食欲魔人日記 00年10月 第2週
10/9 (月)
新宿中村屋の
 マロンデニッシュ
 カニピロシキ
"じっくりことこと煮込んだスープ"あらびきコーン
牛乳

昨日の昼間、新宿中村屋の前を通りかかったら"カレーパン焼きたて"なんてのぼりを立ててカレーパンが店頭で売られていたりなんかして、思わずらふらと引き寄せられてしまったという次第である。

しかししかし、店頭で売られているのはカレーパンのみだった。
いかん!ここのカレーパンの神髄はカレーパンにあらず、ちょいとお高い"ビーフカレーパン"にあるのである。そしてピロシキと共に並ぶ"カニピロシキ"にあるのである。
カレーパンと全く同じ外見のビーフカレーパン、同じくピロシキと全く同じ外見のカニピロシキであるけれども、どちらも高級バージョンの方には爪楊枝でオリーブが刺さって目印になっている。この目印つきのやつが、なんともなんともなんとも絶品なのだった。

そういうわけで、店頭販売のものには目もくれず、店内まで入っていってビーフカレーパンやカニピロシキ、あんドーナツにマロンデニッシュ、なんてものを買ってきてみた。

そして、今朝。
カップスープを入れ、冷たい牛乳をコップに入れ、そしてカレーパンとピロシキをオーブンで中までしっかり温める。アツアツになって表面サクサクになったら食べ頃だ。
良い感じにこんがり揚がっているパンは、ほんのりと甘い。ペーストではなく、具の1つ1つが分かるような形状になって丁度良い具合に詰まっている。カニの身がちゃんと見えて、味もしっかりするカニピロシキは私の大好物だが、肉の繊維がほろほろに崩れてたっぷり入っているビーフカレーパンがだんなの大のお気に入りである。さすがカレーの中村屋!という老舗ならではの手間のかかった濃厚なカレーパンだ。

Johanのも、ダロワイヨのも、タカノのも木村屋のもその他色々なカレーパンを食べてきたカレーパン好きのだんなが
「ここのビーフカレーパンが一番旨い!」
と断言して止まないのだからきっと本当に旨いのだ。

新宿中村屋の
 マンゴープリン
カフェオレ

中村屋尽くしの本日。
昨日カレーパンを買った時に、背後のケーキのショーケースをさりげなくチェックした私は好物のマンゴプリンを発見してしまっていたのであった。まさかマンゴプリン1個だけを購入するわけにもいかず、それと共にだんなの好物のモンブラン、カスタードプリンも一緒に買ってきた。ついでにシュークリームも買ってきた(それは昨日の夜に食べちゃった)。

夜の偉大なるディナーに備えて午後はこのケーキのみを食す。
熱い珈琲に牛乳入れてカフェオレにして、各人の皿にケーキを1つずつ。全員でそれぞれお互いのをつつきつつ、おやつターイム。

中村屋のケーキは、あまり気取ってなくて素朴な感じのするものばかり。値段も500円なんてのはまずなくて、大抵350円だというのが何となく嬉しい。渋い色のモンブランは淡い甘さで栗の塊が中央にごろりと入っているものだった。卵たっぷりの、ちょっと固めに蒸し焼きされたカスタードプリンも素朴な味。
そしてお目当てのマンゴプリンは、アップルマンゴーたっぷりの柔らかで風味豊かなものだった。シアワセ。

焼き肉の宴
 牛タン・カルビ
 にんにく・長ねぎ・玉ねぎ・南瓜・茄子・にんじん
 サンチュ
 ガーリックバターライス
 牛肉とワカメの中華スープ
 モルツ、冷茶

今日の夕飯は焼き肉である。焼き肉の宴である。
新宿には小田急ハルクがあり、小田急ハルクにはニュークイックがある。ニュークイックには厚くて旨くて安い牛タンと、同じく安い焼き肉用カルビ肉がある。あるならやっぱり……買ってきちゃうのである。いつもいつも、新宿行く度に2kgを越える肉の袋をぶら下げて帰ってくるのはいかがなものかと思うけれど。(ちなみに昨日買った肉の総量は4kg近かったと思われる)

午後6時。だんなと私の2人でぱたぱたと準備を始める。牛タンは刻み葱をサラダ油で和えたものに漬けておく。カルビも皿に綺麗に並べる。だんながスープを作り、私は大皿に野菜をざっくざっくと盛っていく。南瓜も茄子も大切だ。玉ねぎも長ねぎもなくてはならない。そして忘れちゃいけないのは、皮を剥いただけのゴロリとしたたっぷりのにんにく。

居間と廊下の境のドアを閉め、窓を開け、クーラーは「空気清浄モード」にし、換気扇も全開にする。
ビールをコップに注ぎ、小皿にレモンを絞って胡椒をガリガリ挽いておく。牛タンを2枚、鉄板に乗せたところでまずは乾杯。刻み葱をタンにくるりと巻き込んで、レモン汁の小皿にとぷんと落として熱いやつに囓りつく。
〜〜〜〜至福。肉である。焼き肉である。普段散々肉を喰っているけれど、焼き肉となったらまた格別だ。

肉も食べるが野菜も食べる。南瓜を囓りタンをつまみ、茄子もにんにくも口に放り込みつつカルビに臨む。焼き肉のタレは目下のところ"赤と黒"がお気に入りで、甘口と中辛を適当にブレンドしつつ絡めて食べる。口と手をもくもくと動かしてしまって、焼き肉中の私たちは珍しく無言だ。

250g弱の牛タンと、400gのカルビは綺麗に無くなった。丸々1個のにんにくと1/8個の南瓜、2本の茄子と1/2本のにんじんと2本の長ねぎと1/2個の玉ねぎも全部無くなった。
肉や野菜の皿を片づける横で、だんなは最後の食事の準備をしてくれる。牛の脂を吸い込んだ鉄板にバターを落として薄切りにんにくをこんがり炒め、御飯を加えて醤油で味つけ。焼き肉の最後は、やっぱりガーリックバターライスが私の中では最高峰だ。胡麻がたっぷり入っただんな特製の牛肉とワカメの中華スープをすすって、家中が焼き肉臭くなったところでディナー終了。
……満喫いたした。

10/10 (火)
福岡 フランス菓子16区の
 Boulette Au Marron
グレープフルーツ with 上白糖
アイスカフェオレ

焼き肉の宴の翌朝というのはなかなかにつらいものがある。
身体中の毛穴という毛穴からなんとなくにんにく臭が漂っているような気持ちがするし(それは時々本当に漂っていたりもするし)、家中のあらゆるところに焼き肉の匂いが染みついているような感じがするし、食卓付近は妙に床がツルツルと滑りやすくなっているし。
"布が匂って部屋が匂う……"などと呟きながらファ○リーズを家中にまき散らしたくなってしまうのは私だけではないはずだ。

今日は更に、"まだ腹に焼き肉が詰まっているような感じがする"という肉体上の問題まで提起されていた。
要するに10時間たった今もなんだか腹一杯な気分だったのだ。

「……御飯、という気分じゃないね……」
「……グレープフルーツでも食べていくか。」
「いくか。」
と非常に食欲魔人らしからぬ決断をしたものの、棚の上の旨そうな菓子と目が合ってしまった。
白い御飯は"私を食べて♪"と言わないけれど、栗のパイ菓子は"私を食べて♪"を言っている。
結局うきうきとアイスカフェオレなぞ入れて栗菓子を皿に乗せている次第。

「だんなも、食べるぅ〜?」
と流し目で見たら、"こいつ菓子なら喰えるのか"という表情と共に
「……いらないよ……。」
と非常にげんなりした声音の返事が返ってきたのであった。そ、そんなに呆れなくても。

ファミリーマートの
 マルハ製マンゴープリン
 ジューシークリームパン
 小岩井コーヒー牛乳

本日の野望、
「ファミリーマートでマルハ製マンゴープリンを入手する」。

マンゴプリン研究者なるもの、新発売ものがあると聞いたら探さなければいけない。会社の近所のファミマの場所を思いだし、昼休みチャリかっとばして探しに向かう。
デザートコーナーに5個ほど並んでいたブツを無事手に入れ、すぐ後ろのパン棚から「ジューシークリームパン」なる怪しげなネーミングのクリームパンを一緒に籠に放り込む。そして好物の小岩井コーヒー牛乳。

しかし、「ジューシークリームパン」。
"ジューシー"という言葉から連想されるものは私の場合"苺ジュース"とか"オレンジジュース"とか"肉汁滴るステーキ"であったりする。そこで、このネーミングのパンと目があった時、最初に想像されたのは"苺風味のクリームパン""オレンジ風味のクリームパン""焼き肉風味のクリームパン"という、どれも背を向けて逃げ出したくなるものだった。何でも柔らかいクリームが入っているそうである。焼き肉は入っていないらしいのである。とりあえず気になったので買ってきた。

500ml紙パックにストロー刺して飲みつつ、クリームパンを食す。水飴がたっぷり入ったような、やたらとテラテラした柔らかいクリームがほにょにょにょにょ〜んと詰まったパンだった。……やはりクリームパンは、小麦粉入りで弱火で練ったような、もっさりもっさりした固めのやつが私は好きだ。このトロロン具合が果たして"ジューシー"なるものなのだろうか。

して、マンゴープリン。
マンゴープリンの上2cmほど、柔らかなゼリーの怪しい層のあるものだった。不味いか旨いかで言えば"不味くはない"んだけど、マンゴーの匂いも味も全然しないものだった。……ショック。

ニラと玉ねぎのチヂミ
鶏肉ときのこの中華風クリーム煮
牛肉とワカメの中華スープ(昨日の残り)
御飯
モルツ、冷茶

昨日の残りの中華スープがあるので、それを考慮して中華風の夕食。
鶏肉とエリンギとえのきを炒めて白ワインふってスープで煮て、牛乳加えてとろみをつけた中華風のクリーム煮をまずは準備。上からぱらりと万能葱の刻みをかける。

で、余ったニラと目があったので"チヂミ"(韓国風お好み焼き)にすることにする。
ニラを刻み、ついでに玉ねぎも刻み、それを卵と小麦粉と水と塩で作ったタネと混ぜ合わせる。フライパンに多めの油を引いて、上からぎゅうぎゅう押さえつけながら両面こんがり焼けばできあがりだ。すり胡麻入りの酢醤油をつけて食べる。これが良い感じのビールのつまみになる。

30分ほどでめでたくできた夕食を並べ、家族全員で夕御飯。
実は初めて作ったチヂミだったけど、だんなは「うめー。うめー。」とすげぇ勢いで食べていた。彼の心にヒットしたらしい。
韓国料理はビビンバやナムル以外にも美味しいものがいっぱいだ。チヂミやパジョンやなつめ入りの白い御飯。コムタンスープにテールスープ。サムゲタンなんてのも自宅で作ろうと思えば作れるものらしい。

10/11 (水)
ベーコンエッグ
御飯
冷茶

息子が昨夜から発熱体になってしまった。
午後に1件、仕事の打ち合わせがある私はその前後の仕事は休み、だんなは1日休んで今日はごろごろすることになってしまった。

いつもより遅く起きての、のんびり朝御飯。
薄切りベーコンをじくじく炒めて卵を落とし、半熟に焼き上げてから御飯に乗せて醤油をぶっかけてわしわしと食べる。

昨夜と今朝に喰ってるこの御飯は"無洗米"。試してみてください、と花咲農園から送られてきたものだ。精米の段階でぬかを綺麗に落とし、"研ぎ"が必要ないようになっている米を無洗米というらしい。排水が減るとか、酸化が遅くなるので日持ちがするとか、手間が減るとか色々利点はあるらしいけれど……私はやっぱり普通のお米の方が良いような。
なんとなく炊いた感じのほくほく感やツヤなんかが無洗米だと劣るような気がしてしまう。単に自分の手でわっしわっしと研ぐ手間をかけてるからそんな気がするだけかもしれないけれど。

人形町 久助の
 焼き鳥弁当
人形町 柳屋の
 鯛焼
冷茶

だんなと息子に
「昼御飯、買ってくるねー」
と言い置いて私は昼前に一路、約束の地人形町へ。

人形町、気になっているお店がいくつもあるのである。仕事で行く度に自転車で裏道を通り、怪しげな喫茶店のメニューを覗き、着々と"せりあちゃんの気になっちゃうんだもんねリスト"が構築されているのであった。今日はその気になるところの気になるものを、テイクアウト可能ならば買って帰ろう、という趣向。

まずは甘酒横町の中にある焼き鳥屋さん"久助"。
昼頃に前を通ると、いつもいつも鳥を焼く良い匂いが漂ってくる、なんともオヤジくさい佇まいの店だ。一人で入るにはちと勇気のいる店で、ふと入り口の立て看板を見ると「持ち帰り弁当」なる文字が。
ならば、といつも入っているような顔をしつつガラリと引き戸を開け、レジに立っていたお兄ちゃんに
「お弁当、2つくださーい。」
と宣言する。入り口脇のベンチに座って待つこと2分、ほかほかのお弁当が出てきた。昼食アイテム1つゲット。

久助のお弁当は、持った感じやや軽かった。おそらく焼き鳥丼であると思われた。
"それだけじゃ足りねーべ"と引き続いて"せりあちゃんの気になっちゃうんだもんねリスト"を頭の中で捲りつつ、次のお店に寄る。
"手作りカレーパン"
なる手作り感覚溢れた看板の立てられた喫茶店が次なるターゲットだ。昼頃になると"できたて"の文字と共に見本が店頭に出てくるのだ。旨いか不味いか、その佇まいから察するにそれはとても微妙なお店だけれど、どうも私の食指はビビビと反応している。

「旨かったら喜ぶアル。不味かったら二度と食べないアル。……それだけアル。」
などと呟きながら店に近づく。何故私はFF\のクイナになっていますか。

ガラスの押し扉を押して入ると、保温ケースにカレーパンがごろごろと入っている。カレー揚げパンにハヤシ揚げパン、ピロシキ、シナモンあんドーナツ、という調和が取れてるのか取れてないのか良くわからない品揃え。ケースの下には"美味しいパン特集"の雑誌なんかが飾ってあって、いくつかの取材を受けているお店のようだった。壁にはなぜか"おぼん・こぼん"のサイン色紙。味わい深い。
3種類のパンを買って店を出る。

そして最後に、"柳屋"の鯛焼。
大正時代からこの甘酒横町で鯛焼を焼き続けているお店ということだ。12時半の開店直後から早速行列が出来ている。路上に面したガラスの仕切の向こうでは若いお兄ちゃんが1個焼きの鉄製鯛焼機をガチャンガチャンと動かしていた。昔ながらの焼き方をしている鯛焼屋なのであった。
軍手をつけた左手で鯛焼機をガチャコガチャコと動かしつつ、焼けたやつはパカンと開くやいなや素手の右手で掴んで網に乗せていく。鮮やかな手つきで生地を入れ、あんこを乗せ、生地を入れて再びガチャコと火にかける。鯛焼は延々と焼かれ続けて売られていく。お兄ちゃんは汗びっしょりだ。

行列の最後尾につき、待つこと5分。壁に貼られた「アイス最中 小倉・バニラ」「ドライアイスはありません」なんて文字を見ながら待ち、竹皮にくるまれた鯛焼を5個ゲットした。美味しそうなものばかりを購入し、用事を済ませてうきうきと帰宅。

家につくなりお弁当を温め、その間にまだ温かい鯛焼にかぶりついた。
周囲がパリパリとした鯛焼は表面カリリと、中はふわりと弾力がある。やや白っぽい色の粒あんがたっぷり入っていて、ギョロリとした眼のその表情がなんとも昔くさい。生地が甘ったるくないのもとても良い感じだ。とてもとても懐かしいような味がする。良い感じだ。

鯛焼1つを食べ終わる間に弁当が温まり、ではいざいざ、と焼き鳥丼を食す。
やや少なめの御飯に焼き鳥のタレがかかり、上にはざく切りにした鶏を炭火焼きにしたやつがごろりごろりと乗っている。良い感じに香ばしく、肉は柔らかで良い味がする。隅っこにはホイルケースに入った柴漬けが。しごく単純な焼き鳥丼だけど、思った以上に旨かった。香ばしい匂いのする店内に、いつもサラリーマン姿の客が詰まっているのも納得できた。きっと中で喰ったらもっと旨いのだろう。

弁当を片づけ、そして2個目の鯛焼にかぶりつき、そして"腹がくちくなった"(=満腹になった)私達は一家揃ってお昼寝に。
窓を開けて、陽気の中ぽかぽかしながら昼寝。
私が起きたのは5時過ぎ、だんなと息子が起きたのは6時半過ぎ。そりゃもう心地よく寝まくってしまったのであった。

フォルクスにて
 サーロインステーキ200g
 スープ・サラダセット
 生ビール 中ジョッキ

息子の熱も、心配するほどは上がらずに、あっさりと下がってしまったのであった。
「今日はさ今日はさ、フォルクスに行きましょう。安いし安いし。」
だんなは妙にご機嫌だった。

ダイエーホークスの優勝が決まるか決まらないかのうちから、
「決まったら安くなるね。行こうね。」
とそれはそれは何回も言っていたのだ。そんなにフォルクスが好きか、君。
……いや、"牛丼が安くなってる〜"と言っては吉野家に行ったりしているので、だんなはただ単に"安いもの好き"さんなのかもしれない。

で、午後7時半。自転車こいで一家で近場のフォルクスへ。
私は200g、だんなは300gのサーロインステーキ。当然スープバーとサラダバーもつけて、必須の生ビールも注文。
生ビールを一気に1/3ほど飲み下して、ステーキが来るまでサラダをつまみ、スープをすする。サラダボールにほうれん草とピーマンと玉ねぎをたっぷり乗せて、胡麻ドレッシングをかけて食す。ほうれん草サラダは大好物だ。ついついほうれん草ばかりをモリモリ食べてしまう。
コーンスープとふかひれスープとコンソメスープを交互に飲みつつ、ステーキが来るのを待つ。

焼き方は当然レアだ。
大根おろしソースと、オニオンソース。
ほどなく中厚の200gステーキと特厚の300gステーキがジュージューと音立ててやってきた。切ってみると、レアというより"生"だったけど、まぁ気にしないことにする。

「こないだ焼き肉喰ったばっかりなのにさぁ。」
もっきゅもっきゅ、と厚さと幅が同じくらいの巨大な肉を口に運びながらだんなが言う。
「なんかこう、ガツンと肉が喰いたくて喰いたくてしょうがなかったのよね。」
ライスに塩をかけて食べながら言葉を続ける。……肉体労働者じゃないんだから……。
「……そういうことって、ない?そういう時期って、ない?」
いや、そう真剣な顔で問われても。300gの肉の塊を喰う気にはさすがになれないし。

10/12 (木)
人形町 べねぜらの
 カレー揚げパン
 ハヤシ揚げパン
 ピロシキ
アイスカフェオレ

昨日人形町で買ってきた揚げパンにて朝御飯。
何も朝から揚げパンばかりこんなに喰わなくても良さそうなもんじゃないか、と思わなくもないけど買ってきちゃったんだから仕方がない。3つのパンを全部2等分して、だんなと二人で半分こする。

オーブンでパンをこんがりと温めている間、モカコーヒーを煎れて氷たっぷりのマグカップに注ぎ、アイスコーヒーにする。
温まったパンを皿に並べ、いざいざ、と熱いところにかぶりつく。

どれも結構な大きさのパンなのである。大きい、というよりは厚い、という感じ。どのパンも厚さが5cmほどはあるだろうか。ピロシキには春雨や豚肉がごろごろと入り、さっぱりとした塩味。ハヤシ揚げパンはもっさりした小麦粉たっぷりのルーが詰まっていてほんのり甘く、こってりしている。カレーパンはじゃがいもがこれでもかと入る、やっぱりもっさりした系統。パン粉たっぷりの表面は温めるとカリカリと香ばしくなって案外と美味しい。全体にパンに合わせたようにもっさりもっさりした充実感ある具になっているのであった。

マクドナルドにて
 チーズ月見バーガー
 フライドポテト(M)
 コカコーラ(M)

ここのところ、無性に食べたいと思い続けていたブツがある。
秋も佳境のこの季節、毎年来るこの季節、"月見バーガー"の季節が到来しているのである。
食べねばならない。食べずんば、あらず。どうも月見バーガーには並々ならぬ思い入れのある私なのであった。

12時過ぎの銀座1丁目。数人並んでいた行列の最後尾につき、"MMセット"をトレイに乗せて2階の席へ。
100円プラスのデザート、"マロンカスタードパイ"の文字をしばらく睨んで悩んだ後に、これは止めた。また来ればいいのだ。

シャリシャリの紙包みを剥いてハンバーガーにかじり付く。厚さ1cmほどの目玉焼き、いつもの肉といつものパン、いつものチーズ。いつものチーズバーガーに目玉焼きを加えただけみたいな感じなのに、何故にこんなに旨いのか。"ベーコンエッグバーガー"だったらファーストキッチンでいっくらでも食べられるのに、どうも"月見バーガー"には心躍らされてしまうのだ。

鴨と大根、焼き葱の甘辛煮
Kさんの
 "めん匠"のうどんの刺身 with わさび醤油
 新蕎麦
SanMiguel DARK、アイス烏龍茶

以前手打ちうどんを送ってくださったKさんから、またクール宅急便が届いた。
彼は大のうどん好きで、何かというと自らうどんを打っている。熱い人なのであった。

前日に、メールが届いた。
「新蕎麦を打ちました。少しですが送ってみました。ご賞味ください。いつも蕎麦粉を買っている銚子の古川製粉の特上印を外1の9割で打ちました。茹では再沸騰55秒で洗いのあと氷水締めです。汁は本節、本返し、口味醂で少し甘めに仕上げています。」
「先日お送り出来なかったニップンのめん匠のうどんもつけておきました。気持ち薄くて平べったいので茹で時間は11分で一度味見してください。11分から12分だと思います。釜揚げなら9分から10分です。汁は今度はいりこ(煮干し)も入っています。頭とはらわたは取ってあるのでえぐみは出でいないとおもいますが・・・」
……深い。

例えば私は大のマンゴプリン好きで、何かというと食べたり作ったりはしているけれど「○○のお店と同じ国産××種のマンゴー」というのを使ったり、「冷蔵庫には○○分入れて固めてすぐ食べる」というところまではこだわっていない。うどんとそばの世界は、かくも深く繊細なのだ。

折しも今日は、"大根と焼き葱の煮込み"をおかずにしようと考えていたところだった。そこに蕎麦が届くなんて、鴨が葱しょって蕎麦を抱えてきてくれたみたいなものだ。期せずして、見事な調和の献立になった。

まずは煮込みから作る。大根をだしで煮て、柔らかくなったところで醤油と味醂と酒で甘辛く味つけて、鴨を投入。気長にくつくつと煮込んで、出来上がり5分程前にこんがり焼いた長ねぎを混ぜ合わす。11分茹でた"うどんの刺身"ができあがったところでだんなが帰ってきた。

ヒラリとした三角形や長方形の薄い"うどんの刺身"にはわさびをちょいと乗せてから醤油を絡めて食べる。煮込みも刺身も"日本酒で合わせ技一本"という感じなんだけど、今日飲んだら明日動けなくなってしまうので黒ビールで妥協する。甘さのある黒ビールを飲んではツルリとしたうどんの刺身を食べ、甘辛く茶色に染みた大根をつつく。しこしこした刺身は、いつものうどんとはまた違った食感でこれまた美味しい。
だんなは
「この煮物、大根と鴨と焼き葱なんて、僕の好物ばかり入ってるよ〜。」
と何やらくねくねしている。

ビールを飲んで、つまみを平らげた後には蕎麦茹で。
台所で熱湯状態で待機させておいた鍋に蕎麦を入れ、じーっと待つ。フツフツ再沸騰したところですかさずタイマーをセットし、55秒。湯を捨てないように注意して蕎麦をざるに上げ(だって蕎麦湯を飲むでしょう?)、一気に水で締めてざるに盛る。
Kさん製の汁を蕎麦猪口に注いで葱を散らし、刻み海苔をかけた新蕎麦をずるるとすする。良い蕎麦の香り。キュッとした歯ごたえも悪くない。えらい勢いで蕎麦を平らげて、そして各自汁の残る蕎麦猪口を持って台所に戻る。温めたままにしてある白濁した蕎麦の茹で汁を注いで、最後は蕎麦湯。こってりした甘辛い汁がそばの香りで薄まってトロリとした蕎麦湯は締めにぴったりだ。しあわせ。

さて、食後は毎週木曜日のお楽しみ"どっちの料理ショー"。
「ごまVSにんにく」だなんて、"もう悩む必要なんかないね"とばかり、私たちは圧倒的にんにく支持だった。
最高のにんにくにクラクラし、めっちゃ旨そうなバターにひれ伏し、ガーリックライスを作るところでは床を転げ回ってじたばたし、そうして絶対にんにく勝利!と強く期待して最後の判定を待つ。

……したら、"ごま"の勝ち、だって。
そ〜んなぁ、あのステーキもあのサラダも、ライスもトーストも、ライムシャーベットもめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃ旨そうだったのに、どうしてだ日テレ!どうしてだ関口班!どうしてだにんにく!
「え〜〜〜、絶対にんにくだよぅ。」
「うん、出演者は皆、にんにくの良さをわかっていない!」
「うむ、あのように味のわからん奴らににんにくを食べる資格はない!」
「俺はにんにくを選んで負けても悔いはないぞぉ!」
と騒ぎ立てる私たちは、かなり本気だった。にんにく……美味しいのに。

10/13 (金)
Kさんの
 "めん匠"のかけうどん
アイス烏龍茶

昨夜に引き続き、Kさんのお手製というかお手打ち("お手討ち"じゃないんだから……)の麺を食す。今日はうどんだ。

"うどん"が食べたい、"うどんそのもの"が食べたいなぁ〜、と私はかけうどん。茹でたての麺にだしをかけただけの"あつあつ"だ。だんなはというと、
「肉うどんじゃ〜」
と言いながら吉野家の冷凍牛丼の袋を温めている。朝からまたヘビィな事をやっているだんななのであった。

まずはだんなも私と一緒に"かけ"で食べる。茹でたてのコシのある麺に甘さのないさっぱりとしただしをかけて、ずるるるる、と飲み込む。ああ〜、なんだかいいぞ。いい感じだ。
だんなは数口飲み込んだ後、
「にっくうっどん♪」
の声と共に牛丼の具をぶっかけている。醤油と味醂の味だけではない、一種独特の白っぽいあの吉野家の煮込みがうどんの上にどかっと乗っている。シアワセそうにテーブルについただんなは
「うっめーーー」
とか言いながらがふがふ食い始めた。何だか……旨そうじゃないか。

「私にも、ください。少しください。」
と"うどんそのもの"を食べたかった私はどこへやら、結局彼から牛肉を貰っているのである。だしの塩気に慣れていた舌には牛肉はとても甘く、でもそれがまたなかなか美味しかった。するすると胃に落ちていく麺に、だしの風味豊かなつゆにかかる甘辛い牛丼のたれ。調和してないようで調和している。

さて、来る再来月12/1〜12/3。
ついについについについに、"讃岐うどん食べまくり香川旅行"の計画が立ってしまった。全線1万円というANAのキャンペーンにて往復航空券も取得した。レンタカーの手配も済ませた。高松駅前の安ホテルの予約も取った。あとは予習をするだけだ。今から『恐るべきさぬきうどん』を読み返し、改訂して文庫化されたやつも購入し、村上春樹の讃岐旅行エッセイの入った文庫も入手し、何だか我が家のうどん文化はまた熱くなってきているのである。

「やっぱりさぁ。旅行前1ヶ月くらいは"禁うどん"するんじゃないんですか?」
とかだんなは言っている。讃岐うどんへの飢えを高めるためにも、そして2泊3日でうどんしか食べないという試練に耐えるためにも、やはりそうするしかないのであろうか。……ていうか……ばか?(苦笑)

銀座 スワンベーカリーの
 クリームパン
牛乳

"もっさりどっしりしたクリームパンが食べたいぞ……"
と思い、会社近隣で最も旨いパン屋と思うスワンベーカリーにほてほてと歩いていく。ちなみに近隣で最も旨いサンドイッチ屋は木村屋ペストリーショップであるので、目標によって考慮するよう注意されたい。

半月型の、円周の部分がもこもこと波打っている形。いかにもなクリームパンの形状のものが今日もトレイに並んでいる。
1個をトレイに取り、他にとシチューパンとかコーンパンとかガーリックトーストなどとにらめっこした後、どれも"私を食べて♪"と言ってくれなかったので仕方なくクリームパン1個を抱えて会社に戻る。途中の自動販売機で紙パック入りの牛乳もゲット。

このクリームパンは、超好みなのである。小麦粉入りの、弱火でじっくり温めて練り上げたような感じで、どっしりとしている。その割に食感も軽くさっぱりしているのでこれまた素晴らしい。同じクリームを使ったシュークリームもこれまた素晴らしい。すばらしい、すばらしい、と口の中でもぐもぐ言いながらクリームパンを食す。やはりクリームパンは水飴を使ったようなテラテラ光るもんじゃなくて、艶消しマットを美味しく思う。
私はちなみにアクセサリー系も艶消しがやはり好きなんである。

南瓜のにんにくオーブン焼き
牛ほほ肉のシチュー
マッシュポテト
にんじんのグラッセ
エリンギのバター炒め
御飯
モルツ、アイス烏龍茶

昨日の"どっちの料理ショー"は誠に不満であった。
「ごまVSにんにく」、関口厨房のにんにくサイドはガーリックトーストありガーリックライスあり、ステーキにほうれん草のサラダに冷たいスープ、とどれを取っても旨そうだった。出演者も皆、にんにくの映像を見てヒーヒー言っていたではないか。それなのに"ごま"の勝利とは、全くもって納得いかない。いかないったらいかない。一人まだ怒っている私なのであった。

……いや、納得いっていないのは私だけではないらしい。
昨日から今日にかけてきたメールといったら
「私もニンニク支持でした。」
「私も"ぜーーーったい!にんにく!"と、旦那と話していました。」
「やっぱにんにく!ですよね。」
「絶対にんにくだよー」
と、んもうメールサーバーがにんにく臭くなるのかと思うくらい、それはにんにくへの愛で溢れていた。

深い洞察をしている方も何人かいて、
「出演者たちは翌日の仕事に影響を及ぼすと思って"ごま"を選んだのでは?」
という御意見もあったりした。それは結構真理をついているかも、と、そんなこと思いもしてなかった私は感心しているのであった。
まぁ、あれだけにんにく料理喰ったら"ブレスケア"飲んだところで役に立ちそうにないしなぁ。無念にんにく。

で、前置きは長くなったけど
「にんにく追悼記念〜〜〜!」
とか言いながら(↑めちゃめちゃですがな)帰宅後に巨大なにんにく3かけを薄切りにしている私なのであった。
平皿に厚切りにした南瓜を並べ、にんにく薄切りをまんべんなく散らし、バターのかけらを随所に落とし、そしてオーブンで焼く。貴方の匂いも味も、私が満喫してやるから迷わず成仏してください、にんにく様。

メインは牛ほほ肉のビーフシチュー。
「シチューにしましょー」
と先週末に買った肉が未だ使われてなかったので、慌てて煮込んでみた次第。"ほほ"というからには筋肉であって、しかも草を始終はんでいる牛さんのほっぺただったりするから、もうほとんどすじ肉のようなものなんである。ざくざく切ってサラダ油で両面こんがり焼いてから鍋に放り込んで湯で茹でる。コンソメと葱をぽいぽいと放り込み、煮ている間に"ソフリット"を作る。玉ねぎのみじんをじくじく炒めて茶色にし、すりおろしたにんじんとセロリを加えて更に炒めてこげ茶にし、そうしてできたソフリットを鍋に加える。赤ワインのハーフボトルのやっすいやつをドバドバと全部入れて、冷凍保存していた自家製ドミグラスソースも混ぜ込んだところであとは弱火でことこと煮ていく。
付け合わせに牛乳多めに入れた柔らかめのマッシュポテトとにんじんのグラッセ、エリンギの炒め。

……やはり、2時間で牛ほほ肉を煮込もうというのは無謀だったようだ。筋肉のゼラチン質はまだまだ溶けず、肉は固くはなかったけれどちょっと脂っけが多かった。やはり2日くらいかけて煮込むべきものだったらしい。
ごろごろと6切れくらいある肉は半分ほどを食べるにとどめ、あとは野菜を満喫する。
これでもかこれでもかとにんにくかけて焼いた南瓜は旨かった。うん、やっぱりにんにくは美味しいよ。

10/14 (土)

南青山 青山アクアパッツァにて
Dコース \4,300也
 前菜の盛り合わせ
 温かい前菜
 本日のスパゲティ
 魚料理 or 肉料理
 デザート・コーヒー

朝、10時。2回目の洗濯機ががこんがこんと回っている間、家族会議を執り行う。
「本日は……本屋に行かなければなるまい。探している書物が3冊も見つかっていない。」
「神保町に行くべきであろうか。」
「台場にも小さいくせに品揃えの良い本屋が1つあるが。」
「銀座はいまいちダメだ。」
「新宿の紀ノ国屋はどうか。」
「渋谷の三省堂という手もある。」
「渋谷……だとすると、どこで昼飯いや朝飯を喰えばいいのだ。」
「……青山のアクアパッツァ……近いねぇ。」
「青山?青山?アクアパッツァ?アクアパッツァ?」
何だかすっかり話は"どこの本屋に行くか"ではなく"アクアパッツァに行くかどうか"に逸れている。その日の食事が行きたい場所を左右するなんてこた、いつものことなので気にしない。
山のような洗濯物を干し終え、そして家族全員でてくてくと駅に向かって歩いていく。

「一時間後くらいに行きますー。子供も一緒なので適当なお店の隅っこあたりででも喰わせてください。」
と一報入れて店に向かうと、1階の、入り口そばのソファ席を用意してくれていた。昼も12時半を過ぎて、地階フロアは大層混雑しているようだった。

座るとすぐさまスプマンテ、息子にブラッドオレンジジュースが出てくる。
メニューを眺めて、メイン料理もしっかり出てくるDコースにすることに決定。いつも、
「軽く前菜とパスタだけ喰って出るなんてこともしてみたいわよね〜」
なんて言いながら、何故いつも重くしてしまうのか私たち。

最初は前菜の盛り合わせだ。いつも5種類、しかも各皿は微妙に種類を変えてある。だんなと私は、当然皿を途中で交換こして食べるのだ。
私の皿にはペペロナータ(パプリカの炒めマリネ)、南瓜のバニラ風味、イイダコのマリネ、お米のサラダ、ハムのテリーヌ。だんなの皿には前者2つとアーティチョークと鶏肉の煮込み、海老と帆立のマヨネーズソース和え、アジのグリルトマトとケッパーのソース。今日もどれもピカピカしていて、とても美味しそうだ。
脇の息子に冷たく冷えた南瓜を分けてやりつつ(もとい、奪われつつ)半分食べてだんなのと交換。レバーの風味が感じられるテリーヌはこってりねっとりと濃厚だ。ほのかな酸味のある、パラパラとした米のサラダ。ワタの混ざる黒っぽいタコのマリネ等々、どれも相変わらず美味しい。だんなの皿の、くたっと煮られたほんのり苦みのあるアーティチョークや、タルタルソースにも似たマヨネーズソースの絡む海老もこれまたイケる。

そして、温かい前菜。今日は砂肝と舞茸入りのコロッケ。御飯に砂肝、舞茸が混ぜられて煮られたような茶色く染まったものがカラリと揚げられて、お皿の中央に1個。周囲にはさっぱりしたトマトソースが敷かれている。薄い衣のコロッケは、軽くつつくとほろほろと崩れていきそうな感じだ。中はふくふくと柔らかく、外はパリパリのそれを崩しながら2口で食べる。
無くなったスプマンテを発泡水のサンペレグリノに切り替えて、がぶがぶ飲みながら食事を進める。
下からとてててて、と階段を上がってきたシェフKさんがそのままとててててと外に出ていった。数分後大きなじゃがいも入りの袋を抱えて戻って行く。相変わらず"料理が楽しくて仕方ないんです"という空気のある人なのである。

次、パスタ。
いつも3種類用意される"本日のパスタ"、オイルベース、クリームソース、トマトソースのそれぞれの中から選ぶ。だんなはクリームソース、今日のは帆立とピーマンのもの。私はトマトソース、鹿肉のラグーソースのものを選択。

イタリア料理におけるパスタの1人当たり分量は80gが基本とされる。当然このお店のパスタも80gを見当にいつも供されるのだ。それがだんなの不満(そして私もこっそり不満)。いつもいつもいつもいつも、
「ああ、あと2口3口、いや4口5口6口余分に食べたいのよね。」(←それではほぼ倍量である)
と思う分量なのだ。

それがまた美味しく思わせる絶妙の分量ではあるのだけど、今日のだんなはいつもより空腹度合いが高かったらしい。馴染みにもなったこの店だし、という甘えもあってか
「あの……すみません。僕の分のパスタをちょっと多めにしてくれませんでしょうか。」
とメニュー決めの段階でそう伝えていたのであった。
「息子にも分けなきゃいけないしね。」
なんてつけ加えている。それは真実かもしれないけど、でも自分もたくさん食べたいに違いないのだ。

果たして、やってきたパスタはいつもより明らかに多かった。何故か私のも多かった。多きことは良きこと哉。いつもより50%ほど多く盛られたパスタを喜ばない者はこのテーブルに1人もいないのであった。
息子用の取り皿にクリームソースのパスタをツルツルと分けてやり、そして全員でパスタにかぶりつく。私の前にあるのは鹿肉のラグーだ。若干獣臭さのある肉が、よっく煮込まれてホロホロと崩れている。飲み込んだ後にじわりと来る唐辛子の辛さがあって、なんとも美味しい。臭み消しにハーブも混ざっており、これがまた悪くない。こってりと旨味十分のパスタだ。

で、当然だんなのパスタも分けていただく。
柔らかい帆立がどっちゃりと、パプリカの細切りもたっぷりと混ざっているクリームパスタは、イカの味噌かカニの味噌でも入っているのか濃厚なこってりさと磯の香りがした。サラリとしたものじゃなく、とろん、ととろけるような濃度のあるクリームソースだ。帆立の甘味がすこぶる美味しい。息子は眼を輝かせ、ついでに口の回りも手もクリームの油で輝かせながら夢中でパスタに格闘中だ。
うん、やっぱりこのくらいの量が美味しいよ。

パスタを食べ終わり、溜息をついて水を飲み干したところでメイン料理がやってきた。
パスタが肉系だったので、私のメインは魚にした。金目鯛を蒸して、青菜とドライトマトを炒め合わせた上に盛ったものだ。巨大なエリンギのグリルも添えられている。
だんなのメインは肉料理。骨付きの羊肉が野菜のソースで煮込まれたもので、クスクスが添えられている。ミートソースのような濃厚なソースだ。

……で、良くみると、だんなも私も切り身が2つずつ盛られているのであった。これまで食べた記憶から、1人分見当は、おそらく1切れ分だと思われた。皿を置いたスタッフの人が、にこにこと
「肉も大盛りにしておきました♪」
とおっしゃっている。な、なんとかーーーー!?(←"なんてことだ!"を意味する香川弁であるらしい。讃岐旅行へ向けて、香川弁の特訓……なんてする必要ないんだけど)

Kシェフの中では
「この御夫妻は健啖家(ちゅーか"大食らい")」
の情報がしっかりインプットされているようなのであった。
かくして大人2人と幼児1人のつくテーブルには4人分と思われるメイン料理が積まれているのであった。すばらしい。

丁度良い具合に蒸された魚はホロリと柔らかくジューシーだった。自家製ドライトマトも相変わらず美味しい。プチトマトをオーブンで焼き、天日で乾かして作る自家製ドライトマトは私でも作れなくはないけど、私が作るような焦げもなく甘味酸味も充実しているお店のものはひときわ美味だ。
ラグーのようなこってりしたソースの絡む羊肉も柔らかだった。クスクスに絡めて食べるとこれまた旨い。旨い、旨いと皿はあっという間に綺麗になった。

食後には
「スペシャルデザートがあるんですよ〜。今、温めてます。」
という言葉と共に、テーブルにはフォークとナイフとスプーンがずらりと並べられた。Kシェフ自ら持ってきてくれた皿の上には、アツアツに温められた円形のアップルパイの上にシナモンアイスクリームが乗ったもの。
「この林檎は新しい品種の"さんさ"というものなんです。加熱に弱い品種で……。」
とおっしゃっていた。紅玉のような品種だろうか。

パイ生地はさっくりと軽く、上に乗る林檎は酸味がしっかり感じられる良い感じのものだった。種類によっては軽く火を通すだけでグズグズになってしまうものだけど、これは柔らかなのに歯ごたえも残っている。甘さは少なく、香りが強い。上にはバニラ風味の砂糖がかかって溶けていて、そして上には丸いシナモンアイスクリームが乗っている。アップルパイの熱でやわやわと溶けていくそれを、熱いパイと一緒に食べる。

〜〜〜〜〜〜おいし〜〜い。すっごく、美味しい。めちゃめちゃ美味しい。
元々、"熱いものと冷たいものを一緒に食べる"シチュエーションに弱いのである。「麻布茶房」の、温かいスイートポテトの上にソフトクリームが乗るデザートなんて高校の頃から食べまくっていたのである。同じようなアップルパイを出してくれる銀座の「ぶどうの木」の喫茶店も気に入っていたのである。

で、このアップルパイは他のそういう如何なるものよりも旨かったのだ。強すぎないシナモンの香りの冷たいアイスクリームはそのままでも溶けていても美味しいし、ほのかに甘いシンプルなパイと絶妙に合っている。しあわせだ。
溶けちゃいかん、と急いでパイを平らげる。

で、結局
「他のデザートもお召し上がりになりますか?」
なんて言葉にほいほい乗って、ナッツのタルトやらティラミスやらも食べているのである。くるみたっぷりの素朴な感じのタルトに洋酒の香りのするふわふわとするティラミス。
デザート食べて、エスプレッソも飲んで、1時間半少しのランチ終了。てくてく歩いて本来の目的地渋谷を目指す。

渋谷 東急東横店内サンジェルマンにて
 クリームソーダ

渋谷 東急東横店内ジューススタンドにて
 生ライムジュース

営団地下鉄永田町駅構内にて
 ヒロタのシューアイス(バニラ)
 烏龍茶

喉が乾く。アルコールを摂取して、しかもたらふく喰ってるのだから当たり前だ。

買い物中にクリームソーダを飲み、脳天まで痺れそうに酸っぱいライムジュースを飲み、夕方5時をすぎてようよう帰宅の途。
乗り換え前の電車の中で、だんなのちょっとした一言に反応した私は、以降ずっとスネていた。乗り換え途中もスネていた。
「おゆきさーん。気にしないでよーう。」
ぷんだ。
「悪気があったんじゃなくてさー。軽い気持ちでさー。」
ぷんだぷんだ。
「……あ!ヒロタのシューアイス食べない?すぐそこに売ってるよ。」
ぷんだぷんだぷんだ。
「食べたいよね。買おうね。買うね。バニラがいいよね。」
ぷんだ……と言いながら、結局喰ってるのである。カチンカチンのアイス入りのシュークリームは美味しくて、結局何に怒ってたんだか良くわからなくなっているんである。情けない。

刺身(まぐろ・ハマチ・甘海老・うに)
蛤の澄まし汁
御飯
アイス烏龍茶

6時になっても腹がすかない。7時になっても腹がすかない。
でも、渋谷東急東横店の地下のフードコートでやっすい刺身を買ってきていた。以前テレビで「渋谷デパ地下戦争!」なんて放映されちゃっていたそこは、本当に戦争のような状況なのだった。2店舗の魚屋が競い合って安値のものが売られまくり、成城石井の高級食材が吠え、クィーンアリスの惣菜が踊っていた。すごかった。
成城石井のデザート数種と惣菜コーナーで見つけたマンゴプリン、そして安かった刺身を買って帰ってきたのであった。

刺身はまぐろにハマチに甘海老、うに。全部で2000円もしないような感じだ。
でっかい蛤を買ってきたのでこれを澄まし汁にして、御飯と一緒にがふがふ食べた。ああ、夕食まで充実してしまった……。

10/15 (日)
ウニ・甘海老丼
ワカメの吸い物
アイス烏龍茶
成城石井の
 マンゴープリン

昨夜食べたウニと甘海老がまだ冷蔵庫の中に残っていた。
で、今朝は冷凍御飯を解凍して丼にすることにする。ウニの苦手なだんなは当たり前のような顔をして吉野家の冷凍牛丼を。私と息子は御飯に揉み海苔敷いてウニ乗せて、甘海老も乗せて醤油を垂らす。昨夜の残りの蛤の吸い物にはワカメを加えた。

ウニ、ほんの数年前までは不気味に思って食べられなかった。あんなヘンな、内臓みたいなやつのどこが旨いのかさっぱり分からなかった。
でも、いつだったか築地のお寿司屋さんで新鮮なぷりぷりのやつを食べてしまって以来、その甘みのある美味にやみつきになっている。新鮮なウニは臭みが全くなくてただただ甘い。昨日買ってきたやつはそこまでのものじゃなくて、やっぱり僅かばかりの鼻につく独特の匂いが感じられた。それでも今の私はウニが大好きで、シアワセな顔をして食べてしまうのだ。カロリー……高そうなんだけど。

ヨコイのスパゲッティ ボローニャソーセージと目玉焼き乗せ
アイスカフェオレ

昼御飯は、久しぶりの"ヨコイのスパゲッティ"。だんなが鍋をふるって作ってくれる。
名古屋名物(と言っていいのか……)、名古屋及びその周辺にしか売っていないという不思議なパスタソースとスパゲッティだ。名古屋ではスーパーはおろかコンビニででも買えるらしいが、県をまたがるともう売っていないらしい。
東京近郊ではdancyu shopで買えるので、我が家はいつも10袋単位で通信販売してしまう。
ショップの売り上げ、最近落ちてるらしいです。求ム協力。

「ヨコイ」なるスパゲティ屋さんがかつて、「名古屋人の口に合うスパゲティソースを……」として開発したのがそのソース。ミートソースともケチャップソースとも似て非なる、ピリ辛のあんかけソースだ。ピリリと辛く、浅いようで深い味がある。とろみがある、というよりはまさに"あんかけ"という感じのとろりとした濃度。はっきり言ってジャンクな味だけど、妙にクセになってしまうのだ。
このソースをソースに合わせて開発された、他ではまず見かけないような太い太いスパゲティに絡めて食す。うどんのような太いパスタだ。

茹でたパスタはアルデンテではいけない。中までしっかり火を通すのがお約束だ。イタリア料理の基本は、ヨコイの前では通用しない。
一度水で締めたパスタは中華鍋にてバターと共に炒められる。バターが絡まって、アツアツになったところを皿に盛り、具を乗せ、ソースをかける。
ソースがジャンクなので、具もジャンクなものが似合う。安っぽーい赤いウィンナーだとか、冷凍もののチキンナゲットなど。今日はちょっと豪勢に、いただきものだった太いソーセージ、ボローニャソーセージを薄切りしてフライパンでじくじく炒めたもの。そしててっぺんには半熟目玉焼き。とろとろの黄身を絡めながら食べると、これまた旨い。
で、仕上げのソースは上からかけるのではなく、麺の周囲、皿の外延に沿って丸く敷くようにかけるのがお作法であるらしい。ますます奥の深いパスタなのであった。

久しぶりのヨコイは、相変わらず美味しかった。
美味しくて美味しくて、もう忘れられないの〜……とかいう類の味ではないけれど、久しぶりに食べると「あ〜、これこれこの味だよ。」と激しく頷いてしまい、そしてまた1ヶ月後くらいに食べたくなってしまうような味だ。
今日の目玉焼きは、半熟というよりはやや固焼きになってしまっていて、それがちと残念だったけどじくじく炒めて脂の染み出たソーセージはソースにとても良く似合っていた。バターの絡む太麺も相変わらずだ。
そうそう、カキフライを添えても美味しいのだ、こいつは。

回鍋肉
豚肉ときのこの中華スープ
御飯
SanMiguelDARK、アイス烏龍茶

Saigonの
 マンゴープリン

午後6時半過ぎ、夕食の支度を開始する。豚バラ肉の塊を茹で始め、その茹で汁でスープを作ったり、野菜を刻んだり。
だんなも一緒に台所に立ち、息子も「なんだなんだ」と寄ってきて手伝いたがるので、広くはない家のことさら狭い台所に家族全員3人がぎゅうぎゅうと詰まって作業することに。皿を運び、野菜を刻み、肉を切り、冷蔵庫を開け。なんだかしっちゃかめっちゃかだけど、妙に楽しい。

昨日買ってきた110円のキャベツの半分をざっくざっくと切り、緑のピーマンと赤のピーマンを刻む。沸騰した湯にこれを一度放り込んで軽く湯通し。にんにくと生姜も怠りなく準備。下茹でした塊肉は程良くスライス(薄切り肉使うよりこっちのが絶対絶対絶対美味しい)。
熱した中華鍋ににんにくと生姜を放り込み、XO醤(本当は豆板醤のがよろしかろう)を炒めて辛みと香りを出し、そこへ肉と湯通しした野菜を投入。ざざざと炒めて合わせておいた調味料を放り込み、2〜3回鍋ふって水溶き片栗粉でとろみをつければできあがりだ。数年前に作ってからというものすっかり魅惑されてしまったレシピは周富徳さんのを基本にしている。周さん今日もありがとう。甜麪醤はそれほど入らず、醤油と砂糖、オイスターソースなどが入っているこの調味料の配合はしみじみ美味しい。

回鍋肉ができたところで、速攻ビールを用意。冷凍庫からグラスを取り出し、今日は黒ビール。たっぷり注いで、あつあつの回鍋肉を前に「いただきます」。油が程良くキャベツや肉にからみ、甘辛いタレのとろみ具合も絶妙だ。豚バラの層がそのままに美しく、御飯に乗せてもこれまたうまひ。

茹で汁を使って作ったスープはこちらも豚肉入り。手でざくざくと裂いたエリンギと、長めに切った万能葱を軽く煮込んで、塩と醤油と紹興酒で味つけ。すり胡麻を少々、ついでに目が合ったのでタイのフライドガーリックをひとつまみ放り込んでみた。そしたらかつてなく旨いスープになってしまった。一口飲んだだんなが
「これ、何入ってんの?すっげく美味しい!」
と珍しくも驚いている。ふっふっふ、すごいでしょう。でもすごいのは妙に味わいのあるイカしたタイ産フライドガーリックなのだ。

スープを傍らに、御飯の進む回鍋肉を御飯と一緒にがふがふ食べる。
デザートは、昨日渋谷で買ってきたマンゴープリンだ。ベトナム料理屋"Saigon"の惣菜コーナーで買ってきたプリンは、市販の紙パック入りのプリンを加工しただけの、非常にイマイチなものだった。

「素晴らしいディナーの締めくくりには、素晴らしいデザートが必要なのです。」
と「王様のレストラン」で松本幸四郎も言っていたではないか。これはよろしくない。悲しい。
ここ数日、スカパーにて放映されていた「王様のレストラン」を狂ったように見まくっていた我が家である。
先日なんて、
「不味い食材はない。不味い料理があるだけだ。」
なんてフレーズが出てきて教えられてしまったのである。すばらしいフレーズだ。
で、このマンゴプリンは不味かったのねー。ショックだったのねー……。