甘辛いものだった。懐かしい味すらする。
「ベトナム行ったら、普通にこういうの売ってるのかな?」
「だとしたら、食べてみてぇ〜」
などと言い合いながら店を後にした。

帰宅して、撮ってきたこのお店の写真をパソコンにコピーしていたところ、息子が覗き込んで
「あ!うどんやさんだ」
と指さしてくる。
「違う。これは、ベトナム料理屋さん」
「……ラーメンやさん?」
「だからちゃんと人の話を聞きなさい。べ・と・な・む・や・さ・ん」
「でとまんやさん?」
「べ!と!な!む!」
「べ・と・ま・む?」
……この間、やっと「えべれーたー」が「エレベーター」に直り、「ぱんぽぽ」が「たんぽぽ」になったところだけど、「ベトナム屋さん」はしばらく難しいらしかった。
まぁ……ラーメン屋さんでも、いいか。

Nashville 「New Orleans Manor」にて、留学生仲間Mさんの結婚パーティー
 マッシュルームと蛙のフライ
 生牡蠣
 オイスターロックフェラー
 シュリンプカクテル
 プライムリブステーキ
 帆立のハーブ焼き
 サラダ
 チーズパン
 「Alpha Bakery」の特製ウェディングケーキ
 ピーカンパイ
 スパークリングワイン
 アイスティー
  などなど

午後6時半から、空港近くの魚介料理屋さんNew Orleans Manorでパーティーが始まった。19世紀に建てられたマナーハウスをレストランに改築した店で、玄関ホールにブッフェ台が並び、部屋の間取りや螺旋階段もそのままにテーブルが並んでいる。料理は基本的にブッフェものだけで、生牡蠣や蟹、サーモンなどの魚介が中心だ。プライムリブステーキなどもあって、どれもなかなか美味しい。

大小の部屋があるのでパーティーも容易にできそうだと、下見した結果このレストランにしたのだけど、ブッフェ台からほど近い1階の奥まった小部屋 に良い感じにテーブルセッティングがされていた。デザートも料理の中には入っているけれど、
「20人くらいいるし、ケーキ作ってもらって持ち込もうか」
「そうそう、披露宴やってないっていうからケーキカットもやらせちゃおう」
と、苺の白いケーキをお気に入りのパン屋さんAlpha Bakeryに作ってもらって持ち込んだ。パーティー中にやるイベントの小道具も揃え、いざいざパーティー。A先生夫妻やスタッフMさん夫妻にも来ていただいて、19人のパーティーになった。

料理は、オーブン料理などはお店の人がテーブルまでできたてアツアツを持ってきてくれる。2種のフライがやってきた後は、オイスターロックフェラーにチーズを乗せて焼いたパン。前回、魚か手羽か今ひとつわからなかった長さ7cmほどの細長いフライは、今回になって「蛙の足だった」ということが判明した。鶏にしては骨が細くて華奢だし、魚にしては小骨がない。ああ……蛙でしたか……と、あまり抵抗なくそれでもぽりぽり食べている自分に自分で内心驚いてみたり。

分厚い肉がグレービーソースに浸っているプライムリブステーキや、山ほどの生牡蠣、海老に蟹、皆でこれでもかとバリバリ食べた。30人分ほどのサイズだった巨大なショートケーキも、半分以上が綺麗になくなり、残りは女性がいる家で均等に分配。余興もおおむね順調に終わり、2時間半ほどわちゃわちゃと騒いだ楽しい会だった。お祝い事は、楽しいねー。

4/13 (日)
久しぶりに、自家製ピザ
「Alpha Bakery」のカレーパン
牛乳

どんちゃん騒ぎ明けての翌朝。今日は9時までだらだらと寝て過ごし、朝御飯は昨日、ケーキを受け取りに行ったついでにAlpha Bakeryで買ってきたカレーパン。いつもは菓子パンを1人あたり2個買ってきてしまって朝から満腹になることが多々だったので、今日はカレーパン1個だけ。オーブンで表面がカリッとなるまで温めてから齧る。

このパン屋さんで作ってもらったウェディングケーキは、昨夜大好評だった。スポンジの間にスライスした苺とクリームを挟み、表面を真っ白にクリームでコーティングして苺を飾った、シンプルなシンプルな四角いショートケーキだ。表面にお祝いメッセージを書いてもらったのだけど、それも赤い色の、苺ジャムと思われる綺麗な色。アメリカのケーキにありがちなねっとりこってりしたバタ臭さは皆無だ。
「ああ〜、懐かしい味のケーキだ」
「やっぱりこういう優しい味のが美味しいよね」
と、さんざん肉や魚を食べた後だったのにも関わらず、かなりの分量がパーティー時に消え失せ、
「残ったケーキ……お裾分けしたら持って帰ります?」
と声をかけた女性陣全員が「もちろん!」と嬉しそうに持ち帰っていった。
来週の息子の誕生日にも、ここのショートケーキを買ってくることに決定〜。

だんな特製 腸詰入り炒飯
アイスプーアル茶

今日は一日だらだらする予定だったけれど、
「おニューのジーパンを履いてみよう」
と着替えただんなが、
「いかん、これはブカブカだった……おかしいなぁ、サイズちゃんと見て買ったのに」
と困惑している。よく見たら、ポケットの中の生地が破れていたりもしたこともあって、
「交換じゃ交換じゃ」
「返品じゃ返品じゃ」
「縫いつけられていた紙とか取っちゃたけど平気かなぁ……」
と、レシートを持ってWAL☆MARTに速攻向かった。

アメリカの小売店は、消費者のこちらが心配してしまうほどに返品制度が充実している。プレゼント用の品にもそれ用の、値段が記されていない返品札をお店側でくれ、プレゼントされた側がその商品に不備を見つけたり気に入らなかったりした場合には、購入店でもれなくお取り替え・返品ができたりするのだった。購入当日でなくとも、かなりの日数が経っていても、たとえ使用感がでてしまったものでも、「不良品だった」と言えばほとんどの場合、返品に応じてくれる。今日のジーンズも、全く問題なく全額返金され、別のジーンズを買ってきた。
この制度を悪用して、パーティードレスを購入してパーティーに着ていった挙げ句、「明日着ようと思っていたけど不備があったわぁ」などと言って返品するような人もいる……らしい。

買い物に行った帰り道、タコスでも喰おうかケンタに寄ろうかそれともマクドか、などと言いながら高速道路にはのらずに下の道路で帰ってきたのだけど、結局意見がまとまらぬまま家についてしまい、だんながチャーハンを作ってくれることになった。腸詰とハムを入れた、葱と卵のチャーハン。腸詰の独特な甘辛さが良いアクセントになった、こってり味のチャーハンだった。
今日は半袖で汗ばむほどの陽気だったので、傍らにはアイスプーアル茶。独特の埃臭さというかカビ臭さというかがあるプーアル茶だけど、アイスにして飲んでもなかなか独特で美味しい。暑い日には冷たいお茶が炭酸飲料よりよっぽどさっぱりしている。……でも、アメリカにはお茶のペットボトルなどは存在しないのだった。紅茶だって、液体のものはほとんど全てが甘ったるい。
「今度旅行に行くときはさ、クーラーボックス持ってってさ」
「あー、それで、ガロンボトルの水を買う、と」
「そうそう、そこに麦茶パックを沈めてですね」
「国立公園で青い空の下、麦茶!」
「ああ、もうサイコー!麦茶!」
「間欠泉吹き出すの見ながら麦茶!」
「デビルズタワー見上げながら、麦茶!」
と、麦茶麦茶騒いでいる私たち。

自家製ピザ4枚
 照り焼きチキン・葱・マッシュルーム・ゆで卵・モッツァレラチーズ
 サラミ・マッシュルーム・ゆで卵・トマト・ルッコラ・トマトソース・ミックスチーズ
 照り焼きチキン・葱・マッシュルーム・ゆで卵・ルッコラ・モッツァレラチーズ
 サラミ・マッシュルーム・ゆで卵・ルッコラ・トリプルチーズ
ビール(Corona)
アイスティー

一昨日の丸鶏のグリルの残りがあるので、これを使ってピザを焼こうということに。ほぐした鶏肉を醤油と味醂を煮詰めたタレにざっと絡めれば、良い感じの"照り焼きチキンピザ"の元になってくれそうだった。ルッコラ買ってー、トマト買ってー、チーズも買ってー、と材料を準備し、
「けっこう分量ありそうだし、Iさん、呼ぶ?」
と、近所にお住まいの留学生仲間、Iさんを呼んでみた。ここ8ヶ月ずっと同じ住宅内に住むMさんとつるんでいたIさんだったけれど、何しろ今はMさんが結婚して新婚生活が始まってしまったため、何かと寂しい夕食を送っているのではないかという心配がちょっとあったり。先日覗いた彼の家の冷蔵庫には水とプチトマトしか入っていなくて頭を抱えたことを思い出す。
「くる?」
と誘ったら、
「うん、行く行くー。ありがとー」
と嬉しそうにやってきた。

焼いたピザは、4枚。ピザ用のオーブン台が1つしかないので、1枚食べている間にせっせと次のを焼いていく。
最初は甘辛味の鶏肉をメインに、マッシュルームとゆで卵を散らし、青葱の刻みをぶわっと散らした後にモッツァレラチーズを散らしたもの。2枚目はトマトソースを敷いた上にソフトサラミを並べ、卵とトマトとマッシュルームとピザ用ミックスチーズ。食べ際に刻んだルッコラをどかんと積み上げる。3枚目は1枚目と似たものにして、その頃には皆、けっこう満腹になってきていた。アメリカンなどっしりもちもちパン風生地もたまに食べる分には悪くないけれど、自家製のパリパリの皮は代え難い美味しさがある。こうやって自分で焼いていると、「買ってくるピザって、すんごい量のチーズ使ってるんだなぁ……」という現実も見えてきて背筋がちょっと寒くなったり。

4枚目は、ちょっとシンプルに塩味のピザ。サラミを散らし、少量残っていたマッシュルームとゆで卵を散らし、でもチーズは多めに。塊で買ってきたモッツァレラチーズを散らした後、袋入りのシュレッドモッツァレラをこれでもかと表面を覆うようにこんもりと盛りつけて焼いた。
「ああー、この外見は、アレだね。アメリカのピザみたいだ」
と、既に1枚分以上のピザを平らげていたIさん、嬉しそうに最後のピザをもりもり食べていた。たっぷり2掴みほどのチーズを乗せたのに、それでも市販のピザよりはかなりさっぱりめなチーズの存在感だ。市販品クラスを目指すには、どうやら4掴み以上を盛らなければいけないことに気付かされ、今後も自家製でいこうと密かに誓った私だった。