食欲魔人日記 01年01月 第2週
1/8 (月)
だんな特製牛テールスープ (夕御飯)
冷凍もの処分会
 冷凍ピラフ
 冷凍マカロニグラタン
アイスカフェオレ

目覚めると11時。慌てふためいて洗濯機を動かし、掃除機をかける。朝御飯は、
「引越前に冷凍もの、喰っちゃわなきゃね。」
「……そだね。」
と、冷凍庫からエビピラフとエビグラタンを取り出した。バターでピラフを炒め、グラタンはオーブンでしっかり焦げ目がつくまで温める。

やや冷凍臭い匂いのあるピラフに、いかにもな冷凍食品味のマカロニグラタン。ピラフにグラタンをかけちゃったりして「ドリア!」などと言いつつ怪しげな朝食を食す。ああ、でも美味しいんだ、こういうの。困ったもんだ。

"冷凍食品3割引"なんて札をスーパーで見てしまうと、ついつい買ってきてしまう我が家である。「そばめしだ!」「ピラフだ!」とときめいて買ってしまうは良いけど、実のところそれほど消費されていないのであった。まだ2袋ある冷凍ポテトはどうしましょう。とりあえず揚げてもりもり喰うことにしましょうか。

だんな特製カレーうどん
アイス烏龍茶

食べなきゃ食べなきゃと思いつつ、とうとう5日目のカレーと化したブツがコンロにかかっている。幸いまだ痛んでいない。時期は熟したと、だんながカレーうどんにしてくれた。

鰹節と昆布でしっかりだしを取り、カレーの鍋にぶっこんで、醤油と味醂で味をつける。残り少なくなったカレーで充実したご飯が作れるという利点の他に、カレーのこびりついた鍋がすっかり綺麗になるという更なる利点もある。だんなの実家では、カレーの最終日はカレーうどんにしなければならないという家訓まであるらしい……というのは冗談だけど、だんなの家のその文化が、この家にも着実に根付いているのであった。カレーうどん、美味しいしねぇ。

肉やじゃがいも、にんじんがまだごろごろと入った豪華カレーうどん。今日のはやや薄味ではあったけど、煮込まれたカレー味のうどんはしみじみ旨い。

だんな特製ビビンバ
だんな特製牛テールスープ
アイス烏龍茶

昨日、100g128円というイカした値段の牛テールを発見し、買ってきた。普通は100g300円くらいしちゃうのである。半額以下となったら、ざくざく買ってテールスープにしなければならない。2包み購入し、1kg以上あるそれをだんなは下処理してスープに仕立ててくれた。

本日、3食だんながおさんどんしてくれている。私は、実は料理と同じかそれ以上に整理整頓が好きなのである。散らかっている状況を綺麗にするのがたまらなく好きな私は、当然引っ越し荷物の梱包も大好きなのであった。今日は一日中、家財の箱詰め作業をしている私。だんなは一日、おさんどん。す、すみません。ぺこぺこ。……でも、良く考えたらだんなは整理整頓より遥かに料理の方が好きなのである。謝らなくてもいいのかもしれない。

人が、山のようなゲーム機やビデオテープを箱に詰めんと格闘している間に、
「おゆきさんっ!ゼラチンですよぉ〜!」
という嬌声が時折台所からとどろいてくる。テールスープときたら、やはりメインはビビンバとか牛タン塩焼きとかでしょうということで、メインディッシュは自家製ビビンバ。

ほうれん草ともやし、ぜんまいとにんじんのナムルがそれぞれ用意された。牛肉の細切れ肉の炒めも当然準備する。炊きたてのご飯の上に、ナムルを美しく盛り合わせて、中央に牛肉をたっぷり。てっぺんに卵黄を1つ落として、これでもかこれでもかとかき混ぜてぐっちゃぐちゃになったところで恭しくいただく。

自家製ビビンバは、やはり最高に美味しい。1つ1つの材料を1つずつナムルに仕上げなきゃいけない手間はなんとも面倒なものだけど、手間かけただけの美味がそこにあるのだった。……と偉そうに語る私は、何もしていなかったりするのだけど。シャクシャクのもやしも柔らかなほうれん草も何とも良い感じだ。ありがとう、だんな。

そしてそして、だんな渾身のテールスープ。最初の水分を半分まで飛ばしつつ煮込んだスープは薄く黄金色に染まり、澄んでいた。テール1つをごろっと器に入れ、スープをよそって白髪葱を飾る。自分で塩をふり、黒胡椒をガリガリと挽いて、飲む。
旨い、旨いっす!
肉はほろっと骨から取れ、そのまま箸で簡単にほぐれてしまう。臭みのないスープも、骨から良いだしが染み出していてこれまたいける。肉を噛みしめながら、胡椒の効いたスープを飲み干すと、身体が芯から温まった。いやー、美味しいなぁ、テールスープ。

1/9 (火)
ケンタのサンド♪ (夕御飯)
田舎ぜんざい
抹茶入り玄米茶

今日も闘いの日である。膨大な引越荷物は、まだ半分も梱包されていないと思われるのであった。冷凍庫・冷蔵庫内の食材も怠りなく消費していかなければならない。とりあえずは、コンロにまだかかっているままの、残っている煮あずきが問題だ。
「今朝はあんころもちで良いっすか〜?」
とだんなにお伺いをたて、「お餅1つね」の彼の声に従って餅を焼く。雑煮やあべかわならば餅2個あるいは3個を普通に食べる彼が1個で良いとは、やっぱりあんころもちはあまり好物でないのだろう。

水分を吸いまくった小豆がごろごろと入る鍋の中は、日数が経つにつれて良い具合にこなれてきた。今が一番美味しいのかもしれない。少々の焦げ目をつけて焼いた餅をごろりと器に入れて、温めた煮あずきを入れ、餅がくたっとならないうちにはふはふと食す。今日もやたら寒そうだ。これが最後とお台場でも行こうと思ったのに、もりもりと気は失せてきてしまうのであった。

チーズトースト・シナモントースト
コーンクリームスープ(レトルト)
牛乳

本日も大量の段ボールや衣類、雑貨類と大格闘している間にすっかり1時半だ。腹を空かせているらしい不機嫌な息子に謝罪しつつ、冷凍庫内のパン処理大会を始める。冷凍保存してあった6枚切り食パンを2枚オーブンへ。1枚にはとろけるチーズを上に乗せ、もう1枚にはカルピス製「シナモン&シュガーバター」をたっぷりと。チーズがとろけてバターもとろけてこんがり焼けたところで、そいつを息子と半分こして食べる。シナモン香がかなり強く、甘さ濃厚なシナモンシュガーバターはさすがカルピス。美味しい。

お供には、紙パック入りのポタージュスープ。顆粒の、お湯で溶かすタイプのレトルトスープも悪くないけど、私はやはり液体のこの紙パック入りが大好きだ。牛乳パックと同じ容器から鍋に移して、少しばかり牛乳入れたり生クリーム入れたりしてあつあつにして飲むと、何とも言えず幸せになる。ついつい「安売り」だの「セール」だのの文字を見るとふらふらとこのスープを籠に入れてしまう私なのだった。

ケンタッキーの
 グリルチキンサンド
 クリスピーチキン
 フライドポテト
 コーンサラダ
ダイエットコーク

午後5時、しばらく中腰のまま作業していた腰が限界に達した。そのままベッドに倒れ込んだ体勢で寝てしまって、目が覚めたのはだんなが帰宅コールをしてくれた、その電話の音でだった。やば。何もしてないどころかご飯も炊いてない。

「すみませんすみません。ご飯の用意出来ていません。」
と電話の向こうのだんなにぺこぺこと謝る。
「ケンタが良いです。ケンタのサンドが良いです。」
とリクエストも忘れない(反省はどうした)。

てなわけで、夕飯はケンタのサンド。グリルチキンサンドである。だんなは和風カツサンド。レタスたっぷりのケンタのサンドは何やら久しぶり。油っこいけど、やっぱり時々食べたくなってしまうのであった。
そして、コーンサラダである。とうもろこしの缶詰開けてそのまんま、という感じのコーンばっかり粒々々々入ってるあのコーンサラダだ。悲しいかな、私はこれもまた大好物である。そんなに好きなら、「シャキッとコーン」でも買ってきてそのまま喰えば良いようなものなのに、何故かケンタッキーで「コーンサラダ」の文字を見ると注文したくなっちゃうのであった。私も、そして息子も大好きとあって、だんなはコーンサラダも欠かさず買ってきてくれる。コーンは美味しい。コーンは最高だ。ラーメンに入れても、もんじゃに混ぜても、グラタンに入れてもシチューに入れても美味しいんだ。困ったもんだ。

1/10 (水)
棒棒鶏麺 (夕御飯)
コムタンクッパ
麦茶

だんなが一昨日作ったテールスープ。スープも肉も少なからず残っている。
昨夜、だんながわくわくして言うことには
「残ったご飯入れて、朝御飯に食べましょう〜。コムタンクッパ♪クッパ♪クッパ♪」
だそうなのである。こういう事にはやたらと気がつく我が家の食欲大魔人なのだった。
昨夜遅く、「肉をほぐしてスープを煮詰めておきましょー」なんてわくわくしながら鍋の前に立っているのである。我が夫ながら天晴れな心意気だ。

残っていたご飯をアツアツのスープに入れて、温めて器に盛る。骨をよけて、肉もたっぷり入っている。やや濃厚な塩味のスープに黒胡椒をガリガリガリガリとたっぷり挽いてすする。
さすが、1kgのテールから丹念に取ったスープだけあって、焼き肉屋で供されるそれに負けず劣らず美味だった。肉のまわりのゼラチン質もすっかりとろけて、コラーゲン混入率20%のスープ、という感じである。お肌つやつやになりそうなスープを堪能。

台場ヴィーナスフォート内 パドリーノにて
 日替わりリゾットセット
 マンゴーのプリン杏仁クリーム添え
 サンペレグリノ(発砲水)

本日は、1つの野望を抱えて息子と二人、お台場へ行った。
「パレットタウン1F、子供服売場ゾーンで福袋を買う」
がその目標であった。去年、「MINI BA-TSU」なるお気に入りのお店の1万円の福袋を買ったらば中身は使えるものばかり3〜4万円分相当が入っていて、それはそれは有り難かったのだ。今年もそれを狙っていく。だったら年明け早々早めに行けばいいのに、今頃のこのこ出かけるあたりが私ならではだ。

午前11時、オープン直後のパレットタウンに到着。そのまま店を目指し、残り少なく5袋が残るのみ、しかも息子のサイズのものは1つのみ、というなんとも危うい状況だったワゴンから5000円の福袋を無事ゲット。中には14800円もするジャケットやら6800円のズボンやらが計4点入っていてちょっと嬉しかった。使えそうなものばかりだったし。

そのまま、ガラガラのヴィーナスフォート内もぷらぷら歩く。クリスマス直前のあの人の多さは何だったのか、と思うほどの空き具合だ。煌めくイルミネーション、ほぼ貸切状態。とても気分が良い。気分が良いついでに、通りかかったイタリアンレストランのメニューのマンゴープリンを発見し、そのままマンゴープリン目当てに店になだれ込む。

「パドリーノ」なるそのお店、隣接する「SHOZAN」なる和食だか洋食だか良くわからんレストランの系列店であるらしい。ヴィーナスフォートの説明を見ると、

1999年夏、お台場にオープンした”女性のためのテーマパーク”内。 本店のSHOZANはパリのアジアンブームの先駈け的存在。 そのコンセプトを逆輸入したのが東京店。 内装は本店と違うフランス人デザイナー、イヴ・タラロン氏が担当。 赤をベースにした個性的な空間には、南風や照明などアジアンテイストがシックで スノッブでかつエレガントな空間を演出している。2階のダイニングへ一瞬で別世界へ誘い込みます。

などとある。私の一番苦手なタイプだ。シックでスノッブでエレガントってなんなんだ、大体。ともかく、こちらのイタリアン店のほうはカジュアルな雰囲気に見受けられたので少々の不安を抱えつつ席につく。

メニューはほぼ固定だ。「本日のパスタ」「本日の魚料理」などが1種類ずつ固定になっており、それらを組み合わせるだけのランチメニューなのであった。一番安くても1300円と、固定なくせにお高いような気がする。
本日のパスタは「自家製ソーセージとちりめんキャベツのパスタ」、本日のリゾットは「ゴルゴンゾーラのニョッキ」とのことで、ニョッキを食べることにした。「 イタリア前菜の小皿盛り・本日のリゾット・フォカッチャ」で1300円なり。ビールを1杯いきたいところだったけど、息子の手前発泡水で我慢することに。

速攻でやってくる前菜とフォカッチャ。レタスにハム、サラミと玉ねぎのコンソメ煮が恭しく盛られ、上からオリーブ油が回しかけられている。質は悪くないハムでありサラミであるけど、玉ねぎと共に"切って乗せるだけ""瓶から出して乗せるだけ"という感じがとてもする。手がかかっているとは思えない。ああ、早くもなんだかハズレの匂い。

フォカッチャはフォカッチャで、2種類のそれが皿に乗り、上から飾り立てるようにオリーブ油と塩がぶわっとかかっている。食べるこちらは手がべたべただ。皿の見てくれは何となくかっこよくなるかもしれないけど、食べる人の事を考えるなら、塩とオリーブ油を別皿で出した方が良いような気が。1つが気に入らないと穴ばかり見えてくる自分が悲しい。味は悪くないんだけど、"悪くない"くらいなら多分二度と来ないのだ。

で、ニョッキ。もちもちもちもちした直径3cmほどの楕円に丸っこいニョッキがごろごろとチーズソースに漬かっている。ソースがほんのりブルーチーズの香り。刺激臭はそれほどしない。上から飾りばかりの胡椒がパラパラと、そしてイタリアンパセリがはらりと飾られる。胡椒を追加してガリガリかけよう、と思ってもテーブルに胡椒の瓶はおろか塩すらない。とほほほほ。なんとなくゴルゴンゾーラのパンチの少ないソースはくせもなく主張もなく、不味くはないけどつまらない味だった。例えば私なら、"ゴルゴンゾーラ喰ってまーす"としっかりわかるくらいにゴルゴンゾーラ量を増やして、そいでもって胡椒もこれまたこれでもかとガリガリガリガリかけるけどなぁ。何となく全体的にキレイキレイにまとめようとしている、という感じ。……まぁ、ここは"ヴィーナスフォート"であるのだし、胡椒ガリガリよりはシックでスノッブでエレガントな方がよいかもしれないけど。

かくして、食事にいまいち満足を覚えられないままマンゴープリン。
これがまた、趣向は凝らしてあるけど滑ってるというか……詳細はこちらに詳しくござりまする。

棒棒鶏麺
牛テールスープ、もとい"煮込み"
麦茶

午後4時、疲れ果てて帰宅。DECKSに行き、AQUACITYに行き、台場を駆けずり回った状態で帰ってきたのであった。AQUACITYの抽選会で缶ジュース6本セットを貰えたので良しとしよう。

残った鶏肉を使わんと、夕飯は棒棒鶏麺。
酢と醤油と砂糖、芝麻醤にラー油と胡麻油でもってタレを作り、五香粉と花椒塩たっぷり入れた熱湯でぐらぐら茹でた鶏肉をスライス。茹でた麺に胡麻油を和えて、鶏肉飾ってタレかけて、白髪葱をうりゃっと盛り付ければできあがり。

お供には、もはやスープの無くなった牛テールスープ。スープというより最早「煮込み」になっている。骨ごと器に盛り合わせ、骨をしゃぶりながら棒棒鶏麺を喰うという、なんともいえない雰囲気の夕食になった。

1/11 (木)
炭火焼き鳥 (夕御飯)
神戸屋ベーカリーの
 クリームチーズデニッシュ
 神戸屋スペシャル(食パン)1/2枚
カフェオレ

昨日お台場で買ってきた神戸屋のパンにて朝御飯。神戸屋の食パン「神戸屋スペシャル」はトーストせずに食べる食パンとして、私の最大好物だ。さすがスペシャル。
ふわっとした食パンはうっすら甘く、トーストしてしまうとちと物足りなくなっちゃうけど、焼かずにバターをこてこてつけて食べるとんもぅ最高なのだった。私の母なぞは「甘すぎよ、このパン」と言っていまいち好きではないらしいが。

甘さ控えめ、クリームチーズがみっちり詰まったクリームチーズデニッシュもまた好物だ。好物だらけで嬉しい朝御飯。だんなはカレーパンと神戸屋スペシャルのトーストを、息子には洋梨のデニッシュを。全体的に甘い甘い神戸屋のパンの朝御飯なのであった。苦めのコーヒーで、砂糖抜きのカフェオレ作ってがぶがぶ飲みながら食す。

田舎ぜんざい
麦茶

もう1週間ほど前に作った煮あずきをやっと使い切る。水分が多くさらっとしていたはずのそれは、煮詰まってすっかり"粒あん"になってしまった。最早"汁粉"でも"ぜんざい"でもなく文字通り"あんころ餅"な状態だ。焼きたての餅を粒々の煮あずきにごろごろと絡ませて転がして、それを食べる。

冬だけど作ってしまった冷たい麦茶は、妙に甘い餅と似合う。「麦茶は夏の風物詩」と思い実行していた我が家であったけど、今年は購入した大入りパックがなかなか減らなくて年を越したというのに時々麦茶が登場する。
「麦茶が美味しくなくなったら、もう秋だということだよね〜」
なんて言っていたのに、真冬でも実は美味しいのであった。ぐびぐび。

M井さん来たりて炭火焼き
 R1/Fのローストビーフサラダ・ポテトサラダ
 牛肉の串焼き
 焼き鳥(ねぎま・つくね・手羽先・皮)
 にんにくのバター焼き・長ねぎ・茄子
 牛肉とワカメの中華風スープ
 ミニミニビビンバ
 ビール、麦茶


冷茶

引越を3日後に控えた今日、
「借りた本をお返ししなければ」
とM井さんがやってきた。「今日か明日か、行っても良いですか?」と貰ったメールに対した返事に対した返事には
「引っ越し前の食材処理については、出来る限りのご協力をいたす所存に候。お役に立つること叶わば、まっこと嬉しき哉。」
なんて書いてある。相変わらずの人だ。幸い、喰わなきゃいけない薄切り牛肉もあることだし、ちょっと肉買ってきて足してどうせなら炭火焼きを堪能することにしよう。

薄切り牛肉はせっせと串に刺しておき、だんなが買ってきてくれたつくねと皮もせっせと串に刺す。ねぎまと手羽先は既に串に通った生のものを使用。野菜好きのM井さんにとっては野菜不足な感もあるけど炭火焼き肉ということで勘弁していただこう。

「え、炭火、ですか。家庭でこれをやられる人を初めて見ましたよ。」
M井さん、来るなり嬉しそうである。皆で各々好きな串を取り、焼き始める。即座に立ち上る白い煙。何度か炭火焼きはやっていたけど、こんな煙は初めてだ。出所は、どうやら皮串のようであった。皮の表面からもくもくと出る白い煙は、火災報知器も作動してしまいそうな勢いだ。慌ててテーブルを皆で抱えて窓際に席を移動。夜景を見ながら居間の隅っこ窓際にて焼き鶏、という粋だか何だかわからない会食となった。

粗塩をふって、焼きたての串を食べる。塩ふってレモンふって、食べる。蜂蜜入りの自家製醤油だれをつけて食べる。ふくふくと柔らかくこんがり焼けた焼き鳥は、お店のもかくやと思われるほど旨い。炭の具合が読めなくて焼けない部分ができたり串が焦げたりするのも、気にしないことにする。皆で知恵を出し合い、窓際においたテーブルの窓と反対方向から扇風機で煙を屋外に流すように工夫し、なんとかもうもうたる煙と闘いながら、それでも美味しく炭火焼き鳥。

で、牛串12本、ねぎま6本、つくね5本、手羽先3本、皮7本を綺麗に皆で平らげた。
ご飯は残っていた自家製ナムルでミニミニビビンバ。普通のご飯茶碗に軽くご飯を盛り、残りナムルを少量乗せて肉乗せてかき混ぜて食べる。今日も我が家のご飯でM井さんは感動した模様。ふっふっふ。

1/12 (金)
天厨菜館(銀座)にて「ほうれん草の炒飯」 (夕御飯)
チーズトーストのハムエッグ乗せ
コーンスープ(レトルトもん)
オレンジジュース

例によって、昨晩宴会の後にちゃっかり宿泊しているM井さんと囲む朝御飯。「彼が来る」=「泊まっていく」の図式がいつのまにか完成しているようで、いつのまにか彼のおパンツまで常備されている我が家なのであった。「どうせだったら寝間着持ってきたら」のこちらの言葉に2セットしっかり、おパンツまで含めて持ってきた彼である。いかがか。(と言いつつこちらも彼の為に使い捨て客用歯ブラシを常備していたりするけど)

引越間際で食材もほとんどないということで、簡単にトースト朝食。バター塗ってとろけるチーズのっけてトーストした神戸屋のパンに、ハムエッグを乗せる。まだあつあつのうちに皆で塩と胡椒をパラパラかけて囓りつく。100%オレンジジュースが出てきたり、カップスープをおもむろに選び始めたりと、それなりに豪華な朝飯になった。人数1人増えるだけでも、大勢で食べる飯はこれまた美味しい。

池袋サンシャインシティ BAIKALにて
 ビーフストロガノフセット
 (サラダ・ボルシチ・ピロシキ・ビーフストロガノフ・アイスティ)

本日は、池袋東急ハンズにお買い物。新居浴室の入り口にかける「ゆ」暖簾を買いに行かねばならないし、DIY材料で欲しいものもある。あと数日でやってくるらしいGatewayの新品パソコンに貼り付けるカウスポットシールを偽造すべくカッティングシートも買う予定だ(注:Gatewayは牛柄模様がトレードマークで、パソコンに貼るための牛柄シールが販売されている。1枚4〜500円となかなか高価で、モニターの周囲から本体からぺたぺた貼るには資金が足りない。で、1枚オリジナルを買ってあとは偽造しちゃえという寸法。プリンターからMOからスキャナーから貼りまくって遊ぶ予定のわたくし。)ハンズにかける期待は大きかった。

昼過ぎて、営団地下鉄有楽町線東池袋駅に到着。ここからサンシャインシティーを横目に歩けばハンズはすぐだ。で、サンシャインシティーで息子と二人昼飯を喰うことにする。つらつらと案内板を眺めると、ロシア料理店を発見。「ボルシチ♪ボルシチ♪ピロシキ〜♪」と頭の中を全面的にロシア料理で満たしてお店に向かってみることにした。

木製テーブルに赤いビロードの張られた椅子。赤を基調とした民芸小物が並び、いかにもロシアンな雰囲気の店だ。ちと薄暗い店内を案内されて、ソファ席の4人掛けテーブルに案内された。850円のビーフストロガノフセットを注文。ロシア風ドレッシングのかかったサラダがまずやってくる。レタスにコーンとトマトの刻みがかかり、薄オレンジ色の酸味のあるドレッシングがかかるサラダだ。サワークリームの味がして、なかなかいける。息子は一人、彼のために注文したピロシキと格闘中だ。

で、小さな器に入ったボルシチと小皿に乗ったピロシキ。
ロシア料理と言えば、ボルシチでありピロシキであり壺焼きでありストロガノフであったりすると思うけど、これって和食で言えば豚汁・おむすび・お煮しめ・すき焼き、なんて位置づけだったりするのじゃないだろうか。これをセットにして出しているというのは、実はロシア人にとってとても奇妙なものなのかもしれない、とふと思う。豚汁をおかずにすき焼き喰うなよ、みたいな。

ともあれ、ビーツたっぷりのボルシチは具もごろごろと良く煮込まれていて想像以上に美味だった。肉たっぷり油たっぷりのピロシキも悪くない。平べったい楕円で、噛むとじゅわっと油が染み出てくるまだアツアツのピロシキはひき肉は食べやすい薄味だ。

そしてそして、ビーフストロガノフ。生クリームたっぷりの白っぽいソースに絡む牛肉がごろごろと、バターライスの上にかかっている。こってり濃厚でほんのりと甘い。カロリーの塊のようなぶっかけ飯だ。ロシア料理はおしなべてカロリー高くしなきゃ寒くてやってられないんです、という印象を受けるこってり系が多いように思うけど、これだけ食べると顔の皮膚がツヤツヤ光ってくるような気すらする。

久しぶりのロシア料理は旨かった。わし、ロシア料理も大好きじゃけえ。

銀座 天厨菜館にて
 三種前菜の盛り合わせ
 鮑のクリーム煮
 揚げイシモチの甘酢あんかけ
 黒豚バラ肉とナツメの煮物
 蝦餃
 小龍包
 蟹とふかひれのスープ
 ほうれん草の炒飯
 ビールたらふく
 小豆入りタピオカココナッツミルク

目当てのものをたっぷり買い込み、銀座に戻る。今日は私の母との新年会……というかお別れ会だ。私が昨年末に会社を辞めた時、タイミングを同じくして母も勤めていた会社を辞めたのだった。私は夫の実家の近くの集合住宅に引越することになり、母は母で郷里の秋田に帰ることになった。引越の時期までほとんど変わらないという有様だ。

そして折しも今日は母の誕生日。プレゼントを吟味する余裕は無かったので、母が愛用している香水を買って待ち合わせの場所へ向かった。だんなも仕事を終えてやってきた。夕食の場所は銀座5丁目「天厨菜館」。台湾が本店の北京料理店である。一昔流行った「ヌーベルシノワ」なお店である。母、大好き。私も大好きな店である。

来るなり息子がえらく不機嫌になり、エレベーターホールでじたばたしてみたり、化粧室方面へダッシュしてしまったりというハプニングはあったけど、そのまま眠ってしまった息子を傍らに大人3人が高笑いしながら宴会する。コースを頼むよりはアラカルトで、とメニューを見ながらばしばし食べたいものを注文。え、アワビ喰って良いんですか?ふかひれも宜しいんですか?ありがとうお母様。(←今日はお母様の誕生祝いじゃなかったんかい)

最初に来たのは三種前菜。十年一日のごとくこの前菜ときたらいつも同じなのだけど、ここに来るとこれ、という気もしないではないから仕方ないかもしれない。セロリの茎を黄身酢で和えたものと、薄焼き卵で茹でた白菜を巻いたようなものの上にイクラが乗ってる華やかなやつ、そしてチャーシュー。蒸し鶏やクラゲという前菜とはいつもながら無縁なのであるらしい。いつも決まってコレというのがアレだけど、それでも美味しいのでおっけーだ。

続いて、だんな大好物の鮑のクリーム煮。どこぞの店では薄切り鮑と一緒に筍が混入していて見かけ増量でひどくショックだったものだけど、ここのは確かに鮑だけがたっぷりと入っている。ちょっと薄めの鮑がひらひらと10枚くらいだろうか。とろみ濃厚なクリームソースに絡まっている。実のところ、つい最近まで鮑の美味しさが全くわからなかったのだけど、このクリーム煮はやはり美味しい料理であると思う。基本のスープの味もしっかりとしていた、この店のクリーム煮も旨かった。あ、ビールもう1杯いただけますか。ぐびぐび。

次は「本日の魚介をお好きな調理法で」と書いてあったメニューから相談して、イシモチを揚げて甘酢あんかけにしてもらった。一人ずつの皿でそれはそれは綺麗にやってきたイシモチである。1人量半切れほどのイシモチがこんがり揚がって緑や赤の模様の入った華やかな皿に鎮座ましまし、上からはみじん野菜もたっぷりの甘酢がそれは美しくかかっている。松の実も多く入るソースは、見た目何やらフランス料理ででもあるかのようだ。"このへんがヌーベルシノワ""このへんもヌーベルシノワ"と皿のそここに矢印が飛んでいるのが私には見える。

適度な味つけの甘酢あんにたっぷりの野菜、そしてカリッと揚がった脂の乗ったイシモチは美味だ。すばらしい。すばらしいけど、箸で喰うにはこの煌びやかな皿はちときつかった。細かい野菜が箸で取れない。甘酢もうまく絡められない。こういうしつらえならばフォークとナイフで食べたくなるのが人情だ。パンを皿になすりつけたくもなるけど、さすがにそれは味覚的に不味いかと思う。

御機嫌にアルコールが回ってきた私たちは、皿にアルコールも食事も進める。
次は「黒豚バラ肉とナツメの煮込み」。美しく層になった豚バラ肉が厚切りに3枚、たっぷりの青梗菜の上にうやうやと乗っている。醤油ベースの煮込みだれの中には、ごろりごろりとナツメが6粒ほど。プルーンにも似たナツメの甘さが溶けたような、香りのよい豚肉だった。脂も肉もトロリと溶ける良い具合の煮込み具合だ。

で、「料理足りないんじゃないの。もっと食べなさい。」と母に言われて注文した蝦餃と小龍包。蝦餃は薄緑色のもちもちした皮にくるまれたニラ入りのもの。だがこれは、ちと皮がぺしょっとなってるし、海老のプリプリ感はいまひとつだし、なんとなく中途半端だ。
そしてだんなはだんなで小龍包を1つ蓮華で持ち上げて落胆している。中に詰まるスープが身上の小龍包において、なのにスープが1滴も中に入っていないというのだ。3個入った蒸籠の中身は全部がスープ無し。もともと無い、というよりは蒸されて落ちた、という感じではあるけどこれは悲しい。味も、普通。褒め称えるべきところもなく、唾棄すべきところもない。うーんうーん、これなら点心メニュー無いほうが良くないか天厨菜館。

太っ腹な母が注文を許してくれた蟹肉とふかひれのスープ。1人量ずつ蓋ふきの金属の覆い器に入れられてやってくる。半透明の茶色いスープの中にごろっと蟹肉、フカヒレひらひら、良い感じ。ああお母様ありがとう。ふかひれと見ると食べたがる我が家の2歳児も睡眠中で誠にありがたい。ずずっとすする。喉を落ちていくふかひれ。ああふかひれふかひれふかひれ。実のところ、ふかひれのヒラヒラなんてものには味や匂いは無いものだからして、春雨を堅めに茹でれば簡単に私などはごまかされてしまような気もするのだけど、それはそれとして有り難くふかひれを味わう。スープ、旨ひ。

最後は当店名物のほうれん草の炒飯だ。細かいほうれん草がざくざくざくと卵と一緒にご飯と炒められているだけのシンプルなもので、でもこの店の最大名物と言っても良いものだ。
でもこれ、一番最初に食べた10年ほど前のものはパラパラポロポロでなんとも良い感じだったのに、なんだかだんだん味が落ちていくような。今日のは弱冠パラリとしていたけど、それでも当初の頃の神がかったようなパラパラさは再現できていなかった。それでもついつい注文しては美味しく食べてしまうのである。とほほほほ。
自分で作ってみれば、この炒飯のめんどくささに泣けてくる。生のほうれん草をひたすら細かく、これでもかこれでもかと叩かなければいけないのだ。米粒と同じ大きさに揃うように、細かく細かく、台所中に細かいほうれん草を飛ばしながら刻む重労働さを思うと、再現したくてもできなくなる。私は一度作って二度とやるもんか、と固く誓った記憶がある。

すっかり食べてすっかり満腹。なんとも幸せ。
デザートには、だんなと母が杏仁豆腐、私は小豆入りタピオカココナッツミルク。このデザートもまた、十年一日のごとくこんな感じだったように思うけど……美味しいからまぁいいや。
私のは、ベースはシンプルなタピオカココナッツミルクの底に柔らかな粒あんが入っているもの。上からフルーツが何種類か乗せられ、カエルの卵のごとき粒々種入りのゼリー状の物体"スイートバジルシード"が飾られている。かき混ぜて、食べる。ココナッツミルクのクリーミーな感じとあんこが妙に合うのであった。さらっとしたお汁粉食べているような気分になってくる。

学生時代に母に何度も連れてきて貰った店で食事して、とりあえずのお別れ会。
「秋田に行ってもお金と暇貯めて東京来るから、そしたらまた美味しいもの食べましょうねー。」
と母、高笑いして帰っていった。秋田には、確かにこんな中華料理店は無い……かもしれない。がんばれ母。

1/13 (土)
茶月の「いくらづくし」 (昼御飯)
吉野家「牛やわらか煮」丼
インスタント味噌汁
麦茶

いよいよ明日、転居である。この地域に住んで4年弱、この建物に来てからはまだ1年とちょっとしか経過していない。「住み慣れた」というにはいまいち住み慣れていないところではあるけど、少々お名残惜しい気もしないではない。センチな気分に浸る暇なく、朝から怒濤の荷造り作業だ。

「朝はこれ!これを喰わねばなりません!」
と荷造り前からだんなは妙に力が入っている。彼が言いたいのは「冷凍庫の中の冷凍吉野家牛丼を喰わなきゃならん」ということなのであった。だんなは朝から牛丼大盛り、私は「牛やわらか煮」。

大きめに切った角切り牛肉がごろごろ入る煮込みは、醤油味ベースにこってり煮られている。肉の味は悪くないけど、どうも旨味や塩気に欠けるような気が。ご飯と一緒に食べるといまいち味がわからない。もっきゅもっきゅと大量の白米と共に牛肉をかきこんで、いざいざ作業開始。

宅配寿司「茶月」の
 いくらづくし
 ウニ握り
 穴子握り
インスタント吸い物
緑茶

苺withコンデンスミルクと牛乳

午前中、勢い余って鍋からボウルから調理道具をほとんど片づけてしまった。冷蔵庫の中に食べられるものはけっこうあるのに、調理する道具が一切無いという、わけのわからない状態に陥ってしまった。相変わらず考えのいまいち足りない自分の頭を抱えつつ、昼は宅配寿司。テイクアウト専門店の近所の「茶月」が金額によっては配達してくれるらしいという情報を入手したので、ちまちまと色々注文。

私は鮭とイクラがたっぷり乗ったちらし寿司や握りのセット"いくらづくし"と、だんなは対してマグロとネギトロたっぷりの"まぐろづくし"。まるで先日の「どっちの料理ショー」の対決そのまんまみたいなセレクションなのであった。
そう、私はもうダントツに「鮭イクラ丼」であって、だんなはまたダントツに「ネギトロ丼」なのだ。「鮭イクラ丼」が「ウニイクラ丼」になったら私の興奮は最高潮に達するところだ。

宅配寿司ゆえ、多少安っぽいながらイクラたっぷりご飯。好物のウニと穴子の握りも追加でつけて貰って、私はかなり御機嫌だった。

ピザーラの
 クワトロピザ
 ボストン風ドリア
 ローステッドポテト
 シーザーズサラダ
サイダー

冷蔵庫から発掘された4種のマンゴープリン
冷凍庫から発掘されたフォションのバニラアイスクリーム
冷蔵庫から発掘されたいつのものだかわからない缶入り烏龍茶

ああ、もう夜なのにまだまだまだまだ片づけは終わらない。玄関まわりと洗面所付近にほとんど手をつけてないことが判明して、私は煮えていた。夕飯は、蕎麦屋にするかどうするか議論した挙げ句、カロリーたっぷりピザにする。蟹肉たっぷりのクワトロピザがあったので、それを。今ならセットでドリアつき。ついでにシールもたまってポテトも無料でついてくる。サラダを追加し、豪華な夕飯になった。

アンチョビ入りトマトソースシーフードピザ、ポテトマヨネーズのピザ、イカと海老のピザ、蟹肉たっぷりのクリームソースピザ、と何だか魚介だらけのピザである。蟹ピザは広告に違わず蟹肉がごろごろごろごろ盛られていて、想像以上に旨かった。安い蟹の足を茹でて、足をこそいで出てくるほろほろの小さな蟹肉みたいなやつがうじゃっと乗っている。チープな味がするけど、それもまた良し。

そして食後もまだまだ続く片づけの山。
何故、冷蔵庫からまだ未開封のマンゴープリンの箱が3つも4つも出てくるのだ。
何故、いつ誰が買ったかわからない烏龍茶の缶が奥から出てくるのだ。しかも凍って。
何故、フォションの旨そうなアイスクリームが未だ手つかずで冷凍庫に保存されているのだ。
何故、一昨々年に賞味期限の切れた調味料がごろごろしているんだ。
このカビの生えた干し貝柱はどうするんだ、高かったのに。
話題と問題はまだまだ尽きない。尽きないついでに、そのたび座りこんで食べ始める私たちにも問題はあるのだ。

1/14 (日)
新居厨房はこんな有様でございます……

カップうどん「おそるべきさぬきうどん・天ぷら」
麦茶

引越である。午前9時に運送会社の皆様がやってくる前にいそいそと朝御飯。荷造り中に発掘されたカップうどんを食す。関西以西でしか発売されなかったという「おそるべきさぬきうどん」だ。本場讃岐のメーカー品とあって、期待しながら香川うどん旅行の際に購入してきたのだった。4つ買ったうちのすでに2つは食していたが、もう2つはついつい食べぬまま今に至っていたのだった。だって、まずいんだもん。

昨月上旬、香川で手打ちうどんをイヤというほど食べてきたあの直後に食べたこのうどんは、大層美味しくなかった。なのに、どうしたことだろう。今日食べるとそれほど不味く思えない。コシの少なすぎる麺に、ほんのりいりこだしの風味のみがする合成調味料山盛り入りのスープ。乾燥葱も貧弱だし、おあげも天ぷらも相変わらずいまいちだ。なのに妙に「ああ、そういえばこんなだしの味だったなぁ」と郷愁を感じてしまう私の舌にはちょっと困ってしまうのであった。こんなもので懐かしがるなよ、自分……。

コンビニの
 ホワイトチョコデニッシュ
 コーンマヨネーズパン
 からあげくんチーズ
 缶入りコーンスープ

お茶

怒濤のように荷物が運び出される中、私と息子はだんなを旧宅に置いたまま新居へと向かった。息子は徒歩10分のだんなの実家にて預かってもらい、私は一人新居の床掃除と配線工事をする予定。この冬最大の寒波がやってくるという悲惨な状況の中、火の気はだんなの実家から貰ってきた小さな電気ストーブ1つというかなりお寒い状態だった。
「幸せとは、寒くてなくてお腹がすいていないことです。」
とどこかで読んだ本のフレーズがよみがえる。私は寒いし空腹だ。そのときの私はこの上なく不幸だった。なんで家の中でフリースジャケット着てて震えるほど寒いんだよ。

で、新居近くにあったローソンで食料入手。時間は1時前とタイミング悪く、弁当類はろくなものが残っていなかった。パン2つと温かいスープ缶、好物のからあげくんを入手して一人寂しく昼御飯。ああ、一人でなけりゃコンビニ御飯も不味くないのに、一人だとなんでこんなに味気ないんだろう。

鼻をすすりながら腹を満たした頃、玄関のチャイムが鳴った。やってきたのは運送屋でもなくだんなでもなく、義妹だった。
「さしいれでーす。あっついお茶と、あと、おせんべ!」
数時間後に運送屋の齢23のお兄ちゃんに「小学生?」と聞かれることになる義妹20歳は今日も元気だった。
「カップが2種類ありまーす。1つはケロッピで、もひとつはキティちゃん!わはははは〜!」
義妹20歳は今日も若かった。

熱いお茶は、とってもとってもとってもとっても有り難かった。しみじみ。

だんなの実家にて
 紫芋のシチュー
 焼きそば
 林檎
 お茶

午後6時。荷物の搬入は終わり、でも片づける気力も段ボールの山を崩す余力もなくてそのままだんなの実家になだれこむ。
「シチューを煮ておいたわよ〜」
のお義母さんの言葉に心から感謝しつつ夕飯をいただいた。でも、シチューのお供がソース焼きそばだってのはちょっとおかしいと思いますお義母さん。しかもシチューは不思議な薄紫色してますお義母さん。

「ちょっと良いかな、と思って紫芋のシチューにしてみたの。でも全部溶けちゃった〜あはははは〜。」
「で、焼きそばは食べちゃわなきゃいけないのがあったから。ほほほほほ〜。」
だそうである。いつも変わらず大変おおらかなお義母さんなのであった。

それはそれとして、野菜いっぱいの焼きそばも、味は普通だった紫色のシチューも大変旨かった。
シチューと焼きそばという摩訶不思議な組み合わせに動じることなくだんなと義妹は焼きそばの皿の横に御飯をよそい、「焼きそばライス〜」とか言いながら食べている。だんなの生まれ育った家庭環境の一端をかいま見たような気がした。
だんなの実家近くに越してきた今、きっと私もこの環境に順応していくのだわ。